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【発明の名称】 メタライズドセラミック基板の製造方法
【発明者】 【氏名】福山 博之

【氏名】米田 武彦

【要約】 【課題】金属層−基板間の密着強度が高く、微細回路パターン間の絶縁性が確実にとれるようなメタライズド窒化アルミニウム基板を提供することを目的とする。

【構成】窒化アルミニウム基板を、酸素分圧が10−4気圧以下である雰囲気中で、好ましくは1150〜1500℃で5時間以上加熱して酸化することにより表面から3〜15μm程度の厚さの酸化アルミニウム層を形成する。得られた表面酸化された窒化アルミニウム基板上に金属膜を形成し、この金属膜の一部をイオンミリングやレーザー加工等により除去して配線パターンを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素分圧が10−4気圧以下である雰囲気中で窒化アルミニウム基板の表面を、5時間以上酸化することにより表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板を得る工程、及び該工程で得られた基板の酸化アルミニウム層上に金属からなる配線パターンを形成する工程を含むメタライズドセラミック基板の製造方法。
【請求項2】
金属からなる配線パターンを形成する方法が、酸化アルミニウム層の全面を金属膜で被覆する工程及び該工程で被覆された金属膜の一部をイオンミリング又はレーザー加工により除去する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窒化アルミニウム基板の表面を酸化することにより表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板を製造する方法において、前記酸化を酸素分圧が10−4気圧以下である雰囲気中、酸化温度以上の温度で5時間以上加熱することにより行うことを特徴とする表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法で製造されたものであり、かつ表面に厚さ3〜15μmの酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板であって、前記酸化アルミニウム層には複数の空隙が存在し、該酸化アルミニウム層に存在する複数の空隙のうち口径が円相当径で0.25μm以上である空隙の全空隙数に占める割合が5%以上で且つ空隙を含む該酸化アルミニウム層の面積に対する全空隙の総面積が占める割合が7〜30%であることを特徴とする表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム基板の表面に配線パターンとなるような金属層が形成されたメタライズドセラミック基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム基板は、高い熱伝導性或いは高い耐熱衝撃性等の優れた特徴を有しており、半導体素子搭載用のサブマウント、パワーモジュール用の基板等、各種電子回路基板材料として広く使用されている。
【0003】
窒化アルミニウム基板を電子回路用基板として使用する場合には、その表面に金属層を形成して電極や回路パターンを形成する必要がある。ところが、窒化アルミニウムには、アルミナに比べて金属に対する接合性が低いという問題があり、窒化アルミニウム基板の表面に高い接合強度で接合した金属層を形成するために様々な工夫が成されている。
【0004】
一方、窒化アルミニウム基板の表面を酸化し、得られた酸化膜上に金属層を形成する方法も知られており、特殊な酸化方法で酸化膜を形成した場合には、その上に高い接合強度で接合した金属層を形成することができる(特許文献1参照)。
【0005】
このような方法で製造された窒化アルミニウム系メタライズ基板を用いて、微細な回路パターンを形成する場合には、充分な広さを有する金属層を形成し、金属層の不要部分(電極や配線とならない部分)を除去方法が一般に採用されている。通常、不要な金属層を除去する方法としては、フォトリソ技術及びイオンミリング法を用いて不要部をエッチングする方法が採用さている。
【0006】
また、微細な金属配線を形成する方法としてイオンミリング法により不要金属を除去する方法が知られおり(特許文献2参照)、効率性の高い配線基板を製造する方法としてメタライズ基板をレーザー加工する方法が知られている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2005/075382号パンフレット
【特許文献2】特開2003−209415号公報
【特許文献3】特開2006−202840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によれば、該文献に開示されている新しい酸化法で酸化処理した窒化アルミニウム基板は、アルミナのメタライズ方法を適用したメタライズが可能であり、しかも得られたメタライズは、基板とメタライズ層との密着性が高く、ヒートサイクルに対する耐久性も高く、さらにメッキ処理を施しても基板が劣化し難いとされている。
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の方法に従って、窒化アルミニウム基板の表面を酸化し、更に得られた酸化膜上に金属層を形成したメタライズ基板について、フォトリソ技術を用いて不要部をエッチングすることにより微細回路パターンを形成したところ、配線間の絶縁が取れない場合があることが判明した。
【0010】
イオンミリング法やレーザー加工法は、微細回路パターンの形成法として有用な方法であるが、窒化アルミニウム基板上に直接金属層を形成したメタライズ基板にこれら方法を適用した場合には、形成された配線間の絶縁が取れない場合があることが判明した。
【0011】
そこで、本発明は、第一に、表面に酸化層を有する窒化アルミニウム基板を用いたメタライズ基板であって、イオンミリング法やレーザー加工法を用いて不要部をエッチングして微細回路パターン形成したときに配線間の絶縁が確実にとれるようなメタライズ基板を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、窒化アルミニウム系メタライズ基板にイオンミリング法やレーザー加工法を適用し、信頼性の高い微細回路を形成する方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、特許文献1に開示されているメタライズ基板において、前記したような問題が発生する原因について検討を行った。その結果、特許文献1に開示されている酸化方法を採用した場合には、酸化膜に幅の大きな分岐のあるクラックが発生することを防止することはできるものの、クラック自体の発生を完全に抑制することはできず、そのクラックの隙間に入り込んだ金属が通常のエッチングでは除去できない場合があり、その残さ金属によって配線間が電気的に接合してしまうのが原因であることを突き止めた。
【0014】
また、後者の問題の原因について検討を行ったところ、窒化アルミニウム基板上に直接金属層を形成したメタライズ基板にイオンミリング法やレーザー加工法を適用しときには、特開平2003−218518号公報の0008段落に記載されているように、レーザー加工を施した場合には、窒化アルミニウムの窒素原子が脱離して金属Alが形成されることがあり、それによって絶縁が破壊されることが原因であることが判明した。
【0015】
本発明者等は、アルミニウム原子に陰性の原子がより強固に結合している酸化アルミニウムではイオンミリング法やレーザー加工法を適用しても金属Alは形成されないのではないかと考え、窒化アルミニウムの表面に、金属が入り込むようなクラックが存在しない酸化膜を形成することができれば、上記2つの問題は一挙に解決できると考え、そのような酸化膜の形成方法について検討を行った。
【0016】
その結果、窒化アルミニウム基板を酸化処理するに際し、加熱処理前に窒化アルミニウム基板を導入した炉内を真空脱気処理してから不活性ガスを導入した雰囲気中で加熱し、酸化温度に達してからも同雰囲気中で保持し続けた場合にも不活性ガス中に含まれる極微量の酸化性ガスによって窒化アルミニウム基板の酸化が進行すること、及びこのようにして表面酸化処理した基板を用いてメタライズ基板を形成した場合には、前記したような問題が起こらないという知見を得るに到った。
【0017】
本発明は、このような知見に基づき成されたメタライズドセラミック基板の製造方法であり、酸素分圧が10−4気圧以下である雰囲気中で窒化アルミニウム基板の表面を酸化することにより表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板を得る工程、及び該工程で得られた基板の酸化アルミニウム層上に金属からなる配線パターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
上記本発明のメタライズドセラミック基板の製造方法における前段の工程は、表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板を製造する方法としても新規なものであり、該方法によって得られる表面酸化窒化アルミニウム基板も、前記特許文献1に開示されている方法で得られる表面酸化窒化アルミニウム基板と比べて、酸化層に含まれる空隙の数が多く、しかも口径が大きい空隙の割合が高い。より具体的には、酸化アルミニウム層に存在する複数の空隙のうち口径が円相当径で0.25μm以上である空隙の全空隙数に占める割合が5%以上で且つ空隙を含む該酸化アルミニウム層の面積に対する全空隙の総面積が占める割合が7〜30%であるという特徴を有する新規なものである。
【0019】
即ち、第二の本発明は、窒化アルミニウム基板の表面を酸化することにより表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板を製造する方法において、前記酸化を酸素分圧が10−4気圧以下である雰囲気中で行うことを特徴とする方法であり、第三の本発明は、該方法で製造される表面に酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム基板である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法によれば、前記特許文献1に開示されている窒化アルミニウム系のメタライズ基板の優れた特徴を保持し、且つ、金属層(メタライズ層)の不要部をエッチングすることにより微細回路パターンを形成しても配線間の絶縁が良好に保たれた窒化アルミニウム系メタライズ基板を製造することができる。また、不要な金属層の除去方法としてイオンミリング法やレーザー加工法を適用しても下地セラミックスの金属化が起こらないので、これら方法を採用して、より微細なパターン形成を行うこともできる。
【0021】
このような優れた効果が得られる機構の詳細は不明であるが、本発明の方法で得られる表面酸化窒化アルミニウム基板について、その酸化層について分析を行ったところ、該酸化層には多くの空隙が存在し、しかも口径が大きい空隙の割合が高かったことから、上記機構は次のようなものであると推定している。すなわち、本発明の方法では窒化アルミニウム基板を極低濃度の酸素中で非常にゆっくり酸化するために上記したような特徴を有する空隙が形成され、酸化膜形成時或いは冷却時における応力(形成されたアルミナと窒化アルミニウムの格子定数の違いに起因して発生する)を空隙が吸収又は分散する(緩和する)ために、クラックの発生が大幅に抑制されるとともに、クラックが発生してもその隙間が非常に狭くなるため、メタライズにおいて金属がクラックの隙間に入り込むことがなくなるためであると推定している。ちなみに前記特許文献1に開示されている表面に酸化層を有する窒化アルミニウム基板の表面のクラック幅は100nmを下回ることがないのに対し、本発明の方法によれば酸化膜厚が5μmまでは0〜50nm程度であり、酸化膜厚が10μmの場合でも100nm程度である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の製造方法で使用する窒化アルミニウム基板は、単結晶或いは多結晶等の結晶性のもの、アモルファス、又は結晶相とアモルファス層が混在するもの、さらには焼結助剤および必要に応じて他の添加剤を添加して窒化アルミニウム基板粉末を焼結した焼結体等が使用できる。また、その形状や大きさ等も特に限定されず、板状や異形等の任意の形状に加工された形成体が使用できる。
【0023】
たとえば、窒化アルミニウム粉末にイットリア、カルシア、硝酸カルシウム及び炭酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して定法により所定の形状に成形した後に焼結したもの及びこれを更に加工したものが好適に使用できる。
【0024】
本発明の製造方法においては、まず窒化アルミニウム基板の表面を酸素分圧が10−4気圧以下の雰囲気中で酸化する。窒化アルミニウムの酸化開始温度は図1に示されるように1100℃であるから、当該温度以上では雰囲気中の酸素分圧を10−4気圧以下とする必要がある。
【0025】
不活性ガス中の酸素分圧は、酸化層の形成速度に影響を与え、一般に酸素濃度が高いほど酸化層の形成速度は速くなる。しかしながら、酸化に際して雰囲気中の酸素分圧が10−4気圧よりも高い場合には、本発明のような効果は得られない。即ち、酸化アルミニウム層を有する窒化アルミニウムセラミックス上に金属からなる配線パターンを形成する場合において、該工程で被覆された金属膜の一部をイオンミリング法やレーザー加工法によって除去した場合、窒化アルミニウムの窒素原子が脱離して金属Alが形成されることがあり、それによって絶縁が破壊されるという問題がある。なお、酸素分圧が10−4気圧は酸素含有量が100vol ppmの窒素ガスを大気圧で使用した場合がこれに相当する。
【0026】
酸化に際して雰囲気中の酸素分圧は、好ましくは10−5気圧以下である。一方、酸素分圧は10−25気圧以上であることが好ましく、10−10気圧以上であることがより好ましい。窒化アルミニウムとその酸化物である酸化アルミニウムとの反応が平衡に達するときの酸素分圧は極めて小さく、例えば1300Kでは10−25気圧であるため、これ以上高い酸素分圧下においては窒化アルミニウムの酸化反応が支配的となる。通常、市販の不活性ガス中には高純度乃至超高純度のものでも0.1〜数ppm程度の酸素が含まれており、窒化アルミニウムの酸化用ガスとして十分に機能する。
【0027】
酸素分圧を上記範囲にする方法は特に制限されないが、一般的には、窒素、アルゴン等の純度99.995%以上の市販のボンベ入り不活性ガス等を用いればよい。酸素分圧をより厳密に制御するためには、99.999%以上、より好ましくは99.9999%以上、最も好ましくは99.99995%以上の高純度不活性ガスを用いる。このような高純度不活性ガスに、必要に応じて所望の酸素分圧となるように酸素ガスを混合すればよい。
【0028】
さらに必要に応じて、一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガス、あるいはこれらのガスと窒素との混合ガスと窒化アルミニウム基板との化学平衡を利用して極低酸素分圧雰囲気を作り出すことも可能である。但し、一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスの市販品は不純物として酸素ガスを比較的多く含むため、酸素分圧が高すぎる場合には酸素捕集剤を用いて被処理物に達する前にガス中の酸素を十分に取り除く必要がある。酸素捕集材としてはグラファイトやチタンスポンジなど活性の高い還元剤を用いることができる。また真空ポンプなどを用いて炉内の酸素分圧を制御してもよい。
【0029】
酸化温度は、1100℃以上であれば特に制限されないが、酸化層の厚さを適切に制御するために酸化開始温度より600℃高い温度以下(即ち、1100〜1700℃)とするのが好適である。好ましくは1150〜1500℃、特に1200〜1400℃である。
【0030】
また本発明においては、酸化時間は5時間以上必要である。本発明の製造方法では、酸素分圧が低いため空気中での酸化等に比して酸化速度が遅い。そのため短時間の酸化では必要な酸化膜厚が得られない。酸化温度及び、得ようとする酸化層の厚さ(後述する)に応じて適宜決定できるが、好適な酸化時間は10〜500時間であり、より好適には30〜200時間である。
【0031】
上記酸化温度に昇温するまでの雰囲気、及び昇温速度等の条件は特に限定されるものではないが、より良質な酸化層を得るためには、好ましくは1000℃よりも高い温度、さらに好ましくは800℃よりも高い温度では、雰囲気中の酸素分圧を10−4気圧(より好ましくは10−5気圧)以下とする。
【0032】
さらに、窒化アルミニウム基板の温度が200℃以上、より好ましくは100℃以上になってから、800℃に到達するまでも酸素分圧を低く保つことが好ましい。これは昇温時の雰囲気を大気等の酸素分圧が高い雰囲気とした場合には、昇温加熱時に被処理窒化アルミニウム基板中に酸素が固溶してしまい、酸化反応時に比較的幅が広く枝分かれの多いクラックが数多く発生する可能性が高いためである。
【0033】
100℃(又は200℃)〜800℃の範囲における酸素分圧は、10−2気圧以下であることが好ましく、10−4気圧以下であることがより好ましく、10−5気圧以下であることが特に好ましい。
【0034】
また、雰囲気制御の容易さという点から、酸化を行う炉内に被処理対象の窒化アルミニウム基板を導入した後、200℃(好ましくは100℃)に到達する前に炉内の酸素分圧を10−4気圧以下、より好ましくは10−5気圧以下とし、その後、降温工程において酸化温度(1100℃)未満に到達するまでは当該酸素分圧を保持するのが好適である。
【0035】
なお本発明の製造方法において、酸化中、即ち、基板温度が1100℃以上となっている間は常に酸素分圧が前記範囲下にあることが好ましいが、一時的には10−4気圧以上となる場合があってもよい。基板温度が1100℃以上となっている時間のうち、80%以上が前記範囲下であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0036】
また水分(水蒸気)は酸化に大きく関与するため、本発明の製造方法は、200℃以上(好ましくは100℃以上)に昇温してから、1100℃未満に降温するまでの間は露点が−50℃以下、好ましくは−60℃以下、さらには−65℃以下、特に−70℃以下に管理された雰囲気中で行うことが望ましい。
【0037】
酸化温度よりも低い温度での雰囲気制御も、酸化温度における雰囲気制御と同様に行うことができる。なお、酸化を行う炉内の初期の酸素を確実に除去し、酸化時の酸素分圧を10−4気圧以下とするために、窒化アルミニウム基板を炉内に導入した後、炉内を真空脱気し、前述のような不活性ガスで置換することが望ましい。当該真空脱気と不活性ガス置換は複数回行うことがより好ましい。真空脱気時の減圧度は特に限定されないが、炉内の圧力を100Pa以下、特に20Pa以下とするのが好適であり、1Pa以下とするのが最も好ましい。
【0038】
酸化に際しての昇降温速度は特に限定されず、実用的に制御可能な昇温速度の範囲、例えば10〜80℃/分、好ましくは30〜50℃/分で昇温すればよい。なお、当該昇温速度を極めて速い速度、例えば80℃/分以上とすれば、窒化アルミニウム基板中に酸素が固溶する割合が低く、よって、800℃までの昇温に際して酸素分圧等を低く制御する必要性を低下させることができる。
【0039】
一方、降温に際しては、酸化処理された窒化アルミニウム基板にできるだけ熱衝撃を与えないよう3℃/分以下、好ましくは1℃/分以下、より好ましくは0.5℃/分以下の速さで冷却するのがよい。
【0040】
このようにして得られた表面酸化された窒化アルミニウム基板は、その表面の酸化層として酸化アルミニウム(アルミナ)層を有する。当該酸化層の厚さは、イオンミリング法又はレーザー加工法によって配線パターンを形成する際に窒化アルミニウムの導体化を防止するという観点から3μm以上であることが好ましい。他方、当該酸化層の厚さが厚すぎる場合、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムとの熱膨張係数の差に由来すると推定される比較的幅が広く枝分かれの多いクラックが発生しやすく、密着性が低下する場合がある。このため、本発明の製造方法で形成する酸化アルミニウム層の厚さは15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。形成される酸化層の厚さは、酸化条件に依存し、高温で酸化するほど、また長時間酸化するほど厚くなる。
【0041】
また本発明者らの検討によれば、上記の如き方法で形成した酸化層は、空隙を有する特定の構造を有することが明らかとなった。即ち、後述する実施例に記載の方法で測定・解析を行うと、酸化層中における空隙部の割合が7〜30%であり、また当該空隙に占める円相当径で0.25μm以上の空隙が面積で5%以上存在するという特徴を有する。
【0042】
酸化層の密着性等を考慮すると、酸化層中における空隙部の占める面積の割合が7〜20%、円相当径で0.25μm以上の空隙が全空隙数の5〜25%であることが好ましい。さらに円相当径で0.3μm以上の空隙が全空隙数の2%以上であることが好ましい。
【0043】
従来の方法で酸化処理した厚さ0.1〜10μmの酸化層を有する窒化アルミニウム基板からなる電子回路用基板は、その表面に金属層を形成したときに金属層の密着強度が高い。しかしながら通常は酸化層の厚みが3μmを超えるあたりから密着強度が低下し始め、5μm以上にもなると初期強度の半分程度まで強度が低下する。ところが上記の本発明の製造方法で得られる酸化層を有する窒化アルミニウム基板は酸化層の厚みが3μm以上となっても実用十分な密着強度を維持しており、それ以上の厚みになっても急激に密着強度が低下することがない。
【0044】
従って、上記の方法で製造された表面酸化された窒化アルミニウム基板上に金属配線パターンを形成すれば、基板とメタライズ層との密着性が高く、ヒートサイクルに対する耐久性も高く、さらにメッキ処理を施しても基板が劣化し難く、さらに微細回路パターンを形成しても配線間の絶縁を良好に保ちやすい(歩留まりの良い)メタライズドセラミック基板を製造することができる。
【0045】
表面酸化された窒化アルミニウム基板状に金属配線パターンを形成する方法は、公知の方法を適宜採用すればよく、例えば、基板上の全面を金属膜で被覆し、該被覆された金属膜の一部をイオンミリング法又はレーザー加工法により除去する工程が好適に採用できる。
【0046】
被覆に用いる金属は、所望に応じて適宜選択すればよく、銅、アルミニウム、金、銀、白金、チタン、タングステン、ニッケル、モリブデン、パラジウム等、或いはこれらの合金により被覆できる。
【0047】
金属膜で被覆する方法も特に限定されるものではなく、公知の方法が採用でき、例えば、厚膜法、ポストファイヤー法、電気メッキ、無電解メッキ、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD法、金属板の直接接合等により金属被覆できる。
【0048】
例えば銅の導体ペーストをスクリーン印刷し、焼き付けた後、ニッケル及び金メッキにより被覆した回路基板はパワーモジュール用基板や半導体素子搭載用のサブマンウントとして用いられる。
【0049】
金属被覆厚さも特に限定されず、通常は0.1〜100μm程度である。
【0050】
基板の全面に形成された金属被覆に所望の配線パターンを形成するには、例えば、スパッタリングにより金属層を形成した基板上にレジストを塗布し、所定のパターンで露光後に現像を行い、アルゴンイオンビーム照射によって該露光部の金属を除去(イオンミリング)する、或いは金属層に所定のパターンでYAGレーザーやエキシマーレーザーなど特定波長のレーザーを照射して金属層を除去(レーザー加工)すればよい。
【0051】
上記のようして製造されたメタライズドセラミックス基板は、金属配線パターンの密着性などの種々の性能に優れ、また、微細回路パターンを形成しても配線間の絶縁を良好に保ちやすいため、工業的に優れたメタライズドセラミックス基板である。
【0052】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.2μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を内径120mm、長さ1000mmのムライトセラミックスを炉心管とする高温雰囲気炉(株式会社東海高熱工業製小型高温雰囲気炉)内に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1350℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1350℃に達してから、そのまま75時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:10−7気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0054】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて分析を行った。各種分析の詳細を以下に示す。
【0055】
〔XRDによる反応生成物の同定〕
該試料についてX線回折装置(理学電機株式会社製X線回折装置RINT1200)を用いてXRD測定を行ったところ、その回折パターンから該試料の酸化物層はα−アルミナであることが確認された。なお測定は、入射X線Cu−Kα線、管電圧40kV、管電流40mA、受光スリット0.15mm、モノクロ受光スリット0.60mmで行った。
【0056】
〔SEMによる表面および断面観察〕
該試料をダイヤモンドカッターにて5mm×5mmに切断した後、酸化面を上にして観察用試料台にカーボンテープを用いて固定した。これをイオンスパッタリング装置(日本電子株式会社製マグネトロンスパッタリング装置JUC−5000)を用いてPtコーティングし、FE−SEM(日本電子株式会社製フィールドエミッション走査電子顕微鏡JSM−6400)にて該試料表面の観察を行った。観察は加速電圧15kV、プローブ電流5×10−11A、エミッション電流8μA、倍率10,000倍で行い、任意の視野を観察し、同箇所を写真撮影した。典型的な写真を図2に、そのイラストを図3に示す。図3に示すように、酸化層の表面には下地の表面状態を反映した状態で酸化アルミニウムの結晶が成長しており、細長いクラックがいくつか観察された。図3より、クラックの溝を最短で結ぶ線の長さを測定し、これをクラック幅として30点の平均を求め、同様にして全5視野のクラックの総平均を求めたところ15nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で3.4μmであった。任意の視野を10箇所観察し、同箇所を写真撮影した。断面の典型的な写真を図4に、そのイラストを図5に示す。酸化層中には図5、図6に示すような様々な形状の空隙が無数に観察された。これらの断面写真について画像解析を行ったところ、空隙の面積の合計が酸化層に占める割合は10.1%であった。また、空隙の円相当径が0.2μm、0.25μm、0.3μmより大きい空隙の数が空隙全体に占める割合はそれぞれ11%、5%、2%であった。
【0057】
〔画像解析ソフトによる酸化層断面の空隙解析〕
旭化成工業社製画像解析ソフトIP−1000(統合アプリケーション:A像くん)を用いて、SEM観察による酸化層の断面形状をトレーシングしたデータの解析を行った。まず空隙を含む酸化層の輪郭ついて粒子解析を行い、酸化層の総面積を求めた。次に酸化層中の空隙の輪郭について同様に粒子解析を行い、空隙の総面積、空隙の円相当径別分布データを得た。さらに円相当径φが0.3μm、0.25μm、0.2μmとなる空隙の全空隙数に占める割合及び空隙を含む酸化層の面積に占める全空隙の総面積の割合を求めた。
【0058】
〔画像解析ソフトによる酸化層断面の空隙解析のための準備〕
SEMにより撮影した試料の破断面の写真を200倍(等倍=100倍)で2枚複写し、トレーシングペーパーを上に重ねて固定した。1枚は空隙を含む酸化層の輪郭を極細のマジックペンでトレーシングし、もう1枚は酸化層中に存在する空隙の輪郭をトレーシングしてそれぞれをスキャナーで読み取りビットマップ形式で電子保存した。さらに別の視野を撮影した写真について同様の作業を行った。
【0059】
上記の表面酸化窒化アルミニウム素材上にスパッタリングによる薄膜メタライズ(Ti/Pt/Au=0.06/0.2/0.6μm)を施した。メタライズ層上にヘッド径φ1.1mm、Niメッキされた42alloy製ネールヘッドピンをフラックス及びPb−Sn共晶はんだチップにより接合し、ピンを毎分10mmの速度で垂直に引っ張ることにより剥離試験を行なった。ピンが素材から剥離したときの引っ張り強度を剥離強度とし、10点測定したところ、その平均剥離強度は90MPaの高強度であった。また、剥離モードは測定した10箇所中、窒化アルミニウム内部破壊が9つ、はんだ間破壊が1つであった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表1に示す。
【0060】
さらにフォトリソ、イオンミリングにより回路間の幅が100μmの幅となるよう回路形成し、株式会社アドバンテスト製デジタルマルチメーターR6871にて回路間の電気抵抗を測定したところ測定上限値(少なくとも100MΩ)以上であった。
【0061】
実施例2
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.2μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99%、露点−65℃、酸素含有量50vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1300℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1300℃に達してから、そのまま100時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:10−5気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0062】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。次にSEMによる表面観察結果を図6(写真)および図7(図6のイラスト)に、断面観察結果を図8(写真)および図9(図8のイラスト)に示す。図6に示すように、酸化層の表面には下地の表面状態を反映した状態で酸化アルミニウムの結晶が成長しており、細長いクラックがいくつか観察された。図6及び他の4視野の表面観察写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ56nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で5.4μmであった。酸化層中には図8、図9に示すような様々な形状の空隙が無数に観察された。これらの断面写真について画像解析を行ったところ、空隙の面積の合計が酸化層に占める割合は13.7%であった。また、空隙の円相当径が0.2μm、0.25μm、0.3μmより大きい空隙の数が空隙全体に占める割合はそれぞれ22%、12%、8%であった。
【0063】
上記の表面酸化窒化アルミニウム基板上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は77MPaの高強度であった。また、剥離モードは測定した10箇所中、窒化アルミニウム内部破壊が9つ、はんだ間破壊が1つであった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表1に示す。
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ測定上限値以上であった。
【0064】
実施例3
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.2μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1350℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1350℃に達してから、そのまま100時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:10−7気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0065】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。次にSEMによる表面観察結果を図10(写真)および図11(図10のイラスト)に、断面観察結果を図12(写真)および図13(図12のイラスト)に示す。図10に示すように、酸化層の表面には下地の表面状態を反映した状態で酸化アルミニウムの結晶が成長しており、細長いクラックがいくつか観察された。図10及び他の4視野の表面観察写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ95nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で8.7μmであった。酸化層中には図12、図13に示すような様々な形状の空隙が無数に観察された。これらの断面写真について画像解析を行ったところ、空隙の面積の合計が酸化層に占める割合は15.3%であった。また、空隙の円相当径が0.2μm、0.25μm、0.3μmより大きい空隙の数が空隙全体に占める割合はそれぞれ25%、13%、7%であった。
【0066】
表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は64MPaであった。また剥離モードは、測定した10箇所中、窒化アルミニウム内部破壊が9つ、はんだ間破壊が1つであった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表1に示す。
【0067】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ測定上限値以上であった。
【0068】
実施例4
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.4mmの板状で、表面粗さRaが0.05μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99%、露点−60℃、酸素含有量50vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1350℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1300℃に達してから、そのまま80時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:10−5気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0069】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。酸化層表面の表面SEM写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ89nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で6.2μmであった。
【0070】
表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は93MPaであった。また剥離モードは、測定した10箇所中、窒化アルミニウム内部破壊が2つ、はんだ間破壊が8つであった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表1に示す。
【0071】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ測定上限値以上であった。
【0072】
実施例5
長さ50mm、幅25mm、厚さ0.8mmの板状で、表面粗さRaが0.5μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1250℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1250℃に達してから、そのまま100時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:10−7気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0073】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。酸化層表面の表面SEM写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ29nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で3.2μmであった。 表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は86MPaであった。また剥離モードは、測定した10箇所中、窒化アルミニウム内部破壊が8つ、はんだ間破壊が2つであった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表1に示す。
【0074】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ測定上限値以上であった。
【0075】
実施例6
長さ50mm、幅25mm、厚さ0.8mmの板状で、表面粗さRaが0.5μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1385℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1385℃に達してから、そのまま100時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:10−7気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0076】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。酸化層表面の表面SEM写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ42nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で10.0μmであった。 表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は95MPaであった。また剥離モードは、全てはんだ間破壊であった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表2に示す。
【0077】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ測定上限値以上であった。
【0078】
比較例1
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.05μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1200℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1200℃に達してから、窒素ガスの流通を停止し、次いで圧縮空気をドライヤーで乾燥したdry−air(露点−80℃)を流速0.5(l/分)で流通させ、そのまま30時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:0.21気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0079】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。次にSEMによる表面観察結果を図14(写真)および図15(図14のイラスト)に、断面観察結果を図16(写真)および図17(図16のイラスト)に示す。図14に示すように、酸化物層の表面には隆起による筋状の模様が観察され、細長いクラックがいくつか観察された。図14及び他の4視野の表面観察写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ104nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で6.1μmであった。酸化層中には図16、図17に示すような様々な形状の空隙が観察されたが、同程度の酸化層の厚みであった実施例2に比較してその径は小さく、全体的に少なかった。特に表面近傍には少なかった。これらの断面写真について画像解析を行ったところ、空隙の面積の合計が酸化層に占める割合は3.4%であった。また、空隙の円相当径が0.2μm、0.25μm、0.3μmより大きい空隙の数が空隙全体に占める割合はそれぞれ6%、3%、1%であった。
【0080】
上記の表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は41MPaの高強度であった。また、剥離モードは全て酸化層−窒化アルミニウム間破壊であった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表2に示す。
【0081】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ13.4Ωであった。
【0082】
比較例2
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.05μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1300℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1300℃に達してから、窒素ガスの流通を停止し、次いで圧縮空気をドライヤーで乾燥したdry−air(露点−80℃)を流速0.5(l/分)で流通させ、そのまま15時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:0.21気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0083】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。次にSEMによる表面観察結果を図18(写真)および図19(図18のイラスト)に、断面観察結果を図20(写真)および図21(図20のイラスト)に示す。図18に示すように、酸化物層の表面には隆起による筋状の模様が観察され、細長いクラックがいくつか観察された。図18及び他の4視野の表面観察写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ175nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で8.3μmであった。酸化層中には図20、図21に示すような様々な形状の空隙が観察されたが、同程度の酸化層の厚みであった実施例3に比較してその径は小さく、全体的に少なかった。特に表面近傍には少なかった。これらの断面写真について画像解析を行ったところ、空隙の面積の合計が酸化層に占める割合は3.7%であった。また、空隙の円相当径が0.2μm、0.25μm、0.3μmより大きい空隙の数が空隙全体に占める割合はそれぞれ13%、5%、3%であった。
【0084】
上記の表面酸化窒化アルミニウム基板上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は43MPaであった。また、剥離モードは、全て酸化層−窒化アルミニウム間破壊であった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表2に示す。
【0085】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ0.6Ωであった。
【0086】
比較例3
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.05μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1300℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1300℃に達してから、窒素ガスの流通を停止し、次いで圧縮空気をドライヤーで乾燥したdry−air(露点−80℃)を流速0.5(l/分)で流通させ、そのまま50時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:0.21気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0087】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。酸化層表面の表面SEM写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ150nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で7.3μmであった。 表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は51MPaであった。また剥離モードは、全て酸化層−窒化アルミニウム間破壊であった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表2に示す。
【0088】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ1.9kΩであった。
【0089】
比較例4
長さ50.8mm、幅50.8mm、厚さ0.635mmの板状で、表面粗さRaが0.05μm以下である窒化アルミニウム基板(株式会社トクヤマ製SH30)を実施例1と同じ装置に導入し、炉内をロータリー真空ポンプにて0.1Pa以下に減圧した後、窒素ガス(純度99.99998%、露点−80℃、酸素含有量0.3vol ppm)で大気圧まで復圧置換し、流速0.5(l/分)の窒素流通下で1300℃まで昇温した(昇温速度:3.3℃/分)。基板付近温度が1300℃に達してから、窒素ガスの流通を停止し、次いで圧縮空気をドライヤーで乾燥したdry−air(露点−80℃)を流速0.5(l/分)で流通させ、そのまま30時間保持して窒化アルミニウム基板の表面を酸化した(酸素分圧:0.21気圧)。保持終了後もそのままの雰囲気を維持して3℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、本発明の表面酸化窒化アルミニウム素材を得た。
【0090】
得られた表面酸化窒化アルミニウム素材(試料)について、実施例1と同様にX線回折(XRD)による酸化層の同定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面並びに破断面の観察を行った。XRDの回折パターンから該試料の酸化層はα−アルミナであることが確認された。酸化層表面の表面SEM写真より、全5視野のクラックの幅の総平均を求めたところ100nmであった。また、試料の破断面のSEM観察により酸化物層の厚さを求めたところ、その厚みは平均で5.4μmであった。 表面酸化窒化アルミニウム素材上に実施例1と同様に薄膜メタライズを施し剥離試験を行なったところ、10点の平均剥離強度は47MPaであった。また剥離モードは、全て酸化層−窒化アルミニウム間破壊であった。各測定点における剥離強度と破壊モードを表2に示す。
【0091】
さらに実施例1と同様に回路を形成し、回路間の電気抵抗を測定したところ32.1Ωであった。
【0092】
【表1】


【0093】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本図は、酸素ガス雰囲気中で窒化アルミニウム基板を加熱したときの反応率及びDTAの変化パターンを示すグラフである。
【図2】本図は、実施例1の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化層の表面のSEM写真である。
【図3】本図は、図2のSEM写真のスケッチである。
【図4】本図は、実施例1の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の破断面のSEM写真である。
【図5】本図は、図3のSEM写真のスケッチである。
【図6】本図は、実施例2の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化層の表面のSEM写真である。
【図7】本図は、図6のSEM写真のスケッチである。
【図8】本図は、実施例2の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の破断面のSEM写真である。
【図9】本図は、図8のSEM写真のスケッチである。
【図10】本図は、実施例3の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化層の表面のSEM写真である。
【図11】本図は、図10のSEM写真のスケッチである。
【図12】本図は、実施例3の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の破断面のSEM写真である。
【図13】本図は、図12のSEM写真のスケッチである。
【図14】本図は、比較例1の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化層の表面のSEM写真である。
【図15】本図は、図14のSEM写真のスケッチである。
【図16】本図は、比較例1の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の破断面のSEM写真である。
【図17】本図は、図16のSEM写真のスケッチである。
【図18】本図は、比較例2の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の酸化層の表面のSEM写真である。
【図19】本図は、図18のSEM写真のスケッチである。
【図20】本図は、比較例2の酸化工程で得られた表面に酸化物層を有する窒化アルミニウム基板の破断面のSEM写真である。
【図21】本図は、図20のSEM写真のスケッチである。
【出願人】 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【出願日】 平成18年9月11日(2006.9.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−66628(P2008−66628A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−245252(P2006−245252)