| 【発明の名称】 |
有機EL素子およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】加納 圭吾
【氏名】師岡 光雄
【氏名】蓮見 太朗
【氏名】福岡 宏美
【氏名】渡邊 雅也
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| 【要約】 |
【課題】電極がプロセスダメージを受けることによる品質の低下および導通不良が良好に防止された高品質な有機EL素子及びその製造方法を提供すること。
【構成】第1電極13と、第1電極13上に、第1電極13を露出させる第1の開口部を有して形成され保護層15と、保護層15上に形成され、前記第1の開口部に対応する位置に形成された第2の開口部を有する絶縁層17と、絶縁層17上及び第1及び第2の開口部内より露出する第1電極13上に連続的に形成され、発光層を含んで構成される有機層19と、 有機層19上に形成された第2電極21と、を備え、保護層15の膜厚が、有機層19の膜厚よりも薄いことを特徴とする有機EL素子。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1電極と、 前記第1電極上に、前記第1電極を露出させる第1の開口部を有して形成された保護層と、 前記保護層上に形成され、前記第1の開口部に対応する位置に形成された第2の開口部を有する絶縁層と、 前記絶縁層上及び前記第1及び第2の開口部内より露出する前記第1電極上に連続的に形成され、発光層を含んで構成される有機層と、 前記有機層上に形成された第2電極と、を備え、 前記保護層の膜厚が、前記有機層の膜厚よりも薄いことを特徴とする有機EL素子。 【請求項2】 前記保護層の膜厚が、前記第2電極の膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。 【請求項3】 前記絶縁層の膜厚が、前記絶縁層の前記第1の開口部に向かって小さくなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL素子。 【請求項4】 前記保護層の前記第2の開口部の側部は、前記絶縁層の前記第1の開口部の側部よりも外側にずれて位置しており、且つ該位置ずれ幅が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の有機EL素子。 【請求項5】 第1電極と、 前記第1電極上に形成された保護層と、 前記保護層上に、前記保護層が露出するように形成された開口部を有する絶縁層と、 前記絶縁層上及び前記絶縁層の前記開口部内より露出する前記保護層上に連続的に形成され、発光層を含んで構成される有機層と、 前記有機層上に形成された第2電極と、を備え、 前記保護層は、前記絶縁層の開口部に対応する位置に形成される凹部を有し、該凹部の深さが前記有機層の膜厚よりも小さいことを特徴とする有機EL素子。 【請求項6】 前記保護層の前記凹部の深さが、前記第2電極の膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子。 【請求項7】 前記保護層の前記凹部の側部は、前記絶縁層の開口部の側部よりも外側にずれて位置しており、且つ該位置ずれ幅が1μm以下であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の有機EL素子。 【請求項8】 前記絶縁層の膜厚は、前記絶縁層の前記開口部に向かって小さくなることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の有機EL素子。 【請求項9】 前記第1電極が、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、または銀合金からなり、且つ前記保護層がモリブデンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の有機EL素子。 【請求項10】 第1電極と、保護層を構成する保護材料層と、絶縁層を構成する絶縁材料層とが積層された基板を準備する工程と、 前記絶縁材料層を部分的にエッチングして開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部より保護材料層を露出させる工程と、 前記絶縁層をマスクとして前記開口部より露出する前記保護材料層をエッチングにより除去して保護層を形成するとともに、前記開口部より第1電極を露出させる工程と、 前記絶縁層上及び前記開口部より露出した前記第1電極上に、発光層を含む有機層を前記保護層の膜厚よりも厚く形成する工程と、 前記有機層上に第2電極を形成する工程と、 を含んで構成される有機EL素子の製造方法。 【請求項11】 前記第2電極は、前記保護層の膜厚よりも厚く形成されることを特徴とする請求項10に記載の有機EL素子の製造方法。 【請求項12】 第1電極と、保護材料層と、絶縁材料層とが順次積層された基板を準備する工程と、 前記絶縁材料層を部分的にエッチングして開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部より保護材料層を露出させる工程と、 前記開口部より露出する前記保護材料層をエッチングにより途中まで除去し、前記保護材料層に凹部を設けて保護層を形成する工程と、 前記絶縁層上及び前記開口部内の前記保護層の凹部内に、発光層を含む有機層を前記凹部の深さよりも厚く形成する工程と、 前記有機層上に第2電極を形成する工程と、 を含んで構成される有機EL素子の製造方法。 【請求項13】 前記第2電極は、前記保護層の前記凹部の深さよりも厚く形成されることを特徴とする請求項12に記載の有機EL素子の製造方法。 【請求項14】 前記保護材料層をエッチングする際に、前記保護材料層に対する選択比が10よりも大であるエッチャントを用いてウエットエッチングを行うことを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。 【請求項15】 前記エッチャントとして、硝酸の含有比率が15wt%〜35wt%、酢酸の含有比率が25wt%〜45wt%、燐酸の含有比率が0.1wt%〜5wt%である混酸を用いることを特徴とする請求項14に記載の有機EL素子の製造方法。 【請求項16】 前記保護材料層のエッチング後に形成される前記保護層のサイドエッチング幅を1μm以下とすることを特徴とする請求項10乃至請求項15のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、有機EL素子およびその製造方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子)は、有機蛍光性化合物に電場を加えることにより励起し、発光させる素子である。このような有機EL素子は自発光、広視野角、高応答速度、低駆動電圧、フルカラーなどの特徴を備え、現在すでに実用化されており、小型ディスプレイ・パネル、屋外スクリーン、パソコンおよびテレビのスクリーン等のようなカラー平面ディスプレイ素子に応用することができる。 【0003】 有機EL素子は、発光特性を備える有機層が2つの電極によって挟まれた構成をなしている。2つの電極に直流電圧が印加されると、正孔が陽極から有機層へ注入され、また電子が陰極から有機層へ注入される。印加電圧によって生じる電界によりこれらのキャリアが有機発光層の内部へと移動してキャリアの再結合が生じる。 【0004】 そして、電子と正孔との再結合によって放出されるエネルギーの一部が発光分子を励起する。さらに、励起された発光分子がエネルギーを放出して基底状態に戻る時、ある一定の比率のエネルギーが光子の形となって放出される。これが有機EL素子の発光原理である。 【0005】 このような有機EL素子を作製する場合には、ガラス基板等の基体上に有機EL素子を駆動するために用いるスイッチング用のTFT等の駆動素子や配線等を形成し、平坦化膜で覆う。つぎに、該平坦化膜の上に第1電極、絶縁層、発光層、第2電極をこの順で形成していく。 【特許文献1】特開2001−185363号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、これらのプロセスを経る間に、第1電極はプロセスダメージや粉塵の付着などが生じる。これは、有機EL素子の特性に影響を及ぼし、発光品質の低下につながる。 【0007】 これに対処する技術として、基板上に第1電極と、保護膜と、有機物からなる発光層と、第2電極を順次積層し、第1電極上の画素領域にある保護膜を発光層の積層前に除去することにより有機EL素子を作製する技術が提案されている(特開2001−185363号公報)。 【0008】 ところが、上記技術によれば、保護膜の膜厚が厚いために発光層、第2電極が保護膜の段差や窪みに起因して切断され、上部電極(カソード電極)21の導通不良が発生する、という問題がある。すなわち、保護膜の側部には保護膜の厚みに相当する段差や、保護膜の形成時にサイドエッチングによる窪みが形成されるが、この段差や窪みが大きい場合には、段差によって発光層に切断されたり、あるいは窪みを発光層で埋め込むことができず、発光層が窪み近傍において切断されたりするおそれがある。そして、発光層上に積層される第2電極も同様に切断されるおそれがある。このため、第2電極の導通不良が発生し、有機EL素子自体が動作不良となるおそれがある。 【0009】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電極がプロセスダメージを受けることによる品質の低下および導通不良が良好に防止された高品質な有機EL素子及びその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の有機EL素子は、第1電極と、前記第1電極上に、前記第1電極を露出させる第1の開口部を有して形成された保護層と、前記保護層上に形成され、前記第1の開口部に対応する位置に形成された第2の開口部を有する絶縁層と、前記絶縁層上及び前記第1及び第2の開口部内より露出する前記第1電極上に形成され、発光層を含んで構成される有機層と、 前記有機層上に形成された第2電極と、を備え、前記保護層の膜厚が、前記有機層の膜厚よりも薄いことを特徴とする。 【0011】 また本発明の有機EL素子は、前記保護層の膜厚が、前記第2電極の膜厚よりも薄いことを特徴とする。 【0012】 さらに本発明の有機EL素子は、前記絶縁層の膜厚が、前記絶縁層の前記第1の開口部に向かって小さくなることを特徴とする。 【0013】 また本発明の有機EL素子は、前記保護層の前記第2の開口部の側部は、前記絶縁層の前記第1の開口部の側部よりも外側にずれて位置しており、且つ該位置ずれ幅が1μm以下であることを特徴とする。 【0014】 さらに本発明の有機EL素子は、第1電極と、前記第1電極上に形成された保護層と、前記保護層上に、前記保護層が露出するように形成された開口部を有する絶縁層と、前記絶縁層上及び前記絶縁層の前記開口部内より露出する前記保護層上に形成され、発光層を含んで構成される有機層と、前記有機層上に形成された第2電極と、を備え、前記保護層は、前記絶縁層の前記開口部に対応する位置に形成される凹部を有し、該凹部の深さが前記有機層の膜厚よりも小さいことを特徴とする。 【0015】 また本発明の有機EL素子は、前記保護層の前記凹部の深さが、前記第2電極の膜厚よりも小さいことを特徴とする。 【0016】 さらに本発明の有機EL素子は、前記保護層の前記凹部の側部が、前記絶縁層の側部よりも外側にずれて位置しており、且つ該位置ずれ幅が1μm以下であることを特徴とする。 【0017】 また本発明の有機EL素子は、前記絶縁層の膜厚が、前記絶縁層の前記開口部に向かって小さくなることを特徴とする。 【0018】 さらに本発明の有機EL素子は、前記第1電極が、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、または銀合金からなり、且つ前記保護層がモリブデンからなることを特徴とする。 【0019】 一方、本発明の有機EL素子の製造方法は、第1電極と、保護層を構成する保護材料層と、絶縁層を構成する絶縁材料層とが積層された基板を準備する工程と、前記絶縁材料層を部分的にエッチングして開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部より保護材料層を露出させる工程と、前記絶縁層をマスクとして前記開口部より露出する前記保護材料層をエッチングにより除去して保護層を形成するとともに、前記開口部より第1電極を露出させる工程と、前記絶縁層上および前記開口部より露出した前記第1電極上に発光層を含む有機層を前記保護層の膜厚よりも厚く形成する工程と、前記有機層上に第2電極を形成する工程と、を含んで構成される。 【0020】 また本発明の有機EL素子の製造方法は、前記第2電極が、前記保護層の膜厚よりも厚く形成されることを特徴とする。 【0021】 さらに本発明の有機EL素子の製造方法は、第1電極と、保護材料層と、絶縁材料層とが積層された基板を準備する工程と、前記絶縁材料層を部分的にエッチングして開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部より保護材料層を露出させる工程と、前記開口部より露出する前記保護材料層をエッチングにより途中まで除去し、前記開口部の外側領域よりも前記開口部の内側領域で膜厚が小さくなるように前記保護材料層に凹部を設けて保護層を形成する工程と、前記絶縁層上及び前記開口部内の前記保護層の凹部内に、発光層を含む有機層を前記凹部の深さよりも厚く形成する工程と、前記有機層上に第2電極を形成する工程と、を含んで構成される。 【0022】 また本発明の有機EL素子の製造方法は、前記第2電極が、前記保護層の前記凹部の深さよりも厚く形成されることを特徴とする。 【0023】 さらに本発明の有機EL素子の製造方法は、前記保護材料層をエッチングする際に、前記保護材料層に対する選択比が10よりも大であるエッチャントを用いてウエットエッチングを行うことを特徴とする。 【0024】 また本発明の有機EL素子の製造方法は、前記エッチャントとして、硝酸の含有比率が15wt%〜35wt%、酢酸の含有比率が25wt%〜45wt%、燐酸の含有比率が0.1wt%〜5wt%である混酸を用いることを特徴とする。 【0025】 さらに本発明の有機EL素子の製造方法は、前記保護材料層のエッチング後の前記保護層のサイドエッチング幅を1μm以下とすることを特徴とする。 【発明の効果】 【0026】 この発明によれば、電極の導通不良や有機層の切断等が効果的に防止された高品質な有機EL素子を提供することができる。また、有機EL素子を製造する際に電極がプロセスダメージを受けることが良好に防止され、品質の低下が抑制される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0027】 以下に、本発明にかかる有機EL素子およびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下の実施の形態において示す図面においては、理解の容易のため、各部材間の縮尺が実際とは異なる場合がある。 【0028】 (第1の実施の形態) 図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の概略構造を示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる有機EL素子は、ガラス基板等の基体に有機EL素子を駆動するために用いるTFT等の駆動素子や配線等が形成された基体部11と、有機EL素子が形成された有機電界発光素子部12とを備えて構成される。また、本実施の形態にかかる有機EL素子は、上面側(有機電界発光素子部12側)から光を取り出すトップエミッション型構造を採用している。なお、基体部11には上記のTFTや配線等の上層部を平坦化するための平坦化層が設けられているが、本発明の要旨には直接関係しないため、ここでは詳細な説明および図示は省略する。 【0029】 有機電界発光素子部12は、図1に示すように、基体部11上に形成された第1電極である下部電極(アノード電極)13と、該下部電極(アノード電極)13上に所定の距離を隔てて形成された保護層15と、保護層15上に形成された層間絶縁層17と、下部電極(アノード電極)13上および層間絶縁層17上に形成された有機電界発光層(有機層)19と、有機電界発光層19上に形成された第2電極である上部電極(カソード電極)21と、を備えて構成される。 【0030】 下部電極(アノード電極)13は、光反射率の高い材料であるアルミニウム(Al)またはその合金、アルミニウム(Al)とネオジム(Nd)との合金、アルミニウム(Al)とイットリウム(Y)との合金、銀(Ag)またはその合金等の光反射率の高い材料からなる。このように下部電極(アノード電極)13を光反射率の高い材料により構成することにより、トップエミッション型の有機EL素子構造においては光取り出し効率を高くすることが可能となり、有機電界発光層19において発光した光を有効に活用することができる。 【0031】 保護層15は、後述する有機電界発光素子部12の製造プロセスにおいて下部電極(アノード電極)13を形成後、有機電界発光層19を形成するまでの間、下部電極(アノード電極)13をプロセスダメージから保護する保護機能を有するものである。 【0032】 ここで、保護層15に求められる条件としては、ウエットエッチングにより選択エッチングが可能な材料からなること、が挙げられる。これは、後述するように保護層15を形成する際には保護層15の構成材料の膜を成膜し、有機電界発光層19を形成する直前に該膜をウエットエッチングにより選択除去してパターニングする必要があるからである。 【0033】 また、後述するように層間絶縁層17の形成プロセスにおいて下部電極(アノード電極)13をプロセスダメージから保護することが可能な(耐性のある)材料からなることが好ましい。すなわち、絶縁材料層17aを除去する際に使用する現像液に対して耐性がある材料からなることが好ましい。 【0034】 また、保護層15は、下部電極(アノード電極)13との密着性が良好であることが好ましい。これより、保護層15の剥離などに起因した不良を良好に防止することができる。このような保護層15の条件を満たす材料として、たとえばモリブデン(Mo)またはその合金により構成することができる。 【0035】 保護層15をモリブデン(Mo)またはその合金により構成することにより、下部電極(アノード電極)13を上述したアルミニウムまたはその合金により構成した場合に、保護層15と下部電極(アノード電極)13との間で、良好な密着性を得ることができる。したがって、保護層15の剥離などに起因した不良を良好に防止することができる。 【0036】 また、このような保護層15の構成材料は、金属材料に限定されるものではなく、たとえばシリコンナイトライドなどの絶縁材料を用いることもできる。 【0037】 有機電界発光層19は、有機系材料を発光体として用いた発光層を含んで構成されている。有機電界発光層19は、単層構造もしくは機能別に積層した多層構造のいずれも採用することができる。例えば、有機電界発光層19が発光層のみの単層からなる単層構造では、正孔輸送特性と電子輸送特性を兼ね備えたホスト材料中に発光特性を有するドーパント材料をドープして発光層を構成する方法や、発光特性、正孔輸送特性及び電子輸送特性が付与された材料を用いて発光層を構成する方法などを採用することができる。このような単層構造は、素子形成プロセスを簡略化できるだけでなく、低コストの有機EL素子を提供できるという利点がある。 【0038】 また、有機電界発光層19の構造として多層構造を採用する場合、たとえば発光層に加え、正孔輸送層、正孔注入層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層のうち、単数もしくは複数を選択して有機電界発光層19を構成する。たとえば有機電界発光層19が発光層と正孔阻止層、及び電子輸送層からなる多層構造である場合には、両電極からの電荷の注入量を制御し、再結合部位における正孔と電子の密度を等しくするため、正孔注入電極として働く下部電極(アノード電極)13と電子輸送層との間に正孔阻止層を設けた構造としても良い。このような構造を採用することで、再結合部位における正孔と電子の密度を等しくすることができ、発光効率を向上させることができるという利点がある。また、同様にして、有機電界発光層19が発光層と電子阻止層、及び正孔輸送層からなる多層構造である場合、電子注入電極となる上部電極(カソード電極)21と正孔輸送層との間に電子阻止層を設けることも可能である。 【0039】 上部電極(カソード電極)21は、上面側(有機電界発光素子部12側)から光を取り出すために、インジウム錫酸化物(ITO)、錫酸化物等の発光を外部に放出可能な透明導電性材料からなる。 【0040】 以上のように構成された本実施の形態にかかる有機EL素子においては、保護層15は、その膜厚が有機電界発光層19の膜厚よりも薄い膜厚とされている。このため、保護層15の開口部での段差に起因した有機電界発光層19の切断が防止される。その結果、有機電界発光層19の切断部より下部電極13が露出することが防止され、上部電極21と下部電極13とが上記切断部を介して短絡することが良好に防止される。 【0041】 また、以上のように構成された本実施の形態にかかる有機EL素子においては、保護層15は、その膜厚が上部電極(カソード電極)21の膜厚よりも薄い膜厚とされている。このため、保護層15の開口部の段差に起因した上部電極(カソード電極)21の断線が防止され、これらに起因した上部電極(カソード電極)21の導通不良が効果的に防止されている。 【0042】 以上のように構成された本実施の形態にかかる有機EL素子においては、保護層15は、その膜厚が5nm〜500nm程度であることが好ましい。そして、5nm〜100nm程度であることがさらに好ましい。なお、有機電界発光層19の切断や上部電極21の断線の防止という観点においては、層間絶縁層17の厚みは次の理由によりあまり問題とならない。すなわち、層間絶縁層17の膜厚は保護層15の開口部付近で厚みが小さくなっており、開口部付近の層間絶縁層17の表面は比較的傾斜が緩やかであるため、かかる部分には有機電界発光層19や上部電極21が良好に被着されることとなり、層間絶縁層17の厚みの大小はそれほど問題とはならない。 【0043】 また、以上のように構成された本実施の形態にかかる有機EL素子においては、保護層15の開口部の側部は、層間絶縁層17の側部よりも外側にずれて位置しており、この部分に窪みが形成されている。この窪みにおける開口部の側部と層間絶縁層17の側部との位置ずれ量は1μm以下とされている。このため、保護層15の開口部近傍に形成される窪みに起因した有機電界発光層19の切断および上部電極(カソード電極)21の断線が防止され、これらに起因した導通不良が効果的に防止されている。また、上記位置ずれ量が1μm以下であると、保護層15の開口部近傍の窪みに有機電界発光層19や上部電極21が充填され易くなり、窪みを起点とした有機電界発光層19や上部電極21の剥離を抑制できる。さらに、開口部近傍の層間絶縁層17が上記窪みに充填された有機電界発光層19や上部電極21によって良好に下側に支持され、層間絶縁層17の形状に歪みが生じることを防止できる。 【0044】 したがって、本実施の形態にかかる有機EL素子においては、保護層15により製造時のプロセスダメージによる品質の低下が防止されるとともに、保護層15の段差や窪みに起因した有機電界発光層19の切断および上部電極(カソード電極)21の断線が防止されており、これらに起因した上部電極(カソード電極)21の導通不良が防止された高品質な有機EL素子が実現されている。 【0045】 なお、本発明においては、駆動方式は、パッシブマトリクス方式、アクティブマトリクス方式のいずれの方式を採用することが可能である。また、光の取り出し方式に関しても、本発明においてはトップエミッション方式、ボトムエミッション方式のいずれの方式を採用することが可能である。 【0046】 つぎに、上述した本実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。 【0047】 まず、基体部形成工程において、ガラス基板等の基体に有機EL素子を駆動するために用いるTFT等の駆動素子や配線等を形成し、これらを形成した基体上に平坦化絶縁層を形成し、図2に示すように基体部11を形成する。 【0048】 つぎに、図3に示すように基体部11上に下部電極(アノード電極)13としてたとえばアルミニウム(Al)膜を形成する。 【0049】 続いて、図4に示すように下部電極(アノード電極)13上に保護材料層15aとしてたとえばモリブデン(Mo)膜を形成する。ここで、保護材料層15aの膜厚は、上部電極(カソード電極)21の膜厚よりも薄い膜厚とされ、また上部電極(カソード電極)21の膜厚よりも薄い膜厚とされる。 【0050】 それ故、保護材料層15aをエッチングする際に生じる保護材料層15aのサイドエッチングに起因して、後工程で形成される有機電界発光層19が切断したり、上部電極(カソード電極)21が断線したり、または上部電極(カソード電極)21が導通不良となったりすることを効果的に防止することができる。なお、保護材料層15aの膜厚は、5nm〜500nm程度とすることが好ましく、また5nm〜100nm程度とすることがより好ましい。 【0051】 また、下部電極(アノード電極)13と保護材料層15aとをアルミニウム(Al)とモリブデン(Mo)との組み合わせとすることにより、下部電極(アノード電極)13と保護材料層15aとの密着性を良好にすることができ、保護材料層15aの剥離などに起因した不良の発生を防止することができる。また、このような組み合わせとすることにより、スパッタリング法により下部電極(アノード電極)13を形成した後、チャンバを入れ替えるのみで直ぐにスパッタリング法により保護材料層15aを形成することができるため、下部電極(アノード電極)13と保護材料層15aとを効率良く形成することができる。 【0052】 つぎに、図5に示すように保護材料層15a上に絶縁材料層17aを形成する。そして、保護材料層15aをストッパとして絶縁材料層17aをエッチングによりパターニングして、図6に示すように有機EL素子を形成する領域に画素領域となる開口部を形成するように層間絶縁層17を形成する。すなわち、一般的なフォトリソグラフィ技術により絶縁層17aを部分的に除去して開口部を形成し、画素領域を得る。このとき層間絶縁層17は開口部近傍で膜厚が小さくなるようにパターニングされる。このような形状に層間絶縁層17を加工するためには、例えば、絶縁材料層17aの材料としてポジ型のレジスト材料(例えば、アクリル樹脂系のレジスト材料)を用いる。この場合、絶縁材料層17aに開口部を設ける際に絶縁材料層17aに光を照射すると、光が照射された部分の絶縁材料層17aが除去されることとなるが、光は絶縁材料層17aの下部(基体部11側)まで届きにくいため、絶縁材料層17aの開口部は上部よりも下部の方が狭くなる。その結果、層間絶縁層17は、その膜厚が開口部近傍で小さくなるようにパターニングされる。 【0053】 ここで、アルミニウム(Al)やその合金等からなる下部電極(アノード電極)13は、絶縁材料層17aを除去する際に使用する現像液(エッチング液)に対して耐性が弱く、該現像液に溶解する。しかしながら、本実施の形態においては、該現像液に対して耐性を有する保護材料層15aが下部電極(アノード電極)13上に形成されている。 【0054】 これにより、絶縁材料層17aの除去工程においても下部電極(アノード電極)13が現像液にほとんど溶解することがなく、下部電極(アノード電極)13の表面状態が荒れることがない。したがって、絶縁材料層17aの除去工程後においても、下部電極(アノード電極)13の表面は、該下部電極(アノード電極)13の形成時と同様の良好な平坦性を保持することができ、電極間のショートによる滅点の発生を防止することができる。 【0055】 また、この保護材料層15aは次工程において除去するが、有機電界発光層19を形成する直前まで該保護材料層15aが下部電極(アノード電極)13上を覆っているため、製造プロセス中の下部電極(アノード電極)13表面の酸化膜の形成を抑制することができ、下部電極(アノード電極)13表面の酸化膜に起因した特性の劣化等を抑制することができる。 【0056】 続いて、図7−1に示すように画素領域の下部、すなわち上記の開口部の下部の保護材料層15aを、層間絶縁層17をマスクとして用いてウエットエッチングにより選択除去して下部電極(アノード電極)13表面を露出させて開口部を形成することにより、保護層15を形成する。ここで、保護材料層15aを選択的にエッチング除去するエッチャントとしては、選択比が10よりも大であるエッチャントを用いることが好ましい。選択比が10よりも大であるエッチャントを用いることにより、層間絶縁層17および下部電極(アノード電極)13の形状をほぼ変形させることなく、所望の部位の保護材料層15aのみを選択除去することができる。 【0057】 そして、このエッチャントとしては選択比が20〜30程度のエッチャントを用いることがより好ましい。このようなエッチャントを用いることにより、さらに良好に所望の部位の保護材料層15aのみを選択除去することができる。ここで、モリブデン(Mo)からなる保護材料層15aを選択的にエッチング除去するエッチャントとしては、たとえば硝酸の含有比率が15wt%〜35wt%、酢酸の含有比率が25wt%〜45wt%、燐酸の含有比率が0.1wt%〜5wt%である混酸を用いることができる。そして、このような混酸としては、たとえばCMK123(硝酸:酢酸:燐酸=26:36:2である混酸)を用いることができる。 【0058】 また、図7−2に示すように、保護材料層15aを選択除去することにより形成される保護層15において、サイドエッチング幅W1は1μm以下となるようにする。このサイドエッチング幅W1は、保護材料層15aの膜厚やエッチャントを選択することにより制御することが可能である。例えば、上述のCMK123をエッチャントとして用いた場合、エッチング時間10秒〜30秒でシャワー方式、ディップ方式またはパドル方式でウエットエッチングを行なうことによりサイドエッチング幅W1を1μm以下とすることができる。サイドエッチング幅W1を1μm以下とすることにより、サイドエッチングにより生じる保護層15の窪みに起因した有機電界発光層19の切断および上部電極(カソード電極)21の断線の発生を防止することができ、これらに起因した上部電極(カソード電極)21の導通不良の発生を効果的に防止することができる。また、サイドエッチング幅W1が1μm以下であると、保護層15の窪みに有機電界発光層19や上部電極21が充填され易くなり、窪みを起点とした有機電界発光層19や上部電極21の剥離を抑制できる。さらに、上記窪みに起因した層間絶縁層17の形状に歪みが生じることを防止できる。 【0059】 保護層15の膜厚を、後に形成する有機電界発光層19や上部電極21の膜厚よりも厚くした場合、有機電界発光層19や上部電極21を形成する際にステップカバレッジが悪いと有機電界発光層19や上部電極21が保護層15の開口部の側部で切断されやすくなる。また、保護層15のサイドエッチング幅W2が、図7−3に示すように、図7−2の場合よりも大幅に大きいと、有機電界発光層19がサイドエッチングによって生じる保護層15の窪みを埋め込むことができず、該窪みの近傍においては有機電界発光層19を支持する支持体が存在しなくなる。その結果、図7−4に示すように有機電界発光層が窪みにおいて有機電界発光層19a、有機電界発光層19b、有機電界発光層19cに切断され易くなる。 【0060】 また、図7−5に示すように、有機電界発光層19に切断が生じなくても、サイドエッチングによって生じた保護層15の窪みに有機電界発光層が入り込まずに空隙ができてしまい、該空隙を起点として有機電界発光層19に剥離が生じ易くなる。さらには、上記空隙によって層間絶縁層17の上側に配される有機電界発光層19と層間絶縁層17の下側に配される保護層15との応力バランスが崩れ、層間絶縁層17の形状に歪みが生じるおそれがある。 【0061】 しかしながら、本実施の形態においては、図7−2に示すように保護材料層15aを選択除去することで形成された保護層15のサイドエッチング幅W1を1μm以下とすることにより、このような不良の発生を良好に防止することができる。 【0062】 つぎに、図8に示すように露出した下部電極(アノード電極)13上および層間絶縁層17上に有機電界発光層19を形成する。このとき、有機電界発光層19の膜厚は、保護層15の膜厚よりも厚い膜厚とする。有機電界発光層19の膜厚を保護層15の膜厚よりも厚くすることにより、有機電界発光層19のステップカバレッジが悪くとも、保護層15の開口部の側部における有機電界発光層19の切断を効果的に防止できる上に、保護層15の窪みを有機電界発光層19により埋め込み、窪みに起因した有機電界発光層19の剥離や層間絶縁層17の形状の歪みを防止できる。 【0063】 そして、図9に示すように有機電界発光層19上に上部電極(カソード電極)21を形成する。ここで、上部電極(カソード電極)21の膜厚は、保護層15の膜厚よりも厚い膜厚とする。上部電極(カソード電極)21の膜厚を、保護層15の膜厚よりも厚くすることにより、上部電極21のステップカバレッジが悪くとも、保護層15の開口部の側部における上部電極21の切断を効果的に防止できる上に、有機電界発光層19の膜厚が比較的薄い場合においてもこれを補って保護層15の窪みを有機電界発光層19により埋め込み、窪みに起因した上部電極21の剥離や層間絶縁層17の形状の歪みを防止できる。 【0064】 以上により、製造時における電極のプロセスダメージによる有機EL素子の品質低下を防止するとともに、保護層を新たに設けたことによる電極の導通不良が良好に防止された図1に示した高品質な有機EL素子を作製することができる。 【0065】 なお、上述の実施形態においては、上部電極21をカソード電極として、下部電極13をアノード電極としてそれぞれ用いるようにしたが、当然、上部電極21をアノード電極として、下部電極13をカソード電極としてそれぞれ用いても構わない。 【0066】 (第2の実施の形態) 図10は、本発明の第2の実施の形態にかかる有機EL素子の構造を示す断面図である。ここでは、第1の実施の形態に係る有機EL素子と異なる構成について主に説明し、その他の共通する構成に関する説明は原則的には省略する。 【0067】 本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、層間絶縁層17の開口部内に位置する保護材料層15aを完全に除去せずに、層間絶縁層17の開口部内の保護材料層15aを一部残存させ、保護層15に凹部15bを形成している。その結果、層間絶縁層17の開口部の内側領域における保護層15の膜厚は、層間絶縁層17の開口部の外側領域における保護層15の膜厚よりも小さく設定されることとなる。 【0068】 このような構成を採用することにより、下部電極13上に保護層15が一部残存するため、保護材料層15aをエッチングする際に下部電極13が受けるダメージを第1の実施の形態よりも小さくすることができるという利点がある。 【0069】 なお、凹部15bの形成領域における保護層15の膜厚が大きいと、有機EL素子がトップエミッション方式を採用する場合、下部電極13側での光の反射率が低下する傾向にあることから、凹部15bの形成領域における保護層15の膜厚は10nm以下に設定することが好ましい。 【0070】 また、保護層15の凹部15bの深さdが有機電界発光層19の膜厚よりも小さく設定されているため、保護層15の凹部15bによる段差に起因した有機電界発光層19の切断が防止される。 【0071】 さらに、保護層15の凹部15bの深さdが、上部電極21の膜厚よりも小さく設定されているため、保護層15の凹部15bによる段差に起因した上部電極21の断線が防止され、上部電極21の導通不良が効果的に防止されている。 【0072】 また、保護層15の凹部15bの側部は、絶縁層17の側部よりも外側にずれて位置しており、且つ該位置ずれ幅が1μm以下であるため、サイドエッチングによって生じた空隙に起因した有機電界発光層19に剥離が生じることが良好に防止される。 【産業上の利用可能性】 【0073】 以上のように、本発明にかかる有機EL素子は、ディスプレイ・パネル、屋外スクリーン、パソコンおよびテレビのスクリーン等のような高品質が要求されるカラー平面ディスプレイ素子に特に有用である。 【図面の簡単な説明】 【0074】 【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の構造を示す断面図である。 【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図4】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図5】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図6】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図7−1】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図7−2】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図7−3】従来の有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図7−4】従来の有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図7−5】従来の有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図8】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図9】本発明の第1の実施の形態にかかる有機EL素子の製造方法を説明する断面図である。 【図10】本発明の第2の実施の形態にかかる有機EL素子の構造を示す断面図である。 【符号の説明】 【0075】 11 基体部 12 有機電界発光素子部 13 下部電極(アノード電極) 15 保護層 15a 保護材料層 15b 凹部 17 層間絶縁層 17a 絶縁材料層 19 有機電界発光層 19a 有機電界発光層 19b 有機電界発光層 19c 有機電界発光層 21 上部電極(カソード電極) W1 サイドエッチング幅 W2 サイドエッチング幅
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006633 【氏名又は名称】京セラ株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年7月28日(2006.7.28) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−10383(P2008−10383A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月17日(2008.1.17) |
| 【出願番号】 |
特願2006−206113(P2006−206113) |
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