トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

【発明の名称】 屋上緑化の施工システム
【発明者】 【氏名】梶川 昭則
【氏名】伊東 孝浩
【氏名】忽那 裕樹
【氏名】山田 匡
【課題】従来の屋上緑化の技術に比べてヒートアイランド現象を緩和する効果が著しく優れたものとなり、また夏場等においても日陰のような部分を大きなスペースで確保することができ、それによって建造物を冷して階下に対する空調負荷を減少させることができる等の省エネルギー対策を図ることもでき、しかも立体的で変化に飛んだ景観を現出させることのできる屋上緑化システムを提供する。

【解決手段】土壌等の植栽基盤3と植物とが収容可能な容器部1と、屋上の設置面上に立設されて該設置面と前記容器部1との間に空間部を形成することができるように該容器部1に取り付けて支持する支持脚2bとで植栽ユニットが構成され、支持脚2bの長さをそれぞれ変えることによって容器部1の高さ位置がそれぞれ異なるように調整された多数の植栽ユニットが、屋上の設置面に設置されて施工されている屋上緑化システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌等の植栽基盤(3)と植物とが収容可能な容器部(1)と、屋上の設置面(23)上に立設されて該設置面(23)と前記容器部(1)との間に空間部を形成することができるように該容器部(1)に取り付けられて該容器部(1)を支持する支持脚(2)とで植栽ユニットが構成され、支持脚(2)の長さをそれぞれ変えることによって容器部(1)の高さ位置がそれぞれ異なるように調整された多数の植栽ユニットが、屋上の設置面(23)に設置されて施工されていることを特徴とする屋上緑化の施工システム。
【請求項2】
屋上の設置面(23)と容器部(1)との間に形成される空間部が、多数の植栽ユニットの容器部(1)内に収容された植物によって全体的に包囲されるような包囲空間部(24)として形成され、該包囲空間部(24)の一端側に、該包囲空間部(24)を開閉する開閉手段が設けられている請求項1記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項3】
包囲空間部(24)を開閉する開閉手段がルーバー(25)である請求項2記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項4】
植栽ユニットの容器部(1)に収容された植栽基盤と植物に灌水を行うための水を貯留する貯水パネル(5)が設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項5】
容器部(1)の高さ位置が高い植栽ユニットから順次高さ位置が低くなるように複数の植栽ユニットが配設され、貯水パネル(5)に貯留された水が灌水ポンプ(14)で汲み上げられるとともに、容器部(1)の高さ位置が高い植栽ユニットから順に容器部(1)の高さ位置が低い植栽ユニットにかけてカスケード状態で水が供給されるとともに貯水パネル(5)に返送され、返送された水が、前記貯水パネル(5)の底面部の傾斜勾配によって、前記灌水ポンプ(14)側へ移送され、該灌水ポンプ(14)により再度汲み上げられて、容器部(1)の高さ位置の異なる複数の植栽ユニットに、再度カスケード状態で順次供給されて、容器部(1)の高さ位置の異なる複数の植栽ユニットに対して自動的且つ循環して灌水されるように構成されている請求項4記載の屋上緑化の施工システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上緑化の施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて建築物の屋上に植生パネル等を設置して緑化を行う技術が開発され、普及しつつある。このような屋上緑化は、建築物の屋上で植物を栽培し、屋上面からの熱の吸収、放出を緩和することで、いわゆるヒートアイランド現象を抑制するものであり、また建築物の屋上で植物の栽培が行なわれることで、大気汚染等に対する環境改善を図ることも意図するものである。
【0003】
このような屋上緑化を行う場合においても、他の箇所を緑化する場合と同様に、基本的に土壌が植栽の基盤となるので、植物を好適に生育させるには積層される土壌の厚さも一定以上にする必要がある。しかし、屋上緑化の場合には、土壌の厚さが厚くなると、建造物の負荷等の観点から、屋上部分にかかる土壌の積載荷重が無視できないものとなる。このため、一般には、屋上部分にかかる土壌の積載荷重が定められており、屋上緑化の技術が普及するにつれて、近年では屋上部分にかかる積載荷重の許容基準が厳しくなる傾向にある。
【0004】
このため、屋上緑化の技術においては、屋上部分に多大な積載荷重をかけない、いわゆる薄層緑化が多く採用されている。このような薄層緑化に関する技術としては、従来では、たとえば下記特許文献1及び特許文献2のような特許出願がなされている。
【0005】
この特許文献1及び特許文献2は、セダム植物を利用した薄層緑化技術に関するものである。セダム植物は他の植物に比べて灌水をさほど必要とせず、土壌層の厚さが薄くても生育するので、薄層緑化に最も適した植物種であるといえる。
【0006】
しかしながら、上述のようなヒートアイランド対策として屋上緑化がなされているのは、植物の水による蒸散によって屋上近傍における大気の温度を下げるからであり、この作用を有効に生じさせるには、蒸散量の多い植物を用いることが本来は好ましい。この点、セダム植物はもともと蒸散量が多くない植物種であるので、ヒートアイランド対策には最適な植物種であるとはいえない。
【0007】
また、植物種が限られることは、緑化が本来目的とすべき植物の多様性を実現することを困難にすることにもなる。この意味でもセダム植物以外の植物種を用いた屋上緑化の開発が望まれるところである。
【0008】
さらに、薄層緑化技術は、積層される土壌の厚さを極力薄くすることを主眼とするものであるから、屋上部分に施工される緑化システムも平坦なものとなり、立体的で変化のある形態を形成することが困難であることから、屋上緑化によって現出することのできる景観にも限界がある。
【0009】
【特許文献1】特開平11−172706号公報
【特許文献2】特開2002−272259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、従来の屋上緑化の技術に比べてヒートアイランド現象を緩和する効果が著しく優れたものとなり、また夏場等においても日陰のような部分を大きなスペースで確保することができ、それによって建造物を冷して階下に対する空調負荷を減少させることができる等の省エネルギー対策を図ることもでき、しかも立体的で変化に飛んだ景観を現出させることのできる屋上緑化システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような課題を解決するために、土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能な容器部と、屋上の設置面上に立設されて該設置面と前記容器部との間に空間部を形成することができるように該容器部に取り付けられて該容器部を支持する支持脚とで植栽ユニットが構成され、支持脚の長さをそれぞれ変えることによって容器部の高さ位置がそれぞれ異なるように調整された多数の植栽ユニットが、屋上の設置面に設置されて施工されていることを特徴とする屋上緑化の施工システムを提供するものである。
【0012】
屋上の設置面と容器部との間に形成される空間部を、多数の植栽ユニットの容器部内に収容された植物によって全体的に包囲されるような包囲空間部として形成し、該包囲空間部の一端側に、該包囲空間部を開閉する開閉手段が設けることも可能である。このような開閉手段として、たとえばルーバーのようなものが用いられる。また、植栽ユニットの容器部に収容された植栽基盤と植物に灌水を行うための水を貯留する貯水パネルを設けることも可能である。
【0013】
このような貯水パネルを設ける場合において、容器部の高さ位置が高い植栽ユニットから順次高さ位置が低くなるように複数の植栽ユニットを配設し、貯水パネルに貯留された水が灌水ポンプで汲み上げられるとともに、容器部の高さ位置が高い植栽ユニットから順に容器部の高さ位置が低い植栽ユニットにかけてカスケード状態で水が供給するとともに貯水パネルに返送し、返送された水を、前記貯水パネルの底面部の傾斜勾配によって、前記灌水ポンプ側へ移送し、該灌水ポンプにより再度汲み上げて、容器部の高さ位置の異なる複数の植栽ユニットに、再度カスケード状態で順次供給し、容器部の高さ位置の異なる複数の植栽ユニットに対して自動的且つ循環して灌水されるように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述のように、土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能な容器部と、屋上の設置面上に立設されて該屋上の設置面と前記容器部との間に空間部を形成することができるように該容器部に取り付けて支持する支持脚とで植栽ユニットが構成され、支持脚の長さをそれぞれ変えることによって容器部の高さ位置がそれぞれ異なるように調整された多数の植栽ユニットが、屋上面に設置されて施工されたものであるため、従来の薄層緑化技術等によっては、想定できないような立体的で変化に飛んだ景観を現出させることができるという効果がある。
【0015】
また、容器部の高さ位置がそれぞれ異なるように調整された多数の植栽ユニットが屋上の設置面に設置され、その高さの異なる容器部に収容された植栽基盤や植物、並びにその容器部と屋上の設置面との間に形成される空間部によって、全体として森林のような環境が屋上部分に形成されることとなり、それによって、たとえば夏場等においても日陰のような部分を大きなスペースで屋上部分に確保することができ、建造物を冷して階下に対する空調負荷を減少させることができる等の省エネルギー対策を図ることができる。
【0016】
さらに、上記日陰のような部分を大きなスペースで屋上部分に形成するとともに、植栽ユニットの容器部に蒸散効果のある植物を収容することで、従来の屋上緑化の技術に比べてヒートアイランド現象を緩和する効果が著しく向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の屋上緑化の施工システムは、上述のように、土壌等の植栽基盤と植物とが収容可能な容器部と、屋上の設置面上に立設されて該屋上の設置面と前記容器部との間に空間部を形成することができるように該容器部に取り付けられて該容器部を支持する支持脚とで植栽ユニットが構成され、支持脚の長さをそれぞれ変えることによって容器部の高さ位置がそれぞれ異なるように調整された多数の植栽ユニットが、屋上の設置面に設置されて施工されたものである。
【0018】
上記多数の植栽ユニットは、その内部に収容される植物の種類に応じて、主に低木ユニット、草本ユニット、及び水盤ユニットに大別される。低木ユニットは低木や地被類などの植物が植栽されるものであり、草本ユニットは草本類が植栽されるものであり、水盤ユニットは水生植物が植栽されるものである。これらの3種類のユニット以外の植栽ユニットを構成することもむろん可能である。
【0019】
本発明の屋上緑化の施工システムにおいては、上記のような植栽ユニットの他に、
たとえば管理道路ユニット、ソーラーパネルユニット、貯水パネルが具備される。
【0020】
図1は、これらの各構成部材によって、本発明の一実施形態の屋上緑化の施工システムを、各構成部材の群ごとに分解して模式的に示す分解斜視図である。図1において、1は植栽ユニットの容器部を示し、これらの容器部を具備する植栽ユニットの群においては、低木ユニットを構成する容器部や、草本ユニットを構成する容器部が存在する。この容器部1としては、たとえば合成樹脂製のものを用いることができるが、合成樹脂以外の材質のものを用いることも可能である。
【0021】
2は、前記容器部1に取り付けて支持する支持脚を示す。この支持脚2としては、たとえば合成樹脂製のものを用いることができるが、合成樹脂以外の材質のものを用いることも可能である。
【0022】
3は、前記容器部1に収容される植栽基盤を示す。この植栽基盤には植物が植栽されている。低木ユニットを構成する容器部には低木や地被類などが植栽され、草本ユニットを構成する容器部には草本が植栽されることになる。植栽基盤の種類は特に限定されるものではないが、屋上面にかかる積載荷重を考慮すると、軽量人工土壌を用いることが望ましい。高機能な軽量人工土壌を用いれば、薄層でも木本類の植栽が可能となる。このような低木ユニットで低木や地被類の植物を植栽すると、四季折々の風景を演出する植栽も可能となる。
【0023】
4は、水盤ユニットを示す。水盤ユニットを構成する容器部には水生植物が植栽されることになる。従って、植栽基盤がなく、水のみで生育しうるような水生植物には、水盤ユニットの容器部に植栽基盤を収容する必要がない。ただし、水生植物の種類によっては、植栽基盤を収容することも可能である。
【0024】
5は、灌水をするための水6を貯留する貯水パネルを示す。この貯水パネル5には、雨水や灌水の余剰水等が貯留されることとなる。後述のように、灌水用として循環利用することができる他、水景としての演出をすることができるものである。夏場には、周囲に冷たい風を流すこともできる。尚、水6は、図1においては斜視図としてあくまで模式的に示したものである。
【0025】
7は、管理道路ユニットを示し、この管理道路ユニットを多数配設することで、管理用の道路が構成されることとなる。この管理道路ユニット7は、上面にFRP
等のグレーチングを設置し、歩行可能としたユニットである。グレーチング自体は光や雨を通すため、下部に植栽することも可能となる。
【0026】
8は、ソーラーパネルユニットを示し、このソーラーパネルユニット8を組み合わせることによって、後述のソーラーパネル15が構成されることとなる。ソーラーパネルによって発電した電力は、後述するように灌水用ポンプの電力源として利用できる他、蓄電して夜間照明にも利用することができる。側面にガラス等を貼り、内部に照明を設置することにより照明ユニットとして利用することも可能である。
【0027】
このようなユニット等以外に、防根シート等も設けられている。図1において、9がその防根シートであり、10は建造物等の屋上面を示す。
【0028】
図2は、植栽ユニットの構成をより具体的に示す分解斜視図である。植栽ユニットの容器部1は、同図に示すように、上面が開口する略浅箱状に形成されたものである。また同図には、容器部1に収容される植栽基盤3が示されている。図2における一方の植栽基盤3は低木11を植栽するものであり、他方の植栽基盤3は草本12を植栽するものである。
【0029】
前記容器部1の4角コーナー部に上記の支持脚2が取り付けられている。図2において、植栽基盤3が収容されていない容器部1には、すでに取り付けられている
支持脚2aの他に、新たに連結される支持脚2bが図示されている。この支持脚2aと支持脚2bとが連結されることによって、図2において低木11や草本12が植栽される植栽基盤3が収容される容器1よりも、長い支持脚2が軽視されることとなり、植栽ユニットの高さ調節がされることとなるのである。
【0030】
図3は、本発明の屋上緑化の施工システムの全体的な配置態様の一例を示す概略断面図である。図3に示すように、屋上緑化の施工システムにおいて、貯水パネル5は略中央の領域に配設されている。そして、その貯水パネル5のさらに中央部分には、複数の水盤ユニット4が配設されており、該水盤ユニット4に水生植物13が植栽されている。さらに、該水盤ユニット4が配設された部分の両側には、低木11を植栽した多数の植栽ユニットが配設されており、部分的に草本12を植栽した植栽ユニットが配設されている。
【0031】
図3に示されているように、水盤ユニット4の両側に配設された植栽ユニットは、内側の植栽ユニットから外側の植栽ユニットにかけて徐々に高さが高くなるように配設されている。これら多数の植栽ユニットの高さの調節は、上記のような長さの異なる複数の支持脚2を適宜連結させ、連結させた支持脚2の本数の相違などによって行う。
【0032】
さらに、管理道路ユニット7も部分的に配設されている。この管理道路ユニット7が配設された部分においては、屋上緑化システムを管理するための、管理用の道路が形成されることとなる。さらに、このシステムの一端側には、図示しないが、システムの包囲空間を開閉させて空気を流通させるための開閉用のルーバーが配設されている。
【0033】
図4は、灌水の循環システムを説明するための概略側面図であり、貯水パネル5の近傍における各ユニットを配設した状態がより具体的に拡大して図示されている。
この図4で示さる灌水の循環システムにおいては、ソーラー式の灌水ポンプ14で灌水が行われ、その灌水ポンプ14の駆動源として前記ソーラーパネルユニット8で構成されるソーラーパネル15が用いられている。このソーラーパネル15は
太陽光で作動するものである。ソーラーパネル15での発電による灌水ポンプ14の作動は、タイマー16によって制御されている。貯水パネル5へは給水パイプ17から水が供給される。この給水管17は、電磁弁18によって開閉され、その電磁弁18は、タイマー19によって制御されている。
【0034】
この図4で示される各植栽ユニットは、それぞれ高さが異なるように構成されている。高さの調節は、上述のように、容器部1に取り付けられる支持脚2を連結する手段によってなされるが、この図4では、支持脚2に形成されたフランジ20を介して支持脚2が連結されている状態が図示されている。また相互に隣接する植栽ユニットの支持脚2の相互間が、結束バンド21で結束されている状態も図示されている。
【0035】
この図4のシステムの例では、高さが高く設定された植栽ユニットを上流側に位置させ、上流側から下流側にかけて、植栽ユニットの高さが徐々に低くなるように、計7段の植栽ユニットが配設されている状態が図示されている。
【0036】
この図4のシステムでは、上流側から1段目、3段目、5段目には草本12を植栽した植栽ユニットが配設され、上流側から2段目、4段目、6段目には低木を植栽した植栽ユニットが配設されている。さらに7段目には水生植物を植栽した水盤ユニット4が配設されている。7段目の水盤ユニット4は低い支脚2で支持されて、貯水パネル5に貯留された水の水面の高さに近い高さに設定されており、その結果、貯水パネル5に貯留された水の一部が水盤ユニット4内に侵入可能であり、それによって、水盤ユニット4においては、いわゆる湿地のような状態となっている。それぞれの植栽ユニットの容器部1内には、同図に示すように、植栽基盤3としての軽量人工土壌が収容されている。
【0037】
そして、計7段の植栽ユニットが配設された領域の範囲内に、貯水パネル5が配設されている。貯水パネル5の底面は、下流側から上流側に向かってわずかに傾斜するように形成されている。
【0038】
計7段のそれぞれの植栽ユニットには、上記灌水ポンプ14によって灌水がなされる。すなわち、ソーラーパネル15の発電によって作動する灌水ポンプ14によって汲み上げられた水は、給水パイプ22を経て先ず1段目の植栽ユニットに供給され、その後、上流側から下流側にかけて順次高さが低くなるように配設された2段目〜7段目の植栽ユニットへ、いわゆるカスケード状態で順次供給されることとなる。
【0039】
このように、灌水ポンプ14で汲み上げられた水は、その一部が各植栽ユニットへカスケード状態で順次供給され、その他の水は各植栽ユニットから直接貯水パネル5に落下する。いずれにしても、各植栽ユニットには、灌水ポンプ14からの水がまんべんなく供給され、供給後は結果的に貯水パネル5に返送されることとなる。
【0040】
この場合において、貯水パネル5の底面は、上述のように下流側から上流側に向かってわずかに傾斜するように形成されているため、貯水パネル5に返送された水は、このわずかな傾斜勾配によって上流側へ徐々に返送される。そして、上記灌水ポンプ14で汲み上げられることとなり、再度1段目の植栽ユニットに供給され、その後、2段目〜7段目のユニットへ、再度カスケード状態で順次供給されることとなるのである。
【0041】
このようにして、給水パイプ17から貯水パネル5へ供給された水は、上記のように計7段に設置された植物に循環して利用されることとなるのである。上述のように、本実施形態では、灌水等の水循環の観点でも省管理化を図ることができ、雨水や灌水の余剰水を効率的に貯水パネル5に貯留して、ソーラー式の灌水ポンプ14によって汲み上げ、自動的に再利用することができる。灌水ポンプ14の電力は、上述のようにソーラーパネル15によって発電し、貯水が不足した場合には、水位センサーにより上水等を補給する。
【0042】
本実施形態の屋上緑化システムは、上述のように構成されているので、蒸散効果のある植物、及び大きな日陰に相当する部分を配設することにより、ヒートアイランド現象での大きな問題点であるコンクリートの蓄熱をさせることがない。また、大きな空洞となる包囲空間部に夜の間に冷やされた風を取り込み、翌日の午前中は快適な状態となる。その日の昼からは包囲空間部に風を流し、いわゆる打ち水効果による冷たい風を周囲に送ることになる。
【0043】
この作用を図5及び図6に基づいて説明する。図5及び図6においては、上記のような多数の植栽ユニットが設置される設置面23と、該設置面23に支持脚2を介して設置されている容器部1との間に包囲空間部24が形成されている状態、及びその一端側に該包囲空間部24を開閉するルーバー25が設けられた状態が模式的に図示されている。
【0044】
たとえば夏期の午前中のイメージを、この図5に基づいて説明すると、ルーバー25を閉じて、包囲空間部24を閉の状態にすると、夜間に包囲空間部24内に冷気が取り込まれ、夏場の午前中を快適に過ごせるような状態となる。
【0045】
また夏期の午後のイメージを図6に基づいて説明すると、ルーバー25を開いて包囲空間部24を開の状態にすると、暖かい空気がルーバー25を介して包囲空間部24内に流入し、一旦は包囲空間部24内の温度が上昇するが、暖かくなった風が排出され、植栽ユニットに植栽された植物の蒸散によって包囲空間部24内の温度が徐々に低下する。さらに、ルーバー25を介して包囲空間部24内に風が取り込まれ、上記植物の蒸散による水の蒸発によって冷たくなった風も排出され、包囲空間部24内には、あたかも木陰のような空間が形成されることとなる。
【0046】
このように、夏場においては、大きな日陰に相当するような部分を形成し、建造物を冷やすことで、階下に対する空調負荷が減少することとなる。
【0047】
一方、冬場においては、図7に示すように、ルーバー25を閉じて包囲空間部24を閉の状態にすると、包囲空間部24内に冷気が取り込まれて「静止空気」の状態となり、このような「静止空気」の状態となった包囲空間部24によって、従来では得られなかったような断熱効果が得られる。
【0048】
上記のような図5乃至図7に基づいて説明した作用を、さらに別の観点から図8に基づいて説明すると、包囲空間部24内に流入した暖かい空気は、貯水パネル5に貯留された水の蒸発散と、包囲空間部24内に形成された木陰のような雰囲気によって、冷たい風となって排出されることとなる。このような熱交換的な作用と、植栽ユニットに植栽された植物の蒸散作用によって、全体として系内の包囲空間部24から系外に気化熱が放出されるような状態となる。
【0049】
一方、上記のような植栽ユニットに植栽された植物で、太陽光によって光合成がなされ、炭素が固定化されることとなる。これによって、いわゆる温暖化が緩和されることにもなる。
【0050】
この図8に基づいて説明したように、本発明の屋上緑化システムによって、全体として森のような環境を生み出す「浮き床」のようなシステムが得られることとなる。すなわち、季節の表情を豊かに表現できる立体的緑地環境形成の仕組みが、ヒートアイランド現象を緩和することになる。また、森の森林空間が、夏は涼しく、冬は暖かい環境を生み出すような自然現象と同様の現象を、人工的に形成することができる。
【0051】
このように、光合成、熱環境、水環境等のコンパクトな循環を可能にするようなシステムを建造物の屋上部に形成することができ、さらに、温暖で湿潤な環境における
浮き床の有効性を考慮した温暖化環境緩和システムを形成することができる。
【0052】
さらに、このような屋上緑化システムは、図9に示すように、山のような環境を生み出すシステムであるともいえる。すなわち、多数の植栽ユニットの上部に、植物を植栽した容器部1を配設させているので、屋上緑化のシステムは、この植物によって隠蔽されたような状態となり、また多数の植栽ユニットの高さを上記支持脚2の本数などによって調整し、高さの異なる多数の植栽ユニットが配設された状態となっているので、全体としてあたかも山のような豊かな地形を生み出すような景観が得られることとなる。
【0053】
また、上記のような灌水ポンプ14やソーラーパネル15を用いた水循環システムによって、山などの自然界での雨水や散水の浸透、貯水、蒸発散に近似するような水循環システムを、建造物等の屋上部というコンパクトな領域で実現することができる。この結果、従来の薄層緑化では実現が困難であった立体的な緑化システムを、都市部の熱環境対策に応用するシステムとして提供できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一実施形態の屋上緑化システムを形成する構成部材を、模式的に示す分解斜視図。
【図2】一実施形態の屋上緑化システムに用いられる植栽ユニットの構成部材を、概略的に示す分解斜視図。
【図3】一実施形態の屋上緑化システムの全体的配設態様を示す概略側面図。
【図4】一実施形態の屋上緑化システムにおける水循環システムの作用を、貯水パネルの近傍の構成とともに示す概略側面図。
【図5】一実施形態の屋上緑化システムの作用を模式的に示す概略側面図。
【図6】一実施形態の屋上緑化システムの作用を模式的に示す概略側面図。
【図7】一実施形態の屋上緑化システムの作用を模式的に示す概略側面図。
【図8】一実施形態の屋上緑化システムの作用を模式的に示す概略側面図。
【図9】一実施形態の屋上緑化システムの作用を模式的に示す概略側面図。
【符号の説明】
【0055】
1 容器部
2 支持脚
3 植栽基盤
5 貯水パネル
11 低木
12 草本
14 灌水ポンプ
15 ソーラーパネル
23 設置面
24 包囲空間部
25 ルーバー
【出願人】 【識別番号】000221775
【氏名又は名称】東邦レオ株式会社
【識別番号】508023662
【氏名又は名称】株式会社E−DESIGN
【出願日】 平成20年1月23日(2008.1.23)
【代理人】 【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇

【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一

【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭

【識別番号】100134452
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 雄一
【公開番号】 特開2009−171884(P2009−171884A)
【公開日】 平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願番号】 特願2008−12502(P2008−12502)