| 【発明の名称】 |
指向性アレーマイクロホンおよび指向性アレースピーカ |
| 【発明者】 |
【氏名】西川 清
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| 【要約】 |
【課題】アレーサイズが小さくても、より低音域まで高音域と同一の指向特性を有するとともに、よりビーム幅の狭い単一指向特性を有する指向性アレーマイクロホンを提供する。
【構成】x軸およびy軸に沿って配列されたマイクロホンアレー2と、第1および第2の2次元FIRフィルタ12,13とがカスケードに接続されることによって、第1の2次元FIRフィルタ12ではy軸方向に対応した指向性が得られ、第2の2次元FIRフィルタ13ではx軸方向に対応した指向性が得られる。これらの2次元FIRフィルタ12,13は、振幅特性を時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、空間周波数軸に平行な断面での通過域が、一方の非物理領域からその非物理領域に隣接する物理領域の一部にかけて形成され、かつ物理領域よりも非物理領域で大きな振幅を有するように構成される。この結果、指向特性の広帯域化が図られる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一平面上で互いに交差する第1および第2の方向に沿って配列された複数のマイクロホンから成るマイクロホンアレーと、 前記第1の方向に沿って配列される複数のマイクロホンから成るマイクロホン列毎に設けられ、前記各マイクロホン列を構成する複数のマイクロホンから出力された信号に対して、前記第1の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行う第1の2次元ディジタルフィルタと、 前記複数の第1の2次元ディジタルフィルタから出力された信号に対して、前記第2の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行う第2の2次元ディジタルフィルタとを備え、 前記第1および第2の2次元ディジタルフィルタは、これらの振幅特性を時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、空間周波数軸に平行な断面での通過域が、一方の非物理領域から物理領域の前記一方の非物理領域に隣接した一部の領域にかけて形成され、かつ物理領域よりも非物理領域で大きな振幅を有するように構成されることを特徴とする指向性アレーマイクロホン。 【請求項2】 前記マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンは、前記第1の方向と第2の方向とが成す角度を変更可能な保持手段によって保持されていることを特徴とする請求項1記載の指向性アレーマイクロホン。 【請求項3】 同一平面上で互いに交差する第1および第2の方向に沿って配列された複数のスピーカから成るスピーカアレーと、複数の第1の2次元ディジタルフィルタと、第2の2次元ディジタルフィルタとを含む指向性アレースピーカであって、 前記第2の2次元ディジタルフィルタは、入力された信号に対して、前記第2の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行って、このフィルタ処理後の信号を各第1の2次元ディジタルフィルタに出力し、 前記第1の2次元ディジタルフィルタは、前記第1の方向に沿って配列される複数のスピーカから成るスピーカ列毎に設けられ、前記第2の2次元ディジタルフィルタから出力される信号を、前記第1の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行って各スピーカに出力し、 前記第1および第2の2次元ディジタルフィルタは、振幅特性を時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、空間周波数軸に平行な断面での通過域が、一方の非物理領域から物理領域の前記一方の非物理領域に隣接した一部の領域にかけて形成され、かつ物理領域よりも非物理領域で大きな振幅を有するように構成されることを特徴とする指向性アレースピーカ。 【請求項4】 前記スピーカアレーを構成する各スピーカは、前記第1の方向と第2の方向とが成す角度を変更可能な保持手段によって保持されていることを特徴とする請求項3記載の指向性アレースピーカ。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、指向性アレーマイクロホンおよび指向性アレースピーカに関する。 【背景技術】 【0002】 特定の方向から到来する音波だけを受音する指向性マイクロホンを実現する1つの方法として、マイクロホンが複数個配列されたマイクロホンアレーを用いる指向性アレーマイクロホンがある。また特定の方向にだけ音波を放射する指向性スピーカとして、複数個のスピーカが配列されたスピーカアレーを用いる指向性アレースピーカが知られている。 【0003】 指向性アレーマイクロホンでは、マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンに入力される音響信号から、特定の方向から到来する音波の成分だけが、ディジタルフィルタによって取り出されることによって指向特性が得られる。また指向性アレースピーカでは、スピーカアレーを構成する各スピーカから出力される音響信号の振幅および位相が、ディジタルフィルタによって個々に制御されることによって、指向特性を持った音波を出力することができる。以下、指向性アレーマイクロホンによって取り出された特定方向の音波、および指向性アレースピーカから放射される特定方向の音波を総称して音響ビームという。またマイクロホンおよびスピーカなどの電気音響変換器を総称して変換器という場合がある。 【0004】 このような指向性アレーマイクロホンおよび指向性アレースピーカで用いられるディジタルフィルタを設計する際には、各変換器毎に音響信号を表示するのでなく、時間と各変換器の配置位置とを変数とする2次元音響信号として表示する方法(非特許文献1参照)が用いられる。この方法では、2次元音響信号に2次元フーリエ変換を行って得られる周波数スペクトルが、時間周波数軸と空間周波数軸とによって表される2次元周波数平面において、音響ビームの進行方向に応じた直線上に現れることが利用される。したがって、ディジタルフィルタの特性は、2次元周波数平面上で扇形状の特性を持つファンフィルタ(fan filter)によって表すことができる。 【0005】 具体的にファンフィルタの目標振幅特性を設計する方法として、2次元周波数平面の時間周波数軸を分割し、分割された各時間周波数毎に空間周波数軸方向の断面での振幅特性が、ドルフ・チェビシェフフィルタ(Dolph-Chebyshev filter)の振幅特性となるように設計する方法(非特許文献2参照)が知られている。この方法では、通過域が単一のピークになり、阻止域が複数の等振幅のリプルになるように、空間周波数軸方向の断面での振幅特性にチェビシェフ多項式を対応させる。この結果、通過域振幅に比べて阻止域等リプルの振幅を低減することができる。得られた目標振幅特性の離散データから、2次元FIRフィルタのフィルタ係数は、2次元離散フーリエ逆変換によって求めることができる(非特許文献3参照)。 【0006】 指向性マイクロホンおよび指向性スピーカでは、同一の指向特性が高音域から低音域まで広帯域で実現されることが望ましい。しかしながら、ファンフィルタでは高音域に比べて低音域での空間周波数軸方向断面での通過域が狭くなるので、低音域において高音域と同一の振幅および指向性を得ようとすると、急峻なピークを持つ通過域が必要になる。しかし、そのような急峻なピークを持つ通過域を得ることは困難であるので、従来技術においては、通過域が狭い低音域まで高音域と同程度に振幅を維持するために、低音域での通過域を拡げて低音域だけ幅広の指向性にするか、または変換器の数を増やしてアレーのサイズを増加させることによって急峻なピークを持つ通過域の特性を実現していた(非特許文献2参照)。 【0007】 アレーサイズを増加させることなく、より低音域まで同一指向特性が拡がった2次元ファンフィルタを設計する方法として、2次元周波数平面の非物理領域を積極的に利用する方法がある(非特許文献4,5参照)。ここで、非物理領域とは、2次元周波数平面で、空間周波数を時間周波数で割った値が音速の逆数を超える領域であり、物理的には音響信号のスペクトルが分布し得ない領域をいう。 【0008】 非特許文献4に記載される設計法では、Parks&McClellanの設計法を用いて、2次元周波数平面の非物理領域で阻止域リプルが大きな振幅を有するように設計される。通過域の幅は、阻止域リプルの振幅を増加させるほど狭くなるので、急峻なピークの通過域を有する振幅特性が実現でき、結果として、より低音域まで高音域と同一の指向特性を実現することができる。 【0009】 また非特許文献5に記載される設計法では、2次元周波数平面で空間周波数方向の断面での振幅特性を設計する際に、通過域が一方の非物理領域から、物理領域のうち、その非物理領域に隣接する一部の領域にかけて形成され、かつ物理領域よりも非物理領域で大きな振幅を持つように、チェビシェフ多項式を空間周波数軸方向の振幅特性に対応させる。非物理領域で通過域の最大振幅を与えることによって、物理領域のうち、その非物理領域に隣接した領域で急峻な通過域の振幅特性が実現できるので、低音域まで高音域と同一の指向特性を与えることができる。 【0010】 【非特許文献1】西川清、「ビームフォーミングの2次元領域解析」、電子通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、1994年9月、第J77−A巻、第9号、p.1304−1306 【非特許文献2】松本康志、西川清、「一定サイドローブ量の指向性アレースピーカの設計法」、信学技報、社団法人電子情報通信学会、2004年10月、EA2004−74、p.13−18 【非特許文献3】西川清、外4名、「広帯域ビーム形成用2次元FIRファンフィルタの2次元フーリエ級数近似による設計法」、電子通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、2000年12月、第J83−A巻、第12号、p.1357−1367 【非特許文献4】太田充、西川清、「一定サイドローブ量の指向性アレースピーカの広帯域設計」、信学技報、社団法人電子情報通信学会、2005年10月、EA2005−50、p.7−12 【非特許文献5】西川長宏、西川清、「一定サイドローブ量の単一指向性アレーマイクロホンの広帯域設計」、信学技報、社団法人電子情報通信学会、2005年10月、EA2005−49、p.1−6 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 前述のように、指向性アレーマイクロホンおよび指向性アレースピーカにおいては、高音域での振幅および指向性が、低音域でも同様に得られるようにすることに技術的な課題がある。多数の変換器を広範囲に配置すれば、広帯域で同一の指向特性を実現することは可能だが、システムが大規模になるので、できるだけ小さなアレーサイズで、低音域から高音域までの広帯域で同一の指向特性が得られることが望ましい。この点で、前述した非特許文献4,5のように2次元周波数平面における非物理領域を積極的に利用するような設計法を採用すれば、指向特性の広帯域化が図られる。 【0012】 しかしながら、変換器を一直線に沿って配置した場合の音響特性は、変換器が配列された直線まわりの回転対称の特性になるので、前述した非特許文献4記載の設計法での音響ビームの方向は、変換器が配列される直線と交差する方向であり、かつその直線まわりに回転対称になる。たとえば、音響ビームの方向が変換器の配列方向と直交する場合、変換器の配列方向に垂直な断面で見ると、音波の波面は円弧状に拡がるように形成されることになる。したがって、この設計法では、音響ビームの進行方向がビームの中心軸線のまわりに分布するような、いわゆる単一指向特性にはならない。 【0013】 これに対し、前述した非特許文献5記載の設計法では、音波の通過域は、2次元周波数平面の空間周波数軸に平行な断面で、一方の非物理領域から物理領域のうち、その非物理領域に隣接する領域に設定されるので、音響ビームの中心軸は直線状に配列された変換器の配列方向に一致し、音響ビームは、変換器が配列する軸線まわりに円錐状に放射されることになる。したがって、非特許文献5記載の設計法では、いわゆる単一指向特性が実現されることになるが、前述した非特許文献4のように変換器の配列方向と交差する方向に音響ビームが形成される場合に比べると、同程度のアレーサイズの場合には、音響ビームのビーム幅が広くなる欠点がある。 【0014】 本発明の目的は、アレーサイズが小さくても、より低音域まで高音域と同一の指向特性を有するとともに、よりビーム幅の狭い単一指向特性を有する指向性アレーマイクロホンおよび指向性アレースピーカを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0015】 本発明は、同一平面上で互いに交差する第1および第2の方向に沿って配列された複数のマイクロホンから成るマイクロホンアレーと、 前記第1の方向に沿って配列される複数のマイクロホンから成るマイクロホン列毎に設けられ、前記各マイクロホン列を構成する複数のマイクロホンから出力された信号に対して、前記第1の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行う第1の2次元ディジタルフィルタと、 前記複数の第1の2次元ディジタルフィルタから出力された信号に対して、前記第2の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行う第2の2次元ディジタルフィルタとを備え、 前記第1および第2の2次元ディジタルフィルタは、これらの振幅特性を時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、空間周波数軸に平行な断面での通過域が、一方の非物理領域から物理領域の前記一方の非物理領域に隣接した一部の領域にかけて形成され、かつ物理領域よりも非物理領域で大きな振幅を有するように構成されることを特徴とする指向性アレーマイクロホンである。 【0016】 また本発明は、前記マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンは、前記第1の方向と第2の方向とが成す角度を変更可能な保持手段によって保持されていることを特徴とする。 【0017】 また本発明は、同一平面上で互いに交差する第1および第2の方向に沿って配列された複数のスピーカから成るスピーカアレーと、複数の第1の2次元ディジタルフィルタと、第2の2次元ディジタルフィルタとを含む指向性アレースピーカであって、 前記第2の2次元ディジタルフィルタは、入力された信号に対して、前記第2の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行って、このフィルタ処理後の信号を各第1の2次元ディジタルフィルタに出力し、 前記第1の2次元ディジタルフィルタは、前記第1の方向に沿って配列される複数のスピーカから成るスピーカ列毎に設けられ、前記第2の2次元ディジタルフィルタから出力される信号を、前記第1の方向に対応した指向性を有するようにフィルタ処理を行って各スピーカに出力し、 前記第1および第2の2次元ディジタルフィルタは、振幅特性を時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、空間周波数軸に平行な断面での通過域が、一方の非物理領域から物理領域の前記一方の非物理領域に隣接した一部の領域にかけて形成され、かつ物理領域よりも非物理領域で大きな振幅を有するように構成されることを特徴とする指向性アレースピーカである。 【0018】 また本発明は、前記スピーカアレーを構成する各スピーカは、前記第1の方向と第2の方向とが成す角度を変更可能な保持手段によって保持されていることを特徴とする。 【発明の効果】 【0019】 本発明によれば、指向性アレーマイクロホンは、同一平面上で互いに交差する第1および第2の方向に沿って配列された複数のマイクロホンから成るマイクロホンアレーを有し、マイクロホンアレーによって受音された音響信号に対して、第1および第2の2次元ディジタルフィルタによるフィルタ処理が行われることによって指向性が与えられる。 【0020】 ここで、第1および第2の2次元ディジタルフィルタの、2次元周波数平面上の空間周波数軸に平行な断面における通過域は、一方の非物理領域から物理領域の前記一方の非物理領域に隣接した一部の領域にかけて形成されるので、第1の方向に沿うマイクロホン列毎に設けられる第1の2次元ディジタルフィルタによるフィルタ処理によって、第1の方向を中心方向とする音響ビームが形成され、また第1の2次元ディジタルフィルタからの出力が供給される第2の2次元ディジタルフィルタによるフィルタ処理によって、第2の方向を中心方向とする音響ビームが形成されることになる。この結果、最終的に指向性マイクロホンによって形成される音響ビームは、第1の2次元ディジタルフィルタによるフィルタ処理によって形成される音響ビームと、第2の2次元ディジタルフィルタによるフィルタ処理によって形成される音響ビームとの共通領域に形成される。したがって、第1および第2のいずれか一方の方向に沿うマイクロホン列だけでは、幅広の音響ビームしか形成できなくても、両方向の特性の共通部分が最終的な音響ビームの特性になるので、より狭いビーム幅を得ることができる。 【0021】 さらに、従来技術のように一直線に沿ってマイクロホンを配置した場合と比較すると、本発明ではマイクロホンを同一平面上に2次元的に配列することによって幅狭の音響ビームを実現しているので、全体としてより小型で小さなアレーサイズの指向性アレーマイクロホンを実現することができる。 【0022】 また、2次元周波数平面上の空間周波数軸に平行な断面における第1および第2の2次元ディジタルフィルタの通過域は、物理領域よりも非物理領域での振幅が大きくなるように形成されるので、物理領域のうち非物理領域に隣接した領域の通過域の振幅特性をより急峻にすることができる。したがって、より低音域まで高音域と同一の指向特性を実現することができる。 【0023】 また本発明によれば、前記マイクロホンアレーを構成する各マイクロホンを保持する保持手段によって、第1の方向と第2の方向とが成す角度を変更することができる。前述のように、本発明による音響ビームは、第1の方向を中心方向とする音響ビームと第2の方向を中心方向とする音響ビームとの共通領域に形成される。したがって、第1の方向に沿った音響ビームの中心方向と第2の方向に沿った音響ビームの中心方向とのなす角度が小さいほど、両音響ビームの共通領域は広くなるので、より広いビーム幅が実現できる。逆に第1の方向に沿った音響ビームの中心方向と第2の方向に沿った音響ビームの中心方向とのなす角度が大きいほど、両音響ビームの共通領域は狭くなるので、より狭いビーム幅が実現できる。このように第1の方向と第2の方向とがなす角度を変更することによって、音響ビームの幅を変化させることができる。 【0024】 また本発明によれば、指向性アレースピーカは、同一平面上で互いに交差する第1および第2の方向に沿って配列された複数のスピーカから成るスピーカアレーを有し、外部から入力された信号に対して、第1および第2の2次元ディジタルフィルタによるフィルタ処理が行われることによって、スピーカアレーから放射される音波に指向性が与えられる。 【0025】 ここで、第1および第2の2次元ディジタルフィルタの、2次元周波数平面上の空間周波数軸に平行な断面における通過域は、一方の非物理領域から、物理領域のうち、その非物理領域に隣接する一部の領域にかけて形成される。したがって、前述した指向性アレーマイクロホンと同様に、指向性アレースピーカによって形成される音響ビームは、第1の2次元ディジタルフィルタによって形成される第1の方向に沿った中心軸を持つ音響ビームと、第2の2次元ディジタルフィルタによって形成される第2の方向に沿った中心軸を持つ音響ビームとの共通領域に形成されるので、小型で小さなアレーサイズであっても、より狭いビーム幅を実現することができる。 【0026】 また、前述した指向性アレーマイクロホンの場合と同様に、2次元周波数平面の空間周波数軸に平行な断面における第1および第2の2次元ディジタルフィルタの通過域は、物理領域よりも非物理領域での振幅が大きくなるように形成されるので、物理領域のうち非物理領域に隣接した領域の通過域の振幅特性が急峻になることによって、指向特性の広帯域化を図ることができる。 【0027】 また本発明によれば、前記スピーカアレーを構成する各スピーカを保持する保持手段によって、第1の方向と第2の方向とが成す角度を変更することができるので、マイクロホンアレーの場合と同様に、音響ビームの幅を変化させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0028】 図1は、本発明の実施の一形態である指向性アレーマイクロホン1の構成を示すブロック図である。指向性アレーマイクロホン1は、第1の方向であるy軸方向および第2の方向であるx軸方向の両方向に沿って配列される複数のマイクロホン10から成るマイクロホンアレー2と、y軸方向に沿ったマイクロホン列11毎に設けられた第1の2次元FIR(finite impulse response:有限応答長)フィルタ12と、第2の2次元FIRフィルタ13とを含む。 【0029】 図1において、マイクロホンアレー2には、第2の方向であるx軸方向に沿って、相互に一定の間隔DAをあけてNA+1個(NAは2以上の偶数)のマイクロホン10が配置され、また第1の方向であるy軸方向に沿って、相互に一定の間隔DBをあけてNB+1個(NBは2以上の偶数)のマイクロホン10が配置されて、全体で(NA+1)×(NB+1)個のマイクロホン10が格子状に配置されている。図1では、NA=NB=2の最小構成の場合が図示されている。ここでマイクロホン列11とは、第1の方向であるy軸方向に沿ったNB+1個(NBは2以上の偶数)のマイクロホン10の一群をいう。図1に示すマイクロホンアレー2には、NA+1個のマイクロホン列11が含まれることになる。 【0030】 本実施の形態では、第1の方向であるy軸方向と第2の方向であるx軸方向は直交しており、マイクロホン10はxy平面上に配置されている。各マイクロホン10は同一形状で、同一の全指向性の音響特性を有しているものとする。また、本実施の形態では、前記NAおよびNBを2以上の偶数として、x軸およびy軸方向に奇数個のマイクロホン10が配列した場合を例示しているが、これに限らず、NAおよびNBを3以上の奇数として、各方向に偶数個のマイクロホン10を配列してもよい。この場合は、マイクロホンアレー2の対称軸上にはマイクロホン10が配置されないことになる。さらに、NAおよびNBのいずれか一方を2以上の偶数とし、他方を3以上の奇数にして、一方向に奇数個のマイクロホン10を配列し、他の方向に偶数個のマイクロホン10を配列してもよい。 【0031】 マイクロホンアレー2を構成する各マイクロホン10に到達する音波14は、平面波で近似できる。平面波である音波の進行方向は、波面に垂直な方向になる。ここで、図1に示すxy平面内で、平面波の進行方向とy軸とのなす角度φを音波の入射角度とする。y軸方向に沿ってy軸の正側から負側へ音波が入射する場合の入射角度をφ=0°とし、x軸の正方向側から音波が入射する場合の入射角度を正で表し、x軸の負方向側から音波が入射する場合を負で表すものとする。本明細書において、マイクロホン10への音波の入射角度を表すときは、図1と同様に表すものとする。 【0032】 第1の2次元FIRフィルタ12は、各マイクロホン列11に対応してNA+1個設けられる。各第1の2次元FIRフィルタ12には、その第1の2次元FIRフィルタ12に対応するマイクロホン列11を構成する複数のマイクロホン10で受音された音響信号が、A/D(アナログ/ディジタル)コンバータ(図示省略)でディジタル信号に変換されてから入力される。 【0033】 第2の2次元FIRフィルタ13には、各第1の2次元FIRフィルタ12によってフィルタ処理された信号が入力される。そして第2の2次元FIRフィルタ13によってフィルタ処理されることによって、特定の方向から到来した音波14による音響信号が得られる。ここで、本実施の形態ではディジタルフィルタとして、FIRフィルタを用いているが、IIR(infinite impulse response:無限応答長)フィルタを使用してもよい。FIRフィルタおよびIIRフィルタなどのディジタルフィルタにおける信号処理は、マイクロプロセッサによる演算として行われる。 【0034】 第1および第2の2次元FIRフィルタ12,13は、それぞれ1次元FIRフィルタの並列和の構成とみなすことができる。図2は、図1に示す指向性アレーマイクロホン1において、第1および第2の2次元FIRフィルタ12,13として用いられる2次元FIRフィルタ20の構成を示すブロック図である。 【0035】 2次元FIRフィルタ20は、NC+1個(NCは2以上の偶数)の入力端子21から入力されたディジタル信号にフィルタ処理を施すNC+1個の1次元FIRフィルタ22と、各1次元FIRフィルタ22からの出力を加算する加算器23とを含む。 【0036】 2次元FIRフィルタ20が図1に示す第1の2次元FIRフィルタ12として用いられるときは、NC=NBであり、1次元ディジタルフィルタ22の個数は、各マイクロホン列11を構成するマイクロホン10の個数であるNB+1個に等しい。各マイクロホン列11を構成するマイクロホン10からの出力は、各々のマイクロホン10に対応する1次元FIRフィルタ22に入力され、各1次元FIRフィルタ22からの出力は加算器23に入力されて、加算された結果が出力される。 【0037】 また2次元FIRフィルタ20が図1に示す第2の2次元FIRフィルタ13として用いられるときは、NC=NAであり、1次元ディジタルフィルタ22の個数は、各第1の2次元FIRフィルタ12の個数であるNA+1個に等しい。各第1の2次元FIRフィルタ12の出力は、対応する各1次元FIRフィルタ22に入力端子21を介して入力され、各1次元FIRフィルタ22からの出力は加算器23に入力されて、加算された結果が出力される。 【0038】 以下、図1に示す指向性アレーマイクロホン1の構成および機能についてさらに詳細に説明する。先ず、指向性アレーマイクロホン1は、以下に示すように、マイクロホンが直線状に配列された直線型の指向性アレーマイクロホンが2段にカスケード接続された構成であるとみなすことができる。 【0039】 図3および図4は、マイクロホン10が直線状に配列された直線型の指向性アレーマイクロホン15a,15b(以下、「直線型アレーマイクロホン」という)の構成を示すブロック図である。図3に示す直線型アレーマイクロホン15aは、間隔DBをあけて直線に沿って配置されたNB+1個(NBは2以上の偶数)のマイクロホン10と、第1の2次元FIRフィルタ12とを含み、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bは、間隔DAをあけて直線に沿って配置されたNA+1個(NAは2以上の偶数)のマイクロホン10と、第2の2次元FIRフィルタ13とを含む。図3の直線型アレーマイクロホン15aと図4の直線型アレーマイクロホン15bとでは、各マイクロホン10の配列する方向が異なり、図3ではマイクロホン10はy軸方向に配列され、図4では図3と直交するx軸方向にマイクロホン10が配列されている。 【0040】 図3において、xy平面の原点に配置されたマイクロホン10の番号を0として、+y方向に向かって1,2,3,…と順に番号を付し、−y方向に向かって−1,−2,−3,…と順に番号を付す。したがって、図3に示す直線型アレーマイクロホン15aでは、−y方向から+y方向へ向かって−NB/2からNB/2までの番号が付されることになる。また図4において、xy平面の原点に配置されたマイクロホン10の番号0として、+x方向に向かって1,2,3,…と順に番号を付し、−x方向に向かって−1,−2,−3,…と順に番号を付すものとする。したがって、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bでは、−x方向から+x方向へ向かって−NA/2からNA/2までの番号が付されることになる。 【0041】 図3および図4と図1とを比較すると、図1に示す指向性アレーマイクロホン1は、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bのマイクロホン10の代わりに、図3に示す直線型アレーマイクロホン15aが配置された構成となっている。各マイクロホン10の位置関係は、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bを構成する各マイクロホン10の位置に、図3に示す直線型アレーマイクロホン15aで原点の第0番のマイクロホン10が位置するように配置される。 【0042】 このように、図1に示す指向性アレーマイクロホン1は、直線型アレーマイクロホン15a,15bが2段のカスケードに接続された構成をしているので、指向性アレーマイクロホン1の特性は直線型アレーマイクロホン15a,15bの特性に基づいて説明することができる。そこで以下では、先ず直線型アレーマイクロホン15a,15bの指向特性について説明する。 【0043】 図5は、直線に沿って互いに等間隔に配列されたマイクロホンから成るマイクロホンアレーによる音波の受音の様子を示すための説明図である。本発明の2次元配列のマイクロホンアレー2と区別するために、図5に示す直線配列のマイクロホンアレーをマイクロホン列16ということにする。図5では、xy平面でx軸上にN個(Nは自然数)の全指向性のマイクロホン10_n(nは0〜N−1の整数)が、互いに間隔dをあけて配置されている。ここで、xy平面の原点に配置されるマイクロホンの参照符号を10_0で表し、原点から+x方向へd離れた位置に配置されるマイクロホンの参照符号を10_1で表し、同様に原点から+x方向へn×dの距離だけ離れた位置に配置されるマイクロホンの参照符号を10_nで表すものとする。 【0044】 図5において、平面波として近似される音速cの音波14がマイクロホン列16に入射する角度をφとすると、あるマイクロホン10_nに到来した音波は、さらにd・sinφだけ進むと、−x方向に間隔dをあけて配置されるマイクロホン10_n−1に到達する。時間に直すと、−x方向に間隔dをあけて配置されるマイクロホン10_n−1には、d・(sinφ)/cの時間だけ遅れて音波14が到達することになる。 【0045】 図6は、図5に示すマイクロホン列16において、各マイクロホン10_nで観測される音響信号の時間変化を表す図である。図6では、横軸は時刻tを表し、縦軸は各マイクロホンの位置を、図5と同様にx軸の原点からの距離で表している。そして原点からの距離がnd(nは0〜N−1の整数)の位置に配置されるマイクロホン10_nの音響特性は、x=ndの直線上の点が各時刻tにおける原点とし、+x方向を正として表示されている。前述のとおり、x=ndの位置にあるマイクロホン10_nの音響特性よりも、x=(n+1)dの位置にあるマイクロホン10_n+1の音響特性は、時間d・(sinφ)/cだけ進み、x=(n−1)dの位置にあるマイクロホン10_n−1の音響特性は、時間d・(sinφ)/cだけ遅れるので、マイクロホン列16全体で観測される音響信号を図6に示すようなx−t平面での2次元音響信号en(t)として表示すると、観測される2次元音響信号en(t)の傾きは−c/sinφになる。 【0046】 図7は、図6に示す2次元音響信号en(t)に対して、時刻tおよびマイクロホンの位置座標xについて2次元フーリエ変換を施した音響信号のスペクトルを2次元周波数平面で表示した図である。図7で横軸は時間周波数f1を表し、縦軸は空間周波数f2を表す。 【0047】 ここで、非特許文献1に記載されるように、音響信号のスペクトルは、2次元周波数平面の原点を通る傾き(sinφ)/cの直線30となり、図6に示すx−t平面での2次元音響信号en(t)の傾き−c/sinφと直交する関係にある。したがって、非特許文献1に記載されるように時間周波数f1と空間周波数f2との関係について次式1が成立する。 【0048】 【数1】
【0049】 式1において、φ=90°のときはf2=f1/cが成立するので、図7では傾き1/cの直線31として表される。このとき、図5では音波14は+x方向から到来することになり、マイクロホンの配列方向と音波の進行方向が一致する。また式1において、φ=−90°のときはf2=−f1/cが成立するので、図7では傾き−1/cの直線32として表される。このとき、図5では音波14は−x方向から到来することになり、φ=90°の場合と反対方向になる。 【0050】 図7においてf2とf1との比の値f2/f1の絶対値が音速cの逆数を超える領域は、音響信号のスペクトルが物理的に存在し得ない非物理領域である。したがって、f2/f1の絶対値が音速c以下の領域に音響信号のスペクトルが存在することになる。また、空間エイリアシングが起きないように、空間周波数f2の絶対値について|f2|≦1/(2d)が守られる必要があり、時間周波数f1の絶対値についても同様にサンプリング周期Tとすると、|f1|≦1/(2T)が守られなければならない。 【0051】 ここで、時間周波数f1をサンプリング周期Tの逆数1/Tによって規格化し、空間周波数f2をマイクロホン間の距離dの逆数1/dで規格化し、規格化されたT×f1を単にf1と表し、規格化されたd×f2を単にf2と表せば、式1は次式2および3のように表現される。 【0052】 【数2】
【0053】 以下、本明細書では、特に断らない限り、時間周波数f1および空間周波数f2は規格化された値を意味するものとして用いる。したがって、時間および空間のエイリアシングが生じないようにするための条件は、|f1|≦0.5かつ|f2|≦0.5になる。また式2から、非物理領域は、f2とf1との比の値の絶対値について、|f2/f1|>ρが成立する領域になる。 【0054】 このように、入射角φで到来する音波14をマイクロホン列16で受音したときの2次元音響信号en(t)の周波数スペクトルは、2次元周波数平面で原点を通る傾きρ・sinφの直線で表されるので、入射角φがある範囲にわたる2次元音響信号en(t)の場合には、2次元周波数平面での周波数スペクトルは、原点を通るある傾きの範囲の直線で表されることになる。したがって、2次元周波数平面での通過域の形状が扇形をしたファンフィルタを用いることによって、特定の方向の到来波のみ受音するような指向特性をマイクロホン列16に持たせることができる。ここで、ファンフィルタによって取り出された特定方向の音波のことを音響ビームという。音響ビームを単にビームと記載する場合がある。 【0055】 図8は、2次元周波数平面での、2次元音響信号のスペクトルとファンフィルタの特性との関係を説明するための図である。図8で横軸は時間周波数f1を表し、縦軸は空間周波数f2を表す。 【0056】 前述のとおり、図8に示す2次元周波数平面で、非物理領域33は、φ=90°の直線とφ=−90°の直線を境界としてf2とf1との比の値の絶対値|f2/f1|がρより大きい側であり、音響信号のスペクトルが存在し得ない領域である。また、2次元周波数平面で非物理領域33を除く領域を物理領域という。一方、本実施の形態でのファンフィルタの通過域34は、空間周波数f2に平行な断面で、物理領域から非物理領域にかけて単峰型の通過域として設定される。図8では物理領域内のφ=φsの直線とφ=−90°の直線とに挟まれた領域に阻止域35が設定され、その阻止域35を除く領域に通過域34が設定される。ただし、図8では物理領域での通過域34、阻止域35のみ表示している。また通過域34は、その振幅が物理領域よりも非物理領域33のほうが大きくなるように設定される。したがって、2次元音響信号の周波数スペクトルが存在する物理領域ではφ=90°の直線が最大振幅となるので、音響ビームの中心方向は、マイクロホンの配列方向であるφ=90°の方向になり、単一指向特性が実現できる。さらに、通過域34において阻止域35との境界線φ=φsに至る過渡的な部分での振幅の変化を急峻にすることができるので、空間周波数軸に平行な断面での通過域の幅が狭くなる低音域においても、高音域と同一の指向特性を持った直線型アレーマイクロホンを実現することができる。 【0057】 次に、図1に示す指向性アレーマイクロホン1のように、直線型アレーマイクロホン15a,bを2段のカスケード接続した場合の指向特性について、図1、図3および図4を参照して説明する。 【0058】 図4に示す1段構成の直線型アレーマイクロホン15bにおいて、各マイクロホンの周波数特性HmA(f1,f2)を一定感度かつ全指向性、すなわちHmA(f1,f2)=1とし、第2の2次元FIRフィルタ13の特性をHA(f1,f2)とすると、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bの周波数特性HtA(f1,f2)は次式4で表される。 【0059】 【数3】
【0060】 図3に示す1段構成の直線型アレーマイクロホン15aの周波数特性HtB(f1,f2)も、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bの場合と同様に、各マイクロホンの周波数特性HmB(f1,f2)を一定感度かつ全指向性、すなわちHmB(f1,f2)=1とし、第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性をHB(f1,f2)とすると、次式5で表される。 【0061】 【数4】
【0062】 前述のように、図1に示す全2段の指向性アレーマイクロホン1は、図4に示す1段構成の直線型アレーマイクロホン15bの各マイクロホン10の代わりに、図3に示す1段構成の直線型アレーマイクロホン15aを置いた構成となっているので、図1に示す全2段の指向性アレーマイクロホン1の周波数特性Ht(f1,f2)は、各1段構成の直線型アレーマイクロホン15a,15bの周波数特性であるHtB(f1,f2)とHtA(f1,f2)との積で表され、次式6で与えられる。 【0063】 【数5】
【0064】 結果として、図1に示す指向性アレーマイクロホン1の周波数特性Ht(f1,f2)は、第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f2)と、第2の2次元FIRフィルタ13の特性HA(f1,f2)との積で表される。したがって、2次元周波数平面上で、2段構成の指向性アレーマイクロホン1の通過域は、第1の2次元FIRフィルタ12の通過域と第2の2次元FIRフィルタ13との通過域の共通部分で表されることになり、1段構成の直線型アレーマイクロホン15a,15bに比べてより狭いビーム幅を持つ指向特性を実現することができる。以下、図1,図3,図4,図9〜図12を参照して、具体的に2次元周波数平面上での指向性アレーマイクロホン1の振幅特性について説明する。 【0065】 図9は、図3に示す直線型アレーマイクロホン15aにおける第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f3)の振幅特性を、2次元周波数平面上で表した図である。図9で横軸は時間周波数f1を表し、縦軸はy軸に対する空間周波数f3を表す。ここで、図3では、マイクロホン10の配列方向がy軸方向であるので、空間周波数はy軸に対する空間周波数f3となっている。 【0066】 図8において説明したように、本実施の形態では、ファンフィルタの通過域を物理領域の一部の領域から非物理領域33にわたる領域に設定し、かつ非物理領域33における通過域の振幅が物理領域における通過域の振幅よりも大きくなるように設定している。したがって、物理領域で最大振幅が得られるマイクロホン10の配列方向であるφ=0°の方向がビーム中心方向になる。図9において、物理領域における通過域36bは、φ=0°の直線とφ=90°−φsの直線とによって挟まれる領域に設定されている。図解を容易にするために、非物理領域におけるファンフィルタの通過域は表示していない。後述するように、最終的な2段構成の指向性アレーマイクロホン1におけるビーム中心方向はφ=45°の方向になるので、図9においてφ=45°の直線上での通過域36bの振幅を1に設定する。 【0067】 図10は、図4に示す直線型アレーマイクロホン15bにおける第2の2次元FIRフィルタ13の周波数特性HA(f1,f2)の振幅特性を、2次元周波数平面上で表した図である。図10で横軸は時間周波数f1を表し、縦軸はx軸に対する空間周波数f2を表す。図4では、マイクロホン10の配列方向がx軸方向であるので、空間周波数はx軸に対する空間周波数f2となっている。 【0068】 図9の場合と同様に、物理領域で最大振幅が得られるマイクロホン10の配列方向であるφ=90°の方向がビーム中心方向になる。したがって、物理領域における通過域36aは、φ=90°の直線とφ=φsの直線とによって挟まれる領域に設定される。図解を容易にするために、非物理領域におけるファンフィルタの通過域は表示していない。後述するように、最終的な2段構成の指向性アレーマイクロホン1におけるビーム中心方向はφ=45°の方向になるので、図10においてφ=45°の直線上での通過域36aの振幅を1に設定する。 【0069】 図11は、図9に示す第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f3)を、x軸に対する空間周波数f2についての周波数特性HB(f1,f2)に変換して、その振幅特性を表した図である。図11で横軸は時間周波数f1を表し、縦軸はx軸に対する空間周波数f2を表す。 【0070】 前述のとおり、指向性アレーマイクロホン1の周波数特性Ht(f1,f2)は、第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f2)と、第2の2次元FIRフィルタ13の周波数特性HA(f1,f2)との積である合成特性によって表される。しかしながら、図9に示す第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f3)は、y軸に対する空間周波数f3と時間周波数f1による表現(f3=ρ(cosφ)f1)であるので、合成特性を求めるために、次式によって、図10に示す第2の2次元FIRフィルタ13の周波数特性HA(f1,f2)と同様の、x軸に対する空間周波数f2と時間周波数f1による表現(f2=ρ(sinφ)f1)に変換する。 【0071】 【数6】
【0072】 図11に示すように、第1の2次元FIRフィルタ12の振幅特性の通過域36cは、φ=φs−90°の直線とφ=90°−φsの直線に挟まれた領域になり、ビームの中心はφ=0°の方向と一致する。振幅=1となるのは、φ=±45°の直線上においてである。 【0073】 図12は、図10に示す第2の2次元FIRフィルタ13の周波数特性HA(f1,f2)と、図11に示す第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f2)との積である、指向性アレーマイクロホン1の周波数特性Ht(f1,f2)について、その振幅特性を表した図である。 【0074】 図12に示すように、指向性アレーマイクロホン1の通過域36dは、図10に示す第2の2次元FIRフィルタ13の通過域36aと、図11に示す第1の2次元FIRフィルタ12の通過域36cとの共通部分となっており、φ=φsの直線とφ=90°−φsの直線とによって挟まれた領域に一致する。また指向性アレーマイクロホン1による音響ビームの中心方向は、図10に示す第2の2次元FIRフィルタ13によるビームの中心方向のφ=90°と、図11に示す第1の2次元FIRフィルタ12によるビームの中心方向であるφ=0°との中央値であるφ=45°となる。 【0075】 次に、以上のような指向特性を持つ第1および第2の2次元FIRフィルタ12,13を具体的に設計する手順について説明する。 【0076】 非特許文献3,5に記載されるように、先ず、図8および図9に示したような振幅特性を目標振幅特性Hd(f1,f2)として与える。ここで、目標振幅特性Hd(f1,f2)はf1=[−0.5,0.5],f2=[−0.5,0.5]を基本周期とする周期特性である。目標振幅特性Hd(f1,f2)が与えられると、2次元離散フーリエ逆変換によって、時間の次数N1および空間の次数N2(ただし、N1,N2は正の偶数である)の2次元FIRフィルタのフィルタ係数h(n1,n2)を次式8に従って求めることができる。ただし、n1,n2は離散化された時間と空間の変数を表し、n1は0〜N1の整数であり、n2は−N2/2〜N2/2の整数である。また式8において、M1,M2は2次元離散フーリエ逆変換を高速フーリエ変換によって実行するために、N1,N2の10倍程度で2のべき乗の整数に選ばれる。また、k1,k2はそれぞれ離散化された時間周波数と空間周波数の変数を表し、k1は−M1/2〜M1/2−1の整数であり、k2は−M2/2〜M2/2−1の整数である。 【0077】 【数7】
【0078】 非特許文献5に記載されるように、目標振幅特性Hd(f1,f2)(ただし、f1=k1/M1,f2=k2/M2)は、チェビシェフ多項式を用いて設計する。なお、ファンフィルタの特性は原点について対称であるので、f1について0〜0.5の範囲で設計し、負のf1についての目標振幅特性Hd(f1,f2)は、原点対称の点(f1,f2)での目標振幅特性Hd(f1,f2)の値を用いる。 【0079】 図13は、図1に示す指向性アレーマイクロホン1の第1および第2の2次元FIRフィルタ12,13の目標振幅特性Hd(f1,f2)を設計する手順を説明するための図である。図13(b)は時間周波数f1および空間周波数f2から成る2次元周波数平面での目標振幅特性を与えた図であり、図13(a)は、2次元周波数平面のある時間周波数f1における空間周波数軸に平行な断面40での振幅特性をチェビシェフ多項式によって与えた図である。ここで、チェビシェフ多項式は変数xについての整式であり、N次のチェビシェフ多項式TN(x)は次のような漸化式で表すことができる。 【0080】 【数8】
【0081】 図13(a)に示すように、本実施の形態では、空間周波数軸に平行な断面40での振幅特性は、非物理領域で最大の振幅を持つように設定する。図13(a)では、非物理領域における最大の振幅をA0とし、物理領域と非物理領域の境界のφ=90°での空間周波数f2をF0、振幅を1としている。また、阻止域の両端の空間周波数f2をFs1,Fs2とし、そのときの振幅をδs、空間周波数Fs1,Fs2に対応するφの値をφ=φs、φ=−90°としている。2段構成の指向性アレーマイクロホン1での振幅特性は、ビーム中心φ=φb(本実施の形態ではφb=45°である)で振幅が1となるように、最終的に全体をK倍することによって得られる。図13(a)では全体をK倍した最終的な振幅を図示している。このφ=φbにおける空間周波数f2をFbとする。以上の関係から、次の式10〜式13が成り立つ。 【0082】 【数9】
【0083】 ここで次数がNで阻止域が等リプルとなるフィルタの振幅特性Aは、周波数のパラメータfを用いたN次のチェビシェフ多項式によって、次式14のように与えることができる。ただし、式14でx1は最大の振幅を与えるときのチェビシェフ多項式(式9)の変数xの値であり、x=x1・cos(πf)が成り立つ。 【0084】 【数10】
【0085】 式14において、δを阻止域リプルの大きさ、fstを阻止域端周波数とし、x=x1のときf=0で最大振幅A0になり、x=x0のときf=f0で振幅が1になり、x=xbのときf=fbで振幅が1/Kになるとすると、以下の式15〜式20が成り立つ。 【0086】 【数11】
【0087】 式14を用いて、図13(b)に示す2次元周波数平面上での空間周波数軸に平行な断面40での振幅特性を与えるために、空間周波数f2を式14の周波数パラメータfに周波数変換を行う。図14は、式9で用いられるチェビシェフ多項式TN(x)の変数xと、式14で用いられる周波数パラメータfと、空間周波数f2との対応関係を示す図である。横軸は変数x、cos(πf)、周波数パラメータf、および空間周波数f2の対応関係を表し、縦軸は変数xに対するチェビシェフ多項式TN(x)の値を表す。また図15は、図14に示すチェビシェフ多項式で、横軸を周波数パラメータfにして表した図である。横軸は周波数パラメータfを表し、縦軸は周波数パラメータfについてのチェビシェフ多項式TN(x)をK・δ倍してφ=φb(本実施の形態ではφb=45°である)で振幅が1となるようにしている。 【0088】 図14において周波数パラメータfと空間周波数f2との対応関係に示すように、f軸上のf0,fst,1−fst,fbにf2軸上のF0,Fs1,Fs2,Fbがそれぞれ対応するとすれば、次の式21〜式25が成り立つ。 【0089】 【数12】
【0090】 以上の式10〜式25の関係式を用いて、時間周波数f1(ただしf1=[0,0.5])が与えられたとき、空間周波数軸に平行な断面での振幅特性A(f)を決定することができる。具体的な設定方法は、f1の値によって第1領域〜第5領域までの5つの領域毎に異なる。 【0091】 第1領域では、f1の上限を0.5とし、下限として以下のfhまでのf1について断面での振幅特性を与える。 【0092】 【数13】
【0093】 この領域では、非物理領域が物理領域の通過域よりも狭いので、式12の関係式を用いずに、f0=0、A0=1と置いて、振幅特性を決める。この場合、f1が決まると式10,11,21よりfstが決まり、fstが決まると式16,18,19よりx1とδが決まり、この結果、式24,14によって振幅特性A(f)が決まる。さらに、式13,25よりfbが決まり、fbが決まると式17,20によりKが決まる。したがって、最終的な振幅特性はK・A(f)によって与えられる。 【0094】 第2領域では、f1の上限をfhとし、下限として、阻止域リプルδが予め定めるδsに等しくなるときのf1=fgに選ぶ。第2領域では、上限のf1=fhにおける阻止域リプルδhがδh>δsの場合とδh<δsの場合とで振幅特性A(f)の設定方法が異なる。 【0095】 δh>δsの場合には、リプルδをより小さくするために、式12の関係式を用いて、最大振幅A0>1となる設計を行う。具体的には、式10〜12,22,23からfst,f0が決まり、fst,f0が決まると、式16,18,19よりx1とδが決まり、この結果、式24,14によって振幅特性A(f)が決まる。さらに、第1領域と同様にしてKが決まるので、最終的な振幅特性はK・A(f)によって与えられる。 【0096】 一方、δh<δsの場合には、リプルδをより大きくするために、第1領域と同様の設定方法で振幅を決める。 【0097】 第3領域では、f1の上限をfgとし、下限として、非物理領域での最大振幅A0が予め定めるA0maxに等しくなるときのf1=flに選ぶ。最大振幅A0について、A0>1とするために、式12の関係式を用いずに、阻止域リプルδを予め定めるδsに固定する。この場合、f1が決まると式10,11,21よりfst−f0が決まり、fst−f0が決まると式16,18,19によりfst,f0,x1が決まり、この結果、式24,14によって振幅特性A(f)が決まる。さらに、第1領域と同様にしてKが決まるので、最終的な振幅特性はK・A(f)によって与えられる。 【0098】 第4領域では、式11,12の関係式を用いずに、阻止域リプルδを予め定めるδsに固定し、非物理領域での最大振幅A0を予め定めるA0maxに固定する。この場合式15からx1が決まり、式16,19によりf0が決まるので、式24,14によって振幅特性A(f)が決まる。さらに、第1領域と同様にしてKが決まるので、最終的な振幅特性はK・A(f)によって与えられる。この領域のf1の上限はflであり、下限として、設定される振幅特性がφ=φsの直線上で振幅0.5となるときのf1=fLに選ぶ。振幅が0.5となるとき、x=xc,f=fc,F=Fcとなるとすると、以下の関係式27が成り立つので、FLが決まる。 【0099】 【数14】
【0100】 第5領域では、f1の上限のfLから原点までの振幅特性を与える。本実施の形態では、原点での振幅を1に設定するので、この領域での非物理領域の最大振幅A0を次式28で与える。 【0101】 【数15】
【0102】 また阻止域リプルδを予め定めるδsに固定して、第4領域と同様の手順によって、最終的な振幅特性はK・A(f)が決まる。以上の第1〜第5領域の設計手順に従って、本実施の形態の2次元FIRフィルタの目標振幅特性を決定することができる。 【0103】 図16は、本実施の形態の指向性アレーマイクロホン1を構成する各マイクロホンを取り付けるためのマイクロホン取り付け器具50の構成の一例を示す平面図である。また図17は、図16の切断面線XVII−XVIIから見たマイクロホン取り付け器具50の構成を示す断面図であり、図18は、図16に示すマイクロホン取り付け器具50の構成を示す側面図である。 【0104】 図16に示すマイクロホン取り付け器具は、マイクロホンを取り付けて固定するための可動板51と、可動板51を支持する筐体53と、可動板51を筐体53に固定するためのボルト52とを含む。可動板51をボルト52によって筐体53に固定するために、可動板51の両端部には厚み方向一方に突出する突出部51bが設けられ、この突出部51bにはねじ孔が形成される。一方、筐体53は底面部53bと底面部53bの両端部に立設する側面部53aから構成される。筐体53の両側面部53aには貫通孔が設けられ、ボルト52がこの貫通孔に挿通して前記突出部51bのねじ孔に螺合されることによって、可動板51が筐体53の両側面部53aに挟まれて固定される。 【0105】 可動板51に取り付けられるマイクロホン10は、その振動板が可動板51の厚み方向の一方に面するように取り付けられる。図16では、9個のマイクロホン10が3×3の正方格子状に設けられ、その一方の対角線の方向は前記ねじ孔の軸線方向と一致し、他方の対角線の方向は前記ねじ孔の軸線方向と直交するように配置される。ボルト52の締め付けを緩めることによって、可動板51は、ねじ孔の軸線まわりに角変位可能であるので、マイクロホン10の振動板の方向を変えることができる。 【0106】 前述のように、本実施の形態の指向性アレーマイクロホン1の指向特性は、各マイクロホン10が全指向性の場合には、マイクロホンアレーのx軸方向に配列するマイクロホン列の指向特性とy軸方向に配列するマイクロホン列の指向特性とが合成された特性になる。したがって、図16に示すマイクロホン取り付け器具50を用いたマイクロホンアレーでは、ビームの中心方向を正方格子の対角線方向のうち前記ねじ孔の軸線方向と直交する方向にすることができる。 【0107】 実際上は、マイクロホン取り付け器具50の影響によって、指向特性が影響を受ける場合、およびマイクロホンが指向性を有する場合などが考えられる。この場合には、マイクロホンの振動板の方向を音源の方向に傾けて、指向性アレーマイクロホンとして最適な指向特性に調整することができる。たとえば、図18に示すように、筐体53の底面部53bの面方向を水平方向にした場合で、全指向性のマイクロホン10を用いたときには、図18(a)に示すように可動板51の面方向を水平に固定することによって、理論的には水平方向から到来する音波に対して最も感度良く受音することができる。一方、マイクロホン10の指向性について調整が必要なときには、図18(b)に示すように可動板51の面方向を水平方向から傾けることによって、マイクロホン10の指向性が調整されて、指向性アレーマイクロホンの感度を改善することができる。 【0108】 図19は、本発明の実施の一形態である指向性アレースピーカ101の構成を示すブロック図である。また図20は、図19に示す指向性アレースピーカ101において、第1および第2の2次元FIRフィルタ112,113として用いられる2次元FIRフィルタ120の構成を示すブロック図である。 【0109】 図19に示す指向性アレースピーカ101は、第1の方向であるy軸方向および第2の方向であるx軸方向の両方向に沿って配列される複数のスピーカ110から成るスピーカアレー102と、y軸方向に沿ったスピーカ列111毎に設けられた第1の2次元FIRフィルタ112と、第2の2次元FIRフィルタ113とを含む。図19に示すスピーカアレー102には、x軸方向に沿って、相互に一定の間隔DAをあけてNA+1個(NAは2以上の偶数)のスピーカ110が配置され、またy軸方向に沿って、相互に一定の間隔DBをあけてNB+1個(NBは2以上の偶数)のスピーカ110が配置される。図19では、NA=NB=2の最小構成の場合が図示されている。ここでy軸方向に沿ったNB+1個(NBは2以上の偶数)のスピーカ110の一群をスピーカ列111という。 【0110】 本実施の形態の指向性アレースピーカ101と前述の図1に示した指向性アレーマイクロホン1との違いは、マイクロホン10に代えて、スピーカ110を配置した点にある。このために、本実施の形態では、図1に示した指向性アレーマイクロホン1とは信号の流れる向きが逆になっている。たとえば図19に示す指向性アレースピーカ場合では、入力された信号が第2の2次元FIRフィルタ113によってフィルタ処理され、その出力信号はスピーカ列111と同数の第1の2次元FIRフィルタ112に入力される。続いて、第1の2次元FIRフィルタ112によってフィルタ処理された信号は、各第1の2次元FIRフィルタ112に対応するスピーカ列111を構成する各スピーカ110に、D/A(ディジタル/アナログ)変換されて入力される。各スピーカ110では入力された音響信号に応じた音響が出力される。また図20に示す2次元FIRフィルタ120においても、2次元FIRフィルタ120は、図2に示す場合と同様に、複数の1次元FIRフィルタ122の並列構成となっているが、信号の向きは逆である。図20に示す2次元FIRフィルタ120では、入力端子124から入力された音響信号が分岐されて各1次元FIRフィルタ122に入力され、音響信号の供給先のスピーカ110の配置位置に応じたフィルタ処理がなされる。 【0111】 このように本実施の形態の指向性アレースピーカ101は、図1に示す指向性アレーマイクロホン1と異なる点があるが、音響信号の周波数スペクトルが2次元周波数平面で原点を通る直線上で表される点は共通している。したがって、2次元FIRフィルタの設計方法は図1に示す指向性アレーマイクロホン1の場合と全く共通しているので、本実施の形態の指向性アレースピーカ101は、図1に示す指向性アレーマイクロホン1と同一の効果を得ることができる。 【0112】 図21は、本発明の他の実施の形態として、図1に示す指向性アレーマイクロホン1を取り付けるための保持手段であるマイクロホン取り付け器具60の構造を概略的に示すための斜視図である。図21に示すマイクロホン取り付け器具60は、長手方向がx軸方向に沿って配置された3本の第1アーム61と、長手方向がy軸方向に沿って配置された3本の第2アーム62とを含み、これらが格子状に配置された構成を有する。第1アーム61と第2アーム62とが交差する点には、第1アームと第2アームを連結するための連結部材63が設けられ、両アームが交差する点での両アームの交差角が角変位自在に連結されている。xy平面内で、最端に配置される第1アーム61の長手方向端部にはその長手方向に沿って操作レバー64が取り付けられ、その第1アーム61に近接する第2アームの長手方向端部にもその長手方向に沿って操作レバー64が取り付けられる。そして操作レバー64を開閉させると、マジックハンドと同様の連結機構によって第1アーム61と第2アーム62とのなす角度を変化させることができる。連結された第1アーム61と第2アームは、支持台66から鉛直方向に突出する支柱65によって、両アームの中央の交差点の下方で支持される。図1に示す指向性アレーマイクロホン1に用いられる各マイクロホン10は、第1アーム61と第2アーム62が交差する連結部材63の位置に取り付けられて保持される。したがって、第1アーム61および第2アーム62の長手方向はマイクロホン10の配列方向と一致する。 【0113】 図22は、図21に示すマイクロホン取り付け器具60の動作を説明するための平面図である。マイクロホン取り付け器具60では、マジックハンドと同様の原理によって、第1アーム61の長手方向(x軸方向)と第2アーム62の長手方向(y軸方向)とがなす角度は角変位可能となっている。図22(a)に示すように、+x方向と+y方向のなす角度α1を鈍角にすることもでき、また図22(b)に示すように、+x方向と+y方向のなす角度α2を鋭角にすることもできる。この結果、マイクロホン10の配列方向である第1の方向である+x方向と第2の方向である+y方向のなす角度も変化することになる。 【0114】 図23は、図22に示すマイクロホン取り付け器具60の動作と、指向性アレーマイクロホン1の指向特性との関係を示すための説明図である。図23(a)は、図22(a)の+x方向と+y方向のなす角度が鈍角α1である場合に対応し、図23(b)は、図22(b)の+x方向と+y方向とのなす角度が鋭角α2である場合に対応する。また、図23(c)は+x方向と+y方向とのなす角度が直角α3である場合を示す。 【0115】 前述したように、指向性アレーマイクロホン1の特性は、x軸方向に沿って配列されるマイクロホン10の指向特性と、y軸方向に沿って配列されるマイクロホン10の指向特性とが重ね合わされた特性になり、両特性の共通部分の指向特性を有する。図23(c)に示すように、x軸方向に沿ったマイクロホン10の配列による指向特性が、ビーム幅がおよそ180°でビームの中心方向が+x方向であるとし、y軸方向に沿ったマイクロホン10の配列による指向特性が、ビーム幅がおよそ180°でビームの中心方向が+y方向であるとすると、図23(c)に示すように、+x方向と+y方向とのなす角度が直角α3である場合には、両指向特性の共通部分72はビーム幅が直角α3になる。これに対し、図23(a)のように+x方向と+y方向のなす角度が鈍角α1である場合には、x軸に垂直な直線70とy軸に垂直な直線71とによって挟まれた共通部分72が指向性アレーマイクロホン1全体の指向特性になるので、ビーム幅は180°−α1となり鋭角のビーム幅が得られる。また図23(b)のように+x方向と+y方向のなす角度が鋭角α2である場合には、x軸に垂直な直線70とy軸に垂直な直線71とによって挟まれた共通部分72が指向性アレーマイクロホン1全体の指向特性になるので、ビーム幅は180°−α2となり鈍角のビーム幅が得られる。このように、指向性アレーマイクロホン1を構成する各マイクロホン10の配列方向である+x方向と+y方向とのなす角度を変化させることによって、指向性アレーマイクロホン1のビーム幅を変化させることができる。 【0116】 (実施例) 以下に本発明の指向性アレーマイクロホンの設計例を挙げることによって、本発明を具体的に説明する。 【0117】 図24〜図33は、これまで説明した本発明の指向性アレーマイクロホンの設計手順に従って、具体的に3×3の9個のマイクロホンを配列させた指向性アレーマイクロホンの設計例を示すものである。 【0118】 設計は、ビーム中心φb=45°、サイドローブレベル(各マイクロホン列でのサイドローブ)δs=−28dB、各マイクロホンの配列の間隔DA=DB=2.5cm、各マイクロホンの配列の個数NA+1=NB+1=3、阻止域端φS=−10°、式(3)のρ=0.6634(サンプリング周波数fs=9023Hz)、A0max=79.8、フィルタの時間の次数N1=100として行った。マイクロホンの大きさを直径10mmとすると、アレーサイズは1辺あたり約6cmで、マイクロホンアレーの対角では約8cmとなる。 【0119】 設計の結果、ビーム中心方向の振幅の0.5倍(6dB低下)によって定義したビーム幅は約70°、指向性アレーマイクロホン全体でのサイドローブレベルは−20dB、ビームの方向と反対方向の背面(φ=−90°〜−180°)でのサイドローブレベルは−40dB、指向性アレーマイクロホンの帯域fL〜fHは220Hz〜4300Hz(f1=0.024〜0.475)になった。 【0120】 図24は、図1に示す指向性アレーマイクロホン1の設計例として、第2の2次元FIRフィルタ13の振幅特性をφ=−90°〜90°の範囲で表示した図である。図24では、時間周波数軸f1とx軸方向に対する空間周波数f2とから成る2次元周波数平面内での振幅(Amplitude)を表す。以下の図25〜図29についても同様の表示を行っている。 【0121】 また設計はf1=[−0.5,0.5],f2=[−0.5,0.5]の範囲で行っていてその範囲での振幅特性が決定されるが、図24では図解を容易にするために非物理領域の振幅を0にして表示している。以下に示す図25〜図29についても同様に、図解を容易にするために非物理領域の振幅を0にして表示している。 【0122】 図25は、第2の2次元FIRフィルタ13の振幅特性をφ=90°〜270°(−90°)の範囲で表示した図である。図25では、図24に示したφ=−90°〜90°の範囲の振幅特性の背面の特性である、φ=90°〜270°(−90°)での特性が表示される。ここで、第2の2次元FIRフィルタ13はx軸方向のマイクロホン10の配列に対応する指向性を与えるものであるので、その特性はマイクロホンの配列方向であるφ=90°について対称である。したがって、図24と図25とでは同一の振幅特性になる。 【0123】 図26は、第1の2次元FIRフィルタ12の振幅特性をφ=−90°〜90°の範囲で表示した図である。また図27は、第1の2次元FIRフィルタ12の振幅特性をφ=90°〜270°(−90°)の範囲で表示した図である。第1の2次元FIRフィルタ12はy軸方向のマイクロホン10の配列に対応する指向性を与えるものであり、その特性はマイクロホン10の配列方向であるφ=0°について対称になる。したがって、図26に示すマイクロホン10の配列方向と逆方向のφ=180°の特性を示す図27では、指向性アレーマイクロホンの帯域fL〜fHである220Hz〜4300Hz(f1=0.024〜0.475)での振幅は非常に小さくなっている。 【0124】 図28は、図24に示す振幅特性と図26に示す振幅特性の積を表示した図であり、指向性アレーマイクロホン1全体での振幅特性をφ=−90°〜90°の範囲で表示した図である。また、図29は、図25に示す振幅特性と図27に示す振幅特性の積を表示した図であり、指向性アレーマイクロホン1全体での振幅特性をφ=90°〜270°(−90°)の範囲で表示した図である。図28と図29とから明らかなように、指向性アレーマイクロホン1全体ではφ=45°にピークを有する振幅特性になり、その反対方向であるφ=225°での振幅は非常に小さくなっている。 【0125】 図30は、図1に示す指向性アレーマイクロホン1の設計結果である、第2の2次元FIRフィルタ13の指向特性を示す図であり、図31は、第1の2次元FIRフィルタ12の指向特性を示す図であり、図32は、指向性アレーマイクロホン1全体での指向特性を示す図である。図30〜図32において、時間周波数f1をパラメータとして、音響ビームの進行方向の角度φに対する振幅(dB)を極座標表示したものである。第2の2次元FIRフィルタ13ではφ=90°がビームの中心方向になり、第1の2次元FIRフィルタ12ではφ=0°がビームの中心方向になり、また指向性アレーマイクロホン1全体ではφ=45°がビームの中心方向になっている。また最大振幅から6dB低下した位置でビーム幅を定義すれば、第2の2次元FIRフィルタ13でのビーム幅は120°になり、第1の2次元FIRフィルタ12でのビーム幅が120°になり、また指向性アレーマイクロホン1全体でのビーム幅は70°になっている。 【0126】 図33は、指向性アレーマイクロホン1全体での周波数特性を示す図である。図33では、ビーム方向φをパラメータとして、横軸の時間周波数f1に対する縦軸の振幅(dB)を表示している。図33から、音響ビームの進行方向と反対方向のφ=−90°〜−180°では、振幅は−40dB以下となっていることが確認できた。 【0127】 比較例として、直線型の指向性アレーマイクロホンを使って同一のビーム特性および同一の時間周波数の帯域を得るために必要なマイクロホンの数を計算すると、マイクロホンの間隔D=2.5cmに対して、マイクロホンの数は、N2+1=7個必要であり、アレーサイズは約16cmとなった。したがって、従来技術の直線型の場合には本発明の場合に比べてアレーサイズが2倍以上になる。 【0128】 前述の実施の各形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば、図1に示す指向性アレーマイクロホン1では、x軸方向の各列のマイクロホン数NAおよび各マイクロホン間の間隔DA、ならびにy軸方向の各列のマイクロホン数NBおよび各マイクロホン間の間隔DBは全て同じとしたが、これらは必ずしも全て同じでなくても、本発明の効果を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【0129】 【図1】本発明の実施の一形態である指向性アレーマイクロホン1の構成を示すブロック図である。 【図2】図1に示す指向性アレーマイクロホン1において、第1および第2の2次元FIRフィルタ12,13として用いられる2次元FIRフィルタ20の構成を示すブロック図である。 【図3】マイクロホン10がy軸方向に直線状に配列された直線型アレーマイクロホン15aの構成を示すブロック図である。 【図4】マイクロホン10がx軸方向に直線状に配列された直線型アレーマイクロホン15bの構成を示すブロック図である。 【図5】直線に沿って互いに等間隔に配列されたマイクロホンから成るマイクロホンアレーによる音波の受音の様子を示すための説明図である。 【図6】図5に示すマイクロホン列16において、各マイクロホン10_nで観測される音響信号の時間変化を表す図である。 【図7】図6に示す2次元音響信号en(t)に対して、時刻tおよびマイクロホンの位置座標xについて2次元フーリエ変換を施した音響信号のスペクトルを2次元周波数平面で表示した図である。 【図8】2次元周波数平面での、2次元音響信号のスペクトルとファンフィルタの特性との関係を説明するための図である。 【図9】図3に示す直線型アレーマイクロホン15aにおける第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f3)の振幅特性を、2次元周波数平面上で表した図である。 【図10】図4に示す直線型アレーマイクロホン15bにおける第2の2次元FIRフィルタ13の周波数特性HA(f1,f2)の振幅特性を、2次元周波数平面上で表した図である。 【図11】図9に示す第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f3)を、x軸に対する空間周波数f2についての周波数特性HB(f1,f2)に変換して、その振幅特性を表した図である。 【図12】図10に示す第2の2次元FIRフィルタ13の周波数特性HA(f1,f2)と、図11に示す第1の2次元FIRフィルタ12の周波数特性HB(f1,f2)との積である、指向性アレーマイクロホン1の周波数特性Ht(f1,f2)について、その振幅特性を表した図である。 【図13】図1に示す指向性アレーマイクロホン1の第1および第2の2次20FIRフィルタ12,13の目標振幅特性Hd(f1,f2)を設計する手順を説明するための図である。 【図14】式9で用いられるチェビシェフ多項式TN(x)の変数xと、式14で用いられる周波数パラメータfと、空間周波数f2との対応関係を示す図である。 【図15】図14に示すチェビシェフ多項式で、横軸を周波数パラメータfにして表した図である。 【図16】本実施の形態の指向性アレーマイクロホン1を構成する各マイクロホンを取り付けるためのマイクロホン取り付け器具50の構成の一例を示す平面図である。 【図17】図16の切断面線XVII−XVIIから見たマイクロホン取り付け器具50の構成を示す断面図である。 【図18】図16に示すマイクロホン取り付け器具50の構成を示す側面図である。 【図19】本発明の実施の一形態である指向性アレースピーカ101の構成を示すブロック図である。 【図20】図19に示す指向性アレースピーカ101において、第1および第2の2次元FIRフィルタ112,113として用いられる2次元FIRフィルタ120の構成を示すブロック図である。 【0130】 【図21】図1に示す指向性アレーマイクロホン1を取り付けるための保持手段であるマイクロホン取り付け器具60の構造を概略的に示すための斜視図である。 【図22】図21に示すマイクロホン取り付け器具60の動作を説明するための平面図である。 【図23】図22に示すマイクロホン取り付け器具60の動作と、指向性アレーマイクロホン1の指向特性との関係を示すための説明図である。 【図24】図1に示す指向性アレーマイクロホン1の設計例として、第2の2次元FIRフィルタ13の振幅特性をφ=−90°〜90°の範囲で表示した図である。 【図25】第2の2次元FIRフィルタ13の振幅特性をφ=90°〜270°(−90°)の範囲で表示した図である。 【図26】第1の2次元FIRフィルタ12の振幅特性をφ=−90°〜90°の範囲で表示した図である。 【図27】第1の2次元FIRフィルタ12の振幅特性をφ=90°〜270°(−90°)の範囲で表示した図である。 【図28】図24に示す振幅特性と図26に示す振幅特性の積を表示した図である。 【図29】図25に示す振幅特性と図27に示す振幅特性の積を表示した図である。 【図30】図1に示す指向性アレーマイクロホン1の設計結果である、第2の2次元FIRフィルタ13の指向特性を示す図である。 【図31】第1の2次元FIRフィルタ12の指向特性を示す図である。 【図32】指向性アレーマイクロホン1全体での指向特性を示す図である。 【図33】指向性アレーマイクロホン1全体での周波数特性を示す図である。 【符号の説明】 【0131】 1 指向性アレーマイクロホン 2 マイクロホンアレー 10 マイクロホン 11 マイクロホン列 12 第1の2次元FIRフィルタ 13 第2の2次元FIRフィルタ 33 非物理領域 34 通過域 50,60 マイクロホン取り付け器具 101 指向性アレースピーカ 102 スピーカアレー 110 マイクロホン 111 マイクロホン列 112 第1の2次元FIRフィルタ 113 第2の2次元FIRフィルタ
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| 【出願人】 |
【識別番号】504160781 【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
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| 【出願日】 |
平成18年8月18日(2006.8.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075557 【弁理士】 【氏名又は名称】西教 圭一郎
【識別番号】100072235 【弁理士】 【氏名又は名称】杉山 毅至
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| 【公開番号】 |
特開2008−48294(P2008−48294A) |
| 【公開日】 |
平成20年2月28日(2008.2.28) |
| 【出願番号】 |
特願2006−223684(P2006−223684) |
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