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【発明の名称】 スピーカー用ダンパーおよびこれを用いたスピーカー
【発明者】 【氏名】山本 優一

【要約】 【課題】ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計を両立させて、支持アームの特定箇所に応力が集中して破断することがないダンパーを提供する。

【構成】本発明のスピーカー用ダンパーは、複数の支持アームのそれぞれが、外周固定部と連結する外周連結部と、内周可動部と連結する内周連結部と、外周連結部と内周連結部とを連結する幅Wが一定のアーム部と、を備え、アーム部が、アーム部を規定する平面に直角な方向に貫通する複数の貫通孔を有し、かつ、複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φがアーム部の幅Wよりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周固定部と、コイルボビンと接合する内周可動部と、該外周固定部と該内周可動部とを連結する複数の支持アームと、を有するスピーカー用ダンパーであって、
該複数の支持アームのそれぞれが、該外周固定部と連結する外周連結部と、該内周可動部と連結する内周連結部と、該外周連結部と該内周連結部とを連結する幅Wが一定のアーム部と、を備え、
該アーム部が、該アーム部を規定する平面に直角な方向に貫通する複数の貫通孔を有し、かつ、該複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φが該アーム部の幅Wよりも小さい、スピーカー用ダンパー。
【請求項2】
前記アーム部の前記複数の貫通孔が、該アーム部の中心線上に一列に配置される丸孔もしくは四角孔である、請求項1に記載のスピーカー用ダンパー。
【請求項3】
前記アーム部の前記複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φが、該アーム部の幅Wの1/10以上、1/2以下である、請求項1または2に記載のスピーカー用ダンパー。
【請求項4】
前記アーム部の前記複数の貫通孔が、隣り合う貫通孔同士の径が異なるように配置されている、請求項1から3のいずれかに記載のスピーカー用ダンパー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のスピーカー用ダンパーを備えたスピーカー。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーに用いるダンパー、および、これを用いたスピーカー(代表的には動電型スピーカー)に関する。
【背景技術】
【0002】
動電型スピーカーにおいては、磁気回路の磁気空隙に配置されたボイスコイルを、所定位置に中心保持し、かつ、良好に振動可能にするために、ダンパーが設けられる。ダンパーは、そのコンプライアンス(又はスティフネス)と、ボイスコイルならびにボイスコイルボビンおよび振動板を含む振動系の重量とにより、動電型スピーカーの低域再生限界周波数を定める最低共振周波数f0を規定する。ダンパーは、その内周部がボイスコイルボビンに接合され、その外周部がフレーム又は磁気回路等に接合されて固定され、内周部と外周部とを連結する支持可動部とを備える。ダンパーの支持可動部の形状および材料などについては、様々な検討がなされている。
【0003】
従来から、所定の厚みの金属板、もしくは、樹脂成形板を打ち抜いて形成されたダンパーが存在する。このような、いわゆる、蝶ダンパーは、外周固定部と、コイルボビンと接合する内周可動部と、外周固定部と該内周可動部とを連結する複数の支持アームを有する。所定の厚みの板を選択すべき条件がある場合には、最低共振周波数f0を最適に設計し、そして、ボイスコイルに加わる駆動力とボイスコイル変位との直線性を改善するために、その支持アームの形状は、様々に検討されている。このようなダンパーでは、支持アームが伸びることがないので、ボイスコイル変位の可動範囲を超えるような駆動力が加わる場合には、支持アームの応力が集中する箇所が破断してしまうという問題がある。
【0004】
従来には、上記のような問題を、支持アームの形状、ダンパーを構成する材料、等を検討し、解決しようとするものがある。例えば、支持アームの形状を付け根よりも中央部に向けて漸近的に幅を小さくするものがある(特許文献1)。また、例えば、支持アームの断面形状をトラック形状に形成し、支持アームと内周部もしくは外周部との連結部分を曲面形状にするものがある(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】実開昭56−68392号公報 (第3図)
【特許文献2】特開2002−262392号公報 (第1図)
【0006】
しかしながら、従来技術のスピーカー用ダンパーでは、支持アームの応力が集中する箇所が破断するのを防止するように支持アームの全体形状を変更すると、ダンパーのスティフネスが大きく変化し、これを用いたスピーカーにおいて最低共振周波数f0が、変更前に比較して大きく変化してしまうという問題がある。支持アームが振動する高次の共振周波数が存在する場合には、これらの共振周波数も大きく変化する。すなわち、従来技術のように支持アームの形状を変化させると、ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計を両立させるのが難しい場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スピーカー用ダンパーおよびこれを用いたスピーカーに関し、ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計を両立させて、支持アームの特定箇所に応力が集中して破断することがないダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスピーカー用ダンパーは、外周固定部と、コイルボビンと接合する内周可動部と、外周固定部と内周可動部とを連結する複数の支持アームと、を有するスピーカー用ダンパーであって、複数の支持アームのそれぞれが、外周固定部と連結する外周連結部と、内周可動部と連結する内周連結部と、外周連結部と内周連結部とを連結する幅Wが一定のアーム部と、を備え、アーム部が、アーム部を規定する平面に直角な方向に貫通する複数の貫通孔を有し、かつ、複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φがアーム部の幅Wよりも小さい。
【0009】
好ましくは、本発明のスピーカー用ダンパーは、アーム部の複数の貫通孔が、アーム部の中心線上に一列に配置される丸孔もしくは四角孔である。
【0010】
さらに好ましくは、本発明のスピーカー用ダンパーは、アーム部の複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φが、アーム部の幅Wの1/10以上、1/2以下である。
【0011】
また、好ましくは、本発明のスピーカー用ダンパーは、アーム部の複数の貫通孔が、隣り合う貫通孔同士の径が異なるように配置されている。
【0012】
また、さらに好ましくは、本発明のスピーカーは、上記の本発明のスピーカー用ダンパーを備えている。
【0013】
以下、本発明の作用について説明する。
【0014】
本発明のスピーカー用ダンパーは、概環状の外周固定部と、コイルボビンと接合する内周可動部と、外周固定部と内周可動部とを連結する複数の支持アームと、を有する。このスピーカー用ダンパーは、所定の厚みの金属板、もしくは、樹脂成形板を打ち抜いて形成されたダンパーであり、複数の支持アームのそれぞれは、外周固定部と連結してその幅が変化する外周連結部と、内周可動部と連結してその幅が変化する内周連結部と、外周連結部と内周連結部とを連結する幅Wが一定のアーム部と、を備える。なお、支持アームの「幅」とは、支持アームの中心線に直交する長さを指す。
【0015】
ここで、支持アームのアーム部は、アーム部を規定する平面に直角な方向に貫通する複数の貫通孔を有し、かつ、複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φは、アーム部の幅Wよりも小さい。すなわち、支持アームの付け根部分を除く中間部分であり、一定の幅Wを有する平板状のアーム部は、ボイスコイルが振動する上下方向に、貫通する複数の貫通孔を有している。外周連結部および内周連結部には応力が集中しやすく、破断しやすいので、アーム部に複数の貫通孔を設けることにより応力を分散させることができる。その結果、本発明のスピーカー用ダンパーを用いたスピーカーでは、支持アームの破断といった問題が生じにくい。
【0016】
支持アームのアーム部が、一定の幅Wを有する平板状である場合には、ここに貫通孔を設けても、ダンパーのスティフネスは大きく変化しない。したがって、支持アームの全体形状を変更する従来例に比較して、ダンパーのスティフネスが大きく変化することがなく、これを用いたスピーカーにおいても最低共振周波数f0が、変更前に比較して大きく変化しない。また、支持アームが振動する高次の共振周波数についても、これらの共振周波数も大きく変化しない。このように本発明のスピーカー用ダンパーは、ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計を両立させることができる。
【0017】
また、アーム部の複数の貫通孔が、アーム部の中心線上に一列に配置される丸孔もしくは四角孔である場合には、安定した加工により打ち抜いて形成される丸孔もしくは四角孔の周囲に残留応力が加わりにくいので、支持アームが破断しにくいスピーカー用ダンパーが形成される。特に、一列に配置される丸孔もしくは四角孔の最大外径を規定する寸法φがいずれも等しい場合には、応力が集中しやすい外周連結部および内周連結部に近いアーム部に貫通孔が配置されることになるので、応力の分散をさらに進めることができる。
【0018】
さらに、支持アームのアーム部の複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φが、アーム部の幅Wの1/10以上、1/2以下である場合には、ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計とを、安定して両立させることができる。また、支持アームが振動する高次の共振周波数についても、これらの共振周波数も大きく変化しなくなる。
【0019】
また、アーム部の複数の貫通孔が、隣り合う貫通孔同士の径が異なるように配置されている場合には、アーム部での応力分散がさらに改善されるので、より安定した破断しにくい支持アームを有するスピーカー用ダンパーが形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスピーカー用ダンパーを用いたスピーカーは、ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計を両立させることができ、支持アームの特定箇所に応力が集中して破断しない、動作の安定したスピーカーが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のスピーカー用ダンパーは、ダンパーでの応力の分散設計と、スピーカーでの共振周波数の最適設計を両立させることができ、支持アームの特定箇所に応力が集中して破断しない、動作の安定したスピーカーを提供するという目的を、複数の支持アームのそれぞれが、外周固定部と連結する外周連結部と、内周可動部と連結する内周連結部と、外周連結部と内周連結部とを連結する幅Wが一定のアーム部と、を備え、アーム部が、アーム部を規定する平面に直角な方向に貫通する複数の貫通孔を有し、かつ、複数の貫通孔の最大外径を規定する寸法φがアーム部の幅Wよりも小さくなるようにすることにより、実現した。
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパーおよびこれを用いたスピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパー1について説明する図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は支持アーム4の応力分布特性図である。ダンパー1は、外周固定部2と、内周可動部3と、外周固定部2と内周可動部3とを連結する複数の支持アーム4とを備える。
【0024】
このスピーカー用ダンパー1は、所定の厚みの金属板、もしくは、樹脂成形板を打ち抜いて形成されるダンパーである。例えば、本実施例おいては、小型スピーカーに用いるダンパーとして、チタン銅合金(CuT)を材料とする、厚み70μmの金属板をエッチングして形成している。スピーカー用ダンパー1の外周固定部2の外径は約20mmであり、内周可動部3の内径は約13mmである。ダンパー1において、3本の支持アーム4のそれぞれは同一形状であり、ダンパー1の中心点から見て相互に120度の間隔で配置されている。
【0025】
ダンパー1のそれぞれの支持アーム4は、外周固定部2と連結する外周連結部5と、内周可動部3と連結する内周連結部6と、外周連結部5と内周連結部6とを連結する幅Wが一定のアーム部7を備える。外周連結部5は、外周固定部2からダンパー1の内周方向に延設されて、幅Wが一定のアーム部7へ連結する部分であり、その幅(上記の通り、支持アーム4の「幅」とは、支持アーム4の中心線に直交する長さを指す。)は、アーム部7の幅Wよりも広く形成されることが多く、アーム部7の幅Wと同等の場合もある。同様に、内周連結部6は、内周可動部3からダンパー1の外周方向に延設されて、幅Wが一定のアーム部7へ連結する部分であり、多くの場合その幅は、アーム部7の幅Wよりも広く形成される。特に応力が集中しやすい外周連結部5と内周連結部6は、その幅は、アーム部7の幅Wよりも広く形成されている。なお、本実施例では、アーム部7の幅Wは、約0.4mmである。
【0026】
ダンパー1の外周固定部2は、(図示しない)フレームに固着されて振動せず、また、(図示しない)ボイスコイルボビンに固着される内周可動部3も振動しない。外周固定部2からダンパー1の内周方向に延設される外周連結部5と、内周連結部6とが、振動する支持アーム4を構成する。ダンパー1を用いた(図示しない)スピーカーの振動板が振動して、音声を再生する場合には、支持アーム4が振動し、その結果、外周連結部5、内周連結部6、および、アーム部7には応力が加わり、図1(b)のような応力分布特性図として表される。
【0027】
なお、図1(b)の応力分布特性図において、応力分布はグレー色の濃淡で表されており、図1(b)の右端のバー表示の上側の色の部分が、応力が大きく、下側の色の部分が、応力が小さいことを表している。また、図1(b)の支持アーム4の応力分布特性図において、外周固定部2および内周可動部3は振動しないので、外周固定部2および内周可動部3上の応力分布は、外周連結部5と内周連結部6に近接する部分のみが図示されている。
【0028】
ダンパー1のアーム部7は、アーム部7を規定する平面に直角な方向に貫通する複数の貫通孔8を有し、かつ、複数の貫通孔8の最大外径を規定する寸法φ(=0.10mm)は、アーム部7の幅Wよりも小さい。図1のダンパー1においては、貫通孔8はアーム部7のほぼ中央付近に一列に配置された7個の丸孔である。支持アーム4を構成するアーム部7の幅Wはほぼ一定であり、寸法φの貫通孔8は、W>φの関係を満たす寸法で設定される。アーム部7に設けられる貫通孔8は、後述するように、外周連結部5と内周連結部6の一部に集中しやすい応力を分散させる。
【0029】
図2は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパー10について説明する図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は支持アーム4の応力分布特性図である。本実施例のダンパー10は、先の実施例のダンパー1と、貫通孔8の形状が丸孔ではなく四角孔である点を除いて共通する。したがって、共通する外周固定部2と、内周可動部3と、複数の支持アーム4と、外周連結部5と、内周連結部6およびアーム部7については、共通の番号を付して説明を省略する。
【0030】
図2のダンパー10においては、貫通孔8はアーム部7のほぼ中央付近に一列に配置された7個の四角孔である。支持アーム4を構成するアーム部7の幅Wはほぼ一定であり、貫通孔8の四角孔の一辺を規定する寸法φは、W>φの関係を満たす寸法で設定される。アーム部7に設けられる貫通孔8は、後述するように、外周連結部5と内周連結部6の一部に集中しやすい応力を分散させる。
【0031】
図3は、比較例としてのスピーカー用ダンパー20について説明する図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は支持アーム4の応力分布特性図である。比較例のダンパー20は、先の実施例のダンパー1に対して、アーム部7に貫通孔8を有しない点を除いて共通し、アーム部7の幅Wが一定で貫通孔を有しないスピーカー用ダンパーである。共通する部分については、共通の番号を付して説明を省略する。
【0032】
また、図4は、第二の比較例としてのスピーカー用ダンパー21について説明する図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は支持アーム4の応力分布特性図である。第二の比較例のダンパー21は、比較例のダンパー20に対して、アーム部7に貫通孔8を有しない点で共通し、アーム部7の幅Wがアーム部7の中央付近で細くなっているスピーカー用ダンパーである。実施例もしくは比較例と共通する部分については、共通の番号を付して説明を省略する。
【0033】
実施例および比較例のスピーカー用ダンパー1、10、および、20、21の支持アーム4の応力分布特性図を比較検討する。これらの応力分布特性図は、実施例および比較例のスピーカー用ダンパーの内周可動部3に(紙面上から下向き方向へ)1グラム重[gf]の荷重を印加した時の応力分布の様子を示したものである。実施例および比較例のスピーカー用ダンパーでは、応力分布の最大値が見られる個所は、ほぼ共通して、支持アーム4の付け根にあたる外周連結部5ならびに内周連結部6である。また、それぞれのダンパーを用いた(図示しない)スピーカーの振動系の共振周波数f0についても比較検討する。
【0034】
例えば、図3(b)に示す比較例のスピーカー用ダンパー20では、応力分布の最大値は約29.0[MPa]であり、比較例のスピーカー用ダンパー20の形状では応力が外周連結部5ならびに内周連結部6に集中してしまい、この部分がスピーカーとしてこのダンパー20を使用した場合に破断しやすいことを表している。これに対し、図4(b)に示す第二比較例のスピーカー用ダンパー21では、アーム部7の幅Wをアーム部7の中央付近で細くして、外周連結部5ならびに内周連結部6に集中する応力を、アーム部7の中央側へと広く分散させている。このとき、応力分布の最大値は約28.7[MPa]であり、比較例のスピーカー用ダンパー20よりも若干ながら破断しにくくなっている。また、比較例のスピーカー用ダンパー20を用いた(図示しない)スピーカーの振動系の共振周波数f0(=約40.1Hz)を基準にすると、第二比較例のスピーカー用ダンパー21を用いた場合の共振周波数は、−6.6%低下する。
【0035】
一方、図1(b)に示す本実施例のスピーカー用ダンパー1は、アーム部7のほぼ中央付近に一列に配置された7個の丸孔を有し、その結果、外周連結部5ならびに内周連結部6に集中する応力を、アーム部7の中央側へと広く分散させている。このとき、応力分布の最大値は約25.8[MPa]であり、比較例のスピーカー用ダンパー20、21の場合よりも大きく低下しており、破断しにくいダンパーになっている。また、同様に、比較例のスピーカー用ダンパー20を用いたスピーカーの振動系の共振周波数f0を基準にすると、本実施例のスピーカー用ダンパー1を用いた場合の共振周波数は、−3.1%の低下にとどまり、ほぼダンパー1のスティフネスは変化しない。このようにアーム部7に複数の貫通孔8を設けることで、応力分布の集中を緩和することができ、また、そのスティフネスが大きく変化することがないスピーカー用ダンパー1が実現される。
【0036】
さらに、図2(b)に示す他の実施例のスピーカー用ダンパー10は、アーム部7のほぼ中央付近に一列に配置された7個の四角孔を有し、その結果、スピーカー用ダンパー1と同様に外周連結部5ならびに内周連結部6に集中する応力を、アーム部7の中央側へと広く分散させている。このとき、応力分布の最大値は約27.2[MPa]であり、比較例のスピーカー用ダンパー20、21の場合よりも大きく低下しており、破断しにくいダンパーになっている。また、同様に、比較例のスピーカー用ダンパー20を用いたスピーカーの振動系の共振周波数f0を基準にすると、他の実施例のスピーカー用ダンパー10を用いた場合の共振周波数は、−5.9%の低下にとどまる。このようにアーム部7に複数の貫通孔8を設けることで、応力分布の集中を緩和することができ、また、そのスティフネスが大きく変化することがないスピーカー用ダンパー10が実現される。
【0037】
図1または図2に示す本実施例のスピーカー用ダンパー1もしくは10では、一列に配置される丸孔もしくは四角孔8の最大外径を規定する寸法φがいずれも等しい。アーム部7の複数の貫通孔8は、一列に配置される結果、応力が集中しやすい外周連結部5および内周連結部6に近いアーム部7にも径が大きな貫通孔8が配置されることになる。外周連結部5および内周連結部6に近いところの貫通孔8は、応力の分散をさらに進めることができ、破断しにくいダンパー1および10が実現される。
【0038】
なお、スピーカーの振動系の共振周波数f0以外にも、支持アームが振動する高次の共振周波数が存在する場合がある。図3に示す比較例のスピーカー用ダンパー20を、アーム部7を細くして図4に示す第二比較例のスピーカー用ダンパー21のように変更すると、2次の共振周波数も大きく低下する。一方、図1または図2に示す本実施例のスピーカー用ダンパー1もしくは10では、2次の共振周波数の変化も少なくなる。
【0039】
図5は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパー11、12について説明する図であり、図5(a)はスピーカー用ダンパー11の一部拡大平面図、図5(b)はスピーカー用ダンパー12の一部拡大平面図である。本実施例のダンパー11、12は、先の実施例のダンパー1および10と、貫通孔8の形状および配置を除いて共通するので、共通する部分については共通の番号を付して説明を省略する。
【0040】
スピーカー用ダンパー11では、支持アーム4のアーム部7に規定される中心線9に沿って、7個の丸孔8が配置されている。7個の丸孔8の直径φは、真中の丸孔が最も大きく、外周連結部5ならびに内周連結部6に向かうにつれて小さくなるような順番で配置されている。また、スピーカー用ダンパー12では、支持アーム4のアーム部7に規定される中心線9に沿って、5個の丸孔8が配置されており、真中に配置される最も大きい丸孔の次には、最も小さい丸孔が配置されている。
【0041】
応力を分散させる貫通孔8は、大きすぎればアーム部7の強度が不足し、また、小さすぎれば応力分散の効果が十分でない。好ましくは、アーム部7の複数の貫通孔8の最大外径を規定する寸法φは、アーム部7の幅Wの1/10以上、1/2以下であればよい。例えば、図3(a)のスピーカー用ダンパー11では、複数の貫通孔8の寸法φは、アーム部7の幅Wを基準にして、0.1W、0.2W、0.4W、0.5Wの4種類が選ばれている。また、図3(b)のスピーカー用ダンパー12では、複数の貫通孔8の寸法φは、0.25W、0.35W、0.5Wの3種類が選ばれている。貫通孔8の寸法φが1/10以上であれば、応力分散の効果を発揮することができ、また、1/2以下であれば、アーム部7の強度を十分に確保できる。加えて、好ましくは、アーム部7の複数の貫通孔8は、隣り合う貫通孔同士の径が異なるように配置される。このようにアーム部7に複数の径の異なる貫通孔8を設けることで、応力分布の集中を緩和することができ、その結果、支持アーム4が破断することがないスピーカー用ダンパー11、12が実現される。
【0042】
本発明のスピーカー用ダンパーは、上記実施例に限定されず、樹脂成形板を金型で打ち抜いて形成される蝶ダンパーであってもよい。また、支持アームのそれぞれは、同一形状である場合に限られず、支持アームは2本以上であれば、4本でもよく、ダンパー1を規定する中心軸から見て対称に配置されていてもよい。
【0043】
なお、ダンパー1の材質および大きさも、本実施例に限定されるものではない。支持アーム4の本数や形状は、そのダンパーを用いるスピーカーの磁気回路や振動板の構成によって、外周固定部2および内周可動部3の形状ならびに位置関係が変わってくるので、様々な設計が可能である。ただし、本発明のスピーカー用ダンパーは、外周連結部5と内周連結部6とを連結するアーム部7を幅Wが一定のアームにでき、また、複数の貫通孔をアーム部に設けることで応力分布の集中を緩和することができるので、設計が簡素化される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のスピーカー用ダンパーは、家庭用のステレオ再生、もしくはマルチチャンネルサラウンド再生に用いられるスピーカーに限られず、携帯用電子機器や、車載用のオーディオ機器に使用されるスピーカーにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパー1について説明する図である。
【図2】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパー10について説明する図である。(実施例2)
【図3】比較例のスピーカー用ダンパー20について説明する図である。
【図4】第二比較例のスピーカー用ダンパー21について説明する図である。
【図5】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカー用ダンパー11、12について説明する部分拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
1、10 スピーカー用ダンパー
2 外周固定部
3 内周可動部
4 支持アーム
5 外周連結部
6 内周連結部
7 アーム部
8 貫通孔
9 中心線
11、12 スピーカー用ダンパー
20、21 スピーカー用ダンパー
【出願人】 【識別番号】000000273
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−5002(P2008−5002A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169842(P2006−169842)