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【発明の名称】 移植機
【発明者】 【氏名】野上 明博
【氏名】渡辺 利宣
【課題】肥料タンクへの肥料の補給が容易な移植機を提供する。

【解決手段】走行機体5の前方にはエンジンを覆うボンネット9が設けられていると共に、ボンネット9の側方には左右の肥料タンク30がブラケット31によって取付けられている。肥料タンク30の上面34の前方には肥料を供給するための供給口32が形成されている。供給口32はスライド式のスライド蓋36によって開閉されており、スライド蓋36には、その前方に肥料袋を置くための載置部36aが形成され、その後方には漏斗部36bが形成されている。作業者は、肥料タンク30に肥料を供給する際、スライド蓋36を機体前方にスライドさせ、肥料供給位置にすると、載置部36a上に肥料袋を載せ、供給口32にペースト肥料を流し込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、該走行機体の前部側方に取付けられた肥料タンクとを備え、前記肥料タンクの上面前方に肥料を供給するための供給口が形成されていると共に、蓋によって該供給口が開閉される移植機において、
前記肥料タンクの蓋は、前記供給口を開放する肥料供給位置と、前記供給口を閉塞する閉塞位置とに切換え可能に構成され、前記肥料供給位置では、その前端が前記走行機体よりも前方に突出すると共に、平坦面を構成し、肥料袋を載置する載置台となる、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記肥料タンクの蓋は、スライドして前記肥料供給位置と、前記閉塞位置とに切換わるスライド蓋である、
請求項1記載の移植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗用型田植機などの、苗を圃場に移植すると共に施肥も可能な移植機に係り、詳しくは、肥料を貯留する肥料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒンジ(回動支持部)によって蓋を機体後方に向けて回動させて、肥料タンクの供給口を開閉する移植機や(特許文献1参照)、予備苗載せ台の下方に肥料タンクを設け、予備苗載せ台の最下の台を、肥料袋を載置する載置台にして肥料を補給する移植機(特許文献2参照)が案出されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−198622号公報
【特許文献2】特開2001−231319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の移植機のように、肥料タンクの蓋を機体後方に回動させて供給口の開閉をすると、作業者は肥料の補給の際、重い肥料袋を常に保持していなければならず大変であり、上手く補給作業をすることが出来なかった。
【0005】
また、特許文献2記載の移植機では、予備苗載せ台の最下の台を引き出し、その上方に肥料タンクを載置可能に構成しているが、肥料補給の度に予備苗載せ台を引き出さなければならず、面倒であると共に、その最下の台に予備苗が載置されている場合には、使用することが出来ない。
【0006】
そこで本発明は、肥料タンクの蓋を前方に開閉することによって、上記課題を解決した乗用移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、走行機体(5)と、該走行機体(5)の前部側方に取付けられた肥料タンク(30)とを備え、前記肥料タンク(30)の上面(34)前方に肥料を供給するための供給口(32)が形成されていると共に、蓋(36)によって該供給口(32)が開閉される移植機(1)において、
前記肥料タンク(30)の蓋(36)は、前記供給口(32)を開放する肥料供給位置(図8(a)の位置)と、前記供給口(32)を閉塞する閉塞位置(図9(a)の位置)とに切換え可能に構成され、前記肥料供給位置(図8(a)の位置)では、その前端が前記走行機体(5)よりも前方に突出すると共に、平坦面を構成し、肥料袋を載置する載置台となる、
ことを特徴とする移植機(1)にある。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記肥料タンク(30)の蓋(36)は、スライドして前記肥料供給位置(図8(a)の位置)と、前記閉塞位置(図9(a)の位置)とに切換わるスライド蓋である、
請求項1記載の移植機(1)にある。
【0009】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、肥料タンクの蓋を機体前方に向けて開閉することによって、肥料袋を載置する載置台として使用することができ、容易に肥料の補給が行える。また、上記肥料タンクの蓋を開閉する作業と、載置台を着脱する作業とが同一であり、作業が容易になると共に効率的である。
【0011】
請求項2に係る発明によると、肥料タンクの蓋をスライド式にすることで、肥料タンクの上方に蓋を開閉するためのスペースを必要とせず、肥料タンクの上方に配置される予備苗載せ台を低く設けることが出来るため、機体の重心を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本願発明に係る移植機について図面に基づいて説明をする。移植機1は、図1乃至3に示すように、それぞれ左右一対の前輪2,2及び後輪3,3に支持された走行機体5を有しており、その後方には昇降リンク6を介して植付部7が昇降自在に取付けられている。上記走行機体5の前方には、ボンネット9に覆われたエンジンが搭載されていると共に、ステアリングハンドル12及び操作パネル13などからなる運転操作部10が設けられており、作業者は運転座席11に着座して移植機1を操作するように構成されている。
【0013】
また、上記ボンネット9の左右側方には、フロントステップ15が機体前方から前輪2,2の車軸2a,2aの上方に亘って延設されており、該フロントステップ15の後方には、運転操作部10の床面(底部)を構成するメインステップ16及びスノコ状のサイドステップ17が連続して設けられている。これらフロントステップ15、メインステップ16及び左右一対のサイドステップ17により、作業者がその上方を移動するステップ19が構成されており、上記運転座席11の機体前後方向中央部まで延設されている。また、運転座席11はステップ19の後方に設けられた機体カバー20に取付けられており、該機体カバー20の運転座席11の左右側方は平坦に構成され、ステップ19よりも一段高い苗供給用ステップ21となっている。
【0014】
次に、上記ステップ19について詳しく説明をする。図4に示すように、上記走行機体5の機体フレーム26は、機体中央部において前後に延びた左右一対のメインフレーム22と、これら左右のメインフレーム22から機体幅方向に延びる複数の横ステップフレーム23と、これらの横ステップフレーム23と交差して連結すると共に、機体前後方向に延びる縦ステップフレーム25と、サイドステップ17及びメインステップ16の外周を囲う外枠24などから構成されており、上記ステップ19はこれらメインフレーム22、横ステップフレーム23、縦ステップフレーム25及び外枠24によって支持されている。
【0015】
ステップ19は、上述したようにフロントステップ15、メインステップ16及びサイドステップ17が面一状に連設して構成されており、フロントステップ15の後縁15aは、メインステップ16の前縁16a及びサイドステップ17の前縁17aと機体幅方向にオーバーラップして当接している。また、これらフロントステップ15の後縁15a、メインステップ16の前縁16a、サイドステップ17の前縁17aは、操作パネル13の後側面13aの後端と略々同じ位置に整列して配設されている。
【0016】
上記メインステップ16は、その両外側縁16b,16bが機体後方ほど外側に拡がった幅広な板状部材であり、その前縁16aよりも幅広な後縁16cが運転座席11の機体前後方向中央部に位置している。そのため、運転座席周辺の床面は鉄板に取付けられた強固なメインステップ16によって形成されており、作業者は安心して、立ったり座ったり、体の向きを変えたりすることができる。また、メインステップ16は、ステップ19の構造部材であると共に、鉄板部分がエンジンの下方まで延びて、エンジンマウントを形成することもある。
【0017】
更に、上記メインステップ16の両外側縁16b,16bは、サイドステップ17の機体内側の側縁である内側縁17b,17bと当接しており、それにより、左右のサイドステップ17は、その後縁17cが前縁17aよりも機体外側に位置している。
【0018】
上記サイドステップ17は、機体の下方まで連通した複数の孔もしくは間隙を有したスノコ状のステップであり、その外側縁17dは機体に対して前後に平行な後半部17eと、機体前半ほど機体内側に位置するように傾斜した前半部17fとから構成されている。また、上記外側縁17dの後半部17eの側方には足踏み台27が設けられており、作業者はこの足踏み台27を使って、サイドステップ17へと容易に乗降できるように構成されている。
【0019】
図6は5条植えの移植機1を示した図であり、図7は6条植えの移植機1を示した図である。図6及び図7に示すように、5条及び6条植えのどちらの移植機1においても、前輪2,2の後方はサイドステップ17の下方に位置しているが、上述したように左右のサイドステップ17,17はスノコ状のため、作業者は運転座席に着座した状態で、サイドステップ17,17越しに前輪2,2を目視することができる構成となっている。
【0020】
特に、サイドステップ17の前方が、機体内側に入り込んで形成されていると共に、その全面がスノコ状のため、サイドステップ17,17の下方に前輪2,2が位置するような5条植え移植機1でも、図3に示すようなサイドステップ17,17の側方に肥料タンク30,30を取付けた6条植えの移植機1でも、作業者は容易に前輪2,2の位置を確認できる。
【0021】
次に上記肥料タンク30について説明をする。図2及び図3に示すように、肥料タンク30,30はフロントステップ15,15の側方に、機体5から延びたブラケット31,31によって取付けられている。これら左右の肥料タンク30,30には、フロントステップ15,15と略々同じ高さに位置していると共に、施肥機(不図示)へと供給する肥料を貯留しており、その上面34には肥料を補給する供給口32,32が設けられている。
【0022】
図8及び図9に示すように、上記供給口32は、肥料タンク30に設けられた長孔33に沿ってローラピン35が移動するスライド蓋36によって開閉されており、このスライド蓋36が閉塞位置(図8(a),(b)の位置)から肥料供給位置(図9(a),(b)の位置)へと機体前方にスライドすることによって、作業者は肥料を補給することが出来るように構成されている。
【0023】
上記スライド蓋36は、その前方部分に円形状に窪んで形成された肥料袋を載置する載置部36aと、その後方部分にすり鉢状に形成された漏斗部36bとを備えており、図8(a),(b)に示すように、閉塞位置においては、上記載置部36aが供給口32のストレーナ32aの上方に位置して、供給口32を閉塞している。また、スライド蓋36は、図8(c),(d)に示すように、上下方向にも回動自在に構成されており、上記漏斗部36bが引っ掛からないように上方にスライド蓋36を軽微に回動させた後、スライドさせることが出来るようになっている。
【0024】
図9(a),(b)は、スライド蓋36が肥料供給位置である時の肥料タンク30を示す図である。肥料供給位置においてスライド蓋36は、そのすり鉢状に開口した漏斗部36bが供給口32のストレーナ32aの上方に位置しており、供給口32を開放する。また、この際、スライド蓋36は肥料タンク30の上面34に対して略々平行な平坦面となっており、作業者は該スライド蓋36の載置部36a上に肥料袋を載置し、漏斗部36bから供給口32へと肥料を補給することができるように構成されている。更に、図2及び3に示すように、スライド蓋36は、肥料供給位置において、その前端が機体の前端よりも前方に位置しており、畦際から補助者が容易に肥料の補給を行える構成となっている。
【0025】
なお、スライド蓋36は、漏斗部36bの底全体が開口した形状以外に、図9(c)に示すような、漏斗部36bの底部中心に形成された円形の孔が機体前方へと延びた鍵穴状の孔36cを有した構成としても良い。これにより、上記鍵穴状の孔36cに肥料袋37の口37a(図9(d)参照)を引っ掛けて、肥料を補給することができる。
【0026】
また、上記スライド蓋36は、肥料供給位置で肥料袋を載置する載置台となる際に、肥料タンク30の上面34と平行でなく、上方へ軽微に回動した位置で固定され、肥料袋を漏斗部36bへと倒しやすいように構成してもよい。
【0027】
次に本実施の形態に係る移植機1の作用について説明する。作業者は苗を植付ける際、通常、足乗せ台27に足を乗せて機体側部から乗り込み、サイドステップ17で靴に付いた泥を落としてから、運転座席11に着座する。運転座席11に着座した作業者は、植付部7により苗を圃場に植え付け始めると共に、施肥機(不図示)によって施肥を行う。
【0028】
作業者は、植付作業の途中で植付部7に苗が無くなると、肥料タンク30の上方に取付けられる予備苗載せ台(不図示)から苗を取り出すか、機体5を畦に対して垂直に停め、畦際から補助者に予備苗を渡してもらい、フロントステップ15及びサイドステップ17上を通って、苗供給用ステップ21から植付部7へと苗を補給していく。この時、肥料タンク30に肥料が少ない場合には、畦際にいる補助者が、スライド蓋36を前方へとスライドさせて苗供給位置にし、肥料袋を載置部36bに載置して肥料タンク30の供給口32へとペースト肥料を補給する。
【0029】
上記補給作業が終わると、作業者は運転座席11に戻り、植付作業を続ける。この時、補給作業の途中で足に泥が付いた場合、機体内側に切れ込んでいるスノコ状のサイドステップ17の前方に足を伸ばし、その泥を落とす。
【0030】
作業者は、苗を圃場へ植付け終わると、サイドステップ17越しに前輪2,2に向きを確認しながら、トラックへと移植機1を積み込み、作業を終了する。
【0031】
上記のように移植機1を構成したことにより、機体前方にスライドするスライド蓋36の上方に肥料袋を載せることができ、作業者は重い肥料袋を手で持たなくとも容易に肥料の補給をすることができる。特に、ペースト肥料のように液状で、重く、不定形な肥料の補給を容易にすることができる。
【0032】
また、スライド蓋36が肥料袋を載置する載置台を兼用しているため、肥料タンク30の蓋を開閉する作業と、肥料袋の載置台を着脱する作業とを同時に行うことができ、補給作業を容易かつ、効率的にすることができる。更に、肥料供給位置において、スライド蓋36の前端が機体5の前端よりも前方に位置しているため、畦際から補助者が肥料タンク30に肥料を補給しやすい。
【0033】
また、肥料タンク30は、スライド式のスライド蓋36によって供給口32を開閉するため、その上方に開閉のための空間をほとんど必要とせず、予備苗載せ台を低く設けることができる。更に、サイドステップ17がコンパクトに形成され、肥料タンク30がフロントステップ15と略々同じ高さに配置されていることとも相俟って、機体5の重心を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願発明の実施の形態に係る移植機の斜視図。
【図2】本願発明の実施の形態に係る移植機の側面図。
【図3】本願発明の実施の形態に係る移植機の平面図。
【図4】本願発明の実施の形態に係る移植機のステップ周りを示す要部平面図。
【図5】図4の側面図。
【図6】本願発明の実施の形態に係る5条植え移植機の平面図。
【図7】本願発明の実施の形態に係る6条植え移植機の平面図。
【図8】(a)閉塞状態の肥料タンクを示す平面図、(b)閉塞状態の肥料タンクを示す側面図、(c)スライド状態の肥料タンクを示す平面図、(d)スライド状態の肥料タンクを示す側面図。
【図9】(a)肥料供給状態の肥料タンクを示す平面図、(b)肥料供給状態の肥料タンクを示す側面図、(c)別形態の肥料タンクを示す平面図、(d)肥料袋を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1 移植機
5 走行機体
30 肥料タンク
32 供給口
34 肥料タンクの上面
36 肥料タンクの蓋
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【出願日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
【公開番号】 特開2009−232789(P2009−232789A)
【公開日】 平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願番号】 特願2008−85001(P2008−85001)