トップ :: H 電気 :: H04 電気通信技術




【発明の名称】 スピーカ用振動板の製造方法
【発明者】 【氏名】井関 隆之

【氏名】多田 琢

【氏名】鈴木 嘉昭

【要約】 【課題】成形加工性を損なうことなく木製シートのみで作られたスピーカ用振動板を確保する。

【構成】木目のある木から板どりした木製シート3の一方の面に補強シート7を貼り合せて貼り合せシート9を作る工程と、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木からなる木製シートの一方の面に補強シートを貼り合せた貼り合せシートをプレス加熱成形によりラッパ形状又はドーム形状の仮振動板に成形する工程と、
前記仮振動板の一方の面である補強シート面にシート除去手段を作用させて補強シートを除去すると共に、仮振動板の外形抜きを行なって所定寸法に仕上げスピーカ振動板を得る補強シート除去工程と、を有することを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項2】
前記補強シート除去手段は、補強シート面に刃先を作用させて取り除く切削装置であることを特徴とする請求項1記載のスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項3】
前記補強シート除去手段は、補強シート面に研磨面を作用させて取り除く研磨装置であることを特徴とする請求項1記載のスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項4】
前記補強シート除去手段は、補強シート面に粒子を作用させて取り除くサンドブラスト装置であることを特徴とする請求項1記載のスピーカ用振動板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は自然の木を用いたスピーカ用振動板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スピーカの振動板の素材に自然の木を利用したものが知られており、振動板としては低音用及び中音用のラッパ形状タイプと高音用のドーム形状タイプがある。
【0003】
振動板の素材に木を用いる理由としては、木が本来持っている自然な響きが得られることに加えて、見栄えの向上が図れるようになり高品質を与える効果が得られるため振動板の素材の1つとして注目されている。
【0004】
反面、自然の木を相手にするだけに問題も多く、その1つとして、例えば、ラッパ形状に、あるいは、ドーム形状にプレス加熱成形するところから成形性の面が上げられる。
【0005】
特に、プレス加熱成形を行なうところから、それを考慮して一般には丸太状の木から薄くスライスした木製シートが使用される。
【0006】
薄い木製シートはプレス加熱成形加工の面で優れる反面損傷が起き易いところから、それを防ぐために木製シートに不織布などで構成される補強シートを貼り合せた貼り合せシートとすることで木製シートの強度対策を行なっている。
【特許文献1】特開平10−304492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
木製シートに補強シートを貼り合せた貼り合せシートとすることで木製シートがラッパ状もしくはドーム状の成形時に破損するという問題が解消されるものの、貼り合せシートとすることでその補強シートが振動特性に影響を与え、木の持つ本来の自然な音の再生が難しくなる場合がある。
【0008】
そこで、本発明にあっては、成形加工性を損なうことなく木が本来持っているより自然な音の再生音を追求したスピーカ用振動板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、天然木からなる木製シートの一方の面に補強シートを貼り合せた貼り合せシートをプレス加熱成形によりラッパ形状又はドーム形状の仮振動板に成形する工程と、
前記仮振動板の一方の面である補強シート面にシート除去手段を作用させて補強シートを除去すると共に、仮振動板の外形抜きを行なって所定寸法に仕上げスピーカ振動板を得る補強シート除去工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
この時の具体的な前記補強シート除去手段の第1としては、補強シート面に刃先を作用させて取り除く切削装置がある。第2としては、補強シート面に研磨面を作用させて取り除く研磨装置がある。第3としては、補強シート面に粒子を勢いよく作用させて取り除くサンドブラスト装置がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、木製シートは補強シートにより貼り合せシートとなるため、強度が確保された薄いシート状にできるようになり成形加工性を損なうことなくラッパ形状、ドーム形状のスピーカ用振動板を作ることができる。しかも、一連の加工工程時において損傷も起きることはない。
【0012】
一方、振動板の成形後は、木製シート部分を大きく変形させる工程はないので、補強シート除去工程によって貼り合せシートから補強シートを取り除いても振動板が破損することはなく、振動板は純粋な木製シートで構成されるようになり、木が持つ本来の自然な音の再生が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1乃至図3の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0014】
図1は低音用、中音用に用いられるラッパ形状のスピーカ用振動板の概要断面図、図2は概要斜視図をそれぞれ示している。
【0015】
振動板1は自然の木からシート状に板どりされた木製シート3によって作られ、木が持つ本来の自然な響きが確保されている。
【0016】
木製シート3による振動板1の具体的な作り方を図3に示す。
【0017】
まず、丸太状に切り出した木5からスライスしてシート状の木製シート3(厚さは、例えば0.1〜0.6mm)を作る(1−a,1−b)。次に木製シート3の一方の面に不織布又は和紙等の補強シート7を貼り合せて貼り合せシート9を作る(1−c,1−d)。なお、貼り合せの強度は、後工程での補強シート7の除去を考慮し、加熱成形工程では剥れにくく、かつ、補強シートの取除きに支障を来たさない程度の強度とする。
【0018】
次に、貼り合せシート9の一部分に頂点が貼り合せシート9の略中心に至るように木製シート3の木目方向に略沿ってV字状の切欠開口部11を設けた後、切欠開口部11の両端部11a,11bを重ね合せて仮り止めした円錐形状の初期仮振動板1Aを作る。この時、外側が補強シート7,内側が木製シート3となるよう円錐形状に作り、その初期仮振動板1Aを湿潤剤(又は浸透剤)の入った溶液13中に浸す(1−e,1−f)。
【0019】
これにより、初期仮振動板1Aは柔らかくなるからヒータ等の加熱手段15を備えた雄型17と雌型19からなるプレス機21によりプレス加熱成形し最終仮振動板1Bを作る(1−g,1−h)。
【0020】
次に、最終仮振動板1Bを乾燥させた後、切削装置23の回転体25にセットし、回転する外側の補強シート7のシート面に対して回転する方向と直交するよう丸刃状の回転刃27を矢印の如く往復移動させることで補強シート7を取り除く(1−i)。
【0021】
この場合、補強シート7を取り除くにあたって必ずしも回転刃タイプでなくてもよい。例えば、図4に示すように回転方向(矢印)に対して刃先29が合せ目31と逆らうことなく90°以内として補強シート7のシート面に作用させる切削刃タイプの切削装置23であってもよい。あるいは、図5に示すように細かい粒子をスプレーガン29によって勢いよく補強シート7に噴射作用させることで補強シート7を取り除くサンドブラスト装置31であってもよい。
【0022】
次に、補強シート7が取り除かれた最終仮振動板1Bの外径処理及び中心にボイスコイル用の孔33を開口させることで低音用又は中音用となるラッパ状のスピーカ用振動板1が得られる(1−j)。
【0023】
この時のスピーカ用振動板1は、補強シート7が取り除かれた純粋な木製シート3のみによって形成されるため木が持つ本来の自然な音の再生が行なえるようになる。
【0024】
図6は高音用のドーム形状のスピーカ用振動板1を示している。
【0025】
高音用の振動板1は自然の木からシート状に板どりされた木製シート3によって作られることは前記した低・中音用の振動板1と同一で、木が持つ本来の自然な響きが確保されている。
【0026】
具体的にドーム形状の仮振動板1の製造方法について図7に基づき説明すると、まず、丸太状に切り出した木5からスライスしてシート状の木製シート3を作る(1−a,1−b)。次に、木製シート3の一方の面に不織布又は和紙等の補強シート7を貼り付けて貼り合せシート9を作る(1−c,1−d)。
【0027】
次に、貼り合せシート9によって作られた仮振動板1Aを潤滑剤(または浸透剤)の入った溶液中13に浸す(1−e)。これにより、仮振動板1Aは柔らかくなるから、その仮振動板1Aをヒータ35等の加熱手段を備えた雄型37と雌型39からなるプレス機41にセットし、外側が補強シート7、内側が木製シート3となるようプレスする(1−f)。
【0028】
次に仮振動板1Aを乾燥させた後、研磨装置45の回転体47にセットし、回転する外側の補強シート7のシート面に研磨治具49を作用させて補強シート7を取り除く(1−g)。
【0029】
この場合、補強シート7を取り除く手段は前記した切削装置23又はサンドブラスト装置31を用いてもよい。
【0030】
次に、補強シート7が取り除かれた仮振動板1Aの外径処理を行なうことで高音用のドーム形状のスピーカ振動板1が得られる。
【0031】
この時のスピーカ用振動板1は、補強シート7が取り除かれた純粋な木製シート3のみによって形成されるため木の持つ本来の自然な音の再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる低音用、中音用のスピーカ振動板を示した概要切断説明図。
【図2】図1のスピーカ用振動板の概要斜視図。
【図3】図1のスピーカ用振動板の製造方法を示した概要説明図。
【図4】補強シート除去手段の切削刃タイプを示した概要説明図。
【図5】補強シート除去手段のサンドブラストタイプを示した概要説明図。
【図6】高音用のスピーカ用振動板を示した概要説明図。
【図7】高音用のスピーカ用振動板の製造方法を示した概要説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 スピーカ用振動板
1A 仮振動板
3 木製シート
5 丸太状の木
7 補強シート
9 貼り合せシート
23 切削装置(シート除去手段)
【出願人】 【識別番号】000004329
【氏名又は名称】日本ビクター株式会社
【出願日】 平成18年9月4日(2006.9.4)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一


【公開番号】 特開2008−61174(P2008−61174A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−238788(P2006−238788)