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【発明の名称】 静電型超音波トランスデューサ、静電型超音波トランスデューサの製造方法及び超音波スピーカ
【発明者】 【氏名】関野 博一

【要約】 【課題】固定電極の平面度を維持し、振動膜の挟持性の向上を図った静電型超音波トランスデューサを提供する。

【構成】複数の貫通14穴が形成された第1の固定電極10Aと、前記第1の固定電極と対をなす複数の貫通穴14が形成された第2の固定電極10Bと、前記一対の固定電極に挟持され導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜12と、前記一対の固定電極と前記振動膜を保持する保持部材とを有し、前記一対の固定電極間には交流信号が印加される静電型超音波トランスデューサであって、前記一対の固定電極に対して、少なくとも2箇所以上に設けられた位置決め機能を有する位置ずれ防止手段15と、前記一対の固定電極の中央部に設けられ、固定強度が調整可能な固定手段17とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴が形成された第1の電極と、
前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成された第2の電極と、
前記一対の電極に挟まれるとともに導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、
前記一対の電極と前記振動膜を保持する保持部材とを有し、
前記一対の電極間には交流信号が印加される静電型超音波トランスデューサの製造方法であって、
前記静電型超音波トランスデューサの組み立て時に、一対の電極に対して、少なくとも2箇所以上に位置決め機能を有する位置ずれ防止手段を設けるとともに、
固定強度が調整可能な固定手段を前記一対の電極の中央部に設けたことを特徴とする静電型超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項2】
前記位置ずれ防止手段は非導電性材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電型超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項3】
前記位置ずれ防止手段は、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔にロッドを挿通し、前記一対の電極の電極表面と前記ロッドの端部とを接着剤で固定されてなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項4】
前記位置ずれ防止手段は、
前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に挿通された、一端に鍔部を有し筒状に形成された雌型ピンと、
一端に鍔部を有し前記雌型ピンに嵌入される雄型ピンと、
を有し、
前記雌型ピンと雄型ピンとを嵌合した状態で、前記雌型ピンおよび雄型ピンの少なくともいずれか一方の鍔と電極表面との間に僅かな間隙を設けるようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項5】
貫通穴が形成された第1の電極と、
前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成された第2の電極と、
前記一対の電極に挟まれるとともに導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、
前記一対の電極と前記振動膜を保持する保持部材とを有し、
前記一対の電極間には交流信号が印加される静電型超音波トランスデューサであって、
前記一対の電極に対して、少なくとも2箇所以上に設けられた位置決め機能を有する位置ずれ防止手段と、
前記一対の電極の中央部に設けられ、固定強度が調整可能な固定手段と、
を有することを特徴とする静電型超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記位置ずれ防止手段は非導電性材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の静電型超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記位置ずれ防止手段は、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔にロッドを挿通し、前記一対の電極の電極表面と前記ロッドの端部とを接着剤で固定されてなることを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記位置ずれ防止手段は、
前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に挿通された、一端に鍔部を有し筒状に形成された雌型ピンと、
一端に鍔部を有し前記雌型ピンに嵌入される雄型ピンと、
を有し、
前記雌型ピンと雄型ピンとを嵌合した状態で、前記雌型ピンおよび雄型ピンの少なくともいずれか一方の鍔と電極表面との間に僅かな間隙を設けるようにしたことを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサと、
可聴周波数帯の信号波を生成する信号源と、
超音波周波数帯のキャリア波を生成し、出力するキャリア波供給手段と、
前記キャリア波を前記信号源から出力される可聴周波数帯の信号波により変調する変調手段と、
を有し、
前記静電型超音波トランスデューサは、前記変調手段から出力される変調信号により駆動されることを特徴とする超音波スピーカ。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、広周波数帯域に渡って一定の高音圧を発生する静電型超音波トランスデューサ、これを用いた超音波スピーカ、静電型超超音波トランスデューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波トランスデューサは圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである。
【0003】
ここで、従来の超音波トランスデューサの構成を図8に示す。従来の超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである。図8に示す超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いて電気信号から超音波への変換と、超音波から電気信号への変換(超音波の送信と受信)の両方を行う。図8に示すバイモフル型の超音波トランスデューサは、2枚の圧電セラミック61および62と、コーン63と、ケース64と、リード65および66と、スクリーン67とから構成されている。
【0004】
圧電セラミック61および62は、互いに貼り合わされていて、その貼り合わせ面と反対側の面にそれぞれリード65とリード66が接続されている。
【0005】
共振型の超音波トランスデューサは、圧電セラミックの共振現象を利用しているので、超音波の送信および受信の特性がその共振周波数周辺の比較的狭い周波数帯域で良好となる。
【0006】
上述した図8に示す共振型の超音波トランスデューサと異なり、従来より静電方式の超音波トランスデューサは高周波数帯域にわたって高い音圧を発生可能な広帯域発振型超音波トランスデューサとして知られている。この静電型の超音波トランスデューサは、振動膜が固定電極側に引き付けられる方向のみ働くことからPull型と呼ばれている。
図9に広帯域発振型超音波トランスデューサ(Pull型)の具体的構成を示す。
【0007】
図9に示す静電型の超音波トランスデューサは、振動体として3〜10μm程度の厚さのPET(ポリ・エチレン・テレフタレート樹脂)等の誘電体131(絶縁体)を用いている。誘電体131に対しては、アルミ等の金属箔として形成される上電極132がその上面部に蒸着等の処理によって一体形成されるとともに、真鍮で形成された下電極133が誘電体131の下面部に接触するように設けられている。この下電極133は、リード152が接続されるとともに、ベークライト等からなるベース板135に固定されている。
【0008】
また、上電極132は、リード153が接続されており、このリード153は直流バイアス電源150に接続されている。この直流バイアス電源150により上電極132には50〜150V程度の上電極吸着用の直流バイアス電圧が常時、印加され上電極132が下電極133側に吸着されるようになっている。151は信号源である。
【0009】
誘電体131および上電極132ならびにベース板135は、メタルリング136、137、および138、ならびにメッシュ139とともに、ケース130によってかしめられている。
【0010】
下電極133の誘電体131側の面には不均一な形状を有する数十〜数百μm程度の微小な溝が複数形成されている。この微小な溝は、下電極133と誘電体131との間の空隙となるので、上電極132および下電極133間の静電容量の分布が微小に変化する。
【0011】
このランダムな微小な溝は、下電極133の表面を手作業でヤスリにより荒らすことで形成されている。静電方式の超音波トランスデューサでは、このようにして空隙の大きさや深さの異なる無数のコンデンサを形成することによって、図9に示す超音波トランスデューサの周波数特性が図10において曲線Q1に示すように広帯域となっている。
【0012】
上記構成の超音波トランスデューサでは、上電極132に直流バイアス電圧が印加された状態で上電極132と下電極133との間に矩形波信号(50〜150Vp-p)が印加されるようになっている。因みに、図10に曲線Q2で示すように共振型の超音波トランスデューサの周波数特性は、中心周波数(圧電セラミックの共振周波数)が例えば、40kHzであり、最大音圧となる中心周波数に対して±5kHzの周波数において最大音圧に対して−30dBである。
【0013】
これに対して、上記構成の広帯域発振型の超音波トランスデューサの周波数特性は、40kHzから100kHz付近まで平坦で、100kHzで最大音圧に比して±6dB程度である(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−50387号公報
【特許文献2】特開2000−50392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、図8に示す共振型の超音波トランスデューサと違い、図9に示す静電方式の超音波トランスデューサは従来から広周波数帯に渡って比較的高い音圧を発生させることが可能な広帯域超音波トランスデューサ(Pull型)として知られている。
しかしながら、音圧の最大値は図10に示すように、共振型の超音波トランスデューサが130dB以上であるのに比べ、静電型の超音波トランスデューサでは120dB以下と音圧が低く、超音波スピーカとして利用するには若干音圧が不足していた。
【0015】
ここで、超音波スピーカについて説明しておく。キャリア波と呼ばれる超音波周波数帯域の信号にオーディオ信号(可聴周波数帯の信号)でAM変調をかけ、この変調信号で超音波トランスデューサを駆動することにより、超音波を信号源のオーディオ信号で変調した状態の音波が空中に放射され、空気の非線形により、空中で元のオーディオ信号が自己再生される、というものである。
【0016】
つまり、音波は空気を媒体として伝播する粗密波であるので、変調された超音波が伝播する過程で、空気の密な部分と疎な部分な顕著に表れ、密な部分は音速が速く、疎な部分は音速が遅くなるので変調波自身に歪が生じ、その結果キャリア波(超音波)と可聴波(元オーディオ信号)に波形分離され、我々人間は20kHz以下の可聴音(元オーディオ信号)のみを聴くことができるという原理であり、一般にはパラメトリックアレイ効果と呼ばれている。
【0017】
上記のパラメトリック効果が十分現れるためには120dB以上の超音波音圧が必要であるが、静電型の超音波トランスデューサではこの数値を達成することが難しく、もっぱらPZTなどのセラミック圧電素子やPVDFなどの高分子圧電素子が超音波発信体として用いられてきた。
【0018】
しかし、圧電素子はその材質を問わず鋭い共振点を有しており、その共振周波数で駆動して超音波スピーカとして実用化しているため、高い音圧を確保出来る周波数領域が極めて狭い。すなわち狭帯域であるといえる。
【0019】
一般に、人間の最大可聴周波数帯域は20Hz〜20kHzと云われており約20kHzの帯域を持つ。すなわち超音波スピーカにおいては、超音波領域で20kHzの周波数帯域に渡って高い音圧を確保しないと、元のオーディオ信号を忠実に復調することは不可能となる。従来の圧電素子を用いた共振型の超音波スピーカでは到底この20kHzという広帯域を忠実に再生(復調)することは困難であることは容易に理解できるであろう。
【0020】
実際、従来の共振型の超音波トランスデューサを用いた超音波スピーカでは、(1)帯域が狭く再生音質が悪い、(2)AM変調度をあまり大きくすると復調音が歪むため最大でも0.5程度までしか変調度を上げられない、(3)入力電圧を上げると(ボリュームを上げると)圧電素子の振動が不安定となり、音が割れる。さらに電圧を上げると圧電素子自身が破壊され易い、(4)アレイ化や大型化、小型化が困難であり、それが故にコストが高い、といった問題が有った。
【0021】
これに対し図9に示した静電型の超音波トランスデューサ(Pull型)を用いた超音波スピーカは、上記従来技術の抱える課題をほぼ解決できるが、帯域を広くカバーできる反面、復調音が十分な音量であるためには絶対的な音圧が不足しているという問題を抱えていた。
【0022】
また、Pull型の静電型超音波トランスデューサは、静電力は固定電極側へのみ引き付ける方向にしか働かず振動膜(図9における上電極132に相当する。)の振動の対称性が保たれないため、超音波スピーカに用いる場合、振動膜の振動が直接、可聴音を発生させるという問題が有った。
【0023】
これに対して、我々は、広周波数帯域にわたってパラメトリックアレイ効果を得るのに十分に高い音圧レベルの音響信号を発生することができる静電型超音波トランスデューサを既に提案している。この静電型超音波トランスデューサは、導電層を有する振動膜を対向する位置に貫通穴が形成された一対の固定電極により挟持し、振動膜に直流バイアス電圧が印加された状態で一対の固定電極に交流信号を印加するように構成したものである。
【0024】
この静電型超音波トランスデューサは、Push−Pull型の静電型超音波トランスデューサと呼ばれており、一対の固定電極により挟持された振動膜が交流信号の極性に応じた方向において静電吸引力と静電斥力を同方向にかつ同時に受けるために、振動膜の振動をパラメトリックアレイ効果を得るのに十分に大きくすることができるだけでなく、振動の対称性が確保されるため、従来のPull型の静電型超音波トランスデューサに比して高い音圧を広周波数帯域にわたって発生させることができる。
【0025】
このようなPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサの電極構造を図6に示す。図6(A)は、Push−Pull型の静電型超音波トランスデューサの電極構造の平面図を、図6(B)は、図6(A)におけるA−A切断線による断面図である。図6において、固定電極110A,110Bは対向電極部120および貫通穴114で構成されており、対向電極部120および貫通穴114は同形状かつ同位置に設けられている。振動膜112は2枚の固定電極110A,110Bに挟まれる構造で保持され、振動膜112の振動によって発生する音波が、貫通穴114を通して空気中に放出される。
【0026】
ここで、振動膜112は振動膜枠113に接着された状態で、2枚の固定電極110A,110Bで挟み込むため、固定電極側に振動膜枠113の厚み以上のクリアランスを設ける必要があり、結果的に図6(B)に示すような凸部を有する構造としている。
【0027】
また、良好な振動膜の挟持性を確保する事が、静電型超音波トランスデューサの振動及び音圧特性にとって非常に重要な要素であるため、固定電極の電極面の平面度を数μm以内に仕上げている。
【0028】
以上のような構造及び電極面の平面性を確保した状態で、位置決め手段を用いて、2枚の固定電極110A,110Bの対向電極部の位置を合わせた上で、電極中央部1箇所と外周角部4箇所をネジ締めして、振動膜を挟持して、超音波トランスデューサを製造している。
【0029】
しかしながら、外周角部のネジ締めトルクが強すぎる、あるいは固定電極の剛性が不十分な場合には、電極部材が局部的に変形し、固定電極と振動膜の間に隙間が生じてしまい、結果的に振動電極膜の挟持性が劣化し、超音波トランスデューサの特性が低下するという問題が有った。
【0030】
このように、組立前段階で電極面の平面性が十分に確保できていても、現在の製造(組立)方法では平面性が維持できない。
【0031】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、固定電極の平面度を維持し、振動膜の挟持性の向上を図った静電型超音波トランスデューサ、静電型超音波トランスデューサの製造方法及び超音波スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成された第2の電極と、前記一対の電極に挟まれるとともに導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜を保持する保持部材とを有し、前記一対の電極間には交流信号が印加される静電型超音波トランスデューサの製造方法であって、前記静電型超音波トランスデューサの組み立て時に、一対の電極に対して、少なくとも2箇所以上に位置決め機能を有する位置ずれ防止手段を設けるとともに、固定強度が調整可能な固定手段を前記一対の電極の中央部に設けたことを特徴とする。
【0033】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、前記静電型超音波トランスデューサの組み立て時に、一対の電極に対して、少なくとも2箇所以上に位置決め機能を有する位置ずれ防止手段が設けられとともに、固定強度が調整可能な固定手段が前記一対の電極の中央部に設けられる。
【0034】
これにより、固定電極の変形を最小限に抑えて、振動膜の挟持性を改善し、かつ安定化することができる。
【0035】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、前記位置ずれ防止手段は非導電性材料で形成されていることを特徴とする。
【0036】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、固定電極は、通常、導電材料で形成されているために位置ずれ防止手段を電気的絶縁材料で形成する。その材質としては、樹脂又はセラミックが適切であり、樹脂の場合では、例えば、PEEKやアラミド系樹脂などの高強度樹脂が使用される。
これにより、対向する固定電極間の電気的絶縁性を確保することができる。
【0037】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、前記位置ずれ防止手段は、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔にロッドを挿通し、前記一対の電極の電極表面と前記ロッドの端部とを接着剤で固定されてなることを特徴とする。
【0038】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に位置決め用のロッドを挿通し、前記一対の電極の電極表面と前記ロッドの端部とを接着剤で固定することにより構成される記位置ずれ防止手段により前記一対の電極の位置決めが行われる。
【0039】
これにより、電極の平面度を維持し、振動膜の挟持性の向上が図れる。
【0040】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、前記位置ずれ防止手段は、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に挿通された、一端に鍔部を有し筒状に形成された雌型ピンと、一端に鍔部を有し前記雌型ピンに嵌入される雄型ピンと、を有し、前記雌型ピンと雄型ピンとを嵌合した状態で、前記雌型ピンおよび雄型ピンの少なくともいずれか一方の鍔と電極表面との間に僅かな間隙を設けるようにしたことを特徴とする。
【0041】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に挿通された、一端に鍔部を有し筒状に形成された雌型ピンと、一端に鍔部を有し前記雌型ピンに嵌入される雄型ピンとにより前記位置ずれ防止手段が構成され、前記雌型ピンと雄型ピンとを嵌合した状態で、前記雌型ピンおよび雄型ピンの少なくともいずれか一方の鍔と電極表面との間に僅かな間隙を設けるように設定される。
【0042】
これにより、一対の電極を固定した際に、電極への固定ストレスが働かないようにすることができる。
【0043】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサは、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成された第2の電極と、前記一対の電極に挟まれるとともに導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜を保持する保持部材とを有し、前記一対の電極間には交流信号が印加される静電型超音波トランスデューサであって、前記一対の電極に対して、少なくとも2箇所以上に設けられた位置決め機能を有する位置ずれ防止手段と、前記一対の電極の中央部に設けられ、固定強度が調整可能な固定手段とを有することを特徴とする。
【0044】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記静電型超音波トランスデューサの組み立て時に、一対の電極に対して、少なくとも2箇所以上に位置決め機能を有する位置ずれ防止手段が設けられとともに、固定強度が調整可能な固定手段が前記一対の電極の中央部に設けられる。
【0045】
これにより、電極の変形を最小限に抑えて、振動膜の挟持性を改善し、かつ安定化することができる。
【0046】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサは、前記位置ずれ防止手段は非導電性材料で形成されていることを特徴とする。
【0047】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサでは、固定電極は、通常、導電材料で形成されているために位置ずれ防止手段を電気的絶縁材料で形成する。その材質としては、樹脂又はセラミックが適切であり、樹脂の場合では、例えば、PEEKやアラミド系樹脂などの高強度樹脂が使用される。
これにより、対向する固定電極間の電気的絶縁性を確保することができる。
【0048】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサは、前記位置ずれ防止手段は、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通にロッドを挿通し、前記一対の電極の電極表面と前記ロッドの端部とを接着剤で固定されてなることを特徴とする。
【0049】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に位置決め用のロッドを挿通し、前記一対の電極の電極表面と前記ロッドの端部とを接着剤で固定することにより構成される記位置ずれ防止手段により前記一対の電極の位置決めが行われる。
【0050】
これにより、電極の平面度を維持し、振動膜の挟持性の向上が図れる。
【0051】
また、本発明の静電型超音波トランスデューサは、前記位置ずれ防止手段は、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に挿通された、一端に鍔部を有し筒状に形成された雌型ピンと、一端に鍔部を有し前記雌型ピンに嵌入される雄型ピンとを有し、前記雌型ピンと雄型ピンとを嵌合した状態で、前記雌型ピンおよび雄型ピンの少なくともいずれか一方の鍔と電極表面との間に僅かな間隙を設けるようにしたことを特徴とする。
【0052】
上記構成からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、前記一対の電極の周縁部に穿設された挿通孔に挿通された、一端に鍔部を有し筒状に形成された雌型ピンと、一端に鍔部を有し前記雌型ピンに嵌入される雄型ピンとにより前記位置ずれ防止手段が構成され、前記雌型ピンと雄型ピンとを嵌合した状態で、前記雌型ピンおよび雄型ピンの少なくともいずれか一方の鍔と電極表面との間に僅かな間隙を設けるように設定される。
【0053】
これにより、一対の電極を固定した際に、電極への固定ストレスが働かないようにすることができる。
【0054】
また、本発明の超音波スピーカは、上記いずれかの静電型超音波トランスデューサと、可聴周波数帯の信号波を生成する信号源と、超音波周波数帯のキャリア波を生成し、出力するキャリア波供給手段と、前記キャリア波を前記信号源から出力される可聴周波数帯の信号波により変調する変調手段とを有し、前記静電型超音波トランスデューサは、前記変調手段から出力される変調信号により駆動されることを特徴とする。
【0055】
上記構成からなる本発明の超音波スピーカでは、信号源により可聴周波数帯の信号波が生成され、キャリア波供給手段により超音波周波数帯のキャリア波が生成され、出力される。さらに、変調手段によりキャリア波が前記信号源から出力される可聴周波数帯の信号波により変調され、この変調手段から出力される変調信号が超音波トランスデューサの電極と振動膜の電極層との間に印加され、駆動される。
【0056】
このように、本発明の超音波スピーカでは、上記構成の静電型超音波トランスデューサを用いて構成したので、広周波数帯域にわたってパラメトリックアレイ効果を得るのに十分高い音圧のレベルの音響信号を発生することができる超音波スピーカを実現できる。
【0057】
また、電極に対して、少なくとも2箇所以上に位置決め機能を有する位置ずれ防止手段を設けるとともに、電極の中心部一箇所を固定手段により締め付けることにより、電極の変形を最小限に抑えて、振動膜の挟持性の向上が図れる。その結果、良好な振動膜の振動特性が得られ、静電型超音波トランスデューサの振動歪みが低減され、音圧及び音質の向上を図った超音波スピーカを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの構造を図1に示す。図1(A)は、Push−Pull型の静電型超音波トランスデューサの電極構造の平面図を、図1(B)は、図1(A)におけるA−A切断線による断面図である。図1に示すPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサの電極構造は、位置ずれ防止手段の構成を除けば、図6に示したPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサの電極構造と基本的に同一である。図1において、固定電極10A,10Bは対向電極部20および貫通穴14で構成されており、対向電極部20および貫通穴14は同形状かつ同位置に設けられている。振動膜12は2枚の固定電極10A,10Bに挟まれる構造で保持され、振動膜12の振動によって発生する音波が、貫通穴14を通して空気中に放出されるようになっている。
【0059】
ここで、振動膜12は振動膜枠13に接着された状態で、2枚の固定電極10A,10Bで挟み込むため、固定電極側に振動膜枠113の厚み以上のクリアランスを設ける必要があり、従来例と同様に図1(B)に示すような凸部を有する構造としている。
【0060】
固定電極10A,10Bには、固定部位が固定電極の中央に一箇所設けられており、固定手段17としてはネジ又はナットとの組み合わせとし、締付けトルクを管理することにより、固定強度を調整するようになっている。
【0061】
固定電極10A,10Bの外周部には、少なくとも2箇所以上に、位置決め機能を持たせた位置ズレ防止手段15が設けられている。固定電極10A,10B側に位置決め用に設けられた挿通孔は、可能な限り距離を離して位置決め精度を向上させるために、対角に配するのが望ましい。これらの挿通孔に対し、位置ズレ防止手段を構成するパイロットピン等のロッドを挿通し、固定電極の対向電極位置を合わせた状態として固定する。
ここで、通常、固定電極10A,10Bは導電材料で形成されており、対向する固定電極10A,10B間の電気絶縁性を確保するために、位置ズレ防止手段15は絶縁材料で構成する。その材質としては樹脂又はセラミックが適切であり、樹脂の場合では、PEEKやアラミド系樹脂等の高強度樹脂が望ましい。
なお、位置ズレ防止手段15の固定方法としては、固定電極側に固定ストレスがかかりにくい方法を採用することが望ましい。図2及び図3に、位置すれ防止手段15の構成例を示す。図2及び図3は、図1に示した静電型超音波トランスデューサにおける位置すれ防止手段を含む本発明の要部の構成を示しており、図2(A),図3(A)はその平面図、図2(B),図3(B)は、A−A線による断面図である。
図2は接着方式により位置ずれ防止手段を固定する構成例を示し、図3は、嵌合方式により位置ずれ防止手段を固定する構成例を示している。上記何れの方式も、位置ズレ防止手段15を構成するロッドまたはピンの径と固定電極10A,10Bの位置決め穴径は、嵌め合い公差にて寸法管理されているので、固定電極10A,10Bに対する固定ストレスは極めて小さい。但し、単純なパイロットピンタイプのロッドの場合には、ロッドが抜け落ちる可能性があり、これを防止するために、図2に示すように、固定電極10A,10Bとの接触部位、すなわち、一対の固定電極10A,10Bの電極表面とロッド15Aの端部とを接着剤(例えば、UV硬化型接着剤)15Bにて固定する。
一方で、接着剤が硬化する際に僅かな体積収縮が生じ、これが固定電極10A,10Bに対し、固定ストレスとして作用することもあり得る。そこで、限り無く固定ストレスを抑える方法として、図3に示すように、位置ズレ防止手段15を二体で形成し、一方は固定電極10A,10Bの位置決め穴と嵌め合い公差で寸法管理した鍔付きの筒状の雌型ピン19Aとし、もう一方は鍔付きの雄型ピン10Bとする。両ピンの嵌め込みには嵌合あるいは接着固定を併用し、完全に嵌め込んだ状態において、これらのピンの鍔部と固定電極10A,10Bの間に、僅かな隙間を設ける事により、固定電極10A,10Bへの固定ストレスの作用を完全に回避できる。
【0062】
以上に説明した本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの構成及びその製造方法が、デバイス特性に及ぼす効果について、以下に説明する。
静電型超音波トランスデューサの特性に寄与するパラメータとして静電容量があり、組み上がり状態での実測値が、理論計算上の静電容量と一致することが理想状態である。ここで、静電容量は、固定電極により振動膜がどの程度挟持されているかを示すものであり、固定電極の電極面の平面状態が大きく寄与する。
つまり、非常に良好な平面が維持できている場合には、振動膜が電極面でしっかりと挟持でき、静電容量が理論値に一致する。
一方、固定電極に変形が生じて、電極面の平面性が崩れた場合には、振動膜との間に隙間が生じ、静電容量が低下する。
ここで、固定電極の平面性に対しては、固定方式の影響が非常に大きく、この影響を可能な限り低減する事が、本発明のポイントである。
【0063】
そこで、上述した本発明による固定方法による効果を検証するためにシミュレーションを行った。従来の固定方法と本発明の固定方法のそれぞれについて、数値解析を行い、両者の差違を明らかにした。解析ソフトには、汎用構造ソフト「I-DEAS NX10」を使用した。
【0064】
[解析モデル]
図6で示した固定電極の片側を3次元化したものであり、固定電極の厚み1.5mm、挿通孔径をφ0.75mmとして作成したモデルを四面体要素分割し、要素数は165117、節点数は47109である。
[解析条件]
固定電極の材料特性は表1に示すようである。
【0065】
【表1】


拘束条件:
2枚の固定電極を対向させて締め付ける場合に、図7中、点線で示した、挿通孔が設けられている電極面の内側と外側のエッジにおいて、厚み方向の変位は生じないが、平面方向では変形による変位が起こる可能性があるため、厚み方向は並進固定、平面方向は並進自由とした。なお、回転の自由度については、全て固定した。
【0066】
荷重条件:
2枚の固定電極を固定するネジの締付けトルク(4.4cN/m)に相当する締付け力(11kg)を、ネジ固定部に面圧(3320mN/mm)として与えた。
従来の固定方法である、固定電極中央部1箇所及び固定電極外周部4箇所の計5箇所締めにおける、電極面の最大変位量を表2に示す。また、固定電極の厚みは1.5mm、材質はアルミニウムであり、比較としてステンレスの場合についても示す。
【0067】
【表2】


ここで、最大変位発生箇所は、何れの材質においても、固定電極外周部の固定部位に近い外周側であり、アルミニウムでは0.01mmもの変位が発生する。よって固定電極と振動膜との間に大きな隙間が生じ、結果的に振動特性が劣化し、音圧が低下あるいは不安定となる。
【0068】
表3に、本発明の固定方法である、固定電極中央部1箇所締めでの、電極面の最大変位量を示す。締付け力は、従来の固定方法と同様の11kgとした。
【0069】
【表3】


最大変位発生箇所は、何れの材質においても、固定電極外周部の固定部に近い外周側ではあるが、アルミニウムでも0.001mmの変位しか発生せず、固定電極と振動電極膜の隙間は非常に小さく抑えられている。よって、振動電極膜はしっかりと固定電極で挟持されるため、振動特性が改善あるいは安定し、音圧が向上あるいは安定する。
【0070】
以上の記載の通り、従来の構成では、固定電極四隅のネジ固定部で大きな変形が生じ、その影響が電極面の外側付近に及ぶ。
一方、本発明の構成では、電極中央のネジ固定部での変形が非常に小さく、電極面の変形も小さい。
【0071】
[本発明による静電型超音波トランスデューサの構成例の説明]
本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの全体構成を図4に示す。図4(A)は、静電型超音波トランスデューサの全体構成を示し、同図(B)は、図4(A)に示した静電型超音波トランスデューサの一部を破断した平面図を示している。この静電型超音波トランスデューサの電極構造は、図1〜図3に示したものである。
【0072】
図4において、本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサ1は、電極として機能する導電性材料で形成された導電部材を含む一対の固定電極10A、10Bと、一対の固定電極10A、10Bに挟持され、電極層121を有する振動膜12と、一対の固定電極10A、10Bと振動膜を保持する部材(図示せず)とを有している。
【0073】
振動膜12は、絶縁体(絶縁層)120で形成され、導電性材料で形成された電極層121を有しており、該電極層121には、直流バイアス電源16により単一極性(正極性でも負極性のいずれでもよい。)の直流バイアス電圧が印加されるようになっており、さらに、この直流バイアス電圧に重畳して固定電極10Aと固定電極10Bには、信号源18から出力される相互に位相反転した交流信号18A,18Bが電極層121との間に印加されるようになっている。
【0074】
また、一対の固定電極10A、10Bは振動膜12を介して対向する位置に同数かつ複数の貫通穴14を有しており、一対の固定電極10A、10Bの導電部材間には信号源18により相互に位相反転した交流信号18A,18Bが印加されるようになっている。
固定電極10Aと電極層121、固定電極10Bと電極層121は、それぞれコンデンサが形成されている。
【0075】
上記構成において、超音波トランスデューサ1は、振動膜12の電極層に、直流バイアス電源16により単一極性の(本実施形態では正極性の)直流バイアス電圧に信号源18から出力される相互に位相反転した交流信号18A,18Bが重畳された状態で印加される。
【0076】
一方、一対の固定電極10A、10Bには、信号源18より相互に位相反転した交流信号18A,18Bが印加される。
【0077】
この結果、信号源18から出力される交流信号18Aの正の半サイクルでは、固定電極10Aに正の電圧が印加されるために、振動膜12の固定電極で挟持されていない表面部分12Aには、静電反発力が作用し、表面部分12Aは、図4上、下方に引っ張られる。
【0078】
また、このとき、交流信号18Bが負のサイクルとなり、対向する固定電極10Bには負の電圧が印加されるために、振動膜12の前記表面部分12Aの裏面側である裏面部分12Bには、静電吸引力が作用し、裏面部分12Bは、図4上、さらに下方に引っ張られる。
【0079】
したがって、振動膜12の一対の固定電極10A、10Bにより挟持されていない膜部分は、同方向に静電吸引力と静電反発力(静電斥力)を受ける。これは、信号源18から出力される交流信号の負の半サイクルについても同様に、振動膜12の表面部分12Aには図4上、上方に静電吸引力が、また裏面部分12Bには、図4上、上方に静電反発力が作用し、振動膜12の一対の固定電極10A、10Bにより挟持されていない膜部分は、同方向に静電吸引力と静電斥力を受ける。このようにして、交流信号の極性の変化に応じて振動膜12が同方向に静電吸引力と静電斥力を受けながら、交互に静電力が働く方向が変化するので、大きな膜振動、すなわち、パラメトリックアレイ効果を得るのに十分な音圧レベルの音響信号を発生することができる。
【0080】
このように本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサ1は、振動膜12が一対の固定電極10A、10Bから力を受けて振動することからプッシュプル(Push―Pull)型と呼ばれている。
【0081】
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサ1は、従来の、振動膜に静電吸引力のみしか作用しない静電型の超音波トランスデューサ(Pull型)に比して、広帯域性と高音圧を同時に満たす能力を持っている。
【0082】
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの周波数特性を図10に示す。同図において、曲線Q3が本実施形態に係る超音波トランスデューサの周波数特性である。同図から明らかなように、従来の広帯域型の静電型超音波トランスデューサの周波数特性に比して、より広い周波数帯にわたって、高い音圧レベルが得られることが分かる。具体的には、20kHz〜120kHzの周波数帯域においてパラメトリック効果が得られる120dB以上の音圧レベルが得られることが分かる。
【0083】
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサ1は一対の固定電極10A、10Bに挟持された薄膜の振動膜12が静電吸引力と静電斥力の両方を受けるため、大きな振動が発生するばかりでなく、振動の対称性が確保されるため、高い音圧を広帯域に渡って発生させることができる。
【0084】
次に、本発明の実施形態に係る超音波スピーカの構成を図5に示す。本実施形態に係る超音波スピーカは、上述した本発の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサ(図4)を超音波トランスデューサ55として用いたものである。
【0085】
図5において、本実施形態に係る超音波スピーカは、可聴波周波数帯の信号波を生成する可聴周波数波発振源(信号源)51と、超音波周波数帯のキャリア波を生成し、出力するキャリア波発振源(キャリア波供給手段)52と、変調器(変調手段)53と、パワーアンプ54と、超音波トランスデューサ55とを有している。
【0086】
変調器53は、キャリア波発振源52から出力されるキャリア波を可聴周波数波発振源51から出力される可聴波周波数帯の信号波により変調し、パワーアンプ54を介して超音波トランスデューサ55に供給する。
【0087】
上記構成において、可聴周波数波発振源51より出力される信号波によってキャリア波発振源52から出力される超音波周波数帯のキャリア波を変調器53により変調し、パワーアンプ54で増幅した変調信号により超音波トランスデューサ55を駆動する。この結果、上記変調信号が超音波トランスデューサ55により有限振幅レベルの音波に変換され、この音波は媒質中(空気中)に放射されて媒質(空気)の非線形効果によって元の可聴周波数帯の信号音が自己再生される。
【0088】
すなわち、音波は空気を媒体として伝播する粗密波であるので、変調された超音波が伝播する過程で、空気の密な部分と疎な部分な顕著に表れ、密な部分は音速が速く、疎な部分は音速が遅くなるので変調波自身に歪が生じ、その結果キャリア波(超音波周波数帯)と波形分離され、可聴波周波数帯の信号波(信号音)が再生される。
【0089】
以上のように高音圧の広帯域性が確保されると様々な用途にスピーカとして利用することが可能となる。超音波は空中では減衰が激しく、その周波数の二乗に比例して減衰する。したがって、キャリア周波数(超音波)が低いと減衰も少なくビーム状に遠くまで音の届く超音波スピーカを提供することができる。
【0090】
逆にキャリア周波数が高いと減衰が激しいのでパラメトリックアレイ効果が十分に起きず、音が広がる超音波スピーカを提供することができる。これらは同じ超音波スピーカでも用途に応じて使い分けることが可能なため大変有効な機能である。
【0091】
また、ペットとして人間と生活をともにすることの多い犬は40kHzまで、猫は100kHzまでの音を聴くことが可能であるため、それ以上のキャリア周波数をもちいれば、ペットに及ぼす影響もなくなるという利点も有する。いずれにせよ色々な周波数で利用できるということは多くのメリットをもたらす。
【0092】
本発明の実施形態に係る超音波スピーカによれば、広周波数帯域にわたってパラメトリックアレイ効果を得るのに十分に高い音圧レベルの音響信号を発生することができる。
【0093】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサによれば、固定電極に対して、少なくとも2箇所以上に、位置決め機能を有する位置ずれ防止手段を設けると共に、固定電極の中心部1箇所を固定手段により締め付けることにより、固定電極の変形を最小限に抑えて、振動電極膜の挟持性の向上が図れ、安定化させることができる。
その結果、良好な振動電極膜の振動特性が得られ、超音波トランスデューサの振動歪みが低減され、音圧及び音質が向上した超音波スピーカを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサは、各種センサ、例えば、測距センサ等に利用可能であり、また、既述したように、指向性スピーカ用の音源や、理想的なインパルス信号発生源等に利用可能である。また、超指向性音響システムや、プロジェクタ等の表示装置にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの構造を示す平面図及び断面図。
【図2】図1に示した静電型超音波トランスデューサにおける位置すれ防止手段を含む本発明の要部の構成の一例を示す部分平面図、及び断面図。
【図3】図1に示した静電型超音波トランスデューサにおける位置すれ防止手段を含む本発明の要部の構成の他の例を示す部分平面図、及び断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの全体構成を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係る超音波スピーカの構成を示すブロック図。
【図6】Push−Pull型の静電型超音波トランスデューサの電極構造の一例を示す平面図及び断面図。
【図7】本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの効果を検証するためのシミュレーションの条件を説明するための図。
【図8】従来の共振型の超音波トランスデューサの構成を示す図。
【図9】従来の静電型の広帯域発振型超音波トランスデューサの具体的構成を示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの周波数特性を従来の超音波トランスデューサの周波数特性と共に示した図。
【符号の説明】
【0096】
1…超音波トランスデューサ、10…固定電極部、10A,10B…固定電極、12…振動膜、13…振動膜枠、14…貫通穴、15…位置ずれ防止手段、15A…ロッド、15B…接着剤、16…直流バイアス電源、17…固定手段、18…信号源、位置ずれ防止手段,19A…雌型ピン、19B…雄型ピン
20…対向電極部、51…可聴周波数波発振源、52…キャリア波発振源、53…変調器、54…パワーアンプ、55…超音波トランスデューサ、120…絶縁フィルム(絶縁層)、121…電極層、

【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【出願日】 平成18年7月26日(2006.7.26)
【代理人】 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉

【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦


【公開番号】 特開2008−34916(P2008−34916A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−202921(P2006−202921)