| 【発明の名称】 |
アレイ式超音波プローブおよび超音波診断装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】山下 洋八
【氏名】細野 靖晴
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| 【要約】 |
【課題】3層以上の音響整合層のうち、低減衰率でダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを有する最上層の音響整合層を備えたアレイ式超音波プローブを提供する。
【構成】スペースをあけて配列され、それぞれ圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネルと、前記各チャンネルのそれぞれの圧電素子が設置され、前記チャンネルのスペースに対応する箇所に溝が形成されたバッキングと、前記各チャンネルの最上層の音響整合層の表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズとを具備し、前記最上層の音響整合層はシリコーン樹脂含有混合物を含み、25℃にてショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが1.8〜2.5MRaylsの特性を有することを特徴とするアレイ式超音波プローブ。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スペースをあけて配列され、それぞれ圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネル; 前記各チャンネルのそれぞれの圧電素子が設置され、前記チャンネルのスペースに対応する箇所に溝が形成されたバッキング;および 前記各チャンネルの最上層の音響整合層の表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズ; を具備し、 前記最上層の音響整合層は、シリコーン樹脂含有混合物を含み、25℃にてショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが1.8〜2.5MRaylsの特性を有することを特徴とするアレイ式超音波プローブ。 【請求項2】 前記シリコーン樹脂含有混合物は、オルガノポリシロキサンと、シリコーン変性有機レジン化合物との混合物で構成されることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項3】 前記シリコーン樹脂含有混合物は、オルガノポリシロキサンとエポキシで終端処理されたシリコーン変性有機レジン化合物を含むシリコーン系混合物との2液系混合物であることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項4】 前記シリコーン樹脂含有混合物は、フーリェ変換赤外分光光度計の測定により得られたスペクトルにおいて、ベンゼン核のC−H伸縮振動およびベンゼン核のC−H面外変角振動を有することを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項5】 前記最上層の音響整合層は、25℃にて5MHzで測定される減衰率が5dB/cm/MHz以下、減衰率と音速の積である減衰性能指数が900m/s・dB/mm/MHz以下であることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項6】 前記最上層の音響整合層は、縦波音速が25℃にて1750〜2200m/s、密度が1.0〜1.35であることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項7】 前記最上層の音響整合層は、前記音響レンズとの熱膨張係数差が50ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項8】 前記最上層の音響整合層は、さらにシリコーンゴム粒子、フッ素樹脂粒子、ウレタンゴム粒子から選ばれる少なくとも1つの有機充填粒子を30体積%以下含むことを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項9】 前記最上層の音響整合層は、さらに密度6g/cm3以下の粉末状無機充填材および繊維状無機充填材から選ばれる少なくとも1つの無機充填材を10体積%以下含むことを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項10】 前記粉末状無機充填材は、酸化亜鉛粉末、酸化ジルコニウム粉末、アルミナ粉末、アエロジルシリカのようなシリカ粉末、酸化チタン粉末、炭化ケイ素粉末、窒化アルミニウム粉末、カーボン粉末および窒化ボロン粉末の群から選ばれる少なくとも1つである請求項9記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項11】 前記繊維状無機充填材は、炭素繊維、炭化珪素繊維、酸化亜鉛繊維、アルミナ繊維およびガラス繊維の群から選ばれる少なくとも1つであり、この繊維状無機充填材は直径が10μm以下で長さが直径の5倍以上であることを特徴とする請求項9記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項12】 前記音響整合層は、3層の積層構造を有し、前記圧電素子と接する下層の音響整合層は音響インピーダンスが25℃にて10〜15MRayls、中間の音響整合層は音響インピーダンスが25℃にて2.7〜8MRayls、前記音響レンズと接する最上層の音響整合層はショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが25℃にて1.8〜2.5MRaylsのシリコーン樹脂含有混合物を含むことを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項13】 前記音響整合層は、4層の積層構造を有し、前記圧電素子と接する下層の音響整合層は音響インピーダンスが25℃にて20〜14MRayls、2層目の音響整合層は音響インピーダンスが25℃にて7〜12MRayls、3層目の音響整合層の音響インピーダンスが25℃にて3〜5MRaylsの基板、および前記音響レンズと接する最上層の音響整合層はショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが25℃にて1.8〜2.5MRaylsのシリコーン樹脂含有混合物を含むことを特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項14】 前記最上層の音響整合層と前記音響レンズとは、25℃にて1.3〜1.8MRaylsの音響インピーダンスを有するゴム系接着剤で接着される特徴とする請求項1記載のアレイ式超音波プローブ。 【請求項15】 請求項1〜14いずれか記載のアレイ式超音波プローブと、 前記超音波プローブにケーブルを通して接続された超音波プローブ制御器と を具備したことを特徴とする超音波診断装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、被検体等に超音波信号を送受信するアレイ式超音波プローブおよびこのアレイ式超音波プローブを有する超音波診断装置に関する。 【背景技術】 【0002】 医療用の超音波診断装置や超音波画像検査装置は、対象物に対し超音波信号を送信し、その対象物内からの反射信号(エコー信号)を受信して対象物内を画像化するものである。この医療用の超音波診断装置や超音波画像検査装置は、超音波信号送受信機能を有する電子操作式のアレイ式超音波プローブが主に用いられている。 【0003】 アレイ式超音波プローブは、バッキングと、このバッキング上に接着され、所望のスペースをあけてアレイ状に配列された複数のチャンネルと、このチャンネル上に接着された音響レンズとを備えた構造を有する。前記複数のチャンネルは、それぞれ前記バッキング上に形成され、例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミク材料やリラクサ系単結晶材料からなる圧電体の両面に電極を貼り付けた構造の圧電素子と、この圧電素子上に形成される音響整合層とを備える。なお、前記バッキングには前記各チャンネルのスペースに対応して溝が形成されている場合もある。 【0004】 このようなアレイ式超音波プローブは、診断時に前記音響レンズ側を被検体に当接させて各チャンネルの圧電素子を駆動させることにより、圧電素子前面から超音波信号を被検体内、つまり人体に送信する。この超音波信号は、圧電素子の駆動タイミングによる電子フォーカスおよび音響レンズによるフォーカスにより被検体内の所要位置に集束される。この時、圧電素子の駆動タイミングを制御することにより被検体内の所要範囲に超音波信号を送信することができ、被検体からのエコー信号を受信処理することにより前記所要範囲の超音波画像(断層像)が得られる。前記超音波プローブの圧電素子の駆動において、その圧電素子の背面側にも超音波信号が放出される。このため、各チャンネルの圧電素子の背面にバッキングを配置し、背面側への超音波信号をこのバッキングで吸収(減衰)して正規の超音波信号が背面側からの超音波信号(反射信号)と共に被検体内に送信される悪影響を回避している。 【0005】 従来、前記音響整合層は1層構造、2層構造または3層以上の多層傾斜構造のもの知られている。特に、最近では広帯域化のために3層以上の音響整合層が好適に用いられている(非特許文献1参照)。 【0006】 一方、特許文献1には超音波プローブの一般的な製造方法が開示されている。すなわち、PZTのような圧電材料からなる圧電体の両面に電極を形成した圧電素子をバッキングであるゴム板に貼り付け、更に、前記圧電素子上に音響整合層を接着して積層体とする。この接着工程において、80〜150℃の加熱処理を施して接着剤層を硬化する場合がある。このため、前記音響整合層は耐熱性を有することが重要である。続いて、前記積層体を音響整合層側からダイサーで幅を50〜300μm程度にアレイ切断して複数のチャンネルを形成する。音響整合層をアレイ切断することにより、各チャンネル間のクロストークを防止している。このため、音響整合層のアレイ切断において高いダイシング加工性を有することが重要である。ひきつづき、前記各チャンネル間のダンシング溝に例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填して機械的な強度を保持する。この後、複数のチャンネルの音響整合層の上に音響レンズを接着することにより超音波プローブを製造する。 【0007】 前記音響レンズは、シリコーンゴムに無機充填物を添加した混合材料で構成され、音響インピーダンスが室温25℃において1.3〜1.7MRaylsの材料が用いられる。これらの音響レンズの熱膨張係数は室温から40℃の範囲では約200ppm/℃である。音響整合層と音響レンズとの接着には、シリコーンゴム系の接着剤や変性シリコーンゴム系の接着剤が用いられている。 【0008】 このようなアレイ式超音波プローブの駆動時において、複数のチャンネルの圧電素子から放射された超音波エネルギーは音響整合層および音響レンズに吸収、減衰される。このとき、超音波エネルギーの一部は熱に変換されるため、例えば循環器用超音波プローブではその音響整合層の温度が60℃以上となることもある。さらに、超音波プローブは使用中に相当の圧力が音響レンズを通して音響整合層にも常時、印加される。これらの熱影響による音響レンズと音響整合層の間の熱膨張差および機械的な圧力の要因によって、音響レンズと最上層の音響整合層の間、最上層の音響整合層とその下の音響整合層との間において剥離が生じる場合がある。その結果、超音波プローブ内での感度のばらつきを生じて信頼性を低下させる。甚だしい場合は、超音波プローブの機能が停止する。これらの現象は特にエポキシ樹脂を最上部の音響整合層材料として用いる場合に音響レンズであるシリコーンゴムとの熱膨張係数の差が150ppm/℃以上にも及ぶために深刻な問題となっていた。 【0009】 また、前記特許文献1には超音波プローブに用いる音響整合層の特性等が具体的に例示されている。例えば、複数の音響整合層のうち、音響レンズと接する最上層の音響整合層は音響インピーダンスが人体の音響インピーダンス(1.4〜1.6MRayls)により近い材料が用いられることが記載されている。 【0010】 前述した音響整合層は、従来、ポリウレタンゴム、ポリエチレン、シリコーンゴム、エポキシ樹脂をベースとする材料が用いられている。具体的には、特許文献2には超音波探触子内部の発熱体から体表に伝わる熱の量を低減するために解決手段として圧電素子と生体表面との間に設けられる音響整合層のうちの少なくとも一つを低熱伝導性が良好な低熱伝導性音響整合層を用いることが開示されている。この低熱伝導性音響整合層は、エポキシ樹脂等からなる基材の中に、シリコーン樹脂のような熱伝導性の低い材料からなる低熱伝導性微粒子を添加・分散して形成することが記載されている。また、非特許文献2、3にはポリウレタン樹脂にポリエチレン繊維または炭素繊維を充填した構造の音響整合層が開示されている。しかしながら、これらの材料は音響整合層として要求される低減衰率で、ダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性,音響レンズとの熱膨張係数の一致などの特性に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを全て満たすものではない。 【0011】 特許文献3には、高硬度の超音波プローブ用音響レンズ材料が開示されている。この特許文献3の表IIにはトリメチルシロキシメタクリロキシプロピルシラン(Trimethylsiloxy methacryloxypropylsilan:TRIS)の音速が1650m/s前後であることが示されている。しかしながら、この音響レンズ材料を音響整合層に適用できる旨は記載もされておらず、示唆もされていない。また、特許文献3に記載されているメチルメタアクリレート(実施例I)、テトラブチルスチレン(実施例II)の材料を適用しても、音響整合層としての所望の音速、減衰率、音響インピーダンスなどの音響特性、それに加えて、音響整合層としての加工性、耐熱性、上下層との接着性、音響レンズとの熱膨張係数の一致等には優れていない。 【0012】 また、特許文献4及び5にはLaser Emission Diode(LED)に用いられる高硬度のシリコーン樹脂を含む材料が示されている。しかしながら、これらのLED用シリコーン材料の音速、減衰率、音響インピーダンスなどの音響特性の情報は開示されておらず、超音波プローブへの応用などにも言及されていない。 【特許文献1】特開2005−198261号公報 【特許文献2】特開平10−75953号公報 【特許文献3】米国特許第5,505,205号明細書 【特許文献4】特開2004−339482号公報 【特許文献5】特開2005−272697号公報 【非特許文献1】T.Inoue et al., IEEE,UFFC, vol.34 No.1,1987,pp.8-15 【非特許文献2】Toshio Kondo and Hiroyuki Fujimoto, Proceedings 2003 IEEE Ultrasonic Symposium p.1318-1321. 【非特許文献3】Toshio Kondo, Mitsuyoshi Kitatuji and Mikio Izumi , Proceedings, 2004 IEEE Ultrasonic Symposium p.1659-1662. 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0013】 本発明は、3層以上の音響整合層のうち、低減衰率でダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性、音響レンズとの熱膨張係数の一致に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを有する最上層の音響整合層を備えたアレイ式超音波プローブを提供することを目的とする。 【0014】 本発明は、前記アレイ式超音波プローブを備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0015】 本発明によると、スペースをあけて配列され、それぞれ圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネル; 前記各チャンネルのそれぞれの圧電素子が設置され、前記チャンネルのスペースに対応する箇所に溝が形成されたバッキング;および 前記各チャンネルの最上層の音響整合層の表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズ; を具備し、 前記最上層の音響整合層は、シリコーン樹脂含有混合物を含み、25℃にてショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが1.8〜2.5MRaylsの特性を有することを特徴とするアレイ式超音波プローブが提供される。 【0016】 また本発明によると、前述した構成のアレイ式超音波プローブと、 前記超音波プローブにケーブルを通して接続された超音波プローブ制御器と を具備したことを特徴とする超音波診断装置が提供される。 【発明の効果】 【0017】 本発明によれば、3層以上の音響整合層のうち、低減衰率でダイシング加工性、耐熱性、上下層との接着性、熱膨張係数の一致に優れ、かつ適切な音響インピーダンスを有する最上層の音響整合層を備え、クロスカップリングの小さい高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブを提供することができる。 【0018】 また、本発明によればクロストークが小さく、高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブが組み込まれ、断層像の画質向上および感度向上が達成された超音波診断装置を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 以下、本発明の実施形態に係るアレイ式超音波プローブおよび超音波診断装置を図面を参照して詳細に説明する。 【0020】 図1は、実施形態に係るアレイ式超音波プローブの要部斜視図、図2は図1のアレイ式超音波プローブの部分断面図である。 【0021】 アレイ式超音波プローブ1は、バッキング2を備えている。複数のチャンネル3は、前記バッキング2上に所望のスペース4をあけて配列されている。前記バッキング2には、前記複数のチャンネル3間のスペース4に対応して溝5がそれぞれ形成されている。なお、前記各チャンネル3間のスペース4には例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填して機械的な強度を保持してもよい。この樹脂は、前記スペース3のみならずその下のバッキング2の溝5にも充填してもよい。 【0022】 前記各チャンネル3は、圧電素子6と、この圧電素子6上に形成された3層以上、例えば3層の音響整合層、すなわち第1〜第3の音響整合層71〜73とを有する。前記圧電素子6は、図2に示すように例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミック材料やリラクサ系単結晶材料からなる圧電体8と、この圧電体8の両面に形成された第1、第2の電極91,92とから構成されている。前記圧電素子6の第1電極91は、前記バッキング2上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)により接着、固定されている。前記第1音響整合層71は、前記圧電素子6の第2電極92上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)により接着、固定されている。前記第2音響整合層72は、前記第1音響整合層71上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)により接着、固定されている。前記第3音響整合層(最上層の音響整合層)73は、前記第2音響整合層72上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)により接着、固定されている。 【0023】 音響レンズ10は、前記チャンネル3の最上層の第3音響整合層73表面から第3、第2、第1の音響整合層73,72,71の側面、圧電素子6側面および圧電素子6近傍に位置するバッキング2の側面部分を覆うように形成されている。前記音響レンズ10は、前記第3音響整合層73表面とゴム系接着剤層(図示せず)により接着、固定されている。このゴム系接着剤は、25℃において1.3〜1.8MRaylsの音響インピーダンスを有する変性シリコーン系接着剤であることが好ましい。 【0024】 前記バッキング2、複数のチャンネル3および音響レンズ10は、図示しないケース(筐体)内に収納されている。このケース内には、前記各チャンネル3の圧電素子6の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子6に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路(図示せず)が内蔵されている。前記圧電素子6の第1、第2の電極91,92には、延出された信号線及びアース線(図示せず)が接続されており、音響レンズ10と反対側のケースから外部に延出され、図示しない制御回路に接続されている。なお、信号線を前記圧電素子6の第2の電極92に、アース線を、第2の音響整合層72と第3の音響整合層73との間にそれぞれ接続してもよい。 【0025】 このような構成のアレイ式超音波プローブにおいて、各チャンネル3における圧電素子6の第1、第2の電極91,92間に電圧を印加して、圧電体8を共振させることにより各チャンネル3の音響整合層(第1〜第3の音響整合層71,72,73)および音響レンズ10を通して超音波を放射(送信)する。受信時には、音響レンズ10および各チャンネル3の音響整合層(第1〜第3の音響整合層71,72,73)を通して受信された超音波によって各チャンネル3における圧電素子6の圧電体8を振動させ、この振動を電気的に変換して信号とし、画像を得る。 【0026】 前記第3音響整合層(最上層の音響整合層)73は、シリコーン樹脂含有混合物を含み、25℃にてショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが25℃にて1.8〜2.5MRaylsの特性を有する。ここで、ショア硬度Dは例えばJIS K 6253に準じ、ヂュロメータタイプDを用いて求められる。この第3音響整合層(最上層の音響整合層)73は、25℃にて5MHzで測定される減衰率が5dB/cmMHz以下、減衰率と音速の積である減衰性能指数が900m/s・dB/mm/MHz以下であることがより好ましい。 【0027】 前記シリコーン樹脂含有混合物は、例えばオルガノポリシロキサンとエポキシで終端処理されたシリコーン変性有機レジン化合物を含むシリコーン系混合物との2液系混合物からなる。 【0028】 ここで、前記オルガノポリシロキサンとしては、例えばオルガノポリシロキサンにメチル基、ビニル基を含む材料が挙げられる。また、前記シリコーン変性有機レジン化合物は、例えばシリコーンレジンと有機レジンとのブロック共重合体で、変性用シリコーン中間体と官能基を有する有機レジンの反応により得られる。有機レジンの種類により各種のシリコーン変性レジンができるが、アルキドシリコーン、エポキシシリコーンが代表的な材料として挙げられる。 【0029】 前記シリコーン樹脂含有混合物としては、例えば信越化学工業株式会社から市販されているLED用シリコーン樹脂含有混合物であるSCR1004,SCR1011,SCR1012を用いることができる。前記特性のシリコーン樹脂含有混合物としては、さらにダウコーニング社から市販されているDE6665を用いることができる。これらのシリコーン樹脂含有混合物の中で、特にSCR1011は減衰率が低いために好適である。 【0030】 また、前記シリコーン樹脂含有混合物としては例えばオルガノポリシロキサンとアルキルシリコーン化合物を含むシリコーン系混合物との2液系混合物からなるものを用いることもできる。ここで、アルキルシリコーン化合物としては例えば東レダウコーニング社のSR2107等が挙げられる。 【0031】 前記シリコーン樹脂含有混合物は、フーリェ変換赤外分光光度計の測定で得られたスペクトルにおいて、ベンゼン核のC−H伸縮振動およびベンゼン核のC−H面外変角振動を有することがより好ましい。 【0032】 前記第3音響整合層(最上層の音響整合層)73は、前記特性のシリコーン樹脂含有混合物単独から作られても、さらに接着性や加工性、耐熱性を向上させる目的でシリコーン樹脂含有混合物に充填材を添加したものから作られてもよい。 【0033】 このようなシリコーン樹脂含有混合物に充填材を添加した複合材料からなる最上層の音響整合層73は、例えば図3、図4に示す構造を有する。 【0034】 図3に示す音響整合層73は、シリコーン樹脂含有混合物のマトリックス11に例えば有機物充填粒子12が30体積%以下分散された構造を有する。シリコーン樹脂含有混合物に有機充填粒子を分散させた最上層の音響整合層は、縦波音速が25℃にて1750〜2200m/sの特性を示す。 【0035】 前記有機充填粒子としては、例えばシリコーンゴム粒子、フッ素樹脂粒子、ウレタンゴム粒子から選ばれる少なくとも1つからなり、単独または混合物の形態で用いることができる。前記有機充填粒子は音速を調整する効果を有する。この有機充填粒子は、例えば球状をなす。球状の有機充填粒子は、例えば平均径が1〜10μmであることが好ましい。 【0036】 前記有機充填粒子の体積分率が30体積%を超えると、減衰率が大きくなる傾向があり、さらに強度が低下し、加工性が低下する虞がある。より好ましい有機物充填粒子のシリコーン樹脂マトリックスに対する分散量は、10体積%以下である。 【0037】 図4に示す音響整合層73は、シリコーン樹脂含有混合物のマトリックス11に密度6g/cm3以下の無機充填材(例えば球状の酸化珪素粒子13および無機繊維14)が10体積%以下分散された構造を有する。このような音響整合層は、25℃、5MHzで測定される減衰率を5dB/cm/MHz以下、減衰率と音速の積(減衰性能指数)を900(単位:m/s・dB/mm/MHz)以下の特性に容易に制御することが可能になる。また、無機充填材が添加された音響整合層は、無添加の音響整合層に比べて加工強度、接着性、耐熱性を効果的に改善することが可能になる。 【0038】 前記無機充填材は、例えば粉末状または繊維状の形態を有する。これらの形態の無機充填材は、単独または混合物として前記シリコーン樹脂含有混合物に含有させることができる。 【0039】 前記粉末状無機充填材としては、例えば酸化亜鉛粉末、酸化ジルコニウム粉末、アルミナ粉末、アエロジルシリカのようなシリカ粉末、酸化チタン粉末、炭化ケイ素粉末、窒化アルミニウム粉末、カーボン粉末または窒化ボロン粉末等を挙げることができる。粉末状無機充填材は、単独または混合物の形態で用いることができる。粉末状無機充填材は、0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下の平均粒径を有することが望ましい。このような微細な粉末状無機充填材がシリコーン樹脂含有混合物にさらに分散された最上層の音響整合層73は、減衰率を低く保ったまま優れた加工性を得ることが可能になる。 【0040】 前記繊維状無機充填材としては、例えば炭素繊維、炭化珪素繊維、酸化亜鉛繊維、アルミナ繊維またはガラス繊維等を挙げることができる。繊維状無機充填材は、単独または混合物の形態で用いることができる。 【0041】 前記繊維状無機充填材は、特にガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、例えば石英ガラス繊維、ソーダガラス繊維などを用いることができる。また、導電性の炭素繊維を用いることもできる。炭素繊維としては、例えばピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維のような種々のグレードのものを用いることができる。炭素繊維は、この他にカーボンナノチューブを用いることができる。なお、繊維状無機充填材は1種類の材料から作られるものに限らず、例えば炭素繊維の表面に樹脂を被覆したりしてもよい。 【0042】 前記繊維状無機充填材は、直径が10μm以下で長さが直径の5倍以上であることが好ましい。このような寸法の繊維状無機充填材を含む音響整合層は、少ない配合量にて5MHzで測定される減衰率を容易に5dB/cm/MHz以下にすることが可能になり、超音波信号を音響整合層で劣化させずに送受信することが可能になる。また、前記音響整合層は、ダイシング処理時に必要とされる充分な強度が付与される。さらに、前記音響整合層は耐熱性およびダイシング処理時の加工性をより高めることが可能になる。特に、直径5μm以下の繊維状無機充填材を用いることによって、その減衰率がさらに低下された音響整合層を実現できる。長さが径の20倍以上の繊維状無機充填材を用いることによって、耐熱性および加工性がより一層向上された音響整合層を実現できる。 【0043】 前記無機充填材のシリコーン樹脂含有混合物のマトリックスに対する分散量が10体積%を超えると、超音波の減衰率が急激に大きくなるために結果として音響インピーダンスの値が2.5MRaylsを超えて低音響インピーダンスの音響整合層が得られなくなる虞がある。より好ましい無機充填材のシリコーン樹脂含有混合物のマトリックスに対する分散量は、2〜5体積%である。 【0044】 なお、前記無機充填材は前記有機充填粒子と共にシリコーン樹脂含有混合物に添加してもよい。 【0045】 前記音響整合層は、3層の積層構造を有する場合において、前述した最上層の音響整合層73以外の音響整合層、すなわち前記圧電素子6と接する下層の音響整合層(第1音響整合層71)は音響インピーダンスが25℃にて10〜15MRayls、中間の音響整合層(第2音響整合層72)は音響インピーダンスが25℃にて2.7〜8MRayls、であることが好ましい。このような3層の積層構造を有する音響整合層において、これらの音響整合層の厚さは音速により変化する。最上層の音響整合層73の厚さは、λ/4(λは超音波の波長)が標準的であり、その厚さは30〜200μmであることが好ましい。 【0046】 次に、このような音響整合層の作製方法を説明する。 【0047】 まず、例えば液状の2液性シリコーン樹脂を所定の割合で秤量し、十分に混合する。つづいて、この混合物をポリエチレン製の容器に入れ、脱泡を行い、室温から85℃で2時間、125℃、2時間で硬化させることにより音響整合層を作製する。 【0048】 なお、前記音響整合層の作製に際し、前述した有機充填粒子および無機充填材から選ばれる少なくとも一つの充填材を配合してもよい。この充填材のうち、繊維状無機充填材は前記混合物を硬化させる前に例えば真空含浸させることが好ましい。前記混合物の粘性が高い場合にはノルマルヘキサンやトルエンなどの有機溶剤を用いて粘性を低下させてもよい。 【0049】 次に、実施形態に係る超音波プローブの製造方法を説明する。 【0050】 まず、バッキング上に上述した圧電素子、第1音響整合層、第2音響整合層、第3音響整合層をこの順に、例えばこれらの部材間に低粘性のエポキシ樹脂系接着剤をそれぞれ介在させて、積層させる。つづいて、前記積層物を例えば120℃で1時間程度加熱し、前記各エポキシ樹脂系接着剤を硬化させることによりバッキングと圧電素子、圧電素子と第1音響整合層、第1音響整合層と第2音響整合層、第2音響整合層と第3音響整合層をエそれぞれ接着、固定させる。 【0051】 次いで、前記第3音響整合層からバッキングに向かって例えばダイシングブレードにて例えば50〜200μmの幅(ピッチ)でダイシング処理してアレイ状に複数分割し、圧電素子および第1、第2および第3音響整合層を有する複数のチャンネルを形成する。この時、前記バッキング表層に前記複数のチャンネルのスペースに対応して溝が形成される。ひきつづき、必要に応じて各チャンネル間のスペースに例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填して各チャンネルの機械的な強度を保持する。その後、各チャンネルの第3音響整合層に音響レンズをシリコーンゴム系接着層で接着固定し、バッキング、複数のチャンネルおよび音響レンズをケース内に収納して超音波プローブを製造する。 【0052】 実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断装置を図5を参照して説明する。 【0053】 対象物に対し超音波信号を送信し、その対象物からの反射信号(エコー信号)を受信して対象物を画像化する医療用の超音波診断装置(または超音波画像検査装置)は、超音波信号送受信機能を有するアレイ式超音波プローブを備えている。この超音波プローブは、前述した図1〜図2に示す構造を有する。この超音波プローブ1は、ケーブル21を通して超音波診断装置本体22に接続されている。超音波診断装置本体22内には超音波プローブの超音波信号の送信、受信処理等を行う図示しない超音波プローブ制御器、及び、ディスプレイ23等が設けられている。 【0054】 以上説明した実施形態に係るアレイ式超音波プローブは、スペースをあけて配列され、それぞれ圧電素子およびこの圧電素子上に形成される3層以上の音響整合層を有する複数のチャンネルと、これらのチャンネルのそれぞれの圧電素子が設置され、前記チャンネルのスペースに対応する箇所に溝が形成されたバッキングと、前記各チャンネルの最上層の音響整合層の表面を少なくとも覆うように形成された音響レンズとを具備し、前記最上層の音響整合層はシリコーン樹脂含有混合物を含み、25℃にてショア硬度Dが40以上、音響インピーダンスが1.8〜2.5MRaylsの特性を有することによって、以下のような効果を奏する。 【0055】 (1)前記最上層の音響整合層は、低減衰率でかつ適切な音響インピーダンスを有するため、超音波のエネルギーを効果的に送受信できる高性能のアレイ式超音波プローブを提供できる。 【0056】 (2)前記最上層の音響整合層は、ダイシング加工性に優れているため、例えばダイヤモンドソーによるダイシング処理によって目的とする幅を持つチャンネルを精密に形成することが可能になる。その結果、チャンネル間のクロストークを低減できるため、高解像度のアレイ式超音波プローブを実現できる。 【0057】 (3)前記最上層の音響整合層は、耐熱性に優れ、かつ上下層(音響レンズおよび下層の音響整合層)との間に介在されるシリコーン系接着剤層、エポキシ系接着剤層に対して高い接着性を有するため、超音波エネルギーの吸収、減衰に伴う音響整合層の加熱、機械的な圧力が加わっても、音響レンズと最上層の音響整合層の間、最上層の音響整合層とその下の音響整合層との間での剥離を防止できる。その結果、チャンネル間での感度が均一な高い長期信頼性を有するアレイ式超音波プローブを提供できる。 【0058】 特に、前記シリコーン樹脂マトリックス中にシリカ粉末のような密度6g/cm3以下の粉末状無機充填材が10体積%以下で分散した形態の最上層の音響整合層は、エポキシ系接着剤との接着性およびダイシング処理時の加工性をより向上させることが可能になる。 【0059】 また、ガラス繊維のような繊維状無機充填材を用いることによって、減衰率の増加を抑制できると共に、ダイシング処理時の加工性および機械的強度をより一層向上できる。 【0060】 さらに、前記音響レンズとの熱膨張係数差が50ppm/℃以下である最上層の音響整合層は、駆動時に発生する熱が繰り返し加わっても、剥離が生じ難く、信頼性の高い超音波プローブを得ることができる。 【0061】 実施形態に係る超音波診断装置は、クロストークが小さく、高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブを備えるため、断層像の画質向上および感度向上を達成できる。 【0062】 以下,本発明の実施例をさらに詳細に説明する。 【0063】 (実施例1) 2液状のシリコーン樹脂である信越化学工業社製のSCR1011樹脂AとSCR1011樹脂Bを100:100の重量比で正確に秤量した。このシリコーン樹脂系混合物をポリエチレンの容器に入れ、回転式のミキサーで3分間、攪拌し均一に混合した。この液状樹脂を真空容器で10分間脱泡した後、テフロン(登録商標)からなる容器に入れた。つづいて、85℃、1時間の予備硬化した後、125℃で2時間の本硬化を行ってシリコーン樹脂含有混合物からなる第3音響整合層用素材を作製した。 【0064】 実施例1で得られたシリコーン樹脂含有混合物の硬化物(第3音響整合層用素材)について下記条件で熱重量分析装置/示差熱分析装置(TG/DTA;thermogravimetric analyzer/differential thermal analyzer)を行ってTG/DTA曲線を測定した。また同シリコーン樹脂硬化物について下記条件でフーリェ変換赤外分光光度計(FTIR;Fourier transform infrared spectrophotometer)で分析したFTIRスペクトルを測定した。TG/DTA曲線を図6に、FTIRスペクトルを図7に示す。 【0065】 <TG/DTAの条件> 使用装置 :エスアイアイ・ナノテクノロジー社製のTG/DTA320U 加熱条件 :室温から600℃までを20℃/minで昇温 雰囲気ガス :空気の気流(200mL/min) リファレンス:サファイア 9.6mg 試料採取量 :10mg <FTIRの分析条件> 使用装置:バリアンテクノロジーズジャパン社製のFTS−6000/UMA500 検出器 :MCT 積算回数:200回 測定法 :全反射測定(ATR:Attenuation Total Reflection)法 なお、比較のために汎用シリコーン樹脂(モメンティブ・パーフォーマンス・マテェリアル社[旧名:GE東芝シリコン社]製;TSE3032)の硬化物について同様な条件でTG/DTA曲線およびFTIRスペクトルを測定した。TG/DTA曲線を図8に、FTIRスペクトルを図9に示す。 【0066】 図6、図8から明らかなように実施例1で得られたシリコーン樹脂含有混合物の硬化物は、汎用シリコーン樹脂硬化物に比べて2段階目の分解開始温度が高く、重量減少においても汎用シリコーン樹脂硬化物に比べて10%程度の差が見られた。 【0067】 また、実施例1で得られたシリコーン樹脂含有混合物の硬化物は、図7に示すように汎用シリコーン樹脂硬化物(図9)では現われない、ベンゼン核由来の吸収帯であるベンゼン核のC−H伸縮振動(矢印Aに示す)およびベンゼン核のC−H面外変角振動(矢印Bに示す)が現れる。 【0068】 (実施例2〜9) 下記表1に示すように2液状のシリコーン樹脂(シリコーン樹脂系混合物)として信越化学工業社製のSCR1012、SCR1011、SCR1004を用いて実施例1と同様な方法により第3音響整合層用素材をそれぞれ作製した。これらの素材の中で、いくつかに所定の充填材を分散させた。充填材としては、平均径が3μmのシリコーンゴム粒子、平均径が10μmのエポキシ樹脂粒子、平均径が20nmの粉末状酸化珪素、平均径が30nmの粉末状酸化亜鉛、平均径が50nmの粉末状酸化チタン、平均径が5μm、平均長さが100μmの繊維状ガラス、平均径が7μm、平均長さが100μmの繊維状炭素を用いた。 【0069】 (実施例10,11、比較例1〜6) 下記表2に示すように2液状のシリコーン樹脂含有混合物(シリコーン樹脂系混合物)として信越化学工業社製のSCR1011、SCR1012、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、ポリエチレン、高硬度シリコーン樹脂(信越シリコーン社製商品名;KER2500)および(モメンティブ・パーフォーマンス・マテイリアル社[旧名:GE東芝シリコン社]製商品名;IVSM4500)をベース樹脂として用い、実施例1と同様な方法により第3音響整合層用素材をそれぞれ作製した。これらの素材の中で、いくつかに所定の充填材を分散させた。充填材としては、平均径が3μmのシリコーンゴム粒子、平均径が20nmの粉末状酸化珪素、平均径が100nmの粉末状アルミナ、平均径が5μm、平均長さが100μmの繊維状酸化珪素を用いた。 【0070】 得られた実施例1〜10、および比較例1〜6の第3音響整合層用素材について、密度、音速、音響インピーダンス(Z)、減衰率、加工性、耐熱性および接着性を以下の方法に評価した。 【0071】 1)密度 密度は、前記第3音響整合層用素材を研磨加工して得られた50mm径×3mm厚さの円板状音響特性評価用サンプルを用いて求めた。密度の測定は25℃のサンプルの空中及び水中重量を測定し、アルキメデス法にて行った。 【0072】 2)音速および減衰率 前記第3音響整合層用素材を研磨加工して得られた50mm径×3mm厚さの円板状音響特性評価用サンプルを用いて、水中25℃で5MHzの測定用プローブを用いて、音速、減衰率を測定した。水中に静置されたステンレス板、及び静置されたサンプルに超音波プローブから送信し、その反射エコーを測定した。 【0073】 サンプルの有無による反射エコーの時間差とサンプル厚みから音速を求めた。音速(C)の算出は各温度における水の音速を基準として、水とサンプルの透過波形の時間差を利用し、以下の式を用いて算出した。 【0074】 C=C0/[L−C0(Δt/d)] ここで、C0は水の音速、Lは超音波プローブとサンプル(被測定物)の距離、dは試料の厚み、Δtは水と試料の透過波形の最初のピークを越した後のゼロクロス点の時間差を示す。 【0075】 減衰率は、同様に水温25℃においてサンプルの有無による反射エコーの強度差とサンプル厚みから所定の方法で減衰率を求めた。 【0076】 3)音響インピーダンス(Z) Zは、測定した密度と音速の積として求めた。 【0077】 4)シュア硬度 JIS K 6253に準じ、ヂュロメータタイプDを用いて25℃にて求めた。 【0078】 5)加工性 クロロプレンゴムにフェライトを添加したバッキング上にPZT圧電素子および前記第3音響整合層用素材を研磨加工して得られた10mm×10mm、厚さ1.0mmの加工性評価用サンプルをこの順序でエポキシ樹脂接着剤を介して積層し、この積層物を厚さ50μmのダイヤモンドブレードを用いて100μmのピッチ、バッキングへの深さが200μmになるように切り込み、さらに90度回転させ、再び100μmのピッチ、バッキングへの深さが200μmになるように切り込んだ。切り込み後の残存部分(50μm×50μm角)を顕微鏡で観察した。この観察において、加工性評価用サンプル(第3音響整合層)の倒れ、直線性から加工性を評価した。 【0079】 加工性の判定は、 ・残存した50μm角の片が全く問題ない場合:A、 ・残存した50μm角の片に2%以下の不良が認められた場合:B、 ・残存した50μm角の片に10%以下の不良が認められた場合:C、 ・残存した50μm角の片に10%を越える不良が認められた場合:D、 と4段階とした。 【0080】 6)耐熱性 前記第3音響整合層用素材を研磨加工して幅25mm、長さ100mm、厚さ1.6mmのサンプルを得た。このサンプルをJIS−C6471 8.1の方法に従ってガラスエポキシ基板(FR4)にエポキシ接着剤を用いて貼り付け、60℃で24時間、ひきつづき125℃で1時間硬化させた後、テンシロン型引っ張り試験機にて30cm/分の速度で引張って引張りせん断強度を求めた。なお、試験は10枚のサンプルを対象にしてそれらの平均値とした。 【0081】 耐熱性の判定は、 ・熱処理後のせん断強度が2.0N/mm2以上の場合:A、 ・熱処理後のせん断強度が1.5N/mm2以上の場合:B、 ・熱処理後のせん断強度が1.0N/mm2以上の場合:C、 ・熱処理後のせん断強度が0.5N/mm2以上の場合:D、 ・熱処理後のせん断強度が0.5N/mm2未満の場合:E、 と5段階とした。 【0082】 7)接着性 第3音響整合層用素材を研磨加工して幅25mm、長さ100mm、厚さ1.6mmのサンプルを得た。このサンプルをJIS−C6471 8.1の方法に従って音響レンズ材料である密度1.5g/cm3、厚さ5mmのシリコーンゴム板(裏面に厚さ5mmのアルミニウム板が貼り付けられている)にシリコーンゴム系接着剤;セメダインスーパーX No.8008クリア(登録商標)を用いて貼り付け、60℃で72時間硬化させた。その後にヒートサイクル装置に入れ、−25℃と+85℃のヒートサイクルを100回行い、その後にテンシロン型引張り試験機にて30cm/分の速度で引張って剥離強度を求めた。なお、試験は10枚の試験片を対象にしてそれらの平均値とした。 【0083】 接着性の判定は、 ・熱処理後の剥離強度が1.0N/mm2以上の場合:A、 ・熱処理後の剥離強度が0.75N/mm2以上の場合:B、 ・熱処理後の剥離強度が0.5N/mm2以上の場合:C、 ・熱処理後の剥離強度が0.3N/mm2以上の場合:D、 ・熱処理後の剥離強度が0.3N/mm2未満の場合:E、 と5段階とした。 【0084】 これらの結果を下記表3に示す。なお、下記表3には各音響整合層のショア硬度Dを併記した。 【0085】 また、実施例1および比較例1−5の第3音響整合層用素材における音響インピーダンスとショア硬度Dの関係を図10、各第3音響整合層用素材における音響インピーダンスと減衰率の関係を図11に示す。 【表1】
【0086】 【表2】
【0087】 【表3】
【0088】 前記表1〜表3および図10、図11から明らかなように実施例1〜10の第3音響整合層は、Zが1.8〜2.5MRaylsと低Zにも拘らず、低減衰率で、かつ優れた加工性、接着性を有することがわかる。 【0089】 これに対し、比較例1〜6の第3音響整合層は、減衰率が大きいか、または加工性、接着性のいずれかが劣り、これらの特性を全て満足するものではないことがわかる。 【0090】 このような実施例1〜10の第3音響整合層を有するアレイ式超音波プローブは、超音波のエネルギーを効果的に送受信でき、チャンネル間での感度が均一で、かつチャンネル間のクロストークを低減でき、高解像度性、長期信頼性を有するものであった。 【0091】 すなわち、音響インピーダンス(Z)が4MRaylsのクロロプレンゴムにフェライトを添加したバッキング上に厚さ400μmの圧電素子、厚さ420μm、Zが12MRaylsのホウケイ酸ガラスからなる第1音響整合層、厚さ200μm、Zが5.0MRaylsのエポキシ樹脂に酸化亜鉛粉末を20体積%添加した第2音響整合層および厚さ150μm、Zが2.29MRaylsを持つ前記実施例3と同組成の第3音響整合層をこの順序で、かつそれらの間にエポキシ樹脂系接着剤を介在し重ねた後、120℃で1時間程度、加圧しながら加熱硬化させることにそれら部材を相互に接着した。なお、前記圧電素子はPZT系圧電セラミックスからなる圧電体の両面にNiからなる第1、第2の電極を形成したものを用いた。つづいて、前記第3音響整合層からバッキングに向かって幅50μmのダイヤモンドブレードにより幅200μm、バッキングへの切り込み深さ200μmになるようにダイシング処理した。このダイシングにより200μm×2列を1チャンネルとし、合計200チャンネルを形成した。ひきつづき、各チャンネル間のスペースに液状シリコーンゴムを充填し、125℃にて1時間で硬化させた。各チャンネル上にシリコーンゴムからなるZが1.5MRaylsの音響レンズを変性シリコーンゴム系接着剤で固定した。最後に、バッキング、複数のチャンネルおよび音響レンズをケース(筐体)内に収納し、このケース内に前記各チャンネルの圧電素子の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路を内蔵することにより3.5MHzのアレイ式超音波プローブを組み立てた。 【0092】 また、音響インピーダンス(Z)が4MRaylsのクロロプレンゴムにフェライトを添加したバッキング上に厚さ400μmの圧電素子、厚さ480μm、Zが19MRaylsの単結晶シリコンからなる第1音響整合層、厚さ400μm、Zが10MRaylsのボロンシリカガラスからなる第2音響整合層、厚さ250μm、Zが4.0MRaylsのガラスエポキシ樹脂からなる第3整合層、およびZが2.11MRaylsを持つ前記実施例8と同組成の第4音響整合層をこの順序で、かつそれらの間にエポキシ樹脂系接着剤を介在し重ねた後、120℃で1時間程度、加圧しながら加熱硬化させることにそれら部材を相互に接着した。なお、前記圧電素子はPZT系圧電セラミックスからなる圧電体の両面にNiからなる第1、第2の電極を形成したものを用いた。つづいて、前記第4音響整合層からバッキングに向かって幅50μmのダイヤモンドブレードにより幅200μm、バッキングへの切り込み深さ200μmになるようにダイシング処理した。このダイシングにより200μm×2列を1チャンネルとし、合計200チャンネルを形成した。ひきつづき、各チャンネル間のスペースに液状シリコーンゴムを充填し、85℃にて1時間で硬化させた。各チャンネル上にシリコーンゴムからなるZが1.5MRaylsの音響レンズを変性シリコーンゴム系接着剤で固定した。最後に、バッキング、複数のチャンネルおよび音響レンズをケース(筐体)内に収納し、このケース内に前記各チャンネルの圧電素子の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路を内蔵することにより3.5MHzのアレイ式超音波プローブを組み立てた。 【0093】 これらのアレイ式超音波プローブを画像診断装置に接続してその特性を評価したところ、従来品と比べて良好な画像が得られた。 【0094】 さらにこのアレイ式超音波プローブを−25℃と85℃のヒートサイクル試験機に入れ、100サイクル試験前後に画像を確認したがチャンネル不良や画質低下の減少は見られなかった。 【図面の簡単な説明】 【0095】 【図1】本発明の実施形態に係るアレイ式超音波プローブの要部斜視図。 【図2】図1の超音波プローブの要部断面図。 【図3】本発明の実施形態に係るアレイ式超音波プローブに組み込まれる第3音響整合層の断面を模式的に示す図。 【図4】本発明の実施形態に係るアレイ式超音波プローブに組み込まれる別の第3音響整合層の断面を模式的に示す図。 【図5】本発明の実施形態に係る超音波診断装置を示す概略図。 【図6】実施例1で得られたシリコーン樹脂含有混合物の硬化物(第3音響整合層用素材)のTG/DTA曲線。 【図7】実施例1で得られたシリコーン樹脂含有混合物の硬化物(第3音響整合層用素材)のFTIRスペクトル。 【図8】汎用シリコーン樹脂硬化物のTG/DTA曲線。 【図9】汎用シリコーン樹脂硬化物のFTIRスペクトル。 【図10】実施例1および比較例1−5の第3音響整合層用素材における音響インピーダンスとショア硬度Dの関係を示す図。 【図11】実施例1および比較例1−5の第3音響整合層用素材における音響インピーダンスと減衰率の関係を示す図。 【符号の説明】 【0096】 1…アレイ式超音波プローブ、2…バッキング、3…チャンネル、4…スペース、6…圧電素子、71…第1音響整合層、72…第2音響整合層、73…第3音響整合層(最上層の音響整合層)、10…音響レンズ、11…シリコーン樹脂マトリックス、12…有機充填粒子、13…酸化珪素粒子、14…無機繊維、21…ケーブル、22…超音波診断装置本体、23…ディスプレイ。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003078 【氏名又は名称】株式会社東芝
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| 【出願日】 |
平成19年2月27日(2007.2.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100058479 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351 【弁理士】 【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683 【弁理士】 【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855 【弁理士】 【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672 【弁理士】 【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830 【弁理士】 【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618 【弁理士】 【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196 【弁理士】 【氏名又は名称】橋本 良郎
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| 【公開番号】 |
特開2008−11494(P2008−11494A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月17日(2008.1.17) |
| 【出願番号】 |
特願2007−47734(P2007−47734) |
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