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【発明の名称】 画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法
【発明者】 【氏名】岸本 康成

【要約】 【課題】汎用性を備えたカラーマッピング空間を利用した色域マッピングを行い得るとともに、その色域マッピングを高精度に行えるようにする。

【構成】知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得手段1と、前記信号取得手段1を経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換手段2と、前記カラーマッピング空間にて前記信号取得手段1を経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定手段3と、前記信号特定手段3が特定した色信号を前記信号取得手段1が取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換手段4とを備える画像処理装置において、前記カラーマッピング空間が、等明度−等色相面を備えた空間を構成するようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得手段と、
前記信号取得手段を経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換手段と、
前記カラーマッピング空間にて前記信号取得手段を経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定手段と、
前記信号特定手段が特定した色信号を前記信号取得手段が取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換手段とを備え、
前記カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記等明度−等色相面を備えた空間は、前記信号取得手段が取得した信号の色空間が色の見えモデルの空間でなければ、当該信号が生成された条件を特定する観察環境条件情報に基づいて、当該信号の色空間を色の見えモデルの空間に変換することによって構成する
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記等明度−等色相面を備えた空間は、前記カラーマッピング空間における彩度と色相の情報を有する二種類の反対色応答と明度の割合が1:1となるように変更することによって構成する
ことを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記等明度−等色相面を備えた空間は、前記観察環境条件情報ごとに予め設定されている等色相線および等明度線を利用した補正処理を経て構成する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記等色相線および等明度線は、前記信号取得手段が取得する信号で想定している観察環境条件情報と前記第二変換手段による変換後の信号で想定している観察環境条件情報との両方に対して設定されたもの、または予め登録していた観察環境条件情報に対して設定されたものを用いる
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記等色相線および等明度線は、デフォルトの観察環境条件情報に対して設定されたもの、または前記第二変換手段による変換後の信号で想定している観察環境条件情報に対して設定されたもの、または予め登録していた観察環境条件情報に対して設定されたものを用いる
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータを、
知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得手段と、
前記信号取得手段を経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換手段と、
前記カラーマッピング空間にて前記信号取得手段を経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定手段と、
前記信号特定手段が特定した色信号を前記信号取得手段が取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換手段として機能させるとともに、
前記カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成する
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項8】
知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得ステップと、
前記信号取得ステップを経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換ステップと、
前記カラーマッピング空間にて前記信号取得ステップを経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定ステップと、
前記信号特定ステップで特定した色信号を前記信号取得ステップで取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換ステップとを備え、
前記カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成する
ことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、対応する再現色を決定するための色域マッピング処理および再現色を評価するための画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像を取り扱うデバイスとして様々なものが広く用いられているが、異なるデバイスで同一の画像データを取り扱う場合には、それぞれのデバイス色空間の整合をとるために、色変換処理、特に色域マッピング処理が必要となる。例えば、ディスプレイモニタやデジタルカメラ等のデバイスではRGBで表現されるデバイス色空間を利用しており、プリンタや複写機等のデバイスではYMCKで表現されるデバイス色空間を利用しているからである。
【0003】
デバイス色空間の整合をとる場合、そのための色空間としてはCIE(国際照明委員会)による色の三刺激値XYZや色刺激値LMS等も利用されるが、通常はCIELAB空間またはCIECAM空間(例えば、JChまたはJacc)のどちらかを利用することが一般的である。すなわち、一般的な色域マッピング処理の仕組みとしては二つが存在しており、CIELAB(D50)空間を利用する前者はICC(International Color Consortium)で採用されて広く普及しており、CIECAM空間を利用する後者は前者の幾つかの問題を解決するためにCIEで提案がなされた仕組みである。
【0004】
ところで、CIELAB(D65)はCIEにてUCS(知覚均等色空間)として規格化されているが、実際は色相が一定ではないこと(色空間上で直線または均等にならないこと等)が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。その理由の1つは、規格の制定当時と利用範囲が異なることにある。例えば、CIELAB空間の作成に利用したデータであるマンセル色表などの色域よりもモニタ表示の色域が広いために、知覚均等色空間ではない領域が利用されることが多くなったことが挙げられる。このうち、主観的な色相が色空間上で直線でないことについては、これを解消するために様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1〜13参照)。また、知覚均等な色空間が均等でないことについても、色相を補正して解消することが提案されている(例えば、特許文献1〜4,6〜8参照)。さらには、色相ごとに明度、彩度を決めたマッピング方向や大きさを制御しようとしても、等色相面(例えば、CIELAB空間のL−C面)は湾曲しており、明度に対しても湾曲していることから、色相ごとに決定することができないことについて、これを解消するために様々な技術が提案されている(例えば、特許文献5,8,10,12,14参照)。これら従来の技術、すなわち知覚均等色空間(CIELAB)での色相が一定でない問題を解決するための技術は、いずれも、等色相に着目したものである。
【0005】
一方、CIECAM(色の見えモデル)は、観察環境条件(例えばD65環境)を入力することで、CIEXYZ(D65)を観察環境条件から独立した色の見えの色空間上での色情報に変換することができる。そして、その際に、知覚的に均等とはいえないが、従来生じていた色の見えのモードに起因する問題や色相の湾曲の問題等といった多くの問題を解決できる。そのため、CIELABよりも高精度な色空間であるJChでのマッピング空間として、CIECAMが提案されているのである。CAMはHunt CAMやCIECAM97s2などが提案されているが、このような高精度化は、特にCAM02(2002年以降)で実現可能となっている。
【0006】
【非特許文献1】太田登著、「色彩工学」、東京電機大学出版局、page137、1993年
【特許文献1】特許03337697号公報
【特許文献2】特開平6−233129号公報
【特許文献3】特開平7−32614号公報
【特許文献4】特開平11−69189号公報
【特許文献5】特開平11−313219号公報
【特許文献6】特開2002−281338号公報
【特許文献7】特開2003−078776号公報
【特許文献8】特開2003−274208号公報
【特許文献9】特開2004−032140号公報
【特許文献10】特開2004−104603号公報
【特許文献11】特開2004−104604号公報
【特許文献12】特開2004−104777号公報
【特許文献13】特開2004−289810号公報
【特許文献14】特開2000−278546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
色域マッピング処理とは、明度、彩度、色相といった知覚的な特徴を有する同一の色空間上で、第一の色再現域内の色座標と第二の色再現域内での色座標とを対応付ける処理のことをいう。この色域マッピング処理については、ワークフローに応じて対応する色が変化することは好ましくないため、CIELABとCIECAMの二つの仕組みのうち、どちらの仕組みにおける信号に対しても、同様に対応し得ることが望ましい。そのためには、一方の仕組みにおける信号を他方の仕組みにおける信号に変換するという色空間の変換を行って、統一した色空間で色域マッピングをすることが考えられる。ただし、その場合、以下に述べる点について考慮する必要がある。
【0008】
CIELAB(知覚均等色空間)では、従来のように等色相に着目して色相が一定ではないことによる問題を解消しても、明度と彩度に応じて色相が変化する問題を解消することができない。具体的には、青、紫、赤紫の色相では、彩度の増加と共に明度の増加を感じるHelmholtz-Kohlrausch効果と呼ばれる現象が存在するが、この効果のほかにも、例えば図2(a)に示すように、明度―彩度が湾曲する場合がある。また、明度に応じて色相が変化する問題は、知覚均等色空間に限らず、例えば図2(b)に示すように、色の見えモデル(CAM)を利用した色空間でも生じている。また、CIELABの多くはD50観察環境が使われているためにRGB色空間からのマッピングでは観察環境条件の差を補正する色順応処理が必要であり、その際に階調連続性が湾曲する色領域がある。すなわち、例えば図3に示すように、、各プロット点を結ぶ線分が湾曲したり、また各プロット点の疎密がばらついたりするという問題が生じる。すなわち、図中において、各プロット点を結ぶ線分に、例えば右下りの傾斜が生じてしまうという問題が生じる。RGB画像の観察条件を利用してCIECAMを生成すると影響が半減されることを期待できるが、一般的なワークフローは色順応を施したCIELAB(D50)を経由するために、CIELAB(D50)の観察条件を利用してCIECAMを生成するという問題もある。この2つの問題は関連することで各プロット点を結ぶ線分は変化することがある。さらには、従来の等色相に着目した処理では扱われていない問題として、等色相線や等明度線(または等色相面や等明度面)は入力信号の観察環境条件や出力信号に依存して変化させた方が好ましいグレイ軸や階調を得るというものがある。CIECAMは良好であるものの対応する再現色を実験的に検証して決めたものであり、その観察条件の影響を受けていることと階調を考慮して決めていないという問題が生じる。
【0009】
また、知覚的な均等性(明度に対する反対色a,bの比)は、CIELABよりもCIECAMが劣っているという問題がある。すなわち、CIECAMは、知覚均等空間と定義された色空間ではない。例えば、CIELABやCIECAM97sは、彩度、色相の情報を有する二種類の反対色応答(赤−緑チャンネルと黄−青チャンネル、例えばa,b)の軸と明度の軸の大きさを1:1の割合とするとCIELABよりも精度が低いことが報告されており、CIECAMをより知覚均等な色空間に変更することが提案されている(例えば、C.LIおよびM.R.Luoら、「A uniform colour space based upon CIECAM97s」、AIC01参照)。この報告の背景を他の視点から補足する。大局的な色の差の議論である色空間の均等性は多数報告されている色差や色差式で対象とされている色の差は区別されるものである。多くの色差式は知覚できる最小単位(JND)を1.0とすると3.0以内、または大きくても5.0以内の差を表現するために規定されている。つまり、CIECAMにおいて、知覚的な均等性が必要な場合には、明度に対する二つの反対色応答の割合を変更する処理等といった、何らかの工夫が必要であり、従来の色差などの議論では解決できない課題である。これはマッピング方向を決める評価関数であってよい。
【0010】
本発明は、上述した点を考慮しつつ、複数の仕組みにおける信号に対応し得る汎用性を備えたカラーマッピング空間を利用した色域マッピング処理を行い得るとともに、その色域マッピング処理を、明度と彩度に応じて色相が変化することなく、しかも知覚的な均等性を確保して、高精度に行うことのできる画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために案出された画像処理装置で、知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得手段と、前記信号取得手段を経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換手段と、前記カラーマッピング空間にて前記信号取得手段を経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定手段と、前記信号特定手段が特定した色信号を前記信号取得手段が取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換手段とを備え、前記カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された画像処理プログラムで、コンピュータを、知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得手段と、前記信号取得手段を経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換手段と、前記カラーマッピング空間にて前記信号取得手段を経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定手段と、前記信号特定手段が特定した色信号を前記信号取得手段が取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換手段として機能させるとともに、前記カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された画像処理方法で、知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得する信号取得ステップと、前記信号取得ステップを経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換する第一変換ステップと、前記カラーマッピング空間にて前記信号取得ステップを経て得られた信号に対応する色信号を特定する信号特定ステップと、前記信号特定ステップで特定した色信号を前記信号取得ステップで取得した信号と同じ色空間の信号に変換する第二変換ステップとを備え、前記カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法によれば、汎用性を備えたカラーマッピング空間を利用することにより、高精度な色域マッピング処理が実現可能となり、簡便に精度良く所望する再現色を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明に係る画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法について説明する。
【0016】
先ず、画像処理装置の概略構成を説明する。ここで説明する画像処理装置は、マッピングや色評価・画像評価するにはCIELAB空間やCIECAM02空間では精度が不十分であることから、高精度に行うためにカラーマッピング空間を構築して利用することで、高精度な色域マッピング処理を実現可能にするものである。
【0017】
図1は、画像処理装置の概略構成例を示す機能ブロック図である。図例のように、本実施形態で説明する画像処理装置は、信号取得手段1と、第一変換手段2と、信号特定手段3と、第二変換手段4と、を備えている。
【0018】
信号取得手段1は、知覚的な特徴を有する色空間の信号を取得するものである。知覚的な特徴を有する色空間とは、明度、彩度、色相といった特徴によって知覚的に扱える色空間のことをいう。したがって、信号取得手段1が取得する入力信号は、CIELAB(知覚均等色空間)のものであっても、あるいはCIECAM02(色の見えモデル)のものであってもよい。また、信号取得手段1では、入力信号を受け取るのに併せて、その入力信号についての観察環境条件情報をも受け取り得るものとする。観察環境条件情報とは、入力信号が生成された観察環境条件(例えば、D65環境またはD50環境)を特定するものである。
【0019】
第一変換手段2は、信号取得手段1を経て得られた信号の色空間を、第一の色再現域の色座標を第二の色再現域での色座標に対応させるためのカラーマッピング空間に変換するものである。このカラーマッピング空間については、その詳細を後述するが、少なくても主観的な色相と明度の関係が維持した空間であればよく、必ずしも知覚的に均等な色空間を構成する必要はない。例えば、彩度は、少なくても大小関係の順番が保持されていれば大きな問題はない場合がある。
【0020】
信号特定手段3は、第一変換手段2によるカラーマッピング空間にて、信号取得手段1を経て得られた信号に対応する色信号を特定するものである。すなわち、信号特定手段3は、いわゆる色域マッピング処理を行うものである。
【0021】
第二変換手段4は、信号特定手段3が特定した色信号を、信号取得手段1が取得した信号と同じ色空間の信号に変換するものである。これにより、第二変換手段4からは、CIELABまたはCIECAM02の信号が出力されることになる。
【0022】
ここで、カラーマッピング空間について説明する。カラーマッピング空間は、等明度−等色相面を備えた空間を構成するものである。等明度−等色相面を備えた空間は、信号取得手段1が取得した信号の色空間がCIECAM02ではなくCIELABであれば、当該信号についての観察環境条件情報に基づいて、当該信号の色空間をCIECAM02に変換することによって構成することが考えられる。さらに、等明度−等色相面を備えた空間は、カラーマッピング空間における彩度と色相の情報を有する二種類の反対色応答と明度の割合が1:1となるように変更することによって構成することが考えられる。ここでの反対色応答とは視神経上での色応答の意味はなく、便宜的に扱いやすくするためのもので、極座標で表現することがある彩度と色相の2軸を直行座標に変換することである。そのため割合が1:1とは明度と彩度の比であってもよい。
【0023】
上述した各手段1〜4は、画像処理装置におけるコンピュータとしての機能が、所定プログラムを実行することによって実現することが考えられる。すなわち、本実施形態における画像処理装置には、当該所定プログラムが予めインストールされているものとする。ただし、その場合において、当該所定プログラムは、画像処理装置へのインストールに先立ち、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであっても、または有線若しくは無線による通信手段を介して配信されるものであってもよい。つまり、これらの各手段1〜4については、画像処理装置にインストール可能な画像処理プログラムによっても実現することが可能である。
【0024】
次に、以上のように構成された画像処理装置(画像処理プログラムによっても実現される場合を含む)における処理動作例、すなわち本発明に係る画像処理方法について説明する。
【0025】
上述した構成の画像処理装置では、入力信号を受け取ると、その入力信号をカラーマッピング空間に変換して、利用者の意図(レンダリングインテントやドライバに機能して追加している再現モード)に応じてマッピングを施す。そして、マッピング空間の信号を入力信号と同じ色空間に戻して出力する。カラーマッピング空間では、マッピング処理だけでなく、各種色処理、色評価等を行ってもよい。
【0026】
カラーマッピング空間は等明度−等色相面を備えた空間を構成するものであるが、このようなカラーマッピング空間は、以下に述べるようにして生成することが考えられる。
【0027】
先ず、入力信号に対して、その入力信号が如何なる信号であっても、CIECAM02モデルを経由するように変換を行う。例えば、入力信号がCIELABのものであれば、これをCIECAM02のものに変換する。ただし、元々CIECAM02のものであれば、変換は必要ない。
【0028】
変換は、公知の手法を利用して行えばよい。ただし、このとき、入力信号についての観察環境条件情報を基に、その情報によって特定される観察環境条件に対応するように処理を行うものとする。
【0029】
これにより、入力信号が如何なる信号であっても、すなわちCIELABとCIECAMの二つの仕組みのいずれのものであっても、信号取得手段1を経て得られた信号として、例えばCIECAM02のJab(JChから算出したJacc)信号が得られることになる。また、ICCプロファイルなどから入手できるCIELAB(D50)はPCS(Profile Connection Space)としての観察環境条件が存在し、本来の観察環境条件と合わせると2つの観察条件が存在することになる。本発明の課題を認識していなければ同じものとして扱うことで利便性が向上する。そのため、このましくは本来の観察環境条件を利用することであるが、観察条件が入手できない場合に使用するデフォルトの観察環境条件が未設定であるならPCSの観察環境をデフォルトとしてもよい。
【0030】
その一方で、カラーマッピング空間の生成にあたっては、例えば図2で示したようなCIELABおよびCIECAM02の等色相の様子、並びに明度−色相の湾曲の様子を、予め特定しておく。さらには、例えば図3で示したような明度−彩度の湾曲の様子を、予め特定しておく。
【0031】
そして、これらの特定結果を基にして、湾曲を補正するデータを生成し、その補正データを用いて信号取得手段1を経て得られた信号に対する補正を行う。補正曲線から色空間を生成するには例えば特許文献12が利用すると局所的な色空間の補正が可能となる。この補正によって、当該信号は、明度(例えばJ)と二つの反対色(例えばacおよびbc)との比が調整されることになる。
【0032】
さらに、大局的な均等性の調整方法は、心理物理データ群に対して、次の関係式の結果が最小になるように、KLを決定して、カラーマッピング空間での明度:第一の反対色と第二の反対色の比とする。これは、予め決定していても、処理を施す際に評価して生成してもよい。
【0033】
【数1】


【0034】
この(1)式において、ΔEは大局的な色差、V1は明度、V2,V3は反対色を表しており、KLは比の調整パラメータであり、AはΔEを正規化するための係数である。ΔEは、知覚できる最小単位(JND)を統一的に扱うための評価値であり、1倍でも10倍でも問題はなく、それは係数Aで調整するものである。
【0035】
さらに、これを別の表現にすると、以下のようになる。
【0036】
【数2】


【0037】
このような調整を経ることで、信号取得手段1を経て得られた信号は、彩度と色相の情報を有する二種類の反対色応答と明度の割合が1:1となるように変更される。そして、この変更によって、図2で示したような湾曲が補正され、また疎密のばらつきが均等になるように補正されることになる。
【0038】
つまり、本実施形態では、信号取得手段1が取得した信号の色空間がCIECAM02でなければ、当該信号が生成された条件を特定する観察環境条件情報に基づいて、当該信号の色空間をCIECAM02に変換し、さらにその変換後の信号を彩度と色相の情報を有する二種類の反対色応答と明度の割合が1:1となるように変更することによって、等明度−等色相面を備えたカラーマッピング空間を生成するのである。このようにして生成したカラーマッピング空間で色域マッピングを行うことで、高精度な対応色が得られるようになる。
【0039】
なお、以上の説明では、信号がCIECAM02のJabを使用している場合を例に挙げたが、必ずしもこれに限定されることはなく、例えば明度と二種類の反対色応答(赤−緑チャンネルと黄−青チャンネル)、または明度、彩度、色相を示す知覚的な特長を有する他の色空間であっても、同様に適用可能である。
【0040】
ところで、従来の等色相に着目した処理では扱われていない問題として、に、等色相線や等明度線(または等色相面や等明度面)や無彩色軸(グレイ軸)が入力信号の観察環境条件や出力信号に依存して変化してしまうという問題が生じる。この問題に対しては、以下に述べるような処理動作を行うことが考えられる。
【0041】
例えば、利用者の指示や意図に応じて対応する色を変更する際には、入力する再現色の特徴を維持したままで出力の再現色を獲得する場合がある。具体的には、色の識別性を重視してカテゴリーに分類可能な色の関係を保持する手段や、複数の入力色の連続性、階調性を維持したい場合などで、様々な意図や反映の仕方が存在する。ここでは階調性を用いて説明する。
【0042】
入力のRGB色空間の階調性に着目すると、R,G,Bなどの原色や等量RGBのグレイなどは、デバイス空間であるRGB空間では直線で表現されるが、CIECAM02やCIELAB空間では必ずしも直線とはならずに曲線となったり、線分上での色座標が均等に存在しないことがある。
【0043】
この点に対応するための処理動作例の一つとしては、入力の環境条件を考慮した任意の階調性を備えた一つ以上の階調曲線を生成し、その階調曲線を保持したままで出力の階調曲線とする(曲線上に対応する色を割り付ける)というものが考えられる。つまり、入力信号で想定している観察環境条件情報と出力信号で想定している観察環境条件情報との両方に対して設定された等色相線および等明度線、または予め登録していた観察環境条件情報に対して設定された等色相線および等明度線のいずれかを用いつつ、その色相線および等明度線を利用した補正処理を経て、等明度−等色相面を備えたカラーマッピング空間を生成するのである。このようにして生成したカラーマッピング空間で色域マッピングを行うことで、階調性を備えた対応色が得られるようになる。
【0044】
また、別の処理動作例としては、入力の色空間を構成する等色相、等明度に相当する一つ以上の線分を生成し、それを上述したカラーマッピング空間に変換する。これにより、複数の曲線で構成されることになるので、その複数の曲線を補完することで、当該カラーマッピング空間の特徴と入力の色空間の特徴とを備えた新たなカラーマッピング空間を生成できることになる。そして、その新たなカラーマッピング空間で色域マッピングを行うことで、階調性を備えた対応色が得られるようするというものが考えられる。つまり、観察環境条件情報ごとに予め設定されている等色相線および等明度線を利用した補正処理は、入力信号で想定している観察環境条件情報と出力信号で想定している観察環境条件情報との両方に対して設定されたものまたは予め登録していた観察環境条件情報に対して設定されたもののいずれかを用いるのではなく、デフォルトの観察環境条件情報に対して設定されたもの、または出力信号で想定している観察環境条件情報に対して設定されたもの、または予め登録していた観察環境条件情報に対して設定されたものを用いてもよい。
【0045】
以上に述べたように、本実施形態における画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法によれば、汎用性を備えたカラーマッピング空間を利用することにより、高精度な色域マッピング手段を獲得でき、簡便に精度良く所望する再現色を得ることができる。また、色域マッピングだけでなく、階調性処理や画像ノイズ補正処理などの解析、評価、補正などでの作業空間の目的にも利用できる。
【0046】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例について説明したが、本発明はその内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0047】
例えば、曲がり補正のための処理は、利用者のインテントに応じて変更可能とすることも考えられる。その場合、例えばグラフィック画像などでのグラデーションのようなものについて、色域内を変更するかを明示的に指示する仕組みを構築することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る画像処理装置の概略構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】明度−彩度が湾曲してしまう様子の基礎データ例を示す説明図である。
【図3】色順応により等色相線や等明度線等が変化してしまう様子の基礎データ例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1…信号取得手段、2…第一変換手段、3…信号特定手段、4…第二変換手段
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成18年8月21日(2006.8.21)
【代理人】 【識別番号】100086298
【弁理士】
【氏名又は名称】船橋 國則


【公開番号】 特開2008−48314(P2008−48314A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−223903(P2006−223903)