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【発明の名称】 田植機
【発明者】 【氏名】藤井 健二
【氏名】山内 一喜
【課題】走行機体の後部に苗植付け装置を昇降可能に連結するとともに、苗植付け装置における植付け部位の前方に整地装置を配備してある田植機において、深植え傾向になることを回避するとともに、苗植付け装置を前後に短いものにして機体方向転換などを容易に行えるようにする。

【解決手段】苗植付け装置5を、整地フロートを備えないものに構成するとともに、整地装置16の前方に苗植付け装置5の田面に対する高さを検知する高さ検出機構26を配備し、高さ検出機構26の検出情報に基づいて苗植付け装置5を昇降制御する制御手段を備えてある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に苗植付け装置を昇降可能に連結するとともに、前記苗植付け装置における植付け部位の前方に整地装置を配備してある田植機において、
前記苗植付け装置を整地フロートを備えないものに構成するとともに、前記整地装置の前方に苗植付け装置の田面に対する高さを検知する高さ検出機構を配備し、前記高さ検出機構の検出情報に基づいて苗植付け装置を昇降制御する制御手段を備えてあることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記苗植付け装置をローリング可能に支持するとともに、前記高さ検出機構を左右に配備し、両高さ検出機構からの検出情報に基づいて苗植付け装置をローリング制御する制御手段を備えてある請求項1記載の田植機。
【請求項3】
前記高さ検出機構を、田面に接地追従する接地体の上下変位を検出するよう構成してある請求項1または2記載の田植機。
【請求項4】
前記高さ検出機構を、田面に対する高さを非接触で検知するよう構成してある請求項1または2記載の田植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に苗植付け装置を昇降可能に連結した田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記田植機としては、整地フロートを備えた苗植付け装置の下部に、植付け部位の前方に位置させて回転駆動される代掻き用の整地装置を装備し、左右中央の整地フロートを、苗植付け装置の田面に対する高さを検知するセンサフロートとして、このセンサフロートが上下に揺動変位することを電気的に検出し、その検出情報に基づいて苗植付け装置を昇降制御することで、苗植付け装置の対地高さを所定範囲に維持して植付け深さを安定化させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−341881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の田植機では整地装置で掻き均した後の田面に整地フロートが接地するので、荒れのなくなった田面の高さをセンサフロートが検知することになって、昇降制御の安定化に有効となるものである。その反面、整地装置の通過によって表層の泥が排除された直後の田面の高さをセンサフロートが検出することになるので、この検出情報に基づいて昇降制御された苗植付け装置は、泥が排除されない平均的な田面に対しては低く位置制御されることになり、その分、植付け深さが深くなる傾向になるものであった。
【0004】
上記従来構造においては、苗植付け装置の下部に前後に長い整地フロートを装備する構成上、苗植付け装置の後端となる整地フロートが後方に伸び、苗植付け装置全体としての前後長さが長いものになり、畦際での機体方向転換などにおいて、整地フロートの後端を畦などにぶつけてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、深植え傾向になることを回避するとともに、苗植付け装置を前後に短いものにして機体方向転換などを容易に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、走行機体の後部に苗植付け装置を昇降可能に連結するとともに、苗植付け装置における植付け部位の前方に整地装置を配備してある田植機において、
苗植付け装置を整地フロートを備えないものに構成するとともに、整地装置の前方に苗植付け装置の田面に対する高さを検知する高さ検出機構を配備し、高さ検出機構の検出情報に基づいて苗植付け装置を昇降制御する制御手段を備えてあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、高さ検出機構は、整地装置によって泥が排除されていない田面に対する苗植付け装置の高さを検出することになり、この検出情報に基づいて昇降制御を行うことにより、泥が排除されていない田面に対する苗植付け装置の高さが、設定された高さに維持されて、所望の植付け深さでの植え付けが行われることになる。その結果、泥が排除された田面に対する高さ検出情報に基づいて昇降制御を行う場合のように植付け深さが深くなることが回避される。
苗植付け装置から整地フロートを排除することで、苗植付け装置の後端位置が前方に寄った前後長の短いものとなる。
【0008】
従って、第1の発明によると、深植え傾向になることを回避しながら、苗植付け装置を前後に短いものにして機体方向転換などを容易に行うことができるようになった。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
苗植付け装置をローリング可能に支持するとともに、高さ検出機構を左右に配備し、両高さ検出機構からの検出情報に基づいて苗植付け装置をローリング制御する制御手段を備えてあるものである。
【0010】
上記構成によると、左右の高さ検出機構からの検出情報を平均処理することで苗植付け装置の田面に対する高さを検出することができる。左右の高さ検出機構からの検出情報の差異から苗植付け装置の田面に対する左右傾斜度合いを演算することができ、高価な専用の傾斜センサを用いることなく苗植付け装置のローリング制御を行うことができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
高さ検出機構を、田面に接地追従する接地体の上下変位を検出するよう構成してあるものである。
【0012】
上記構成によると、接地体は高さ検出専用であるので、接地面積の小さい小型のものでよく、接地体自体の泥押しは少量であり、押し流された泥によって既植苗が傾いたり倒れたりするような不具合の発生することはない。
【0013】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、
高さ検出機構を田面に対する高さを非接触で検知するよう構成してあるものである。
【0014】
上記構成によると、例えば超音波を田面に照射して距離を検知する構造とすることで、田面に接地する部材を全く用いない構造での田面の検出が可能となり、泥などの異物の付着によって田面に接地する部材の作動が円滑に行われなくなるような不具合なく、適切な高さ検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、本発明に係る田植機の側面図が示されている。この田植機は、前輪1および後輪2を備えて4輪駆動走行可能に構成された走行機体3の後部に、四連リンク構造のリンク機構4を介して6条植え仕様の苗植付け装置5が昇降自在に連結され、走行機体3の後部に施肥装置6が装備されるとともに、走行機体3の前部の左右に予備苗のせ台7が立設配備された構造となっており、前記リンク機構4を油圧シリンダ8で上下に駆動揺動することで苗植付け装置5を昇降制御することができるようになっている。前記苗植付け装置5は、前記リンク機構4の後端部に前後方向支点P周りにローリング自在に連結されるとともに、リンク機構4の後端上部に備えたローリング駆動機構9によって苗植付け装置5がローリング制御されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、前記苗植付け装置5は、角筒部材からなる横長の植付けフレーム11、走行機体3から取り出された作業用動力を受けるフィードケース12、一定ストロークで左右に往復横移動する苗のせ台13、6組の回転式の植付け機構14、および、後部左右に2条分ずつの前記植付け機構14を備えた3個の植付けケース15が備えられるとともに、植付け箇所の田面を整地する整地装置16が植付け機構14の前方に装備されている。
【0017】
図2、図3に示すように、前記整地装置16は、苗植付け装置5の下部左右から前向きに延出された伝動ケース17と支持アーム18とに亘って整地ロータ19を回転自在に軸支して構成されており、フィードケース12から取り出された横軸動力が伝動ケース17を介してロータ軸19aに伝達されて、整地ロータ19がダウンカット方向(図2の紙面反時計方向)に回転駆動されることで、田面を掻き均し整地するよう構成されている。
【0018】
前記伝動ケース17および支持アーム18は基端の支点Q周りに上下揺動可能に支持されており、整地高さ調節レバー20を揺動してレバーガイド21に係止保持することで整地装置16を上下に揺動調節して、整地装置16の整地作用高さを任意に調節することが可能となっている。伝動ケース17および支持アーム18と、植付けフレーム11の左右から立設された苗のせ台支持フレーム22とに亘って引っ張りバネ23が張設されて、整地高さ調節レバー20に作用する整地装置16の重量負荷が軽減されている。
【0019】
図4に示すように、苗植付け装置5における前記植付けフレーム11の左右中央付近から前方に向けて支持フレーム25が延出されるとともに、この支持フレーム25に、田面に対する苗植付け装置5の高さを検知する高さ検出機構26が装備されている。
【0020】
前記支持フレーム25は、平行四連リンク機構27を介して平行に昇降可能に構成されるとともに、レバーガイド21の複数操作位置に係止保持可能な植付け深さ調節レバー28によって支持フレーム21を上げ下げして、高さ検出機構26の高さを変更調節することが可能となっている。
【0021】
高さ検出機構26は、支持フレーム25に後部支点rを中心に上下揺動可能に支持された接地体30、接地体30の前部と支持フレーム25の前部とに亘って装着された屈折リンク31、支持フレーム25に装着されたポテンショメータ32、接地体30の前部とポテンショメータ32とを連動連結するセンサロッド33、および、センサロッド33を下方に付勢して接地体30の前部を田面に押し付けるセンサバネ34とで構成されており、田面に接地追従する接地体30の上下揺動変位がポテンショメータ32の出力変化として検出されるようになっている。
【0022】
図5の制御ブロック図に示すように、前記ポテンショメータ32は、前記油圧シリンダ8を作動させる電磁式の制御弁35と共に制御装置36に接続されており、ポテンショメータ32からの検出情報に基づいて制御弁35が作動されて、苗植付け装置5の自動昇降制御が以下のように行われる。
【0023】
苗植付け装置5が設定された所定の高さにある時、接地体30は田面に対して所定の角度姿勢にあり、この時のポテンショメータ32からの検出値eと、予め設定器37によって制御装置36に入力設定されている基準値(不感帯を含む)e0とが均衡し、制御弁35は中立に保持される。
【0024】
前輪1が耕盤の隆起に乗り上がったり、後輪2が耕盤の凹部に落ち込む、等して走行機体3が後下り傾斜し、苗植付け装置5が沈下しかかると、この沈下によって高さ検出機構26の接地体30に働く接地圧が大きくなり、接地体30がセンサバネ34に抗して後支点r周りに上方に揺動変位する。これに伴ってポテンショメータ32からの検出値eが変化して前記規準値e0から外れ、その外れ方向と大きさに基づいて制御弁35が上昇作動方向に切り換えられ、油圧シリンダ8が短縮作動して苗植付け装置5が上昇される。苗植付け装置5の上昇に伴って接地体30が元の角度姿勢にまで揺動復帰すると制御弁35が中立に復帰作動して苗植付け装置5の上昇が停止される。
【0025】
前輪1が耕盤の凹部に落ち込んだり、後輪2が耕盤の隆起に乗り上がる、等して走行機体3が後上がり傾斜し、苗植付け装置5が浮き上がりかかると、この浮上によって高さ検出機構26の接地体30に働く接地圧が小さくなり、接地体30が後支点r周りに下方に揺動変位する。これに伴ってポテンショメータ32からの検出値eが変化して前記規準値e0から外れ、その外れ方向と大きさに基づいて制御弁35が下降作動方向に切り換えられ、油圧シリンダ8が伸長作動して苗植付け装置5が下降される。苗植付け装置5の下降に伴って接地体30が元の角度姿勢にまで揺動復帰すると制御弁35が中立に復帰作動して苗植付け装置5の下降が停止される。
【0026】
このように、苗植付け装置5の田面に対する高さが高さ検出機構26で検知されて昇降制御されることで、苗植付け装置5の田面に対する高さが安定され、所定の植付け深さでの植付け作業が行われる。
【0027】
植付け深さ調節レバー28を操作して支持フレーム25を下げることで、昇降制御中立時における苗植付け装置5の田面に対する高さが高くなって浅植えとなる。逆に、植付け深さ調節レバー28を操作して支持フレーム25を上げることで、昇降制御中立時における苗植付け装置5の田面に対する高さが低くなって深植えとなる。
【0028】
図3に示すように、ローリング駆動機構9は、リンク機構4の後端上部に連結したブラケット40に前後向き支点s周りに左右揺動可能に支持されたローリング駆動アーム41と、ローリング駆動アーム41を揺動駆動する電動モータ44とで構成されている。前記植付けフレーム21の左右から立設された苗のせ台支持フレーム22の上端に亘って支持枠45が横架され、この支持枠45の左右箇所に装着されたガイド部材46が、苗のせ台13の背部に補強枠を兼ねて横架連結された案内レール47に係合されて、苗のせ台13の上部が左右移動可能に係合案内されている。前記ローリング駆動アーム41の上方遊端部と前記支持枠45の左右箇所とがバネ48を介して連結されており、苗植付け装置5はローリング駆動アーム41に対して弾性融通をもって所定小範囲で自由ローリング可能に支持されている。リンク機構4の後端上部に連結した前記ブラケット40と苗のせ台13の背面における支持枠47の左右箇所とに亘ってローリング復帰用バネ43が張設されており、苗のせ台13の往復横移動によって移動方向側のローリング復帰用バネ43が伸ばされることで、苗のせ台13の横移動に伴う前後方向支点P周りの重量バランスの崩れを是正する方向の回動力が、ローリング復帰用バネ43によってもたらされるようになっている。
【0029】
前記ローリング駆動機構9の電動モータ44は、苗植付け装置5に装備された傾斜センサ49からの検出情報に基づいて作動制御され、走行機体3が耕盤の凹凸等によって左右に傾斜して苗植付け装置5が傾斜しかかっても、その傾斜を復元させる方向に苗植付け装置5がローリング制御されて、常に設定されたローリング姿勢(一般に水平)に安定維持され、もって、各植付け機構14による植付け深さに差異の少ない植付けが行われるようになっている。
【0030】
図6,図7に本発明の他の実施例が示されている。この例においては、上記構成の高さ検出機構26が整地装置16から横外方に外れた左右2箇所に配備され、各高さ検出機構26のポテンショメータ32が制御装置36に接続されている。
【0031】
制御装置36においては、両ポテンショメータ32からの検出値e1,e2が平均演算され、その演算値が苗植付け装置5の高さを示す検出値eとされ、上記と同様に基準値e0と比較されて昇降制御が実行される。
【0032】
制御装置36においては、両ポテンショメータ32からの検出値e1,e2の差が求められて、田面に対する苗植付け装置5の左右傾斜の方向とその大きさが演算され、この演算値が不感帯内に収まるように電動モータ44を作動させて上記したローリング制御が実行される。
【0033】
〔他の実施例〕
(1)前記高さ検出機構26を、前記接地体30を用いない非接触式のものに構成して実施することもできる。例えば、図8に示すように、苗植付け装置5から整地装置16の前方箇所にまで延出固定された支持アーム51の前端部に、超音波センサ52を下向きに取り付けて、田面からの高さを非接触で検知することもできる。この構成によると、図9の制御ブロック図に示すように、超音波センサ52で検知された検出高さhを設定器53で設定した基準高さh0に近づけるように油圧シリンダ8を作動制御することで、昇降制御を行うことができるとともに、設定器53を調節操作して基準高さh0を人為的に変更することで、植付け深さの調節を行うことができる。
【0034】
(2)図示しないが、超音波センサ52を利用した高さ検出機構26を左右一対装備して、両高さ検出機構26の検出情報に基づいて苗植付け装置5の田面に対する高さと左右傾斜を検知して、昇降制御とローリング制御を行うこともできる。
【0035】
(3)前記整地装置16として、レーキ板などで田面の表層を掻き均して整地する仕様のものを利用することもできる。
【0036】
(4)整地装置16を昇降駆動する電動モータ(図示せず)、及び人為的に操作される整地高さ調節スイッチ(ダイヤル操作式等)(図示せず)を備えて、整地高さ調節スイッチの操作位置に基づいて電動モータにより整地装置16が昇降駆動されて、整地装置16の整地作用高さを任意に調節することができるように構成してもよい。
この場合、植付け深さ調節レバー28により苗植付け装置5の田面に対する高さが変更
されると(植付け深さが変更されると)、これに伴って電動モータにより整地装置16が昇降駆動されて、苗植付け装置5の田面に対する高さの変更に関係なく(植付け深さの変更に関係なく)、整地装置16の整地作用高さが整地高さ調節スイッチで設定された値に維持されるように構成してもよい。
【0037】
(5)前記整地装置16を、走行機体3側に支持する形態で実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】田植機の側面図
【図2】苗植付け装置の側面図
【図3】苗植付け装置の正面図
【図4】整地装置及び高さ検出機構の側面図
【図5】制御ブロック図
【図6】別実施例における苗植付け装置の正面図
【図7】別実施例の制御ブロック図
【図8】他の実施例における整地装置及び高さ検出機構の側面図
【図9】他の実施例における制御ブロック図
【符号の説明】
【0039】
3 走行機体
5 苗植付け装置
16 整地装置
26 高さ検出機構
30 接地体
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成20年3月28日(2008.3.28)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎

【識別番号】100144750
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼野 孝

【識別番号】100149342
【弁理士】
【氏名又は名称】小副川 義昭
【公開番号】 特開2009−240180(P2009−240180A)
【公開日】 平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願番号】 特願2008−88350(P2008−88350)