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【発明の名称】 マイクロ波処理装置およびマイクロ波処理方法
【発明者】 【氏名】信江 等隆

【氏名】三原 誠

【氏名】安井 健治

【要約】 【課題】電力変換効率を向上させるとともに、反射電力によるマイクロ波発生装置の破損を防止できるマイクロ波処理装置およびマイクロ波処理方法を提供する。

【構成】マイクロコンピュータ700は、対象物の本加熱前に、マイクロ波発生部300を制御することにより、マイクロ波発生部300により発生されるマイクロ波の周波数を2400MHz〜2500MHzの全周波数帯域にかけてスイープするとともに、反射電力検出装置600により検出される反射電力と周波数との関係を記憶する。そして、記憶した反射電力と周波数との関係から最小の反射電力が示されるときの周波数を本加熱周波数として抽出する。その後、マイクロコンピュータ700は、対象物の本加熱時に、本加熱周波数のマイクロ波をマイクロ波発生部300により発生させ、アンテナA1から筐体501内に放射させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を用いて対象物を処理するマイクロ波処理装置であって、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、
前記マイクロ波発生手段により発生されるマイクロ波を対象物に放射する放射部と、
前記放射部からの反射電力を検出する検出手段と、
前記マイクロ波発生手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、対象物の処理前に、前記マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ前記放射部から対象物にマイクロ波を放射させ、前記検出手段により検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を処理周波数として決定し、対象物の処理時に、前記決定された処理周波数のマイクロ波を前記マイクロ波発生手段により発生させることを特徴とするマイクロ波処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、対象物の処理前に、前記検出手段により検出される反射電力が最小または極小となる1または複数の周波数を前記処理周波数として決定することを特徴とする請求項1記載のマイクロ波処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、対象物の処理前に前記放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力を対象物の処理時に前記放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力よりも小さい値に設定することを特徴とする請求項1または2記載のマイクロ波処理装置。
【請求項4】
前記マイクロ波発生手段は、放熱手段を含み、
前記対象物の処理前に前記放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力は、前記放熱手段が放熱可能なエネルギーよりも低い値に設定されることを特徴とする請求項3記載のマイクロ波処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、対象物の処理中に、前記マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ前記放射部から対象物にマイクロ波を放射させ、前記検出手段により検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を新たな処理周波数として決定し、前記決定された新たな処理周波数のマイクロ波をマイクロ波発生手段により発生させる周波数更新処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロ波処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、対象物の処理中に、前記検出手段により検出される反射電力が予め定められたしきい値を超えた場合に前記周波数更新処理を行うことを特徴とする請求項5記載のマイクロ波処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、対象物の処理中に、所定時間が経過するごとに、前記周波数更新処理を行うことを特徴とする請求項5または6記載のマイクロ波処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記周波数更新処理において、直前に決定された処理周波数を含む一定の範囲で前記マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のマイクロ波処理装置。
【請求項9】
前記放射部は複数設けられ、
前記検出手段は、前記複数の放射部からの反射電力をそれぞれ検出し、
前記制御手段は、対象物の処理前に、マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ前記複数の放射部から前記対象物にマイクロ波を放射させ、前記検出手段により検出される複数の放射部からの反射電力がそれぞれ最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を処理周波数として決定することを特徴とする請求項1記載のマイクロ波処理装置。
【請求項10】
前記対象物の処理は加熱処理であり、
対象物を加熱のために収容する加熱室をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロ波処理装置。
【請求項11】
マイクロ波を用いて対象物を処理するマイクロ波処理方法であって、
対象物の処理前に、マイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射するとともに前記放射部からの反射電力を検出するステップと、
検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を処理周波数として決定するステップと、
対象物の処理時に、決定された処理周波数のマイクロ波を発生させるステップとを備えることを特徴とするマイクロ波処理方法。
【請求項12】
対象物の処理中に、マイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射するとともに前記放射部からの反射電力を検出するステップと、
検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を新たな処理周波数として決定するステップと、
前記決定された新たな処理周波数のマイクロ波を発生させるステップとをさらに備えることを特徴とする請求項11記載のマイクロ波処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波により対象物を処理するマイクロ波処理装置およびマイクロ波処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波発生装置として一般的に用いられるマグネトロンに代えて、半導体素子を用いたマイクロ波発生装置が提案されてきた。半導体素子を用いたマイクロ波発生装置によれば、小型でかつ安価な構成でマイクロ波の周波数を容易に調整することができる。このように、半導体素子を用いたマイクロ波発生装置を備える高周波加熱装置が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の高周波加熱装置においては、所定の周波数帯域でマイクロ波の周波数が掃引され、反射電力が最小値を示すときのマイクロ波の周波数が記憶される。そして、記憶された周波数のマイクロ波が加熱室内のアンテナから放射され、対象物が加熱される。これにより、電力変換効率が向上する。
【特許文献1】特開昭56−96486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子は放熱部材が接触した状態で用いられる。反射電力により半導体素子が発熱した場合、放熱部材により放熱が行われる。
【0005】
しかしながら、マイクロ波の周波数が掃引される際に非常に大きい反射電力が発生すると、その反射電力により発生する熱が放熱部材の放熱能力を超える場合がある。この場合、半導体素子が破損するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、電力変換効率を向上させるとともに、反射電力によるマイクロ波発生装置の破損を防止できるマイクロ波処理装置およびマイクロ波処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明に係るマイクロ波処理装置は、マイクロ波を用いて対象物を処理するマイクロ波処理装置であって、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、マイクロ波発生手段により発生されるマイクロ波を対象物に放射する放射部と、放射部からの反射電力を検出する検出手段と、マイクロ波発生手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、対象物の処理前に、マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射させ、検出手段により検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を処理周波数として決定し、対象物の処理時に、決定された処理周波数のマイクロ波をマイクロ波発生手段により発生させるものである。
【0008】
このマイクロ波処理装置においては、対象物の処理前に、マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数が変化されつつ放射部から対象物にマイクロ波が放射される。このとき、検出手段により検出される放射部からの反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて、対象物の処理のためのマイクロ波の周波数が処理周波数として決定される。対象物の処理時に、決定された処理周波数のマイクロ波がマイクロ波発生手段により発生される。
【0009】
このように、放射部からの反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて決定された処理周波数のマイクロ波が対象物の処理に用いられるので、対象物の処理時に発生する反射電力が低減される。これにより、マイクロ波処理装置の電力変換効率が向上される。
【0010】
また、反射電力に起因してマイクロ波発生手段が発熱する場合でも、その発熱量が低減される。その結果、反射電力に起因するマイクロ波発生手段の破損および故障が防止される。
【0011】
(2)制御手段は、対象物の処理前に、検出手段により検出される反射電力が最小または極小となる1または複数の周波数を処理周波数として決定してもよい。
【0012】
この場合、対象物の処理時に発生する反射電力を十分に低減することができる。これにより、マイクロ波処理装置の電力変換効率が十分に向上される。
【0013】
また、反射電力に起因してマイクロ波発生手段が発熱する場合でも、発熱量が十分に低減される。その結果、反射電力に起因するマイクロ波発生手段の破損および故障が十分に防止される。
【0014】
(3)制御手段は、対象物の処理前に放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力を対象物の処理時に放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力よりも小さい値に設定してもよい。
【0015】
この場合、対象部の処理前にマイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力が、対象物の処理時に放射されるマイクロ波の電力よりも小さいので、対象物の処理前に、対象物が大きな電力を有するマイクロ波により処理されることを防止できる。それにより、対象物の処理前の電力消費が低減されるとともに、対象物が不所望の条件で処理されることが防止される。
【0016】
(4)マイクロ波発生手段は、放熱手段を含み、対象物の処理前に放射部から対象物に放射されるマイクロ波の電力は、放熱手段が放熱可能なエネルギーよりも低い値に設定されてもよい。
【0017】
この場合、対象物の処理前に、マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射する際に、放射部からの反射電力に起因して発生する熱が放熱手段により十分に放散される。それにより、反射電力に起因するマイクロ波発生手段の破損および故障が確実に防止される。また、対象物の処理前の電力消費が低減される。
【0018】
(5)制御手段は、対象物の処理中に、マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射させ、検出手段により検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を新たな処理周波数として決定し、決定された新たな処理周波数のマイクロ波をマイクロ波発生手段により発生させる周波数更新処理を行ってもよい。
【0019】
ここで、対象物の処理中に発生する反射電力は、対象物の処理状態に応じて変化する場合がある。そこで、対象物の処理中に周波数更新処理が行われることにより、対象物の処理状態に応じた新たな処理周波数のマイクロ波で対象物の処理が行われる。それにより、放射部からの反射電力が常時低減される。
【0020】
これにより、対象物の処理中におけるマイクロ波処理装置の電力変換効率の低下が防止される。また、マイクロ波処理手段の破損および故障も防止される。
【0021】
(6)制御手段は、対象物の処理中に、検出手段により検出される反射電力が予め定められたしきい値を超えた場合に周波数更新処理を行ってもよい。
【0022】
この場合、対象物の状態の変化により放射部からの反射電力がしきい値を超えると、周波数更新処理が行われ、対象物に放射されるマイクロ波の新たな処理周波数が決定される。そして、決定された新たな処理周波数のマイクロ波が対象物に放射される。それにより、対象物の状態の変化によるマイクロ波処理装置の電力変換効率の低下が確実に防止されるとともに、マイクロ波発生手段の破損および故障も確実に防止される。
【0023】
(7)制御手段は、対象物の処理中に、所定時間が経過するごとに、周波数更新処理を行ってもよい。
【0024】
この場合、対象物の状態の変化により放射部からの反射電力が上昇する場合でも、所定時間ごとに周波数更新処理が行われ、対象物に放射されるマイクロ波の新たな処理周波数が決定される。そして、決定された新たな処理周波数のマイクロ波が対象物に放射される。それにより、対象物の状態の変化によるマイクロ波処理装置の電力変換効率の低下が確実に防止されるとともに、マイクロ波発生手段の破損および故障も確実に防止される。
【0025】
(8)制御手段は、周波数更新処理において、直前に決定された処理周波数を含む一定の範囲でマイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させてもよい。
【0026】
この場合、周波数更新処理に必要な時間が短縮される。それにより、周波数更新処理が処理中の対象物に与える影響を最小限に抑制することができる。
【0027】
(9)放射部は複数設けられ、検出手段は、複数の放射部からの反射電力をそれぞれ検出し、制御手段は、対象物の処理前に、マイクロ波発生手段によりマイクロ波の周波数を変化させつつ複数の放射部から対象物にマイクロ波を放射させ、検出手段により検出される複数の放射部からの反射電力がそれぞれ最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を処理周波数として決定してもよい。
【0028】
この場合、検出手段により検出される複数の放射部からの反射電力がそれぞれ最小または極小となる周波数に基づいて、対象物の処理のためのマイクロ波の周波数が処理周波数として決定される。
【0029】
このように、放射部からの反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて決定された処理周波数のマイクロ波が対象物の処理に用いられるので、対象物の処理時に発生する反射電力が低減される。これにより、マイクロ波処理装置の電力変換効率が向上される。
【0030】
また、反射電力に起因してマイクロ波発生手段が発熱する場合でも、その発熱量が低減される。その結果、反射電力に起因するマイクロ波発生手段の破損および故障が防止される。
【0031】
(10)対象物の処理は加熱処理であってもよく、マイクロ波処理装置は、対象物を加熱のために収容する加熱室をさらに備えてもよい。
【0032】
この場合、加熱室の内部に対象物を収容することにより、対象物の加熱処理を行うことができる。
【0033】
(11)第2の発明に係るマイクロ波処理方法は、マイクロ波を用いて対象物を処理するマイクロ波処理方法であって、対象物の処理前に、マイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射するとともに放射部からの反射電力を検出するステップと、検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を処理周波数として決定するステップと、対象物の処理時に、決定された処理周波数のマイクロ波を発生させるステップとを備えるものである。
【0034】
このマイクロ波処理方法においては、対象物の処理前に、マイクロ波の周波数が変化されつつ放射部から対象物にマイクロ波が放射され、放射部からの反射電力が検出される。検出される放射部からの反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて、対象物の処理のためのマイクロ波の周波数が、処理周波数として決定される。対象物の処理時に、決定された処理周波数のマイクロ波が発生される。
【0035】
このように、放射部からの反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて決定された処理周波数のマイクロ波が対象物の処理に用いられるので、対象物の処理時に発生する反射電力が低減される。これにより、マイクロ波を発生し、対象物を処理するための電力変換効率が向上される。
【0036】
また、反射電力に起因してマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段が発熱する場合でも、その発熱量が低減される。その結果、反射電力に起因するマイクロ波発生手段の破損および故障が防止される。
【0037】
(12)マイクロ波処理方法は、対象物の処理中に、マイクロ波の周波数を変化させつつ放射部から対象物にマイクロ波を放射するとともに放射部からの反射電力を検出するステップと、検出される反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて対象物の処理のためのマイクロ波の周波数を新たな処理周波数として決定するステップと、決定された新たな処理周波数のマイクロ波を発生させるステップとをさらに備えてもよい。
【0038】
ここで、対象物の処理中に発生する反射電力は、対象物の処理状態に応じて変化する場合がある。そこで、対象物の処理中にマイクロ波の処理周波数が新たに決定され、新たな処理周波数のマイクロ波で対象物の処理が行われる。それにより、放射部からの反射電力が常時低減される。
【0039】
これにより、対象物の処理中におけるマイクロ波処理装置の電力変換効率の低下が防止される。また、マイクロ波処理手段の破損および故障が防止される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、放射部からの反射電力が最小または極小となる周波数に基づいて決定された処理周波数のマイクロ波が対象物の処理に用いられるので、対象物の処理時に発生する反射電力が低減される。これにより、マイクロ波処理装置の電力変換効率が向上される。
【0041】
また、反射電力に起因してマイクロ波発生手段が発熱する場合でも、その発熱量が低減される。その結果、反射電力に起因するマイクロ波発生手段の破損および故障が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の一実施の形態に係るマイクロ波処理装置およびマイクロ波処理方法について説明する。以下の説明では、マイクロ波処理装置の一例として、電子レンジを説明する。
【0043】
[1] 第1の実施の形態
(1−1) 電子レンジの構成および動作の概略
図1は、第1の実施の形態に係る電子レンジの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態に係る電子レンジ1は、マイクロ波発生装置100および筐体501を含む。筐体501内には、アンテナA1が設けられる。
【0044】
また、マイクロ波発生装置100は、電圧供給部200、マイクロ波発生部300、マイクロ波増幅部400、反射電力検出装置600およびマイクロコンピュータ700を備える。マイクロ波発生装置100は、電源プラグ10を介して商用電源に接続される。
【0045】
マイクロ波発生装置100において、電圧供給部200は、商用電源から供給される交流電圧を可変電圧および直流電圧に変換し、可変電圧をマイクロ波発生部300に与え、直流電圧をマイクロ波増幅部400に与える。
【0046】
マイクロ波発生部300は、電圧供給部200から与えられる可変電圧に基づいてマイクロ波を発生する。マイクロ波増幅部400は、電圧供給部200から与えられる直流電圧により動作し、マイクロ波発生部300により発生されるマイクロ波を増幅する。電圧供給部200、マイクロ波発生部300およびマイクロ波増幅部400の構成および動作の詳細は後述する。
【0047】
反射電力検出装置600は、検波ダイオード、方向性結合器および終端器等を含み、マイクロ波増幅部400により増幅されたマイクロ波を筐体501内に設けられたアンテナA1に与える。これにより、筐体501内でアンテナA1からマイクロ波が放射される。
【0048】
このとき、アンテナA1から反射電力検出装置600に反射電力が与えられる。反射電力検出装置600は、与えられた反射電力の大きさに対応する反射電力検出信号をマイクロコンピュータ700に与える。
【0049】
筐体501内には、対象物の温度を測定するための温度センサTSが設けられている。温度センサTSによる対象物の温度測定値は、マイクロコンピュータ700に与えられる。
【0050】
マイクロコンピュータ700は、電圧供給部200およびマイクロ波発生部300を制御する。詳細は後述する。
【0051】
(1−2) マイクロ波発生装置の構成の詳細
図2は、図1の電子レンジ1を構成するマイクロ波発生装置100の概略側面図であり、図3は、図2のマイクロ波発生装置100の回路構成を模式的に示した図である。
【0052】
図2および図3に基づき、マイクロ波発生装置100の各構成部の詳細を説明する。なお、図2および図3では、反射電力検出装置600およびマイクロコンピュータ700の図示は省略する。
【0053】
図2の電圧供給部200は、整流回路201(図3)および電圧制御装置202(図3)を含む。電圧制御装置202は、トランス202aおよび電圧制御回路202bを含む。整流回路201および電圧制御装置202は、樹脂等の絶縁材料により封止された状態で金属ケースIM1(図2)内に収容されている。
【0054】
図2のマイクロ波発生部300は、放熱フィン301および回路基板302を含む。回路基板302には、図3のマイクロ波発生器303が形成されている。回路基板302は、放熱フィン301上に設けられる。回路基板302およびマイクロ波発生器303は、放熱フィン301上において、絶縁材料により封止された状態で金属ケースIM2内に収容されている。マイクロ波発生器303は、例えば、トランジスタ等の回路素子により構成される。
【0055】
マイクロ波発生器303は、図1のマイクロコンピュータ700に接続されている。これにより、マイクロ波発生器303の動作は、マイクロコンピュータ700により制御される。
【0056】
図2のマイクロ波増幅部400は、放熱フィン401および回路基板402を含む。回路基板402上には、図3の3個の増幅器403,404,405が形成されている。回路基板402は、放熱フィン401上に設けられる。回路基板402および増幅器403,404,405は、放熱フィン401上において、絶縁材料により封止された状態で金属ケースIM3内に収容されている。増幅器403,404,405は、GaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化ケイ素)等を用いたトランジスタ等の高耐熱性かつ高耐圧の半導体素子により構成される。
【0057】
図3に示すように、マイクロ波発生器303の出力端子は、回路基板302に形成された線路L1、同軸ケーブルCC1および回路基板402に形成された線路L2を介して増幅器403の入力端子に接続されている。なお、同軸ケーブルCC1と線路L2とは、絶縁連結部MCにおいて接続されている。
【0058】
増幅器403の出力端子は、回路基板402に形成された線路L3を介して電力分配器406の入力端子に接続されている。電力分配器406は、増幅器403から線路L3を介して入力された電力を2分配して出力する。
【0059】
電力分配器406の2つの出力端子は、回路基板402に形成された線路L4,L5を介して増幅器404および増幅器405のそれぞれの入力端子に接続されている。
【0060】
増幅器404および増幅器405のそれぞれの出力端子は、回路基板402に形成された線路L6,L8を介して電力合成器407の入力端子に接続されている。電力合成器407は、入力されたそれぞれの電力を合成加算して出力する。電力合成器407の出力端子は、回路基板402に形成された線路L7を介して同軸ケーブルCC2の一端に接続されている。同軸ケーブルCC2の他端は、筐体501内に設けられたアンテナA1に接続されている。なお、同軸ケーブルCC2と線路L7とは、絶縁連結部MCにおいて接続されている。
【0061】
整流回路201の一対の入力端子およびトランス202aの一次巻線には、商用電源PSから交流電圧VCCが与えられる。交流電圧VCCは、例えば、100(V)である。整流回路201の一対の出力端子には、高電位側の電源ラインLV1および低電位側の電源ラインLV2が接続されている。
【0062】
整流回路201は、商用電源PSから与えられる交流電圧VCCを整流し、直流電圧VDDを電源ラインLV1,LV2間に印加する。直流電圧VDDは、例えば、140(V)である。増幅器403,404,405の電源端子は電源ラインLV1に接続され、増幅器403,404,405の接地端子は電源ラインLV2に接続されている。
【0063】
トランス202aの二次巻線は、電圧制御回路202bの一対の入力端子に接続されている。トランス202aは交流電圧VCCを降圧する。電圧制御回路202bは、トランス202aにより降圧された交流電圧から任意に調整可能な可変電圧VVAをマイクロ波発生器303に与える。可変電圧VVAは、例えば、0〜10(V)の間で調整可能な電圧である。
【0064】
マイクロ波発生器303は、電圧制御回路202bから与えられる可変電圧VVAに基づいてマイクロ波を発生する。マイクロ波発生器303により発生されたマイクロ波は、線路L1、同軸ケーブルCC1および線路L2を介して増幅器403に与えられる。
【0065】
増幅器403は、マイクロ波発生器303から与えられたマイクロ波の電力を増幅する。増幅器403により増幅されたマイクロ波は、線路L3、電力分配器406、および線路L4,L5を介して増幅器404,405に与えられる。
【0066】
増幅器404,405は、増幅器403から与えられたマイクロ波の電力を増幅する。増幅器404および増幅器405により増幅されたマイクロ波は、それぞれ線路L6,L8を介して電力合成器407に入力され、電力合成器407により電力加算されて出力され、線路L7および同軸ケーブルCC2を介してアンテナA1に与えられる。増幅器404,405からアンテナA1に与えられたマイクロ波は、筐体501内へ放射される。
【0067】
(1−3) マイクロコンピュータの制御手順
図4および図5は、図1のマイクロコンピュータ700の制御手順を示すフローチャートである。
【0068】
図1のマイクロコンピュータ700は、使用者の操作により対象物の加熱が指令されることにより以下に示すマイクロ波処理を行う。
【0069】
図4に示すように、マイクロコンピュータ700は、初めに自己に内蔵されたタイマによる計測動作を開始させる(ステップS11)。そして、図1のマイクロ波発生部300を制御することにより、予め定められた第1の出力電力を電子レンジ1の出力電力として設定する(ステップS12)。この第1の出力電力は、後述の第2の出力電力よりも小さい。第1の出力電力の決定方法については後述する。
【0070】
次に、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波発生部300により発生されるマイクロ波の周波数を電子レンジ1で用いられる2400MHz〜2500MHzの全周波数帯域にかけてスイープ(掃引)するとともに、図1の反射電力検出装置600により検出される反射電力と周波数との関係を記憶する(ステップS13)。この周波数帯域はISM(Industrial Scientific and Medical)バンドと呼ばれている。
【0071】
なお、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波の周波数のスイープ時に全周波数帯域における反射電力と周波数との関係を記憶する代わりに、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみを記憶してもよい。この場合、マイクロコンピュータ700内の記憶装置の使用領域を削減することができる。
【0072】
続いて、マイクロコンピュータ700は、ISMバンドから特定の周波数を抽出する周波数抽出処理を行う(ステップS14)。
【0073】
この周波数抽出処理では、例えば、記憶した反射電力から特定の反射電力(例えば、最小値)を識別し、その反射電力が得られたときの周波数を本加熱周波数として抽出する。この具体例については後述する。
【0074】
なお、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみをマイクロコンピュータ700が複数組記憶する場合には、記憶された複数の周波数の中から特定の周波数が本加熱周波数として抽出される。
【0075】
次に、マイクロコンピュータ700は、予め定められた第2の出力電力を電子レンジ1の出力電力として設定する(ステップS15)。
【0076】
この第2の出力電力は、図1の筐体501内に配置された対象物を加熱するための電力であり、電子レンジ1の最大出力電力(定格出力電力)に相当する。例えば、電子レンジ1の定格出力電力が950Wである場合、第2の出力電力は950Wとして予め定められる。
【0077】
そして、マイクロコンピュータ700は、第2の出力電力で本加熱周波数のマイクロ波をアンテナA1から筐体501内に放射させる(ステップS16)。これにより、筐体501内に配置された対象物が加熱される(本加熱)。
【0078】
その後、マイクロコンピュータ700は、図1の温度センサTSにより検出される対象物の温度が目標温度(例えば、70℃)に達したか否かを判別する(ステップS17)。なお、目標温度は、予め固定的に設定されていてもよいし、使用者により手動で任意に設定されてもよい。
【0079】
対象物の温度が目標温度に達していない場合、マイクロコンピュータ700は、反射電力検出装置600により検出される反射電力が予め定められたしきい値を超えたか否かを判別する(ステップS18)。しきい値の決定方法については後述する。
【0080】
反射電力が予め定められたしきい値を超えない場合、マイクロコンピュータ700は、タイマによる計測値に基づいて、ステップS11におけるタイマの計測動作開始時から所定時間(例えば、10sec)が経過したか否かを判別する(ステップS19)。
【0081】
所定時間が経過していない場合、マイクロコンピュータ700は、第2の出力電力で本加熱周波数のマイクロ波を放射した状態を維持しつつ、ステップS17〜S19の動作を繰り返す。
【0082】
ステップS17において、対象物の温度が目標温度に達した場合、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波処理を終了する。
【0083】
また、ステップS18において、反射電力が予め定められたしきい値を超えた場合、マイクロコンピュータ700は、ステップS11の動作に戻る。
【0084】
ステップS19において、所定時間が経過した場合、マイクロコンピュータ700は、図5に示すようにタイマをリセットするとともに、再度タイマの計測動作を開始させる(ステップS20)。
【0085】
そして、マイクロコンピュータ700は、ステップS12と同様に、第1の出力電力を電子レンジ1の出力電力として設定する(ステップS21)。
【0086】
続いて、マイクロコンピュータ700は、ステップS16において抽出した本加熱周波数を基準周波数として設定し、その基準周波数を含む一定範囲の周波数帯域(例えば、基準周波数から±5MHzの範囲内の周波数帯域)で、マイクロ波の周波数を部分的にスイープするとともに、反射電力検出装置600により検出される反射電力と周波数との関係を記憶する(ステップS22)。
【0087】
なお、ここでも、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波の周波数のスイープ時に上記の部分的な周波数帯域における反射電力と周波数との関係を記憶する代わりに、反射電力が極小値を示すときの反射電力と周波数との関係のみを記憶してもよい。この場合、マイクロコンピュータ700内の記憶装置の使用領域を削減することができる。
【0088】
ステップS22でスイープの対象となる周波数帯域は、ステップS13でスイープの対象となる周波数帯域、すなわちISMバンドよりも狭い。したがって、ステップS22のスイープに必要な時間は、ステップS13のスイープに必要な時間に比べて短縮される。
【0089】
次に、マイクロコンピュータ700は、ステップS22でスイープの対象となる周波数帯域の中から特定の周波数を再度抽出する周波数再抽出処理を行う(ステップS23)。この周波数再抽出処理は、ステップS14の周波数抽出処理と同様の処理である。
【0090】
さらに、マイクロコンピュータ700は、上述の第2の出力電力を電子レンジ1の出力電力として設定する(ステップS24)。
【0091】
そして、マイクロコンピュータ700は、第2の出力電力で新たに抽出された本加熱周波数のマイクロ波をアンテナA1から筐体501内に放射させる(ステップS25)。
【0092】
その後、マイクロコンピュータ700は、上記ステップS17〜S19と同様にステップS26〜S28の動作を行う。なお、ステップS27において、反射電力が予め定められたしきい値を超えた場合、マイクロコンピュータ700は、図4のステップS11の動作に戻る。また、ステップS28において、所定時間が経過した場合、マイクロコンピュータ700は、ステップS20の動作に戻る。
【0093】
(1−4) 第1の出力電力の決定方法
上述のように、図1の電子レンジ1においては、第2の出力電力で対象物が加熱される前に、第1の出力電力でマイクロ波の周波数のスイープが行われ、周波数抽出処理が行われる。これは以下の理由による。
【0094】
マイクロ波の放射により発生する反射電力は、マイクロ波の周波数に応じて変化する。ここで、反射電力により図3のマイクロ波発生部300およびマイクロ波増幅部400を構成する回路素子が発熱した場合、図2の放熱フィン301,401により放熱が行われるが、反射電力が放熱フィン301,401の放熱能力を超えて大きくなると、放熱フィン301,401上に設けられた回路素子が発熱し、破損するおそれがある。
【0095】
そこで、本実施の形態では、反射電力が放熱フィン301,401の放熱能力を超えないように、第1の出力電力を決定する。
【0096】
第1の出力電力の決定方法の一例を説明する。例えば、電子レンジ1の定格出力電力が950Wであり、かつ電力変換効率が65%である場合を想定する。
【0097】
この場合、電子レンジ1の出力電力を950Wに設定するためには、1460Wの入力電力を電子レンジ1に供給する必要がある。
【0098】
このとき、電子レンジ1では、1460Wの35%である510Wのエネルギー損失が生じる。そこで、本例では、このときのエネルギー損失を、放熱フィン301,401の放熱能力とみなし、510Wの入力電力を電子レンジ1に供給する場合の出力電力を算出する。
【0099】
この場合、入力電力510Wの65%である330Wが電子レンジ1の出力電力となる。このようにして得られる330Wの出力電力を第1の出力電力として決定する。
【0100】
これにより、電子レンジ1に入力される510Wが全て熱エネルギーとして放熱フィン301,401に与えられる場合でも、その熱エネルギーは全て放熱フィン301,401から放熱される。それにより、放熱フィン301,401上に設けられた回路素子が発熱し、破損することが防止される。
【0101】
なお、上記の例では、第1の出力電力は330W以下に決定すればよく、330Wの約1/3の100Wに設定してもよいし、330Wの約1/6の50Wに設定してもよい。
【0102】
また、上記では、電子レンジ1の定格出力電力が950Wであり、かつ電力変換効率が65%である場合の放熱フィン301,401の放熱能力を510Wとみなしているが、実際には放熱フィン301,401の放熱能力は510Wよりも十分大きい。
【0103】
(1−5) 周波数抽出処理および周波数再抽出処理
(1−5−a)
本実施の形態に係る電子レンジ1においては、対象物の本加熱前に、マイクロ波の周波数のスイープおよび周波数抽出処理が行われる(図4のステップS13,S14参照)。
【0104】
図6は、マイクロ波の周波数のスイープおよび周波数抽出処理の具体例を説明するための図である。
【0105】
図6(a)に、マイクロ波の周波数をスイープするときの反射電力の変化がグラフにより示されている。図6(a)においては、縦軸が反射電力を示し、横軸がマイクロ波の周波数を示す。
【0106】
上述のように、本実施の形態の電子レンジ1においては、対象物の本加熱前にISMバンドの全周波数帯域に渡ってマイクロ波の周波数がスイープされる(矢印SW1参照)。マイクロコンピュータ700は、反射電力と周波数との関係を記憶する。
【0107】
マイクロコンピュータ700は、周波数抽出処理により例えば反射電力が最小となるときの周波数f1を本加熱周波数として抽出する。
【0108】
それにより、第2の出力電力で本加熱周波数f1のマイクロ波がアンテナA1から筐体501内の対象物に放射される。その結果、反射電力を低減しつつ、対象物の加熱を行うことができる。
【0109】
なお、スイープは、例えば0.1MHz当り1msecで行われる。この場合、ISMバンドの全周波数帯域に渡る上記のスイープでは1secの時間を要する。
【0110】
(1−5−b)
周波数に依存する反射電力の変化(以下、反射電力の周波数特性と呼ぶ)は、筐体501内における対象物の位置、大きさ、組成および温度等に応じて変化する。したがって、電子レンジ1により対象物が加熱され、対象物の温度が上昇すると、反射電力の周波数特性も変化する。
【0111】
図6(b)に、対象物が加熱されることによる反射電力の周波数特性の変化がグラフにより示されている。図6(b)においては、縦軸が反射電力を示し、横軸がマイクロ波の周波数を示す。また、本加熱前のスイープ時における反射電力の周波数特性を実線で示し、本加熱により対象物が加熱されているときの反射電力の周波数特性を破線で示す。
【0112】
反射電力の周波数特性が変化することにより、反射電力が最小および極小となるときの周波数が変化する。図6(b)では、対象物が加熱されたときに、反射電力が最小となる周波数が符号g1で示されている。
【0113】
このように、反射電力の周波数特性は、対象物の温度にも依存して変化する。したがって、本実施の形態に係る電子レンジ1においては、対象物の本加熱が行われる際、所定時間が経過するごとにマイクロ波の周波数のスイープおよび周波数再抽出処理が行われる(図5のステップS22,S23参照)。
【0114】
ただし、このときのスイープは、直前の本加熱時に設定されていた周波数f1を基準周波数として、その基準周波数から±5MHzの範囲内の周波数帯域で行う(矢印SW2参照)。これにより、新たに反射電力が最小となる周波数g1が、新たな本加熱周波数として再抽出される。
【0115】
マイクロ波の周波数のスイープを、直前に設定されていた本加熱周波数を含む一定範囲の部分的な周波数帯域で行うことにより、スイープに必要な時間が短縮される。例えば、スイープが0.1MHz当り1msecで行われるとき、基準周波数から±5MHzの範囲内の周波数帯域でのスイープに必要な時間は0.1secである。
【0116】
なお、本実施の形態では、部分的な周波数帯域での周波数のスイープおよび周波数再抽出処理が所定の時間間隔で行われるとしているが、この時間間隔は、反射電力の周波数特性が対象物の加熱により大きく変化しないように、例えば10secに設定することが好ましい。
【0117】
(1−6) 反射電力のしきい値
本実施の形態に係る電子レンジ1においては、対象物の本加熱時に、反射電力が予め定められたしきい値を超えたか否かが判別される(図4のステップS18および図5のステップS27参照)。
【0118】
ここで、しきい値は、例えば周波数抽出処理時に検出された反射電力の最小値に50Wを加算した値に定められる。それにより、反射電力が本加熱開始時の値から50Wを超えて大きくなると、マイクロコンピュータ700はISMバンドの全周波数帯域に亘ってマイクロ波の周波数をスイープし、周波数抽出処理を行う。
【0119】
これにより、対象物の本加熱中に反射電力が著しく大きくなることが防止される。また、対象物が加熱されることにより、反射電力の周波数特性が大きく変化する場合でも、ISMバンドの全周波数帯域に亘ってマイクロ波の周波数がスイープされ、周波数抽出処理が行われるので、常に反射電力を低減することが可能となる。
【0120】
(1−7) 周波数抽出処理の他の例
周波数抽出処理は以下のように行ってもよい。図6(a)に示されるように、例えば反射電力の周波数特性は、複数の極小値を有する場合がある。このとき、マイクロコンピュータ700は、複数の極小値にそれぞれ対応する周波数f1,f2,f3を本加熱周波数として抽出してもよい。
【0121】
この場合、マイクロコンピュータ700は、本加熱周波数f1,f2,f3を順に切り替えてもよい。例えば、マイクロコンピュータ700は、対象物の本加熱開始から3secごとに、本加熱周波数f1,f2,f3を順に切り替える。
【0122】
このように、複数の極小値に対応する複数の周波数で、本加熱を行うことにより、スイープ時に同じレベルの極小値が複数存在する場合でも、各極小値の周波数のマイクロ波で対象物の本加熱を行うことができる。
【0123】
(1−8) 効果
本実施の形態に係る電子レンジ1においては、対象物を本加熱する前に、対象物の加熱時に発生する反射電力が最小となるマイクロ波の周波数が、周波数抽出処理により抽出される。抽出された周波数が本加熱周波数として用いられることにより、電子レンジ1の電力変換効率が向上する。
【0124】
また、周波数抽出処理には、電子レンジ1の出力電力が本加熱時よりも十分に小さい第1の出力電力に設定される。これにより、マイクロ波の周波数のスイープ時に、反射電力によりマイクロ波発生部300およびマイクロ波増幅部400を構成する回路素子が発熱する場合でも、放熱フィン301,401により十分に放熱が行われる。
【0125】
その結果、放熱フィン301,401上に設けられる回路素子の反射電力による破損が確実に防止される。
【0126】
(1−9) 変形例
第1の実施の形態において、第2の出力電力は電子レンジ1の最大出力電力であるとしているが、第2の出力電力は使用者により手動で任意に設定されてもよい。
【0127】
また、本実施の形態では、マイクロコンピュータ700が、マイクロ波処理の終了を図1の温度センサTSにより測定された対象物の温度測定値に基づいて判別するが、マイクロ波処理は、使用者により手動で設定された終了時間に基づいて終了してもよい。
【0128】
[2] 第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る電子レンジは、以下の点で第1の実施の形態に係る電子レンジ1と異なる。
【0129】
(2−1) 電子レンジの構成および動作の概略
図7は、第2の実施の形態に係る電子レンジの構成を示すブロック図である。図7に示すように、第2の実施の形態に係る電子レンジ1は、マイクロ波発生装置100の構成および筐体501内に設けられるアンテナA1,A2の数が第1の実施の形態に係る電子レンジ1(図1)と異なる。
【0130】
本実施の形態に係る電子レンジ1において、マイクロ波発生装置100は、電圧供給部200、2個のマイクロ波発生部300,310、2個のマイクロ波増幅部400,410、2個の反射電力検出装置600,610およびマイクロコンピュータ700を備える。
【0131】
ここで、マイクロ波発生部310、マイクロ波増幅部410および反射電力検出装置610の構成は、第1の実施の形態で説明したマイクロ波発生部300、マイクロ波増幅部400および反射電力検出装置600と同じである。
【0132】
マイクロ波発生装置100は、電源プラグ10を介して商用電源に接続される。マイクロ波発生装置100において、電圧供給部200は、商用電源から供給される交流電圧を可変電圧および直流電圧に変換し、可変電圧をマイクロ波発生部300,310に与え、直流電圧をマイクロ波増幅部400,410に与える。
【0133】
マイクロ波発生部300,310は、電圧供給部200から与えられる可変電圧に基づいてマイクロ波を発生する。マイクロ波増幅部400,410は、電圧供給部200から与えられる直流電圧により動作し、マイクロ波発生部300,310により発生されるマイクロ波を増幅する。
【0134】
反射電力検出装置600,610は、検波ダイオード、方向性結合器および終端器等を含み、マイクロ波増幅部400,410により増幅されたマイクロ波を筐体501内に設けられたアンテナA1,A2に与える。これにより、筐体501内でアンテナA1,A2からマイクロ波が放射される。
【0135】
このとき、アンテナA1,A2から反射電力検出装置600,610に反射電力が与えられる。反射電力検出装置600,610は、与えられた反射電力の大きさに対応する反射電力検出信号をマイクロコンピュータ700に与える。
【0136】
第1の実施の形態と同様に、筐体501内には、対象物の温度を測定するための温度センサTSが設けられている。温度センサTSによる対象物の温度測定値は、マイクロコンピュータ700に与えられる。
【0137】
マイクロコンピュータ700は、電圧供給部200を制御する。また、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波発生部300,310を個別に制御する。
【0138】
本実施の形態においても、マイクロコンピュータ700は、図4および図5のフローチャートと同様のマイクロ波処理を行うが、周波数抽出処理が第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態において、マイクロコンピュータ700が行う周波数抽出処理を説明する。
【0139】
(2−2) 周波数抽出処理
図8は、第2の実施の形態に係る電子レンジ1においてマイクロコンピュータ700が行う周波数抽出処理の具体例を説明するための図である。図8に、マイクロ波の周波数をスイープするときの反射電力の変化がグラフにより示されている。図8においては、縦軸が反射電力を示し、横軸がマイクロ波の周波数を示す。
【0140】
本実施の形態に係る電子レンジ1においては、2個のアンテナA1,A2からマイクロ波が放射される。そこで、以下の説明ではアンテナA1側の反射電力を第1の反射電力と称し、アンテナA2側の反射電力を第2の反射電力と称する。
【0141】
図8では、第1の反射電力の周波数特性が実線で示され、第2の反射電力の周波数特性が点線で示されている。
【0142】
第1の実施の形態と同様に、対象物の本加熱前に、アンテナA1,A2の各々から放射されるマイクロ波の周波数が個別にスイープされる。これにより、マイクロコンピュータ700は、第1の反射電力が極小値を示すときの第1の反射電力と周波数との関係、および第2の反射電力が極小値を示すときの第2の反射電力と周波数との関係を記憶する。
【0143】
なお、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波の周波数のスイープ時に全周波数帯域における第1および第2の反射電力と周波数との関係を記憶してもよい。
【0144】
マイクロコンピュータ700は、周波数抽出処理により、例えば第1の反射電力が最小となるときの周波数f1、および第2の反射電力が最小となるときの周波数h1を、それぞれ第1の本加熱周波数および第2の本加熱周波数として抽出する。
【0145】
それにより、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波発生部300を制御することにより、対象物を本加熱するための第2の出力電力で本加熱周波数f1のマイクロ波をアンテナA1から放射させる。
【0146】
また、マイクロコンピュータ700は、マイクロ波発生部310を制御することにより、第2の出力電力で本加熱周波数h1のマイクロ波をアンテナA2から放射させる。
【0147】
複数のアンテナA1,A2によりマイクロ波の放射が行われる場合、各アンテナA1,A2における第1および第2の反射電力が一致するとは限らない。上記のように、複数のアンテナA1,A2から放射されるマイクロ波の周波数を個別に設定することにより、電子レンジ1が複数のアンテナA1,A2を有する場合でも、電力変換効率が十分に向上される。
【0148】
なお、マイクロコンピュータ700は、周波数再抽出処理についても同様の処理を行う。
【0149】
(2−3) 周波数抽出処理の他の例
(2−3−a)
第2の実施の形態において、周波数抽出処理は以下のように行ってもよい。図8に示されるように、第1および第2の反射電力の周波数特性は、それぞれ複数の極小値を有する場合がある。
【0150】
このとき、マイクロコンピュータ700は、例えば、第1の反射電力について複数の極小値にそれぞれ対応する周波数f1,f2,f3を本加熱周波数として抽出し、第2の反射電力について複数の極小値にそれぞれ対応する周波数h1,h2,h3を本加熱周波数として抽出してもよい。
【0151】
この場合、マイクロコンピュータ700は、アンテナA1から放射されるマイクロ波の本加熱周波数f1,f2,f3を順に切り替え、アンテナA2から放射されるマイクロ波の本加熱周波数h1,h2,h3を順に切り替えてもよい。
【0152】
このように、複数の極小値に対応する複数の周波数で、本加熱を行うことにより、スイープ時に同じレベルの極小値が複数存在する場合でも、各極小値の周波数のマイクロ波で対象物の本加熱を行うことができる。
【0153】
(2−3−b)
上記に限らず、マイクロコンピュータ700は、第1および第2の反射電力の複数の極小値にそれぞれ対応する周波数f1,f2,f3,h1,h2,h3に関して、互いに近接する1組の周波数f1,h1、互いに近接する1組の周波数f2,h2、互いに近接する1組の周波数f3,h3のうち、各組でそれぞれより小さい反射電力に対応する周波数f1,f2,f3を本加熱周波数として抽出してもよい。
【0154】
この場合、マイクロコンピュータ700は、アンテナA1,A2から放射されるマイクロ波を共通の周波数f1,f2,f3に制御する。
【0155】
なお、マイクロ波を共通の周波数に制御する場合には、2個のマイクロ波発生部300,310に代えて、アンテナA1,A2に共通の1個のマイクロ波発生部をマイクロ波発生装置100に設けることができる。これにより、構成が簡単になり、小型化が実現される。
【0156】
また、2個のマイクロ波増幅部400,410に代えて、アンテナA1,A2に共通の1個のマイクロ波増幅部をマイクロ波発生装置100に設けることができる。これにより、構成が簡単になり、小型化が実現される。
【0157】
(2−3−c)
マイクロコンピュータ700は、第1および第2の反射電力の複数の極小値にそれぞれ対応する周波数f1,f2,f3,h1,h2,h3に関して、互いに近接する周波数f1,h1の平均の周波数、互いに近接する周波数f2,h2の平均の周波数、互いに近接する周波数f3,h3の平均の周波数を本加熱周波数として抽出してもよい。
【0158】
[3] 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0159】
第1および第2の実施の形態においては、電子レンジ1およびマイクロ波発生装置100がマイクロ波処理装置に相当し、マイクロ波発生部300,310およびマイクロ波増幅部400,410がマイクロ波発生手段に相当し、アンテナA1,A2が放射部に相当し、反射電力検出装置600,610が検出手段に相当し、マイクロコンピュータ700が制御手段に相当し、放熱フィン301,401が放熱手段に相当し、周波数再抽出処理が周波数更新処理に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、電子レンジ、プラズマ発生装置、乾燥装置、および酵素反応を促進する装置等、反射電力が発生する処理装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】第1の実施の形態に係る電子レンジの構成を示すブロック図
【図2】図1の電子レンジを構成するマイクロ波発生装置の概略側面図
【図3】図2のマイクロ波発生装置の回路構成を模式的に示した図
【図4】図1のマイクロコンピュータの制御手順を示すフローチャート
【図5】図1のマイクロコンピュータの制御手順を示すフローチャート
【図6】マイクロ波の周波数のスイープおよび周波数抽出処理の具体例を説明するための図
【図7】第2の実施の形態に係る電子レンジの構成を示すブロック図
【図8】第2の実施の形態に係る電子レンジにおいてマイクロコンピュータが行う周波数抽出処理の具体例を説明するための図
【符号の説明】
【0162】
1 電子レンジ
100 マイクロ波発生装置
300,310 マイクロ波発生部
301,401 放熱フィン
400,410 マイクロ波増幅部
600,610 反射電力検出装置
700 マイクロコンピュータ
A1,A2 アンテナ
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人


【公開番号】 特開2008−34244(P2008−34244A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206512(P2006−206512)