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【発明の名称】 スピーカー装置用構成部材及びスピーカー装置
【発明者】 【氏名】高橋 宣章

【要約】 【課題】耐食性及び耐熱性等の向上を図ることが可能なスピーカー装置用構成部材等を提供する。

【構成】スピーカー装置用構成部材は、マグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材により形成されてなる。ここで、スピーカー装置用構成部材は、フレーム、ボイスコイルボビン、ダンパー、振動板、エッジ、キャップ及び筐体などを対象とすることができる。好適な例では、マグネシウム又はマグネシウム合金に対するカルシウムの添加量は、0.1〜50wt%であるのが好ましい。これにより、マグネシウム系素材の表面は緻密で且つ平滑な酸化カルシウム皮膜で覆われる。よって、スピーカー装置用構成部材は、大気中の酸素との結びつきが遮断され、錆び難くなると共に燃え難くなる。その結果、マグネシウム単体よりなる素材と比較して、耐食性及び耐熱性の向上を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材により形成されてなることを特徴とするスピーカー装置用構成部材。
【請求項2】
前記マグネシウム系素材の表面には皮膜が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置用構成部材。
【請求項3】
前記皮膜は、化成処理皮膜、陽極酸化皮膜、電着塗装皮膜、スプレー塗装皮膜、スパッタリング皮膜、メッキ皮膜のいずれか又は組み合わせよりなる皮膜であることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置用構成部材。
【請求項4】
前記カルシウムの添加量は、0.1wt%〜50wt%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカー装置用構成部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスピーカー装置用構成部材を備えるスピーカー装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー装置用構成部材の素材構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スピーカー装置は、振動板、エッジ、フレーム、ダンパー、ボイスコイルボビン、キャップ及び筐体などの様々なスピーカー装置用構成部材により構成されている。そのようなスピーカー装置用構成部材として、マグネシウムよりなるマグネシウム振動板が知られている。そのようなマグネシウム振動板は、軽量、高内部損失などの特性を有するため、ツィータなどの高域再生用のスピーカー装置などに好適に用いられている。
【0003】
また、マグネシウムは酸化し易い性質を有するため、マグネシウム振動板の表面には、通常、陽極酸化処理や電着塗装処理などの防湿処理が施されることが多い。これにより、マグネシウム振動板の耐食性の向上を図ることができるという利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、そのような目的で、マグネシウム材の表面に陽極酸化皮膜や電着塗装皮膜(例えば、アクリル樹脂皮膜)を形成してなるマグネシウム振動板の一例が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−072641号公報
【特許文献2】特開平11−236698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したアクリル系樹脂よりなる電着塗装皮膜はヤング率が低いので、上記したマグネシウム振動板の表面に、そのような電着塗装皮膜を形成すると、かかる振動板のヤング率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、耐食性及び耐熱性等の向上を図ることが可能なスピーカー装置用構成部材及びスピーカー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、スピーカー装置用構成部材であって、マグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材により形成されてなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の1つの実施形態では、スピーカー装置用構成部材は、マグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材により形成されてなる。
【0010】
上記のスピーカー装置用構成部材は、マグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材により形成されてなる。ここで、スピーカー装置用構成部材は、フレーム、ボイスコイルボビン、ダンパー、振動板、エッジ、キャップ及び筐体などを対象とすることができる。好適な例では、マグネシウム又はマグネシウム合金に対するカルシウムの添加量は、0.1wt%(重量%)〜50wt%(重量%)であるのが好ましい。
【0011】
このため、マグネシウム系素材の表面は緻密で且つ平滑な酸化カルシウム皮膜で覆われている。
【0012】
かかる素材構造により、マグネシウム系素材よりなるスピーカー装置用構成部材は、大気中の酸素との結びつきが遮断され、錆び難くなる。その結果、マグネシウム単体よりなる素材と比較して、耐食性の向上を図ることができる。
【0013】
この点に関し、実際に、マグネシウム合金AZ31よりなるマグネシウム系素材(比較例1)と、上記のマグネシウム系素材よりなるスピーカー装置用構成部材とを用い、その両者の一定の範囲の部分に対して塩水を噴霧する試験を実施したところ、上記のスピーカー装置用構成部材は、比較例1に比較して、その一定の範囲内の部分における腐食部分が少なく、発錆の進行割合を約1/3以下に抑えることができた。
【0014】
また、かかる素材構造により、マグネシウム系素材よりなるスピーカー装置用構成部材は、大気中の酸素との結びつきが遮断され、燃え難くなる。よって、マグネシウム単体よりなる素材と比較して、耐熱性の向上をも図ることができる。その結果、アンプ側から、より大入力の音声信号を、スピーカー装置の構成要素であるスピーカーユニットに供給することが可能になると共に、当該スピーカーユニットの耐熱性等に関する安全性の向上を図ることができる。
【0015】
この点に関し、実際に、マグネシウム合金よりなるマグネシウム系素材(比較例2)と、上記のマグネシウム系素材よりなるスピーカー装置用構成部材とを用い、発火温度を測定したところ、上記のスピーカー装置用構成部材は、比較例2に対して、発火温度を約200〜300℃ほど上昇させることができた。
【0016】
また、上記のように耐食性の向上を図ることができるので、マグネシウム系素材の表面に、樹脂系よりなる電着塗装皮膜等の皮膜を薄く形成或いは形成不要となるので、当該マグネシウム系素材よりなるスピーカー装置用構成部材のヤング率の向上を図ることができる。よって、スピーカー装置用構成部材が振動板であるような場合には、薄くて軽い高音域再生用の振動板を構成することができる。その結果、振動板の固有振動数を上げることができ、スピーカー装置における中高音域の周波数特性を改善することが可能となる。
【0017】
上記のスピーカー装置用構成部材の一つの態様では、前記マグネシウム系素材の表面には皮膜が形成されてなる。これにより、より一層、耐食性及び耐熱性等の向上を図ることができる。特に、この態様では、マグネシウム系素材自体の耐食性が向上しているので、表面処理工程においてマグネシウム系素材の表面への皮膜の形成量を少なくすることができ、その分、スピーカー装置用構成部材のコストダウンを図ることができる。
【0018】
上記のスピーカー装置用構成部材の他の態様では、前記皮膜は、化成処理皮膜、陽極酸化皮膜、電着塗装皮膜、スプレー塗装皮膜、スパッタリング皮膜、メッキ皮膜のいずれか又は組み合わせよりなる皮膜であるのが好ましい。これにより、スピーカー装置用構成部材の意匠性等も高めることができる。特に、この態様では、マグネシウム系素材自体の耐食性が向上しているので、電着塗装処理工程において前記皮膜の表面への電着塗装皮膜の塗布量を少なくすることができ、その分、スピーカー装置用構成部材のコストダウンを図ることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態では、上記のスピーカー装置用構成部材を備えるスピーカー装置を構成することができる。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0021】
[スピーカー装置の構成]
図1に、本発明の実施例に係るスピーカー装置用構成部材を含むスピーカー装置100を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。
【0022】
スピーカー装置100は、図1に示すように、スピーカーユニット50と、当該スピーカーユニット50を収容する筐体51と、を備えて構成される。なお、本発明では、スピーカー装置の構成及び駆動方式等、及び、スピーカー装置用構成部材の形状、位置、大きさなどは、以下に述べる構成等に限定されるものではない。
【0023】
スピーカーユニット50は、磁気回路と振動系部材とを備えて構成されている。
【0024】
磁気回路は、円柱状のポール部1a及びそのポール部1aの外周壁の下端部から外側に延在するフランジ部1bとを含むヨーク1と、そのフランジ部1b上に取り付けられた環状の形状をなすマグネット2と、そのマグネット2上に取り付けられた環状の形状をなすプレート3とを有する。ポール部1aとプレート3の間にはマグネット2の磁束が集中する磁気ギャップ30が形成されている。
【0025】
振動系部材には、ボイスコイルボビン4、ボイスコイル5、ダンパー6、振動板7、フレーム8、エッジ9、及びキャップ10が含まれる。
【0026】
フレーム8は、略杯状の形状をなし、スピーカーユニット50を構成する様々な構成要素を支持する機能を有する部材である。フレーム8の下端部はプレート3上に取り付けられている。
【0027】
ボイスコイルボビン4は、ボイスコイル5を所定位置に固定し、入力信号に応じてボイスコイル5と共に振動して、その振動を振動板7へ伝達する機能を有する部材である。ボイスコイルボビン4は、円筒状の形状をなし、ヨーク1の要素であるポール部1aの外周壁の上端部近傍を覆う位置に設けられている。
【0028】
ボイスコイル5は、1対のプラス及びマイナスのリード線(図示略)を有し、ボイスコイルボビン4の外周壁の下端部に巻かれている。このため、ボイスコイル5は、磁気ギャップ30内に配置されている。ここで、プラス側のリード線はL(又はR)チャンネル信号の入力配線であり、マイナス側のリード線はグランド(GND:接地)信号の入力配線である。各リード線は、1対のプラス及びマイナスの錦糸線(図示略)に夫々電気的に接続され、かかる各錦糸線は、フレーム8の適当な位置に設けられたスピーカー装置用端子(図示略)に夫々電気的に接続されている。なお、かかるスピーカー装置用端子は、アンプ側の1対のプラス及びマイナスの出力配線にも電気的に接続されている。これにより、ボイスコイル5には、アンプ側から1チャンネル分の信号及び電力(以下、単に「音声電流」とも称する)が夫々入力される。
【0029】
ダンパー6は、ボイスコイルボビン4を弾性的に支持する部材である。また、ダンパー6には、環状の形状をなし、同心円状の複数の波形形状(コルゲーション)が形成されている。ダンパー6の内周縁部はボイスコイルボビン4の外周壁に取り付けられている一方、ダンパー6の外周縁部はフレーム8の適当な位置に取り付けられている。
【0030】
振動板7は、コーン状の形状をなし、入力信号に応じた音波を放射する機能を有する部材である。振動板7の内周縁部はボイスコイルボビン4の外周壁の上端部に取り付けられている。
【0031】
エッジ9は、環状の形状をなし、振動板7で生じる不要な振動などを吸収する機能を有する部材である。エッジ9の内周縁部は振動板7の外周縁部に取り付けられる一方、エッジ9の外周縁部はフレーム9の適当な位置に取り付けられる。
【0032】
キャップ10は、ドーム形状をなし、スピーカーユニット50の内部に粉塵等が侵入するのを防止する機能を有する。キャップ10は、ボイスコイルボビン4の上面側を覆う位置に配置された状態で振動板7の放音面側に取り付けられている。
【0033】
筐体51は、スピーカーユニット50を収容し且つ固定する機能を有する部材である。
【0034】
以上の構成を有するスピーカー装置100では、アンプ側から出力された音声電流は、スピーカー装置用端子、1対のプラス及びマイナスの錦糸線、並びにボイスコイル5の1対のプラス及びマイナスのリード線を通じて、当該ボイスコイル5へ入力される。これにより、フレミングの左手の法則に基づき、磁気ギャップ30内でボイスコイル5に駆動力が発生し、振動板7をスピーカー装置100の中心軸L1方向へ振動させる。これにより、振動板7を通じて矢印Y1方向に音波が放射される。
【0035】
(スピーカー装置用構成部材の素材構造)
上記した構成を有するスピーカー装置100において、本発明では、特に、フレーム8、ボイスコイルボビン4、ダンパー6、振動板7、エッジ9、キャップ10及び筐体51などのスピーカー装置用構成部材の素材構造に特徴を有している。以下、スピーカー装置用構成部材の素材構造について説明する。
【0036】
一般的にマグネシウムは、酸化し易く耐食性に難点を有すると共に、発火し易い性質を有する。
【0037】
この点、本発明の実施例に係るスピーカー装置用構成部材は、図2(a)に示すように、マグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材70により形成されてなり、単層構造をなす。好適な例では、マグネシウム又はマグネシウム合金に対するカルシウムの添加量は、約0.1〜約50wt%(重量%)であるのが好ましい。
【0038】
このため、マグネシウム系素材70の表面は緻密で且つ平滑な酸化カルシウム皮膜で覆われている。
【0039】
かかる素材構造により、マグネシウム系素材70は、大気中の酸素との結びつきが遮断され、錆び難くなる。その結果、マグネシウム単体よりなる素材と比較して、耐食性の向上を図ることができる。
【0040】
この点に関し、実際に、マグネシウム合金AZ31よりなるマグネシウム系素材(比較例1)と、本実施例に係るマグネシウム系素材70とを用い、その両者の一定の範囲の部分に対して塩水を噴霧する試験を実施したところ、本実施例は、比較例1に比較して、その一定の範囲内の部分における腐食部分が少なく、発錆の進行割合を約1/3以下に抑えることができた。
【0041】
また、かかる素材構造により、マグネシウム系素材70は、大気中の酸素との結びつきが遮断され、燃え難くなる。よって、マグネシウム単体よりなる素材と比較して、耐熱性の向上をも図ることができる。その結果、アンプ側から、より大入力の音声信号をスピーカーユニット50に供給することが可能になると共に、スピーカーユニット50の耐熱性等に関する安全性の向上を図ることができる。
【0042】
この点に関し、実際に、マグネシウム合金よりなるマグネシウム系素材(比較例2)と、本実施例に係るマグネシウム系素材70とを用い、発火温度を測定したところ、本実施例は、比較例2に対して、発火温度を約200〜300℃ほど上昇させることができた。
【0043】
また、上記のように耐食性の向上を図ることができるので、マグネシウム系素材70の表面に、樹脂系よりなる電着塗装皮膜等の皮膜を薄く形成或いは形成不要となるので、当該マグネシウム系素材70のヤング率の向上を図ることができる。よって、スピーカー装置用構成部材が振動板7であるような場合には、薄くて軽い高音域再生用の振動板7を構成することができる。その結果、振動板7の固有振動数を上げることができ、スピーカー装置100における中高音域の周波数特性を改善することが可能となる。
【0044】
なお、本発明では、スピーカー装置用構成部材の素材構造は、上記したものに限定されない。
【0045】
即ち、本発明の他の実施例では、図2(b)に示すように、マグネシウム系素材70の表面に皮膜71を形成し、多層構造とすることもできる。好適な例では、皮膜71は、化成処理皮膜、陽極酸化皮膜、電着塗装皮膜、スプレー塗装皮膜、スパッタリング皮膜、メッキ皮膜のいずれか又は組み合わせよりなる皮膜であるのが好ましい。これにより、より一層、耐食性の向上を図ることができる。特に、本実施例では、マグネシウム系素材70自体の耐食性が向上しているので、表面処理工程においてマグネシウム系素材70の表面への皮膜71の形成量(厚さd1)を少なくすることができ、その分、スピーカー装置用構成部材のコストダウンを図ることができる。
【0046】
また、本発明の更に他の実施例では、図2(c)に示すように、前記皮膜71の表面に更に電着塗装皮膜72を形成し、多層構造とすることもできる。なお、前記皮膜71が電着塗装皮膜等である場合には、当該皮膜71の表面に電着塗装皮膜72を重ねて形成する必要はない。これにより、スピーカー装置用構成部材の意匠性等も高めることができる。特に、本実施例では、マグネシウム系素材70自体の耐食性が向上しているので、電着塗装処理工程において皮膜71の表面への電着塗装皮膜72の塗布量(厚さd2)を少なくすることができ、その分、スピーカー装置用構成部材のコストダウンを図ることができる。
【0047】
[スピーカー装置用構成部材の製造方法]
次に、図3及び図4等を参照して、本発明の適用対象となるスピーカー装置用構成部材の製造方法について説明する。図3は、本発明の適用対象となるスピーカー装置用構成部材の製造方法を示すフローチャートである。図4は、図3における圧延工程P1に対応する圧延工程図を示す。
【0048】
まず、所定厚さを有しマグネシウム又はマグネシウム合金にカルシウムを添加してなるマグネシウム系素材70を圧延工程200によって所望の厚さに圧延して、所定厚さを有するシート状のマグネシウム系シート24を得る(圧延工程P1)。
【0049】
好適な例では、マグネシウム系シート24は、マグネシウム合金AZ61にカルシウムを2wt%添加してなるマグネシウム系素材70を約0.044mmの厚さに圧延することにより形成されるのが好ましい。
【0050】
ここで、圧延工程200の一例について説明する。
【0051】
圧延機23は、一定の方向に回転しながら一定のテンションをかけつつマグネシウム系素材70を所定の厚さに圧延する圧延ローラー21a、21b、21c、21dと、マグネシウム系素材70を所定の温度に加熱する恒温槽22と、を備えている。
【0052】
圧延ローラー21a、21b、21c、21dは、図示しないテンション調整機構を通じて、一定のテンションに調整することが可能となっている。テンション調整機構は、作業者などが操作盤を操作することで、一定のテンションに調整される。本例では、圧延ローラー21a、21b、21c、21dは、1回毎の圧延でマグネシウム系素材70を約1〜20μmの範囲内で薄くすることができる。
【0053】
恒温槽22は、マグネシウム系素材70を所定の温度に加熱するための装置であり、図示しない温度調節機により、内部が一定の温度にコントロールされている。尚、マグネシウムは最密六方晶であるため常温での加工が困難である。このため、恒温槽22により通常200〜400℃程度、好ましくは約300℃に加熱しながら圧延するのが好ましい。これにより、塑性変形し難いマグネシウム系素材70を圧延し易い状態にする。
【0054】
次に、圧延工程200の流れについて説明すると、先ず、一定の厚さを有するマグネシウム系素材70は、図示しない送り出し装置により圧延機23へと送り出される(矢印s1)。次いで、圧延ローラー21a、21bは一定の方向に回転しながら(矢印s2及びs3)、マグネシウム系素材70を所定の厚さに圧延すると共に、そのマグネシウム系素材70を恒温槽22内へと送り出す。マグネシウム系素材70は、恒温槽22内を通過している間に所定の温度に加熱されて塑性変形し易くなる。次いで、そのマグネシウム系素材70が恒温槽22から圧延ローラー21c、21dへと送り出されると、圧延ローラー21c、21dは一定の方向に回転しながら(矢印s4及びs5)、マグネシウム系素材70を再び圧延する。そして、上記の圧延方法により、マグネシウム系素材70を異なる圧延量で複数回圧延を繰り返すことによって、最終的に所望の厚さを有するマグネシウム系シート24を得る(矢印s6)。
【0055】
尚、本例では、上述したようにマグネシウム系素材70を圧延する際に1回毎の圧延量を約1〜20μmの範囲としているが、これは以下の理由による。即ち、マグネシウム系素材70は、すべり変形量が他の金属に比して非常に小さいため塑性変形し難い材料である。このため、一度に圧延する圧延量を大きくしすぎると、マグネシウム系素材70内に潜在する残留歪の影響によって、マグネシウム系素材70に亀裂、反り、或いはピンホールなどの不具合が発生し、歩留まりの低下につながる。よって、本例では、1回毎の圧延量を約1〜20μmと小さくし、マグネシウム系素材70を複数回圧延することで、上記不具合を解消し、歩留まりの向上を図るようにしている。
【0056】
なお、上記の圧延方法例は、あくまで一例を示したものであり、圧延方法及び1回毎の圧延量、及びマグネシウム系シート24の厚さなどはこれに限られるものではない。
【0057】
次に、図3に戻り、得られたマグネシウム系シート24を、成型工程によって周知の方法により成型し、例えば、図1に示すフレーム8、ボイスコイルボビン4、ダンパー6、振動板7、エッジ9、キャップ10及び筐体51などのスピーカー装置用構成部材を得る(成型工程P2)。
【0058】
次に、周知の表面処理工程により、スピーカー装置用構成部材の表面に、緻密で且つ高弾性率の皮膜71、例えば、化成処理皮膜、陽極酸化皮膜、電着塗装皮膜、スプレー塗装皮膜、スパッタリング皮膜、メッキ皮膜のいずれか又は組み合わせよりなる皮膜を所定厚さ、例えば約0.001mmに形成する(表面処理工程P3)。なお、この表面処理工程P3では、さらに周知の電着塗装工程を設け、皮膜71の表面に、その電着塗装工程により、電着塗装皮膜72を形成することもできる。ここで、前記皮膜71が電着塗装皮膜等である場合には、当該皮膜71の表面に電着塗装皮膜72を重ねて形成する必要はない。
【0059】
以上の各工程を経て、本発明の特徴をなすスピーカー装置用構成部材が製造される。こうして製造されたスピーカー装置用構成部材の製造方法によれば上記したことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のスピーカー装置用構成部材を含むスピーカー装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明のスピーカー装置用構成部材の各種の素材構造を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明のスピーカー装置用構成部材の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】図3における圧延工程の一例を示す圧延工程図である。
【符号の説明】
【0061】
4 ボイスコイルボビン
6 ダンパー
7 振動板
8 フレーム
9 エッジ
10 キャップ
50 スピーカーユニット
51 筐体
70 マグネシウム系素材
71 皮膜
72 電着塗装皮膜
100 スピーカー装置
【出願人】 【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
【出願日】 平成18年7月26日(2006.7.26)
【代理人】 【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延

【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫


【公開番号】 特開2008−34909(P2008−34909A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−202828(P2006−202828)