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【発明の名称】 耐滑性シート及びそれを靴底に使用した耐滑性靴
【発明者】 【氏名】八木 強
【氏名】二井 亮考
【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底に、複数の凸部が形成された耐滑性シートを使用した耐滑性靴であって、
前記靴底に使用された耐滑性シートには、足幅方向に等間隔で足長方向に平行に形成された二以上の直線状の溝が形成されるとともに、
前記複数の凸部は、横断面が略二等辺三角形であり、前記溝のうち隣接する二つの溝間に一列で、しかも前記略二等辺三角形の底辺を前記足長方向に平行で前記足長方向に隣接する凸部同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列され、
しかも、前記凸部の略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリットを形成してなることを特徴とする耐滑性靴。
【請求項2】
前記複数の凸部を、前記足幅方向に隣接する二つの凸部における前記略二等辺三角形の頂角が前記溝に直交する直線上に位置するように配列したことを特徴とする請求項1に記載の耐滑性靴。
【請求項3】
前記複数の凸部を、前記足幅方向に隣接する二つの凸部における前記略二等辺三角形の頂角が前記溝に直交する直線上に位置しないように配列したことを特徴とする請求項1に記載の耐滑性靴。
【請求項4】
靴底に、複数の凸部が形成された耐滑性シートを使用した耐滑性靴であって、
前記靴底に使用された耐滑性シートには、足長方向に等間隔で足幅方向に平行に形成された二以上の直線状の溝が形成されるとともに、
前記複数の凸部は、横断面が略二等辺三角形であり、前記溝のうち隣接する二つの溝間に一列で、しかも前記略二等辺三角形の底辺を前記足幅方向に平行で前記足幅方向に隣接する凸部同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列され、
しかも、前記凸部の略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリットを形成してなることを特徴とする耐滑性靴。
【請求項5】
前記複数の凸部を、前記足長方向に隣接する二つの凸部における前記略二等辺三角形の頂角が前記溝に直交する直線上に位置するように配列したことを特徴とする請求項4に記載の耐滑性靴。
【請求項6】
前記複数の凸部を、前記足長方向に隣接する二つの凸部における前記略二等辺三角形の頂角が前記溝に直交する直線上に位置しないように配列したことを特徴とする請求項4に記載の耐滑性靴。
【請求項7】
前記靴底に使用された耐滑性シートのつま先側と踵側の間に、前記複数の凸部が設けられていない不踏部を形成したことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の耐滑性靴。
【請求項8】
前記不踏部より踵側にある前記溝の延びる方向に対して、前記不踏部よりつま先側にある前記溝の延びる方向を親指側に傾斜させたことを特徴とする請求項7に記載の耐滑性靴。
【請求項9】
前記不踏部のつま先側境界線を、前記不踏部の踵側境界線に対して外側から内側にかけて間隔を狭くするように傾斜させたことを特徴とする請求項7又は8に記載の耐滑性靴。
【請求項10】
前記スリットの長さを、前記凸部の略二等辺三角形の底辺中央と頂角間を結ぶ距離の略1/3〜2/3にしたことを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一つに記載の耐滑性靴。
【請求項11】
少なくとも片面に、複数の凸部が形成された耐滑性シートであって、
前記片面には、縦方向に等間隔で横方向に平行に形成された二以上の直線状の溝が形成されるとともに、
前記複数の凸部は、横断面が略二等辺三角形であり、前記溝のうち隣接する二つの溝間に一列で、しかも前記略二等辺三角形の底辺を前記横方向に平行で前記横方向に隣接するもの同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列され、
前記凸部の略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリットを形成してなることを特徴とする耐滑性シート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水、油、溶剤、液状石鹸等の液体が付着して滑りやすい状態にある床面に対して滑り難くした耐滑性シート及びそれを靴底に使用した耐滑性靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水、油、溶剤、石鹸等の液体が付着した床面が滑りやすいのは、床面に敷かれたシートとそれを人が踏む靴底の間、又はシートを敷いていない場合には靴底と床面の間に液体が介在するからであり、この液体をシート又は靴底の下部より速やかに排出することによって滑りを防止することができる。そこで、一般的に耐滑性シートや耐滑性靴は、シートと床面の間、あるいは靴底と床面の間に液体を排出させるための溝と凸部を設けてある。
【0003】
しかし、人がシート等を踏む際にはシートや靴底に設けられた凸部が倒れ、その倒れた凸部の接地面と床面の間に液体が入るため逆に滑りやすくなるといった問題が生じる。
また、凸部の倒れをなくそうと、凸部も含め硬い材質で耐滑性シートや耐滑性靴を製作すると、凸部表面のグリップ力が低下して、滑りやすくなる。
【0004】
そこで、シートや靴に関して、耐滑性を高めるために様々な提案がされている。
このようなものには、横断面がV字形状の凸部を複数有し、それら凸部を所定間隔を設けて並べてなる耐滑性靴が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3959648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された耐滑性靴では、靴底にある液体を容易に排出できる方向と、そうではない方向がある(方向依存性がある)。
例えば、特許文献1に記載の発明は、横断面がV字形状の凸部を足長方向に所定間隔を設けて並べ、それを足幅方向に複数列配置する構成であるので、V字を形成する二本の壁部で囲まれた箇所に液体が溜まってしまう。すなわち、V字の開口部となる前方向には液体が流れやすいが、残りの3方向(後方向、右方向、左方向)は壁部により液体の流れが堰き止められる。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、排水性に関して方向依存性の無い耐滑性シート及びそれを靴底に使用した耐滑性靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の靴は、靴底(1)に、複数の凸部(2)が形成された耐滑性シート(8)を使用した耐滑性靴であって、靴底(1)に使用された耐滑性シート(8)には、足幅方向に等間隔で足長方向に平行に形成された二以上の直線状の溝(3)が形成されるとともに、複数の凸部(2)は、横断面が略二等辺三角形であり、溝(3)のうち隣接する二つの溝(3)間に一列で、しかも略二等辺三角形の底辺を足長方向に平行で足長方向に隣接する凸部(2)同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列され、しかも、凸部(2)の略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリット(4)を形成してなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の靴は、複数の凸部(2)を、足幅方向に隣接する二つの凸部(2)における略二等辺三角形の頂角が溝(3)に直交する直線上に位置するように配列したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の靴は、複数の凸部(2)を、足幅方向に隣接する二つの凸部(2)における略二等辺三角形の頂角が溝(3)に直交する直線上に位置しないように配列したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の靴は、靴底(1)に、複数の凸部(2)が形成された耐滑性シート(8)を使用した耐滑性靴であって、靴底(1)に使用された耐滑性シート(8)には、足長方向に等間隔で足幅方向に平行に形成された二以上の直線状の溝(3)が形成されるとともに、複数の凸部(2)は、横断面が略二等辺三角形であり、溝(3)のうち隣接する二つの溝(3)間に一列で、しかも略二等辺三角形の底辺を足幅方向に平行で足幅方向に隣接する凸部(2)同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列され、しかも、凸部(2)の略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリット(4)を形成してなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の靴は、複数の凸部(2)を、足長方向に隣接する二つの凸部(2)における略二等辺三角形の頂角が溝(3)に直交する直線上に位置するように配列したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の靴は、複数の凸部(2)を、足長方向に隣接する二つの凸部(2)における略二等辺三角形の頂角が溝(3)に直交する直線上に位置しないように配列したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の靴は、靴底(1)に使用された耐滑性シート(8)のつま先側と踵側の間に、複数の凸部(2)が設けられていない不踏部(5)を形成したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の靴は、不踏部(5)より踵側にある溝(3)の延びる方向に対して、不踏部(5)よりつま先側にある溝(3)の延びる方向を親指側に傾斜させたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の靴は、不踏部(5)のつま先側境界線を、不踏部(5)の踵側境界線に対して外側から内側にかけて間隔を狭くするように傾斜させたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に記載の靴は、スリット(4)の長さを、凸部(2)の略二等辺三角形の底辺中央と頂角間を結ぶ距離の略1/3〜2/3にしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に記載の耐滑性シート(8)は、少なくとも片面に、複数の凸部(2)が形成された耐滑性シート(8)であって、片面には、縦方向に等間隔で横方向に平行に形成された二以上の直線状の溝(3)が形成されるとともに、
複数の凸部(2)は、横断面が略二等辺三角形であり、溝(3)のうち隣接する二つの溝(3)間に一列で、しかも略二等辺三角形の底辺を横方向に平行で横方向に隣接するもの同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列され、凸部(2)の略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリット(4)を形成してなることを特徴とする。
【0018】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された耐滑性靴によれば、靴底に使用された耐滑性シートには、足幅方向に等間隔で足長方向に平行に形成された二以上の直線状の溝が形成されているので、靴を履いてユーザが前進するとき、液体が溝を通じて、後方の踵側端部から靴底外へ速やかに排出されるので、排出された液体が再び靴底と床面の間に入ることもない。
このように、滑り原因となる液体は靴底と床面の間に残らないので、優れた耐滑性靴が得られる。
また、凸部は隣接する二つの溝間に一列で配列され、しかも凸部同士は所定間隔をあけて互い違いにするように配列されているので、特許文献1で示したように、液体が靴底に留まる部位はない。つまり、液体は、溝及び凸部間の間隔を介して円滑に靴底外に流れ、どの方向に対しても、液体の流れを妨げるものが無いので耐滑性に優れる。
【0020】
それに加え、凸部にはスリットが設けられているので、スリットを境に、凸部の片側が倒れたとしても、もう片側が倒れないので床面とのグリップ力を保持できる。
また、凸部の接地面に付着した液体は、直接溝に流れ込むだけではなく、スリットにも流れ込む場合があるが、スリットの中に入った液体は、スリットと連通されている溝より靴底外へ排出されるので、耐滑性に優れる。
【0021】
請求項2に記載の耐滑性靴によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、複数の凸部を、足幅方向に隣接する二つの凸部における略二等辺三角形の頂角が溝に直交する直線上に位置するように配列したので、同じ向きの凸部が足幅方向に並んでいる。
このように凸部の向きが揃っているので、向きが揃っていないものと比較して、凸部を倒す力に対して抵抗力が強くなる。すなわち、歩行時により高いグリップ力を得ることができ、滑りにくくなる。
【0022】
請求項3に記載の耐滑性靴によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、複数の凸部を、足幅方向に隣接する二つの凸部における略二等辺三角形の頂角が溝に直交する直線上に位置しないように配列しており、これは、複数の凸部の略二等辺三角形の頂角が、隣り合う溝間にある複数の凸部の頂角とずれているだけなので、靴底全体としては、凸部を倒す力に対する抵抗力が劣るものではない。すなわち、靴底全体としては、請求項1及び請求項2に記載の靴と同等の耐滑性が得られる。
【0023】
請求項4に記載の耐滑性靴によれば、靴底に使用された耐滑性シートには、足長方向に等間隔で足幅方向に平行に形成された二以上の直線状の溝を形成してなるので、靴を履いて前進するとき、液体は靴底に留まることなく靴底足幅方向端部から靴底外へ速やかに排出される。すなわち、足長方向に平行に延びる溝を通じて踵側端部より排出しなければならない請求項1乃至3に記載の耐滑性靴に比べ、本請求項に係る靴では、足長方向のどの位置に存在する液体でも、足長方向よりも移動距離の短い足幅方向から靴底外に排出されるので、より素早く排水できる。
また、請求項1に記載の発明と同様に、隣接する二つの溝間に一列で、凸部同士が互い違いにするように配列されているので、どの方向に対しても、液体の流れを妨げるものが無い。すなわち、溝や、互い違いに配列された凸部間を液体が円滑に流れ、しかも前後左右どの方向に対しても妨げる壁部等は無いので耐滑性がある。
【0024】
請求項5に記載の耐滑性靴によれば、請求項4に記載の発明の作用効果に加えて、複数の凸部を、足長方向に隣接する二つの凸部における略二等辺三角形の頂角が溝に直交する直線上に位置するように配列したので、同じ向きの凸部が足長方向に並んでいる。このように凸部の向きが揃っていると、凸部を倒す力に対して、向きが揃っていないときよりも抵抗力が強くなる。すなわち、歩行時により高いグリップ力を得ることができ、滑りにくくなる。
【0025】
請求項6に記載の耐滑性靴によれば、請求項4に記載の発明の作用効果に加えて、複数の凸部を、足長方向に隣接する二つの凸部における略二等辺三角形の頂角が溝に直交する直線上に位置しないように配列しており、これは、複数の凸部の略二等辺三角形の頂角が、隣り合う溝間にある複数の凸部の頂角とずれているだけなので、靴底全体としては、凸部を倒す力に対する抵抗力が劣るものではない。すなわち、靴底全体としては、請求項4及び請求項5に記載の靴と同等の耐滑性が得られる。
【0026】
請求項7に記載の耐滑性靴によれば、請求項1乃至6に記載の発明の作用効果に加えて、靴底のつま先側と踵側の間に、複数の凸部が設けられていない不踏部を形成したので、不踏部を形成しない場合と比較して、つま先側の溝にあった液体が排水されるまでに半分の時間で済む。すなわち、踵側端部まで液体を流す必要がないので、排水に係る時間が短くなる。
【0027】
請求項8に記載の耐滑性靴によれば、請求項7に記載の発明の作用効果に加えて、不踏部より踵側にある溝の延びる方向に対して、不踏部よりつま先側にある溝の延びる方向を親指側に傾斜させたので、グリップ力が向上する。すなわち、踵側に対し、つま先側の凸部の略二等辺三角形の向きが傾いているため、例えば、踵側の凸部が倒れたとしても、つま先側の凸部は倒れないので、靴底全体としてより滑りにくい。
【0028】
請求項9に記載の耐滑性靴によれば、請求項7又は8に記載の発明の作用効果に加えて、不踏部のつま先側境界線を、不踏部の踵側境界線に対して外側から内側にかけて間隔を狭くするように傾斜させたので、請求項1乃至3に係る発明では溝と垂直な境界線となり、また、請求項4乃至6に係る発明では溝又は凸部の底辺に平行な境界線となるので整然と凸部が配列された印象となる。
【0029】
請求項10に記載の耐滑性靴によれば、請求項1乃至9に記載の発明の作用効果に加えて、前記凸部の略二等辺三角形の底辺中央と頂角間を結ぶ距離の略1/3〜2/3にしたので、スリットが効果的に働く。すなわち、スリットが短過ぎればスリットの効果は無いに等しいし、長過ぎれば凸部の接地部分が少なくなるので、滑りやすくなる。
【0030】
請求項11に記載の耐滑性シートによれば、少なくとも片面に、縦方向に等間隔で横方向に平行に形成された二以上の直線状の溝が形成されているので、耐滑性シートを床面に敷いたとき、液体が溝を通じて、横方向端部から耐滑性シート外へ速やかに排出される。
また、隣接する二つの溝間に一列で、凸部同士が所定間隔をあけて互い違いにするように配列されているので、どの方向に対しても、液体の流れを妨げるものが無い。すなわち、溝や互い違いに向かい合った凸部間を液体が円滑に流れ、しかも前後左右どの方向に対しても妨げる壁部等は無いので耐滑性がある。
【0031】
それに加え、凸部にスリットが設けられているので、スリットを境に、凸部の片側が倒れたとしても、もう片側が倒れないので床面とのグリップ力を保持できる。
また、凸部の接地面に付着した液体は、直接溝に流れ込むだけではなく、スリットにも流れ込む場合があるが、スリットの中の液体は、スリットと連通されている溝より耐滑性シート外へ排出されるので耐滑性に優れる。
【0032】
なお、本発明のように、方向依存性がなくどの方向に対しても円滑に排水しうる構成に関しては、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第一実施形態)
図1乃至図5を参照して、本発明の第一実施形態に係る耐滑性靴を説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る耐滑性靴の靴底1を示す平面図である。図2は、図1に示す靴底1の凸部2に関する拡大斜視図である。図3の(a)は図2のA−A線断面図、(b)は図3のB−B線断面図である。
【0034】
この靴は、水、油、溶剤、液状石鹸等の液体7が付着して滑りやすい状態にある床面6に対して滑り難くするように、靴底1に複数の凸部2が形成された耐滑性シート8(後述する図8に示すもの)を使用した耐滑性靴に関するもので、この靴底1は、主に、凸部2、溝3、スリット4、不踏部5を備える。
【0035】
不踏部5は、靴底1のつま先側と踵側の間のいわゆる土踏まず部分に、足幅方向の左端から右端まで形成されている。すなわち、ここには複数の凸部2は設けられていない。
不踏部5の踵側境界線は、足幅方向に平行であり、不踏部5のつま先側境界線は、不踏部5の踵側境界線に対して靴底1の外側から内側にかけて間隔を狭くするように傾斜している。
【0036】
溝3は、靴底1に、足幅方向に等間隔で足長方向に平行に形成された二以上の直線状に形成されている。それぞれの溝3は、靴底1のつま先側端部から不踏部5との境界線までと、踵側端部から不踏部5との境界線まではそれぞれつながっており、溝3内には液体7の流れを遮る障壁は無い。
ただし、不踏部5より踵側にある溝3は足長方向に平行であるが、不踏部5よりつま先側にある溝3の延びる方向は、不踏部5より踵側にある溝3の延びる方向に対して親指側に傾斜している。
【0037】
また、溝3自体の幅は、不踏部5より踵側、不踏部5よりつま先側に関わらず全て等しい。しかも、隣接する溝3間も同様に全て等しい。
加えて、溝3の靴底1側奥の面は、靴底1厚さ方向に対して不踏部5と同じ高さである。
【0038】
複数の凸部2は、横断面が略二等辺三角形であり、それぞれの略二等辺三角形は合同で、略二等辺三角形の足幅方向高さは隣接する溝3の間隔と等しく、溝3のうち隣接する二つの溝3間に一列で、しかも略二等辺三角形の底辺を足長方向に平行で足長方向に隣接する凸部2同士を所定間隔をあけて互い違いにするように配列されている。すなわち、足幅方向を左右方向としたとき、底辺に対して頂角が右側にある凸部2に対し、その凸部2のつま先側に隣接する凸部2は、底辺に対して頂角が左側にある凸部2である。その次につま先側に隣接する凸部2は、底辺に対して頂角が右側にある凸部2である。
ここで、所定間隔とは、溝3の幅と略等しい。
【0039】
この凸部2の配置パターンが、靴底1のつま先側端部から不踏部5との境界線までと、踵側端部から不踏部5との境界線まで繰り返されており、しかも全ての隣接する溝3間において、同様の配列パターンが繰り返されている。
ただし、靴底1の外周端部では、靴底1の輪郭線で凸部2の配置パターンが分断されており、分断された箇所では凸部2は略二等辺三角形とはなっていない。
加えて、足幅方向に溝3を隔て隣接する二つの凸部2における略二等辺三角形の頂角は、溝3に直交する直線上に位置するように配列した。すなわち、略二等辺三角形の頂角の溝3を垂直に隔てた反対側は、足幅方向に隣接する略二等辺三角形の底辺中央となるように配置されている。
【0040】
凸部2の側壁面は、根元部分以外は靴底1に対して垂直である。一方、凸部2の根元部分は、凸部2の側壁面が靴底1に向かって広がっているが、これは靴底1の生産工程において、金型から靴底1を取り出すときに凸部2がちぎれて金型に残ることを防ぐために、金型のエッジを面取りをする手法であり、これは当事者間ではよく知られている(図3参照)。
【0041】
また凸部2は、略二等辺三角形における底辺中央から頂角側に向けてスリット4を形成してなる。
このスリット4の長さは、凸部2の略二等辺三角形の底辺中央と頂角間を結ぶ距離の略1/2、また、スリット4の幅は、溝3の幅の略1/2、スリット4の深さは凸部2の高さと等しい。また、このスリット4は、底辺中央において溝3と連通している。
【0042】
この耐滑性靴は、次に示すようにして耐滑機能を有する。これを図4を参照して説明する。図4において、(a)は図1に示す耐滑性靴の靴底1の踵側に向かって流れる液体7の流れ方を、(b)は図1に示す耐滑性靴の靴底1のつま先側に向かって流れる液体7の流れ方を、(c)は図1に示す耐滑性靴の靴底1の右側端部(図4において右側)に向かって流れる液体7の流れ方を、(d)は図1に示す耐滑性靴の靴底1の左側端部(図4において左側)に向かって流れる液体7の流れ方をそれぞれ示す。
【0043】
靴底1と床面6の間に介在する液体7が、踵側に向かって流れるときには、液体7は溝3内のつま先側から踵側に向かって流れる。隣接する溝3間に一列に互い違いになっている凸部2同士の間隔内にある液体7は、踵側斜め方向に向かって流れ、溝3の流れと合流する(図4(a)参照)。このとき、液体7の流れを妨げる障壁は無いので、円滑に流れる。
つま先側に向かって流れるときは、踵側に向かって流れるときと180°逆であるので、同様に円滑に流れる(図4(b)参照)。
【0044】
一方、靴底1と床面6の間に介在する液体7が右側端部に向かって流れるとき、溝3内の液体7はつま先側端部と踵側端部から靴底1外へ排出される。隣接する溝3間に一列に互い違いになっている凸部2同士の間隔内にある液体7は、その空間の右側に連通する溝3へ流れる(図4(c)参照)。このときも同様に、液体7の流れを妨げる障壁は無いので、円滑に流れる。
左側端部に向かって流れるときは、右側端部に向かって流れるときと180°逆であるので、同様に円滑に流れる(図4(d)参照)。
このように、略二等辺三角形の凸部2を、所定間隔をあけて互い違いに配置しているので、排水性において方向依存性が無い。すなわち、耐滑性に方向依存性が無い。
【0045】
また、不踏部5を設けていることにより、つま先部に介在する液体7を踵側端面まで排出する必要がない。すなわち、排出までの液体7の移動距離が短くなるので、素早く排出できる。
【0046】
また、ユーザが当該靴を履いて歩行すると、荷重のかかった凸部2が倒れるように変形する。これを図5を参照して説明する。図5において、(a)は耐滑性靴の凸部2にスリット4が入っていない場合の変形時の様子を示す拡大断面図であり、(b)は耐滑性靴の凸部2にスリット4が入った場合、すなわち、図1に示す耐滑性靴の凸部2の変形時の様子を示す拡大断面図である。
前述したように、倒れた凸部2の接地面と床面6との間に液体7が入り込むことが滑りの原因となる(図5(a)参照)が、このとき、凸部2にスリット4が設けられた場合には、スリット4を境に、凸部2の片側が倒れたとしても、もう片側が倒れないため床面6とのグリップ力を保持できる(図5(b)参照)。
【0047】
また、スリット4があることで、凸部2の接地面に付着した液体7は、直接溝3に流れ込むだけではなく、スリット4にも流れ込む場合があるが、スリット4の中の液体7は、スリット4と連通されている溝3より靴底1外へ排出されるので、スリット4内に滑りの原因となる液体が留まることはない。。
それに加え、不踏部5よりつま先側と踵側では、凸部2の略二等辺三角形の向きが異なっているため、これにより例えば踵側の凸部2に倒れやすい力が加わったとしてもつま先側の凸部2が倒れにくく、滑りにくい。
【0048】
(第二実施形態)
次に、図2、図6及び図7を参照して、本発明の第二実施形態に係る耐滑性靴を説明する。図2は、図6に示す靴底1の凸部2に関する拡大斜視図である。図6は、本発明の第二実施形態に係る耐滑性靴の靴底1を示す平面図である。図7は液体の流れ方向を示すもので、(a)は図6に示す耐滑性靴の靴底1の踵側に向かって流れる液体7の流れ方を、(b)は図6に示す耐滑性靴の靴底1のつま先側に向かって流れる液体7の流れ方を、(c)は図6に示す耐滑性靴の靴底1の右側端部に向かって流れる液体7の流れ方を、(d)は図6に示す耐滑性靴の靴底1の左側端部に向かって流れる液体7の流れ方をそれぞれ示す。
【0049】
第一実施形態と不踏部5の位置と凸部2との境界線の角度は同じである。また、溝3と凸部2の位置関係は第一実施形態と同じである。しかし靴底1と、溝3や凸部2の位置関係は、第一実施形態とは異なり、不踏部5よりつま先側と、不踏部5より踵側のそれぞれで第一実施形態の配列パターンを90°回転させたものとなっている。
【0050】
これによる、第一実施形態との効果の違いは次の通りである。
液体7が排出される際、本実施形態に係る靴では、靴底1の足幅方向端部から靴底1外へ速やかに排出される。すなわち、足長方向に平行に延びる溝3を通じて踵側端部より排出しなければならない第一実施形態の耐滑性靴に比べ、本実施形態に係る靴では、足長方向のどの位置に存在する液体7でも、足長方向よりも移動距離の短い足幅方向から靴底1外へ排出されるので、第一実施形態の耐滑性靴より素早く排水できる。すなわち、より耐滑性が優れる。
【0051】
また、凸部2の配列パターンは第一実施形態の配列パターンを90°回転させただけなので、第一実施形態と同様、排水性に方向依存性が無い。すなわち、耐滑性に方向依存性が無い(図7参照)。
【0052】
なお、スリット4の効果や、不踏部5よりつま先側と踵側で凸部2の略二等辺三角形の向きが傾いていることの効果は第一実施形態に等しい。
【0053】
(第三実施形態)
次に、図2及び図8を参照して、本発明の第三実施形態に係る耐滑性シート8を説明する。図2は、図8に示す耐滑性シート8の凸部2に関する拡大斜視図である。図8は、本発明の第三実施形態に係る耐滑性シート8を示す平面図である。
この耐滑性シート8は、水、油、溶剤、液状石鹸等の液体7が付着して滑りやすい状態にある床面6に対して滑り難くした耐滑性シート8に関するもので、第一実施形態及び第二実施形態に係る靴の靴底1における、溝3や凸部2の配列パターンは同じである。ただし、靴底1とは違い、不踏部5は設けられていない。
【0054】
この配列パターンが耐滑性シート8の表裏共に施されていることにより、床面6と耐滑性シート8間の、耐滑性シート8と靴間の耐滑性をそれぞれ保っている。すなわち、床面6に耐滑性シート8を敷いておけば、既存の靴を使用しても耐滑性を得ることができる。また、他の実施形態に係る靴と同様に、略二等辺三角形の凸部2を所定間隔をあけて互い違いに配置しているため、排水性、すなわち耐滑性に方向依存性が無い。なお、この配列パターンを耐滑性シート8の表裏のいずれか一方に施すだけでも耐滑性効果は得られる。
【0055】
なお、第一乃至第三実施形態に係る耐滑性靴や耐滑性シート8の凸部2の配列は、溝3に直交する一直線上において、凸部2の略二等辺三角形の頂角が全て同一の方向を向いているが、これに限られるものではなく、この直線上に並ぶ頂角は溝3を隔てて向かい合っていてもよい。
あるいは、複数の凸部2の略二等辺三角形の頂角を、溝3に直交する直線上に位置しないように配列することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第一実施形態に係る耐滑性靴の靴底を示す平面図である。
【図2】複数の凸部を示す拡大斜視図である。
【図3】(a)は図2のA−A線断面図、(b)は図2のB−B線断面図である。
【図4】(a)は図1に示す耐滑性靴の靴底の踵側に向かって流れる液体の流れ方を、(b)は図1に示す耐滑性靴の靴底のつま先側に向かって流れる液体の流れ方を、(c)は図1に示す耐滑性靴の靴底の右側端部に向かって流れる液体の流れ方を、(d)は図1に示す耐滑性靴の靴底の左側端部に向かって流れる液体の流れ方をそれぞれ示す平面図である。
【図5】(a)は耐滑性靴の凸部にスリットが入っていない場合の変形時の拡大断面図であり、(b)は耐滑性靴の凸部にスリットが入った場合の変形時の拡大断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る耐滑性靴の靴底を示す平面図である。
【図7】(a)は図6に示す耐滑性靴の靴底の踵側に向かって流れる液体の流れ方を、(b)は図6に示す耐滑性靴の靴底のつま先側に向かって流れる液体の流れ方を、(c)は図6に示す耐滑性靴の靴底の右側端部に向かって流れる液体の流れ方を、(d)は図6に示す耐滑性靴の靴底の左側端部に向かって流れる液体の流れ方をそれぞれ示す平面図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る耐滑性シートを示す平面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 靴底
2 凸部
3 溝
4 スリット
5 不踏部
6 床面
7 液体
8 耐滑性シート
【出願人】 【識別番号】591229668
【氏名又は名称】株式会社 ノサックス
【出願日】 平成20年4月11日(2008.4.11)
【代理人】 【識別番号】110000453
【氏名又は名称】特許業務法人 山広特許事務所
【公開番号】 特開2009−247823(P2009−247823A)
【公開日】 平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願番号】 特願2008−103135(P2008−103135)