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【発明の名称】 配線基板の製造方法およびマスク
【発明者】 【氏名】栗田 雅章

【要約】 【課題】高精細な電極が正確且つ簡便に配線される配線基板の製造方法、およびその配線基板製造方法に用いられるマスクを提供すること。

【構成】エッチングガス26が付与される間、磁性体で構成される閉塞部24は磁力により撥水層18側へ強く引きつけられ、撥水層18と閉塞部19とが強く密着する。よって、撥水層18と閉塞部24との間へのエッチングガス26の回り込みが抑制され、閉塞部24に密着する撥水層18の分解が確実に抑制される。一方で、撥水層18に対して離隔して配置される網状支持体22は非磁性体で構成されるので、網状支持体22は磁力の影響を受けず、撥水層18側に垂れることが抑制される。そして、塗布される電極材料28は親水性であるので、撥水層18が残存した領域には滲まない。よって、高精細な電極であっても、正確且つ簡便に配線することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の電極配線面に成膜された撥水層のうち、電極を配線すべき領域の撥水層を分解し、露出された電極配線面に電極を配線する配線基板の製造方法であって、
複数の貫通孔を有する網状支持体と、前記撥水層を残存させるべき領域において前記網状支持体の貫通孔を閉塞する閉塞部とを備えるマスクを、前記網状支持体と前記撥水層とを離隔させ且つ前記閉塞部と前記撥水層とを接触させた状態で配置するマスク工程と、
前記撥水層を分解する気体を前記マスク側から前記撥水層へ付与して撥水層を分解する撥水層分解工程と、
前記撥水層が分解されることにより露出した電極配線面に親水性の電極材料を塗布することにより、電極を配線する電極配線工程とを有し、
前記マスクの網状支持体は非磁性体で構成される一方、前記マスクの閉塞部は磁性体で構成され、
前記撥水層分解工程は、前記撥水層に対して基板の裏面側に磁石を配置した状態で、前記気体を前記撥水層へ付与することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記網状支持体は可撓性を有するものであることを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記マスクはフッ素樹脂またはシリコン樹脂がコーティングされたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記閉塞部は前記撥水層に接する面に樹脂層を有するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記撥水層分解工程において付与される前記気体はオゾンで構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記撥水層分解工程において付与される前記気体は酸素プラズマを含む大気圧プラズマで構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記電極配線工程において、電極材料はインクジェット法により塗布されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記電極配線工程において、電極材料はディップコート法により塗布されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記電極配線工程において、電極材料はスクリーン印刷法により塗布されるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記親水性の電極材料は金属粒子コロイド分散液で構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記親水性の電極材料は導電性の高分子材料で構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記網状支持体は樹脂で構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記網状支持体は非磁性の金属材料で構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記撥水層は末端にフッ素を含有する単分子膜で構成されることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項15】
前記撥水層は末端に炭化水素を含有する単分子膜で構成されることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項16】
複数の貫通孔を有する網状支持体と、前記網状支持体の貫通孔を閉塞する閉塞部とを備えるマスクであって、
前記網状支持体は非磁性体で構成される一方、前記閉塞部は磁性体で構成されていることを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板の製造方法およびマスクに関し、特に、高精細な電極を正確且つ簡便に配線することができる配線基板の製造方法、およびその製造方法に用いることができるマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電極が配線された配線基板の製造方法に関しては、従来より様々な方法が知られている。よく知られている方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スパッタリング法がある。スクリーン印刷法は、枠にメッシュを張り、電極配線部以外は樹脂などで網目を閉塞し、露出している網目を通して基板上へ電極材料を印刷する方法である。この手法は、網目を通して所望の位置に電極材料を印刷することができると共に比較的低コストであるが、印刷された電極材料が基板上で滲むために高精細な電極は形成できないという不都合がある。一方、スパッタリング法は、不活性ガスプラズマによりターゲットをスパッタリングし、基板表面に電極用薄膜を形成する方法であり、高精細な電極を形成することができるが、この手法は真空装置などの大がかりな設備を必要とし、高コストであるという不都合がある。
【0003】
スクリーン印刷法やスパッタリング法は上述のような不都合を有するので、スクリーン印刷法やスパッタリング法に代わる新たな手法が、特許文献1に示唆されている。特許文献1では、基板面を撥水層で覆い、薄膜材料を形成しようとする領域のみ撥水層を除去して基板面を露出させ、その後、親水性の薄膜材料を配置する方法が開示されている。このようにすれば、撥水層で覆われた領域には親水性薄膜材料が滲まないので、薄膜材料を高精細に配置することができる。この方法によれば、スクリーン印刷法よりも高精細、且つスパッタリング法よりも安価且つ簡便に電極を配線することができる。
【0004】
この方法は電極を配線する前の準備工程として、電極を配線すべきでない領域を撥水層で覆う工程が必要である。従来は、基板の全面に設けられた撥水層のうち、撥水層を残存させたい部分をマスクで覆う一方、電極を配線すべき領域の撥水層のみを露出し、プラズマガスなどのエッチングガスを吹き付けることにより、不要な領域の撥水層を除去していた。
【特許文献1】特開2004−273438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、撥水層を覆うマスクに何ら工夫が為されていなかったため、本来は除去すべき撥水層が残存してしまったり、残存させるべき撥水層までが除去される場合が生じ、その結果、本来電極が配線されるべきではない領域まで電極材料が滲んだり、或いは、本来電極が配線されるべき領域に電極材料が定着しない部分が生じるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、高精細な電極を正確且つ簡便に配線することができる配線基板の製造方法、およびその製造方法に用いることができるマスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の配線基板の製造方法は、基板の電極配線面に成膜された撥水層のうち、電極を配線すべき領域の撥水層を分解し、露出された電極配線面に電極が配線された配線基板を製造する方法であって、複数の貫通孔を有する網状支持体と、前記撥水層を残存させるべき領域において前記網状支持体の貫通孔を閉塞する閉塞部とを備えるマスクを、前記網状支持体と前記撥水層とを離隔させ且つ前記閉塞部と前記撥水層とを接触させた状態で配置するマスク工程と、前記撥水層を分解する気体を前記マスク側から前記撥水層へ付与して撥水層を分解する撥水層分解工程と、前記撥水層が分解されることにより露出した電極配線面に親水性の電極材料を塗布することにより、電極を配線する電極配線工程とを有し、前記マスクの網状支持体は非磁性体で構成される一方、前記マスクの閉塞部は磁性体で構成され、前記撥水層分解工程は、前記撥水層に対して基板の裏面側に磁石を配置した状態で、前記気体を前記撥水層へ付与することを特徴とする。
【0008】
ここでいう「撥水層」とは、有機単分子層、フッ素樹脂層、メッキ層、シリコン樹脂層等、公知の撥水処理により電極配線面上に形成される層のことであり、「親水性の電極材料」とは、上記撥水層によりはじかれる性質を有する電極材料のことをいう。
【0009】
請求項2記載の配線基板の製造方法は、請求項1記載の配線基板の製造方法において、前記網状支持体は可撓性を有するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の配線基板の製造方法は、請求項1または2に記載の配線基板の製造方法において、前記マスクはフッ素樹脂またはシリコン樹脂がコーティングされたものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の配線基板の製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記閉塞部は前記撥水層に接する面に樹脂層を有するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の配線基板の製造方法は、請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記撥水層分解工程において付与される前記気体はオゾンで構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の配線基板の製造方法は、請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記撥水層分解工程において付与される前記気体は酸素プラズマを含む大気圧プラズマで構成されることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の配線基板の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記電極配線工程において、電極材料はインクジェット法により塗布されるものであることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の配線基板の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記電極配線工程において、電極材料はディップコート法により塗布されるものであることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の配線基板の製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記電極配線工程において、電極材料はスクリーン印刷法により塗布されるものであることを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の配線基板の製造方法は、請求項1から9のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記親水性の電極材料は金属粒子コロイド分散液で構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の配線基板の製造方法は、請求項1から9のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記親水性の電極材料は導電性の高分子材料で構成されることを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の配線基板の製造方法は、請求項1から11のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記網状支持体は樹脂で構成されることを特徴とする。
【0020】
請求項13記載の配線基板の製造方法は、請求項1から11のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記網状支持体は非磁性の金属材料で構成されることを特徴とする。
【0021】
請求項14記載の配線基板の製造方法は、請求項1から13のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記撥水層は末端にフッ素を含有する単分子膜で構成されることを特徴とする。
【0022】
請求項15記載の配線基板の製造方法は、請求項1から13のいずれかに記載の配線基板の製造方法において、前記撥水層は末端に炭化水素を含有する単分子膜で構成されることを特徴とする。
【0023】
請求項16記載のマスクは、複数の貫通孔を有する網状支持体と、前記網状支持体の貫通孔を閉塞する閉塞部とを備えるものであって、前記網状支持体は非磁性体で構成される一方、前記閉塞部は磁性体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の配線基板の製造方法によれば、撥水層分解工程において気体が付与されると、気体は網状支持体の貫通孔を通過するので、撥水層が気体に晒される。ここで、マスクの閉塞部は磁性体で構成されるものであり、撥水層分解工程では、撥水層に対して基板の裏面側に磁石を配置した状態で、気体が付与されるので、気体が付与される間、磁性体で構成される閉塞部は磁力により撥水層側に引きつけられ、撥水層と閉塞部とが密着する。したがって、撥水層と閉塞部との間への気体の回り込みが抑制され、閉塞部に密着する撥水層の分解が確実に抑制される。一方で、撥水層に対して離隔して配置される網状支持体は非磁性体で構成されるので、網状支持体が磁力の影響を受けて撥水層側に垂れることが抑制される。よって、網状支持体と撥水層との間の距離が保たれるので、閉塞部により貫通孔が閉塞されていない領域の撥水層を、確実に気体に晒し分解することができる。これに対し、網状支持体が磁性体で構成されていると、網状磁性体が磁力の影響を受けて撥水層側に垂れ、網状支持体と撥水層とが近接し、気体が網状支持体の裏側(撥水層側)に十分に回り込まず、撥水層が網目形状に残存してしまうのである。
【0025】
このように、電極を配線すべき領域の撥水層を確実に除去する一方で、閉塞部を密着させた領域の撥水層は確実に残存させることができるので、高精細な電極を正確且つ簡便に配線することができるという効果がある。
【0026】
さらに、閉塞部はそれぞれ網状支持体に設けられているので、各閉塞部の相対的な位置関係を正確に保つことができ、電極を正確且つ簡便に配線できるという効果がある。すなわち、各閉塞部が網状支持体を介して一連一体に設けられているので、他の閉塞部との接点が無く島状に孤立した閉塞部であっても、他の閉塞部との相対的な位置関係を正確に保ったまま、撥水層に接触させることができるのである。
【0027】
請求項2記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、網状支持体は可撓性を有するので、撥水層に段差があったり又は閉塞部の厚みにバラツキがあったとしても、撥水層の段差や閉塞部の厚みのバラツキに合わせて網状支持体が撓むことにより、撥水層と閉塞部との間の密着性を良好に保つことができ、高精細な電極を容易に配線することができるという効果がある。
【0028】
請求項3記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1または2に記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、マスクはフッ素樹脂またはシリコン樹脂がコーティングされているので、撥水層を分解するための気体として、例えば、オゾンや大気圧プラズマなどの腐食性の高い気体が用いられても、マスクの劣化が抑制される。したがって、同一のマスクを何度も再利用して配線基板を製造することができるので、高精細な電極であっても線幅や線間にバラツキのない配線基板を簡便に大量生産することができるという効果がある。
【0029】
請求項4記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から3のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、閉塞部は、撥水層に接する面に樹脂層が設けられているので、撥水層に対する密着性が向上すると共に、閉塞部による撥水層の損傷を抑制できる。その結果、閉塞部に対応した領域の撥水層が確実に残存し、高精度な電極を正確に配線することができるという効果がある。
【0030】
請求項5記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、撥水層分解工程において付与される気体はオゾンで構成されるので大気圧下で紫外光を照射することで容易に処理することができ、真空装置を要さず、製造設備が簡便化するという効果がある。
【0031】
請求項6記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から4のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、撥水層分解工程において付与される気体は酸素プラズマを含む大気圧プラズマで構成されるので大気圧下で容易に処理することができ、真空装置を要さず、製造設備が簡便化するという効果がある。
【0032】
請求項7記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、電極配線工程において、電極材料はインクジェット法により塗布されるので、簡便な手法で電極材料を塗布することができるという効果がある。
【0033】
請求項8記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、電極配線工程において、電極材料はディップコート法により塗布されるので、簡便な手法で電極材料を塗布することができるという効果がある。
【0034】
請求項9記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から6のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、電極配線工程において、電極材料はスクリーン印刷法により塗布されるので、簡便な手法で電極材料を塗布することができるという効果がある。
【0035】
請求項10記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から9のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、親水性の電極材料は金属粒子コロイド分散液で構成されるので、例えば、インクジェット法などの簡便な手法で電極材料を塗布することができるという効果がある。
【0036】
請求項11記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から9のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、親水性の電極材料は導電性の高分子材料で構成されるので、例えば、インクジェット法などの簡便な手法で電極材料を塗布することができるという効果がある。
【0037】
請求項12または請求項13に記載の配線基板の製造方法によれば、網状支持体が非磁性体で構成されるので、請求項1から11のいずれかに記載の配線基板の製造方法と同様の効果を奏する。
【0038】
請求項14または請求項15に記載の配線基板の製造方法によれば、請求項1から13のいずれかに記載の配線基板の製造方法の奏する効果に加え、撥水層が単分子膜で構成されるので、層の厚みが薄く、配線基板全体の厚みを薄くすることができるという効果がある。また、層の厚みが薄いため、効率的に分解および除去することができるという効果がある。
【0039】
請求項16記載のマスクによれば、複数の貫通孔を有する網状支持体と、網状支持体の貫通孔を閉塞する閉塞部とを備え、網状支持体は非磁性体で構成される一方、閉塞部は磁性体で構成されているので、処理対象面をマスクで覆い、処理対象面の裏面側に磁石を配置すると、磁性体で構成される閉塞部は磁力により処理対象面へ引きつけられ、処理対象面と閉塞部とが密着する。よって、その状態で、例えばエッチングガスを付与すると、閉塞部と処理対象面との間に、エッチングガスが回り込むことが抑制されるから、閉塞部にうより覆われる処理対象面は、確実に保護することができる。一方、網状支持体は非磁性体で構成されるので、網状支持体が磁力の影響を受けて処理対象面側に垂れることが抑制される。よって、網状支持体と処理対象面との間の距離が保たれるので、閉塞部により貫通孔が閉塞されていない領域の処理対象面を、確実にエッチングガスに晒し処理することができる。
【0040】
このように、電極を配線すべき領域の処理対象面を確実に気体に晒す一方で、閉塞部を密着させた領域の処理対象面は確実に保護することができるので、高精細な電極を正確且つ簡便に配線することができるという効果がある。また、閉塞部はそれぞれ網状支持体に設けられているので、各閉塞部の相対的な位置関係を正確に保つことができ、電極を正確且つ簡便に配線できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の配線基板の製造方法を説明する図であり、図1(a)は本発明の配線基板の製造方法において、最初に準備される基板12を示す断面図であり、図1(b)はエッチングガス26付与時における基板12等の断面図であり、図1(c)は、電極を配線すべき領域の撥水層18が選択的に分解された基板12の断面図であり、図1(d)は電極材料28が塗布された基板12の断面図である。なお、図1は模式的な図であって、図示された各部材の厚みの相対関係は、実物の厚みを正確に反映してはいない。
【0042】
まず、図1(a)に示すように、基板12を準備する。基板12は、基板本体14と、撥水層18とを備える。基板本体14は板状部材であって、その材質として、プラスチック、天然樹脂、紙、セラミックス、ガラス、金属などが挙げられる。本実施例では、基板本体14の上表面である電極配線面16に電極が配線される。また、本実施例において、電極配線面16の裏面側の面を、基板裏面15と称する。
【0043】
撥水層18は、電極配線面16に予め成膜された略均一な薄膜であって、上表面が撥水性を有する。図1(a)向かって右側に撥水層18を拡大して図示する。本実施例では、撥水層18は、末端Mに疎水性のフッ素または炭化水素を含有する有機単分子膜で構成されるものとして説明する。有機単分子膜は、厚み方向には一分子のみで幅方向に有機分子が配列した膜であるため、膜厚が極めて薄い(図1(a)拡大図参照)。よって、後述する撥水層分解工程において、効率良く分解および除去することができる。このような有機単分子膜は、末端官能基Sを電極配線面16に化学吸着させることにより、疎水性の末端Mが上表面側に密集した状態で、有機単分子が規則的に配列して自己組織的に形成されるので、自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer:以下、SAM)とも称される。
【0044】
最初、撥水層18により電極配線面16の全面が被覆されているが、後述する撥水層分解工程において撥水層18の一部が選択的に除去されることにより、電極配線面16の一部が露出せしめられる(図1(c)参照)。
【0045】
なお、基板本体14がプラスチックで構成される場合には、撥水層18との密着性を向上させるために、撥水層18に接する面にガラス樹脂またはSiO2やSiNなどで構成される密着力強化層が被膜されていてもよい(図示せず)。その場合には、その密着強化層を含めて基板本体14と称する。
【0046】
次に、図1(b)に図示されるように、基板12を、磁性ステージ19上に載置し、撥水層18上にマスク20を配置する(マスク工程)。そして、マスク20側から、エッチングガス26を付与する(撥水層分解工程)。
【0047】
マスク20は、網状支持体22と、閉塞部24とを備える。網状支持体22は網目22aを有し、シルク、または、合成樹脂、あるいは、非磁性のステンレスの糸体22bで織られた可撓性のあるスクリーンメッシュであって、電極配線面16全面を覆う大きさを有する。ここで、網状支持体22を非磁性のステンレス(例えば、SUS301,SUS304)で構成すると、後述する撥水層分解工程において用いられる、オゾンや大気圧プラズマなどの腐食性の高いエッチングガス26に晒されても、網状支持体22の劣化は少なく、マスク20が多数回の再利用に耐える。一方、網状支持体22を合成樹脂(例えば、ナイロン、ポリエステル)の繊維で構成する場合は、マスク20を予めフッ素樹脂またはシリコン樹脂などのように耐久性のよい樹脂や、SiO2やSiNなどでコーティングしておくと良い。このようにすれば、マスク20の耐性を向上し、多数回の再利用を可能とすることができる。
【0048】
閉塞部24は、網状支持体22の片面に形成された略均一な厚みを有する薄板部材であって、例えば磁性のステンレス、ニッケル等の、磁性体の金属材料で構成される。この閉塞部24は、後述する撥水層分解工程において撥水層18を分解させずに残存させたい領域に設けられ、網目22aを閉塞するものである。なお、閉塞部24は、フォトリソグラフィ法、エレクトロフォーミング、エッチング法など、公知の方法で形成することができる。
【0049】
このように構成されたマスク20が、閉塞部24形成面を撥水層18に対向させて基板12上に配置されると、閉塞部24が撥水層18に接触する一方、網状支持体22と撥水層18との間には、閉塞部24の厚み分の距離が確保される。
【0050】
磁性ステージ19は、基板12を裏面15側から支持する台であって、電磁石が設けられている。コイル等に電流を流すことによって電磁石に磁力を発生させると、基板12上に配置されたマスク20の閉塞部24を磁力により基板12側に引きつけることができる。一方、電流を流さない間は、磁力が発生しない。よって、マスク20の配置を微調整するとき、或いはマスク20を取り外す際には、電流をオフして磁力を発生させないことにより、容易に作業をすることができる。
【0051】
次に、図1(b)に図示するように、エッチングガス26をマスク20側から付与する(撥水層分解工程)。エッチングガス26は、撥水層18を分解できる気体であればよく、例えば、オゾンまたは酸素プラズマを含む大気圧プラズマなどが好適に用いられる。エッチングガス26に晒された撥水層18は、分解され、除去される。オゾンや大気圧プラズマは分子が小さく網状支持体22を容易に通過すると共に、大気圧で処理できるので、真空装置など大がかりな設備が不要である。図1(c)に示すように、撥水層分解工程によれば、エッチングガス26を付与することにより、閉塞部24により覆われていない領域の撥水層18のみをエッチングガス26に晒して分解、除去し、閉塞部24により覆われた領域の撥水層18は残存させることができる。
【0052】
ここで、撥水層分解工程では、磁性ステージ19から磁力を発生させた状態で、エッチングガス26が付与される。このようにすれば、エッチングガス26が付与される間、磁性体で構成される閉塞部24は磁力により撥水層18側へ強く引きつけられ、撥水層18と閉塞部19とが強く密着する。よって、撥水層18と閉塞部24との間へのエッチングガス26の回り込みが抑制され、閉塞部24に密着する撥水層18の分解が確実に抑制される。
【0053】
一方で、撥水層18に対して離隔して配置される網状支持体22は非磁性体で構成されるので、網状支持体22は磁力の影響を受けず、撥水層18側に垂れることが抑制される。よって、網状支持体22と撥水層18との間の距離が保たれるので、閉塞部24が設けられていない網状支持体22の下層には、エッチングガス26が十分に回り込み、撥水層18が確実に分解される。これに対し、網状支持体22が磁性体で構成されていると、網状支持体22が磁力の影響を受けて撥水層18側に垂れ、網状支持体22と撥水層18とが近接し、エッチングガス26が網状支持体の裏側(撥水層18側)に十分に回り込まず、撥水層18が網目形状に残存してしまうという不都合が生じ得るのである。
【0054】
次に、図1(d)に示すように、撥水層18が分解されることにより露出した電極配線面16に、電極材料28を塗布する(電極配線工程)。電極材料28として親水性の材料を用いることにより、塗布された電極材料28は撥水層18の残存領域へは滲まないので、撥水層18が除去された領域に正確に対応した電極を配線することができる。
【0055】
親水性の電極材料28としては、例えば、金属粒子コロイド分散液、親水性の導電性有機高分子など種々の材料が用いられる。また、電極材料28を塗布する方法としては、例えば、インクジェットプリンタを用いて電極材料28の微少液滴を目的位置に噴出するインクジェット法、基板12を電極材料28に浸せきし、一定速度で引き上げて塗布量を調節するディップコート法、基板12を回転させ遠心力を利用して電極材料28を塗布するスピンコート法、スクリーン印刷法などが好適に用いられる。塗布された電極材料28を定着させることにより、目的位置に電極が配線された配線基板を製造することができる。
【0056】
このように、本実施例の配線基板の製造方法によれば、電極を配線すべき領域の撥水層18を確実に除去する一方で、閉塞部24を密着させた領域の撥水層18は確実に残存させることができる。そして、その後の工程で塗布される電極材料28は親水性であるので、撥水層18が残存した領域には滲まず、撥水層18が除去された領域に、高精細な電極を正確且つ簡便に配線することができる。
【0057】
図2は、上面(閉塞部24形成面と反対側の面)からみたマスク20の一例を示す概略平面図である。このようなマスク20を用いてエッチングガス26を付与すると、上述したように、閉塞部24a,24b,24cの領域以外の撥水層18が除去され、その撥水層18が除去された領域に電極を配線することができる。ここで、網状支持体22がない場合は、各閉塞部24a,24b,24cをそれぞれ個別に撥水層18に対し配置することになる。ここで、図2に示す閉塞部24aのように、一端から他端まで伸びるパターンの場合は、正確な位置を取ることは比較的容易であるが、閉塞部24b,24cのように、他の閉塞部24との接点が無く島状に孤立していると、他の閉塞部24との相対的な位置関係を正確にとることが困難でありまた手間がかかる。本実施例のマスク20は、網状支持体22に各閉塞部24が予め設けられ、各閉塞部24a,24b,24cが網状支持体22により一連一体に結合されているので、各閉塞部24の相対的な位置関係を正確に保つことができ、一度、正確なマスク20を作成すれば、そのマスク20を用いることにより、電極の線幅や線間にバラツキのない配線基板を大量生産することができる。
【0058】
図3および図4を参照して、マスク20の網目22aのサイズと配線電極の精度との関係について説明する。図3は、網目22aのサイズを表す各種パラメータを示す図である。ここでは、網目サイズ22を表すパラメータとして、図3に示すように、1インチ内に含まれる網目22aの数を表すメッシュ数A、網状支持体22を構成する糸体22bの径を表す線径(線幅)B、網目22aの一辺の長さ(開口長さ)を示すメッシュ孔径Cを用いて説明する。
【0059】
図4は、網状支持体22の網目22aサイズと形成される電極との関係を示す図である。図4(a)に示すように、例えば、線幅10μmの電極Eを形成したい場合、10μm幅を残して閉塞部24を設けることになるが、この場合、メッシュ数Aが590、線径Bが13μm、メッシュ孔径Cが30μmのスクリーンマスクを網状支持体22として用いると、10μm幅の電極を精度良く形成することができた。エッチングガス26は気体であるため、図4(b)に示すように、糸体22bの下層にも均一に回り込み、線径Bよりも細かい電極を配線することができるのである。
【0060】
なお、図4(b)に示すように、網状支持体22と撥水層18との距離Lを10μm以上とすることにより、網状支持体22と撥水層18との間に十分な距離を確保すると、エッチングガス26が網状支持体22の下層において十分に回り込み、撥水層18をエッチングガス26に均一に晒すことができる。
【0061】
また、網状支持体22と撥水層18との間の距離Lは閉塞部24の厚みに略等しいものであるが、これを20μm以下とすると、微細な閉塞部24であっても精度良く形成することができる。すなわち、エレクトロフォーミング等の公知の手法で、網状支持体22の片面に閉塞部24を形成する場合、閉塞部24は厚み方向と幅方向に同程度の速度で成長するので、閉塞部24に20μm以上の厚さを与えようとすると、閉塞部24が幅方向(図4(b)の横方向)にも20μm以上成長し、微細な閉塞部24が得られないおそれが生じるのである。よって、閉塞部24の厚みを20μm以下とすることにより、微細な平素部24であっても形成することができるのである。
【0062】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0063】
例えば、本実施例では、閉塞部24をニッケルまたは磁性のステンレスで構成される一層の薄膜であるものとして説明したが、閉塞部24は少なくとも一部に磁性体を有していれば良く、例えば2層以上から構成されていても良い。
【0064】
図5は変形例の閉塞部34を示す断面図である。図5において、図1に示した実施例と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。変形例の閉塞部34は、磁性体で構成される磁性層34aと、撥水層18に接する面に設けられた合成樹脂層34bとから構成される。このようにすれば、合成樹脂層34bにより、撥水層18との密着性が良く、且つ閉塞部34bにより撥水層18が損傷することを抑制できる。また、合成樹脂層34bの上層には磁性層34aが設けられていることから、基板12の裏面15に磁石を配置すれば、磁性層34aが磁力により基板12側に引きつけられ、閉塞部34と撥水層18とを密着させることができる。
【0065】
また、本実施例では、網状支持体22と撥水層18との間の距離が、閉塞部24のみによって保たれるものとして説明したが、網状支持体22と撥水層18との間の距離を保つための枠体を、網状支持体22の周縁に設けても良い。このようにすれば、網状支持体22の周縁部においても、網状支持体22と撥水層18との間の距離が確保され、全面において、高精細な電極を正確に配置することができる。
【0066】
また、本実施例では、マスク20を用いて基板上に電極を配線していたが、電極以外の構造体、例えば、絶縁体、半導体、保護膜などの配設にもマスク20を好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は本発明の配線基板の製造方法において、最初に準備される基板を示す断面図であり、(b)はエッチングガス付与時における基板等の断面図であり、(c)は、電極を配線すべき領域の撥水層が選択的に分解された基板の断面図であり、(d)は電極材料が塗布された基板の断面図である。
【図2】上面からみたマスクの一例を示す概略平面図である。
【図3】網目のサイズを表す各種パラメータを示す図である。
【図4】網状支持体の網目サイズと形成される電極との関係を示す図であり、(a)は概略平面図であり、(b)は概略断面図である。
【図5】変形例の閉塞部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
12 基板
16 電極配線面
18 撥水層
19 磁性ステージ(磁石)
20 マスク
22 網状支持体
22a 網目(貫通孔)
24,34 閉塞部
26 エッチングガス(気体)
28 電極材料
34b 樹脂層
E 電極
M 末端
【出願人】 【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100103045
【弁理士】
【氏名又は名称】兼子 直久

【識別番号】100127605
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 愛

【識別番号】100129447
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 努


【公開番号】 特開2008−47585(P2008−47585A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219261(P2006−219261)