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【発明の名称】 可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法および可変指向性コンデンサーマイクロホン
【発明者】 【氏名】秋野 裕

【要約】 【課題】前後の低域周波数応答特性がそろった双指向性を得て、高性能の可変指向性コンデンサーマイクロホンを得る。そのためのマイクロホンユニットの製造方法を得る。

【構成】一対の振動板22,42と、各振動板に隙間を置いて対向配置されている固定電極26,46と、各固定電極に対応してそれらの背後に相対向して配置されている後部音響抵抗材29,49と、各後部音響抵抗材相互間に形成されている空間を有し、各振動板22,42は音響端子として機能し各振動板には上記空間に通じる圧力等価用開口が形成されている可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。振動板ごとに空気抵抗値を測定することにより音響抵抗を測定し、適宜の音響抵抗値の振動板を対にしてマイクロホンユニットに組み込む。各振動板の音響抵抗値は同じにするとよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の振動板と、各振動板に隙間をおいて対向配置されている固定電極と、各固定電極に対応してそれらの背後に相対向して配置されている後部音響抵抗材と、各後部音響抵抗材相互間に形成されている空間を有し、
各振動板は音響端子として機能し各振動板には上記空間に通じる圧力等価用開口が形成されている可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法であって、
振動板ごとに空気抵抗値を測定することにより音響抵抗を測定し、適宜の音響抵抗値の振動板を対にしてマイクロホンユニットに組み込むことを特徴とする可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項2】
対をなす振動板の空気抵抗値を一致させる請求項1記載の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項3】
一端が空気流発生源に一括されて接続された2つの空気流路を備え、一方の空気流路の先端に振動板を、他方の振動板の先端に基準音響抵抗材をセットし、2つの空気流路内の圧力差に基づいて振動板の音響抵抗を測定する請求項1記載の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項4】
2本の空気流路内の圧力差は、2つの空気流路の先端近くが互いに接続された差圧計によって測定される請求項3記載の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項5】
2本の空気流路には、空気流発生源と差圧計接続部との間に基準空気抵抗となるニードルがそれぞれ配置されている請求項4記載の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項6】
振動板をセットすべき一方の空気流路の先端は漏斗状の受け部になっていて、振動板は外周縁が振動板ホルダに固着され、この振動板ホルダと一体の振動板が上記空気流路の受け部に載せられ、空気流発生源は空気流路内の空気を吸引する請求項3、4または5記載の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項7】
空間をおき相対向して配置されている一対の振動板と、各振動板に対向して配置されている固定電極と、各固定電極に対応してそれらの背後に相対向して配置されている後部音響抵抗材と、各後部音響抵抗材相互間に形成されている空間を有し、
各振動板には圧力等価用開口が形成されて各振動板は音響抵抗材として機能し、
一対の振動板相互の音響抵抗を調整することにより指向性を調整することができる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットをマイクロホンケースに組み込んでなる可変指向性コンデンサーマイクロホンであって、
上記一対の振動板は、音響抵抗値が同じである可変指向性コンデンサーマイクロホン。
【請求項8】
空間をおき相対向して配置されている一対の振動板と、各振動板に対向して配置されている固定電極と、各固定電極に対応してそれらの背後に相対向して配置されている後部音響抵抗材と、各後部音響抵抗材相互間に形成されている空間を有し、
各振動板には圧力等価用開口が形成されて各振動板は音響抵抗材として機能し、
一対の振動板相互の音響抵抗を調整することにより指向性を調整することができる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットをマイクロホンケースに組み込んでなる可変指向性コンデンサーマイクロホンであって、
上記可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットは、請求項1ないし6のいずれかに記載されている方法によって製造されたものである可変指向性コンデンサーマイクロホン。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法および可変指向性コンデンサーマイクロホンに関するもので、特に、対をなす振動板が圧力等価用の開口を有することによって音響抵抗材として機能するものにおいて、各振動板の音響抵抗値の整合性確保に着目したものである。
【背景技術】
【0002】
可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットは、概略的に言えば、振動板と、この振動板に隙間をおいて対向配置されている固定電極と、固定電極の背後に相対向して配置されている後部音響抵抗材を主たる構成要素として備えるマイクロホンエレメントが2個を一対にして、背中合わせ状に一体に結合された構造になっている。振動板は、例えば、厚さ2μmのポリフェニレン・サルファイト(PPS)からなる合成樹脂フィルムをベースとして、これに金などの導電金属膜を蒸着したものが用いられる。
【0003】
可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットは、上記のように一対のコンデンサーマイクロホンエレメントが前後に背中合わせ状に結合されているため、前後のエレメントにそれぞれ音響端子が存在し、この音響端子としての機能を振動板が果たしている。一対のマイクロホンエレメントの結合によってエレメント相互間の密閉度が高い場合は、大気圧の変動に伴ってエレメントの内外に気圧差を生じ、この気圧差によって振動板が変位する。大気圧が低くなると振動板が風船のように外側に向かって膨らみ、振動板が破壊することがある。大気圧が高くなると振動板が内側に向かって押され、振動板が固定電極に接触することがある。そのため、可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットにおいては、ユニットの内部と外部をバイパスさせて空気を流通させ、ユニットの内外の気圧差をなくす構成が採用されている。この圧力差をなくすことを圧力等価という。
【0004】
可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの構造を大きく分けると、二つのマイクロホンエレメントを前後に分けることができる分離型構造、すなわち、上記のように一対のコンデンサーマイクロホンエレメントが前後に背中合わせ状に結合されている構造と、一つのユニットケースに、振動板、固定電極等からなる二つのマイクロホンエレメントを組み込んだ非分離型構造がある。分離型構造の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットは、ガスケットの介在のもとに二つのマイクロホンエレメントをリング状のカプラーで結合している。したがって、二つのマイクロホンエレメントを結合する際に、ガスケットに高い音響抵抗を付与することによって容易に圧力等価を実現することができる。ガスケットに高い音響抵抗を付与するということは、空気の流通が制限されるが、大気圧の変動に対しては十分に対応できる程度に内外で空気を流通させることである。
【0005】
非分離型構造の可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットは、製造コストを低減するために、対をなすマイクロホンエレメント構成部材が一つのベースを中心として密閉状態で組み込まれ、ガスケット、カプラーなどを省略することが可能な構造になっている。そのため、一対の振動板に空気流通の開口の類がないとすれば、内外の圧力等価ができないので、振動板に圧力等価用開口を形成している。
【0006】
振動板に圧力等価用開口を設けるために、本出願人は、振動板の所定部位に、火花放電による熱を加える方法を提案した(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、開口の周縁にバリが発生しないので、振動板の導電金属膜が固定電極との接触することによる雑音の発生を防止することができ、開口の直径のばらつきも比較的少なくすることができる利点がある。
【0007】
しかしながら、火花放電による熱を加えて振動板に圧力等価用開口を設ける方法を採用しても、空気の漏洩(流通)抵抗にばらつきがあり、これが要因となって、マイクロホンユニットの双指向性において低域の周波数応答が、前側と後ろ側でばらつくという問題は未解決である。マイクロホンユニットの双指向性において、前側と後ろ側で低域の周波数応答のばらつきをなくすためには、空気の漏洩抵抗が等しい振動板を、前後のマイクロホンエレメントに組み込む必要がある。そのためには、空気の漏洩抵抗すなわち空気漏洩の程度を測定する必要がある。ここで、空気の漏洩抵抗は音響的な面からは音響抵抗ということができ、振動板の空気漏洩抵抗を測定することは、振動板の音響抵抗を測定することにもなる。
【0008】
本出願人は、音響抵抗の測定装置および音響抵抗調整方法に関して先に特許出願した(特許文献2参照)。特許文献2記載の発明は、一端が圧搾空気供給源に接続され他端に基準音響抵抗材が配置される第1配管と、一端が上記圧搾空気供給源に接続され他端に被測定音響抵抗材が配置される第2配管と、第1配管と第2配管の途中にそれぞれ設けられた空気絞り部と、第1配管と第2配管を上記空気絞り部より空気の流れ方向下流側で連結するブリッジ管と、ブリッジ管に設けられていて第1配管と第2配管内の気圧差を測定する差圧計と、を備えてなる。
特許文献2記載の発明は、本発明において振動板の音響抵抗測定に適用することができる。ただし、特許文献2記載の発明は圧搾空気供給源を使用することを想定しているが、第1配管と第2配管内に空気流を発生させることができるものであればよく、配管内の空気を吸引して配管内を負圧にする弱真空発生手段も圧搾空気供給源と同等に気流発生源として使用することができる。
【0009】
【特許文献1】特開平9−84195号公報
【特許文献2】特開2005−328347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上説明した従来技術を活用しながら、前後の低域周波数応答特性がそろった双指向性を確実かつ安定に得ることができ、もって、高性能の可変指向性コンデンサーマイクロホンを安価に得ることができる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、上記方法によって製造したマイクロホンユニットを用いて、高性能の可変指向性コンデンサーマイクロホンを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法は、一対の振動板と、各振動板に隙間を置いて対向配置されている固定電極と、各固定電極に対応してそれらの背後に相対向して配置されている後部音響抵抗材と、各後部音響抵抗材相互間に形成されている空間を有し、各振動板は音響端子として機能し各振動板には上記空間に通じる圧力等価用開口が形成されている可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法であって、振動板ごとに空気抵抗値を測定することにより音響抵抗を測定し、適宜の音響抵抗値の振動板を対にしてマイクロホンユニットに組み込むことを最も主要な特徴とする。
【0012】
振動板の音響抵抗測定は、一端が空気流発生源に一括されて接続された2つの空気流路を備え、一方の空気流路の先端に振動板を、他方の振動板の先端に基準音響抵抗材をセットし、2つの空気流路内の圧力差に基づいて測定することができる。この測定には、特許文献2記載の測定装置および測定方法に類似の装置および方法を適用することができる。
振動板をセットすべき一方の空気流路の先端は漏斗状の受け部とし、振動板は外周縁を振動板ホルダに固着し、この振動板ホルダと一体の振動板を上記空気流路の受け部に載せ、空気流発生源は空気流路内の空気を吸引するようにするとよい。
【0013】
本発明にかかる可変指向性コンデンサーマイクロホンは、可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットとして、本発明にかかる方法によって製造された可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットをマイクロホンケースに組み込んでなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法によれば、対をなす振動板ごとに音響抵抗を測定し、適宜の音響抵抗値の振動板をマイクロホンユニットに組み込むため、対をなす振動板の音響抵抗値を揃えることができ、前後の低域周波数応答特性がそろった双指向性を確実かつ安定に得ることができ、もって、高性能の可変指向性コンデンサーマイクロホンを安価に得ることができる。
【0015】
一端が空気流発生源に一括されて接続された2つの空気流路を備えた音響抵抗測定装置を用い、一方の空気流路の先端に振動板を、他方の振動板の先端に基準音響抵抗材をセットし、2つの空気流路内の圧力差に基づいて振動板の音響抵抗を測定することにより、振動板の音響抵抗を容易に、かつ、精度良く測定することができる。
上記音響抵抗測定装置の空気流発生源を、空気流路内の空気を吸引するものにすると、外周縁を振動板ホルダに固着してなる振動板を、一方の空気流路の漏斗状の受け部に載せるだけで、振動板が上記受け部に吸着され、特別な押さえ部材の類は必要としない。そのため、測定装置の構成が簡単になるとともに、測定も容易になる。
【0016】
本発明にかかる可変指向性コンデンサーマイクロホンによれば、本発明にかかる方法によって製造された可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットを用いるため、対をなす振動板の音響抵抗値を揃えることができ、前後の低域周波数応答特性がそろった双指向性を確実かつ安定に得ることができ、もって、高性能の可変指向性コンデンサーマイクロホンを安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法および可変指向性コンデンサーマイクロホンの実施例について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明にかかる可変指向性コンデンサーマイクロホンの実施例を概略的に説明する。図8において、可変指向性コンデンサーマイクロホン10は、マイクロホンケース12内に可変指向性コンデンサーマイクロホンユニット18が組み込まれることによって構成されている。可変指向性コンデンサーマイクロホンユニット18は、後で説明する本発明の実施例の一つにかかる方法で製造される可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットである。マイクロホンケース12の上端にはフロントメッシュ14が結合され、マイクロホンユニット18に対応する部分はフロントメッシュ14で覆われている。マイクロホンケース12の後端(下端)にはマイクロホンコネクタ16が設けられている。マイクロホンコネクタ16にはケーブルコネクタを結合することができ、マイクロホンの出力信号を外部に導くようになっている。
【0018】
可変指向性コンデンサーマイクロホンユニット18は、2個のマイクロホンエレメントを背中合わせ状に一体に形成することにより、前面側と背面側からの音声を電気信号に変換し、指向性を表す特性曲線が前後方向に8の字を描く双指向性を持たせている。そして、コンデンサを構成する振動板とこれに対向する固定電極との間に印加する電圧およびその極性を変化させることにより、指向性を変えることができる。
次に、可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの製造方法の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1、図2に示す実施例は、個別に構成した二つのコンデンサーマイクロホンエレメント21,41を背中合わせ状に結合した可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの例を示す。図1、図2において、符号22はダイヤフラム状の振動板を示しており、振動板22は周縁部が振動板保持体23の外周縁部に固着されている。振動板保持体23は円形の扁平な皿状になっていて、外周縁部に形成された平坦面に振動板22の外周縁部が固着され、振動板保持体23の底面に相当する面から所定の間隔をおいて離間している。振動板22は振動板保持体23に一体に保持された形でごく薄いリング状のスペーサを介して円板状の固定電極26の上に載せられ、振動板22と固定電極26の上面とが、上記スペーサの厚さに相当する微小な隙間をおいて対向している。上記スペーサは振動板22と固定電極26との間に、それらの外周近くにおいて介在している。
【0020】
固定電極26は、その外周部の下面が円形のカバー27の外周部上面に載せられている。カバー27の上面には外周部以外の部分が抉り取られて凹陥部が形成され、カバー27の上記凹陥部の底面と固定電極26の下面とが適宜の間隔をおいて対向している。カバー27の外周面には雄ねじが形成され、この雄ねじには押えリング30の内周に形成された雌ねじが螺合されている。押えリング30はカバー27との螺合部とは反対側に内向きフランジを有し、この内向きフランジが振動板保持体23の外周縁部の外側面を押圧し、カバー27、固定電極26、前記スペーサ、振動板22、振動板保持体23を一体に結合して、一つのマイクロホンエレメント21を構成している。
【0021】
振動板保持体23には複数の孔24が形成され、これらの孔24はマイクロホンエレメント21の前部音響端子となっている。カバー27の中心部には孔28が形成され、孔28はマイクロホンエレメント21の後部音響端子となっている。孔28は音響抵抗材29で覆われている。固定電極26の中心部には、振動板22と固定電極26との間の隙間と上記後部音響端子となるカバー27の孔28とを連通させる孔が形成されている。固定電極26と振動板22との間には外部から電圧が印加される。振動板保持体23の中央部からは振動板保持体23の面から直角方向に外側に向かって電極25が延び出ていて、この電極25は振動板保持体23を介して振動板22に電気的につながっている。電極25はねじからなり、このねじが振動板保持体23の内面側から挿入され、このねじに振動板保持体23の外面側からナットが螺合されて締め付けられることにより、電極25が振動板保持体23に固定されている。
【0022】
以上説明した一つのマイクロホンエレメント21に背中合わせ状に結合されている他の一つのマイクロホンエレメント41も、マイクロホンエレメント21と同様に構成されている。符号42は振動板、43は振動板保持体、44は前部音響端子を構成する孔、45は電極、46は固定電極、47はカバー、48は後部音響端子を構成する孔、49は音響抵抗材、50は押えリングをそれぞれ示している。マイクロホンエレメント21を構成する部材の名称と一致する部材は、マイクロホンエレメント21における部材と同様に構成されている。
【0023】
一つのマイクロホンエレメント21と他の一つのマイクロホンエレメント41は背中合わせ状に結合されるが、マイクロホンエレメント21,41間にガスケット51を介在させて結合されている。また、マイクロホンエレメント21,41の結合手段として、内周面に雌ねじが形成されたカプラー52の上記雌ねじに、一つのマイクロホンエレメント21側のカバー27および他方のマイクロホンエレメント41のカバー47の外周面にそれぞれ形成されている雄ねじをねじ込む構成がとられている。カプラー52の両側から上記双方のカバー27,47をねじ込むことによってカバー27,47がガスケット51を圧縮しながら互いに結合される。
【0024】
上記一対のマイクロホンエレメント21,41が気密状態で結合されると、各マイクロホンエレメント21,41の後部音響端子が密閉され、外気の圧力変化によって振動板22,42が外側に向かって膨らみ、あるいは固定電極26,46に接触する。そこで、マイクロホンエレメント21,41間に介在するガスケット51に通気性を持たせ、内部空間と外気とを連通させることにより圧力等価を可能にしている。外気の圧力変化は緩やかであるから、僅かな通気性が与えられていて、音波はできるだけ通さないように構成されている。
【0025】
上記のように、ガスケット51に通気性を持たせることによって圧力等価を行なっているが、特許文献1に記載されているように、振動板22,42に開口を設けることによって圧力等価を行なってもよい。振動板22,42に圧力等価用開口を設ける方法は任意で、特許文献1に記載されているように、火花放電による熱で開口を形成する方法を用いてもよい。振動板22,42に圧力等価用開口を設けることにより、振動板22,42の音響抵抗が変化し、また、開口の大きさ、位置などの条件が変わることによって振動板22,42ごとに音響抵抗値が変わる。対をなす振動板22,42の音響抵抗値は略同一であることが望まれる。そこで、振動板22,42を組み込む前にそれぞれの音響抵抗値を測定し、略同一の音響抵抗値を持つ振動板を一対として選択し、マイクロホンユニットとして組み立てる。音響抵抗値の測定方法は任意であるが、好ましい測定方法について後で説明する。
【0026】
以上説明した実施例によれば、対をなす振動板22,42ごとに音響抵抗を測定し、適宜の音響抵抗値の振動板をマイクロホンユニットに組み込むため、対をなす振動板22,42の音響抵抗値を揃えることができ、前後の低域周波数応答特性がそろった双指向性を確実かつ安定に得ることができ、もって、高性能の可変指向性コンデンサーマイクロホンを安価に得ることができる。
【0027】
マイクロホンエレメント21とマイクロホンエレメント41はそれぞれ独立の電気音響変換素子として機能するとともに、それぞれの後部音響端子側からの音波の入り口が略遮断された形になっているため、それぞれの前方からの音波を感知して電気信号に変換し、双指向性のマイクロホンユニットを構成することになる。各マイクロホンエレメント21とマイクロホンエレメント41において、振動板と固定電極との間に印加する電圧を個別に変化させると、マイクロホンエレメントの指向性が個別に変化して、マイクロホンユニット全体としての指向性が変化し、双方のエレメントに印加する電圧の極性を切り換えることにより、無指向性のマイクロホンユニット、双指向性のマイクロホンユニットなどに切り換えることができる。
【実施例2】
【0028】
次に、図3、図4に示す第2の実施例について説明する。この実施例は、ベース60を中心としてその両側に一対のマイクロホンエレメント70,80が組み込まれた、比較的構成が簡単で安価な可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの実施例である。図3、図4において、短い円柱状のベース60中心部には、一対のマイクロホンエレメント70,80の後部音響端子となる音響端子孔61が形成されている。音響端子孔61内には音響端子孔61を塞ぐようにして、一対の音響抵抗材78,88が相互間に所定の間隔をおいて取り付けられている。音響抵抗材78はマイクロホンエレメント70側の音響抵抗材であり、音響抵抗材88はマイクロホンエレメント80側の音響抵抗材である。ベース60の両端面には、ベース60の中心軸線を中心とした円に沿って切削されることにより凹陥部63、64が形成され、さらにその内方に凹陥部63,64よりもいくらか小径の凹陥部65,66が形成されている。
【0029】
ベース60の上記凹陥部63には固定電極76が嵌められている。固定電極76の厚さ寸法は凹陥部63の深さ寸法より大きく、固定電極76の一部はベース60の端面から突出している。固定電極76の上には、薄いリング状のスペーサ73、リング状の振動板保持体72に外周縁部が固着されている振動板71、リング状の電極板74がこの順に重ねられ、さらに、円筒形状で一端に内向きフランジを有するカバー77が被せられている。カバー77はその円筒部分が電極板74、振動板保持体72、振動板71、スペーサ73の外周を覆い、ベース60の一端部外周に嵌められてベース60と一体に結合されている。ベース60とカバー77の結合手段は任意で、圧入であってもよいし、ねじ込み方式であってもよい。ベース60にカバー77が結合されることにより、カバー77の内向きフランジ部で電極板74が押圧され、以下順に、振動板保持体72、振動板71、スペーサ73、固定電極76が押圧されて、これらが、ベース60に固定された形になっている。
【0030】
振動板71と固定電極76との間にはスペーサ73の厚さに相当する微小な隙間が形成されていて、この隙間をおいて振動板71と固定電極76が対向し、振動板71と固定電極76とでコンデンサを構成している。スペーサ73は絶縁体からなる。振動板保持体72と電極板74は導電体からなり、電極板74の内周部から外方に向かって立ち上がった端子部75を経て、外部から振動板71に電圧が印加されるようになっている。
【0031】
他方のマイクロホンエレメント80も、マイクロホンエレメント70と同様に構成されている。符号81は振動板、82は振動板保持体、83はスペーサ、86は固定電極、84は電極板、87はカバー、64は上記固定電極86が嵌まるベース60の凹陥部をそれぞれ示している。マイクロホンエレメント70を構成する部材の名称と一致する部材は、マイクロホンエレメント70における部材と同様に構成されている。ベース60の音響端子孔61は、マイクロホンエレメント70,80に共通の後部音響端子を構成している。音響抵抗材78はマイクロホンエレメント70の後部音響抵抗材、音響抵抗材88はマイクロホンエレメント80の後部音響抵抗材である。図示されていないが、双方の固定電極76,86には、振動板71,81と固定電極76,86との間の隙間を後部音響端子孔61に連通させる孔が形成されている。
【0032】
図3、図4に示す実施例によれば、双方の振動板71,81で区切られた内方の空間が密閉され、これによって双指向性になっている。しかし、上記空間が完全に密閉されていると、振動板71,81に前述のような不具合を生じることになるので、前記特許文献1に記載されているように、振動板に圧力等価用開口を設けている。圧力等価用開口は音響特性になるべく影響を与えないように、振動板保持体による保持部に近い振動板の外周近くに設けられる。圧力等価用開口の直径は50μm〜0.1mmの範囲である。双方のマイクロホンエレメント70,80における振動板71,81の音響抵抗値は略同一であることが望まれるが、圧力等価用開口の直径のばらつきその他の条件によって、音響抵抗値もばらつくので、振動板の外観のみから判断して音響抵抗値が略同一の振動板71,81を選択し組み合わせることは難しい。
【0033】
そこで、特許文献2に記載されているような測定装置を用いて振動板の音響抵抗値を測定し、測定結果から、略同一の音響抵抗値の振動板を選択してこれをマイクロホンユニットに組み込むようにした。以下、音響抵抗値の測定装置の例について説明する。
【0034】
図5において、符号91,92は空気流路を示している。2つの空気流路91,92の一端(図において下端)は連絡路102により一括して空気流発生源に接続されている。空気流発生源は圧搾空気発生装置であってもよいし、空気流路91,92内を弱真空(負圧)にする空気吸引装置であってもよい。この実施例では、空気流発生源が空気吸引装置になっている。2つの空気流路91,92の途中には、ニードルなどからなる空気流量調整装置94,95が設けられ、この調整装置94,95によって基準となる空気抵抗が設定されるようになっている。
【0035】
一方の空気流路91の先端は漏斗状に開いた受け部96となっていて、さらにこの受け部96の開放した上端縁部は平坦部97となっている。この平坦部97に、図3、図4に示す実施例の場合は、振動板保持体によって保持され、かつ、圧力等価用開口が形成された振動板が振動板保持体とともに載せられる。図5は、振動板保持体72で保持された振動板71が載せられている例を示している。他方の空気流路92の先端部にはニードルなどの空気流量調整装置からなる基準空気抵抗98が設けられている。2つの空気流路91,92は、受け部96の下部と基準空気抵抗98の下部において差圧計100に接続され、2つの空気流路91,92内の空気圧の差を差圧計100で読み取り、基準空気抵抗98との対比によって、振動板71の空気抵抗値を求めることができる。そして、空気抵抗値から、振動板71の音響抵抗値を求めることができる。
【0036】
測定装置の受け部96に載せる振動板保持体と一体の振動板を交換しながら、各振動板につき上記のようにして音響抵抗値を求める。求めた音響抵抗値の中から、ほぼ同じ音響抵抗値の振動板を選別し、これらを一つのマイクロホンユニットに組み込む。これによって、双指向性に優れ、もって、指向性を意図したとおりに可変することができる可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットを構成することができる。
【0037】
空気流発生源を空気吸引装置とすることにより、被測定体である振動板の受け部96へのセットが容易になる利点がある。すなわち、空気流発生源が空気吸引装置であることによって、空気流路91,92が負圧ないしは弱真空になり、受け部96に振動板を載せるだけで、受け部96に振動板保持体と一体の振動板が引き付けられ、その外周縁部が平坦部97に吸着されるからである。この状態で振動板に設けられた圧力等価用開口を通して外部の空気が空気流路91に吸引される。圧力等価用開口が小さくて空気流路91内の空気流量が少なければ空気流路91内の気圧が低くなり、差圧計100の表示を読み取ることにより振動板の空気抵抗が高く、音響抵抗値も高いことがわかる。ちなみに、空気流発生源を圧縮空気供給源としても、振動板の音響抵抗値を測定することができる。この場合は、受け部96の平坦面97から振動板が浮き上がらないように、振動板の押え機構を設ける必要がある。
【0038】
図6は、図5に示す音響抵抗値測定装置をより具体化した例を示す。図5に示す測定装置の構成部分と同じ構成部分には同じ符号を付している。図6に示す測定装置は、本体がブロックからなり、ブロック内に空気流路91,92が形成され、空気流路91,92の下端が連絡路102に連通している。連結路102の長さ方向中央部がコネクタ101を介して空気流発生源に連結され、ブロックの両端の連結路102の開口はボルト104,105で閉止されている。空気流路91,92の途中には、調整装置94,95としてのニードルが設けられている。空気流路91,92の上端にはそれぞれコネクタ108,109が設けられ、空気流路91側のコネクタ108には図5に示す受け部96が連結され、空気流路92側のコネクタ109には図5に示す基準空気抵抗98が連結される。空気流路91の調整装置94とコネクタ108の間と、空気流路92の調整装置95とコネクタ109の間はそれぞれコネクタ106,107を介してパイプでつながれるとともに、このパイプの中央に図5に符号100で示すような差圧計が配置されている。図6に示す測定装置は、図5に示す測定装置と実質的に同じであり、振動板の音響抵抗を同じ操作によって測定することができる。
【0039】
図5、図6に示測定装置で測定することができる振動板は、図3、図4に示す実施例における振動板に限らず、図1、図2に示す実施例における振動板の音響抵抗も測定することができる。この場合も、振動板が振動板保持体で保持された状態で測定装置の受け部にセットされて測定される。
【0040】
以上のようにして、可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットを構成する一対の振動板の音響抵抗値を同じにすることによって、前後の双指向性が揃い、双指向特性が前後対称になる。この効果を実測によって表したものが図7で、(a)は比較のために振動板の音響抵抗値を測定することなく任意に組み合わせたもの、(b)は前後の振動板の音響抵抗値をそろえたものの指向特性を示している。横軸は入力される音声の周波数、縦軸は出力レベルで単位はdBVである。0°、180°、90°、270°とあるのは、前後方向の基準方向に対する角度で、0°を正面とすると背面は180°である。図7(a)と図7(b)を比較すると明らかなとおり、本発明の実施例によれば、0°と180°の前後方向の指向性がよく揃っており、また、90°と270°の横方向の指向性もよく揃っている。よって、前後のマイクロホンエレメントに印加する電圧を変化させ、あるいは電圧の極性を切り換えて指向性を可変しようとするとき、意図した指向性に設定することが容易である。
【0041】
以上説明した方法によって製造される可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットは、これをマイクロホンケースに組み込むことにより、図8に示すような可変指向性コンデンサーマイクロホンを得ることができる。これによって、前後に対をなすマイクロホンエレメントの各振動板は、音響抵抗値がほぼ同じになり、前後のマイクロホンエレメントの指向性がよく揃った可変指向性コンデンサーマイクロホンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかる製造方法を適用可能な可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの第1の例を示す縦断面図である。
【図2】上記可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの第1の例を分解して示す縦断面図である。
【図3】本発明にかかる製造方法を適用可能な可変指向性コンデンサーマイクロホンの第2の例を示す縦断面図である。
【図4】上記可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの第2の例を分解して示す縦断面図である。
【図5】本発明の製造方法に使用可能な音響抵抗測定装置の例を示す概略図である。
【図6】上記音響抵抗測定装置をより具体化した例を示す縦断面図である。
【図7】可変指向性コンデンサーマイクロホンユニットの指向性を示すもので、(a)は一対の振動体の音響抵抗を揃えない場合、(b)は一対の振動体の音響抵抗を揃えた場合の特性線図である。
【図8】本発明にかかる方法で製造されたマイクロホンユニットを備えた可変指向性コンデンサーマイクロホンの例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0043】
21 コンデンサーマイクロホンエレメント
22 振動板
23 振動板ホルダ
24 音響端子孔
25 電極
26 固定電極
27 前部カバー
28 音響端子孔
29 音響抵抗材
41 コンデンサーマイクロホンエレメント
42 振動板
43 振動板ホルダ
44 音響端子孔
45 電極
46 固定電極
47 全部カバー
48 音響端子孔
49 音響抵抗材
51 ガスケット
52 カプラー
60 ベース
61 音響端子孔
68 音響抵抗材
70 コンデンサーマイクロホンエレメント
71 振動板
72 振動板ホルダ
73 スペーサ
76 固定電極
80 コンデンサーマイクロホンエレメント
81 振動板
82 振動板ホルダ
83 スペーサ
86 固定電極
88 音響抵抗材
【出願人】 【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
【出願日】 平成18年9月11日(2006.9.11)
【代理人】 【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫


【公開番号】 特開2008−67286(P2008−67286A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−245582(P2006−245582)