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【発明の名称】 骨伝導レシーバ
【発明者】 【氏名】藤田 柾彦

【氏名】川瀬 英幸

【氏名】新渡戸 祐二

【氏名】多 勝広

【氏名】辻 剛史

【氏名】金井 孝之

【要約】 【課題】骨伝導スピーカの出力振動を効率よく伝達することができる骨伝導レシーバを提供することを目的とする。

【構成】本発明に係る骨伝導レシーバは、音情報を振動に変換する骨伝導スピーカ10と、当該骨伝導スピーカ10を収納するケース2とを備えた骨伝導レシーバ1であって、骨伝導スピーカ10は、音情報に応じて振動を発生させる積層型柱状圧電素子12と、ケース2から凸状に突出し、人体頭部に当接した状態で積層型柱状圧電素子12が発生させた振動を人体頭部に伝達するパット16とを有するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音情報を振動に変換する骨伝導スピーカと、
当該骨伝導スピーカを収納するケースとを備えた骨伝導レシーバであって、
前記骨伝導スピーカは、
前記音情報に応じて振動を発生させる振動発生手段と、
前記ケースから凸状に突出し、人体頭部に当接した状態で前記振動発生手段が発生させた振動を人体頭部に伝達する振動伝達部とを有する骨伝導レシーバ。
【請求項2】
前記振動伝達部は、略コ字状に折れ曲がった形状を有し、
前記振動発生手段は、前記振動伝達部における対向した二面の間において当該二面とは異なる面付近に配置され、前記音情報に応じて前記対向した二面の間で振動を発生させることを特徴とする請求項1に記載の骨伝導レシーバ。
【請求項3】
前記振動伝達部において突出した凸状のピーク部は、前記振動伝達部の中央よりも前記振動発生手段の位置から離れた側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の骨伝導レシーバ。
【請求項4】
前記振動発生手段は、当該骨伝導レシーバの中央よりも端面に近い側に配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の骨伝導レシーバ。
【請求項5】
前記振動伝達部は、
略コ字状に折れ曲がったフレームと、
当該フレームにおける対向した二面の内の一面に配置され、前記人体頭部に当接するパットとを有し、
当該パットは、前記ケースから凸状に突出した状態で露出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の骨伝導レシーバ。
【請求項6】
前記振動伝達部において振動する端部は、積層型柱状圧電素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の骨伝導レシーバ。
【請求項7】
音情報を振動に変換する骨伝導スピーカと、
当該骨伝導スピーカを収納するケースとを備えた骨伝導レシーバであって、
前記骨伝導スピーカは、
略コ字状に折れ曲がったフレームと、
当該フレームにおける対向した二面の間に配置され、前記音情報に応じて前記対向した二面の間で振動を発生させる振動発生手段と、
前記フレームにおける対向した二面の内の一面に配置され、前記ケースから凸状に突出した状態で露出するパットとを有する骨伝導レシーバ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導スピーカを利用した骨伝導レシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、骨伝導レシーバは骨伝導の助聴器として開発されている。近年、骨伝導レシーバは、携帯電話端末等の情報機器に接続され、音情報の入出力装置として活用されるマンマシンインターフェース機器として応用されている(例えば、特許文献1参照)。そのため、情報機器用インターフェースとして利用される骨伝導レシーバには、携帯電話等の情報機器からの音情報をその利用者に正確に伝えることが求められている。さらに、骨伝導レシーバには、利用者音声や操作情報を確実に情報機器に伝えること、携帯情報機器に接続する機器としてポータビリティに富むこと等が求められている。
【0003】
このような要求を満たすものとして、骨伝導スピーカを使った骨伝導レシーバが提案されている。骨伝導スピーカは、人体頭部に振動を与えて、この振動が聴覚器官に伝わることにより音情報を利用者に伝達するものである。このような骨伝導レシーバでは、空気振動により音情報を伝える方式の気導スピーカに比較し、外耳、内耳の伝音部に障害を持つ人に対して音情報を正確に伝えることができる。さらに、気導スピーカを利用しないため、周囲ヘ音漏れがなく、秘話性が高い。さらにまた、耳介を開放状態で利用することができ、外部音声・警報音等が聴こえるので、人混みや騒音中での利用時、安全性を得易い等の特長がある。
このような特長から、骨伝導レシーバに骨伝導スピーカを利用することが望ましい。この骨伝導レシーバは、音情報を正確に伝え、ポータビリティが優れ、健常者や一部の難聴者のような多くの利用者が良好に活用することができる。そのため、骨伝導スピーカを利用した骨伝導レシーバは、音声信号等の入出力装置に適し、健常者および難聴者に利用されつつある。
【0004】
近年、誰もが携帯電話機等の音情報等を正確に聞き取れ、かつ、ポータビリティに優れた骨伝導レシーバ用の骨伝導スピーカとして圧電セラミック材料から構成された骨伝導スピーカが提案されている。この骨伝導スピーカには積層型柱状圧電素子が使用され、積層型柱状圧電素子の長さ方向の変位は変位増幅機構によって拡大し、その振動出力部から接触した頭部に伝わる。また、増幅機構の固定部に十分大きな質量が配置され、拡大機構の支点である固定部の変位が可能な限り抑えられている。
特に、この骨伝導スピーカを骨伝導レシーバに採用することにより、振動出力部に大きな変位を確保することができ、それとともに固定部の振動を小さく抑えることができる。それ故に、骨伝導レシーバの音漏れをより低減することが可能となる。さらに、この圧電セラミック材料から構成する骨伝導スピーカは、消費電力が小さく、同じ電池でより長時間活用でき、ポータビリティに富んでいる。
【0005】
積層型柱状圧電素子が骨伝導レシーバやハンドセット等のポータブル機器に組み込まれる場合には、製品サイズの制約から、積層型柱状圧電素子の適切な長さは10mm程度以下である。このような10mm程度の積層型柱状圧電素子における標準伸縮量は2μm〜3μm程度であり、音情報を伝達するための十分な伸縮を得ることが困難である。
また、この積層型柱状圧電素子を動力源に使用し、変位増幅構造によって駆動すると、その出力端には所定量拡大された変位を得ることができる。これによって、その利用者の知覚に十分な音情報を伝達することができるが、利用姿勢によっては音情報を十分に伝達できないことがある。また、この積層型柱状圧電素子の変位を増幅する構造の場合には、小型化や軽量対応が十分でない。
【0006】
さらに、従来の骨伝導レシーバは、利用者の顔面に骨伝導スピーカ出力部を当接して利用する方式である。そのため、骨伝導レシーバの積層型柱状圧電素子の発生する振動の伝播経路では、骨伝導スピーカの構造的な損失、出力部と顔面の接触にともなう損失が発生する。この骨伝導スピーカの構造的な損失は、骨伝導スピーカ固定部の質量を十分大きくすることにより低減することができる。これに対して、顔面への接触にともなう損失を十分に低減することが困難である。
【特許文献1】特開2006−86581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の骨伝導レシーバでは、骨伝導スピーカと顔面とが接触することによって骨伝導スピーカの出力振動の損失が生じるため、骨伝導スピーカの出力振動を効率よく伝えることができないという問題があった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、骨伝導スピーカの出力振動を効率よく伝達することができる骨伝導レシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る骨伝導レシーバは、音情報を振動に変換する骨伝導スピーカと、当該骨伝導スピーカを収納するケースとを備えた骨伝導レシーバであって、前記骨伝導スピーカは、前記音情報に応じて振動を発生させる振動発生手段と、前記ケースから凸状に突出し、人体頭部に当接した状態で前記振動発生手段が発生させた振動を人体頭部に伝達する振動伝達部とを有するものである。このような構成においては、ケースから突出した振動伝達部が顔面に確実に接触するので、骨伝導スピーカの出力振動を効率よく伝達することができる。
【0009】
さらに、前記振動伝達部は、略コ字状に折れ曲がった形状を有し、前記振動発生手段は、前記振動伝達部における対向した二面の間において当該二面とは異なる面付近に配置され、前記音情報に応じて前記対向した二面の間で振動を発生させる。これにより、振動発生手段が振動させる振動伝達部の振動中心から遠い部分をより振動させることができる。
【0010】
さらにまた、前記振動伝達部において突出した凸状のピーク部は、前記振動伝達部の中央よりも前記振動発生手段の位置から離れた側に配置される。これによって、振動発生手段の位置から離れた側のピーク部をより振動させることができるので、このピーク部を介して出力振動を効率よく伝達することができる。
【0011】
またさらに、前記振動伝達部において振動する端部は、当該骨伝導レシーバの中央よりも端面に近い側に配置される。これにより、振動する端部をより一層振動させることができるので、出力振動の伝達効率を高めることができる。
【0012】
好適には、前記振動伝達部は、略コ字状に折れ曲がったフレームと、当該フレームにおける対向した二面の内の一面に配置され、前記人体頭部に当接するパットとを有し、当該パットは、前記ケースから凸状に突出した状態で露出する。これにより、顔面と接触する部分をパットによって構成するので、顔面との接触性を容易に変更することができる。
【0013】
また好適には、前記振動発生手段は、積層型柱状圧電素子である。
【0014】
他方、本発明に係る骨伝導レシーバは、音情報を振動に変換する骨伝導スピーカと、当該骨伝導スピーカを収納するケースとを備えた骨伝導レシーバであって、前記骨伝導スピーカは、略コ字状に折れ曲がったフレームと、当該フレームにおける対向した二面の間に配置され、前記音情報に応じて前記対向した二面の間で振動を発生させる振動発生手段と、前記フレームにおける対向した二面の内の一面に配置され、前記ケースから凸状に突出した状態で露出するパットとを有するものである。このような構成においては、ケースから突出した振動伝達部が顔面に確実に接触するので、骨伝導スピーカの出力振動を効率よく伝達することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、骨伝導スピーカの出力振動を効率よく伝達することができる骨伝導レシーバを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る骨伝導レシーバは、音声や音楽等の音情報を振動に変換する骨伝導スピーカを利用した構造を有する。骨伝導スピーカは、音情報を変換した振動を人体頭部の一部に伝え、この振動を聴覚器官に伝達することにより、音情報を認識させる。
具体的には、本発明に係る骨伝導レシーバでは、骨伝導スピーカと顔面との接触状態、骨伝導スピーカの当接部分の構造や取付け方法等を工夫している。この工夫によって、当接状況に関わらず積層型柱状圧電素子で発生した振動がより効果的に利用者の皮膚を介し聴覚器官に伝わる構造が実現される。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
まず、図1を用いて、本発明に係る骨伝導レシーバの全体構成について説明する。図1は、本発明に係る骨伝導レシーバの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の骨伝導レシーバ1は、骨伝導スピーカ10、通話ボタン21、音量切替スイッチ22、LED23、マイク31、本体ケース2、フリップ3、接続ケーブル4を備えている。
【0018】
骨伝導スピーカ10は、携帯電話から接続ケーブル4を介して送られる電気信号を機械的な振動に変換する。通話ボタン21は、骨伝導レシーバ1の通話の開始や通話の終了を制御する。音量切替スイッチ22は、骨伝導スピーカ10の音量を調整する。LED23は、点灯等することによって着信等を報知する。マイク31は、利用者の音声をピックアップする。
本体ケース2は、当該骨伝導レシーバ1の骨伝導スピーカ10、通話ボタン21、音量切替えスイッチ22、LED23等を収納している。また図示しないが、携帯電話(図示せず)からの電気信号や通話ボタン21の操作信号を処理する回路基板等もまた、この本体ケース2内部に支持・収納されている。フリップ3は、マイク31を収納している。ヒンジ24は、フリップ3を本体ケース2に回動可能に軸支している。接続ケーブル4は、コネクター4aを携帯電話機(図示せず)に接続することによって、この携帯電話機と骨伝導レシーバ1とを接続する。
【0019】
続いて、図2を用いて、本発明の骨伝導レシーバ1の最も基本である骨伝導スピーカ10の構造について説明する。図2は、この骨伝導スピーカ10を示す断面模式図である。
図2に示すように、骨伝導スピーカ10は断面略コ字状の形状を有するフレーム11を中心に組み立てられている。フレーム11は、振動出力部11b、弾性部11b、フレーム固定部11cの3部分によって形成されたフレーム構造を有する。また、フレーム11は、金属の板部材をプレス加工等により、断面略コ字状に形成される。
詳細には、振動を出力するための振動出力部11aは、コ字形状のフレーム11の一辺に配置され、その質量はできる限り軽減されている。この振動出力部11aの両側端には、振動出力部11aの剛性を向上させるためのリブが下方に向けて設けられている。平板状の弾性部11bは、振動出力部11aを支持するとともに、その下部をフレーム固定部11cによって支持されている。フレーム固定部11cは、振動出力部11aに対向したコ字形状のフレーム11の他辺に配置されている。このフレーム固定部11cの両側端には、フレーム固定部11cの剛性向上のためのリブ11ccが下方に向けて設けられている。
【0020】
積層型柱状圧電素子12は、その長手方向に変位する特性を有し、振動出力部11aとフレーム固定部11cとの対向する二面の間に配置されている。積層型柱状圧電素子12の上端は、フレーム11の振動出力部11aに当接し、接着剤(図示なし)によって位置ずれしないように固着されている。この図示しない接着剤は、フレーム11および積層型柱状圧電素子12より低いヤング率の低い材料から構成されている。
積層型柱状圧電素子12の下端は与圧ねじ15bの端面と当接し、与圧ねじ15bはフレーム固定部11cに設けられたねじ穴に螺着されている。積層型柱状圧電素子12の下端における四側面は、位置決め板18の孔によって規制され、それとともに与圧作業後、接着剤(図示なし)によって固定されている。また、積層型柱状圧電素子12の入力線は、弾性部11bの下部を通り、骨伝導レシーバ1の本体ケース内に収納された駆動回路基板(図示せず)に結線している。
【0021】
コ字形状のフレーム11構造の内側空間にはベース錘13が設けられている。ベース錘13は、フレーム固定部11cとの間で位置決め板18を挟み込み、この状態でフレーム固定部11cに対してねじ15aにより固定されている。これらフレーム固定部11c、位置決め板18、ベース錘13、ねじ15aにより固定部14が構成されている。この固定部14の合計質量は、振動出力部11aおよびパッド16の合計質量に比較して、最低2倍以上、理想的には10倍以上に設定するとよい。また、ベース錘13と位置決め板18は一体にした部品構成でもよい。
【0022】
上記した基本構造において、振動出力部11a上にパット16が設けられている。これら振動出力部11aとパット16によって、積層型柱状圧電素子12が発生させた振動を伝達する振動伝達部11dが構成されている。振動出力部11aおよびパット16は、できる限り小質量で、高剛性を有する構造であることが理想である。これら振動出力部11aおよびパット16は、振動出力部11aと弾性部11bの交点近傍に生じる振動出力部11aの回動中心を基準に回動振動する。従って、弾性部11bは、振動出力部11aを回動可能に支持するヒンジの機能を有する。さらに、弾性部11bは、積層型柱状圧電素子12に与圧を付与する力を発生する機能を有し、これらの機能に加えて、振動体のばねとしての機能を有する。また、フレーム固定部11cは、ベース錘13と位置決め板18等とともに全体の固定支持部として、より大きい質量を得ることにより、固定部14の振動を抑制することができる。
【0023】
振動出力部11aは、骨伝導レシーバ1の利用時、耳介付近の顔面に接触し、その振動動作によって接触している顔面を振動させる機能を負っている。従って、振動出力部11aは、弾性部11bの特長に対して、顔面との接触性の良さを必要とする。
そこで、振動出力部11aの上面にはパッド16が設けられ、このパッド16は、熱伝導率が低く比重が小さく、かつ高剛性の材質から構成されている。パッド16は、位置決めのための穴とボスの嵌合により、位置決め後、高い剛性を持った状態で固定されている。この振動出力部11aとパット16の固定が弱い場合には、両者間で副次的な振動が発生し、利用者に対して副次振動を持った耳障りな音情報を伝達することになる。
ここで、パット16に熱伝導率が低い材質を使用する理由は、冬季の早朝など振動出力部11aの金属部が冷え、顔面に直接当たったときの「冷たさ」を軽減するためである。また、比重が小さくかつ剛性が高い材質にする理由は、振動部質量の低減により振幅の増大を図り、また、高い剛性により振動出力部11a内の副次振動発生の防止を図るものである。
【0024】
続いて、図3を用いて、骨伝導レシーバ1への骨伝導スピーカ10の取付け状態について説明する。図3は、骨伝導スピーカ10の取付け状態を示す断面模式図である。
図3に示すように、骨伝導スピーカ10は、支持部材25a,25bを介して、ケース2のリブ2a,2b,2c,2dにより保持されている。支持部材25a、25bは、粘弾性材料から構成され、固定部14の振動を吸収する機能を有する。詳細には、骨伝導スピーカ10によって振動が発生すると、この振動は、振動出力部11aからパット16を経由して利用者の頭部に送出されて伝達される。固定部14は、この頭部に伝達された振動(作用力)に対する反力によって振動し、支持部材25a,25bは、この振動を吸収する。ここで、粘弾性材料とは、粘性と弾性を共に持った部材で、例えば、硬度5度以下のシリコンゴム部材や、シリコンを基材とするゲル状の材料等を示す。
【0025】
骨伝導スピーカ10の振動出力部11aにはパット16が取付けられている。このパット16は、利用者に振動を伝えるインターフェースとして非常に重要である。骨伝導レシーバ1において、骨伝導スピーカ10のパット16は、利用者頭部の皮膚に直接接触し、振動出力部11aの振動を接触部の皮膚を介し利用者の聴覚器官に伝える。パット16は熱伝導率が低く、比重が小さく、かつ、高い剛性の材質から構成されている。これに対して、頭部は、頭蓋骨51の上を柔らかい皮膚52で覆う構造を有する。このパット16と頭部の接触構造は、図4に示すように、硬質なパット16と軟質な皮膚52と硬質な頭蓋骨51が、サンドイッチ構造となっている。
【0026】
このサンドイッチ構造において、皮膚52は、表皮と頭蓋骨51の間に存在する柔らかい部分を示し、柔らかさとその質量を有する。皮膚52の柔らかさは、物理的に粘弾性で、粘性と弾性に分解できる。このサンドイッチ構造と等価な回路モデルが、図5に示されている。
図5に示すように、パット16から頭蓋骨51までの信号(振動)伝達系において、接点aは、パット16に対応し、信号が入力される接点である。この接点aに接続する皮膚52の伝達系要素は、皮膚の粘性52a、皮膚の弾性52b、皮膚の質量52cである。接点bは、頭蓋骨51に対応し、信号出力となる接点である。この接点bにもまた、皮膚の粘性52a、皮膚の弾性52b、皮膚の質量52cが接続されている。この等価回路モデルにおいて、信号である振動をより大きく伝達、つまり、減衰をせずに伝えるには、伝達系のインピーダンスを低減することである。具体的には、粘性52a、質量52cを小さくし、弾性52bを大きくすることとなる。
【0027】
この等価回路モデルにおけるインピーダンスの低減について、図4を用いて、骨伝導レシーバ1と頭部の当接状態で具体的に説明する。図4に示すように、パット16は、皮膚52に当接した時、パット16の当接面16aが当接する皮膚52に食い込むように凸面を形成している。利用者は利用時に、骨伝導レシーバ1を耳介近傍の顔面皮膚52に、骨伝導レシーバ1のパット16を当てる。すると、パット16によって形成された凸状当接面16aは、利用者の顔面の皮膚52に少し押し込まれ、利用者の皮膚52は凸状のパット16表面に沿って凹部を形成する。この一連の動作により、パット16の凸状当接面16aと皮膚52の凹部が密に嵌合する。
【0028】
図6に、嵌合するパット16と皮膚52との圧力分布が示されている。パット16において凸形状当接面16aのピーク16bは、皮膚52に対し、最も大きく押し込まれ、接触圧力が最も高くなる(圧力中心)。この当接による高圧力の部分(圧力中心)では、当接圧力によって柔らかい皮膚52が横に広がり、空間的にその一部が周辺へ移動する。それとともに、周辺の当接力の低い部分は、当接力によって、その皮膚が更に圧力の低い非接触部へ移動する。これによって、皮膚52はパット16の凸状当接面16aが最も多く食い込んだ部分(圧力中心)において最も高い接触圧力を受け、接触圧力はこの最も多く食い込んだ部分の周辺に行くほど低下する。
【0029】
このパット16と皮膚52との接触部分について、図5に示された等価回路モデルにおいて、さらに詳細に説明する。
圧力の高い部分の皮膚52は、パット16における凸状当接面16aのピーク16bに対応した部分(圧力中心)で、頭蓋骨51の方向へ最も多く押され圧縮する。この圧縮にともなって圧力中心の皮膚組織は周辺部より高い圧力を受け、柔らかい皮膚組織は横に広がる。それとともに、皮膚組織内の液体(体液)は周辺部に移動する。これによって、結果的に皮膚組織の構成体積が最も低減する。
物理的には、液体等の比率が低減することから質量や粘性が低減し、また皮膚組織が硬くなることから弾性が大きくなる。図5に示された等価回路モデルにおいては、伝達系のインピーダンスが低減し、伝達性が向上する。つまり、パット16と皮膚52の当接によって接触圧力が高くなる部分において、より効果的に振動が伝達し、圧力中心近傍で最も効果的に振動が伝達される。
【0030】
圧力中心の周辺部は、圧力中心部に比較し、接触圧力が低いため、質量の低減、および弾性の増加が少ない、しかし、この周辺部では、非当接部に比較すると、十分大きな変化が生じ、振動が伝達される。上記した皮膚の特性から、振動を接触により効果的に利用者の知覚部に伝えるには、利用者が不快に成らない範囲において接触圧を上げる当接構造を採用ことが望ましい。
【0031】
本発明に係る骨伝導レシーバ1の骨伝導スピーカ10は、図2に示すように、コ字形状に形成されたフレームに積層型柱状圧電素子12を挿入し、積層型柱状圧電素子12の変位を「テコの原理」を応用して拡大する構造を有する。積層型柱状圧電素子12の変位は、振動出力部11aと弾性部11bの交点近傍に生じる振動出力部11aの回動中心を基準(原点)に、振動出力部11aを回動振動させる。
振動出力部11a上において、その回動の基準から離れるほど、振動出力部11aの変位の増幅度が増す。これに対して、振動出力部11aの変位は、積層型柱状圧電素子12より離れた位置では、積層型柱状圧電素子12単体の変位より大きくなり、回動中心から最も離れた振動出力部11aの先端で最大となる。
【0032】
このように、本発明に係る骨伝導スピーカ10では、パット16の圧力中心となる凸形状当接面16aのピーク16bは、回動中心からみてパット16の長手方向の中央部より、先端16c側に配置されている。この構造を採用することにより、パット16の凸形状当接面16aのピーク16bにおいて大きな変位を確保することができる。それとともにパット16が凸形状である効果を利用することができるので、積層型柱状圧電素子12の振動を利用者の知覚部へ効果的に伝たえることができる。
さらに、本発明に係る骨伝導レシーバ1の骨伝導スピーカ10では、図3に示すように、振動出力部11aの回動中心が骨伝導レシーバ1の中央部側に配置されている。それとともに、振動出力部11aの動作時より大きく変位する(振れる)振動出力部11a先端は、骨伝導レシーバ1の本体ケース2の先端20側に配置されている。それ故、骨伝導スピーカ10における振動を利用者の知覚部へより効果的に伝えることができる。
【0033】
本発明に係る骨伝導レシーバ1の利用姿勢について、図7を用いて説明する。
図7(a)に示すように、本発明の骨伝導レシーバ1の理想的な利用姿勢は、顔面52aに対し、ほぼ平行に配置される場合である。しかしながら、骨伝導レシーバ1の利用姿勢、特に顔面に対する当接角度は、利用者によって大きく変わると想定される。
具体的には、まず、図7(a)に示された骨伝導レシーバ1と顔面52aがほぼ平行に当接する理想的な当接状態がある。この状態から、図7(b)に示すように、顔面52aと骨伝導レシーバ1が少し傾きを持って当接する当接状態が想定される。さらに、図7(c)に示すように、顔面52aと骨伝導レシーバ1が大きな傾きを持って当接する当接状態まで想定される。
【0034】
このように、利用者によって異なる多様な当接状態がある。本発明に係る骨伝導レシーバ1では、パット部16の中央部より骨伝導レシーバ1の先端20側にパット16の凸形状当接面16aのピーク16bを配置している。これにより、パット16の凸状当接面16aのピーク16bと利用者の顔面との安定した当たりを確保することができ、振動を利用者の知覚部へ確実に伝達できる。
【0035】
最後に、図8を用いて、本発明に係る骨伝導レシーバ1の利用について説明する。図8は、本発明に係る骨伝導レシーバ1の利用状態を示す模式図である。ここで、適宜図1を参照しながら説明する。
図8に示すように、骨伝導レシーバ1の利用に際して、予め接続ケーブル4を携帯電話機(図示せず)に接続しておくと便利である。この状態で、例えば、この携帯電話機が他の電話機から通話の着信した場合には、利用者は、フリップ3を開けて通話ボタン21を押す。すると、骨伝導レシーバ1に接続される携帯電話機(図示せず)から通話音声等の音情報の電気信号が接続ケーブル4を介して、骨伝導レシーバ1の本体ケース2内の回路基板に伝わる。この電気信号は、この回路基板から入力線を介して、図2に示された積層型柱状圧電素子12に交流信号として印加される。この積層型柱状圧電素子12は、この電気信号により、その長手軸方向に対して信号に対応した伸縮変動(変位)を行う。
【0036】
フレーム11の振動出力部11aとフレーム固定部11cは、この積層型柱状圧電素子12の伸縮変動により、弾性部11bの湾曲変形にともなって相互に変位を継続する。図2に示すように、本発明に係る骨伝導スピーカ10には、テコの原理を利用した構造が取入れられている。そのため、積層型柱状圧電素子12単体の伸縮量が2μm〜3μm程度であっても、振動出力部11aに取付けられたパット16の変位は、設計された所定値分拡大される。これにより、利用者の知覚部に十分な振動が伝えられ、音情報として認識される。
【0037】
また、このとき利用者が、図7(c)に示すように、骨伝導レシーバ1を利用者の頭部に大きく傾けた状態で当接させたとする。この場合にも、骨伝導レシーバ1の振動出力部11aに固定されているパット16の当接面16aは、パット16の回動中心に対して回動する先端部側にピーク16bを持つ凸面形状を形成する。それ故、骨伝導レシーバ1が利用者の頭部に大きく傾けた状態で当接したとしても、利用者に効果的に振動が伝えられる。
【0038】
本発明に係る骨伝導レシーバ1の骨伝導スピーカ10が動作する時、振動出力部11aとフレーム固定部11cは、相互にその先端側が開閉する方向の変位振動動作をする。このとき、振動出力部11aおよびパット16の質量は、位置決め板18とベース錘13とフレーム固定部11cとねじ15等が一体となる固定部14の合計質量に対して十分小さい。そのため、積層柱状型圧電素子12において発生する伸縮変位は、主に振動出力部11aを変位させる。換言すれば、積層柱状圧電素子12において発生した振動は、振動出力部11aを集中的に駆動し、利用者に信号を伝えることが可能である。
【0039】
また、本体ケース2に支持される側である固定部14の質量が大きいため、積層柱状型圧電素子12にて発生した振動は、主に振動出力部11aから放出されるので、固定部14の振動は少ない。さらに、フレーム固定部11cとケース2の間に、粘弾性材料からなる支持部材25が設けられている。そのため、積層柱状型圧電素子12において発生してフレーム固定部11cに伝わる振動は、この支持部材25で減衰された後、本体ケース2に伝播する。それ故、本体ケース2に伝わる振動は小さく、本体ケース2から外部、特に周囲の空気中に漏れる音量を問題にならないレベルにまで非常に少なく低減することができる。これによって、音漏れを防止することができる。また、この音漏れ低減効果は、固定部14の合計質量に対応し、質量が大きいほどその効果があるが、製品としての大きさや重さを考慮し設定するものである。
【0040】
以上のように、本発明に係る骨伝導レシーバ1によれば、変位量の小さな積層型柱状圧電素子12を使用したとしても、発生した振動を振動出力部11aに集中させることができる。これによって、積層型柱状圧電素子12による振動を利用者の頭部に効率よく伝達することができ、必要な音量を十分確保することができる。
さらに、音漏れ増加の原因となる振動のケースへの伝達量を比較的簡素な構造によって低減することができ、特別な漏れ音の封じ込めの構造をとらずに、必要レベルの音漏れ低減効果を得られる。また、振動出力部11aの先端を骨伝導レシーバ1の先端20側に配置することにより利用者の利用姿勢の影響を低減することが可能になる。
【0041】
このように、本発明によれば、顔面との接触にともなう損失を改善することができ、変位増幅構造を有する骨伝導スピーカの出力振動をより合理的に利用者の聴覚に伝達することができる。従って、本発明に係る骨伝導レシーバ1では、同じ積層型柱状圧電素子を用いた他の骨伝導スピーカに比較して、より大きな振動が利用者の聴覚器官に伝えることができ、より使い易い骨伝導レシーバを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る骨伝導レシーバの外観を示す斜視模式図である。
【図2】本発明に係る骨伝導レシーバにおける骨伝導スピーカの断面模式図である。
【図3】本発明に係る骨伝導レシーバにおける骨伝導スピーカの取付け状態を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係る骨伝導レシーバと頭部との接触状態を示す断面模式図である。
【図5】本発明に係る骨伝導レシーバと頭部との接触部における皮膚の等価回路モデルを示す模式図である。
【図6】本発明に係る骨伝導レシーバのパットと頭部の接触状態における接触圧力分布を示す図である。
【図7】本発明に係る骨伝導レシーバと頭部との利用姿勢を示す模式図である。
【図8】本発明に係る骨伝導レシーバの利用姿勢を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1…骨伝導レシーバ、2…本体ケース、2a,2b,2c,2d…リブ、3…フリップ、
4…接続ケーブル、4a…コネクター、10…骨伝導スピーカ、11…フレーム、
11a…振動出力部、11b…弾性部、11c…フレーム固定部、11d…振動伝達部、
12…積層型柱状圧電素子、13…ベース錘、14…固定部、15a,15b…与圧ねじ、
16…パット、16a…凸状当接面、16b…ピーク、18…位置決め板、
21…通話ボタン、22…音量切替スイッチ、23…LED、24…ヒンジ、
25a,25b…支持部材、31…マイク
51…頭蓋骨、52…皮膚、52a…皮膚の粘性、52b…皮膚の弾性、
52c…皮膚の質量
【出願人】 【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健


【公開番号】 特開2008−17398(P2008−17398A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−189084(P2006−189084)