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【発明の名称】 磁気シート及びその製造方法
【発明者】 【氏名】小柴 寿人

【氏名】高舘 金四郎

【要約】 【課題】MHz帯からGHz帯において特にノイズ問題が起こり易い100MHz〜800MHzの特定の周波数における高いノイズ抑制効果を有する磁気シート及びその製造方法を提供すること。

【構成】本発明の磁気シート1は、樹脂11と、樹脂11に含まれる軟磁性粒子12と、を含み、軟磁性粒子12は、アモルファス相中に、相対的に少ない微結晶を含むことを特徴とする。この磁気シート1は、アモルファス相の軟磁性粒子12を作製し、軟磁性粒子12を含む磁気シートを作製し、この磁気シートに対して、軟磁性粒子12を構成する材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度のアニール処理を施して、前記アモルファス相中に微結晶を生成させることにより得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス材料と、前記マトリクス材料に含まれる磁性材料と、を含む磁性体シートであって、前記磁性材料は、アモルファス相中に、相対的に少ない微結晶を含むことを特徴とする磁気シート。
【請求項2】
前記微結晶は、前記磁性材料を構成する材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度のアニール処理により生成されたことを特徴とする請求項1記載の磁気シート。
【請求項3】
前記磁性材料は、Fe基軟磁性合金であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気シート。
【請求項4】
アモルファス相の磁性材料を作製する工程と、前記磁性材料を含む磁気シートを作製する工程と、前記磁気シートに対して、前記磁性材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度のアニール処理を施して、前記アモルファス相中に微結晶を生成させる工程と、を具備することを特徴とする磁気シートの製造方法。
【請求項5】
水アトマイズ法により前記アモルファス相の磁性粒子を作製することを特徴とする請求項4記載の磁気シートの製造方法。
【請求項6】
前記磁気シートを構成するマトリクス材料の液状体中に前記磁性材料を混合させて混合液を作製した後に、前記混合液をシート化することにより磁気シートを作製することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の磁気シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ抑制シートとして利用される磁気シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどに代表される携帯電子機器が普及している。このような携帯電子機器においては、電磁波干渉の問題があり、特に高周波の不要電波を防止する必要が生じてきている。この不要電波を抑制するためには、使用周波数帯域における複素透磁率の虚数部μ”が大きい磁性複合体を用いるのが好ましい。このため、Fe−Al−Si系合金やFe−Ni系合金などの軟磁性合金で構成された粉末を分散した材料からなる磁気シートが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マトリクス材料に扁平状の軟磁性合金粉末を混合し、この混合物を射出成形して電磁波吸収体を得ることが開示されている。この電磁波吸収体においては、射出成形により扁平な軟磁性合金粉末が一方向に配向させて、軟磁性合金粉末の充填率を向上させて、複素透磁率の虚数部μ”を高めている。
【特許文献1】特開2000−068117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した電磁波吸収体においては、MHz帯からGHz帯において特にノイズ問題が起こり易い100MHz〜800MHzの特定の周波数において複素透磁率の虚数部μ”を高くすることが難しい。このため、100MHz〜800MHzの特定の周波数(例えば、200MHz〜300MHz)においてノイズ抑制効果が発揮されないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、MHz帯からGHz帯において特にノイズ問題が起こり易い100MHz〜800MHzの特定の周波数における高いノイズ抑制効果を有する磁気シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁気シートは、マトリクス材料と、前記マトリクス材料に含まれる磁性材料と、を含む磁性体シートであって、前記磁性材料は、アモルファス相中に、相対的に少ない微結晶を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、アモルファス相中に、相対的に少ない微結晶を含むので、〜10MHz付近の複素透磁率の実数部μ’や200MHz〜300MHzの複素透磁率の虚数部μ”を増加する。このように複素透磁率の虚数部μ”が高くなると、電波を熱に変換する能力が高くなる。その結果、ノイズ抑制効果を向上させることが可能となる。また、アモルファス相は電気抵抗が高いので、高周波帯においてμ’やμ”を維持し易い。さらに、本構成では部分的に微結晶を析出させるので、アモルファス相の電気抵抗が高い特徴をそのまま活かすことができる。
【0008】
本発明の磁気シートにおいては、前記微結晶は、前記磁性材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度のアニール処理により生成されたことが好ましい。
【0009】
本発明の磁気シートにおいては、前記磁性材料は、Fe基軟磁性合金であることが好ましい。
【0010】
本発明の磁気シートの製造方法は、アモルファス相の磁性材料を作製する工程と、前記磁性材料を含む磁気シートを作製する工程と、前記磁気シートに対して、前記磁性材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度のアニール処理を施して、前記アモルファス相中に微結晶を生成させる工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の磁気シートの製造方法においては、水アトマイズ法により前記アモルファス相の磁性材料を作製することが好ましい。
【0012】
本発明の磁気シートの製造方法においては、前記磁気シートを構成するマトリクス材料の液状体中に前記磁性材料を混合させて混合液を作製した後に、前記混合液をシート化することにより磁気シートを作製することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気シートは、マトリクス材料と、前記マトリクス材料に含まれる磁性材料と、を含み、前記磁性材料は、アモルファス相中に、相対的に少ない微結晶を含むので、MHz帯からGHz帯において特にノイズ問題が起こり易い100MHz〜800MHzの特定の周波数における高いノイズ抑制効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係る磁気シートを示す断面図である。本発明の磁気シート1は、結着材として機能するマトリクス材料である樹脂11と、樹脂11に含まれる磁性材料である軟磁性粒子12とから構成されている。この軟磁性粒子12は、アモルファス相中に、相対的に少ない微結晶を含む。この磁気シート1においては、図1(b)に示すように、ノイズとなる電波2を磁気シート1中で熱に変換する。これにより、ノイズ抑制効果が発揮される。
【0015】
マトリクス材料としては、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、又は各種エラストマーなどを挙げることができる。特に、樹脂溶液中に磁性材料を混合させてシート化することを考慮すると、マトリクス材料としては、磁性材料のエマルジョン溶液を得ることができる樹脂、例えばシリコーン樹脂などが好ましい。なお、ステアリン酸塩などを含む潤滑剤をマトリクス材料に添加することにより、磁性材料を扁平状に加工し易くなり、アスペクト比の高い磁性材料を得ることができる。その結果、磁気シートにおける磁性材料がシート厚み方向に積層して配向し易くなり、密度も高くなる。これにより、複素透磁率の虚数部μ”が高くなり、ノイズ抑制特性を向上させることが可能となる。
【0016】
マトリクス材料に含まれる磁性材料としては、軟磁性材料で構成された粒子や粉末であることが好ましい。本発明の磁気シートに使用する磁性材料としては、扁平状の粒子や粉末であることが好ましい。扁平状の粒子や粉末としては、配向性やノイズ抑制特性などを考慮して、アスペクト比(長径/厚さ)が2.5以上、好ましくは12以上のものが好ましい。扁平状の粒子や粉末の配向性が向上することにより、磁気シート自体の密度が高くなり、複素透磁率の虚数部μ"が高くなってノイズ抑制特性が向上する。また、アスペクト比が高いと、渦電流の発生が抑制されてインピーダンスが増大し、GHz帯における複素透磁率の虚数部μ"が高くなる。
【0017】
軟磁性材料としては、換算ガラス化温度Tx/Tm(Tx:結晶化開始温度、Tm:融解温度)が0.55以上を示すアモルファス相を主相とするFe基軟磁性合金、又は、ΔTx=Tx−Tg(Tx:結晶化開始温度、Tg:ガラス転移温度)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxが25K以上のアモルファス相を主相とするFe基金属ガラスであることが好ましい。より具体的には、Feを主成分とし、P,C,Bを少なくとも含むアモルファス相で構成された材料である。例えば、Fe−Ni−Cr−P−C−B−Si系合金などを挙げることができる。
【0018】
この系のアモルファス軟磁性合金は、25K以上の過冷却液体の温度間隔ΔTxを示す金属ガラスであり、組成によってはΔTxが30K以上、さらには50K以上という顕著な温度間隔を有し、また、軟磁性についても室温で優れた特性を有している。
【0019】
この磁性材料は、基本的にアモルファス相で構成されており、アモルファス中に、相対的に少ない割合で微結晶を含む。すなわち、アモルファス相と微結晶との間においては、アモルファス相リッチの状態となる。
【0020】
アモルファス相の磁性材料においては、相対的に磁歪が大きい。アモルファス相中に微結晶が生成される生成過程においては、アモルファス相から結晶相に変わるというドラスティックな状態変化が起こる。この場合、Feリッチの合金においては、Fe系の微結晶が析出する。Feは負の磁歪を有するため、アモルファス相の正の磁歪がキャンセルされ、透磁率μが高まるものと考えられる。このように、アモルファス相の磁性材料において磁歪が低減することにより、透磁率μが高くなり、その結果、複素透磁率の虚数部μ”が高くなる。本発明の磁気シートにおいては、MHz帯からGHz帯において特にノイズ問題が起こり易い100MHz〜800MHzの特定の周波数(例えば、200MHz〜300MHz)で高い複素透磁率の虚数部μ”を有する。
【0021】
このように、本発明の磁気シートにおいては、アモルファス相中に微結晶を存在させることにより、磁歪低減効果を発揮させ、また、アモルファス相の高い電気抵抗を維持することによりMHz帯からGHz帯において特にノイズ問題が起こり易い100MHz〜800MHzの特定の周波数での複素透磁率の虚数部μ”を高くすることができる。 また、磁性材料がマトリクス材料により絶縁されているので、磁気シート自体のインピーダンスが高められ、これにより渦電流の発生が抑制され、MHz帯〜GHz帯における複素透磁率の虚数部μ”を幅広い範囲で高くすることができ、高周波帯域でのノイズ抑制効果を向上させることができる。このように複素透磁率の虚数部μ”が高くなると、電波を熱に変換する能力が高くなる。その結果、ノイズ抑制効果を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明の磁気シートの製造方法は、アモルファス相の磁性材料を作製する工程と、前記磁性粒子を含む磁気シートを作製する工程と、前記磁気シートに対して、前記磁性材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度のアニール処理を施して、前記アモルファス相中に微結晶を生成させる工程と、を具備することを特徴とする。
【0023】
まず、アモルファス相の磁性材料、例えば軟磁性合金粉末を作製する。この場合、軟磁性合金粉末の組成になるように原料を秤量し混合して溶解し、この合金溶湯を水に噴出して急冷する、水アトマイズ法により軟磁性合金粉末を作製する。なお、アモルファス相の磁性材料の作製方法としては、水アトマイズ法に限定されず、ガスアトマイズ法、上記合金溶湯から急冷したリボンを粉砕して粉末化する液体急冷法などを用いても良い。また、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、液体急冷法の処理条件については、原料の種類に応じて通常行われる条件を用いることができる。
【0024】
そして、得られたアモルファス軟磁性合金粉末を分級して粒度を揃えた後に、必要に応じて、アトライタなどの装置を用いて合金粉末を扁平加工する。アトライタとは、ドラムの内部に粉砕用のボールを多数収容したものであり、ドラムの軸周りに回転自在に挿入された撹幹ロッド装置によってドラム内部に投入された軟磁性合金粉末とボールとを撹拌混合することにより軟磁性合金粉末を目的の扁平度に加工する。なお、この軟磁性合金粉末の扁平粒子は、上記液体急冷法によっても得ることができる。また、得られた軟磁性合金粉末に対して、必要に応じて、内部応力を緩和させる目的で熱処理を施しても良い。
【0025】
次いで、磁性粒子を含む磁気シートを作製する。この場合、磁気シートを構成するマトリクス材料の液状体中に磁性粒子を混合させて混合液を作製した後に、混合液をシート化することにより磁気シートを作製することが好ましい。例えば、磁性材料としてアモルファス軟磁性合金粉末、マトリクス材料として樹脂及び溶剤を、図2(a)に示す撹拌用カップ21に投入し、図2(b)に示すように、この撹拌用カップ21を遊星型撹拌脱泡機22に装着して、混合液であるスラリーを混合・脱泡することにより、スラリー調整を行う。溶剤としては、キシレン、トルエン、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。
【0026】
次いで、図2(c)に示すように、剥離フィルム23上にスラリー24をドクターブレード25により塗布した後、スラリー24を乾燥し、硬化させる。これにより、図2(d)に示すように、剥離フィルム23上にシート体26が成形される。その後、図2(e)に示すように、シート体26を剥離フィルム23から剥離する。このように、スラリー24をシート化させることにより、スラリー24に含まれるアモルファス軟磁性合金粉末(扁平粒子)が一方向に揃って配向する。すなわち、図1(a)に示すように、粒子12の長径方向がシート体26の面内方向に揃うように配向する。
【0027】
次いで、図2(f)に示すように、シート体26をプレス機27にセットし、シート体26をプレスして圧密する。プレス処理の条件としては、通常の熱プレスの条件を採用することができる。例えば、加熱温度80℃〜160℃、加圧力50kg/cm2〜500kg/cm2、加圧時間5分〜60分である。なお、このプレス処理は、必要に応じて行う処理であり、行わなくても良い。
【0028】
次いで、図2(g)に示すように、プレス後のシート体26をアニール炉28に投入して、シート体26にアニール処理を施す。すなわち、シート体26に成形した後に、磁性材料にアニール処理を施す。このアニール処理の温度は、磁性材料である軟磁性合金のガラス転移温度付近又は軟磁性合金の結晶化温度付近の温度とする。このアニール処理は、磁性材料である軟磁性合金のアモルファス相中に微結晶を生成させるために行う処理であり、アニール温度は、処理対象である磁気シートに含まれる磁性材料に応じて適宜設定する。すなわち、アニール温度については、磁性材料のアモルファス相中に微結晶を生成させるために十分な温度、例えば磁性材料のガラス転移温度付近又は結晶化温度付近の温度であれば良い。例えば、磁性材料として、Fe69.9Ni6Cr49.87.32Si1の軟磁性合金(Tg:422℃)を用いた磁気シートについて、アニール温度を変えてアニール処理を行った際のX線回折パターンを図3に示す。図3から分かるように、アニール温度(Ta)が400℃から結晶のピークが現れ、Ta=420℃でそのピークが顕著になっている。したがって、上記組成を有する軟磁性合金を用いる場合には、アニール温度を400℃以上に設定することが好ましい。なお、アニール温度は、マトリクス材料である樹脂が劣化しない温度になるように、マトリクス材料の耐熱性などを考慮して設定する必要がある。
【0029】
アニール処理における温度プロファイルは、例えば図4に示すようにする。すなわち、温度プロファイルにおいては、昇温工程(例えば10℃/分、図中a)、保持工程(図中b)、及び炉冷工程(図中c)を含む。なお、温度プロファイルについては、これに限定されず、図4に示す温度プロファイルの面積がほぼ同じであれば、昇温速度や保持時間などを適宜変更しても同様の効果が得られる。また、アニール処理は、粉末の酸化やマトリクス材料の劣化などを考慮して、無酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0030】
このように磁気シートに対して所定のアニール処理を施すことにより、磁性材料中のアモルファス相に微結晶が析出する。例えば、磁性材料がFe基軟磁性合金であれば、Fe又はFeを主体とする微結晶が析出する。これにより、従来と異なる磁気特性を有する磁気シートが得られる。すなわち、この磁気シートによれば、異なるμ’/μ”−F(複素透磁率の実数部/虚数部−周波数)を発揮することができる。具体的には、この磁気シートは、〜10MHz付近の複素透磁率の実数部μ’や200MHz〜300MHzの複素透磁率の虚数部μ”を増加させることができる。特に、200MHz〜300MHzの複素透磁率の虚数部μ”を増加させることができるので、200MHz〜300MHzでのノイズ吸収効果を発揮することができる。
【0031】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
Fe69.9Ni6Cr49.87.32Si1の軟磁性合金を水アトマイズ法により粉体化して、扁平状のアモルファス軟磁性合金粒子を作製した。次いで、このFe系アモルファス軟磁性合金粒子100重量部を結合材であるシリコーン樹脂12重量部及び溶剤であるトルエン260重量部とともに、図2(a)に示す撹拌用カップ21に投入し、図2(b)に示すように、この撹拌用カップ21を遊星型撹拌脱泡機22に装着して、スラリーを混合・脱泡することにより、スラリー調整を行った。
【0032】
次いで、図2(c)に示すように、四フッ化エチレン樹脂系剥離フィルム23上にシート体用スラリー24をドクターブレード25により塗布した後、スラリー24を乾燥し、硬化させた。これにより、図2(d)に示すように、剥離フィルム23上にシート体26が成形された。その後、図2(e)に示すように、シート体26を剥離フィルム23から剥離した。次いで、上記のようにして作製したシート体26を、図2(f)に示すように、プレス機27で熱プレスした。このとき、熱プレスの条件は、150℃、250kg/cm2、30分とした。次いで、図2(g)に示すように、得られたシート体26をアニール炉28内に投入し、窒素雰囲気下420℃のアニール処理を行って軟磁性合金粒子のμ“−F特性を変えた。このときの温度プロファイルは、昇温速度10℃/分、保持時間30分とし、その後炉冷した。このようにして実施例の磁気シートを得た。
【0033】
このようにして得られた磁気シートをディジタルスチルカメラに装着し、そのディジタルスチルカメラについて、VCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)のclass Bスペックで評価した。電波暗室中にて3m法により測定した。その結果を図5(b)に示す。また、参考のために、磁気シートを装着しないディジタルスチルカメラについても同様の評価を行った。その結果を図5(a)に示す。なお、この評価は、ACパワーをAC100V/50Hzとし、温度21.8℃、湿度62.8%で行った。
【0034】
図5(a),(b)から分かるように、磁気シートを装着しないディジタルスチルカメラ(図5(a))は、ノイズレベルが全体的に高く、700MHz近傍で基準値を超える部分(X部)が存在する。一方、本発明に係る磁気シートを装着したディジタルスチルカメラ(図5(b))は、測定範囲内の周波数帯域でノイズレベルが全体的に低かった。このように、本発明に係る磁気シートがノイズ抑制効果を発揮していることが分かった。
【0035】
また、上記磁気シートの磁気特性として複素透磁率の虚数部μ’’を求めた。その結果を図6に示す。また、参考例1として、磁性材料をFe−Al−Si系合金とし、マトリクス材料を塩素化ポリエチレンとした磁気シートを作製し、その磁気シートについても上記と同様にμ’’を求めた。その結果を図6に併記する。さらに、参考例2として、磁性材料をFe−Al−Si系合金とし、マトリクス材料を塩素化ポリエチレンとした磁気シートを作製し、その磁気シートについても上記と同様にμ’’を求めた。その結果を図6に併記する。なお、参考例1,2の磁気シートは、磁性材料とマトリクス材料とを混練してシート化することにより作製した。また、複素透磁率の虚数部μ’’は、厚さ1mmのシートを、アジレント社製E4991Aを用いて測定した。
【0036】
図6から分かるように、本発明に係る磁気シート(実施例)は、測定範囲内の周波数帯域で安定してμ’’が高かった。一方、参考例1の磁気シートは、測定範囲内の高い周波数帯域でμ’’が低くなり、参考例2の磁気シートは、測定範囲内の周波数帯域でμ’’が低かった。このように、本発明に係る磁気シートによりMHz帯からGHz帯において安定して高いμ’’を発揮されることが分かった。
【0037】
また、上記のようにして得られた本発明に係る磁気シートをカーナビゲーションシステムのCPUクロック部に装着し、そのノイズレベルについて調べた。その結果を図7に示す。また、参考のために、磁気シートを装着しないカーナビゲーションシステムについても同様にノイズレベルを調べた。その結果を図7に併記する。さらに、上記参考例2の磁気シートを装着したカーナビゲーションシステムについても同様にノイズレベルを調べた。その結果を図7に併記する。なお、ノイズレベルの測定は、電波暗室中にて3m法により行った。
【0038】
図7から分かるように、本発明に係る磁気シート(実施例)を装着したカーナビゲーションシステムではノイズが減衰してノイズレベルが非常に低い。これは、磁気シートのμ’’が高いために、ノイズを熱に変換する能力が高いからであると考えられる。一方、磁気シートを装着しない(シート無し)カーナビゲーションシステムではノイズレベルが非常に高い。また、参考例1の磁気シートを装着したカーナビゲーションシステムでは、僅かにノイズが減衰しているが、ノイズレベルが未だ高い。このように、本発明に係る磁気シートによりMHz帯からGHz帯におけるノイズ抑制効果が発揮されたことが分かった。
【0039】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、構成成分の種類や含有量、配合手順、処理条件などについては、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る磁気シートを示す断面図であり、(b)は、磁気シートにおけるノイズ抑制効果を説明するための図である。
【図2】(a)〜(g)は、本発明の実施の形態に係る磁気シートの製造方法を説明するための図である。
【図3】アニール温度を変えてアニール処理を行った際のX線回折パターンを示す図である。
【図4】アニール処理における温度プロファイルの一例を示す図である。
【図5】(a),(b)は、ディジタルスチルカメラについてのVCCIのclass Bスペックでの評価を示す図である。
【図6】μ”と周波数との間の関係を示す特性図である。
【図7】カーナビゲーションシステムのCPUクロック部に磁気シートを装着した際のノイズ減衰例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 磁気シート
2 電波
11 樹脂
12 軟磁性粒子
21 撹拌用カップ
22 遊星型撹拌脱泡機
23 剥離フィルム
24 スラリー
25 ドクターブレード
26 シート体
27 プレス機
28 アニール炉
【出願人】 【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義

【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行

【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅


【公開番号】 特開2008−10672(P2008−10672A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180298(P2006−180298)