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【発明の名称】 セラミック積層体の製造方法
【発明者】 【氏名】門谷 成

【氏名】岩瀬 昭夫

【氏名】伊藤 鉄次

【氏名】山口 晃章

【要約】 【課題】セラミック層と内部回路層とが交互に積層されたセラミック積層体の製造方法に関するものである。

【構成】セラミック層10の表面に内部回路層2A、2B、3A、3Bを印刷形成した単位ユニット層11A、11Bを乾燥した後、単位ユニット層11A、11Bの表面に接着層5A、5Bを印刷形成し、接着層5A、5Bを介して単位ユニット層11A、11Bを繰り返し積層してなるセラミック積層体1の製造方法において、接着層5A、5Bが未乾燥状態のまま接着することによって、内部回路層2A、2B、3A、3Bの膜厚分布を吸収することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック層の表面に内部回路層を印刷形成した単位ユニット層を、接着層を介して繰り返し積層してなるセラミック積層体の製造方法において、
上記セラミック層となるセラミックグリーンシートの表面に、上記内部回路層を印刷、乾燥し上記単位ユニット層を形成する工程と、
得られた上記単位ユニット層の表面に上記接着層を印刷形成する工程と、
上記接着層が未乾燥状態のまま、該接着層に他の単位ユニット層を積層し、上記接着層が上記内部回路層に存在する膜厚分布に応じて流動し、分散変形することによって、上記膜厚分布を吸収しながら、上記単位ユニット層同士を接着させてセラミック積層成形体とする工程と、上記セラミック積層成形体を脱脂、焼成して上記セラミック積層体を得る工程とを備えることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項2】
上記接着層を、複数の単位接着層に分割して形成し、上記単位接着層間に所定の間隙を設けて印刷形成した接着層集合体で構成し、上記内部回路層の膜厚分布に伴う積層時における上記単位接着層の分散変形量の違いを上記間隙によって吸収する請求項1に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項3】
上記単位接着層間間隙を50μm以上300μm以下に形成する請求項2に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項4】
上記単位接着層間間隙が三股に分枝するように上記単位接着層を配設する請求項2または3に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項5】
上記接着層は、上記セラミック層と同一の組成のセラミック材料と、分散時に粘着力を有する結合材とを不揮発性の分散媒に分散させペースト状になした接着層用ペーストを用いて印刷形成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項6】
上記セラミック層は、セラミック材料と結合材と可塑剤とを分散媒に分散せしめたセラミックスラリーをキャリアフィルム上にシート状に塗工、乾燥することによりセラミックグリーンシートとして形成し、上記セラミックグリーンシートから複数の上記セラミック層を取ることが可能な大きさの大型グリーンシート片を上記キャリアフィルムとともに切り出し、該大型グリーンシート片上に複数の上記内部回路層を印刷形成、乾燥し、各内部回路層の表面に上記接着層を印刷形成した後、
上記接着層が未乾燥のままトムソン型を用いて上記内部回路層および上記接着層の形成された上記大型グリーンシート片から上記単位ユニット層と上記接着層とからなる単位シート小片を打ち抜きつつ上記キャリアフィルムから剥離し、上記トムソン型内に収納し、該単位シート小片の下面を次の単位シート小片上に形成された上記接着層に接触させることによりこれらの単位シート小片同士を密着せしめ、これを繰り返すことにより上記単位シート小片の打ち抜き、積層、接着を同時に行い上記セラミック層と上記内部回路層とが上記接着層を介して交互に積層されたセラミック成形積層体を形成する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項7】
上記セラミック積層体はピエゾスタックであって、上記セラミック層は、PZTを主成分とする圧電セラミックからなり、上記内部回路層は、内部電極層とスペーサ層とからなり、上記内部電極層は上記セラミック層表面の少なくとも一部を覆うように電極材料と結合材とを分散媒に分散させてなる電極層用ペーストを印刷形成し、
上記スペーサ層は絶縁材料もしくは上記セラミック層と同一の組成のセラミック材料と結合材とを分散媒に分散させてなるスペーサ層用ペーストを上記内部電極層と略同じ厚みで上記セラミック層表面の上記内部電極層の形成されていない部分に印刷形成する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項8】
結合材もしくは焼失する粒子と結合材とを分散媒に分散させてなり、焼成時に焼失する焼失層用ペーストを上記内部回路層の表面の一部に焼失層として印刷形成し、上記焼失層の形成された部分をのぞき上記接着層を印刷形成した請求項7に記載のセラミック積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック層と内部電極等の内部回路層とが交互に積層されたセラミック積層体の製造方法に関するものであり、特に数百層にもおよぶ極めて積層枚数が多いセラミック積層体の製造に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック積層体はピエゾスタック素子、積層コンデンサ、ガスセンサ素子等として幅広く利用されており、用途に応じて選択される絶縁材料、圧電材料、誘電材料、固体電解質材料等のセラミック材料からなるセラミック層と導電材料、絶縁材料等からなる内部回路層とが交互に積層された構成をしている。
【0003】
このようなセラミック積層体の製造方法として、特許文献1には、セラミック層に複数の内部電極層を印刷形成したものを複数枚積層し、加熱圧着した未焼成積層体を作成し、これを個々の積層体小片に切断し、脱脂、焼成した後、更にユニット積層体を形成する方法が開示されている。
【0004】
この方法は、従来ピエゾスタックの製造において広く実施されており、その工程の概要を図14に示す。
図14中S1〜S8の工程に示すように、先ず、図略のドクターブレード法等により形成された薄いセラミックグリーンシート100から、金型等により所定の大きさのシート101を切り出し(S1)、これを取り扱い容易となるよう固定枠200に貼付けし(S2)、外観を検査した後(S3)、これに導電性材料からなる内部電極層2を印刷、乾燥する(S4)。更に焼失性材料からなるスリット層4を印刷、乾燥し(S5)、これを複数枚積層し加熱圧着等により積層成形体17Gを形成する(S6〜S8)。
【0005】
積層成形体17Gは、加熱圧着時の加圧軸方向に対して垂直平面方向の形状の変化が大きい。
そこで、図14中S9〜S13の工程に示すように、圧着後の積層成形体17Gをユニット積層成形体170Gに切断し(S9)、セッター80に並べ図略の脱脂炉等により脱脂し(S10)、これを匣鉢90に収納し、図略の焼成炉等により焼成して、ユニット積層焼成体170Sを得た(S11)後、当該ユニット積層焼成体170Sの上下2面を研削修正し(S12)、更に、外周を側面4面とC面4面の計8面に渡って研削修正を施すことによって、八角柱状のユニット積層修正体170RSを得ている(S13)。
【0006】
上記ユニット積層成形体170Gの積層枚数はせいぜい20層程度であり、数百層のセラミック層の積層が必要となるピエゾスタック1bを作る場合、図14中S14〜19の工程に示すように、ユニット積層修正体170RSを洗浄した後(S14)、側面電極130を印刷(S15)、乾燥(S16)、焼き付けし(S17)、得られたユニット積層体170Pを接着剤180で接着乾燥することを繰り返しながら、所定層となるまで積層し、上端面および下端面にそれぞれ絶縁層6を接着剤180で接着してピエゾスタック1bが完成する。
このように、従来方法は、図14中S20の検査に至るまでの工程が複雑で、寸法精度要求の厳しい自動車用ピエゾスタックとして使用するためには、積層体圧着形成後および焼成後の寸法修正が不可欠である上、また、加熱圧着による積層方法では圧着力の伝播に限界があるので積層可能な枚数が限られ、積層体を更に接着積層する手間が掛かる。従って、生産コストが大きく、高品質なセラミック積層体を大量に生産することには不適である。
【0007】
一方、本発明者らは、大量生産に適した方法として、特許文献2、特許文献3等に示す一体的に積層枚数の多いセラミック積層体を形成可能な方法を提案した。
特許文献2には、セラミック積層体をデラミネーション(層間剥離)が生じ難く、一体的に形成する方法として、セラミック用スラリーを用いてセラミック層を形成し、その一部表面に内部電極用スラリーを用いて内部電極層用印刷部を形成し、印刷部未形成部分に略同じ厚みとなるようスペーサ用スラリーを用いてスペーサ用印刷部を形成し、次いで上記内部電極層用印刷部と上記スペーサ用印刷部の表面に接着層用スラリーを積層して接着層印刷部を形成し、これにより未焼ユニットを得て、該未焼ユニットを加圧圧着しながら積層し未焼積層体となし、これをその後焼成してセラミック積層体を製造する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、セラミック原料からなり、キャリアフィルム上に形成されたグリーンシートの表面に導体ペーストを用いて内部電極層を印刷形成し、当該グリーンシートからトムソン型を用いてシート片を打ち抜き、当該シート片をトムソン型内で積層してシート積層体を形成し、これを焼成してセラミック積層体を得る、打ち抜きと積層と積層体の形成とを同時に行ってセラミック積層体を製造する方法が開示されている。
【0009】
特許文献2の構成では、セラミック層に内部電極層と略同じ厚みのスペーサ層を積層し、積層体全体が均一な厚みとなり、接着層により接着が確実となる。従って、図14に示す従来の加熱圧着による方法のように、内部電極層の形成部位と他の部位との厚みに大きな違いが生じず、加圧圧力も小さくできる。
また、特許文献3の方法では、グリーンシートが損傷しにくく、内部欠陥の発生を抑制できる。
【特許文献1】特開平4−255275号公報
【特許文献2】特開2003−174210号公報
【特許文献3】特開2005−119146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、実際に、特許文献2および特許文献3の方法を組み合わせて図13に示すように、セラミック層10に内部電極層2A、2Bを印刷形成し、これと略同じ厚みのスペーサ層3A、3Bを印刷したユニット層11A、11Bとし、上記ユニット層11A、11Bの表面に焼失層4A、4Bを印刷形成し、これと略同じ厚みの接着層5Ab、5Bbを印刷形成し、更にこの表面に接着層5cを印刷形成し、上記焼失層4A、4B並びに上記接着層5Ab、5Bbが形成された上記ユニット層11A、11Bを、上記接着層5cを介して繰り返し積層して成るセラミック積層成形体1Gbを形成し、これを脱脂、焼成して図12に示すピエゾスタック1Sbを作成したところ、次の様な問題が生じた。
【0011】
図12に示すように、例えば、積層始めの部分では一層あたりの膜厚差が最大5μm程度であっても、積層終わりの部分では最大0.5mm程度にまで拡大されたり、変形の大きな部分にはセラミック層間のデラミネーションが発生したりするおそれがあった。
【0012】
これは、スクリーン印刷によって印刷部を形成する場合、不可避的に印刷膜厚に分布を生じ、特に印刷部の中心にくらべ外周端縁近傍の膜厚が厚くなり易く、圧着時に印刷膜厚の分布によって次の層が変形し、これが累積されることによって、セラミック積層体全体が大きく変形してしまうと推察される。
【0013】
近年、自動車用燃料噴射インジェクタに使用されるピエゾスタックは、非常に厳しい使用環境条件(高温、多湿)での高い絶縁耐久性と信頼性が要求されており、また、厳しいコスト競争に晒されている。
そこで、数百層以上の積層体を形成しても、歪みが生じ難く、簡易で大量生産に好適な製造方法の開発望まれている。
【0014】
本発明はかかる実情に鑑み、低コストで、寸法精度に優れ、上記デラミネーションや歪み等の欠陥の極めて少ない、より良質なセラミック積層体を一体的に大量生産可能な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、セラミック層の表面に内部回路層を印刷形成した単位ユニット層を、接着層を介して繰り返し積層してなるセラミック積層体の製造方法において、
上記セラミック層となるセラミックグリーンシートの表面に、上記内部回路層を印刷、乾燥し上記単位ユニット層を形成する工程と、
得られた上記単位ユニット層の表面に上記接着層を印刷形成する工程と、
上記接着層が未乾燥状態のまま、該接着層に他の単位ユニット層を積層し、上記接着層が上記内部回路層に存在する膜厚分布に応じて流動し、分散変形することによって、上記膜厚分布を吸収しながら、上記単位ユニット層同士を接着させてセラミック積層成形体とする工程と、上記セラミック積層成形体を脱脂、焼成して上記セラミック積層体を得る工程とを備える。
【0016】
請求項1の発明によれば、上記内部回路層に膜厚分布が存在しても、未乾燥状態の上記接着層は粘塑性流体であって、非ビンガム流動を示し、一定降伏値以上の剪断応力により流動容易となるので、上記ユニット層同士を積層したときの極弱い圧力で、上記内部回路層の膜厚の厚い部分から膜厚の薄い部分へ容易に流動し、分散変形するので、上記内部回路層の膜厚分布が吸収される。
上記ユニット層が上記内部回路層の膜厚分布によって変形されることがなくなり、上記ユニット層を数百層積層しても上記内部回路層の膜厚分布が累積拡大されることがない。
従って、極めて歪みの少ないセラミック積層成形体を形成することができ、これを脱脂、焼成することにより、均質で歪みの極めて少ない一体のセラミック積層体を得ることができる。
【0017】
請求項2の発明は、上記接着層を、複数の単位接着層に分割して形成し、上記単位接着層間に所定の間隙を設けて印刷形成した接着層集合体で構成し、上記内部回路層の膜厚分布に伴う積層時における上記単位接着層の分散変形量の違いを上記間隙によって吸収する。
【0018】
請求項2の発明によれば、上記接着層集合体の内、上記内部回路層の膜厚の薄い箇所に形成された部分が、上記ユニット層の下面に完全に密着するまで近づくと、上記内部回路層の膜厚の厚い箇所に形成された部分は上記ユニット層の下面に押されながら上記間隙側へ流動し、分散変形しながら上記間隙を埋めていく。
従って、最小限の圧力で上記内部回路層と上記セラミック層の下面とが上記接着層を介して完全に密着した状態にすることができ、上記内部回路層の膜厚分布により上記ユニット層が変形されることなく、極めて平滑なセラミック積層体が得られる。
また、上記接着層自体も印刷形成されるものであるから膜厚分布が存在するが、上記接着層を複数に分割することにより、上記接着層の膜厚分布の幅を狭くすることができる。
更に、上記接着層が上記単位接着層の集合体として形成されているので積層、接着時に巻き込まれた空気を上記単位接着層間間隙から排出しながら接着され、デラミネーションの発生が防止される。
【0019】
請求項3の発明は、上記単位接着層間間隙を50μm以上300μm以下に形成する。
【0020】
上記単位接着層間間隙を50μmよりも狭くすると積層前に上記接着層集合体同士が結合してしまい、上記着層集合体の間隙が消滅する場合があるので本発明の効果が充分発揮されず、また、上記着層集合体間隙を300μmより広くすると上記セラミック層を積層したときの上記接着層集合体の分散変形量以上に上記接着層集合体の間隙が広いため、上記接着層集合体の分散変形により埋まらず空隙として残留し、デラミネーションのきっかけとなる場合がある。
従って、請求項3の発明によれば、もっとも効果的に上記内部回路層の膜厚分布が吸収され、より均質なセラミック積層体が得られる。
【0021】
請求項4の発明は、上記接着層集合体の間隙が三股に分枝するように上記単位接着層を配設する。
【0022】
請求項4の発明によれば、上記単位接着層が分散変形する過程で上記単位接着層同士の界面を最も小さくできる。従って、上記セラミック層積層後の上記接着層内の欠陥を少なくでき、より均質なセラミック積層体を形成することができる。
【0023】
請求項5の発明は、上記接着層は、上記セラミック層と同一の組成のセラミック材料と、分散時に粘着力を有する結合材とを不揮発性の分散媒に分散させペースト状になした接着層用ペーストを用いて印刷形成する。
【0024】
請求項5の発明によれば、上記接着層をセラミック層と同一の組成の材料とすることで焼成後の上記セラミック積層体は完全に一体の焼結体を形成することができる。
【0025】
請求項6の発明は、上記セラミック層は、セラミック材料と結合材と可塑剤とを分散媒に分散せしめたセラミックスラリーをキャリアフィルム上にシート状に塗工、乾燥することによりセラミックグリーンシートとして形成し、上記セラミックグリーンシートから複数の上記セラミック層を取ることが可能な大きさの大型グリーンシート片を上記キャリアフィルムとともに切り出し、該大型グリーンシート片上に複数の上記内部回路層を印刷形成、乾燥し、各内部回路層の表面に上記接着層を印刷形成した後、
上記接着層が未乾燥のままトムソン型を用いて上記内部回路層および上記接着層の形成された上記大型グリーンシート片から上記単位ユニット層と上記接着層とからなる単位シート小片を打ち抜きつつ上記キャリアフィルムから剥離し、上記トムソン型内に収納し、該単位シート小片の下面を次の単位シート小片上に形成された上記接着層に接触させることによりこれらの単位シート小片同士を密着せしめ、これを繰り返すことにより上記単位シート小片の打ち抜き、積層、接着を同時に行い上記セラミック層と上記内部回路層とが上記接着層を介して交互に積層されたセラミック成形積層体を形成する。
【0026】
請求項6の発明によれば、上記単位シート小片の打ち抜き、積層、接着を同時に行うことができる。従って、行程を簡素化する事ができ、上記接着層によって内部回路層の膜厚分布が吸収された良好なセラミック積層体を低コストで製造できる。
また、上記セラミック層をキャリアフィルムにから剥離せずに上記内部回路層および上記接着層の印刷を行うので、上記大型シート片の取り扱いが極めて容易である。
更に、複数の上記単位ユニット層を形成し得る状態の上記大型グリーンシート片を複数枚積層してから単位シート小片に打ち抜くのではなく、上記単位ユニット層の積層と同時に単位シート小片に打ち抜きながら上記セラミック積層成形体を形成していくので寸法精度が極めて良い。
【0027】
請求項7の発明は、上記セラミック積層体はピエゾスタックであって、上記セラミック層は、PZTを主成分とする圧電セラミックからなり、上記内部回路層は、内部電極層とスペーサ層とからなり、上記内部電極層は上記セラミック層表面の少なくとも一部を覆うように電極材料と結合材とを分散媒に分散させてなる電極層用ペーストを印刷形成し、
上記スペーサ層は絶縁材料もしくは上記セラミック層と同一の組成のセラミック材料と結合材とを分散媒に分散させてなるスペーサ層用ペーストを上記内部電極層と略同じ厚みで上記セラミック層表面の上記内部電極層の形成されていない部分に印刷形成する。
【0028】
請求項7の発明によれば、上記内部電極の膜厚分布の影響による歪みが少なく、完全一体となった均質良好なピエゾスタックが得られる。
【0029】
請求項8の発明は、結合材もしくはカーボン等の焼失する粒子と結合材とを分散媒に分散させてなり、焼成時に焼失する焼失層用ペーストを上記内部回路層の表面の一部に焼失層として印刷形成し、上記焼失層の形成された部分をのぞき上記接着層を印刷形成する。
【0030】
請求項8の発明によれば、上記焼失層は焼成後にスリットとなり、ピエゾスタックとして使用したときに応力の分散ができ、より信頼性の高いピエゾスタックを提供できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、内部回路層に存在する膜厚分布を接着層によって吸収し、打ち抜き、積層、接着を同時に行うことができるので、均質で一体のセラミック積層体を安定した品質で、かつ低コストで生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明をピエゾスタックの製造に適用した場合の本発明の第1の実施形態について、図1〜4を参照して説明する。
図1に示すように、ピエゾスタックを構成するセラミック積層成形体1Gは、セラミック層10と内部回路層(2A、2B、3A、3B)とを有する単位ユニット層11A、11Bが、接着層5A、5Bを介して繰り返し積層され、上下端に絶縁層6が接着層5、5Aを介して積層された構成となっている。
【0033】
上記単位ユニット層11A、11Bはセラミック層10の表面に内部回路層として、内部電極層2A、2B、スペーサ層3A、3Bが印刷され、その表面には更に焼失層4A、4Bが印刷形成されている。
【0034】
上記セラミック層10は、例えば、PZT等の圧電セラミック材料からなり、両側に平端面を有する略小判形(例えば、外径約φ9.5mm×幅約8mm×板厚約90μm)に形成されている。
上記内部電極層2A、2Bは、例えば、Ag、Pb等の導電性材料とPVB(ポリビニルブチラール)等の結合材とを分散媒に分散せしめてペースト状となした内部電極用ペーストを上記セラミック層10の表面にスクリーン印刷等により印刷、乾燥して形成される。
上記スペーサ層3A、3Bは、例えば、上記セラミック層10と同材質のセラミック材料とPVB等の結合材とを分散媒に分散せしめてペースト状となしたスペーサ用ペーストを上記セラミック層10の表面で、上記内部電極層2A、2Bの形成されていない部分にスクリーン印刷等により印刷、乾燥して形成される。
上記焼失層4A、4Bは、例えば、PVB等の結合材のみあるいは結合材とカーボン等の焼成時に焼失する材料とを分散媒に分散せしめてペースト状となしたスペーサ用ペーストを上記内部電極層2A、2Bと上記スペーサ層3A、3Bとの表面の一部にスクリーン印刷等により印刷、乾燥して形成される。
【0035】
上記接着層5A、5Bは、未乾燥状態であるので、接着剤としての粘着性と粘塑性流体としての流動性とを備えた適度な粘度を備え、上記単位ユニット層11A、11B同士を接着する際に、上記接着層5A、5Bがその流動性によって、上記内部回路層(2A、2B、3A、3B)の膜厚分布に応じて分散変形し、上記内部回路層(2A、2B、3A、3B)に存在する膜厚分布を吸収する。
【0036】
上記接着層5、5A、5Bは、例えば上記セラミック層10と同材質のセラミック材料とPVB等の結合材とをテレピノール等の不揮発性の分散媒に分散せしめてペースト状となした接着層用ペーストを上記焼失層4A、4Bの形成されていない上記内部電極層2A、2Bと上記スペーサ層3A、3Bとの表面および上記絶縁層6の表面にスクリーン印刷等により印刷形成される。
【0037】
図2は、本発明の第1の実施形態における上記内部電極層2A、2B、スペーサ層3A、3B、焼失層4A、4Bおよび上記接着層5A、5Bの形状例を示す。
図2(a)に示すように、上記内部電極層2A、2Bは、外周が上記セラミック層10の内側に控えるように一回り小さい同心の略小判形(例えば、外径約φ8.16mm×膜厚約7μm)に形成され、左右いずれか一方側に、上記セラミック層10の端面に向かって左右交互に電極を引き出すように突出する電極引き出し部21A、21Bが設けられる。
【0038】
図2(b)に示すように、上記スペーサ層3A、3Bは、上記セラミック層10の上記内部電極層2A、2Bの形成されていない表面に上記電極層2A、2Bを覆うように、上記電極引き出し部21A、21Bの形成される位置と重なる部分31A、31Bが切り欠かれた略C字形(例えば、幅約0.6mm×膜厚約7μm)に形成される。
【0039】
図2(c)に示すように、上記焼失層4A、4Bは、上記電極引き出し部21A、21B側に設けられ、上記スペーサ層3A、3Bの略半周を覆う略C字形(例えば、幅約0.6mm×膜厚約8μm)に形成される。
【0040】
図2(d)に示すように、上記接着層5A、5Bは、例えば、複数の六角形の小さな単位接着層50(例えば、六角形2面巾約700μm×膜厚約8μm)を50μm以上300μm以下の範囲の単位接着層間間隙51を設けて等間隔に配設し、上記焼失層4A、4Bの形成された部分を除き、上記内部電極層2A、2Bと上記スペーサ層3A、3Bとを覆う上記単位接着層50の集合体として形成される。
【0041】
図3は、上記セラミック層10の表面に上記内部電極層2A、2B、スペーサ層3A、3B、焼失層4A、4Bおよび上記接着層5A、5Bの形成される過程を(a)〜(d)の順を追って断面図で示す。
図3(a)に示すように、上記内部電極層2A、2Bは印刷面積が比較的広く(例えば、約φ9.5mmの上記セラミック層10に対して約φ8mmの上記内部電極層2A、2Bが形成される)、膜厚分布が生じ易い。特に図3(a)中矢印で差し示す外周縁近傍が上記内部電極層2A、2Bの中心部に比べて肉厚となる(例えば、最大膜厚約8.1μmに対して最小膜厚約5.9μm)。
図3(b)に示すように、上記スペーサ層3A、3Bは、上記内部電極層2A、2Bと略同一の膜厚で、上記内部電極層2A、2Bとの界面では上記内部電極層2A、2Bの外周縁の一部と重なり合うように形成される。
図3(c)に示すように、上記焼失層4A、4Bは上記電極引き出し部21A、21Bを覆うように形成される。上記焼失層4A、4Bは上記内部電極層2A、2Bの膜厚分布に影響され上記内部電極層2A、2Bと同様に図3(c)中矢印で示す外周縁近傍の膜厚が肉厚に形成される。
【0042】
図3(d)に示すように、上記接着層5A、5Bは、上記焼失層4A、4Bと略同一の膜厚で、上記内部電極2A、2Bと上記スペーサ層3A、3Bと上記焼失層4A、4Bの端縁の一部とを覆うように形成される。
上記接着層5A、5Bは上記単位接着層50の小片に分割されているので、各単位接着層50の印刷面積が小さく、膜厚分布の幅は比較的狭くなり、上記接着層5A、5B集合体全体としての膜厚分布の幅も狭くなる。
【0043】
図4を参照して、本発明の第1の実施形態における効果について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態において、上記単位ユニット層11A、11Bと上記接着層5A、5Bと相対的に近づけて密着せしめた時に、上記単位接着層50と上記セラミック層10の下面との密着面52の面積を広げながら、上記単位接着層50が上記単位接着層間間隙51側へ分散変形して、内部電極膜2A、2Bの膜厚分布を吸収する際に想定される上記接着層5A、5Bの変化を(a)〜(f)で連続的に表した模式図で、右列は上記単位接着層50と上記単位接着層間間隙51の変化を示す断面図で、左列は上記単位接着層50と上記セラミック層10との接触面52の水平面方向の広がりを示す平面図である。
【0044】
未乾燥状態の上記接着層5A、5Bは粘塑性流体であるので、非ビンガム流動を示し、一定降伏値以上の剪断応力により流動容易となる。
従って、上記セラミック層10の下面が上記接着層5A、5Bに接触し、更に距離を縮めていくと、上記セラミック層10から上記単位接着層50が垂直方向に圧縮力を受け、圧縮による剪断応力によって上記単位接着層50の粘度が低下し、上記単位接着層50は水平方向に分散変形して広がって行く。
この時、上記内部電極層2A、2Bの膜厚の高低差に応じて、上記単位接着層50の広がり方に差が生じる。
しかしながら、上記内部電極層2A、2Bの膜厚が厚い部分の形成された上記単位接着層50が上記単位接着層間間隙51側へ分散する間に、上記内部電極層2A、2Bの薄い部分に形成された上記単位接着層50と上記セラミック層10の下面とを密着せしめることができる。
従って、図4(f)に示すように、上記セラミック層10の下面と上記接着層5A、5Bとがほぼ隙間無く密着した状態となる。
この時、上記セラミック層10の下面と上記接着層5A、5Bとが密着した後、静置されると、上記接着層5A、5Bはチクソトロピーによって粘性を失い弾性体としての性質を示し、更に時間の経過と共に上記接着層5A、5B中に含まれる分散媒が上記セラミック層10または上記内部電極層2A、2Bへ拡散すると上記接着層5A、5Bは粘塑性を失い、別のセラミック層10と積層、接着される際には流動変形することがない。
従って、上記接着層5A、5Bが形成された上記単位ユニット層11A、11Bを繰り返し積層、接着することにより、上記接着層5A、5Bのみが分散変形し、上記単位ユニット層11A、11Bが変形することなく、均質で、平滑性に優れた上記セラミック積層成形体1Gを形成することができる。
【0045】
図5、図6を参照して、本発明を量産に適用した本発明の第2の実施形態について説明する。
図5(a)〜(d)は一度に複数の上記単位ユニット層11A、11Bを印刷形成するために用いられる各層の印刷用スクリーンのパターン配置例を示す。
上記印刷用スクリーンは、例えば、ステンレス等の線材を編んだスクリーン(例えば、400メッシュ、線経φ12μm、開口50μm)を30cm角程度の大きさの枠にテンションを張った状態で、スキージ方向に対しバイアスに固定し、印刷の不要な部分は乳剤(例えば、乳剤膜厚5μm)によってパターン形成されて固められている。
【0046】
図5(a)に示すように、上記内部電極層用スクリーン32は、複数の上記内部電極層2A、2Bを、スキージ方向に対して上記電極引き出し部21A、21Bが同一方向で、かつ上記内部電極層2A、2Bの外周円弧の中心軸が直線上に並ぶように揃えて配設し、スキージ方向に対して垂直方向には、上記電極引き出し部21A、21Bが左右交互に並び、かつ、上記内部電極層2A、2Bの外周円弧の中心軸が直線上に並ぶように揃えてパターン形成される。
図5(b)に示すように、上記スペーサ層用スクリーン33は、上記内部電極層印刷用スクリーン32の上記内部電極層2A、2Bと中心軸を揃えてパターン形成される。
図5(c)に示すように、上記焼失層用スクリーン34を、上記内部電極層印刷用スクリーン32の上記内部電極層2A、2Bと中心軸を揃えてパターン形成する。
図5(d)に示すように、上記接着層用スクリーン35を、上記内部電極層印刷用スクリーン32と中心軸を揃えてパターン形成する。
上記各層印刷用スクリーン32、33、34、35のパターン配置は行と列とを入れ替えたものでも良い。
【0047】
キャリアフィルム110上に形成された上記セラミック層10を構成する大型グリーンシート片101に、上記内部電極層用スクリーン32、上記スペーサ層用スクリーン33、上記焼失層用スクリーン34を用いて、上記内部電極層2A、2B、上記スペーサ層3A、3B、上記焼失層4A、4Bを印刷形成、乾燥した後、上記接着層用スクリーン35を用いて上記接着層5A、5Bを印刷形成すると、一度に複数の上記単位ユニット層11A、11Bを積層可能な状態にすることができる。
上記各層(2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、5B)の印刷は、例えば、ギャップ1.0mm、印圧200、落とし込み量0.2mm、スキージ速度50、スキージ硬度60〜90°等の条件で行われる。
【0048】
図6(a)に示すように、予め別途用意した例えば、アルミナ等の絶縁材料からなる上記絶縁層6用シートを断面略小判形の円筒状(例えば、内寸約φ9.5mm×約8mm)で、先端にトムソン刃71が形成されたトムソン型70を用いて打ち抜き、上記トムソン型70内に収納しておく。
【0049】
上記絶縁層6の収納されたトムソン型70を上記単位ユニット層11A、11Bを構成する上記内部電極層2A、2B、上記スペーサ層3A、3B、上記焼失層4A、4Bが整然と配置されて印刷形成された上記大型グリーンシート片101および上記接着層5A、5Bに相対的に近づけていき、上記絶縁層6の下面と上記接着層5A若しくは5Bを接触せしめる。
【0050】
図6(b)に示すように、更に上記トムソン型70を上記大型グリーンシート片101に相対的に近づけると、上記接着層5Aを介して、上記絶縁層6と上記単位ユニット層11Aとが密着状態となる。
図6(c)に示すように、更に上記トムソン型70を上記大型グリーンシート片101に押し付けると上記トムソン型70の先端に設けられた上記トムソン刃71によって上記セラミック層10が切断され上記単位ユニット層11Aと上記接着層5Aからなる単位シート小片12Aが形成される。
【0051】
図6(d)に示すように、上記トムソン刃71が上記単位シート小片12Aを打ち抜き形成し、上記トムソン刃71が上記キャリアフィルム110に到達すると上記トムソン型70は上記大型グリーンシート片101から相対的に遠ざかり上記絶縁層6と上記単位シート小片12Aとが密着状態で上記トムソン型70内に収納される。
【0052】
図6(d)に示すように、次いで上記絶縁層6、上記単位シート小片12Aが収納された上記トムソン型70を移動させ、上記単位ユニット層11Aの上記電極引き出し部21Aとは左右対称の位置に上記電極引き出し部21Bが形成された上記単位ユニット層11Bに形成された上記接着層5Bに相対的に近づけていき上記単位ユニット層11Aの下面を上記接着層5Bに接触せしめ、更に上記トムソン型70を上記単位ユニット層11Bに相対的に近づけると上記単位ユニット層11Aの下面と上記接着層5Bとは密着状態となり、更に上記トムソン型70を上記大型グリーンシート101に押し付けると上記トムソン型70の先端に設けられた上記トムソン刃71によって上記単位シート小片12Bが打ち抜き形成され、上記トムソン刃71が上記キャリアフィルム110に到達すると上記トムソン型70は上記大型グリーンシート片101から相対的に遠ざかり、上記絶縁層6と上記単位シート小片12Aと上記単位シート小片12Bとが密着状態で上記トムソン型70内に収納される。
【0053】
これを繰り返すことにより、上記トムソン型70内には、図6(f)に示すように、上記絶縁層6を先頭に上記単位ユニット層11Aと上記単位ユニット層11Bとが上記接着層5A、5Bを介して交互に積層される。
【0054】
所定積層数の打ち抜き積層を繰り返した後に、別に用意した上記絶縁層6用シートの表面に上記接着層5A、5Bと同じ上記接着層用ペースト50を用いて接着層5を形成し、上記単位ユニット層11A、11bが所定積層数だけ積層、接着、収納された上記トムソン型70を用いて、上記接着層5の形成された上記絶縁層6用シートを打ち抜くと上記単位ユニット層11A、11Bが交互に積層された積層体と上記絶縁層6とが上記接着層5を介して密着状態で上記トムソン型70内に収納される。これを上記トムソン型70から取り出し乾燥すると上記セラミック積層成形体1Gが形成される。
【0055】
複数の上記単位ユニット層11A、11Bを形成し得る状態の上記大型グリーンシート片101を複数枚積層してから個片に打ち抜くのではなく、個々の上記単位シート小片12A、12Bを積層と同時に打ち抜きながら上記セラミック積層成形体1Gを形成していくので寸法精度が極めて良い。
【0056】
また、上記接着層5、5A、5Bが上記単位接着層50の集合体として形成されており、積層、接着時に巻き込まれた空気を上記単位接着層間間隙51から排出できるので、デラミネーションの発生が防止される。
上記接着層5、A、5Bに含まれる結合材の粘着性によって上記単位シート片12A、12B同士が接着されているのに加えて、上記単位シート小片12A、12Bの側面と上記トムソン型内壁との間に摩擦力が作用するため、上記単位シート小片12A、12Bを上記キャリアフィルム110から剥離する際にデラミネーションを起こすことがない。
【0057】
本実施形態において、上記トムソン型70に対して上記大型グリーンシート片101を相対的に傾けた状態で上記積層、接着、打ち抜きを行うようにしても良い。
上記トムソン型70に対して上記大型グリーンシート片101を相対的に傾けた状態で、上記トムソン型70を上記大型グリーンシート片101に相対的に近づけていくと、上記絶縁層6および上記単位ユニット層11A、11Bと上記接着層5、5A、5Bとが片側から徐々に接着されるので、より効果的に空気の噛み込みを防止することができる上に、上記キャリアフィルム110か上記単位シート小片12A、12Bを剥離する際には片側から徐々に剥離されるのでデラミネーションの発生が更に効果的に防止される。
【0058】
本発明を適用したセラミック積層体の製造工程の概要について図7に示すフローチャートの順に従って詳述する。
先ず工程P1では、セラミックグリーシート100から、複数の上記単位ユニット層11A、11Bを取り出せるよう大型のセラミックシート101を上記キャリアフィルム110と共に例えば、打ち抜き金型等を用いて切り出す。
上記セラミックグリーンシート100は次のように形成する。
例えば、PZTを主成分とするセラミック材料をPVB(ポリビニルブチラール)等の結合材とDBP(ジブチルフタレート)等の可塑剤と分散剤等とをトルエン−エタノール等の分散媒に分散せしめ、粘度調整し、スラリー状となし、これをドクターブレード法等によりキャリアフィルム110上に薄く塗工し、乾燥して、板厚90μmの薄い上記セラミックグリーンシート100を得る。
【0059】
次いで、工程P2では、上記大型グリーンシート片101の外観を検査し、問題がなければ、工程P3へ移動する。
この時、大型グリーンシート片101は上記キャリアフィルム110から剥離されることなく工程を移動するので取り扱いが容易である。
【0060】
次いで、工程P3では、上記大型グリーンシート片101の表面に導電性ペースト20を、上記内部電極用スクリーン32を用いたスクリーン印刷により、例えば、膜厚7μm程度の印刷膜を形成し、乾燥し、上記内部電極層2A、2Bを得る。
上記導電性ペースト20は、例えば、Ag、Pd等の導電性材料とPVB等の結合材とを分散媒に分散せしめてペースト状になした。
【0061】
次いで、工程P4では、上記内部電極層2A、2Bの形成された上記大型グリーンシート片101の表面に、スペーサ用ペースト30を、上記スペーサ用スクリーン33を用いたスクリーン印刷により上記内部電極層2A、2Bと略同じ膜厚の印刷膜を形成し、乾燥し、上記スペーサ層3A、3Bを得る。
上記スペーサ用ペースト30は、例えば、上記セラミックグリーンシート100と同じ組成のセラミック材料とPBVB等の結合材とを分散媒に分散せしめてペースト状となした。
【0062】
次いで、工程P5では、焼失層用ペースト40を、上記焼失層用スクリーン34を用いたスクリーン印刷により、上記内部電極引き出し部21A、21Bと上記スペーサ層3A、3Bの一部の表面を覆う様に、例えば、膜厚8μm程度の印刷膜を形成し、乾燥し、上記焼失層4A、4Bを得る。
上記焼失層用ペースト40は、例えば、カーボンとPVB等の結合材あるいは結合材のみを分散媒に分散せしめてペースト状となした。
上記焼失層4A、4Bは必ずしも全層に設ける必要はなく、数層から20層毎に設けても良い。
【0063】
次いで、工程P6では、接着層用ペースト50を、上記接着層用スクリーン35を用いたスクリーン印刷により、上記焼失層4A、4Bの形成された部分を除き、上記内部電極層2A、2Bと上記スペーサ層3A、3Bの略全面を覆うように、例えば、膜厚8μm程度の印刷膜を形成し、上記接着層5、5A、5Bを得る。
上記接着層用ペースト50は、例えば、上記セラミックグリーンシート100と同じ組成のセラミック材料とPVB等の結合材とを、テレピノール等の不揮発性の分散媒に分散せしめてペースト状となした。
【0064】
次いで、工程P7では、上述した如く上記トムソン型70を用いて上記単位ユニット層11A、11Bの打ち抜きと積層を繰り返し、両端に上記絶縁層6が上記接着層5を介して接着され、上記単位ユニット層11Aと上記単位ユニット層11Bとが上記接着層5A、5Bを介して交互に積層、接着され、これを乾燥することによって上記セラミック積層成形体1Gを得る。
上記積層接着工程において、上記接着層5、5A、5Bと上記絶縁層6、上記単位ユニット層11A、11Bとが密着状態になると、上記接着層5、5A、5B中に含まれる上記不揮発性分散媒は、乾燥状態の上記絶縁層6、上記単位ユニット層11A、11Bに浸透、拡散し、上記接着層5、5A、5Bの粘塑性を失うので、一旦密着状態になった上記接着層5、5A、5Bと上記絶縁層6、上記単位ユニット層11A、11Bとが離れることは無い。
【0065】
次いで、工程P8では、上記セラミック積層成形体1Gをセッター80に並べ、図略の脱脂炉等により脱脂する。
【0066】
次いで、工程9では、脱脂後のセラミック積層仮焼体1Dを匣鉢90に収納し、蓋91をして、所定の昇温速度、焼成温度、焼成時間、降温速度、焼成雰囲気の条件下で焼成する。
焼成により上記焼失層4A、4Bは焼失し、スリット4Sとなり、上記スペーサ層3A、3B、上記接着層5A、5Bは上記セラミック層11A、11Bと完全一体のセラミック焼結体となり、上記内部電極層2A、2Bと上記セラミック層10とが交互に積層され、上下端部の絶縁層6も同時に焼結された完全一体のセラミック積層焼結体1Sとなる。
【0067】
次いで、工程P10〜12では、上記セラミック積層焼結体1Sの上下端面を研削仕上げし、上記電極引き出し部21A、21Bの露出した上記セラミック積層焼結体1Sの両側端面を研削仕上げし、洗浄、乾燥する。
本実施形態によれば、焼成後の歪み、変形が少なくなるので、従来に比べて、仕上げのための研削時間を大幅に短縮できる。
【0068】
次いで、工程P13〜P15では、側面電極130を両側の側面に印刷形成し、乾燥し、焼付けする。
次いで、工程P16で、検査し、問題が無ければ、極めて精度良く形成された一体のセラミック積層体であるピエゾスタック1Pが完成する。
【0069】
図8(a)は、上記接着層5、5A、5Bに上記内部電極引き出し部21A、21B付近の絶縁性を強化した絶縁性強化部511を形成したパターンを示す平面図で、(b)〜(d)は別の接着層のパターン例を示す平面図である。
図8(b)は、上記単位接着層50を長方形状に形成した例を示し、図8(c)は、上記単位接着層50を三角形状に形成した例を示す。図8(b)、(c)いずれの場合も、上記絶縁性強化部511を形成してもよい。
図8(d)は上記接着層5、5A、5Bを複数の帯状に形成した例を示す。
図8(a)〜(d)に示したいずれの形状でも本発明の効果が発揮される。
【0070】
ここで、従来のセラミック積層成形体の製造方法における、スクリーン印刷による上記内部電極2A、2Bを印刷する際に発生する膜厚分布について詳述する。
図9(a)に示すように、スクリーン印刷においては、上記電極用スクリーン32を図略の枠に固定し、該枠内に上記内部電極用ペースト20を流し込み、ゴム等からなるスキージ25を上記電極用スクリーン32に上面を押し付けながら移動させると、上記内部電極用ペースト20が上記内部電極用スクリーン32の編目を通過し、被印刷物である上記大型グリーンシート片101の表面に押し出されるとともに上記スキージ25によって上記内部電極用スクリーン32上の余分な上記電極用ペースト20が掻き取られる。
【0071】
また、上記内部電極用スクリーン32は上記大型グリーンシート片101と例えば1mm程度のギャップを設けて固定されており、上記スキージ25によって上記内部電極用ペースト20が押し出された後は、上記スキージ25の移動に追従して上記電極用スクリーン32が上記大型グリーンシート片101から離れていく。
この時、上記電極用スクリーン32と上記大型グリーンシート片101との間で上記内部電極用ペースト20を奪い合い、上記電極用スクリーン32のテンションにより上記内部電極用ペースト20が引きちぎられることにより上記内部電極用ペースト20が上記大型グリーンシート片101に転写される。
【0072】
図9(a)中A部を上面方向から見た様子を拡大して表した図9(b)に示すように、上記電極用スクリーン32は、線経D(例えば12μm)のステンレス線等をスキージ方向に対してバイアスに編んだ編目状のスクリーンメッシュ23からなり、上記編目の開口径O(例えば、約50μm)は上記線経Dおよび1インチ当たりの編目の数(例えば、400メッシュ)によって決まり、上記開口径OP(μm)=25400/メッシュ数−線経D(μm)で設定され、印刷に不要な部分は上記電極用スクリーン32の下面側から膜厚t(例えば、5μm)の乳剤24で固められている。
【0073】
図9(a)中B−Bにおける反スキージ方向から見た断面を表す図9(c)に示すように、上記電極用ペースト20は上記乳剤24によってマスキングされ、上記乳剤24の形成されていない部分から押し出された上記電極用ペースト20が上記大型グリーンシート片101の表面に転写される。
理論的には印刷膜厚は、使用される上記内部電極用ペースト20の粘度、上記スキージ25の硬度並びに押し付け圧(印圧)、および、上記スクリーンメッシュ23の縦糸と横糸が交差した紗部230の厚みと上記乳剤24の乳剤厚tとによって上記スクリーンメッシュ23の下に形成される空隙の厚みとを合わせた総厚T(T≒2D+t)と上記開口径Oの2乗との積を上記開口径Oと上記線経Dとの和の2乗で除した透過容積Vth(Vth=(OP^2×T)/(OP+D)^2)によって決まると考えられている。
【0074】
ところが、図9(c)中C部の断面を拡大した図9(d)に示すように、上記スキージ25を押し付けたとき、上記スクリーンメッシュ23の上記乳剤24の形成されていない部分は、上記スキージ25の押し付け圧力よって僅かながら撓む。
このため、上記総厚Tは、上記内部電極層2の外周縁が最も厚く、上記内部電極層2の中心部に向かって薄くなっている。
【0075】
また、上記内部電極用ペースト20が上記内部電極用スクリーン32によって引きちぎられた直後の上記内部電極層2の断面を模式的に表した図10(e)に示すように、上記内部電極層2の表面には、上記紗部230の部分が上記内部電極層2から離れるときに上記内部電極用ペースト20が多く奪われるので、メッシュ痕が残る。
上記メッシュ痕は、印刷後の雰囲気調整下で静置するレベリングによって、上記内部電極層2の表面に、表面積を小さくする方向に表面張力が働き、徐々に小さくなっていくが、完全には無くならず1〜2μm程度の膜厚分布として残る。
【0076】
さらに、上記内部電極層2中に含まれる上記分散媒が、上記内部電極層2の上記大型グリーンシート片101の表面へ浸透拡散して行くので、上記内部電極層2は上記大型グリーンシート片101表面に固定され、上記内部電極層2表面のみが広がろうとするので、上記内部電極層2の外周縁近傍は、より膜厚が厚くなる方向への力が作用する。
【0077】
従って、実際の上記内部電極層2には、微視的には、1〜2μm程度の細かな膜厚分布が存在し、全体的には中心部が薄くなり、外周縁近傍が厚く成った2〜3μmの膜厚分布が存在する。
【0078】
内部電極層およびスペーサ層を印刷形成したときの膜厚分布を非接触式のレーザ変位形にて測定した結果を図10に示す。
図10(a)に示すように、印刷時のスキージ方向に対して平行方向に膜厚分布を測定した結果、上記内部電極層2の外周縁近傍が最も厚く最大値は8.101μmで、最小値は5.910μmで、上記内部電極層2のスキージ方向の膜厚差は最大で4.781μmであった。図10(b)に示すように印刷時のスキージ方向に対して垂直方向に膜厚分布を測定した結果も同様に上記内部電極層2の外周縁が最も厚く、中心部に近い位置が最も薄い傾向があった。
【0079】
従来のセラミック積層体一体形成方法により、上記内部電極層2に積層して、上記スペーサ層3、上記焼失層4、上記焼失層4を除き上記内部電極層2と上記スペーサ層3とを覆う接着層5b、上記焼失層4と上記接着層5bとの全体を覆う接着層5cを形成し、各印刷層の膜厚分布の測定結果を図11に示す。
図11(a)は上記内部電極層2およびスペーサ層3の膜厚分布を示し、図11(b)は上記焼失層4および上記接着層5bの膜厚分布を示し、(c)は全面に形成された上記接着層5cの膜厚分布を示し、図11(d)は上記測定結果をもとに作成した各層の印刷形成された断面を示す模式図である。
【0080】
図11(a)〜(c)に示したように、上記内部電極層2の膜厚分布に上記スペーサ層3、上記焼失層4、上記接着層5b、5cの膜厚分布が累積され、印刷を重ねるごとに印刷層全体としての膜厚分布が広くなって行く。
従来の圧着による積層方法では、図12に示したように、上記膜厚分布によって、圧着時に上記セラミック層10が変形し、これが累積されることによりセラミック積層体全体としては歪みの大きいものとなってしまう。
【0081】
当然のことながら、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明の実施形態において、内部電極層はスペーサ層よりも先に形成した場合について説明したが、スペーサ層を先に形成し次いで内部電極層を形成しても良い。
また、内部電極層、スペーサ層、焼失層等はスクリーン印刷により形成した場合について説明したが、例えば、転写等により形成されるものでも良い。
【0082】
更に、本発明の実施形態において、内部回路層は内部電極層とスペーサ層とからなる単純な構成のものについて説明したが、L、C、R回路等からなる複雑な回路構成のものであっても、層間の接着に分散流動容易な接着層を用いる本発明は適宜採用し得るものである。
【0083】
加えて、本発明は積層枚数の極めて多いセラミック積層体の製造に特に好適であるので、実施形態はピエゾスタックの製造に適用した場合について説明したが、本発明は積層枚数の極めて多いセラミック積層体の製造に限定するものではなく、積層コンデンサ素子、SAWフィルタ素子、MLCC基板、LTCC基板、ガスセンサ素子等様々なセラミック積層体の製造に適宜採用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態によって形成したセラミック積層成形体の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態における内部電極層のパターン形状の詳細を示す平面図で、(b)は、本発明の第1の実施形態におけるスペーサ層のパターン形状の詳細を示す平面図で、(c)は、本発明の第1の実施形態における焼失層のパターン形状の詳細を示す平面図で、(d)は、本発明の第1の実施形態における接着層のパターン形状の詳細を示す平面図である。
【図3】(a)は、内部電極印刷後のセラミック層の断面図で、(b)はスペーサ層印刷後のセラミック層の断面図で、(c)は、焼失層印刷後のセラミック層の断面図で、(d)は、接着層印刷後のセラミック層の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において、接着層が流動分散し、内部電極膜厚分布を吸収する際の、接着層の平面方向の形状変化を(a)〜(e)で連続的に表した平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における印刷用スクリーンの例を示す平面図で(a)は、内部電極層形成用スクリーンを示し、(b)はスペーサ層形成用スクリーンを示し、(c)は、焼失層形成用スクリーンを示し、(d)は、接着層形成用スクリーンを示す。
【図6】本発明の第1の実施形態における積層、接着、打ち抜き一体成形工程の概要を(a)〜(f)で連続的に示す要部断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態におけるセラミック積層体の製造工程全体の概要を示すフローチャートおよび工程要部斜視図である。
【図8】(a)は、本発明の第2の実施形態における接着層に内部電極端子付近の絶縁性を強化した絶縁性強化部511を形成したパターンを示す平面図で、(b)〜(d)は別の実施形態における接着層のパターン例を示す平面図である。
【図9】(a)はスクリーン印刷の印刷原理を示す要部断面図であり、(b)は、印刷用スクリーンの詳細を示す図9(a)中A部拡大平面図で、(c)は、図9(a)中B−B断面から見た要部断面図であり、(d)は、図9(c)中C部の拡大断面図で、(e)は、印刷用ペーストが印刷用スクリーンによって引きちぎられた直後の印刷膜の断面を表した断面模式図である。
【図10】内部電極層およびスペーサ層を印刷形成したときの膜厚分布を示すグラフであり、(a)は印刷時のスキージ方向に対して平行方向に測定した膜厚分布を示し、(b)は印刷時のスキージ方向に対して垂直方向に測定した膜厚分布を示す。
【図11】従来のセラミック積層体一体形成方法で形成したときの各印刷層の膜厚分布を示すグラフで、(a)は内部電極層およびスペーサ層の膜厚分布を示し、(b)は焼失層および接合層の膜厚分布を示し、(c)は全面に形成された接合層の膜厚分布を示し、(d)は各層の印刷形成された断面図である。
【図12】従来のセラミック積層体一体成形方法における問題点を示すセラミック積層体の一部拡大断面図である。
【図13】従来のセラミック積層体一体形成方法におけるセラミック積層成形体の構成を示す斜視図である。
【図14】従来のユニット接着積層方法におけるセラミック積層体製造工程全体の概要を示すフローチャートおよび工程要部斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
1G セラミック積層成形体
10 セラミック層
11A、11B 単位ユニット層
2A、2B 内部電極層
21A、21B 内部電極引き出し部
3A、3B スペーサ層
31A、31B スペーサ層切り欠き部
4A、4B 焼失層
5、5A、5B 接着層集合体
50 接着層単体
51 接着層間隙
6 絶縁層
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100067596
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 求馬


【公開番号】 特開2008−66549(P2008−66549A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−243570(P2006−243570)