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【発明の名称】 板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物、およびそれを用いたW/O型乳化組成物
【発明者】 【氏名】上田 秀人
【氏名】那須 昭夫
【課題】低粘度においてもW/O安定性化効果を発揮することができ、使用感に優れるW/O乳化物を与えることができる有機変性粘土鉱物系乳化剤、ならびにこれを用いたW/O乳化物を提供する。

【解決手段】(i)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmである板状粒子である有機変性粘土鉱物と、(ii)非イオン性界面活性剤と、(iii)油分と、を含有し、(iii)油分が分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を含むことを特徴とする有機変性粘土鉱物油性ゲル組成物、及びこれを用いたW/O乳化物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmである板状粒子である有機変性粘土鉱物と、
(ii)非イオン性界面活性剤と、
(iii)油分と、
を含有し、(iii)油分が分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を含むことを特徴とする有機変性粘土鉱物油性ゲル組成物。
【請求項2】
請求項1記載の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が有機変性ヘクトライトであることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油性ゲル組成物において、油分がさらにシリコーン油を含むことを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、非イオン性界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン化合物であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分の非存在下、油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理した後に、分子中にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を添加する方法で製造されたことを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を含む油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理する方法で製造されたことを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜30質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜10質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、前記非イオン性界面活性剤の配合量が油性ゲル組成物中0.1〜10質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分が、油性ゲル組成物中0.1〜5質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の油性ゲル組成物を用いたW/O型乳化組成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の油性ゲル組成物を用いた化粧料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物、及びW/O型乳化組成物に関し、特に、W/O乳化物における安定化能及び使用感の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、W/O乳化系は様々な製品に使用されている。特にシリコーン油はなめらかな特性を有し、揮発性および撥水性に優れていることから、化粧料分野においては重要な油分であり、無論、W/O型の化粧料にも配合されることが望まれている。しかしながら、シリコーン油は安定なW/O乳化系を形成することが難しい。
【0003】
また、使用感、取扱性等の観点から、化粧品、医薬部外品のみならず、塗料、樹脂などの各種分野で油系での増粘、ゲル化が行われており、例えば高分子増粘剤、ないしワックスなどが用いられるが、油分の中でも特にシリコーン油は化粧料分野において重要である。
【0004】
これまで、シリコーン油のゲル化や、シリコーン油配合のW/O乳化系の安定化のために、シリコーン油をワックス類とともに固化する方法、シリカまたは親水化処理したシリカを併用する方法などがとられてきた。
【0005】
しかしながら、ワックス類とともに固化する方法はのびが重くべたつき等の使用感において問題があり、流動性に乏しいため応用範囲も制限されるものであった。またシリカを併用する方法は経時での安定性が悪いといった問題があった。
このような使用性、経時安定性の問題点を改善する方法として、ポリエーテル変性シリコーン化合物を用いて有機変性粘土鉱物を処理し、ゲル組成物やW/O乳化物に配合する方法が開発されている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0006】
しかしながら、前述のポリエーテル変性シリコーン化合物を用いて処理された有機変性粘土鉱物を含むゲル組成物のゲル形成能は持続性が低く、またW/O乳化物に配合した場合の乳化剤としての機能は、十分に満足いくものではなかった。
さらに、従来から使用される有機変性粘土鉱物を用いて、乳化物の安定性を確保しようとすると、該成分の必要量によってもたらされるゲル特性はその粘弾性が比較的高くなる傾向にあるため、低粘度でかつ安定性に優れた乳化物を得ることは非常に困難であった。
【特許文献1】特開昭61−114721号公報
【特許文献2】特開昭61−212321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、低粘度においてもW/O乳化安定性化効果を発揮することができ、使用感に優れるW/O乳化物を与えることができる有機変性粘土鉱物系乳化剤、ならびにこれを用いたW/O乳化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述のポリエーテル変性シリコーン化合物を用いて処理された有機変性粘土鉱物を含むゲル組成物のゲル形成能は持続性が低く、またW/O乳化物に配合した場合の乳化剤としての機能が不十分である点について、以下のように考えられた。
すなわち、粘土鉱物の形状は本来、厚みが数nmの板状粒子が層状化(積層)しているものであるが、市販の有機変性粘土鉱物ではその製造過程において凝集が生じるために、この層状の粘土鉱物がさらに凝集しており、その平均厚さは通常2μm以上となっている。したがって、ポリエーテル変性シリコーン化合物による処理のみでは、粘土鉱物の凝集体の微細化あるいは板状化はなされないために、有機変性粘土鉱物が十分に分散されず、その結果、油分中で安定なゲルネットワーク構造が十分形成されないと考えられた。そして、このことが、ゲル化剤や乳化剤としての機能が劣る原因になっているのではないかと考えられた。
【0009】
このような考えに基づいて本発明者らが検討を行ったところ、有機変性粘土鉱物の凝集体を機械的剪断力及び/又は衝撃力によって油分中で剥離処理して微細な板状粒子へその形状を制御することにより、非イオン性界面活性剤共存下での増粘・ゲル化能が著しく高くなることが判明した。また、W/O乳化物における乳化安定化効果も非常に高くなった。
【0010】
さらに本発明者等が検討を進めた結果、有機変性粘土鉱物板状粒子と非イオン性界面活性剤とを含む油性ゲル組成物にCOOH基及び/又はOH基を分子内に有する油分を用いると、油性ゲル組成物さらにはこれを用いたW/O乳化物の粘度が低下するにもかかわらず、乳化安定化効果が保持され、従来の有機変性粘土鉱物凝集体を用いた場合に比べてものびやみずみずしさなどの使用感が向上することも見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明にかかる油性ゲル組成物は、
(i)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmである板状粒子である有機変性粘土鉱物と、
(ii)非イオン性界面活性剤と、
(iii)油分と、
を含有し、(iii)油分が分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を含むことを特徴とする。なお、各々の板状粒子は実質的に凝集していない。
本発明の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が有機変性ヘクトライトであることが好適である。
また、本発明の油性ゲル組成物において、油分がさらにシリコーン油を含むことが好適である。
また、本発明の油性ゲル組成物において、非イオン性界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン化合物であることが好適である。
【0012】
また、本発明にかかる油性ゲル組成物は、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分の非存在下、油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理した後に、分子中にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を添加する方法で製造されたことが好適である。
また、本発明にかかる油性ゲル組成物は、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分を含む油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理する方法で製造されたことが好適である。
【0013】
また、本発明の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜30質量%であることが好適であり、さらには、0.25〜10質量%であることが好適である。
また、本発明の油性ゲル組成物において、前記非イオン性界面活性剤の配合量が油性ゲル組成物中0.1〜10質量%であることが好適である。
また、本発明の油性ゲル組成物において、分子内にCOOH基及び/又はOH基を有する油分が、油性ゲル組成物中0.1〜5質量%であることが好適である。
また、本発明にかかるW/O型乳化組成物ならびに化粧料は、前記いずれかに記載の油性ゲル組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の板状粒子構造の有機変性粘土鉱物は、非イオン性界面活性剤との併用により油分に対して優れた増粘ゲル化効果、W/O乳化物に対する乳化安定化効果にも優れ、これにさらにCOOH/OH基含有油分を用いることにより、乳化安定性を維持したままで組成物の粘度を低下させることができ、低粘度で乳化安定性に優れ、しかものびやみずみずしさなどの使用感に非常に優れる乳化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)有機変性粘土鉱物板状粒子
本発明にかかる油性ゲル組成物は、有機変性粘土鉱物粒子が油分中に分散した油性分散物であって、平均厚さが0.1μm以下、且つ平均長径が0.5〜50μmである板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物粒子を含む。なお、各々の板状粒子は実質的に凝集していない。
上記のような有機変性粘土鉱物板状粒子は、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理することにより得ることができる。例えば、以下のような処理方法により、通常低粘度で流動性のあるゾル組成物として得られる。
【0016】
(処理方法)
市販の有機変性粘土鉱物(通常は平均厚さ2μm以上である層状構造を有する凝集体である)と油分との混合物に、直径1mm程度のガラスビーズ(またはジルコニアビーズなど)を同体積加え、ペイントシェイカー(浅田鉄工株式会社)、ビーズミル(DISPERMAT, VMA-GETZMANN GMBH Verfahrenstechnik)などを用いて機械的せん断力および/または衝撃力を加えることにより薄片化する。
【0017】
原料として用いた市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)のSEM写真図(図1)、およびこれを上記処理方法で処理して得られた板状粒子構造を有する有機変性ヘクトライトのSEM写真図(図2)を示す。
(デカメチルシクロペンタシロキサン:有機変性ヘクトライトが95:5の配合比率で分散させた後に、SEM S−4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて撮影)
また、上記剥離処理は非イオン性界面活性剤及び/又はCOOH/OH基含有油分の存在下で行うこともできる。
【0018】
本発明にかかる有機変性粘土鉱物は、前述の処理方法により、平均厚みが0.1μm以下である板状の形状を有するものである。従来の粘土鉱物は、板状粒子が層状化しており、これを有機変性処理して調製される市販の有機変性粘土鉱物は、その層状構造を有する粘土鉱物がさらに凝集体を形成しており、その様態は図1に示される。
【0019】
本発明においては、この凝集体を剥離処理することにより、平均厚みが0.1μm以下である板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が単一粒子として独立に存在したゾル組成物を得ることができる。一度得られた分散体は、シリコーン油などの油相中において、再度凝集することなく、良好な分散状態を維持することが可能である。凝集体が十分に剥離されずに厚みが大きいままであると、後述するような増粘ゲル化能やW/O乳化安定化能が十分に発揮されない。
また、本発明にかかる組成物に含まれる有機変性粘土鉱物は、平均長径が0.5〜50μmであることが好ましい。個々の粒子形状は、上記の厚みおよび長径の範囲においてシート構造をとっていれば、特に限定されず、角張っていてもいなくてもよい。
【0020】
上記ゾル組成物に含まれる有機変性粘土鉱物の平均厚さ、平均長径は例えば、以下の測定方法により求められる。
(測定方法)
・平均厚さ
ゾル組成物をシリコーン油で十分希釈し、希釈液を乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡(S−4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定する。
・平均長径
ゾル組成物をシリコーン油で十分希釈し、粒度分布測定機(Microtrac VSR、日機装株式会社製)を用いて測定する。
また前記有機変性粘土鉱物の形状はSEM写真により決定される。
【0021】
本発明にかかる板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を調製しようとする場合、その原料となる有機変性粘土鉱物は、化粧料に一般に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することが可能である。具体的には、水膨潤性粘土鉱物の層間カチオンをアルキル4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤でイオン交換して得られるものであり、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムイオンで交換されたもの、ジメチルジステアリルアンモニウムイオンで交換されたもの等が挙げられる。また水膨潤性粘土鉱物は具体的にはモンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト等が挙げられる。本発明において、好ましく用いられる有機変性粘土鉱物は、前述の有機変性されたヘクトライトであり、市販の有機変性粘土鉱物としては、例えばベントン27、ベントン38(エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)等が挙げられる。
【0022】
上記ゾル組成物において、前記板状構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量は特に制限されないが、0.25〜35質量%とすることが好適である。配合量が多すぎると剥離処理が困難となることがある。
【0023】
また、前述の処理方法において用いる油分は、特に限定されない。化粧料や医薬品等に通常配合される油分を1種または2種以上用いることが可能であるが、全体として常温(20℃)で液状の油分であることが好適である。特に本発明においてはシリコーン油が好ましく用いられる。
【0024】
シリコーン油としては、化粧料に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。具体的に示すと、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサンの他、特に問題のない限り、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム各種ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
本発明において、シリコーン油の1種または2種以上を選択して用いることも可能である。
【0025】
本発明の板状構造を有する有機変性粘土鉱物は、特にシリコーン油を主成分とする油分中で良好に分散することができ、ポリエーテル変性シリコーン化合物などの非イオン性界面活性剤とともに増粘・ゲル化を効果的に行うことが可能である。また、シリコーン油を主成分とするW/O乳化組成物においても優れた乳化安定化効果を発揮することができる。
【0026】
シリコーン油以外の油分としては、例えば、炭化水素油、エステル油、植物性油脂、動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。
炭化水素油としては、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、スクワレン、オゾケライト、プリスタン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0027】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリン、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0028】
植物性油脂としては、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、落花生油、アーモンド油、大豆油、茶実油、ホホバ油、胚芽油等が挙げられる。
動物性油脂としては、タートル油、卵黄油、ミンク油等が挙げられる。
高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール等が、高級脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0029】
(2)非イオン性界面活性剤
上記のようなゾル組成物に非イオン性界面活性剤を併用した場合、ゾル組成物に比して粘度が著しく上昇し、流動性が低下する。本発明においては、このような組成物をゲル組成物と言う。このように、本発明のゲル組成物は、前記ゾル組成物(ゲル組成物から非イオン性界面活性剤を除いた分散体)よりも増粘した油性分散物ということができる。
【0030】
非イオン性界面活性剤の添加は、有機変性粘土鉱物を油分中で剥離処理する前、剥離処理中、剥離処理後の何れであってもよい。
例えば、本発明においては、前記ゾル組成物に非イオン性界面活性剤を添加することができる。
あるいは、有機変性粘土鉱物凝集体(通常平均厚さ2μm以上)を、非イオン性界面活性剤の存在下、油分中で機械的剪断力及び/又は衝撃力によって剥離処理することもできる。このような方法による油性ゲル組成物中でも、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が形成される。
なお、前者の方法のように、有機変性粘土鉱物を油分中で高分散処理してゾル組成物とした後で非イオン性界面活性剤を添加して調製された油性ゲル組成物の方が、後者の方法のようにワンステップで調製された油性ゲル組成物よりも、ゲル組成物やこれを用いたW/O乳化物の粘度が低くなる傾向があり、また、後述するCOOH/OH基含有油分による粘度低下効果が大きくなる傾向がある。
【0031】
本発明にかかる油性ゲル組成物に含まれる有機変性粘土鉱物の平均厚さ、平均長径は例えば、以下の測定方法により求められる。
(測定方法)
・平均厚さ
油性ゲル組成物をシリコーン油で十分希釈し、希釈液を乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡
(S−4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定する。
・平均長径
油性ゲル組成物をシリコーン油で十分希釈し、粒度分布測定機(Microtrac VSR、日機装株式会社製)を用いて測定する。
これらの測定のために、油性ゲル組成物中の非イオン性界面活性剤をシリコーン油で洗浄してもよい。
なお、本発明においては、上記の平均厚さおよび平均長径の測定は、有機変性粘土鉱物をシリコーン油中に分散および希釈させたゾル組成物を測定サンプルとして用いることも可能なものとする。
また、前記有機変性粘土鉱物の形状はSEM写真により決定される。
【0032】
本発明にかかる油性ゲル組成物中において、非イオン性界面活性剤は、前記板状構造を有する有機変性粘土鉱物の板状粒子表面に吸着し、安定なゲルネットワークの形成に寄与する。微細な板状粒子表面に非イオン性界面活性剤が吸着しているため、吸着率が向上し、従来の凝集体の有機変性粘土鉱物を用いたゲル組成物よりも少ない非イオン性界面活性剤量でその配合効果が発揮される。
また、本発明にかかる油性ゲル組成物を用いてW/O型乳化組成物を調製した場合、非イオン性界面活性剤によって表面改善された有機変性粘土鉱物の微細分散粒子が乳化粒子の膜壁を形成し、安定性に優れた乳化組成物となる。
【0033】
本発明において用いる非イオン性界面活性剤としては、通常医薬品、化粧料等に用いられるものが挙げられる。
具体的には、例えば、POE(2〜50)オレイルエーテル、POE(2〜40)ステアリルエーテル、POE(2〜50)ラウリルエーテル、POE(1〜50)アルキルフェニルエーテル、POE(5〜30)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜20)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(5〜25)2−オクチルドデシルエーテル等のエーテル型活性剤、およびPOE(4〜100)硬化ヒマシ油、POE(3〜60)ヒマシ油、POE(2〜150)脂肪酸モノエステル、POE(2〜150)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステルなどのエステル型活性剤、さらにPOE(2〜60)グリセリルモノイソステアレート、POE(3〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(5〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型活性剤などのエチレンオキシド付加型界面活性剤、およびデカグリセリルテトラオレート、ジグリセリルジイソステアレート、デカグリセリルテトライソステアレート、デカグリセリルテトラステアレート、デカグリセリルヘプタオレート、デカグリセリルデカオレート、デカグリセリルデカイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノオレート等のグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤などが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0034】
本発明において好ましい非イオン性界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン化合物が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、下記の一般式(I)〜(VII)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0035】
【化1】



【0036】
【化2】



【0037】
【化3】



【0038】
【化4】



【0039】
【化5】



【0040】
【化6】



【0041】
【化7】



(一般式(I)〜(VII)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基、R’は水素または炭素数1〜12のアルキル基、pは1〜50の整数、mおよびaは1〜100の整数、n,q,x,zは1〜50の整数、tおよびyは0〜50の整数。)
【0042】
上記一般式(I)〜(VII)で表されるポリエーテル変性シリコーン化合物を用いると、本発明にかかる油性ゲル組成物に含まれる油分がシリコーン油である場合に、特に好適である。本発明においては、前記に表されるポリエーテル変性シリコーン化合物のうち、1種以上または2種以上が任意に選択して用いられることが好適である。
上記一般式(I)〜(VII)で表される化合物として、市販のものを用いることも可能であり、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体などを挙げることができる。
なお、本発明にかかる油性ゲル組成物において、シリコーン油の好適な配合量はゲル組成物全量中20〜90質量%である。
【0043】
本発明にかかる油性ゲル組成物において、非イオン性界面活性剤の好適な配合量は該油性ゲル組成物全量中0.1〜10質量%である。
また、該油性ゲル組成物中において、板状構造を有する有機変性粘土鉱物に対する非イオン性界面活性剤の質量比は、板状構造有機変性粘土鉱物:非イオン性界面活性剤=1:1〜10:1であることが好ましい。
非イオン界面活性剤が少なすぎるとその効果が十分発揮されず、一方、非イオン界面活性剤を過剰に用いても効果の顕著な向上は期待できず、かえって使用感などに悪影響を及ぼすことがある。
【0044】
本発明にかかる油性ゲル組成物において、板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の好適な配合量は該油性ゲル組成物全量中0.25〜30質量%であり、さらに好ましくは0.25〜10質量%である。最も好ましくは、0.5〜5質量%である。0.25質量%未満であると、配合効果が見られず、また30質量%を超えて配合すると非イオン性界面活性剤との併用で固いゲルが形成される傾向にあり、増量による効果の向上も認められない。
【0045】
本発明において、ゾル組成物や油性ゲル組成物には、特に問題のない限りその他の任意の油性成分を含有することも可能であり、また、必要に応じてシリコーン油やその他の油分を添加してもよい。
例えば、本発明にかかる好適な油性ゲル組成物として、板状粒子構造の有機変性粘土鉱物、ポリエーテル変性シリコーン化合物、シリコーン油及びCOOH基及び/又はOH基を分子内に有する油分を主成分として含むものが挙げられるが、これら以外の油分を加えることも可能である。
その他の油分としては、例えば、炭化水素油、エステル油、植物性油脂、動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。なお、これら油分は、シリコーン油に溶解して全体として常温(20℃)で均一な液状となることが好ましい。
また、本発明にかかる油性ゲル組成物において、油分の好適な配合量は油性ゲル組成物全量中70質量%以上である。
【0046】
(3)COOH/OH基含有油分
本発明においては、特にCOOH基及び/又はOH基を分子内に有する油分(本発明においては、COOH/OH基含有油分と言うことがある)を用いると、ゲル組成物やこれを用いたW/O乳化物の安定性を損なうことなく、粘度を低下させることができる。よって、油相中に前記有機変性粘土鉱物板状粒子及び非イオン性界面活性剤を含むW/O乳化物において、油相中にCOOH/OH基含有油分を用いることにより、これを用いなかった場合と同程度の乳化安定性を有するにもかかわらず、粘度が低くのびのよいW/O乳化物とすることができる。また、このW/O乳化物は、従来の有機変性粘土鉱物凝集体を用いた場合に比べても、のびやみずみずしさ、なめらかさなどの使用感も非常に高くなる。
この理由は明らかではないが、COOH/OH基含有油分が有機変性粘土鉱物板状粒子のゲルネットワーク構造を崩壊させることなくその結合力を弱めることが考えられる。
【0047】
このようなCOOH/OH基含有油分は、油性ゲル組成物中0.1〜5質量%、さらには0.5〜3質量%であることが好ましい。COOH/OH基含有油分が少なすぎるとその効果が十分得られないことがあり、一方過剰に配合した場合には顕著な効果は発揮されず、かえって乳化安定性や使用感に悪影響を及ぼすことがある。
【0048】
COOH/OH基含有油分としては通常医薬品や化粧料等に使用されるものであれば何れも用いることができ、シリコーン油に溶解可能な常温液状の油分がより好ましい。例えば、イソステアリン酸などの液状高級脂肪酸、イソステアリルアルコールなどの液状高級アルコール、高級脂肪酸、セスキイソステアリン酸ソルビタンなどの多価アルコール脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0049】
COOH/OH基含有油分を油性ゲル組成物に配合する場合、有機変性粘土鉱物の剥離処理の前、間、後の何れの段階でも添加することができるが、剥離処理後に添加する方が効果の点でより好ましい。
また、W/O乳化組成物に配合する場合には、COOH/OH基含有油分を乳化後に添加することもできるが、好ましくは乳化前に油相に添加する。
【0050】
(4)W/O乳化組成物
次に本発明にかかるW/O乳化組成物について説明する。
W/O型乳化組成物を構成する水相としては、水および水溶性成分が配合される。
一方、油相には、前記油性ゲル組成物が主成分として用いられる。
【0051】
本発明にかかるW/O型乳化組成物は、常法のW/O型乳化組成物の製造方法によって製造される。例えば、前記油性ゲル組成物を含む油相に水相を添加して乳化することにより得られる。
W/O型乳化組成物全量中、前記水相:油相は80:20〜5:95の割合であることが好ましい。
【0052】
本発明にかかる油性ゲル組成物又はW/O型乳化組成物には、化粧料に一般的に使用されるその他の成分を適宜配合することも可能である。
例えば、薬剤、各種界面活性剤、無機粉末、有機粉末、顔料、色素、保湿剤、増粘剤、金属封鎖剤、各種水溶性高分子、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明にかかる油性ゲル組成物又はW/O型乳化組成物は、従来の油性ゲル化粧料やW/O乳化化粧料の基剤として用いることができる。例えば、乳液、クリーム、洗浄料、パック、マッサージ用化粧料などのスキンケア化粧料;ファンデーション、口紅、頬紅、アイライナー、アイシャドウなどのメークアップ化粧料;サンスクリーン化粧料;ヘアトリートメントや整髪料などの毛髪化粧料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
以下、具体的に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0054】
有機変性粘土鉱物の形状制御による効果は例えば次のようにして調べられた。
ゾル組成物1−1〜1−4
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製).を15質量%、デカメチルシクロペンタシロキサンを85質量%混合した。この混合物に、直径1mmのガラスビーズを混合物と同体積添加した状態で、ビーズミルを用いて機械的に高いせん断力および/または衝撃力を加えることにより薄片化する処理を5分間、10分間、15分間と処理時間を各々変えて行い、ゾル組成物1−1〜1−3を得た。
また、比較例として、ガラスビーズを添加せず、ビーズミルの代わりにディスパーで10分間処理して、ゾル組成物1−4を得た。
【0055】
得られたゾル組成物に含まれる有機変性粘土鉱物の粒子形状を下記表1に示す。なお、平均厚さ、平均長径の測定は以下のように実施した。
(測定方法)
・平均厚さ
ゾル組成物をデカメチルシクロペンタシロキサンで十分希釈し、希釈液を乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡(S-4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。
・平均長径
ゾル組成物をデカメチルシクロペンタシロキサンで十分希釈し、粒度分布測定機(Microtrac VSR、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0056】
【表1】



【0057】
ディスパーによる通常の分散処理で得られたゾル組成物1−4では、図1のSEM写真のように、有機変性粘土鉱物は比較的大きな粒状(凝集体)のままであった。一方、ビーズミルによる高分散処理で得られたゾル組成物1−1〜1−3では図2のように有機変性粘土鉱物は微細な板状粒子に剥離されていた。
【0058】
油性ゲル組成物1−1〜1−4
さらに、上記のとおり調製した有機変性粘土鉱物のゾル組成物1−1〜1−4を用い、油性ゲル組成物1−1〜1−4を調製した。製造例を以下に示す。
(油性ゲル組成物1−1〜1−4)
前記有機変性粘土鉱物のゾル組成物1−1〜1−4を各々33.33重量部、ポリオキチエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)タイプ、ポリオキシエチレン含有率 20%、粘度400〜800cs、HLB4.5、R’=H、p=3、y=0)2.5重量部、デカメチルシクロペンタシロキサン(3.5〜4.5cs)64.17重量部をディスパーで10分間、分散処理して、油性ゲル組成物1−1〜1−4を得た(各油性ゲル組成物中の有機変性粘土鉱物濃度は5質量%)。
【0059】
前記油性ゲル組成物1−1〜1−4に関し、膨潤性を調べた。その結果を下記表2に示す。膨潤性の評価方法および評価基準は以下のとおりである。
(油性ゲル組成物の膨潤性)
透明ガラス瓶にサンプルを入れ、目視により以下の基準のもとに、各油性ゲル組成物を評価した。
○:液相の分離など変化が見られない。
△:ゲル組成物全体の1/5以下が分離している。
×:ゲル組成物全体の1/5以上が分離している。
【0060】
【表2】



【0061】
ゾル組成物1−1〜1−4に非イオン性界面活性剤を加えると何れも粘度が上昇した。
しかしながら、上記表2の結果から明らかなように、ディスパー処理して得られた油性ゾル組成物1−4と非イオン性界面活性剤とを用いて得られた油性ゲル組成物1−4は膨潤性が劣るものであった。
一方、ビーズミルにより処理して得られたゾル組成物1−1〜1−3と非イオン性界面活性剤とを用いて得られた油性ゲル組成物1−1〜1−3では、油性ゲル組成物1−4に比して高い膨潤性が得られ、また、ゾル組成物の処理時間を10分間、15分間と延ばすにつれて、油性ゲル組成物の膨潤性が向上した。これは、表1のように、有機変性粘土鉱物の微細な剥離が処理時間と共に進行しているためと考えられる。特に、油性ゲル組成物1−3に含まれる有機変性粘土鉱物は、平均厚さが0.1μm以下であり、平均長径も5μm程度の分散性の良好な板状粒子構造であった。
【0062】
油性ゲル組成物1−4に含まれる有機変性粘土鉱物粒子の形状は粒状であり、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物とは異なる形状である。
前記板状粒子構造の有機変性粘土鉱物では、板状粒子表面(平坦面)が疎水性、端面が親水性を帯びる傾向にあるため、シリコーン油中において親水性部分の端面の露出を減らすように配置される。模式的に表すと図3のようなゲルネットワークを形成し、高い膨潤性が発揮されると考えられる。
一方、粒状の有機変性粘土鉱物粒子では、親疎水性部分の寄与によるゲルネットワークが形成され難いため、膨潤性が劣るものと考えられる。
【0063】
また、ゾル組成物1−1〜1−3に含まれる有機変性粘土鉱物は、処理時間によって板状粒子の平均長径および分散性の程度が異なるものであるが、凡そ15分間以上の処理時間で薄片化されることにより、優れた膨潤性が得られることが上記の結果から明らかである。
【0064】
前記油性ゲル組成物1−3および1−4の製造過程において、非イオン性界面活性剤であるポリエーテル変性シリコーン添加前と添加後の有機変性粘土鉱物の分散状態を、SEM写真で撮影した(図4および図5を参照)。
この写真から、本発明にかかるゾル組成物に含まれる板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を用いて油性ゲル組成物を調製した場合(図4)、ポリエーテル変性シリコーン化合物添加前と後の両者において、粘土鉱物の粒子は微細化された状態で分散していることが明らかである。
【0065】
一方、通常の分散処理を行なった粒状(凝集体)の有機変性粘土鉱物を用いた場合には(図5)、ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加によって有機変性粘土鉱物凝集体の微細化が若干進行するものの、依然として大きな凝集体が確認され、分散状態がよいものとは認められない。
なお、このような傾向は、有機変性粘土鉱物を非イオン性界面活性剤の存在下において油分中で剥離処理して得られた油性ゲル組成物においても同様である(下記油性ゲル組成物2−1〜2−4参照)。
【0066】
油性ゲル組成物2−1〜2−4
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)を各々5重量部、ポリオキチエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)タイプ、ポリオキシエチレン含有率 約20%、粘度400〜800cs、HLB4.5、R’=H、p=3、y=0)2.5重量部、デカメチルシクロペンタシロキサン92.5重量部に対して、ガラスビーズ(またはジルコニアビーズなど)を同体積加え、ビーズミルを用いて機械的せん断力および/または衝撃力によって攪拌、均一に混合する時間を5分、10分、15分として油性ゲル組成物2−1−2〜3を得た。
また、比較例として、ビーズを用いずビーズミルの代わりにディスパーによる通常の分散処理を10分間行なうことによって、油性ゲル組成物2−4を得た。
【0067】
油性ゲル組成物2−1〜2−4に含まれる有機変性粘土鉱物の粒子形状をSEM観察したところ、油性ゲル組成物2−4中の有機変性粘土鉱物は、前記油性ゲル組成物1−4と同様に凝集体のままであったが、油性ゲル組成物2−1〜2−3中の有機変性粘土鉱物は、前記油性ゲル組成物1−1〜1−3と同様の微細な板状粒子構造を有していた。
【0068】
前記油性ゲル組成物2−1〜2−4に関し、膨潤性を調べた。その結果を下記表3に示す。
【表3】



【0069】
上記表3の結果から明らかなように、ディスパー処理で得られる油性ゲル組成物2−4は膨潤性が劣るものであった。
一方、ビーズミルにより処理した油性ゲル組成物2−1〜2−3は、処理時間を10分間、15分間と延ばすにつれて膨潤性が向上し、特に油性ゲル組成物2−3に含まれる有機変性粘土鉱物は、平均厚さが0.1μm以下、平均長径が5μm程度である分散性の良好な板状構造であった。
【0070】
油性分散物3−1〜3−4
さらに、粘度と膨潤性を比較するために、表4の組成の油性分散物を調製した。調製方法は次の通り。
(油性分散物3−1〜3−3)
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)及びセスキオレイン酸ソルビタン以外の成分を混合し、この混合物に対して、ジルコニアビーズ(直径1mm)を同体積加え、ビーズミルを用いて15分間処理し、これにセスキオレイン酸ソルビタンを添加してディスパーで均一に混合し、油性分散物を得た。油性分散物中の有機変性粘土鉱物は微細な板状粒子であった。
(油性分散物3−4)
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)及びセスキオレイン酸ソルビタン以外の成分を混合し、この混合物をディスパーを用いて15分間処理し、これにセスキオレイン酸ソルビタンを添加してディスパーで均一に混合し、油性分散物を得た。油性分散物中の有機変性粘土鉱物は比較的大きな凝集体のままであった。
【0071】
組成物の粘度は次のように測定した。
(粘度)
30℃の恒温槽で1時間静置した後に、単一円筒型回転粘度計(芝浦システム株式会社)を用いて12rpmの条件で測定した(ローターNo.3またはNo.4)。
【0072】
【表4】



【0073】
表4のように、ビーズミルによる高分散処理で調製した場合、有機変性粘土鉱物のみを分散させた油性分散物3−1は低粘度ゾル状で膨潤性も低い。これに、ポリエーテル変性シリコーン化合物などの非イオン性界面活性剤を併用すれば、油性分散物3−2のように粘度や膨潤性が非常に高いゲル組成物となる。
これに対し、さらにセスキオレイン酸ソルビタンを併用すると、油性分散物3−3のように組成物の膨潤性は高く維持したままで粘度が著しく低下した。
一方、油性分散物3−3と基本的には同じ組成でも、ディスパーによる通常の分散処理で調製した油性分散物3−4(有機変性粘土鉱物:凝集体)では、低粘度ではあるものの膨潤性において著しく劣っていた。
さらに、W/O乳化組成物を調製して比較した。
【0074】
乳化物3−1〜3−4
表5の組成のW/O乳化組成物を調製した。調製方法は次の通り。
(乳化物3−1〜3−3)
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)及び他の油相成分を用いて、前記油性分散物3−1〜3−3の方法と同様にペイントシェーカーにより油性分散物を調製した(有機変性粘土鉱物:板状粒子)。これにイオン交換水を徐添しながらディスパーで乳化して、乳化物を得た。
(乳化物3−4)
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)及び他の油相成分を用いて、前記油性分散物3−4の方法と同様にディスパーにより油性分散物を調製した(有機変性粘土鉱物:凝集体)。これにイオン交換水を徐添しながらディスパーで乳化して、乳化物を得た。
【0075】
乳化物の安定性は次のようにして評価した。
(安定性)
試料を各条件で保存し、外観変化を下記の評価基準に従い、目視によって評価した。
A:液相の分離、凝集など変化が見られない。
B:表層に若干の分離が認められる。
C:乳化組成物全体の1/5以下が分離している。
D:乳化組成物全体の1/5以上が分離している。
【0076】
【表5】



【0077】
表5に示すように、セスキオレイン酸ソルビタンを用いて高分散処理した油性分散物を油相とする乳化物3−3では、セスキオレイン酸ソルビタンを用いなかった場合(乳化物3−2)と同等の乳化安定性を維持しながら、乳化物の粘度が低下し、のびが向上した。
一方、乳化物3−3と同じ組成でも通常の分散処理による油性分散物を油相とする乳化物3−4では、乳化物3−3に比べて粘度が著しく高くなるにもかかわらず乳化安定性が低く、のびやみずみずしさ、なめらかさなどの使用感にも劣っていた。
【0078】
図6はディスパーによる通常の分散処理で得られた油性分散物3−4のSEM写真、図7はビーズミルによる高分散処理で得られた油性分散物3−3のSEM写真である。
通常分散処理による分散物3−4では、図6のように、有機変性粘土鉱物は比較的大きな粒状の凝集体(平均粒子径約20μm、平均厚さは2μ以上)であるのに対し、高分散処理による分散物3−1〜3−3では、図7のように有機変性粘土鉱物が微細な板状粒子(平均厚さ0.1μm以下、平均長径10μm以下)となっていた。
【0079】
図8は、セスキイソステアリン酸ソルビタンを初めとする各種被験油分の添加効果について調べた結果である。
すなわち、油性分散物3−3(高分散処理)において、セスキオレイン酸ソルビタンの代わりに異なる油分を用い、さらにはその配合量も変えて油性分散物を調製(増減はデカメチルシクロペンタシロキサンで調整)し、得られた油性分散物の粘度を比較した(油性分散物3−3a〜3−3d)。用いた被験油分a〜dは次の通り。
被験油分a:セスキオレイン酸ソルビタン
被験油分b:8−メチルヘプタデカン酸
被験油分c:イソステアリルアルコール
被験油分d:2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル
【0080】
図8からわかるように、高分散処理により得られた油性分散物において、被験油分a〜cのようにCOOH基やOH基を分子内に有する油分を用いることにより、分散物粘度が顕著に低下した(分散物3−3a〜3−3c)。
これに対して、被験油分dのようにCOOH基やOH基を分子内に持たない油分では、配合量を増量しても粘度にほとんど変化がなかった(分散物3−3d)。
【0081】
また、図8の分散物3−4aは、前記油性分散物3−4(通常分散処理)において、セスキオレイン酸ソルビタン(被験油分a)の配合量を変えて調製した油性分散物の結果を示している。通常分散処理で得られた油性分散物3−4aでは、分散物3−3aと同じ成分を用いているにもかかわらず、COOH/OH基含有油分による粘度低減効果は認められなかった。
【0082】
SEM観察によれば、通常分散処理した分散物3−4aでは何れのCOOH/OH基含有油分濃度でも、有機変性粘土鉱物は図6のような比較的大きな粒状(凝集体)であったのに対し、高分散処理した分散物3−3a〜3−3dでは何れのCOOH/OH基含有油分濃度でも、図7のような微細な板状粒子となっていた。
【0083】
高分散処理により有機変性粘土鉱物が微細な板状粒子に剥離されると、板状粒子表面は疎水性、板状粒子端面は親水性を帯びる傾向がある。このため、シリコーン油中において板状粒子が親水性部分である端面を減らすように配置される。その結果、図3の模式図に示すようなゲルネットワークを形成し、膨潤性が発揮されるものと考えられる。そして、被験油分の種類や濃度によって有機変性粘土鉱物の粒子形状にほとんど変化がないにもかかわらず、COOH基やOH基を分子内に有する油分でのみ分散物の粘度が低下することから、これら油分が粘土鉱物の板状粒子の親水性部位に作用し、板状粒子同士のゲルネットワークを壊さずにインタラクションを弱めることにより粘度が低下するのではないかと考えられる。
【0084】
一方、通常の分散処理で得られた分散物では有機変性粘土鉱物が剥離されずに大きな凝集体のままであり、高分散処理して得られた分散物とは分散状態が明らかに異なる。従って、このような粘土鉱物凝集体では親水性部位がほとんど表出しておらず、COOH基やOH基を分子内に有する油分による影響がほとんどないために、高分散処理時の場合のような粘度低下を生じないものと考えられる。
【0085】
以上のように、有機変性粘土鉱物板状粒子の油性分散物は、非イオン性界面活性剤を含まない場合には通常低粘度ゾル状であり、これをW/O乳化組成物の油相に用いた場合には十分な乳化安定性は得られない。
一方、このような油性分散物に非イオン性界面活性剤を併用すれば高粘度のゲル状となり、これをW/O乳化組成物の油相に用いた場合には、非常に高い乳化安定性を得ることができる。
しかしながら、油相が高粘度であるためにW/O乳化組成物も高粘度となり、これを化粧料として用いようとすると、のびにおいて十分とは言えない。
【0086】
これに対し、有機変性粘土鉱物板状粒子と非イオン性界面活性剤とを含む油性ゲル組成物にCOOH基及び/又はOH基を分子内に有する油分を用いることにより、油性ゲル組成物さらにはこれを用いたW/O乳化物の粘度が低下するにもかかわらず、乳化安定化効果が保持され、乳化安定性とのびにおいて優れたW/O乳化物を得ることができる。
【0087】
乳化物3−5〜3−9
さらに、高分散処理で得られた有機変性粘土鉱物の油性分散物を油相とするW/O乳化物において、水相比率を変えて検討を行った。結果を表6に示す。乳化物の調製方法は次の通り。
(乳化物3−5〜3−9)
前記油性分散物3−3と同様にビーズミルにより高分散処理して得られた油性分散物を得た。油性分散物中の有機変性粘土鉱物は微細な板状粒子であった。
この油性分散物を油相とし、これに水相を徐添しながらディスパーで乳化して、W/O乳化組成物を得た。
【0088】
表6に示すように、何れのW/O乳化組成物においても、COOH/OH基含有油分を含む方が、これを含まない場合に比して乳化物の粘度が低くなるにもかかわらず高い乳化安定性が維持された。また、乳化物ののびもCOOH/OH基含有油分を含む方が優れていた。
【0089】
【表6】



【0090】
乳化物3−10〜3−12
また、通常分散処理で得られた油性分散物を油相とするW/O乳化物においても、水相比率を変えて調べた。
表7の乳化物は、前記油性分散物3−4と同様に通常分散処理して得られた油性分散物(有機変性粘土鉱物:凝集体)を油相とし、これに水相を徐添しながらディスパーで乳化して得られたW/O乳化組成物である。
表7からわかるように、通常分散処理で得られた油性分散物を油相としたW/O乳化組成物では、COOH/OH基含有油分を配合した方が粘度が高くなり、表6とは逆の傾向を示した。その理由は明らかではないが、有機変性粘土鉱物分散粒子の形状の違いが原因の一つであると考えられる。
また、表6と表7のCOOH/OH基含有油分を配合した系で比較した場合には、有機変性粘土鉱物が板状粒子である場合の方が、凝集体である場合に比して低粘度でのびがよく、みずみずしさ、なめらかさなどの使用感にも優れていた。
【0091】
【表7】



【0092】
油性分散物3−13〜3−14及び乳化物3−13〜3−14
さらに、COOH/OH基含有油分の添加方法についても検討を行った。
下記表8において、分散物3−14は、前記分散物3−3と同様に、セスキオレイン酸ソルビタン以外の成分で高分散処理した後にセスキオレイン酸ソルビタンを添加して得られた有機変性粘土鉱物板状粒子の油性分散物である(後添加)。
これに対し、分散物3−13は、基本的には分散物3−14と同じ組成であるが、セスキオレイン酸ソルビタンをその他成分と一緒に混合した後で高分散処理して得られた有機変性粘土鉱物板状粒子の油性分散物である(前添加)。
【0093】
表8のように、有機変性粘土鉱物の高分散処理後にCOOH/OH基含有油分を添加した場合(後添加)には、高分散処理前に添加した場合(前添加)に比して、油性分散物における粘度がより低下した。
【0094】
【表8】



【0095】
また、表9は、分散物3−13又は分散物3−14を75質量部に対し、イオン交換水25質量部を徐添しながらディスパーで乳化して得られたW/O乳化組成物である。なお、乳化粒子径は次のようにして測定した。
(乳化粒子径)
各条件で保存後の試料の乳化粒子径を、光学顕微鏡(OLYMPUS BM60)を用いて測定した。
表9に示すように、COOH/OH基油分を前添加した分散物3−13を用いた乳化物3−13よりも、後添加して得られた分散物3−14を用いた乳化物3−14の方が粘度が顕著に低下し、また平均乳化粒子径も小さくなった。
従って、本発明においてCOOH基及び/又はOH基を有する液状油分の効果を十分発揮させるためには、有機変性粘土鉱物の高分散処理後に該油分を添加することがより好適である。
【0096】
【表9】


【0097】
化粧料3−1〜3−2 W/Oファンデーション
表10の組成で、W/Oファンデーションを製造した。製造方法は次の通りである。
(化粧料3−1)
有機変性粘土鉱物をシリコーン油中でガラスビーズとともにビーズミルにより高分散処理して得られたゾル分散物中へ他の油性成分、および粉末をそれぞれ添加し、ホモミキサーを用いて分散した。この油性分散物を油相とし、これに水相を徐添しながらホモミキサーで乳化して、W/Oファンデーションを得た。
(化粧料3−2)
油性成分、および粉末をそれぞれ添加し、ホモミキサーを用いて分散した。この油性分散物を油相とし、これに水相を徐添しながらホモミキサーで乳化して、W/Oファンデーションを得た。
【0098】
また、使用感について、次のように評価した。
(使用感)
専門パネル10名により、肌上に塗布した際の使用感の各項目についてアンケートを行い、下記の基準で評価した。
○:良いと回答したパネルが8〜10名
△:良いと回答したパネルが5〜7名
×:良いと回答したパネルが0〜4名
【0099】
表10からわかるように、高分散処理による有機変性粘土鉱物板状粒子分散物を用いたW/O乳化化粧料(化粧料3−1)では、基本的には同じ組成であるにもかかわらず、通常分散処理による有機変性粘土鉱物凝集体分散物を用いたW/O乳化化粧料(化粧料3−2)に比して粘度が低いにもかかわらず、乳化安定性が高かった。また、のびの軽さやみずみずしさ、なめらかさに優れ、カバー力、仕上がりの均一さにおいても優れるものであった。
【0100】

【表10】



【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】市販の有機変性粘土鉱物のSEM写真図である。
【図2】板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物のSEM写真図である。
【図3】凝集体又は板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物のシリコーン油中におけるゲルネットワークの形成を模式的に示した図である。
【図4】市販の有機変性粘土鉱物を高分散処理により油性ゲル組成物を調製した場合(ゲル組成物1−3)の、ポリエーテル変性シリコーン化合物添加前と後の分散状態を示す写真図である。
【図5】市販の有機変性粘土鉱物を通常の分散処理により油性ゲル組成物を調製した場合(ゲル組成物1−4)の、ポリエーテル変性シリコーン化合物添加前と後の分散状態を示す写真図である。
【図6】市販の有機変性粘土鉱物を通常の分散処理して得られた油性分散物3−4のSEM写真である。
【図7】市販の有機変性粘土鉱物を高分散処理して得られた油性分散物3−3のSEM写真である。
【図8】油性分散物中のCOOH/OH基含有油分濃度による粘度変化を示す図である。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社資生堂
【出願日】 平成19年8月9日(2007.8.9)
【代理人】 【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
【公開番号】 特開2009−40720(P2009−40720A)
【公開日】 平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願番号】 特願2007−207472(P2007−207472)