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【発明の名称】 単一指向性マイクロホン
【発明者】 【氏名】岩城 正和

【氏名】大久保 洋幸

【氏名】杉本 岳大

【要約】 【課題】音源との距離に応じて近接効果の影響を抑制することのできる単一指向性マイクロホンを提供する。

【構成】全方位から伝来する音声に対して均一感度を有する全指向性マイクロホン11と、全指向性マイクロホン11に近接して配置され、前方および後方から伝来する音声に対して感度を有し、側方から伝来する音声に対して感度を有しない双指向性マイクロホン12と、全指向性マイクロホン11の出力と双指向性マイクロホン12の出力とに基づいて前方から伝来する音声を抽出する前方音声抽出部13とを含み、前方音声抽出部13は、音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離dに応じて、双指向性マイクロホン12の近接効果を抑制する近接効果抑制部131と、近接効果抑制後の双指向性マイクロホン12の出力を全指向性マイクロホン11の出力から減算する減算部132とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方位から伝来する音声に対して均一感度を有する全指向性マイクロホンと、
前記全指向性マイクロホンに近接して配置され、前方および後方から伝来する音声に対して感度を有し、側方から伝来する音声に対して感度を有しない双指向性マイクロホンと、
前記全指向性マイクロホンの出力と前記双指向性マイクロホンの出力とに基づいて、前方から伝来する音声を抽出する前方音声抽出部とを含む単一指向性マイクロホンであって、
前記前方音声抽出部が、
音声を発する音源と前記双指向性マイクロホンとの間の距離に応じて、前記双指向性マイクロホンの近接効果を抑制する近接効果抑制部と、
近接効果抑制後の前記双指向性マイクロホンの出力を前記全指向性マイクロホンの出力から減算する減算部とを含む単一指向性マイクロホン。
【請求項2】
前記前方音声抽出部が、
前記音源と前記双指向性マイクロホンとの距離を測定する距離測定部を含む請求項1に記載の単一指向性マイクロホン。
【請求項3】
前記近接効果抑制部が、
前記距離測定部により測定された距離の関数として遮断周波数が決定される低域遮断型一次フィルタである請求項1または請求項2に記載の単一指向性マイクロホン。
【請求項4】
前記近接効果抑制部が、
前記双指向性マイクロホンの出力を周波数領域双指向性マイクロホン出力に変換するフーリエ変換部と、
前記音源と前記双指向性マイクロホンとの間の距離に応じて周波数領域双指向性マイクロホンの近接効果を周波数領域で抑制する周波数領域近接効果抑制手段と、
周波数領域近接効果抑制後の前記双指向性マイクロホンの出力をフーリエ逆変換するフーリエ逆変換部とを含む請求項1または請求項2に記載の単一指向性マイクロホン。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、単一指向性マイクロホンに係り、特に、音源との距離に応じて近接効果の影響を抑制することの可能な単一指向性マイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロホンの前方から伝来する音声に感応する単一指向性マイクロホンは、マイクロホンの全方位から伝来する音声に対して感応する全指向性マイクロホンとマイクロホンの前方および後方から伝来する音声に対して感応する双指向性マイクロホンを組み合わせて構成することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
双指向性マイクロホンを点音源に近接させた場合は、振動板に到達する音波は球面波となり、遠方から到達する平面状音波に比較して音圧傾度が急峻となるため、双指向性マイクロホンの前方および後方の音圧感度が低周波域で上昇する近接効果を有する。
【0004】
図7は近接効果を示すグラフであって、音源とマイクロホンとの距離が7.5センチメートルである場合には、200Hzのマイクロホンの出力レベルは実際よりも約11デシベル大きくなる。
【0005】
全指向性マイクロホンは近接効果の影響を受けないが、全指向性マイクロホンと双指向性マイクロホンとを組み合わせた単一指向性マイクロホンは近接効果の影響を受けることとなる。
【0006】
そこで、近接効果を補正するイコライザを内蔵した単一指向性マイクロホンも既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
即ち、上記提案に係る単一指向性マイクロホンは、イコライザにより双指向性マイクロホンの出力の周波数特性を無指向性マイクロホンの出力の周波数特性と一致させた後、単一指向性マイクロホンおよび双指向性マイクロホンの出力を後方から伝来する音声に対する感度が相殺されるように組み合わせている。
【特許文献1】特開平4−58699号公報(3頁、第1図)
【非特許文献1】兼六館出版刊「マイクロホン・スピーカー談義」田中茂良著、pp20〜21
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている単一指向性マイクロホンにあっては、イコライザの周波数特性は固定であった。
【0009】
このため、マイクロホンと音源との間の距離が変化した場合には、近接効果を適切に抑制できない場合があった。例えば、マイクロホンと音源との間の距離が大である場合には、マイクロホンの後方から伝来する音声の低周波成分が必要以上に低減されるという課題があった。一方、マイクロホンと音源との間の距離が小である場合には、近接効果によって上昇したマイクロホンの出力の低周波成分を十分に低減できないという課題があった。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであって、音源との距離に応じて近接効果の影響を抑制することのできる単一指向性マイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の単一指向性マイクロホンは、全方位から伝来する音声に対して均一感度を有する全指向性マイクロホンと、前記全指向性マイクロホンに近接して配置され、前方および後方から伝来する音声に対して感度を有し、側方から伝来する音声に対して感度を有しない双指向性マイクロホンと、前記全指向性マイクロホンの出力と前記双指向性マイクロホンの出力とに基づいて、前方から伝来する音声を抽出する前方音声抽出部とを含む単一指向性マイクロホンであって、前記前方音声抽出部が、音声を発する音源と前記双指向性マイクロホンとの間の距離に応じて、前記双指向性マイクロホンの近接効果を抑制する近接効果抑制部と、近接効果抑制後の前記双指向性マイクロホンの出力を前記全指向性マイクロホンの出力から減算する減算部とを含む構成を有している。
【0012】
この構成により、音源との距離に応じて双指向性マイクロホンの近接効果を抑制することができることとなる。
【0013】
本発明の単一指向性マイクロホンは、前記前方音声抽出部が、前記音源と前記双指向性マイクロホンとの距離を測定する距離測定部を含む構成を有している。
【0014】
この構成により、音源と双指向性マイクロホンとの距離を測定することができることとなる。
【0015】
本発明の単一指向性マイクロホンは、前記近接効果抑制部が、前記距離測定部により測定された距離の関数として遮断周波数が決定される低域遮断型一次フィルタである構成を有していてもよい。
【0016】
本発明の単一指向性マイクロホンは、前記近接効果抑制部が、前記双指向性マイクロホンの出力を周波数領域双指向性マイクロホン出力に変換するフーリエ変換部と、前記音源と前記双指向性マイクロホンとの間の距離に応じて周波数領域双指向性マイクロホンの近接効果を周波数領域で抑制する周波数領域近接効果抑制手段と、周波数領域近接効果抑制後の前記双指向性マイクロホンの出力をフーリエ逆変換するフーリエ逆変換部とを含む構成を有していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、音源と双指向性マイクロホンとの距離を測定する距離測定部を設けることにより、音源との距離に応じて近接効果の影響を抑制することができるという効果を有する単一指向性マイクロホンを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る単一指向性マイクロホンの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
なお、全指向性マイクロホンおよび双指向性マイクロホンと収音対象とする音源との距離はそれぞれ等しくなるように設置されているものとする。
【0020】
本発明に係る単一指向性マイクロホン1は、図1のブロック図に示すように、全方位から伝来する音声に対して均一感度を有する全指向性マイクロホン11と、全指向性マイクロホン11に近接して配置され、前方および後方から伝来する音声に対して感度を有し側方から伝来する音声に対して感度を有しない双指向性マイクロホン12と、全指向性マイクロホン11の出力と双指向性マイクロホン12の出力とに基づいて前方から伝来する音声を抽出する前方音声抽出部13とを含む。
【0021】
そして、前方音声抽出部13は、音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離dに応じて、双指向性マイクロホン12の近接効果を抑制する近接効果抑制部131と、近接効果抑制後の双指向性マイクロホン12の出力を全指向性マイクロホン11の出力から減算する減算部132とを含む。
【0022】
また、前方音声抽出部13は、音源Sと双指向性マイクロホン12との距離を測定する距離測定部133を含んでいてもよい。
【0023】
そして、近接効果抑制部131は、音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離dの関数として遮断周波数が決定される低域遮断型一次フィルタである。
【0024】
図2は、本発明の実施形態のハードウエア構成を示すブロック図であって、単一指向性マイクロホン1は全指向性マイクロホン11と、双指向性マイクロホン12と、距離測定器16と、操作部17と、マイクロプロセッサ2とから構成される。
【0025】
マイクロプロセッサ2は、全指向性マイクロホン用アナログ・ディジタル変換部21と、双指向性マイクロホン用アナログ・ディジタル変換部22と、入力インターフェイス部(以下入力I/F部と記す)23と、ディジタル・アナログ変換部24と、CPU25と、記憶部26とがバス27を介して相互に結合された構成を有する。
【0026】
全指向性マイクロホン用アナログ・ディジタル変換部21には全指向性マイクロホン11が、双指向性マイクロホン用アナログ・ディジタル変換部22には双指向性マイクロホン12が、入力I/F部23には距離測定器16および操作部17がそれぞれ接続される。
【0027】
ディジタル・アナログ変換部24は、単一指向性マイクロホン1の出力として、前方から伝来する音声を出力する。
【0028】
なお、距離測定器16としては、音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離を測定するものであって、超音波式、光式、レーザー光式等周知の距離測定器を使用することができる。
【0029】
そして、近接効果抑制部131および減算部132は、マイクロプロセッサ2にインストールされる前方音声抽出ルーチンによりマイクロプロセッサ2内に構成される。
【0030】
以下に、前方音声抽出ルーチン、および、距離測定器16の測定結果に基づいて近接効果特性を決定する近接効果特性決定ルーチンのフローチャートを参照しつつ、本発明に係る単一指向性マイクロホンの動作を説明する。
【0031】
図3は、近接効果特性決定ルーチンのフローチャートであって、本発明に係る単一指向性マイクロホン1による収音に先立って実行される。
【0032】
CPU25は、距離測定器16により測定された音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離dを読み込み(ステップS31)、図4に示すような距離dに応じて定まる近接効果特性を決定する(ステップS32)。
【0033】
なお、音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離dを、距離測定器16で測定せずに、操作部17を使用してユーザが設定するようにしてもよい。
【0034】
図4は、距離dをパラメータとする近接効果特性のグラフであって、横軸は周波数を、縦軸は減衰率を表す。例えば、音源Sと双指向性マイクロホン12との間の距離dが7.5センチメートルであるときの近接効果特性は、遮断周波数が1KHzである低域遮断型一次フィルタの特性となる。
【0035】
図5は、本発明に係る単一指向性マイクロホン1による収音時に所定時間Δtごとの割り込み処理として実行される第1の前方音声抽出ルーチンのフローチャートである。
【0036】
CPU25は、全指向性マイクロホン11の出力mo(t)を読み込み(ステップS51)、双指向性マイクロホン12の出力md(t)を読み込む(ステップS52)。
【0037】
次に、CPU25は、双指向性マイクロホン12の出力md(t)に含まれる近接効果によって上昇した低周波成分を近接効果特性決定ルーチンで決定された近接効果特性を使用して抑制する(ステップS53)。
【0038】
CPU25は、単一指向性マイクロホン1の前方から伝来する音声に対する全指向性マイクロホン11および双指向性マイクロホン12の感度が同一となるように双指向性マイクロホン12の出力を補正したのち(ステップS54)、全指向性マイクロホン11の出力mo(t)から出力補正後の双指向性マイクロホン12の出力md’(t)を減算して前方音声mf(t)を抽出する(ステップS55)。
【数1】


【0039】
最後に、CPU25は、前方音声mf(t)を出力してこのルーチンを終了する(ステップS56)。
【0040】
図6は、第2の前方音声抽出ルーチンのフローチャートである。
【0041】
CPU25は、全指向性マイクロホン11の出力mo(t)を読み込み(ステップS61)、双指向性マイクロホン12の出力md(t)を読み込む(ステップS62)。
【0042】
次に、CPU25は、双指向性マイクロホン12の出力md(t)をフーリエ変換して周波数領域双指向性マイクロホン出力Md(ω)に変換し(ステップS63)、周波数領域双指向性マイクロホン出力Md(ω)に含まれる近接効果によって上昇した低周波成分を近接効果特性決定ルーチンで決定された近接効果特性を使用して周波数領域で抑制する(ステップS64)。
【0043】
CPU25は、近接効果抑制後の周波数領域双指向性マイクロホン出力Md’(ω)を逆フーリエ変換して近接効果抑制後の時間領域双指向性マイクロホン出力md’(t)を算出する(ステップS65)。
【0044】
そして、CPU25は、単一指向性マイクロホン1の前方から伝来する音声に対する全指向性マイクロホン11および双指向性マイクロホン12の感度が同一となるように双指向性マイクロホン12の出力を補正したのち(ステップS66)、全指向性マイクロホン11の出力mo(t)から出力補正後の双指向性マイクロホン12の出力md’(t)を減算して前方音声mf(t)を抽出する(ステップS67)。
【0045】
最後に、CPU25は、前方音声mf(t)を出力してこのルーチンを終了する(ステップS68)。
【0046】
上記では、マイクロプロセッサを使用して近接効果を補償しているが、既に説明したように、近接効果特性は低域遮断型一次フィルタの特性と同一であるので、双指向性マイクロホン12の後段に可変抵抗とコンデンサとで構成した低域遮断型一次フィルタを設置し、音源との距離に応じて可変抵抗の抵抗値を変更して遮断周波数を調整するようにしてもよい。
【0047】
以上説明したように、本発明に係る単一指向性マイクロホンによれば、音源からの距離が変動する状況であっても近接効果を抑制して前方音声を収音することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係る単一指向性マイクロホンは、音源との距離に応じて近接効果特性を変更することにより近接効果を効果的に抑制できるという効果を有し、指向性マイクロホンとして有効である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る単一指向性マイクロホンの機能構成を示すブロック図
【図2】本発明に係る単一指向性マイクロホンのハードウエア構成を示すブロック図
【図3】本発明に係る単一指向性マイクロホンで実行される近接効果特性決定ルーチンのフローチャート
【図4】距離dをパラメータとする近接効果特性を示すグラフ
【図5】本発明に係る単一指向性マイクロホンで実行される第1の前方音声抽出ルーチンのフローチャート
【図6】本発明に係る単一指向性マイクロホンで実行される第2の前方音声抽出ルーチンのフローチャート
【図7】近接効果を示すグラフ
【符号の説明】
【0050】
1 単一指向性マイクロホン
11 全指向性マイクロホン
12 双指向性マイクロホン
13 前方音声抽出部
131 近接効果抑制部
132 減算部
133 距離測定部
【出願人】 【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
【出願日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【代理人】 【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎


【公開番号】 特開2008−60902(P2008−60902A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−235251(P2006−235251)