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【発明の名称】 スミア推測方法およびスミア除去回路
【発明者】 【氏名】大野 俊和

【要約】 【課題】固体撮像素子から読み出された画像信号に発生するスミア成分を推測する際、飽和している受光素子が含まれている場合、スミア成分を精度よく推測することが難しかった。

【構成】スミア推測部30は、受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を除去するため、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷および所定の係数を用いて、スミア成分を推測する。飽和判定部10は、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子が飽和しているか否かを判定する。スミア推測部30は、飽和判定部10による判定の結果、一つ以上の飽和している受光素子がある場合、少なくともその一つについて、飽和している受光素子に蓄積された電荷量を一つ以上の非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を推測するとき、前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に飽和している受光素子がある場合、その飽和している受光素子に蓄積された電荷量を、非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することを特徴とするスミア推測方法。
【請求項2】
短時間露光の受光素子と長時間露光の受光素子を混在させて並べた受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を推測するとき、前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子の内、少なくとも一つの長時間露光の受光素子において、蓄積された電荷量を、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することを特徴とするスミア推測方法。
【請求項3】
前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量および所定の係数を用いて、前記スミア成分を推測することを特徴とする請求項1または2に記載のスミア推測方法。
【請求項4】
受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を除去するスミア除去回路であって、
前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量および所定の係数を用いて、前記スミア成分を推測するスミア推測部と、
前記スミア推測部により推測されたスミア成分を、各受光素子から前記転送路を経て出力された電荷量から取り除くスミア除去部と、
前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子が飽和しているか否かを判定する飽和判定部と、を備え、
前記スミア推測部は、前記飽和判定部による判定の結果、一つ以上の飽和している受光素子がある場合、その飽和している受光素子に蓄積された電荷量を、非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することを特徴とするスミア除去回路。
【請求項5】
短時間露光の受光素子と長時間露光の受光素子を混在させて並べた受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を除去するスミア除去回路であって、
前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量および所定の係数を用いて、前記スミア成分を推測するスミア推測部と、
前記スミア推測部により推測されたスミア成分を、各受光素子から前記転送路を経て出力された電荷量から取り除くスミア除去部と、を備え、
前記スミア推測部は、前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子の内、少なくとも一つの長時間露光の受光素子において、蓄積された電荷量を、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することを特徴とするスミア除去回路。
【請求項6】
前記スミア推測部は、前記受光素子列に含まれ、前記スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量を累積した電荷量に、所定の係数を掛けて前記スミア成分を推測することを特徴とする請求項4または5に記載のスミア除去回路。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子から読み出される画像信号に発生するスミア成分を推測するスミア推測方法およびスミア除去回路に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやデジタルムービーカメラが広く普及してきている。それらのカメラには、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)イメージセンサなどの固体撮像素子が搭載される。CCDイメージセンサなどの固体撮像素子のダイナミックレンジは一般的に狭く、白とびや黒つぶれした画像が生成される場合がある。これに対し、露光量の異なる画像を合成して、ダイナミックレンジの広い画像を生成する手法が実用化されている。
【0003】
また、CCDイメージセンサなどの固体撮像素子にはスミア成分が発生する。スミアとは、太陽などの強い光源を画面中に入れて撮像した場合に発生する光の筋を指し、垂直転送路に電荷が流れ込んで発生する。
【0004】
特許文献1は、撮像手段より出力される露光量の異なる複数の画像信号からスミア抽出手段によりスミア成分を抽出した後、スミア除去手段において抽出されたスミア成分を上記露光量の異なる画像信号より除去して、合成処理する技術を開示する。
【特許文献1】特開平10−294892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたスミア成分SMを除去する手法は、長時間露光信号(Slong+SM)が飽和点に達した場合、スミア成分SMを推測できなくなる。また、短時間露光信号(Sshort+SM)から、長時間露光信号(Slong+SM)を露光比Nで割った信号を減算して、疑似スミア成分SM’を求めている。この疑似スミア成分SM’は、本来のスミア成分SMとの関係式{SM’=SM×(N−1)/N}を前提に求められるため、露光比Nが小さい場合、精度が低下する。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、固体撮像素子から読み出された画像信号に発生するスミア成分を精度よく推測することができるスミア推測方法およびスミア除去回路を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のスミア推測方法は、受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を推測するとき、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に飽和している受光素子がある場合、その飽和している受光素子に蓄積された電荷量を非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測する。「転送路」は、「受光素子列」により構成されてもよいし、「受光素子列」と別に構成されてもよい。「飽和している受光素子に蓄積された電荷量」をその受光素子に隣接する非飽和の受光素子に蓄積された電荷量で代替してもよい。
【0008】
この態様によると、飽和している受光素子に蓄積された電荷量を一つ以上の非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することにより、飽和している受光素子が含まれていても精度よくスミア成分を推測することができる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、スミア推測方法である。この方法は、短時間露光の受光素子と長時間露光の受光素子を混在させて並べた受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を推測するとき、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子の内、少なくとも一つの長時間露光の受光素子において、蓄積された電荷量を、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測する。「長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量」を、その受光素子に隣接する短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量で代替してもよい。
【0010】
この態様によると、長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量を、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することにより、飽和している可能性の高い長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分推測の基礎から外すことができ、飽和している受光素子が含まれていても精度よくスミア成分を推測することができる。
【0011】
受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量および所定の係数を用いて、スミア成分を推測してもよい。「所定の係数」は、電荷量が蓄積された受光素子の露光時間およびフレーム転送周波数を基に算出された係数であってもよい。さらに、電荷量が蓄積された受光素子の露光時間、フレーム転送周波数および転送路への漏れ込み係数を基に算出された係数であってもよい。長時間露光の受光素子の内、飽和している受光素子に蓄積された電荷量を、一つ以上の短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測してもよい。非飽和の長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分推測の基礎に含めてもよい。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、スミア除去回路である。このスミア除去回路は、受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を除去するスミア除去回路であって、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量および所定の係数を用いて、スミア成分を推測するスミア推測部と、スミア推測部により推測されたスミア成分を、各受光素子から転送路を経て出力された電荷量から取り除くスミア除去部と、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子が飽和しているか否かを判定する飽和判定部と、を備える。スミア推測部は、飽和判定部による判定の結果、一つ以上の飽和している受光素子がある場合、その飽和している受光素子に蓄積された電荷量を非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測する。
【0013】
この態様によると、飽和している受光素子に蓄積された電荷量を一つ以上の非飽和の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することにより、飽和している受光素子が含まれていてもスミア成分を精度よく推測することができ、スミア成分を精度よく除去することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様もまた、スミア除去回路である。このスミア除去回路は、短時間露光の受光素子と長時間露光の受光素子を混在させて並べた受光素子列に蓄積されたそれぞれの電荷量が同一転送路内を順次転送される過程で混入されるスミア成分を除去するスミア除去回路であって、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量および所定の係数を用いて、スミア成分を推測するスミア推測部と、スミア推測部により推測されたスミア成分を、各受光素子から転送路を経て出力された電荷量から取り除くスミア除去部と、を備える。スミア推測部は、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子の内、少なくとも一つの長時間露光の受光素子において、蓄積された電荷量を、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測する。
【0015】
この態様によると、長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量を、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測することにより、飽和している可能性の高い長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分推測の基礎から外すことができ、飽和している受光素子が含まれていてもスミア成分を精度よく推測することができ、スミア成分を精度よく除去することができる。
【0016】
スミア推測部は、受光素子列に含まれ、スミア成分の元になる電荷を発生させる一つ以上の受光素子に蓄積された電荷量を累積した電荷量に、所定の係数を掛けてスミア成分を推測してもよい。累積した電荷量に所定の係数を掛けると、演算を簡素化でき、回路構成も簡素化することができる。スミア推測部は、長時間露光の受光素子の内、飽和している受光素子に蓄積された電荷量を、一つ以上の短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量に基づいて推測してもよい。非飽和の長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分推測の基礎に含めてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、固体撮像素子から読み出された画像信号に発生するスミア成分を精度よく推測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態が適用される固体撮像素子200の構成を示す図である。当該固体撮像素子200は、フレーム転送型のCCDで構成される。フレーム転送型のCCDは、受光部と電荷転送路とを共用しているため、開口率が高く、微弱な光を効率よく検出することができる。
【0020】
固体撮像素子200は、撮像領域45、蓄積領域60、水平転送路50および出力アンプ52を備える。撮像領域45は、複数の垂直転送路40を備える。蓄積領域60は遮光されている。垂直転送路40は、受光と転送を兼ねる複数の受光素子が一列に並べられて構成される。垂直転送路40には、露光時間の異なる複数種類の受光素子が含まれる。本実施形態では、長時間露光用受光素子42および短時間露光用受光素子44を交互に配置される。垂直転送路40は並列に複数配置され、それぞれの出口は蓄積領域60を介して水平転送路50に接続される。長時間露光用受光素子42は、暗い領域の画像を精度よく撮像するために長時間露光を行う。このため、明るい領域を撮像した場合、飽和しやすい。一方、短時間露光用受光素子44は、露光時間が短いため明るい領域を撮像した場合でも飽和しにくい。
【0021】
垂直転送路40は、所定の垂直転送クロックに応じて、各受光素子に蓄積された電荷を蓄積領域60の方向にバケツリレーの要領で順次シフトしていき、蓄積領域60に順次送り出す。この過程で垂直転送路40にスミア成分が混入する。
【0022】
水平転送路50は、少なくとも垂直転送路40の数に対応した数の、アナログ量を扱えるレジスタまたはCCDが一列に並べられて構成される。水平転送路50は、所定の水平転送クロックに応じて、蓄積領域60から順次入力された電荷を順次シフトして出力アンプ52に送り出す。蓄積領域60の水平一行目分の電荷を出力した後、次の水平二行目分の電荷を出力し、蓄積領域60のすべての行の電荷を出力する。出力アンプ52は、水平転送路50から入力される電荷を電圧に変換して、後段に出力する。
【0023】
図2は、長時間露光信号および短時間露光信号の入射光量と出力信号レベルの関係を示す図である。この図は、横軸に受光素子に対する入射光量を、縦軸に受光素子の出力信号量を表す。
【0024】
受光素子から出力される長時間露光信号および短時間露光信号は、信号レベルの大小に関わることなく一定のスミア成分を含んで構成される。長時間露光信号は露光量が大きいため入射光量がa点で飽和するが、短時間露光信号はa点で飽和しない。長時間露光信号はa点に達するまで、傾きが大きくS/N比が高い。一方、短時間露光信号は傾きが小さく、S/N比が長時間露光信号より低い。短時間露光信号は、長時間露光信号の飽和点a以上の入射光量における信号の再現性が高い。このような特徴を持つ長時間露光信号および短時間露光信号を合成することにより、S/N比が高くダイナミックレンジの広い信号を得ることができる。
【0025】
次に、固体撮像素子200を構成する各受光素子のスミア成分を算出する手法について説明する。各受光素子の出力電荷量Labは、下記式1で表される。
ab=Sab+(SMa1+SMa2+SMa3+・・・+SMa(b−1)) ・・・(式1)
SMabは、転送時に各受光素子で混入されるスミア成分を表し、Sabは、出力電荷量Labからスミア成分を除いた、各受光素子に実際に蓄積された電荷量を表す。
【0026】
abは、下記式2で表される。
ab=Y×Z×T ・・・(式2)
Yは各受光素子の感度を表し、Tは露光時間を表し、Zは光強度を表す。
【0027】
各受光素子のスミア成分SMabは、下記式3で表される。
SMab=Y×Z×(1/F) ・・・(式3)
Fは転送周波数を表す。
【0028】
上記式3に上記式2を代入すると、下記式4が導出される。
SMab=Sab/T×(1/F) ・・・(式4)
【0029】
短時間露光信号Sshortと長時間露光信号Slongとの関係は、下記式5で表される。
Sshort=Slong/N ・・・(式5)
Nは露光比を表す。
非飽和の長時間露光信号Slongを使用してスミア成分を推測する場合、長時間露光信号Slongを露光比で除算する必要がある。
【0030】
このようにして、スミア成分を算出する際、飽和している受光素子が存在する場合、その受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分算出の基礎に含めず、隣接した非飽和状態のの受光素子に蓄積された電荷量で近似する。また、短時間露光の受光素子に蓄積された電荷量のみでスミア成分を算出する。
【0031】
図3は、本発明の実施形態におけるスミア除去回路100の構成を示す図である。スミア除去回路100は、固体撮像素子200を構成する各受光素子の出力電荷量に含まれるスミア成分を推測し、当該出力電荷量から除去する。スミア除去回路100は、飽和判定部10、減算部20およびスミア推測部30を備える。
【0032】
飽和判定部10には、長時間露光信号が入力される。飽和判定部10は、入力された長時間露光信号が飽和しているか否かを判定する。上述した入射光量の飽和点aに対応する信号レベルと比較することにより、判定することができる。飽和している場合、飽和レベルを維持したまま後段に出力する。すなわち、飽和した信号は、スミア成分を推測するための演算処理に使用されないことになる。
【0033】
飽和判定部10は、飽和していない場合、入力された長時間露光信号を減算部20に出力する。減算部20には、短時間露光信号および非飽和の長時間露光信号が入力される。減算部20は、短時間露光信号からスミア推測部30で算出されたスミア成分を減算することにより、スミア補正後の短時間露光信号を後段に出力する。同様に、非飽和の長時間露光信号からスミア推測部30で算出されたスミア成分を減算することにより、スミア補正後の長時間露光信号を後段に出力する。このように、減算部20は、各受光素子から出力された画像信号からスミア成分を除去する回路として機能する。
【0034】
スミア推測部30は、除算部32、加算部34、ラインメモリ36および乗算部38を含む。除算部32は、スミア補正後の長時間露光信号を露光比Nで除算し、加算部34に出力する。加算部34は、減算部20から取得したスミア補正後の短時間露光信号と、ラインメモリ36に保持されている信号とを加算し、ラインメモリ36に設定する。また、加算部34は、除算部32から取得したスミア補正後の長時間露光信号と、ラインメモリ36に保持されている信号とを加算し、ラインメモリ36に設定する。さらに、加算部34は、長時間露光信号が飽和している場合、その前のステップで加算した非飽和露光信号と、ラインメモリ36に保持されている信号とを加算し、ラインメモリ36に設定する。
【0035】
ラインメモリ36は、各受光素子のスミア補正後の信号が累積加算された信号を保持する。各垂直転送路40を構成する最後の受光素子の一つ前の受光素子の信号まで累積加算され、スミア除去に利用されると、保持している信号をリセットする。なお、受光素子の出力信号が長時間露光信号であり、かつ飽和している場合、その信号は加算されず、その前の受光素子のスミア補正後の信号で代替される。
【0036】
乗算部38は、ラインメモリ36が保持している信号、すなわち転送過程中に存在する受光素子のスミア補正後の信号を累積加算した信号に、上記式2および式3で規定した露光時間Tや転送周波数Fなどの係数を乗算して、転送過程中に存在する受光素子によるスミア成分を推測する。推測したスミア成分を減算部20に供給する。
【0037】
以下、本発明の実施形態におけるスミア除去回路100の第1動作例について説明する。第1動作例は、短時間露光信号および非飽和の長時間露光信号を基に、スミア成分を推測する例である。
図4は、各受光素子の出力電荷量を説明する図である。図4における出力電荷量L11などに付されている添字は、2次元配列された受光素子の位置に対応し、図1の符号と対応する。係数kは、上記式2および式3で規定した露光時間Tや転送周波数Fなどの係数を一つにまとめて表記したものである。なお、以下の説明では出力電荷量L12が飽和していることを前提とする。
【0038】
図4にて、1行目の出力電荷量L11は、垂直転送路40を構成する受光素子列の中で水平転送路50に最も近い受光素子の出力電荷量を示す。転送過程中に受光素子が存在しないため、スミア成分を含まず、減算部20によるスミア除去が行われない。よって、そのままスミア補正後の短時間露光信号として出力される。ラインメモリ36には、水平転送路50に最も近い受光素子のスミア成分を含まない電荷量S11の値が初期値として保持される。
【0039】
2行目の出力電荷量L12は、垂直転送路40を構成する受光素子列の中で水平転送路50に2番目に近い受光素子の出力電荷量を示す。この受光素子の出力電荷量L12は、水平転送路50に到達するまでに一つの受光素子を通過し、その際にスミア成分k×Sが加算される。当該スミア成分k×S11は、ラインメモリ36に保持されている値に係数kが乗算された値により算出される。上記出力電荷量L12は飽和しているので、スミア成分が減算部20により除去されず、そのままスミア補正後の長時間露光信号として出力される。ラインメモリ36には、前回設定された電荷量S11の値を2倍にした値が設定される。本来、水平転送路50に2番目に近い受光素子におけるスミア補正後の電荷量S12が加算されるべきであるが、飽和しているためスミア成分算出の基礎データとすることができない。よって、その前の水平転送路50に一番近い受光素子のスミア補正後の電荷量S11を加算することにより、2番目に近い受光素子におけるスミア補正後の電荷量S12を加算する処理の代替としている。
【0040】
3行目の出力電荷量L13は、垂直転送路40を構成する受光素子列の中で水平転送路50に3番目に近い受光素子の出力電荷量を示す。この受光素子の出力電荷量L13は、水平転送路50に到達するまでに二つの受光素子を通過し、その際にスミア成分k×(S11+S12)が加算される。上記出力電荷量L13は、スミア推測部30で算出されたスミア成分k×(S11+S11)が減算部20で減算される。減算された信号がスミア補正後の短時間露光信号として出力される。ラインメモリ36には、前回設定された電荷量(S11+S11)に3番目に近い受光素子におけるスミア補正後の電荷量S13が加算された値が設定される。
【0041】
4行目の出力電荷量L14は、垂直転送路40を構成する受光素子列の中で水平転送路50に4番目に近い受光素子の出力電荷量を示す。この受光素子の出力電荷量L14は、水平転送路50に到達するまでに三つの受光素子を通過し、その際にスミア成分k×(S11+S12+S13)が加算される。上記出力電荷量L14は、長時間露光信号であるが、非飽和信号であるため、スミア推測部30で算出されたスミア成分k×(S11+S11+S13)が減算部20で減算される。減算された信号がスミア補正後の長時間露光信号として出力される。ラインメモリ36には、前回設定された電荷量(S11+S11+S13)に4番目に近い受光素子におけるスミア補正後の電荷量(S14÷N)が加算された値が設定される。なお、当該受光素子は長時間露光信号を出力するため、露光比Nで除算する必要がある。以下、5行目以降についても、同様の処理が繰り返される。
【0042】
以上説明したように本実施形態における第1動作例によれば、転送過程の受光素子に起因するスミア成分を推測する際、飽和している受光素子の出力信号をスミア成分推測の基礎に含めないことにより、除去すべきスミア成分を精度よく推測することができる。この点、飽和している受光素子の出力信号をスミア成分推測の基礎に含めると、推測したスミア成分の精度は低いものとなる。また、露光量の異なる画像信号を合成する際、スミア成分を精度よく除去した後に合成できるため、ダイナミックレンジが広く、高画質な画像を生成することができる。
【0043】
以下、本発明の実施形態におけるスミア除去回路100の第2動作例について説明する。第2動作例は、短時間露光信号と長時間露光信号が混在する場合、長時間露光信号をスミア成分推測の基礎に含めず、短時間露光信号を使用して、スミア成分を推測する例である。
【0044】
図1に示したように、長時間露光用受光素子42および短時間露光用受光素子44が交互に配置される構成の場合、長時間露光用受光素子42に蓄積された電荷量Sxbは、その前の短時間露光用受光素子44に蓄積された電荷量S(x−1)bまたはその後の短時間露光用受光素子44に蓄積された電荷量S(x+1)bに近似する。また、図2に示したように、長時間露光用受光素子42は飽和する可能性が高い。
【0045】
これを前提に、長時間露光用受光素子42に蓄積された電荷量を隣接する短時間露光用受光素子44に蓄積された電荷量で代替した場合、ある受光素子の出力電荷量Lnbから除去すべきスミア成分SMnbは、下記式6で表される。下記式6は、奇数行に長時間露光用受光素子42が配置される例である。
SMnb=k×Σ(Sab×2) ・・・(式6)
aは2から(n−1)までの偶数をとる。なお、nが偶数の場合、求めたスミア成分SMnbに、一つ前の長時間露光用受光素子42のスミア成分SM(n−1)bを代替した、さらにその一つ前の短時間露光用受光素子44のスミア成分SM(n−2)bを加える必要がある。また、偶数行に長時間露光用受光素子42が配置される場合、上記式6のaは1から(n−1)までの奇数をとる。nが奇数の場合、上記と同様にスミア成分SMn−2)bを加える必要がある。
【0046】
なお、第2動作例では、長時間露光信号をスミア成分推測の基礎としないため、スミア推測部30に、長時間露光信号を露光比で除算するための除算部32を設ける必要はない。また、長時間露光信号が飽和しているか否かを判定する必要もないため、飽和判定部10を設ける必要もない。
【0047】
以上説明したように本実施形態における第2動作例によれば、転送過程の受光素子に起因するスミア成分を推測する際、長時間露光信号をスミア成分推測の基礎に含めず、短時間露光信号を用いることにより、除去すべきスミア成分を精度よく推測することができる。また、長時間露光信号をスミア成分推測の基礎に含めないことにより、スミア除去回路100にて飽和判定などをする必要がなく、回路構成を簡素化することができる。
【0048】
図5は、本発明の実施形態が適用される別の固体撮像素子300の構成を示す図である。当該固体撮像素子300は、インターライン転送型のCCDで構成される。インターライン転送型のCCDは、転送路が遮光されるため混入するスミア成分が小さくなる。
【0049】
固体撮像素子300は、フォトダイオードなどの受光素子を一列に並べた受光素子列と、その受光素子列に蓄積された電荷を転送する垂直転送路80を備える。本実施形態では、長時間露光用受光素子62および短時間露光用受光素子64を交互に配置された受光素子列を備える。当該受光素子列と垂直転送路80との間には、トランスファーゲート70が設けられる。垂直転送路80は、電荷を転送する受光素子の数の、アナログ量を扱えるレジスタまたはCCDが一列に並べられて構成される。
【0050】
トランスファーゲート70はアナログスイッチとして機能し、トランスファーゲート70が開くと、受光素子列に蓄積された電荷が一斉に垂直転送路80に転送される。受光素子列、トランスファーゲート70および垂直転送路80を一組として、並列に複数組配置されることにより、固体撮像素子300が構成される。
【0051】
並列に複数配置された垂直転送路80は、それぞれの出口が水平転送路90に接続される。垂直転送路80は、所定の垂直転送クロックに応じて、各レジスタまたはCCDに保持している電荷を水平転送路90の方向にバケツリレーの要領で順次シフトしていき、水平転送路90に順次送り出す。垂直転送路80は遮光膜に覆われているため、直接受光によりスミア成分が発生することはないが、トランスファーゲート70を介して受光素子列から電荷が漏れ込んでくる。
【0052】
水平転送路90は、少なくとも垂直転送路80の数に対応した数の、アナログ量を扱えるレジスタまたはCCDが一列に並べられて構成される。水平転送路90は、所定の水平転送クロックに応じて、各垂直転送路80から順次入力された電荷を順次シフトして出力アンプ92に送り出す。水平一列の垂直転送路80の全受光素子の電荷を出力した後、次の水平一列の垂直転送路80の処理を開始する。出力アンプ92は、水平転送路90から入力される電荷を電圧に変換して、後段に出力する。
【0053】
以上に説明したインターライン転送型の固体撮像素子300にも、上述したフレーム転送型の固体撮像素子200のスミア成分を除去する本実施形態におけるスミア除去回路100を基本的にそのまま適用することができる。インターライン転送型の場合、転送過程中に混入されるスミア成分は、漏れ込まれた電荷を累積したものとなる。よって、上記式4に漏れ込み係数W(W<1)を掛けてやればよい。漏れ込み係数は、各受光素子が蓄積した電荷量の内、垂直転送路80に漏れ込む電荷量の割合を示す。
【0054】
インターライン転送型の固体撮像素子300のスミア成分を除去する場合でも、フレーム転送型の固体撮像素子200のスミア成分を除去する場合と、同様の効果を奏する。
【0055】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、その各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能である。また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例を挙げる。
【0056】
上述した実施形態では、露光時間の異なる複数種類の受光素子として、2種類設けたが、3種類以上設けてもよい。上述した実施形態と同様に、飽和していない受光素子に蓄積された電荷量を用いて、スミア成分を推測することができる。また、飽和する可能性が小さい露光時間を持つ受光素子に蓄積された電荷量を用いて、スミア成分を推測することができる。
【0057】
上述した実施形態では、スミア成分を算出する際、飽和している受光素子が存在する場合、その受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分算出の基礎に含めず、隣接した非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量で代替する例を説明した。この点、隣接した非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量に限らず、2個以上離れた非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量で代替してもよい。さらに、複数の非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量の平均値や中央値などで代替してもよい。これによっても、精度よくスミア成分を推測することができる。
【0058】
上述した実施形態では、短時間露光信号と長時間露光信号が混在する場合、長時間露光信号をスミア成分推測の基礎に含めず、短時間露光信号を使用して、スミア成分を推測する例を説明した。この点、一つ以上の長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量、例えば一つ以上の非飽和状態の長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量をスミア成分推測の基礎に含めてもよい。スミア成分推測の基礎に含めなかった長時間露光の受光素子に蓄積された電荷量は、上述したように、隣接した非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量、2個以上離れた非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量、または複数の非飽和状態の受光素子に蓄積された電荷量の平均値や中央値などで代替してもよい。これによっても、精度よくスミア成分を推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態が適用される固体撮像素子の構成を示す図である。
【図2】長時間露光信号および短時間露光信号の入射光量と出力信号レベルの関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態におけるスミア除去回路の構成を示す図である。
【図4】各受光素子の出力電荷量を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態が適用される別の固体撮像素子の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10 飽和判定部、 20 減算部、 30 スミア推測部、 32 除算部、 34 加算部、 36 ラインメモリ、 38 乗算部、 40 垂直転送路、 42 長時間露光用受光素子、 44 短時間露光用受光素子、 45 撮像領域、 50 水平転送路、 52 出力アンプ、 60 蓄積領域、 62 長時間露光用受光素子、 64 短時間露光用受光素子、 70 トランスファーゲート、 80 垂直転送路、 90 水平転送路、 92 出力アンプ、 100 スミア除去回路、 200 固体撮像素子、 300 固体撮像素子。
【出願人】 【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
【出願日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【代理人】 【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹


【公開番号】 特開2008−61033(P2008−61033A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−236952(P2006−236952)