| 【発明の名称】 |
微細配線形成方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】田川 雅人
【氏名】横田 久美子
【氏名】縄舟 秀美
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| 【要約】 |
【課題】樹脂基材上に構築させる回路の微細化や製造工程の簡略化に対応するための樹脂基材のメタライズ(薄膜,多層化,めっき)に関する微細配線形成方法を提供する。
【構成】レーザーデトネーション法を用いた原子状ビームの照射による表面改質を利用して、ポリイミド樹脂表面の局所的な濡れ性を制御し、微細配線を形成する。すなわち、樹脂基材表面に原子状フッ素ビームを照射後(第1の改質工程)、マスキングを施し、その後で原子状酸素ビームを照射することにより(第2の改質工程)、無電解金属めっきにおいてマスク開口部のみに銅などの金属を析出させるマスクパターンの転写を可能とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、 前記樹脂基材の表面に原子状ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる改質工程と、 前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、 前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする微細配線形成方法。 【請求項2】 樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、 前記樹脂基材の表面に原子状フッ素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる改質工程と、 前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、 前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする微細配線形成方法。 【請求項3】 樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、 前記樹脂基材の表面にマスキングを施した後、原子状フッ素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる改質工程と、 前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、 前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする微細配線形成方法。 【請求項4】 樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、 前記樹脂基材の表面に原子状フッ素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる第1の改質工程と、 前記改質された樹脂基材表面にマスキングを施した後、原子状酸素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる第2の改質工程と、 前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、 前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする微細配線形成方法。 【請求項5】 前記改質工程における原子状ビームが、レーザーデトネーション法を用いて、分子を解離、加速して得られる原子状ビームであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の微細配線形成方法。 【請求項6】 前記触媒粒子が、Pd(パラジウム)イオンを含有するコロイドまたは有機錯体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の微細配線形成方法。 【請求項7】 前記樹脂基材を構成する樹脂が、液晶ポリマー又はポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の微細配線形成方法。 【請求項8】 前記遷移金属イオンが、銅イオン又はアルミニウムイオンであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の微細配線形成方法。 【請求項9】 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の微細配線形成方法により形成された金属配線回路。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、微細配線形成方法に関する技術で、特にレーザーデトネーション法を用いて形成した原子状フッ素ビーム、原子状酸素ビームとマスキンクを用いて、低温プロセスで、ポリイミド樹脂(薄膜、基板等)などの高分子樹脂基材上に、原子状フッ素および原子状酸素を照射し、触媒粒子であるPd(パラジウム)コロイドの吸着性を制御して、無電解金属メッキのメッキ箇所を制御して微細配線を形成する技術に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年のULSI(Ultra-Large Scale Integration)デバイスの高集積化、高速化にともない配線基板に微細化及び高周波信号への対応が求められている。LSI(Large Scale Integration)内部の微細回路の形成においては、回路密度の増大に伴い、既に100nm以下の回路幅が必要となり、空間スケールはナノサイズに近づきつつある。基板材料については従来の無機系材料から有機系高分子材料へと移行しており、特に耐熱性、誘電導性、表面平滑性に優れたポリイミド樹脂の利用が注目されている。 【0003】 また回路形成においては、従来のアルミニウム合金回路に比べ比抵抗の小さい銅を用いた回路経路形成の技術の開発が求められている。高分子樹脂の基板材料としての利用の一つにフレキシブルプリント配線板が挙げられ、携帯電話などの可動部への利用を中心にその需要は増している。したがってポリイミド樹脂上への微細銅回路の形成は、今後のエレクトロニス分野のおいて重要な要素技術となる。 【0004】 現在、ポリイミド樹脂はすでにフレキシブル配線基板材料として用いられているが、配線には更なる微細化が求められている。従来の方法では銅箔とポリイミドを接合し、有機レジストを用いて回路部以外の銅を酸性条件下にて溶解除去(エッチング)した後、レジストを剥離してプリント配線版とするのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。 しかしこの方法では回路の微細化への対応に限界があり、サブミクロンオーダーの回路を形成することは困難である。 【0005】 また、ポリイミド樹脂上に蒸着、スパッタなどを行う手法では大規模で高価な装置を必要とするために生産コスト、消費エネルギー面に問題がある。その上、蒸着においては、マスクの長期利用という点において問題がある。 したがって、次世代プリント配線板に要求される回路の微細化や製造工程の簡略化に対応するためのポリイミド樹脂のメタライズに関する新規手法の開発が要望されている。 【0006】 【特許文献1】特開2004−143587号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上述の問題点やニーズに対応すべく、本発明の微細配線形成方法は、次世代プリント配線基板の候補である樹脂基材上に構築させる回路の微細化や製造工程の簡略化に対応するための樹脂基材のメタライズ(薄膜,多層化,めっき)に関する新規な微細配線形成方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、宇宙環境での原子状酸素とターゲット材料表面との衝突・反応現象を解析するために開発されたレーザーデトネーション法を用いて、電気的に中性な原子に5〜10eVの並進エネルギーを付与することで、ターゲット材料表面の修飾、フッ素化・酸化といった材料の表面改質の研究を鋭意行ってきた。その研究の中で、樹脂材料表面にマスキングを施すなどの方法により、樹脂表面を選択的にフッ素化・酸化することで、樹脂基材に対して微細配線を形成し得ることの知見を得た。すなわち、本発明者らは、レーザーデトネーション法を用いた原子状ビームの照射による表面改質を利用して、ポリイミド樹脂表面の局所的な濡れ性を制御し、微細配線の形成に成功した。 以下、本発明の微細配線形成方法について説明する。 【0009】 上述の目的を達成するため、本発明の微細配線形成方法は、樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、前記樹脂基材の表面に原子状ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる改質工程と、前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする。 【0010】 上記の微細配線形成方法において、樹脂基材の表面に原子状ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させるとは、例えば、レーザーデトネーション型原子ビーム発生装置を用いて形成した低エネルギー原子状フッ素ビーム若しくは 原子状酸素ビームを照射することにより、樹脂基材表面を疎水化あるいは親水化することである。 高分子の樹脂基材には、その構成する分子が水親和性のある水酸基などを全く含まないものがある。かかるものは、水の分子が浸透する隙間がないので低湿性という性質を有し、無電解めっきにより形成される際、めっき液が均一に樹脂基材内に浸透せず、所謂、濡れ性が比較的低い状態となる。その結果、めっき皮膜の樹脂基材に対する密着力が十分に得られない場合がある。従って、かかる場合には、樹脂基材表面に原子状酸素ビームを照射することにより、樹脂基材表面を親水化して、濡れ性を高めるといった制御を行うのである。一方、樹脂基材表面に原子状フッ素ビームを照射することにより、樹脂基材表面を疎水化して、濡れ性を低くし、めっき皮膜の樹脂基材に対する密着力を低くして、照射面への金属の析出を抑制する。 このように、レーザーデトネーション法を用いた原子状ビームの照射による表面改質を利用して、樹脂基材表面の局所的な濡れ性の制御を行い、微細配線形成を行うのである。 【0011】 ここで、樹脂基材を構成する樹脂は、液晶ポリマー,ポリイミド樹脂が好ましい。高分子樹脂であるポリイミド樹脂は、電子機器の高密度実装において耐熱性、電気特性など優れた材料特性のためにフレキシブルプリント基板などの基板材料としての利用が注目されているからである。 【0012】 また、上記の微細配線形成方法において、改質された樹脂基材表面に無電解金属めっきを施すための触媒粒子としては、Pd(パラジウム)イオンを含有するコロイドまたは有機錯体が好ましい。Pdイオンを含有するコロイドまたは有機錯体は、無電解金属めっきの触媒として好適だからである。 【0013】 また、上記の微細配線形成方法において、触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解金属めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程とは、ホルムアルデヒドのような還元剤を用いて、溶液中の遷移金属イオン(例えば、銅イオンやアルミニウムイオンなど)を還元し、金属皮膜として析出させる化学的なプロセスである。ホルムアルデヒドのような還元剤が酸化される際に放出される電子によって遷移金属イオンが還元されるので、電気めっきのように外部電源を用いる必要がない。 【0014】 また、還元剤が触媒活性な表面で酸化されるときに遊離する電子によって溶液中の遷移金属イオンが還元され析出するので、ピンホールのない均一な厚さめっき皮膜が得られる。この際、析出した金属が還元剤に対して触媒活性であれば金属の析出が連続して起こり、浴組成を一定に管理した状態では、めっき時間に応じて任意厚さのめっき皮膜が一定の速度で得られる。無電解金属めっきは触媒的な化学反応によって成膜がおこなわれるので、電析におけるような電流分布によるめっき厚さのばらつきがなく、複雑な形状の部品に対しても均一な膜厚が得られる。 【0015】 次に、本発明の他の微細配線形成方法について説明する。 本発明の他の微細配線形成方法は、樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、前記樹脂基材の表面に原子状フッ素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる改質工程と、前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする。 【0016】 上記の方法は、原子状フッ素ビームを照射することのみを用いて、無電解金属めっきによる金属析出の制御を行なうものである。これは、樹脂基材上において、原子状酸素を用いた親水化による照射面への選択的析出ではなく、照射面を原子状フッ素により疎水化することで、照射面への銅などの金属の析出を抑制するものである。 【0017】 また、本発明の他の微細配線形成方法は、樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、前記樹脂基材の表面にマスキングを施した後、原子状フッ素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる改質工程と、前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする。 【0018】 上記の方法により、樹脂基材の表面にマスキングを施し、原子状フッ素ビームを照射し、無電解金属めっきを行うことで、マスク開口部以外に銅を析出させるマスクパターンの転写(ネガ型)が可能となるのである。 【0019】 また、本発明の微細配線形成方法は、樹脂基材上に金属配線を形成させる方法であって、前記樹脂基材の表面に原子状フッ素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる第1の改質工程と、前記改質された樹脂基材表面にマスキングを施した後、原子状酸素ビームを照射することにより樹脂基材表面を改質させる第2の改質工程と、前記改質された樹脂基材表面にめっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、前記触媒粒子を吸着させた樹脂基材表面に対して、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程を有することを特徴とする。 【0020】 上記の方法により、樹脂基材表面に原子状フッ素ビームを照射後(第1の改質工程)、マスキングを施し、その後で原子状酸素ビームを照射することにより(第2の改質工程)、無電解金属めっきにおいてマスク開口部のみに銅などの金属を析出させるマスクパターンの転写(ポジ型)が可能となるのである。 【発明の効果】 【0021】 本発明の微細配線形成方法によれば、レーザーデトネーション法により形成した酸素原子ビーム、フッ素原子ビームとメタルマスクを用いて、室温で、ポリイミド樹脂などの樹脂基材上に、原子状フッ素ビームを照射し、Pd(パラジウム)コロイドの吸着性を制御して、銅などの金属メッキのメッキ箇所を制御して微細配線を形成することができるといった効果がある。 【0022】 また、本発明の微細配線形成方法によれば、レーザーデトネーション法を用いて原子状酸素及びフッ素を用いることで、ポリイミド樹脂などの樹脂基材の表面を親水化或いは疎水化でき、これを利用し、無電解銅めっきをおこなうことでポジ型及びネガ型のマスクパターンの転写ができるといった効果がある。 【0023】 さらに、本発明の微細配線形成方法によれば、微細配線として実用化するためにはマスクの密着性や、溶液の濃度、温度の均一化等の問題を解決する必要があるものの、原子状フッ素ビーム及び原子状酸素ビームを用いためっき制御技術により、サブミクロンオーダーの微細配線形成の可能性がある。本発明の微細配線形成方法は、高分子樹脂に広く適用できる可能性を有しており、液晶ポリマー等の新規材料への応用が期待できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0024】 以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。 【0025】 本発明の微細配線形成方法における樹脂基材表面を改質させる改質工程を行うには、レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置を用いて、樹脂基材の表面に原子状ビームを照射している。以下に、レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置を用いて、樹脂基材の表面に原子状ビームを照射することについて説明する。 図1は、レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置の概略図を示している。レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置は、真空チャンバー、排気を行うためのターボ分子ポンプ、ソースガスをパルス状に導入するためのパルスドバルブ、CO2レーザー、レーザー光を反射及び集光させるための凹面鏡、発生した原子状ビームを噴射するノズルから構成されている。 【0026】 ここで、CO2レーザーの波長は10.6 μmで、出力は5.0〜7.0 J/pulseで調整することが可能である。また、パルスドバルブはピエゾアクチュエーターにより開閉され、コントローラを用いて数十〜数百 μm間隔でバルブの開閉を行うことが可能である。一回に導入するガスの量は、バルブの開閉時間とガスの背圧を調節することで調整することが可能である。CO2レーザー光を集光するための凹面鏡は、曲率半径が1000 mmで反射効率を上げるために金をコーティングしている。また、この凹面鏡は支持台上に取り付けられており、マイクロメーターによって角度を微調整し、焦点位置の調整を行うことが可能である。ノズルは銅製であるが、内側のレーザー焦点付近にはレーザーの反射効率を上げるために金薄膜を張り張り付けている。また、ノズル全体はデトネーション時に加熱されるため、水冷されている。それぞれの配置は、既存のチャンバーに接続して使用する事を目的としているため、レーザーはパルスドバルブの背面からZnSe窓を通してチャンバー内に入射し、凹面鏡によって反射・集光を行っている。 【0027】 次に、本レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置の動作過程について説明する。 先ず、ディジタルシグナルユニットからレーザーコントローラおよびディレイユニットにTTLシグナルを入力する。ディレイユニットからは適当な時間だけ遅らせたシグナルをバルブコントローラに入力し、レーザー発光に同期させてパルス状のソースガスをノズル内部に導入する。レーザー光は、ZnSeウインドウを通過した後、凹面鏡によってノズル内部に反射・集光される。その集光したレーザーによってノズル内でデトネーション波が生じ、高密度プラズマが生成される。そしてプラズマが断熱膨張する際に、プラズマの熱エネルギーが運動エネルギーに変換され、高速原子状ビームが生成する。 原子状ビームのエネルギーおよびフラックスの調整は、導入するソースガス量、レーザーのパルスあたりのエネルギーならびにレーザー照射タイミングを変えることにより行っている。 【0028】 発生した原子状ビームの組成とその速度は、四重極質量分析計(QMS; Quardrupole Mass Spectrometer)とマルチチャンネルスケーラ(MCS; Multichannel Scaler)を用いて得られた飛行時間(TOF; Time of Flight)分布から算出する。QMSのディテクター部である二次電子増倍管は、フッ素による侵食を回避すべく、ガラスからシンチレーターおよび光電子増倍管からなるディテクターに置き換えている。 【0029】 後述する実施例で使用する樹脂基材の材料には、ポリイミドを用いている。ポリイミドは、イミド基をもつ一群のポリイミド系材料の1つである。一般にポリイミドと呼ばれているものはKapton系の全芳香族ポリイミドである。ポリイミドは耐熱性、機械的強度、電気的性質、低温特性、寸法特性等が極めて優れている熱硬化性材料であり、現用プラスチック中最高の耐熱性(360℃)を持つものとして知られている。 【0030】 後述する実施例では、上述したレーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置におけるターゲット試料として上記のポリイミド薄膜を用いた。ターゲット試料のポリイミド薄膜2.0×10−7Torrの真空チャンバー内に導入し、原子状ビームを照射した。 ここで、原子状ビームの照射条件は、以下の通りである。原子状酸素ビームは、並進エネルギー4.8eV、フルーエンス1018atoms/cm2の条件でポリイミド薄膜の表面に照射した。また、原子状フッ素ビームは、並進エネルギー8.2eV、フルーエンス1020 atoms/cm2の条件でポリイミド薄膜の表面に照射した。 【0031】 また、後述する実施例において、マスキングには、図2に示される2種類のメタルマスク(マスクA,マスクB)を用いている。 【0032】 また、次に、レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置により改質された樹脂基材表面に、めっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程と、遷移金属イオン,高融点金属を含む化合物、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いた無電解めっきにより金属を析出させ、金属配線を形成させる形成工程について説明する。 【0033】 先ず、改質された樹脂基材表面に、めっきを強める触媒粒子を吸着させる吸着工程について説明する。めっきを行う前にめっきを促進させるため、触媒粒子としてPd(パラジウム)コロイドを吸着させることにしている。 Pdコロイドの吸着のために、下記に示す(a)〜(d)の4種類の溶液を用いている。 (a)エンプレートアクチベーター850:15ml/l (b)エンプレートアクチベーター850 アディティブ:15ml/l (c)塩酸:30ml/l (d)メルプレート:50ml/l 【0034】 手順としては、次の[手順1]〜[手順3]の順番で行う。 [手順1] 上記(b)および(c)の混合溶液にポリイミド樹脂を(時間)浸漬する。 [手順2] 上記の[手順1]のポリイミド樹脂を洗浄せずに、前述の(a),(b),(c)の混合溶液に浸漬し、その後、水で洗浄する。 [手順3] 上記の[手順2]のポリイミド樹脂を前述の(d)の溶液に浸漬し、ポリイミド樹脂の表面にPdコロイドを吸着させる。 【0035】 上記の[手順2]と[手順3]での浸漬時間をポリイミド樹脂の試料により変化させている。その後、めっき浴に浸漬した。 銅めっき浴として次の物質の混合物を用いた。 ・CuSo4・5H2O:10g/l ・EDTA・2N:30g/l ・2,2´-ビピリジル:2mg/l ・ポリエチレングリコール#4000:0.5g/l ・ホルムアルデヒド(37%):3ml/l 【0036】 銅イオンを供給する金属塩に硫酸銅を用いた。錯化剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)を使用した。銅イオンが水酸化物として沈殿しないように有利の銅イオン濃度を低下させる効果があり、めっき速度を支配する因子で、析出物の品質にも影響する。 安定剤として使用したビピリジルは一価の銅の析出を抑える機能を有する。また、界面活性剤としてはポリエチレングリコールを、還元剤としてホルムアルデヒドを用いた。 【0037】 試験条件は下に示す。 ・pH=12.2(NaOH水溶液にて調製) ・浴温:70度 pHが高くなると無電解銅めっき反応に対する駆動力が大きくなり、浴の安定性は下がるが、めっき速度は増大する。浴の安定性が損なわれない範囲の高いpHでおこなっている。 実験手順としてPd(パラジウム)コロイドを吸着させたポリイミド樹脂を15分浸漬し、無電解銅めっきを行い、その後水で洗浄している。 【0038】 以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されることはない。その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。以下、本発明の微細配線形成方法について、実施例により詳しく説明する。 【実施例1】 【0039】 実施例1の微細配線形成方法は、 (1)ポリイミド薄膜表面にメタルマスクを用いてマスキングを施した後、原子状フッ素ビームを照射することによりポリイミド薄膜表面を改質させる改質工程を施し、 (2)改質されたポリイミド薄膜表面に銅めっきを強める触媒粒子としてPd(パラジウム)コロイドを吸着させる吸着工程を施し、 (3)Pd(パラジウム)コロイドを吸着させたポリイミド薄膜表面に対して、無電解銅めっきにより銅を析出させ、微細金属配線を形成させる形成工程を施すものである。 【0040】 上述した如く、原子状フッ素ビームは並進エネルギー8.2 eV、フルーエンス1.0×1020 atoms/cm2の条件で照射し、照射後、Pdコロイドを吸着し銅めっきを行った。 Pdコロイドの吸着は前述の[手順1]の溶液に3分、[手順2]の溶液に3分、[手順3]の溶液に5分浸漬した。その後、めっき浴に15分浸漬を行った。 図3に、銅めっき後のポリイミドの全体像を示す。図3(1)は、図2で示したマスクA、図3(2)は図2で示したマスクBを用いてマスキングを施したものである。 【0041】 図3(1)(2)において、図中の白い部分は銅が析出した部分であり、黒い部分はポリイミド表面の箇所で、銅が析出していない部分である。図3から、マスクのスリット部は銅の析出を抑制できていることが確認できる。また、マスクのパターンを完全に再現できてはいないものの、図3からマスクパターンが全体的にポリイミドに転写されていると言える。更に、マスクBを用いてマスキングを施したものに関して、倍率50倍のCCD(Charge Coupled Devices)スコープを用いて観察を行った画像を図4に示す。 【0042】 図4の画像を観察すると、パターンが途切れたり、銅の析出が起こっていない部分が見受けられる。更に、同一試料について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて細部の観察を行った結果を、図5に示す。図5(1)(2)(3)は、それぞれ120、1500、10000倍の倍率で観察を行ったSEM画像を示している。 【0043】 図5(1)(2)(3)おいて、図中の白い部分は銅が析出した部分であり、黒い部分はポリイミド表面の箇所で、銅が析出していない部分である。図5(1)からは、パターンは完全に再現できていないが、100μm幅以下の銅の析出が確認できる。図5(2)からは、60μm程度の幅であることが確認できる。また、図5(3)からは、析出した銅全体が細かな凹凸からなっており、銅ナノ粒子が成長した様子が確認できる。 【0044】 以上まとめると、実施例1の微細配線形成方法において、ポリイミド薄膜に対して、原子状フッ素ビームを照射後、銅めっきを行った結果では、ポリイミド薄膜表面全体に均一に銅の析出が起こっていなかったものの、銅の析出制御の可能性が理解できるであろう。 ポリイミド薄膜表面全体に均一に銅の析出が起こっていなかった理由としては、銅の還元の際の触媒となるPdコロイドの吸着が安定していないことや、めっき浴の温度・濃度の不均一が要因として考えられる。 Pdコロイド吸着溶液への浸漬時間の最適化、めっき浴濃度の均一化により、より精度の高い銅の析出制御が可能となるであろう。 【実施例2】 【0045】 実施例2の微細配線形成方法は、 (1)ポリイミド薄膜表面に原子状フッ素ビームを照射することによりポリイミド薄膜表面を改質させる第1の改質工程を施し、 (2)改質されたポリイミド薄膜表面にメタルマスクを用いてマスキングを施した後、原子状酸素ビームを照射することによりポリイミド薄膜表面を改質させる第2の改質工程を施し、 (3)改質されたポリイミド薄膜表面に銅めっきを強める触媒粒子としてPd(パラジウム)コロイドを吸着させる吸着工程を施し、 (4)Pd(パラジウム)コロイドを吸着させたポリイミド薄膜表面に対して、無電解銅めっきにより銅を析出させ、微細金属配線を形成させる形成工程を施すものである。 【0046】 原子状フッ素ビームの照射によるポリイミド薄膜表面の疎水パターニングのみに比べ、ポリイミド薄膜表面全面を疎水化した後で部分的に親水化することでよりコントラストの強い親水・疎水パターニングが構築できる。コントラストの強い親水・疎水パターニングにより、精度の良いマスク形状の転写が可能となる。 原子状フッ素ビーム照射および原子状酸素ビーム照射時は、原子状フッ素ビーム照射のみの析出パターンが逆であるメタルマスクのスリット部への銅の析出が起こる。すなわち、マスク開口部のみに銅を析出させるマスクパターンの転写(ポジ型)が可能となる。 【0047】 先ず、並進エネルギー8.2 eV、フルーエンス1.0×1020 atoms/cm2の原子状フッ素ビームを照射する。そして、Pdコロイドの吸着は、前述の[手順1]を3分、[手順2]を3分、[手順3]を5分行い、めっき浴に15分浸漬を行う。図6にパターニング後めっき処理を施したポリイミドの様子を示す。図6(2)は50倍のCCDスコープを用いて観察したものである。また、図6(1)から銅の析出が広がり過ぎていることが確認できる。この対応策としてはPdコロイド吸着量の抑制や、めっき浴への浸漬時間の短縮が考えられる。 【0048】 次に、原子状フッ素ビームの照射条件を変えずに、Pdコロイドの吸着の[手順1]と[手順2]の時間を、3分から30秒に変化させた。図7に、30秒間Pdコロイド吸着を行った後の銅めっきしたポリイミドの様子を示す。 【0049】 図7のポリイミドの様子から、Pdコロイドの吸着時間を3分から30秒に短縮させたことにより析出パターンがより明瞭になったことが確認できる。しかしながら、依然として銅の析出が多く、過剰析出によりパターンがつぶれてしまっている部分が観察される。 これから、めっき浴への浸漬時間の最適化も必要と考えられる。 【0050】 次に、めっき処理後のポリイミドのSEM観察により得られたSEM像を図8(1)示す。図8(2)は、参考用としてマスクのCCD画像を示している。 図8から、明瞭なマスクパターンが形成されている様子が確認できる。図8(1)中の下部には銅の析出が広がり、パターン同士を繋げている部分が確認される。この問題はマスクの密着性を向上させるや、Pdコロイド吸着溶液、めっき浴へのサンプル導入の際の表面への影響を抑制することで回避できるであろう。 【0051】 次に、Pdコロイド吸着時間とめっき浴浸漬時間の最適化について比較試験を行ったので以下に説明する。比較試験は、Pdコロイド吸着時間とめっき浴への浸漬時間を変化させて、無電解めっきを行った。Pdコロイドの過剰吸着によって、原子状酸素ビームによる親水化された部分だけではなく、原子状フッ素ビームによって疎水化した部分にもPdコロイドが吸着し、吸着した部分に銅が析出するため、パターンの再現性が下がるという影響が考えられる。 その一方で、めっき浴への浸漬時間はPdコロイド吸着部における銅の成長に影響を及ぼすものであり、理想的な析出幅を得るため最適時間が存在すると考えられる。 【0052】 Pdコロイドの吸着の[手順1]と[手順2]を、それぞれ20秒、30秒、1分、1分30秒おこなったものに、最適なパターンが析出するまで銅めっき浴に浸漬した。原子状ビームの照射条件は、原子状酸素の並進エネルギー3.9 eV、フルーエンス1.0×1018 atoms/cm2、原子状フッ素は並進エネルギー12.7 eV、フルーエンス1.0×1020 atoms/cm2の条件で照射した。 Pdコロイド吸着手順を20秒間行い、15分間めっき浴に浸漬した。めっき後のポリイミドの様子を図9に示す。図9から、パターンが現れていないことが確認できる。これは、Pdコロイドの吸着が十分に起こっていないことが要因であると推測される。更に、めっき浴に浸漬を行ったがパターンの析出は見られなかった。 【0053】 Pdコロイドの吸着手順を30秒間行い、21分間めっき浴に浸漬した。めっき後のポリイミドの様子を図10に示す。図10(1)から、Pdコロイド吸着時間が20秒間のものと比較して銅が析出しているが、全体としては吸着が不足していることが確認できる。また、図10(2)の50倍のCCD画像よりめっき浴への浸漬時間が過剰なため、析出した銅が広がり、マスクパターンが繋がっている部分が確認できる。 このことから、理想的なパターンの析出にはPdコロイド吸着時間を30秒より延長し、めっき浴への浸漬時間を21分より短縮する必要があると推測される。 【0054】 次に、Pdコロイドの吸着手順を1分間行い、10分間めっき浴に浸漬した。めっき後のポリイミドの様子を図11に示す。図11から、全体的に銅が析出しており、パラジウムの吸着はポリイミド全体におきていることが確認できる。 【0055】 更に、Pdコロイドの吸着を1分30秒間行い、7分間めっき浴に浸漬した。めっき後のポリイミドの様子を図12に示す。図12から、全体的に銅が析出しており、他の条件に比べマスクパターンの再現性が高いことが確認できる。 【0056】 以上の結果より、めっき浴の温度70℃、pH=12.2では、Pdコロイドの吸着時間、めっき浴への浸漬時間はそれぞれ1分30秒間、7分間程度が好ましい条件であることが確認できた。本発明の微細配線形成方法において、マスクの密着性や、溶液の濃度、温度の均一化、溶液への浸漬の際の表面への影響の抑制等の最適条件を探索していくことで、原子状フッ素ビームおよび原子状酸素ビームを用いためっき制御技術の実用化が図れることが容易に理解されるであろう。 【産業上の利用可能性】 【0057】 本発明の微細配線形成方法は、樹脂基材上に金属微細配線を形成させる方法であり、LSI回路等や有機ELディスプレイのアレイ基板に利用できるもので産業上の利用価値を有するものである。特に、本発明の微細配線形成方法は、サブミクロンレベルのパターニングに対応できる可能性がある。 【図面の簡単な説明】 【0058】 【図1】レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置の概略図を示す。 【図2】2種類のメタルマスク(マスクA,マスクB)の外観写真を示す。 【図3】銅めっき後のポリイミドの全体像を示す。(1)はマスクA、(2)はマスクBを用いてマスキングを施したものである。 【図4】マスクBを用いてマスキングを施したものに関して、倍率50倍のCCD(Charge Coupled Devices)スコープを用いて観察を行った画像を示す。 【図5】走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察画像を示す。(1)(2)(3)は、それぞれ120、1500、10000倍の倍率で観察を行ったSEM画像を示している。 【図6】パターニング後めっき処理を施したポリイミドの様子を示す。 【図7】30秒間Pdコロイド吸着を行った後の銅めっきしたポリイミドの様子を示す。 【図8】(1)はめっき処理後のポリイミドのSEM観察により得られたSEM像を示している。(2)は参考用としてマスクのCCD画像を示している。 【図9】20秒間Pdコロイド吸着を行った後の銅めっきしたポリイミドの様子を示す。 【図10】30秒間Pdコロイド吸着を行った後の銅めっきしたポリイミドの様子を示す。 【図11】1分間Pdコロイド吸着を行った後の銅めっきしたポリイミドの様子を示す。 【図12】1分間30秒間Pdコロイド吸着を行った後の銅めっきしたポリイミドの様子を示す。 【符号の説明】 【0059】 1 レーザーデトネーション型原子状ビーム発生装置 2 CO2レーザー 3 レーザーコントローラ 4 ディジタル信号ユニット 5 タイマーユニット 6 パルスバルブコントローラ 7 パルスバルブ 8 Au被覆ミラー 9 ノズル 10 ターゲット試料 11 ZnSe窓 12 チャンバー
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| 【出願人】 |
【識別番号】504150450 【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学 【識別番号】397022911 【氏名又は名称】学校法人甲南学園
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| 【出願日】 |
平成18年7月7日(2006.7.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100123504 【弁理士】 【氏名又は名称】小倉 啓七
【識別番号】100127166 【弁理士】 【氏名又は名称】本間 政憲
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| 【公開番号】 |
特開2008−16686(P2008−16686A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月24日(2008.1.24) |
| 【出願番号】 |
特願2006−187313(P2006−187313) |
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