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【発明の名称】 スピーカ、スピーカ用振動板の製造方法及びボイスコイルカバーの製造方法
【発明者】 【氏名】井関 隆之

【氏名】多田 琢

【氏名】鈴木 嘉昭

【要約】 【課題】プレス加熱成形による成形加工性及び量産性を損なうことなく、しかも、十分な面剛性の確保とそりを抑える。

【構成】木目のある木27からシート状に板どりした木製シート29とその木製シート29の一方の面に貼り合わされた補強シート31とからなる貼り合せシート33を有し、前記貼り合せシート33によって予め円錐形に作られた第1の振動板23と第2の振動板25を木製シート29、補強シート31、補強シート31、木製シート29の順に重ね合せた断面積層構造の組合せ振動板を備えた構造とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略円錐形状に成形した第1の振動板と、前記補強シートが外周面となる向きに略円錐形状に成形した第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて成形されてなる、積層構造の振動板を備えていることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートの一部分に中心部に向かってV字状に切り欠きした切欠き開口部の両端部を重ね合わせて前記補強シートが内周面となる向きに略円錐形状の第1の振動板を作る工程と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートの前記切欠き開口部の両端部を重ね合わせて略円錐形状の第2の振動板を作る工程と、プレス加熱成形により前記略円錐形状の第1の振動板と第2の振動板とを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせた略ラッパ形状の積層構造のスピーカ用振動板を作る工程を備えていることを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項3】
天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートからなる第1の振動板と第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造の振動板を備えていることを特徴とするスピーカ。
【請求項4】
天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形した第1の振動板と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形した第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造の振動板を備えていることを特徴とするスピーカ。
【請求項5】
天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートからなる第1の振動板と第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造のボイスコイルカバーを備えていることを特徴とするスピーカ。
【請求項6】
天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形した第1の振動板と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形した第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造のボイスコイルカバーを備えていることを特徴とするスピーカ。
【請求項7】
天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートによって作られた第1の振動板と第2の振動板とを、プレス加熱成形により木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせて略ドーム形状となる積層構造のスピーカ用振動板を作る工程とを備えていることを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項8】
天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートによって作られた第1の振動板と第2の振動板とを、プレス加熱成形により木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせて略ドーム形状となる積層構造のボイスコイルカバーを作る工程とを備えていることを特徴とするボイスコイルカバーの製造方法。
【請求項9】
天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形して第1の振動板を作る工程と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形して第2の振動板を作る工程と、プレス加熱成形により前記第1の振動板と第2の振動板とを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせた略ドーム状となる積層構造のスピーカ用振動板を作る工程とを備えていることを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項10】
天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形して第1の振動板を作る工程と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形して第2の振動板を作る工程と、プレス加熱成形により前記第1の振動板と第2の振動板とを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせて略ドーム状となる積層構造の組み合わせボイスコイルカバーを作る工程とを備えていることを特徴とするボイスコイルカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は自然の木を用いたスピーカとそのスピーカ用振動板及びボイスコイルカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スピーカの振動板の素材に自然の木を利用したものが知られている。
【0003】
振動板の素材に木を用いる理由としては、木が本来持っている自然な響きが得られることに加えて、見栄えの向上が図られるようになり高品質感を与える効果が得られるため振動板素材の1つとして注目されている。
【0004】
反面、自然の木を相手にするだけに問題も多く、特にシート状にした木製シートの強度面とそり対策があげられる。
【0005】
木製シートは、例えば、図8に示すように切り出された丸太状の木101からシート状に木製シート103を板どりする際に、木表105(木の中心に対して外側)と木裏107(木の中心に対して内側)とを有するようになり、時間の経過とともに図示の如く木表105に向かってそりが発生する。
【0006】
そのために、特許文献1に示す如くそのそりを小さく抑えることと木製シートの面剛性を確保するために木製シート103の木裏107面に不織布又は和紙等の補強シート101を貼りつけた貼り合せシートとする手段がとられている。
【特許文献1】特開平10−304492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貼り合せシートは、プレス加熱成形により例えば、円錐形の振動板に作られるようになるが、プレス加熱成形による成形加工の面及び量産性の面を考慮した時に木製シート103を必要以上に厚くできないのが現状である。
【0008】
一般には振動板の口径によっても異なるが、薄いものでは0.1mmのものを、厚いものでは0.6mmのものをそれぞれ使用するもので、貼り合せシートとすることで面剛性及びそりを抑える手段を採っている。それでもそりが発生するため十分なそり対策が求められていたものである。
【0009】
その解決方法のひとつとして、特開平5−83792号公報に、スライスされた木材と、該スライスされた木材の裏面に貼付された接着性の樹脂からなる不織布とから構成された複合シートが複数枚積層され、曲面形状に成形する方法、および、前記複合シートを柔軟化させ、柔軟化処理された前記複合シートを少なくとも2枚以上積層した後、加熱および加圧して成形して音響用振動板を製造する方法が開示されている。本方法では、厚い木製の振動板を成型する際に、薄い木材とその裏面に貼付された接着性の樹脂からなる不織布とから構成された複合シートを複数枚積層して所定の厚みとし、曲面成型時の割れを防いでコーン形状に成型するという方法である。しかしながら、曲面成型前に複合シートを積層接着されていると、木材に曲面加工したときに加わるひずみ量が層の位置によって(たとえば、コーン形状の内側の木材層と外側の木材層で)変わるため、複合シートであっても厚みが増すに従い、積層接着面にひずみが入り、割れの原因となる可能性がある。さらに、ひずみの力は成型後に元に戻ろうとする復元力が働きやすいため、経時変化で曲面形状が変形してしまう可能性もある。
【0010】
ところで、図9(a)は円錐状の振動板を平面から見たもので、(b)はX−X′,Y−Y′の初期状態を示したもの、(c)は複合シート1枚の時のX−X′,Y−Y′の複合シートで木目を90度交差させた経時変化を示したものであるが、木材と不織布とで構成された複合シート1枚で曲面形状に成型された振動板では、木材繊維の方向が1方向に向いているため、樹脂含浸など不十分であると、たとえば(c)のように、xもしくはyいずれかの1方向のみに経時変化で変形してしまう場合もある。また、前記した特開平5−83792号公報において、振動板5の機械的強度を上げたい場合には、複合シート4の木材繊維の方向を、縦と横の90°交差するように積層する方法が開示されているが、木材と不織布で構成された複合シートが同じ順序で積層されていれば、木材繊維の方向を交差させると変形の力が分散されるものの、(d)のように、x,y方向均等に変形を生じてしまう場合もありうる。
【0011】
そこで、本発明にあっては、見栄えの面でも優れると共にプレス加熱成形による成形加工性及び量産性を損なうことなく、しかも、十分な面剛性の確保とそりを抑えることができるようにしたスピーカ、スピーカ用振動板の製造方法及びボイスコイルカバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の第1は、天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略円錐形状に成形した第1の振動板と、前記補強シートが外周面となる向きに略円錐形状に成形した第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて成形されてなる、積層構造の振動板を備えていることを特徴とする。
【0013】
第2は、天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートの一部分に中心部に向かってV字状に切り欠きした切欠き開口部の両端部を重ね合わせて前記補強シートが内周面となる向きに略円錐形状の第1の振動板を作る工程と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートの前記切欠き開口部の両端部を重ね合わせて略円錐形状の第2の振動板を作る工程と、プレス加熱成形により前記略円錐形状の第1の振動板と第2の振動板とを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせた略ラッパ形状の積層構造のスピーカ用振動板を作る工程を備えていることを特徴とする。
【0014】
第3は、天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートからなる第1の振動板と第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造の振動板を備えていることを特徴とする。
【0015】
第4は、天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形した第1の振動板と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形した第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造の振動板を備えていることを特徴とする。
【0016】
第5は、天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートからなる第1の振動板と第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造のボイスコイルカバーを備えていることを特徴とする。
【0017】
第6は、天然木からなる木製シートとその一方の面に貼り合わされた補強シートとを有する貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形した第1の振動板と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形した第2の振動板とが、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わされて略ドーム状に成形されてなる、積層構造のボイスコイルカバーを備えていることを特徴とする。
【0018】
第7は、天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートによって作られた第1の振動板と第2の振動板とを、プレス加熱成形により木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせて略ドーム形状となる積層構造のスピーカ用振動板を作る工程とを備えていることを特徴とする。
【0019】
第8は、天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートによって作られた第1の振動板と第2の振動板とを、プレス加熱成形により木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせて略ドーム形状となる積層構造のボイスコイルカバーを作る工程とを備えていることを特徴とする。
【0020】
第9は、天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形して第1の振動板を作る工程と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形して第2の振動板を作る工程と、プレス加熱成形により前記第1の振動板と第2の振動板とを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせた略ドーム状となる積層構造のスピーカ用振動板を作る工程とを備えていることを特徴とする。
【0021】
第10は、天然木からなる木製シートに補強シートを貼り合わせた貼り合わせシートを前記補強シートが内周面となる向きに略ドーム状に成形して第1の振動板を作る工程と、前記補強シートが外周面となる向きに前記貼り合わせシートを略ドーム状に成形して第2の振動板を作る工程と、プレス加熱成形により前記第1の振動板と第2の振動板とを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順に重ね合わせて略ドーム状となる積層構造の組み合わせボイスコイルカバーを作る工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1及び第2におけるスピーカとその振動板の製造方法にあっては、予め円錐形に作られた第1の振動板と第2の振動板をそれぞれ重ね合わせて積層構造の組合せ振動板としたため、接合接着面にひずみが発生しにくくなるため、振動板全体の面剛性の確保とそりを確実に抑えることができると共に中音用、低音用のスピーカとして使用できる。
【0023】
また、成形加工性及び量産性を損なうことなく中音用、低音用の振動板を作ることができる。しかも、予め円錐形状に作られた第1,第2の振動板を重ね合わせるため、木製シートの板厚を薄いものでは従来の約半分のものが使用可能となるため、成形加工精度の高いプレス加熱成形が得られると共に両面が木目調の木製シートによって見栄えの向上を図りながら、そりを確実に抑えることができるようになる。
【0024】
また、本発明の第3及び第4におけるスピーカにあっては、予めドーム形状に作られた第1と第2の振動板を重ね合わせた積層構造の組合せ振動板としたため、両面が木目調の木製シートによって見栄えの向上を図りながら振動板全体の面剛性の確保とそりを確実に抑えることができると共に高音用スピーカとして使用できる。
【0025】
また、本発明の第5及び第6におけるスピーカにあっては、両面が木目調の木製シートによってボイスコイルカバーの見栄えの向上を図りながら面剛性の確保とそりを確実に抑えることができる。
【0026】
また、本発明の第7から第10におけるスピーカ用振動板及びボイスコイルカバーの製造方法にあっては、予めドーム形状に作られた第1と第2の振動板をプレス加熱成形により重ね合せた積層構造にできるため、成形加工性及び量産性を損なうことなく高音用の振動板及びボイスコイルカバーをそれぞれ作ることができる。しかも、両面が木目調の木製シートによって振動板及びボイスコイルカバーの見栄えの向上を図りながら全体の面剛性の確保と、そりを確実に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1乃至図4の図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について具体的に説明する。
【0028】
図1は本発明にかかる中音用と低音用に使用されるスピーカを示している。スピーカ1はハウジング3内に配置された振動板5と、その振動板5の中心部位に設けられたボイスコイル7と、そのボイスコイル7を介して前記振動板5を駆動する振動板駆動装置9とを有している。
【0029】
振動板5の外周縁は、その全周縁にわたって装着された弾性変形可能なゴムエッジ11及びそのゴムエッジ11の端部を抑える環状の矢紙13を介して前記ハウジング3に固定支持されている。ボイスコイル7はボイスコイルカバー15によってカバーされると共に前記振動板5の中心部位に配置固定され可動運動可能なダンパ17を介して前記ハウジング3に支持されている。振動板駆動装置9は、前記ボイスコイル7内にポール19aが臨む磁気回路部19と、その磁気回路部19に装着されたドーナツ状のマグネット21とからなり、図外からの入力信号に基づきマグネット21はボイスコイル7に対して矢印方向の駆動力を与えるようになる。
【0030】
一方、振動板5は、図2,図3に示すように第1の振動板23と第2の振動板25が重ね合わされた積層構造の組合せ振動板となっていて、中音用、低音用に用いる断面円錐形となっている。
【0031】
第1、第2の振動板23,25は、図6に示す如く天然木である丸太状の木目のある木27からシート状に板どりされた木製シート29の一方の面に不織布又は和紙等からなる補強シート31を貼り合わせた貼り合せシート33によって作られている。
【0032】
木製シート29は、丸太状の木27からシート状に板どりする時に、例えば、薄いものでは従来の約半分となる0.05mmのものを、厚いものでは0.6mmのものがそれぞれ用いられている。
【0033】
貼り合せシート33によって予め円錐形に作られた第1,第2の振動板23,25の重ね合せ方向は、図2,図3に示す如く木製シート29、補強シート31、補強シート31、木製シート29の順となっている。
【0034】
次に、図4に基づき前記スピーカ1の振動板製造方法について説明する。
【0035】
まず、丸太状に切り出した木27からスライスしてシート状の木製シート29を作る(1−a,1−b)。この時、木製シート29の板厚は振動板5の口径によっても異なるが、薄いものでは従来の約半分となる0.05mmのものを、厚いものでは従来と同様に0.6mのものを使用し、その一方の面に不織布又は和紙等の補強シート31を貼り付けて貼り合せシート33を作る(1−d)。
【0036】
次に、貼り合せシート33の一部分にV字状の切欠開口部35を設けた後、切欠開口部35の両端部35a,35bを重ね合せて仮り止めした状態の第1の振動板23、第2の振動板25を潤滑剤(または浸透剤)の入った溶液中37に浸す(1−e,1−f)。なお、第1の振動板23は木材面が円錐状の内側面に来るように仮止めし、第2の振動板25は木材面が円錐状の外側面に来るよう仮止めする。これにより、第1の振動板23、第2の振動板25は柔らかくなるから、その第1,第2の振動板23,25をヒータ39等の加熱手段を備えた雄型41と雌型43からなるプレス機45にセットし、別々に仮成形する。その後、仮成型された第1,第2の振動板23,25を熱硬化性などの樹脂に含浸し、前記第1,第2の振動板23,25が木製シート29、補強シート31、補強シート31、木製シート29となる組合せとなるよう重ね合せ再度プレス機にセットして2枚の振動板を熱硬化性樹脂で積層接着するとともに、振動板全体を熱硬化性樹脂で固めて曲面形状を安定させる(1−g)。
【0037】
なお、木製シートが0.1〜0.2mm程度に薄い場合は、必ずしも潤滑剤に浸して柔らかくする必要はない。その場合は、第1および第2の振動板23,25を直接熱硬化性樹脂に含浸させ、これらを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順になるように重ね合わせてプレス機にセットし、熱プレスすることで熱硬化性樹脂で固めて曲面成型すればよい。
【0038】
次に、プレス完了後の振動板5の外径処理及び中心にボイスコイル用の孔47を開口させることで完成した中音用又は低音用となる円錐形の振動板5が得られる(1−h)。
【0039】
中音用又は低音用に作られた振動板5は、木製シート29、補強シート31、補強シート31、木製シート29の順に重ね合わされた積層構造の組合せ振動板となるため、振動板全体の面剛性の確保とそりを確実に抑えることができる。しかも、木目のある木製シート29は内側,外側に配置されるため外観品質の面でも大変好ましいものとなる。このように、第1および第2の振動板23,25は、予め曲面に変形させた後で積層接着させるので、2枚の積層面でのひずみは小さくなり、形状が安定しやすい。
【0040】
さらに、第1および第2の振動板23,25は逆の面(内側、外側)を向いて積層されているので、木材繊維の方向を同じ向きになるように重ねて成型すると、表裏のひずみの方向が相殺され、形状が安定し、経時変化による振動板のゆがみを防ぐことができる。
【0041】
図5は振動板49を断面ドーム状に形成した高音用スピーカ1−Aの第2の実施形態を示したものである。
【0042】
振動板49は、第1の振動板23と第2の振動板25が重ね合わされた積層構造の組合せ振動板となっていることは第1の実施形態と同一で、異なるところは円錐形にかわって高音用に用いる断面ドーム状に形成されている点である。
【0043】
第1,第2の振動板23,25は、図7に示す如く丸太状の木目のある木27からシート状に板どりされた木製シート29の一方の面に不織布又は和紙等からなる補強シート31を貼り合わせた貼り合せシート33によって作られている。
【0044】
木製シート29は、丸太状の木27からシート状に板どりする時に、例えば、薄いものでは従来の約半分となる0.05mmのものを、厚いものでは0.6mmのものがそれぞれ用いられている。
【0045】
貼り合せシート33によって作られた第1,第2の振動板23,25の重ね合せ方向は、図6に示す如く木製シート29、補強シート31、補強シート31、木製シート29の順となっている。
【0046】
なお、高音用スピーカ1−Aは振動板49の外にハウジング3に設けられた振動板駆動装置9を有することは第1の実施形態と同一である。
【0047】
次に、図7に基づき前記スピーカ1の振動板製造方法について説明する。
【0048】
まず、天然木である丸太状に切り出した木27からスライスしてシート状の木製シート29を作る(1−a,1−b)。この時、木製シート29の板厚は振動板5の口径によっても異なるが、薄いものでは従来の約半分となる0.05mmのものを、厚いものでは従来と同様に0.6mmのものを使用し、その一方の面に不織布又は和紙等の補強シート31を貼り付けて貼り合せシート33を作る(1−d)。
【0049】
次に、貼り合せシート33によって作られた第1の振動板23、第2の振動板25を潤滑剤(または浸透剤)の入った溶液中37に浸す(1−e,1−f)。これにより、第1の振動板23、第2の振動板25は柔らかくなるから、その第1,第2の振動板23,25をヒータ39などの加熱手段を備えたプレス機にセットし、別々にドーム状に仮成型する。その際、第1の振動板23はドーム表面に木材面が来るように仮成型し、第2の振動板25は逆にドーム裏面に木材面が来るように仮成型する(1−g)。その後、仮成型された第1および第2の振動板23,25を熱硬化性などの樹脂に含浸し、前記第1の振動板23と第2の振動板25を、木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順になるように重ね合わせ、再度プレス機にセットして2枚の振動板を熱硬化性樹脂で積層接着するとともに、振動板全体を熱硬化性樹脂で固めて曲面形状を安定させる。
【0050】
なお、木製シートが0.1〜0.2mm程度に薄い場合は、必ずしも潤滑剤に浸して柔らかくする必要はない。その場合は、第1および第2の振動板23,25を直接熱硬化性樹脂に含浸させ、これらを木製シート・補強シート・補強シート・木製シートの順になるように重ね合わせてプレス機にセットし、熱プレスすることで熱硬化性樹脂で固めて曲面成型すればよい。
【0051】
次に、プレス完了後の振動板49の外径処理を行なうことで高音用となる断面ドーム状に形成された振動板49が得られる(1−h)。
【0052】
高音用に作られた振動板49は、木製シート29、補強シート31、補強シート31、木製シート29の順に重ね合わされた積層構造の組合せ振動板となるため、振動板全体の面剛性の確保とそりを確実に抑えることができる。しかも、木目のある木製シート29は内側,外側に配置されるため外観品質の面でも大変好ましいものとなる。
【0053】
一方、高音用に作られた振動板49は、断面ドーム状に形成されるところから、図1に示すボイスコイルカバー15として使用してもよい。ボイスコイルカバー15はスピーカ1の作動中振動するため、断面ドーム状に作られた振動板49をそのまま流用することで、もっとも適したボイスコイルカバーとなる。しかも、別途専用のボイスコイルカバーを作る必要がなくなり、コストの面でも大変好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる断面円錐形の振動板を用いたスピーカの第1の実施形態を示した概要切断説明図。
【図2】第1の振動板と第2の振動板の重ね合わせ方向を示した概要斜視図。
【図3】組合せ振動板とした図2の一部分の断面説明図。
【図4】円錐形のスピーカ用振動板を作る工程を示した概要説明図。
【図5】断面ドーム形状の振動板を用いたスピーカの第2の実施形態を示した概要切断説明図。
【図6】断面ドーム形状の振動板の組合せ断面を示した説明図。
【図7】断面ドーム形状のスピーカ用振動板を作る工程を示した概要説明図。
【図8】丸太状の木から木製シートを板どりした時にそりが発生する状態を示した概要説明図。
【図9】従来例のひずみがあらわれる状態を示した概要説明図。
【符号の説明】
【0055】
5…断面円錐の振動板
15…ボイスコイルカバー
23…第1の振動板
25…第2の振動板
27…木目のある木
29…木製シート
31…補強シート
33…貼り合せシート
35…切欠開口部
45…プレス機
49…断面ドーム状の振動板
【出願人】 【識別番号】000004329
【氏名又は名称】日本ビクター株式会社
【出願日】 平成18年9月6日(2006.9.6)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一


【公開番号】 特開2008−66959(P2008−66959A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−241495(P2006−241495)