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【発明の名称】 ハンドオフ制御方法
【発明者】 【氏名】矢田 夕子

【氏名】宮脇 勝志

【氏名】森山 史之

【氏名】▲会田▼ 浩二

【氏名】松信 公一

【氏名】宋 泰傑

【要約】 【課題】移動機受信電波が短時間に急変する環境において、ピンポン現象を抑制して移動機トフラフィックチャネルを適切に切替え可能なハンドオフ制御方法を提供する。

【構成】移動機と通信中のソース基地局に接続された基地局制御装置が、移動機のハンドオフ先候補となる基地局からのパイロット信号の受信レベルと、ソース基地局からのパイロット信号の受信レベルとが所定の条件を満たしたか否かを判定し、条件が満たされた時、ソース基地局ではサービス周波数として使用されていない特定の周波数をターゲット周波数に指定して、移動機をターゲット基地局にハンドオフし、ソース基地局が、上記特定の周波数におけるパイロットビーコン信号の送信電力をサービス周波数となる他の周波数における送信電力よりも小さくしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号分割多重接続(CDMA)方式の移動無線システムにおける無線基地局間での移動機のハンドオフ制御方法であって、
移動機と通信中のソース基地局に接続された基地局制御装置が、
上記移動機のハンドオフ先候補となる基地局からのパイロット信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)と、上記ソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)とが所定の条件を満たしたか否かを判定し、
上記所定の条件が満たされた時、上記ハンドオフ先候補となる基地局をターゲット基地局として、上記ソース基地局ではサービス周波数として使用されていないパイロットビーコン信号用の特定の周波数をターゲット周波数に指定して、上記移動機をハンドオフするための通信手順を実行し、
上記ソース基地局が、上記特定の周波数におけるパイロットビーコン信号の送信電力をサービス周波数となる他の周波数における送信電力よりも小さくしたことを特徴とするハンドオフ制御方法。
【請求項2】
前記ソース基地局が、セル内で待ち受け状態となる移動機に対して、前記特定の周波数を除外した周波数群を該ソース基地局で使用可能なサービス周波数として報知することを特徴とする請求項1に記載のハンドオフ制御方法。
【請求項3】
前記ソース基地局に接続された基地局制御装置が、
前記ハンドオフ先候補となる基地局からのパイロット信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)が、ソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)よりも高く、その差が所定の閾値(T_COMP)を超えたことを検知した時、前記移動機の監視状態を通常状態からハンドオフ抑制状態に遷移し、
ハンドオフ抑制状態にある移動機が受信するソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)が、予め設定された最小閾値よりも低下した時点で、前記ハンドオフのための通信手順を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハンドオフ制御方法。
【請求項4】
前記基地局制御装置が、
前記ハンドオフ抑制状態にある移動機が受信するソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)と、前記ハンドオフ先候補となる基地局から受信するパイロット信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)との関係が、ハンドオフ抑制状態への遷移条件から外れた時、上記移動機を通常状態に戻して監視することを特徴とする請求項3に記載のハンドオフ制御方法。
【請求項5】
前記基地局制御装置が、
前記ソース基地局を介して、前記ハンドオフ抑制状態にある移動機にパイロット信号強度の通知要求(PMRO)を周期的に送信し、
上記移動機からの応答メッセージ(PSMM)が示すパイロット信号強度情報に基づいて、該移動機のハンドオフの実行要否を判定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のハンドオフ制御方法。
【請求項6】
前記基地局制御装置が、
前記ハンドオフ抑制状態にある移動機におけるフレームエラーレートが所定の閾値を超えた時、前記ハンドオフのための通信手順を実行することを特徴とする請求項3〜請求項5の何れかに記載のハンドオフ制御方法。
【請求項7】
前記基地局制御装置が、
前記ハンドオフ抑制状態にある移動機からフレームエラーレート通知メッセージ(PMRM)を受信した時、受信メッセージが示すフレームエラーレートを所定の閾値と比較し、フレームエラーレートが上記所定閾値を超えていた場合は、前記ハンドオフのための通信手順を実行し、フレームエラーレートが上記所定閾値を超えていなかった場合は、前記ソース基地局を介して、上記移動機に対してパイロット信号強度の通知要求(PMRO)を送信した後、該移動機へのパイロット信号強度通知要求の周期的な送信を繰り返すことを特徴とする請求項3〜請求項5の何れかに記載のハンドオフ制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、移動無線システムにおけるハンドオフ制御方法に関し、更に詳しくは、符号分割多重接続CDMA(Code Division Multiple Access)方式の移動無線システムにおけるハンドオフ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信分野では、通信方式の異なる各種の無線通信システムが導入されている。携帯電話用の第3世代の無線通信システムとして、複数ユーザの音声信号にそれぞれ異なる拡散符号を適用し、符号拡散された複数の音声信号を合成して、1つの周波数で搬送する符号分割多重接続(CDMA:Code Division Multiple Access)技術を用いた無線通信システムがある。CDMA2000 1x 800MHz方式の無線通信システムの詳細な構成や動作については、例えば、社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)の標準規格「ARIB_STD−T53」(非特許文献1)で規定されている。1つの周波数(FA)で形成できるトラフィックチャネルの数には上限があるため、CDMAの各基地局は、多重化して送受信される一群の周波数(FA)をサービス周波数として使用することにより、接続可能な移動機の台数を増加している。
【0003】
移動無線通信システムは、無線エリアを移動可能な移動機によって使用されるため、移動機と基地局との間の電波の状態、すなわち、移動機における無線信号の受信レベルが、基地局(アンテナ)と移動機との距離や、その間に存在する電波干渉/減衰の要因によって変化する。移動機が移動して通話品質が劣化した場合、現在通信中の基地局から、受信レベルが良好になる別の基地局に切り替えて通話サービスを継続するチャネル切替え(ハンドオーバーまたはハンドオフ)が必要となる。CDMAにおけるチャネル切替え(ハンドオフ手順)については、非特許文献1のARIB_STD−T53−C.S0005−0v3の2.6.6.3章で詳述されている。
【0004】
上記規格では、ハンドオフが円滑に行われるよう、呼処理の手順を定めている。どのような通信状態でハンドオフを起動するかの判定は、各キャリアの仕様や、装置メーカが提供する端末機器の機能に依存する。通常、同一メーカが提供する統一のとれた基地局によってネットワークを構成する場合、ハンドオフ方式としては、通話品質を良好に維持し易いソフトハンドオフ(Soft Handoff:SHO)が採用される。
【0005】
ソフトハンドオフでは、各移動機は、現在通信中の基地局(ソース基地局)が形成する通信ゾーン(セル領域)と、ソース基地局に隣接する別の基地局(ターゲット基地局)が形成するセル領域との境界領域(ハンドオフ領域)に位置した時、ソース基地局との間の通信チャネルを維持したまま、現在使用中のサービス周波数でターゲット基地局との間に新たな通信チャネルを設定する。ソフトハンドオフでは、移動機が、同一のサービス周波数で2つの基地局と通信しながらハンドオフ領域を移動でき、ハンドオフ領域からターゲット基地局(またはソース基地局)のセル領域に移動した時点で、ソース基地局(またはターゲット基地局)との間の通信チャネルを解放するようにしているため、移動機は、基地局切替えの際に通話を妨げられることなく、セル間を移動することが可能となる。
【0006】
ハンドオフ方式には、ソフトハンドオフ以外に、移動中の移動機が、周辺に位置した複数基地局からの受信電波の強度レベルに応じて、最適な基地局に切り替えるハードハンドオフ(Hard Handoff:HHO)がある。互いに異なるネットワークに属する基地局間では、それぞれの基地局にインタフェース仕様やハンドオフ実現方式に差があるため、SHO方式はコスト的に採用が困難となる。従って、実現が容易なHHO方式が採用される。
【0007】
しかしながら、HHO方式は、原理的に、移動機が通話中に、基地局制御装置を介して、ソース基地局とターゲット基地局との間でのハンドオフ通信手順の実行を必要とするため、基地局切替え時に音声の瞬間的な途切れが発生し、無線環境によってはフレーム誤り率FER(Frame Error Rate)が上昇し、通話品質が劣化し易い。また、HHOの起動条件は、後述するように、受信電波の強度のみで規定されているため、複数基地局の無線エリアが重畳するエリアでハンドオフが頻繁に発生する。
【0008】
【非特許文献1】ARIB_STD−T53 社団法人電波産業会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
CDMA方式の移動体通信網において、同一ネットワークに属する基地局間では、音声品質に優れたソフトハンドオフ(SHO)を採用できる。但し、同一ネットワークに属する基地局間であっても、SHOをいつでも実行できるとは限らない。その理由は、ソース基地局とターゲット基地局とで、トラフィックチャネル用として提供しているサービス周波数の個数と組み合わせが相違する場合があるからである。
【0010】
例えば、移動体通信網を構成している全ての基地局が、FA1〜FAnのN個の周波数でCDMA信号を送受信できると仮定する。この場合、駅の周辺や繁華街のように人口が密集した地域に配置された基地局では、最大限度の移動機台数を収容できるように、周波数FA1〜FAnの全てがユーザトラフィック用のサービス周波数として使用される。
【0011】
しかしながら、人口密度の少ない郊外に配置された基地局では、サービス周波数の個数が少なくても通信ニーズに応じられるため、周波数FA1〜FAnの一部のみをサービス周波数とすることによって、システムの運用コストを下げることが可能となる。残り周波数は、パイロットビーコン信号(PB信号)の送信用として使用される。各移動機は、ターゲット基地局から上記PB信号を受信すると、現在の受信周波数は、ターゲット基地局ではサービス周波数になっていないと判断できる。
【0012】
従って、例えば、ソース基地局とサービス周波数FAiで通信中の移動機が、ハンドオフ領域において、ターゲット基地局から周波数FAiでPB信号を受信した場合、現在の周波数FAiでは、移動機をターゲット基地局にソフトハンドオフ(SHO)することができないため、移動機で使用するサービス周波数の切り替えが必要となる。
【0013】
この場合、移動機は、後述するハンドオフ条件が成立した時、ソース基地局に対して、ハンドオフの起動要求メッセージ(PSMM:Pilot Strength Measurement Message)を送信する。PSMMには、現在使用中の周波数FAiがターゲット基地局ではPB信号用であることを示す制御情報が含まれる。上記PSMMを受信したソース基地局は、上位装置を経由して、ターゲット基地局にハンドオフ要求メッセージを送信する。
【0014】
上記ハンドオフ要求メッセージを受信したターゲット基地局は、自局で用意しているサービス周波数の中から、ハンドオフ移動機に割り当てるべきサービス周波数FAjを選択し、ハンドオフ受け入れのための制御情報設定を行った後、上位装置経由でソース基地局に、使用周波数FAjを指定した応答メッセージを返送する。ソース基地局が、移動機に使用周波数FAjを指定してハンドオフを指令し、移動機が使用周波数を切替えることによって、移動機とターゲット基地局との間でのサービス周波数FAjでの通信が可能となる。
【0015】
上述した周波数切替えを伴うハードハンドオフは、パイロットビーコン・ハードハンドオフ(PBHHO)と呼ばれている。PBHHOは、周波数の変更手順を除いて、通常のハードハンドオフ(HHO)と同様の制御手順で行われる。
【0016】
標準規格に準拠した移動通信システムでは、各移動機が、現在通信中の基地局(ソース基地局)に対して、この基地局からのパイロット(Active Pilot)信号の受信レベル(Pilot Strength)とフレームエラーレートFERを定期的に通知している。また、各移動機は、ソース基地局以外の別の基地局からのパイロット(Candidate Pilot)信号についても、その受信レベル(Pilot Strength)が、予めソース基地局からオーバーヘッド情報として報知されている閾値(T_ADD値)を超えると、制御メッセージであるPSMM(Pilot Strength Measurement Message)によって、上記Candidate Pilot信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)をソース基地局に通知する。PSMMを送信した移動機は、その後もソース基地局との通信を継続し、Active PilotとCandidate Pilotの受信レベル測定を繰り返す。
【0017】
Candidate Pilot StrengthがActive Pilot Strengthを越え、そのレベル差が予め報知されている所定の閾値(T_COMP値)を越えると、移動機は、制御メッセージPSMMによって、Candidate Pilotの受信レベルがハンドオフの起動条件を満足したことをソース基地局に通知する。ソース基地局に接続された基地局制御装置は、上記通知に応答してHHO処理を起動し、上位装置であるMSC(Mobile Switching Center)にハンドオフ要求メッセージを送信する。
【0018】
基地局制御装置は、MSCから応答メッセージを受信すると、ソース基地局を介して、移動機にHHOの指示メッセージHDM(Handoff Direction Message)を送信する。移動機は、上記HDMが示すハンドオフ先基地局(Target基地局)情報に基づいてHHOを実行し、接続先基地局をソース基地局からターゲット基地局に切り替える。HHOが完了すると、ターゲット基地局が移動機の新たなソース基地局となる。
【0019】
然るに、移動無線通信システムでは、複数基地局からの電波到達範囲が重畳するエリア(ハンドオフゾーン)において、各基地局が発生する電波以外の外来波や、複数基地局の電波干渉、電波を反射/減衰させる障害物の存在など、多様な無線環境変動要因が共存しており、移動機の受信電波の状況が短時間で急激に変化することが多い。
このため、移動機の移動距離が僅かでも、ソース基地局とターゲット基地局のパイロット信号レベル(Pilot Strength)が急激に変化し、Candidate Pilot Strengthが瞬間的に閾値T_ADDを超え、閾値T_COMPを満たすことによって、HHOが発生することがある。サービスエリアの状況によっては、基地局アンテナからの距離に対する電波強度分布の一様性が損なわれ、特に、移動機の近傍に干渉波源が存在した場合、移動機における受信電波の変動要因が大きくなるため、受信レベル変動によって結果的に頻繁なHHOが発生する。
【0020】
HHOが頻繁に発生すると、移動機の接続先基地局が頻繁に切り替えられ、短い期間に通信の瞬断、通話音声の途切れが増加し、最悪の場合は通話が切断される。このようにHHOが頻発する現象は、ピンポン(Ping-Pong)現象と呼ばれている。
ピンポン現象を抑制するために、例えば、HHO条件となる制御パラメータの値(閾値T_ADD、T_COMP)を変更すると、基地局の通信ゾーンが干渉波等によって急激に伸縮し、実際にはHHOを起動してチャネル切り替えすべき状況にあっても、HHOの起動条件が満足されない、あるいは起動条件を満足する迄に時間がかかるため、HHOの頻発を抑制できたにも関わらず、結果的に、通話品質劣化が起こり易くなるという問題がある。
【0021】
本発明の目的は、移動機受信電波が短時間に急変する環境において、ピンポン現象を抑制して移動機トフラフィックチャネルを適切に切替え可能なハンドオフ制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、特に、隣接する基地局間でユーザトラフィック用として提供されるサービス周波数の個数と組み合わせが相違している場合に有効なハンドオフ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明による符号分割多重接続(CDMA)方式の移動無線システムにおける無線基地局間での移動機のハンドオフ制御方法は、
移動機と通信中のソース基地局に接続された基地局制御装置が、上記移動機のハンドオフ先候補となる基地局からのパイロット信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)と、上記ソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)とが所定の条件を満たしたか否かを判定し、上記所定の条件が満たされた時、上記ハンドオフ先候補となる基地局をターゲット基地局として、上記ソース基地局ではサービス周波数として使用されていないパイロットビーコン信号用の特定の周波数をターゲット周波数に指定して、上記移動機をハンドオフするための通信手順を実行し、
上記ソース基地局が、上記特定の周波数におけるパイロットビーコン信号の送信電力をサービス周波数となる他の周波数における送信電力よりも小さくしたことを特徴とする。
【0023】
本発明のハンドオフ制御方法の他の特徴は、上記ソース基地局が、セル内で待ち受け状態となる移動機に対して、上記特定の周波数を除外した周波数群を該ソース基地局で使用可能なサービス周波数として報知することにある。
【0024】
更に詳述すると、本発明のハンドオフ制御方法では、上記ソース基地局に接続された基地局制御装置が、上記ハンドオフ先候補となる基地局からのパイロット信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)が、ソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)よりも高く、その差が所定の閾値(T_COMP)を超えたことを検知した時、前記移動機の監視状態を通常状態からハンドオフ抑制状態に遷移し、HHO抑制状態にある移動機が受信するソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)が、予め設定された最小閾値よりも低下した時点で、上記ハンドオフのための通信手順を実行することを特徴とする。
【0025】
上記基地局制御装置は、ハンドオフ抑制状態にある移動機が受信するソース基地局からのパイロット信号の受信レベル(Active Pilot Strength)と、ハンドオフ先候補となる基地局から受信するパイロット信号の受信レベル(Candidate Pilot Strength)との関係が、ハンドオフ抑制状態への遷移条件から外れた時、上記移動機を通常状態に戻して監視する。また、上記基地局制御装置は、上記ソース基地局を介して、ハンドオフ抑制状態にある移動機にパイロット信号強度の通知要求(PMRO)を周期的に送信し、上記移動機からの応答メッセージ(PSMM)が示すパイロット信号強度情報に基づいて、該移動機のハンドオフの実行要否を判定する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移動機をソース基地局からターゲット基地局にハンドオフする時、ターゲット基地局側で移動機に割り当てるべきサービス周波数を指定しておき、ソース基地局では、上記指定周波数で、通常のサービス周波数よりも小さい電力でパイロットビーコンの送信するようにしているため、移動機がターゲット基地局にハンドオフされた瞬間、上記移動機が使用しているサービス周波数でのハンドオフ領域がソース基地局側にシフトし、相対的に移動機がターゲット基地局に近づいた状態となる。従って、移動機の僅かな移動や信号受信レベルの変動によるハンドオフのピンポン現象を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明によるハンドオフ制御方法の1実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される無線通信ネットワークの構成例を示す。
ここに例示した無線通信ネットワークは、それぞれベンダーの異なる無線通信ネットワーク100Aと無線通信ネットワーク100Bとからなる。これらのネットワークは、無線通信ネットワーク100Aに属する移動交換局MSC(Mobile Switching Center)60と、無線通信ネットワーク100Bに属するコールエージェント(Call Agent)装置(以下、CAと言う)10との間でISOの標準規格で定められたメッセージフォーマットで通信することにより、互いに結合されている。
【0028】
無線通信ネットワーク100Aには、無線基地局BTS(Base Transmission Subsystem)80を制御するための基地局制御装置BSC(Base Station Controller)70が接続されている。一方、無線通信ネットワーク100Bでは、上記CA10に、基地局BTS30を制御するための基地局制御装置RNC(Radio Network Control)20が接続され、RNC20には、保守システムOMS(Operation and Maintenance System)40が接続されている。OMS40は、無線通信ネットワーク100Bに属する通信装置を統合的に管理するためのシステムであり、ネットワーク管理者が操作する制御端末50と接続されている。ネットワーク管理者は、端末装置50の画面を通して、無線通信ネットワークの状態を監視し、システムの運用状態を示す管理情報の取得と、各通信装置に対するシステムパラメータの設定を行う。
【0029】
実際の応用においては、RNC20とBSC70には、それぞれ複数の無線基地局が収容されるが、ここでは、図面を簡単化するため、BTS30と80のみが示してある。基地局BTS30と、BTS30からの電波到達エリア(ゾーン)Zbに位置した移動機MSとの間の通信は、上記RNC20によって制御される。ゾーンZbは、BTS80からの電波到達エリア(ゾーン)Zaと斜線エリアZabで重なっている。以下の説明では、エリアZabをハンドオフ領域と言う。
【0030】
図1では、移動機MSが、ハンドオフ領域Zab内に位置し、無線通信ネットワーク100Bに属するBTS30と通信中の状態を示している。Paは、移動機MSとBTS30との間のパイロット信号(Active Pilot)および無線伝播路を意味し、Pcは、移動機MSとBTS60との間のパイロット信号(Candidate Pilot)および無線伝播路を意味している。
【0031】
移動機MSがハンドオフ領域Zabにいる間、無線通信ネットワーク100BのRNC20は、移動機MSが受信するBTS30からのパイロット信号Paの受信レベルを監視している。電波環境の変化によってゾーンZaが拡大、または移動機MSの移動によってパイロット信号Pcの受信レベルが所定レベルにまで増加した場合、RNC20は、後述するように、移動機MSをハンドオフ(HHO)抑制状態にして、その後のパイロット信号の受信レベル変化を監視する。
【0032】
RNC20は、パイロット信号Paの受信レベルが所定閾値にまで低下した時点、あるいは、フレームエラーレートFERが所定閾値に達した時点で、CA10と制御メッセージを交信し、移動機MSの接続先をゾーンZaのBTS80に切り替えるHHOを実行する。HHO実行前にパイロット信号Paの受信レベルが回復、あるいは、パイロット信号Pcの受信レベルが低下した場合、移動機MSの状態は、HHO抑制状態から平常状態に戻して監視される。
【0033】
図2は、基地局80(または30)がオムニタイプの場合の通信ゾーンZa(またはZb)と、通信ゾーンZa内で使用されるサービス周波数を示す。オムニタイプの基地局80は、1つの通信ゾーンZaを形成する。ゾーンZa内に位置した移動機MSは、基地局80が送信する一群の複数のサービス周波数FA(1)〜FA(n)のうちの1つを選択して、待ち受け状態となる。各基地局に用意されるサービス周波数の数(nの値)は、最大で「6」程度である。
【0034】
図3は、基地局80(または30)がセクタタイプの場合の通信ゾーンと、通信ゾーン内で使用されるサービス周波数を示す。セクタタイプの基地局は、3つの指向性アンテナによって、互いに隣接したαセクタ、βセクタ、γセクタを形成する。これらのセクタ(α、β、γ)は、オムニタイプの通信ゾーンZaを3分割したものに相当する。この場合、基地局が各セクタで使用できるサービス周波数の数は、最大で2となる(n=6の場合)。移動機MSは、現在位置しているセクタで、指向性アンテナから送信中のサービス周波数の1つを選択して、待ち受け状態となる。
【0035】
図4は、基地局30(または80)が、各サービス周波数で送信しているフォワード(FWD)チャネルの構成を示す。
フォワード(FWD)チャネルには、例えば、共通割り当てチャネルC1、共通電力制御チャネルC2、パイロットチャネルC3、共通制御チャネルC4、同期チャネルC5、トラフィックチャネルC6、同報チャネルC7、ページングチャネルC8、クイックページングチャネルC9が定義されている。サービス周波数となっていないパイロットビーコン信号用周波数のフォワード(FWD)チャネルには、トラフィックチャネルC6が存在しない。
【0036】
移動機MSは、現在の使用周波数でFWDチャネルを受信し、パイロットチャネルC3を捕捉して、基地局の存在を確認する。移動機MSは、同期チャネルC5で基地局との同期をとることによって、基地局との通信が可能な状態になる。また、ページングチャネルC8で、基地局からのオーバーヘッドメッセージを受信することにより、現在の使用周波数がサービス周波数か否かを判断できる。
【0037】
図5は、基地局30と80がオムニタイプの場合の本発明によるハンドオフ制御動作の説明図である。
ここでは、基地局(BTS)30が、周波数FA(1)〜FA(n−1)をサービス周波数とし、周波数FA(n)をパイロットビーコン(PB信号)用に使用し、基地局80が、全ての周波数FA(1)〜FA(n)をサービス周波数として使用している。
【0038】
BTS30をソース基地局として、例えば、図6に示すように、サービス周波数FA(1)で通信中の移動機MSが、ハンドオフ領域Zab(1)に移動し、BTS80をターゲット基地局としてハンドオフ条件が成立したと仮定する。この場合、本発明は、BTS30が送信する周波数FA(n)におけるPB信号の電力をサービス周波数FA(1)〜FA(n−1)における送信電力よりも小さくしておき、移動機MSをBTS30からBTS80にハードハンドオフする時、図5に実線HO1で示すように、ターゲット周波数として周波数FA(n)を指定することを特徴とする。尚、BTS30における周波数FA(n)のPB信号の送信電力には、最低6dBのフェージングマージンを確保する。
【0039】
移動機MSをBTS30からBTS80にハンドオフしたとき、ハンドオフ領域Zab(1)の中心線は、BTS30とBTS80から送信されたサービス周波数FA(1)の送信信号(特にパイロット信号)の電力レベルが等しい位置にある。BTS30からBTS80へのハンドオフは、原理的には、移動機MSがゾーンZabの中心線を越えたときに発生する。
【0040】
本発明によれば、移動機MSがBTS30からBTS80にハンドオフされ、移動機MSの使用周波数がFA(n)に切替えられた瞬間に、次回のハンドオフ環境が一変する。すなわち、周波数FA(n)では、上述したように、BTS30からの送信電力が、BTS80の送信電力よりも小さくなっているため、図6に示すように、周波数FA(n)が形成するハンドオフ領域Zab(n)は、周波数FA(1)が形成するハンドオフ領域Zab(1)よりも、BTS30側に偏ったものとなる。従って、BTS80にサービス周波数FA(n)でハンドオフされた瞬間に、新たなハンドオフ領域Zab(n)がシフトし、移動機MSの位置が、相対的にBTS30の通信ゾーンZbの内部に移動した状態となる。
【0041】
従来のハンドオフ制御では、ハンドオフ後に移動機MSが使用するサービス周波数は、従前のサービス周波数と略同じ位置にハンドオフ領域Zab(n)を形成しているため、移動機MSの位置がBTS30側に僅かに戻っただけでも、BTS80からBTS30へのハンドオフが実行され、ピンポン現象が発生する。しかしながら、本発明の場合、移動機MSをBTS30からBTS80にハンドオフした時、図6に示すように、新たなハンドオフ領域Zab(n)の中心線が移動機MSから離間するため、移動機MSの位置がBTS30側に僅かに移動しただけでは、BTS80からBTS30へのハンドオフ条件は満たされず、ピンポン現象は発生しない。
【0042】
サービス周波数FA(n)でBTS80と通信中の移動機MSが、ハンドオフ領域Zab(n)に移動し、BTS30からの受信強度がハンドオフ条件を満たした場合、BTS80からBTS30へのハンドオフが発生する。このハンドオフは、移動機MSが、通常のサービス周波数におけるハンドオフ領域、例えば、Zab(1)を脱して、基地局30の通信ゾーンZaの内部に完全に移動した後に行われており、ピンポン現象によるものではない。この場合、移動機MSは、周波数FA(n)でBTS30から受信した信号がPB信号となっているため、パイロットビーコン・ハードハンドオフ(PBHHO)を実行する。従って、移動機MSは、図5に破線HO2で示すように、サービス周波数をFA(1)〜FA(n−1)の何れかに切替えて、BTS30にハンドオフすることになる。
【0043】
図7は、サービス周波数FA(1)でBTS30と通信中の移動機MSをBTS80にハンドオフする際のメッセージシーケンスを示す。
ソース基地局(BTS30)とサービス周波数FA(1)で通信中の移動機MSが、BTS30と80との間のハンドオフ領域Zab(1)において、ソース基地局(BTS30)以外の別の基地局(この例ではBTS80)からのパイロット(Candidate Pilot)信号の受信レベルが、予めソース基地局から報知されている閾値(T_ADD値)を超えたことを検知すると、Candidate Pilot Strengthを示す制御メッセージPSMM(Pilot Strength Measurement Message)を送信する(SQ1)。上記PSMMは、BTS30を介してRNC20に転送される。
【0044】
RNC20は、PSMMを受信すると、後述するハードハンドオフ制御ルーチン215を実行して、ターゲット基地局(BTS80)へのハンドオフ条件が満たされたか否かを判定する。もし、ハンドオフ条件が満たされた場合、RNC20は、CA10を介してMSC60に、移動機MSをBTS80にハンドオフ(HHO)する必要があることを示す制御メッセージ(HRM:Handoff Required Message)を送信する(SQ2)。本発明では、上記HRMによって、ハンドオフターゲットFAとしてサービス周波数FA(n)を選択すべきことを指定しておく。
【0045】
MSC60は、上記HRMを受信すると、BSC70を介してターゲット基地局(BTS80)に、サービス周波数FA(n)による移動機MSのハンドオフ実行を要求する制御メッセージ(handoff Request)を送信する(SQ3)。上記要求メッセージに応答して、BTS80が、移動機MSをサービス周波数FA(n)で収容するための制御パラメータのセットアップを実行し、BSC70を介して応答メッセージ(Handoff Ack)を返送すると(SQ4)、MSC60は、CA10を介してRNC20に、ハンドオフコマンドメッセージを送信する(SQ5)。
【0046】
RNC20は、ハンドオフコマンドメッセージを受信すると、BTS30を介して移動機MSに、ターゲット周波数FA(n)を指定したHHO指令メッセージHDM(Handoff Direction Message)を送信する(SQ6)。移動機MSは、HDMを受信すると、応答メッセージ(MS Ack Order)を返送(SQ7)した後、送受信周波数をFA(1)からFA(n)に切り替え、ハンドオフ完了を示す制御メッセージHCM(Handoff Completion Message)をBTS80に送信する(SQ9)。RNC20は、移動機MSから応答メッセージ(MS Ack Order)を受信すると、MSC60にハンドオフ開始メッセージ(Handoff Commenced)を送信する(SQ8)。BTS80が、上記HCMに対する応答メッセージ(BS Ack Order)を移動機MSに返送すると(SQ10)、移動機MSとBTS80とがサービス周波数FA(n)で通信可能な状態となる。
【0047】
この状態で、BTS80が、MSC60にハンドオフ完了メッセージ(Handoff Complete Message)を送信すると(SQ11)、MSC60が、RNC20にクリアコマンドメッセージ(Clear Command Message)を送信する(SQ12)。RNC20とBTS30が、上記クリアコマンドメッセージに応答して、移動機MSとの通信用のチャネルリソースを解除した後、MSC60にクリア完了メッセージ(Clear Complete Message)を返送すると(SQ13)、BTS30から80への移動機MSのハードハンドオフが完了する。
【0048】
図5に示した例では、BTS30が、1つの周波数FA(n)をPB信号用として、残りの周波数FA(1)〜FA(n−1)をトラフィックサービス用として使用し、BTS80が、全ての周波数FA(1)〜FA(n)をトラフィックサービス用として使用した場合を示しているが、BTS30が複数の周波数、例えば、FA(n)とFA(n−1)をPB信号用とし、BTS80が周波数FA(n)をPB信号用としていた場合、BTS30は、FA(n−1)をハンドオフ・ターゲット周波数に指定して、BTS80に移動機MSのハンドオフを要求すればよい。
【0049】
また、BTS30が複数の周波数、例えば、FA(n)とFA(n−1)をPB信号用とし、BTS80が全ての周波数FA(1)〜FA(n)をトラフィックサービス用として使用した場合、BTS30は、FA(n)とFA(n−1)の何れかをハンドオフ・ターゲット周波数に指定して、BTS80に移動機MSのハンドオフを要求すればよい。この場合、BTS30は、ターゲット周波数として、FA(n)とFA(n−1)の一方を固定的に選択してもよいし、FA(n)とFA(n−1)を交互に選択するようにしてもよい。
【0050】
ソース基地局(BTS30)が、PB信号用として使用している特定の周波数、例えば、FA(n)をハンドオフ・ターゲット周波数に指定して、ターゲット基地局(BTS80)に移動機MSをハンドオフした場合、BTS80は、BTS30からハンドオフ要求された全ての移動機を1つのサービス周波数FA(n)で受け入れることになる。この場合、周波数FA(n)がもつ通信リソース(Call Capacity)は、BTS30のサービスゾーンZaから移動してきた移動機のために有効利用する必要があり、BTS80のサービスゾーンZb内で単に待ちうけ状態にある移動機(アイドルハンドオフ移動機)は、周波数FA(n)から排除することが望ましい。
【0051】
アイドルハンドオフ移動機を周波数FA(n)から排除するためには、例えば、BTS80が、ゾーンZa内で位置登録する移動機に対して報知するサービスFA群の中から、上記特定周波数FA(n)を除外しておけばよい。
ゾーンZa内で使用可能なサービスFA群は、例えば、BTS80がページングチャネルC8でオーバーヘッドメッセージとして送信するCCLM(CDMA Channel List Message)で報知される。BTS80が、上述したBTS30と同様、或る周波数をPB信号専用に使用している場合、ゾーンZa内で使用可能なサービスFA群は、この周波数で送信される特定のメッセージ、例えば、GSRDM(Global Service Redirection Message)でも報知される。
【0052】
従って、これらのメッセージで報知されるサービスFA群から、上記特定周波数FA(n)を除外しておくことによって、アイドルハンドオフ移動機を特定周波数FA(n)以外のサービス周波数で待ち受け状態にすることが可能となる。BTS30からBTS80にハンドオフされた移動機MSも、特定周波数FA(n)での通信を終了した場合、上述したアイドルハンドオフ移動機と同様、CCLMまたはGSRDMによって報知されたサービスFA群の中から選択したサービス周波数で待ち受け状態となる。
【0053】
図8は、ソース基地局(BTS30)がセクタタイプで、ターゲット基地局(BTS80)がオムニタイプの場合の本発明によるハンドオフ制御動作の説明図である。
BTS30は、α、β、γの各セクタゾーンにおいて、2つのサービス周波数で移動機と通信する。図5と同様、BTS30が周波数群としてFA(1)〜FA(n)をもつ場合、各セクタゾーンでは、この周波数群の中から選択された2つの周波数がサービス周波数として使用され、残りはPB信号用となる。
【0054】
図8では、αセクタにおいて、FA(1)とFA(2)がサービス周波数、FA(3)〜FA(n)がPB信号用に割当てられている。この場合、BTS30は、FA(3)〜FA(n)のうちの1つ、例えば、FA(n)をターゲット周波数に指定して、移動機MSをゾーンZa(αセクタ)から隣接ゾーンZbの基地局にハンドオフする。
【0055】
α、β、γセクタでは、それぞれ異なった周波数がサービス周波数として使用される。但し、ターゲット周波数の選択は自由であり、β、γセクタがαセクタと同じ周波数FA(n)をターゲット周波数に指定してもよい。各セクタにおいて、ターゲット周波数は固定的である必要は無く、例えば、PB信号用の複数の周波数の中から循環的にターゲット周波数を選択するようにしてもよい。この場合、各セクタ内において、PB信号用の全ての周波数の送信電力をサービス周波数よりも小さくしておくことによって、図6で説明したようにハンドオフ領域をシフトして、ハンドオフのピンポン現象を抑制することが可能となる。
【0056】
図9は、無線通信ネットワーク100Bに属した基地局制御装置(RNC)20とBTS30のブロック構成図を示している。
BTS30は、移動機MSと通信するためのアンテナ31と、送受信信号の結合分離部(Combiner & Divider Unit)32と、結合分離部32に接続された送受信部(トランシーバ)33と、信号線34でトランシーバ33に接続された制御部35と、制御部35に接続されたモデム/チャネル処理部36とからなる。制御部35は、プロセッサ351と、このプロセッサが実行するOVHD処理モジュール352と、制御プログラムモジュール353とからなり、BTS30内の各ハードウェアの監視と制御を行う。
【0057】
アンテナ31からの受信信号は、送受信部33によってBTS内部で有効な信号形式に変換した後、制御部35に供給される。制御部35は、送受信部33からの受信信号をモデム/チャネル処理部36に転送する。この時、制御部35は、モデム内で使用すべきリソースの割当て制御を行う。モデム/チャネル処理部36は、受信信号を制御パケットまたはデータパケットに変換し、RNC20の呼処理部21に転送する。逆に、RNC20からの送信信号(制御パケットまたはデータパケット)は、モデム/チャネル処理部36から、制御部35を介してトランシーバに転送される。この時、制御部35は、使用すべき適切な周波数をトランシーバ33に指定する。
【0058】
基地局制御装置(RNC)20は、呼処理部21と、上記呼処理部21およびBTSの制御部35に接続された制御部22と、基地局情報メモリ23とからなる。制御部22は、RNC内の各ハードウェアの監視/制御のほかに、CA10と通信して呼の全体的な制御を行うためのものであり、RNCのハードウェアおよびBTS30の監視/制御を行うプロセッサ221と、呼制御部(ルーチン)222と、呼処理部21でHHOを実行すべきものと判断した時、CA10やBTS30などの外部装置と通信して、HHOを制御するハンドオフ制御部(ルーチン)223とからなっている。
【0059】
呼処理部21は、モデム/チャネル処理部36からの受信パケットがデータパケットの場合は、制御部22を介してCAに転送し、制御パケットの場合は、制御メッセージを抽出して、プロセッサ221に転送する。
【0060】
呼処理部21は、個別の呼処理を行うためのものであり、プロセッサ210と、移動機から通知された基地局パイロット信号の受信レベル(Pilot Strength)を判定する受信レベル判定部211と、受信フレームに発生した誤り監視するFER監視部212と、メモリ213と、プロセッサ210が実行する呼処理プログラム214およびHHO制御部プログラム215とを備える。
メモリ213には、BTS30内が扱っている呼および移動機MSの状態情報が記憶される。移動機MSの状態情報には、受信レベル判定部211とFER監視部212から出力される移動機毎の受信レベルとFERが含まれる。
【0061】
HHO制御プログラム215は、移動機から制御メッセージで通知されたPilot Strengthの受信レベル判定部211での判定結果と、FER監視部212で監視するフレームの誤り率FERの値に基づいて、HHOの実行を制御するためのものである。HHO制御プログラム215は、移動機MSに対して受信レベル通知要求を定期的に発行する機能と、受信レベル通知要求の発行要否を判定する機能を備えている。
【0062】
基地局情報メモリ23には、RNCが管理している基地局の識別番号と対応して、基地局情報とハンドオフ可能な隣接基地局に関する情報を示す複数のテーブルエントリからなる基地局情報テーブルが形成されている。基地局情報テーブルを参照することによって、例えば、ソース基地局のタイプ(オムニ/セクタ)、ソース基地局で使用しているサービス周波数、PB信号用として使用されている周波数、ハンドオフ可能な隣接基地局の識別情報とタイプ(オムニ/セクタ)、隣接基地局との間で行われるハンドオフのタイプ(HHO/SHO)、ターゲット周波数の指定要否および周波数を把握できる。
【0063】
移動機MSと基地局との間の電波伝播状態は、一旦急変した後、比較的短時間で元の状態に戻る場合がある。このような状況下でHHOが実行されると、ピンポン現象が発生する。本実施例において、HHO制御プログラム215は、ピンポン現象を回避するため、移動機からの受信レベル通知には直ちには応答せず(HHOを実行せず)、HHO条件が或る程度安定的に継続することを確認して、隣接する別の基地局へのHHOを実行するように呼を制御する。また、ホーム基地局で用意している周波数群の一部がPB信号専用となっており、サービス周波数の数が、ターゲット基地局で用意しているサービス周波数の数よりも少ない場合、HHO制御プログラム215は、PB信号用の1つの周波数をターゲット周波数に指定して、移動機のターゲット基地局へのハンドオフを要求する。
【0064】
図10は、オムニタイプの基地局30の送受信部34の構成を示す。
送受信部34は、周波数FA(1)〜FA(n)と対応した複数のトランシーバ331−1〜331−nと、PB信号送信部332と、ゲイン調整部333とからなる。トランシーバ331−iは、制御部35から出力された各種チャネルの信号をCDMAの送信帯域周波数FA(i)に変換して結合分離部32に出力し、結合分離部32から受信した周波数FA(i)の信号をベースバンドに変換して、制御部35に出力する。PB信号送信部332から発生したパイロット信号は、パイロットチャネル信号として、トランシーバ331−1〜331−nに供給される。
【0065】
ゲイン調整部333は、トランシーバ331−1〜331−nの出力ゲインを個別に調整する。例えば、周波数FA(n)がユーザトラフィック用には適用されず、PB信号に専用の周波数となっていた場合、ゲイン調整部333でトランシーバ331−nの出力ゲインを他のトランシーバよりも下げておくことによって、図6で説明したハンドオフ領域のシフトを実現できる。
基地局30がセクタタイプの場合、図10に示したアンテナ31と、結合分離部32と、送受信部33との組み合わせをα、β、γセクタ毎に用意すればよい。
【0066】
以下、ハンドオフゾーンZabにおける電波伝搬の状態変化や、このゾーンZabに発生する事象を交えて、本発明による無線チャネルの切替え(ハンドオフ)制御方法を説明する。
無線通信サービスの提供エリアでは、様々な干渉電波が日常的に存在しているため、図1に示したBTS30、80も、これら干渉波の影響を受けて、ゾーンZaとゾーンZbの境界が一定していない。このため、例えば、ゾーンZbでBTS30と通信中の移動機MSが、ハンドオフ領域Zabに位置している間に、ゾーンZaのBTS80からの送信電波の受信レベルが、BTS30からの受信レベルよりも一時的に高くなり、短時間で元の状態に戻る場合がある。
【0067】
このような状況下では、移動機MSが現在接続中のBTS30の通信チャネルを維持しておいた方が、通話品質の保証、通話の瞬断回避、ハンドオフ実行の通信手順省略の点で有利となる。本実施例では、ハンドオフ領域で実際に起こり得る電波伝播状況を考慮した上で、HHOの実行を制御する。
【0068】
図11は、HHO起動タイミングの判断をPilot Strengthの観点から説明するために用意された図であり、縦軸はPilot Strength、横軸は時間の経過を示している。
ここでは、BTS30が、ソース(Source)基地局となってActive Pilot信号Paを送信し、BTS80がターゲット(Target)基地局となってCandidate Pilot信号Pcを送信している。また、移動機MSは、ソース基地局30との間で、ARIB_STD−T53に定められた手順に基づいて通信を実行している。
【0069】
移動機MSで測定したターゲット基地局80からの送信電波(パイロット信号)の受信レベルが、時刻t0で、Candidate Pilotの認識閾値(T_ADD値)を超えると、移動機MSは、制御メッセージPSMM(Pilot Strength Measurement Message)によって、現在受信中のPilot Strengthを示す情報をソース基地局30に通知する。その後もCandidate Pilot Strength:Pcが増加し、PcがActive Pilot Strength:Paを超えて、その差が、時刻t1で、閾値(T_COMP)以上となった場合、移動機MSは、標準規格に従って、ソース基地局30に制御メッセージPSMMを送信し、ソース基地局30からハンドオフの指示メッセージHDM(Handoff Direction Message)が返信されるのを待つ。
【0070】
本実施例のハンドオフ制御方法では、基地局制御装置(RNC)20は、上記PSMMを受信した時点t1ではHHOを実行しない。すなわち、RNC20は、移動機MSにHDMを返送せず、移動機の監視状態をHHO抑制状態(HHO Holding State)にして、現在のチャネルを維持する。また、HHO抑制状態において、移動機MSの受信レベルの状態を常時監視するため、RNC20の呼処理部21は、パラメータ(Value3)で指定された所定の周期で、移動機MSにPMRO(Pilot Measurement Request Order)の送信を開始する。
【0071】
図11では、簡単化のために受信レベル(Pilot Strength)の論理的な推移を示しているが、実際には、各BTSのPilot Strengthは、干渉波の影響を受けて、例えば、図12に示すように変動する。本実施例において、上記HHO抑制状態は、次の何れかの条件が満たされた時、解除される。
【0072】
(1)Active Pilot Strengthが、システム管理者によって設定可能なアクティブパイロット最小閾値:Value1(Active Pilot Minimum Strength)を下回った時点(図11のt2)でHHOを実行して、HHO抑制状態を解除する。
(2)Value1の条件を満たさない場合であって、移動機MSから受信するFERの値が、可変に設定可能なFER閾値:Value2(FER_Threshold)を越えた時、直ちにHHOを実行して、HHO抑制状態を解除する。
(3)Active PilotとTarget Pilotとの差が、HHO抑制状態の起点となった閾値(T_COMP)を満足できない状態となった時、HHO抑制状態を解除する。
これらの条件をマトリックスで示すと、図13のようになる。
【0073】
図14は、RNC20の呼処理部21で実行されるHHO制御プログラム215のフローチャートを示す。HHO制御プログラム215は、受信レベル判定部211およびFER監視部212と連携して実行される。以下、図14を参照して、本発明による無線チャネルのHHO起動/抑制制御について詳細に説明する。図14において、記号Fは、監視対象呼が、既にHHO抑制状態にあるか否かの判定に使用されるフラグである。
【0074】
プロセッサ210は、受信レベル判定部211によって、図11で説明した時刻t1、すなわち、Candidate Pilot Strengthが閾値(T_ADD値)を超えたことが検出された時、HHO制御プログラム215を開始する。但し、Candidate Pilotの送信元基地局(ハンドオフ候補BTSまたはターゲットBTS)が、PSMMの送信元BTS(ソース基地局)に隣接する基地局として基地局情報テーブルに登録されていなければ、上記検出結果は無効となる。
【0075】
HHO制御プログラム215を実行すると、プロセッサ210は、先ず、フラグFを初期状態値0に設定する(S100)。呼処理部21が移動機MSから送信されたPSMMを受信し、受信レベル判定部211が、閾値(T−COMP)を使って、HHO Holding State条件(従来のHHO条件)が満たされているか否かを判断する(S101)。Candidate Pilot Strengthが、Active Pilot Strengthを超え、その差が閾値(T_COMP)以上となった時、HHO抑制状態となる。
【0076】
HHO抑制状態において、プロセッサ210は、フラグFの状態をチェックする(S102)。HHO抑制状態に入った直後は、フラグFは初期状態値0となっているため、プロセッサ210は、所定周期TでPMROを送信するPMRO送信処理を開始し(S103)、フラグFの状態値を1に設定して(S104)、端末からのPMRMの受信の有無を判定する(S105)。尚、ステップS102でフラグFが初期状態値でなければ、既にPMROの送信処理が開始されているため、プロセッサ210は、ステップS103とS104を省略して、ステップS105を実行する。
【0077】
RNC20がHHO抑制状態にある間は、Candidate Pilot StrengthがActive Pilot Strengthよりも高く、Active Pilot Strengthも十分な受信レベルを維持している。しかしながら、様々な干渉波やCandidate Pilotの影響を受けて、フレームエラーが発生する場合がある。フレームエラーが発生すると、移動機MSは、制御メッセージPMRM(Power Measurement Report Message)によって、現在通信中の基地局30にフレームエラーの発生を通知する。
【0078】
呼処理部21が移動機MSからPMRMを受信する(S105)と、FER監視部212が、端末から通知されたFERと閾値(Value2)とを比較し(S106)、HHO起動の要否を判定する。FERと閾値(Value2)を超えていた場合、順方向の電波が劣化していることを意味している。この場合、通信品質を維持するため、Active Pilot StrengthがValue1を下回らなくても、プロセッサ210は、直ちにHHOを実行して(S111)、このプログラムを終了する。
【0079】
ステップS111では、ハンドオフ制御部223によって、RNC20、CA10を介してMSC60にハンドオフ要求メッセージが送信され、応答メッセージを受信した時、移動機にHHO指令メッセージHDM(Handoff Direction Message)が送信される。尚、ハンドオフ先となるターゲット基地局に関して、基地局情報テーブルが、ターゲット周波数を特定していた場合、上記ハンドオフ要求メッセージは、ハンドオフされた移動機に割り当てるべきターゲット周波数の指定情報を含む。
【0080】
FERが閾値Value2を超えていなかった場合、プロセッサ210は、HHO抑制状態を維持するため、移動機MSに制御メッセージPMROを送信する(S107)。PMROの送信の都度、PMROの送信周期Tがリセットされる。この後、プロセッサ210は、送信周期Tで移動機MSにPMROを送信し(S108)、これに応答して移動機MSが返信するPSMMが受信されるのを待つ(S109)。移動機MSからPSMMを受信すると、受信レベル測定部211が、Active Pilot Strengthが閾値Value1を下回ったか否かを判定する(S110)。Active Pilot Strengthが閾値Value1を下回っていた場合は、プロセッサ210は、HHOを実行し(S111)、このプログラムを終了し、Active Pilot Strengthが閾値Value1以上の場合は、ステップS101以降の動作を繰り返す。
【0081】
尚、ステップS105で、移動機MSからのPMRMの受信がなかった場合は、ステップS108以降の動作が実行される。また、ステップS101において、Candidate Pilot StrengthとActive Pilot Strengthとの関係が、HHO抑制条件を満たしていなかった場合、プロセッサ210は、PMROの送信を停止し(S120)、フラグFの値から、HHO抑制状態にあるか否かを判断する(S121)。
【0082】
フラグFが1であれば、プロセッサ210は、移動機に制御メッセージHDMを送信し(S122)、ステップS100に戻る。移動機に擬似的なハンドオフを実行させるために、上記HDMでは、ソース基地局のActive Pilot情報のみが送信される。一般に、移動機は、ハンドオフ要求メッセージPSMMを送信した後に、基地局からHDMが送信されるのを待っている。RNC20が、HHO抑制状態になると、移動機はPSMMを送信しなくなるため、RNC20から擬似的なHDMを送信することによって、移動機に一連のハンドオフ処理を完了させる。
【0083】
HHO抑制状態からHHO実行に遷移する際の閾値となるValue1、Value2Value3の最適値は、基地局の設置位置の立地条件によって異なる。そこで、事前に机上判定を行って、例えば、Value1は、−10dB〜−14dB、Value2は、0%、30%、40%、50%、70%、Value3は、1秒〜3秒の如く、閾値の範囲を或る程度絞り込んだ上で、現地でのフィールド試験、例えば、Call Drop数や、FER、音質評価、HHO試行回数とHolding発生率の比較試験を行い、基地局毎に最適な値を選択することが望ましい。
【0084】
各種の試験結果から、例えば、次のような重み付け順位で総合的に判断して、適用すべき最適値を選択できる。
(1)Average FER
(2)Good Count 及び Bad Count 回数
(3)システムB -> システムAの Call Drop 回数
(4)HHO Holding Rateが50% 以上
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明が適用される無線通信ネットワークの構成例を示す図。
【図2】基地局がオムニタイプの場合の通信ゾーンと、通信ゾーン内で使用されるサービス周波数を示す図。
【図3】基地局がセクタタイプの場合の通信ゾーンと、通信ゾーン内で使用されるサービス周波数を示す図。
【図4】基地局が各サービス周波数で送信しているフォワードチャネルの構成を示す図。
【図5】基地局がオムニタイプの場合の本発明によるハンドオフ制御の動作説明図。
【図6】本発明おけるハンドオフ領域のシフトを示す図。
【図7】本発明のハンドオフにおけるメッセージシーケンス図。
【図8】基地局がセクタタイプの場合の本発明によるハンドオフ制御の動作説明図。
【図9】基地局制御装置(RNC)20と基地局(BTS)30の構成を示すブロック図。
【図10】基地局の送受信部33の構成を示すブロック図。
【図11】ハンドオフ(HHO)の起動タイミングを説明するための図。
【図12】Active Pilot信号とCandidate Pilot信号の実際の変動を示す図。
【図13】本発明のハンドオフ制御における状態遷移を示すマトリクス図。
【図14】ハンドオフ制御プログラム215のフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
10:CA(Call Agent)、20:基地局制御装置(RNC)、21:呼処理部、22:制御部、30、80:基地局、50:基地局制御装置(BSC)、60:MSC(Mobile Switching Center)。
【出願人】 【識別番号】000153465
【氏名又は名称】株式会社日立コミュニケーションテクノロジー
【識別番号】506071265
【氏名又は名称】コンテラ株式会社
【出願日】 平成18年9月13日(2006.9.13)
【代理人】 【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人


【公開番号】 特開2008−72291(P2008−72291A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−247859(P2006−247859)