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【発明の名称】 透明電磁遮蔽膜
【発明者】 【氏名】山本 哲也

【氏名】岸本 誠一

【氏名】山田 高寛

【要約】 【課題】健康を害する危険性を有するだけでなく、周辺電子機器の誤動作、表示部におけるぼやけの要因となる電磁波を効果的に遮蔽する遮蔽機能、加えて、電子機器の誤動作等の要因となる上に、熱線としても働く近赤外線も効果的に遮蔽することのできる遮蔽機能、可視光領域における高い透過率を有する優れた透明機能、以上の三つの機能を兼ね備え、加えて、簡単な構成であり、低コスト且つ需給バランスが半永久的に満たされる透明電磁遮蔽膜の提供。

【構成】基板上にn型不純物を含有する酸化亜鉛を製膜してなり、該酸化亜鉛が、膜厚1〜4μm、且つ表面抵抗0.4〜3Ω/□であり、周波数300MHz〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス30dB以下であることを特徴とする透明電磁遮蔽膜である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にn型不純物を含有する酸化亜鉛を製膜してなり、
該酸化亜鉛が、膜厚1〜4μm、且つ表面抵抗0.4〜3Ω/□であり、
周波数300MHz〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス30dB以下であることを特徴とする透明電磁遮蔽膜。
【請求項2】
前記n型不純物の含有量が2〜8wt%であることを特徴とする請求項1記載の透明電磁遮蔽膜。
【請求項3】
前記n型不純物が、アルミニウム,ガリウム,シリコン,インジウムの中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明電磁遮蔽膜。
【請求項4】
波長980〜1020nmにおける最大透過率及び波長1180〜1220nmにおける最大透過率が夫々16%以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜。
【請求項5】
波長1200〜1400nmにおける最大透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜。
【請求項6】
波長550nmにおける最大透過率が65%以上であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜。
【請求項7】
周波数2〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス40dB以下であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電磁遮蔽膜に関し、より詳しくは、可視光領域における透過性及び導電性に優れ、また、電子レンジやプラズマディスプレイ等より発生し、生体の健康を害する危険性を有するだけでなく、周辺電子機器の誤動作、表示部におけるぼやけの要因となる電磁波を効果的に遮蔽可能とし、加えて、電子機器の誤動作等の要因となる上に、熱線としても働く近赤外線も効果的に遮蔽することのできる透明電磁遮蔽膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業技術の発展に伴い、我々の電波利用は、電子レンジのような家電製品を始めとして、自動車、携帯電話等の移動体通信を中心にMHz帯から大容量情報の伝送が可能なGHz帯(G(ギガ)とは10の9乗を表し、M(メガ)の1000倍)へと飛躍的に拡大している。
しかし、このような電波利用の多角化、高度利用化が身近な生活において急激に進展するに従い、当該電波による悪影響(例えば、生体(人体)への直接的な悪影響、医療機器常用者に対する影響や情報通信システム等に対する表示不明瞭や誤動作等の影響)の事例が年々、増加している。所謂、様々なEMC(Electromagnetic Compatibility;電磁両立性,電磁環境両立性)問題が発生している。
以下、カラープラズマディスプレイパネル及び電子レンジを例にして説明する。
【0003】
テレビジョン用、或いは、パーソナルコンピュータ用としてのディスプレイ産業の市場は、順調な伸びを示しており、特にその薄型化・大型化が進められている。
このようなディスプレイ産業の中において、カラープラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、大型化が容易であること、視野角が広いこと、これまでのブラウン管(以下、CRTと称する)よりも軽量薄型化が可能であること、地磁気の影響を受けない等の特徴を有しており、液晶ディスプレイ(以下、LCDと称する)と共に、今後の本命ディスプレイとして期待されている。
【0004】
しかしながら、上記したパネルの大型化等がニーズとして進められる一方で、クローズアップされてきているのがPDPからの放射ノイズの問題である。
即ち、PDPは、CRTやLCDと比較すると、発光に際して、パネル表面から放射される電磁波や近赤外線の量が多く、この漏洩電磁波は、その周辺の人体の健康に対して悪影響を及ぼし、また、近赤外線は電子機器の誤動作を引き起こす等の問題を有している。
【0005】
このようなPDPの実情に対する方策として、電磁波の遮蔽、及び該遮蔽した電磁波の速やかな除去(導波)という二つの役目を有する電磁波シードフィルタが提案されている。
この電磁波シードフィルタにおいては、その遮蔽特性が法規制、例えば、日本のVCCI(Voluntary Control Council for Interference by data processing equipment electronic office machine:正式名称「情報処理装置等電波障害自主規制協議会」)による基準値内を満足させることはもちろんであるが、高い導電性、高い透明性や低価格、および長期にわたる需給バランスなども要求される。
【0006】
電磁波シードフィルタの構成は、以下の二つに大別することができる。一方は、基板表面に導電性繊維や金属で導電回路を設けたメッシュ方式のもの、他方は、ガラスやプラスチック基板の表面に銀(Ag)や、ITO(錫添加酸化インジウム)、酸化錫を用いた透明導電膜を形成したものである。
【0007】
前者のメッシュ方式のものは、メッシュのライン幅を広くすることで電磁波の高遮蔽性能を得ることはできるが、これにより開口率の低下を招くこととなり、その結果、透明性を損なうといった問題が生じる。また、表示セルとの干渉縞(モアレ)の発生、歩留まりの悪さによるコスト高等の問題も生じる。
上記したモアレ発生の解決策としては、バイアスを設ける等の方法を挙げることができるが、メッシュの不均一性によるモアレ、PDP表面にメッシュが映りこむことによるモアレ、画像の不鮮明さ、視野角が犠牲になる等、画像への悪影響は大きい。
【0008】
後者の透明導電膜のうち、金(Au),銀(Ag),銅(Cu),白金(Pt),パラジウム(Pd)等の金属薄膜においては、高い導電性を得ることはできるが、可視光領域を含む広い波長領域に亘って金属の反射及び吸収が生じるため、可視光領域における高い透過率を実現することができず、輝度、画像の鮮明さを損なうこととなる。
また、ITOにおいては、その資源としての埋蔵量の問題から生じる今後の需給バランスを満たせない可能性が高いこと、及び、高価格であること等の避けて通れない問題がある(日刊工業新聞平成18年6月5日「希少金属の代替開発」及び化学工業日報平成18年4月28日「早ければ2011年に枯渇」参照)。加えて、ITOは、500nm以上の膜厚となると着色してしまい、その結果、透明性に問題が生じることになる。
【0009】
酸化錫においては、抵抗率の低いものを得ることが難しい。即ち、PDPの場合、電磁遮蔽効果を得るためには、表面抵抗の値が5Ω/□程度である必要があり、特に、上記したVCCIのClassAを満足させるためには、3Ω/□以下とする必要がある。
ここで、薄膜において、その厚みをt(cm)とすると、表面抵抗は、抵抗率の値を厚みtで割った値として定義される(「透明導電性フィルム」シーエムシー出版、第23章2 表面抵抗の定義(pp. 266-267)参照)。このとき表面抵抗の単位はΩとなるが、任意の2点間抵抗と区別するため、単位正方形当たりという意味で、Ω/□と表記される。
このため、酸化錫の膜厚を充分に厚くすることで、低抵抗化を図ることができるが、この場合には、可視光領域における透過率が減少する、換言すれば、透明性を損なうといった問題が生じる。
【0010】
一方、電子レンジは、高い周波数、且つ大電力の電磁波を食物に照射することにより、食物に電磁波を吸収させると共に熱を発生させることで、火を使わずに食物を熱することを可能とするものである。
しかし、この場合においても、上記PDPと同様、電子レンジから漏れる電磁波が人体に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
【0011】
また、電子レンジにおいて利用する電磁波は、周波数2.45GHzのマイクロ波であり、出力は一般家庭用で500〜600W程度、コンビニエンスストア等の業務用で1500〜2000W(200V、10A)程度である。
上記した周波数は、ISM(Industrial,Scientific And Medical)バンドと呼ばれ、無線LAN等にも利用されている特別の周波数である。従って、電子レンジを動作させると、無線LAN、更にはアマチュア無線にも(発振周波数の直下がアマチュア無線の2.4GHzバンド)影響を与えることとなる。
【0012】
従って、電子レンジにおいても電磁波遮蔽材料が必要であり、また、この場合、電子レンジが調理器という観点から次のようなニーズも満たす必要がある。
即ち、現在、一般普及している電子レンジは、内部にある食材の調理状態を見ることが可能な、且つ電磁波を遮蔽(吸収)することのできる材料として、金属材料による電波遮蔽材料が用いられているが、実際には、金属材料ゆえに食材の調理状態をはっきりと目視することができないのが課題となっており、透明な電磁波遮蔽材料へのニーズがある。
電磁波遮蔽材料は各種あるが、大きく以下の3つに分類できる。
【0013】
1.導電性電磁波遮蔽材料
2.誘電性電磁波遮蔽材料
3.磁性電磁波遮蔽材料
【0014】
2番目の誘電性電磁波遮蔽材料には、カーボンゴム、カーボン含有発泡ウレタン、カーボン含有発泡ポリスチロールなどがあるが、これは透明ではない。
また、3番目の磁性電磁波遮蔽材料としてはフェライトが代表的である。しかし、これの整合する周波数は材質により、およそ0.3〜1.5GHzの範囲に留まるため、電子レンジに対する電磁波遮蔽材料としては機能しないものである。
1番目の導電性電磁波吸収材料は、上記した電磁波シードフィルタと同様のものであり、そのため、これと同様の課題を有することとなる。
【0015】
以上のような実情の中、現在、透明性を有する半導体として酸化亜鉛が注目されている。但し、酸化亜鉛は単体では、ITO程の電磁波遮蔽性が得られないため、種々検討が為されており、例えば、酸化亜鉛薄膜(及び他の金属酸化物)と金属薄膜とをできる限り薄くし、交互に複数回積層して形成される電磁波遮蔽膜が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
しかしながら、上記のような方法では、酸化亜鉛薄膜と金属薄膜とを交互に積層しなければならないため、製膜に手間がかかることと、コストの面から生産性に乏しいと言える。
また、このような電磁遮蔽膜では、透過性と電磁波遮蔽性との両方において必ずしも優れているとは言えない。
【0016】
【特許文献1】特開2000−062082号公報
【特許文献2】特開2006−121085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであって、健康を害する危険性を有するだけでなく、周辺電子機器の誤動作、表示部におけるぼやけの要因となる電磁波を効果的に遮蔽する遮蔽機能、加えて、電子機器の誤動作等の要因となる上に、熱線としても働く近赤外線も効果的に遮蔽することのできる遮蔽機能、可視光領域における高い透過率を有する優れた透明機能、以上の三つの機能を兼ね備え、加えて、簡単な構成であり、低コスト且つ需給バランスが半永久的に満たされる透明電磁遮蔽膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に係る発明は、基板上にn型不純物を含有する酸化亜鉛を製膜してなり、該酸化亜鉛が、膜厚1〜4μm、且つ表面抵抗0.4〜3Ω/□であり、周波数300MHz〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス30dB以下であることを特徴とする透明電磁遮蔽膜に関する。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記n型不純物の含有量が2〜8wt%であることを特徴とする請求項1記載の透明電磁遮蔽膜に関する。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記n型不純物が、アルミニウム,ガリウム,シリコン,インジウムの中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明電磁遮蔽膜に関する。
【0021】
請求項4に係る発明は、波長980〜1020nmにおける最大透過率及び波長1180〜1220nmにおける最大透過率が夫々16%以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜に関する。
【0022】
請求項5に係る発明は、波長1200〜1400nmにおける最大透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜に関する。
【0023】
請求項6に係る発明は、波長550nmにおける最大透過率が65%以上であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜に関する。
【0024】
請求項7に係る発明は、周波数2〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス40dB以下であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の透明電磁遮蔽膜に関する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によれば、基板上にn型不純物を含有する酸化亜鉛を製膜してなり、該酸化亜鉛が、膜厚1〜4μm、且つ表面抵抗0.4〜3Ω/□であり、周波数300MHz〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス30dB以下であることにより、簡単な構成にて、健康を害する危険性を有するだけでなく、電子機器の誤動作等の要因となる電磁波、電子機器の誤動作等の要因となるだけでなく、熱線としても働く近赤外線を遮蔽し、EMI規格VCCI:ClassAを満足させることが可能となり、また、可視光領域において優れた透明性を得ることが可能となる。これは、民生用としては充分である。
更に、酸化亜鉛を利用するため、低コスト且つ需給バランスが半永久的に満たされる。
【0026】
請求項2及び3に係る発明によれば、n型不純物の含有量が2〜8wt%であり、また、該n型不純物が、アルミニウム,ガリウム,シリコン,インジウムの中から選択される少なくとも一種であることにより、効果的に導電性を向上させることが可能となり、電磁波・近赤外線の遮蔽が可能となる。
【0027】
請求項4及び5に係る発明によれば、波長980〜1020nmにおける最大透過率及び波長1180〜1220nmにおける最大透過率が夫々16%以下であり、波長1200〜1400nmにおける最大透過率が10%以下であることにより、確実に近赤外線による電子機器の誤動作等を防止することができる。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、波長550nmにおける最大透過率が65%以上であることにより、確実に可視光領域における優れた透明性を有する、即ち、視感度を損なうことがない。
【0029】
請求項7に係る発明によれば、周波数2〜3GHzにおける電磁波遮蔽性がマイナス40dB以下であることにより、MIL−STD−461(米国軍用規格)として充分な電磁波遮蔽効果を奏することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る透明電磁遮蔽膜の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る透明電磁遮蔽膜を示す概略断面図である。
【0031】
本発明に係る透明電磁遮蔽膜(1)は、基板(11)上にn型不純物を含有する酸化亜鉛(12)を製膜することにより構成されている。
基板(11)に使用する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板としては、石英ガラス,耐熱ガラス,強化ガラス,アルカリガラス,無アルカリガラス等を挙げることができ、また、プラスチック基板としては、ポリ塩化ビニル(PVC),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリカーボネート(PC),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリエーテルサルホン(PES),シリコーン(SI)等を挙げることができる。
尚、透明性を高くするためには、非結晶性のプラスチック基板を用いることが好ましい。
【0032】
酸化亜鉛(12)は、導電性に優れた半導体であり、基板(11)上の全面に亘って膜状に形成されている(以下、酸化亜鉛のことを酸化亜鉛薄膜と称する)。
ここで、酸化亜鉛薄膜(12)を利用していることにより、低コスト且つ需給バランスを半永久的に満たすことが可能となる。
【0033】
即ち、亜鉛鉱は、世界的に広く分布しており、この亜鉛鉱を構成する亜鉛元素は、地殻中で70mg/kg(含有元素として、多いほうから23番目)、海水中では4.9μg/L(多いほうから21番目)、昨今注目される人体中では33mg/kg(多いほうから15番目)、夫々存在している(CRC Handbook of Chemistry and Physics, ed. By D.R.Lide, 77th ed.,(1996))。また、亜鉛地金(JIS H2107:日本規格協会(1999))の用途は、鉄鋼メッキ,ダイキャスト等が代表的であるが、その中の略1割は酸化亜鉛の原料として利用されている。
従って、大きな市場が見込まれる分野においては、亜鉛鉱と酸素とを用いてなる酸化亜鉛は、コストの面,無毒性,供給等、生産面において優れていると言える。
【0034】
n型不純物は、酸化亜鉛薄膜(12)の導電性をより向上させるためのものであり、酸化亜鉛薄膜(12)に所定量添加される。
添加するn型不純物としては、特に限定されるものではないが、アルミニウム,ガリウム,シリコン,インジウムを好適に用いることができる。
これらn型不純物は、上記の中より選択される一種を添加する、或いはこれらの組み合わせを添加することができる。
但し、上記のうちインジウムは、高価であると共にその共有結合半径が1.44Åと、亜鉛の1.25Åに比してかなり大きく、歪みを誘導することが懸念されるので、単体として添加することは好ましくない。
【0035】
以上により、本発明に係る透明電磁遮蔽膜(1)の基本構成が達成される。
ここで、酸化亜鉛薄膜(12)としては、その膜厚を1〜4μmとなるように設定する。
これは、膜厚を1μm未満とすると、基板(11)と酸化亜鉛薄膜(12)との境界における表面抵抗が極端に大きくなり、電磁波の遮蔽性能が著しく低下してしまい、また、膜厚が4μmを超過とすると、着色してしまい、結果、可視光領域における透過率が著しく低下するためである。
【0036】
また、上記酸化亜鉛薄膜(12)の表面抵抗としては、0.4〜3Ω/□となるように設定する。
電磁波遮蔽性は、電磁遮蔽材料(ここでは、酸化亜鉛薄膜)の表面抵抗が小さくなればなるほど、その値は大きくなる、即ち、遮蔽の機能は向上する。
例えば、PDPの場合、電磁遮蔽の効果を発揮するためには、表面抵抗をおよそ5Ω/□以下とする必要がある。従って、表面抵抗を上記範囲とすることにより、周波数300MHz〜3GHzにおける電磁波遮蔽性をマイナス30dB以下とすることが可能となる。
これにより、EMI規格VCCI:ClassAを充分に満足させることが可能となる。
【0037】
またこの際、上記したn型不純物の添加量としては、酸化亜鉛薄膜(12)の総量に対して、2〜8wt%とすることが好ましい。
これにより、より効果的に酸化亜鉛薄膜(12)の導電性を向上させることが可能となり、電磁波・近赤外線の遮蔽が可能となる。
n型不純物の添加量が2wt%未満となると、酸化亜鉛薄膜(12)の表面抵抗を0.4〜3Ω/□とすることが難しくなる。また、n型不純物の添加量が8wt%を超過すると、n型不純物の溶解度以上となり、これが酸化物として酸化亜鉛薄膜(12)中の粒界或いは表面に偏析することとなり、酸化亜鉛薄膜(12)中における電磁波の遮蔽性能が均一に現れずに結果、低下することとなる。
【0038】
以上により、本発明に係る透明電磁遮蔽膜は、簡単な構成にて、健康を害する危険性を有するだけでなく、電子機器の誤動作等の要因となる電磁波、電子機器の誤動作等の要因となるだけでなく、熱線としても働く近赤外線を遮蔽することが可能となり、またこれに加え、可視光領域において優れた透明性を得ることが可能となる。
【0039】
ここで、本発明に係る透明電磁遮蔽膜は、上記構成とすることにより、波長980〜1020nm及び波長1180〜1220nmにおける最大透過率を夫々16%以下とすることが可能となり、また、波長1200〜1400nmにおける最大透過率を10%以下とすることができる。
これにより、確実に近赤外線による電子機器の誤動作等を防止することが可能となる。
【0040】
また、本発明に係る透明電磁遮蔽膜は、波長550nmにおける最大透過率を65%以上とすることが可能となる。
オフィスでは、近年、事業所用PHSや無線LANなどによるコードレス化が進む一方で、オフィス内で使用する電波が外部電波と混信を起こし、情報漏洩や電子機器の誤動作が生じる等の問題が増加している。こうした無線システム利用のための快適な使用環境を得るためには、ビル内外の電波を20〜30dB(減衰効果:1/100〜1/1000)遮蔽する必要がある。しかし、従来は、窓ガラス部分の電磁遮蔽を行うと透過性が悪くなる、材料のコストが高い等、阻害要因が多くあった。
人間の最大視感度を示す波長は555nmで視感度は683lm/Wである。
従って、本発明に係る透明電磁遮蔽膜は、波長550nmにおける最大透過率が65%以上であることにより、確実に可視光領域における優れた透明性を有することができる、即ち、視感度を損なうことを防止することができる。
【0041】
更に、本発明に係る透明電磁遮蔽膜は、周波数2〜3GHzの範囲内において電磁波遮蔽性をマイナス40dB以下とすることができる。
これにより、民生用としては、もちろんのこと、MIL−STD−461(米国軍用規格)としても充分な電磁波遮蔽効果を得ることが可能となる。
【0042】
次に、上記した本発明に係る透明電磁遮蔽膜の製膜装置についての説明を行う。
図2は、本発明に係る透明電磁遮蔽膜の製膜装置を示す概略図である。
【0043】
本発明に係る透明電磁遮蔽膜(1)は、反応性プラズマ蒸着法を用いて製膜を行うことにより得られる。
即ち、製膜装置(2)は、製膜室となる真空チャンバ(21)と、真空チャンバ(21)内にプラズマビームを供給する供給源となるプラズマガン(22)と、プラズマガン(22)から供給されるプラズマビームを導入するハース(23)と、ハース(23)に導入されるプラズマビームの方向修正・制御を行うマグネットリング(24)と、基板(11)を加熱するヒータ(25)と、基板(11)を所定方向に移動させる駆動機構(図示せず)とを備えることにより構成されている。
【0044】
プラズマガン(22)は、圧力勾配型のdcアークプラズマを利用したものであり、真空チャンバ(21)の側壁に設けられている。
このプラズマガン(22)は、プラズマビームの基となる不活性ガス(ここではアルゴン(Ar))の導入路を有している。
【0045】
ハース(23)は、真空チャンバ(21)内の底部に配設されており、その中央部に製膜用の原料(以下、蒸発原料と称する)(3)を支持する部位を有している。
また、ハース(23)の周囲には、マグネットリング(24)が設けられており、このマグネットリング(24)の磁場により、プラズマガン(22)から供給されるプラズマビームが、ハース(23)の直上に入射するように調整される。
【0046】
基板(11)は、真空チャンバ(21)の上部に位置する搬送経路(26)において保持部材(図示せず)により、搬送経路(26)と平行となるようにして、その上面部分を保持されている。
この保持部材は、上記した駆動機構により、搬送経路(26)に対して平行に、且つ所定の速度(例えば、2〜5mm/sec)にて移動する。これにより、基板(11)が搬送経路(26)に対して相対的に平行移動を行う。
基板(11)は初期の状態において、図1に示される如く、右側部に位置しており、駆動機構により左方へと移動して、ハース(23)の上方を通過するように構成されている。
【0047】
基板(11)の更に上方には、ヒータ(25)が配設されており、基板(11)を常時、所定の温度(例えば、200〜250℃程度)となるように加熱を行う。
また、真空チャンバ(21)には、製膜アシスト用の酸素ガス(以下、アシストガスと称する)の導入路が設けられている。
以上により、製膜装置(2)が構成される。
【0048】
次に、上記製膜装置を用いた製膜方法について説明する。
先ず、真空チャンバ(21)の上記保持部材に基板(11)を設置し、また、ハース(23)に蒸発原料(ここでは酸化亜鉛焼結体)を装填し、真空チャンバ(21)内を所定の真空度(例えば、1×10−5〜4×10−5Pa)まで真空引きする。
次いで、基板(11)をヒータ(25)により所定温度まで上昇させた後、所定速度で搬送する。
次いで、プラズマガン(22)より、プラズマビームを発生させ、これをマグネットリング(24)の磁場により、ハース(23)直上に入射させる。
この際、製膜条件に応じて、アシストガスを真空チャンバ(21)内に導入する。
以上により、プラズマビームに曝された蒸発原料が昇華して、蒸発成分が蒸発・イオン化され、真空チャンバ(21)内、上方を移動する基板(11)に付着し、酸化亜鉛薄膜(12)の製膜が達成される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて、本発明に係る透明電磁遮蔽膜について詳述する。
本実施例における透明電磁遮蔽膜の製造には、基板として無アルカリガラス(HOYA NA35;厚み0.7mm,両面研磨)を用い、また、蒸発原料としてガリウム(Ga)を4wt%含有した酸化亜鉛焼結体を用いた。
【0050】
先ず、製膜装置の真空チャンバ内において、無アルカリガラス基板を保持部材により保持し、ハース内にGa4wt%含有酸化亜鉛焼結体を装填した。
次いで、真空チャンバ内を真空度10−7torr(1.33×10−5Pa)まで真空引きし、無アルカリガラス基板をヒータにて200℃に上昇させた後、速度2.3mm/secにより、搬送を開始させた。
続いて、圧力勾配型のdcアークプラズマを用いたプラズマガンから、プラズマビームを発生させ、ハース周囲に設けられたマグネットリングにより、このプラズマビームをハース直上に入射させた。
【0051】
以上の工程を経ることで、Ga4wt%含有酸化亜鉛焼結体を昇華させ、無アルカリガラス基板上に酸化亜鉛薄膜を製膜し、透明電磁遮蔽膜を作製した。
尚、サンプルとしては、表面サイズが120mm×65mmで一定とし、膜厚を0.51μm,0.98μm,1.50μm,1.99μm,2.50μm,2.85μm,4.01μm,5.00μmの8種類として用意した。
膜厚の測定には、段差計,X線回折による反射特性,光干渉現象を利用した測定法の3つを用い、クロスチェックを行った。
また、作製したサンプルの抵抗率,シート抵抗(表面抵抗),キャリア密度,キャリア移動度を、ホール測定(Accent HL5500PC)及び四探針法により測定した。
サンプルの分光測定は、分光光度計(HITACHI UV-4100)で行った。
【0052】
サンプルの電磁波の吸収量を評価する手法としては、導波管内で測定する方法(同軸導波路変換機 島田理化工業株式会社 5C052 1.7〜7.6GHz)を用い、周波数2.45GHzにおける減衰率(電磁遮蔽性)の測定を行った。また、この際の測定装置としては、ベクトルネットワークアナライザ(ヒューレットパッカード社 HP8510B)を利用した。
導波路内側の寸法は120mm×70mm程度であり、アルミニウム製の試料ホルダ(4)で試料を保持し、測定を行った(図3参照)。
【0053】
表1及び表2に各サンプルの抵抗率,シート抵抗(表面抵抗),キャリア移動度,キャリア密度,周波数2.45GHzにおける減衰率(電磁遮蔽性)(単位:dB)を明記する。
尚、後述する図5においては、減衰率は絶対値として表記する。
【0054】
【表1】


【0055】
【表2】


【0056】
図4に、本発明に係る透明電磁遮蔽膜の分光特性(各波長における透過率)を示した。
尚、図4中において、(1)は膜厚0.5μmにおける分光特性を、(2)は膜厚1μmにおける分光特性を、(3)は膜厚1.5μmにおける分光特性を、(4)は膜厚2μmにおける分光特性を、(5)は膜厚2.5μmにおける分光特性を、(6)は膜厚3μmにおける分光特性を、(7)は膜厚4μmにおける分光特性を、(8)は膜厚5μmにおける分光特性を、夫々示している。
図4に示されるように、サンプルのうち、膜厚5μmを除く全てのサンプルは、可視光領域550nmにおいて、透過率65%以上の値を示した。
同程度の減衰率(マイナス20〜40dB)を有するメタル(金属)蒸着膜では、いずれも当該透過率は65%以下となるが、本発明ではこれを上回ることが図4から明白である。
【0057】
図5には、本発明に係る透明電磁遮蔽膜の周波数2.45GHzにおける電磁波の減衰率(減衰率のシート抵抗(表面抵抗)による依存性)を示した。
図5及び上記表に示されるように、シート抵抗が3.0600Ω/□である、即ち、膜厚0.51μm以外の全てのサンプルは、減衰率がマイナス40dB以下(絶対値表記としては40dB以上)であり、中でも、透過率が良好な膜厚を有するもののうち、シート抵抗0.8000Ω/□(膜厚2.50μm)においては、おおよそマイナス48dBという高い値を得ることができた。
【0058】
以上の如く、本発明によれば、優れた可視光領域における透過性と導電性とを有し、これに加え、電子レンジ、PDPなどから発生し、健康を害する危険性を有するだけでなく、電子機器の誤動作等の要因となる電磁波の遮蔽機能と、電子機器の誤動作等の要因となるだけでなく、熱線としても働く近赤外線の遮蔽機能を兼ね備え、また低価格でかつ将来にわたって需要に対する供給に全く心配のない、更にまた、耐候性,耐環境性,帯電防止性に優れた透明電磁遮蔽膜を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、PDPや電子レンジ等における透過性を有する電磁遮蔽膜として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る透明電磁遮蔽膜を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る透明電磁遮蔽膜の製膜装置を示す概略図である。
【図3】本発明に係る透明電磁遮蔽膜による電磁波の減衰率を測定するために用いる試料ホルダ周辺を示した概略図である。
【図4】本発明に係る透明電磁遮蔽膜の分光特性(各波長における透過率)を示した図である。
【図5】本発明に係る透明電磁遮蔽膜の周波数2.45GHzにおける電磁波の減衰率を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1 透明電磁遮蔽膜
11 基板
12 酸化亜鉛薄膜(酸化亜鉛)
【出願人】 【識別番号】597154966
【氏名又は名称】学校法人高知工科大学
【出願日】 平成19年3月26日(2007.3.26)
【代理人】 【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博


【公開番号】 特開2008−66699(P2008−66699A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2007−80337(P2007−80337)