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【発明の名称】 遠赤外線撮像システム
【発明者】 【氏名】平岩 千尋

【要約】 【課題】車両の速度、周囲の照度等が変動した場合であっても、十分な鮮明さを保持した画像を取得することができる遠赤外線撮像システムを提供する。

【構成】集光する一又は複数のレンズと、該レンズで集光された光を電気信号に変換する、マトリックス状に配列された複数の撮像素子と、該撮像素子ごとの出力値に基づいて画像を形成する画像処理回路とを有する遠赤外線撮像装置、及び該遠赤外線撮像装置が搭載されている車両の速度を検出する車速センサを備える。遠赤外線撮像装置は、レンズの前面にて開閉を漸次的に変更することが可能な絞り機構、及び該絞り機構の開放度合を変化させる手段を備え、車速センサの検出値に応じて該絞り機構の開放度合を変化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光する一又は複数のレンズと、
該レンズで集光された光を電気信号に変換する、マトリックス状に配列された複数の撮像素子と、
該撮像素子ごとの出力値に基づいて画像を形成する画像処理回路と
を有する遠赤外線撮像装置、及び
該遠赤外線撮像装置が搭載されている車両の速度を検出する車速センサ
を備える遠赤外線撮像システムにおいて、
前記遠赤外線撮像装置は、
前記レンズの前面にて開閉を漸次的に変更することが可能な絞り機構、及び
該絞り機構の開放度合を変化させる手段
を備え、
前記車速センサの検出値に応じて該絞り機構の開放度合を変化させるようにしてあることを特徴とする遠赤外線撮像システム。
【請求項2】
照度を検出する照度センサをさらに備え、
前記照度センサの検出値に応じて前記絞り機構の開放度合を変化させるようにしてあることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線撮像システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、外部を撮像する遠赤外線撮像装置の分解能を調整可能な遠赤外線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の走行の安全を確保すべく、特に夜間の歩行者、自転車等の障害物の存在を検出することが可能なナイトビジョン等の遠赤外線撮像装置が多々開発されている。車両の障害物との衝突防止システムに使用される場合、通常は、車両前方の所定の位置に、左右2基の遠赤外線撮像装置が設定されており、ステレオ視により検出した障害物までの距離を算出している。そして、算出した距離、車両の速度等に基づいて衝突の可能性の有無を判断する。
【0003】
判断の基礎となる画像データを撮像する遠赤外線撮像装置は、レンズ、撮像素子、及び画像処理回路で構成されている。撮像時には、レンズを通して外部光を集光し、撮像素子で検出された輝度値を画像処理回路でA/D変換して、デジタル信号として処理する。
【0004】
遠赤外線撮像装置は、レンズの前方に絞り機構を備えており、絞り機構はアクチュエータにより開閉される。絞り機構を用いることにより、絞った状態では分解能が向上し、より遠方の対象物を撮像することが可能となる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2753531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した撮像装置では、速度に応じて絞り度合を調整することはできない。したがって、例えば車両の速度が増加した場合に、十分な分解能を保持することができず、撮像された画像が鮮明でなくなることによる障害物の検出漏れ、誤認識等が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0006】
また、日没等により車両の周囲の照度が低下した場合、十分な分解能を保持するべく絞り量を増加させることにより光量が不足し、撮像された画像が鮮明でなくなることによる障害物の検出漏れ、誤認識等が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車両の速度、周囲の照度等が変動した場合であっても、十分な鮮明さを保持した画像を取得することができる遠赤外線撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係る遠赤外線撮像システムは、集光する一又は複数のレンズと、該レンズで集光された光を電気信号に変換する、マトリックス状に配列された複数の撮像素子と、該撮像素子ごとの出力値に基づいて画像を形成する画像処理回路とを有する遠赤外線撮像装置、及び該遠赤外線撮像装置が搭載されている車両の速度を検出する車速センサを備える遠赤外線撮像システムにおいて、前記遠赤外線撮像装置は、前記レンズの前面にて開閉を漸次的に変更することが可能な絞り機構、及び該絞り機構の開放度合を変化させる手段を備え、前記車速センサの検出値に応じて該絞り機構の開放度合を変化させるようにしてあることを特徴とする。
【0009】
第1発明では、遠赤外線撮像装置が、レンズの前面にて開閉を漸次的に変更することが可能な絞り機構、及び該絞り機構の開放度合を変化させる手段を備えており、車速センサにて検出された車両の速度に応じて該絞り機構の開放度合を変化させる。これにより、例えば車両の速度が増大した場合には、絞り機構の開放度合を減少させて、すなわち絞り量を大きくすることにより、分解能を向上させることにより撮像素子での出力値をより鮮明にすることが可能となる。また、車両の速度が減少した場合には、絞り機構の開放度合を増大させて、すなわち絞り量を小さくすることにより、撮像素子の出力値をより鮮明にすることが可能となる。
【0010】
また、第2発明に係る遠赤外線撮像システムは、第1発明において、照度を検出する照度センサをさらに備え、前記照度センサの検出値に応じて前記絞り機構の開放度合を変化させるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
第2発明では、車両の周辺の明るさを照度センサで検出し、検出された周辺の明るさに応じて絞り機構の開放度合を変化させる。これにより、例えば車両の周辺が暗い場合であっても、十分な分解能を保持するべく絞り量を増加させることによる光量の不足を未然に回避することができ、撮像された画像をより鮮明にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の速度、車両の周辺の明るさに応じて、絞り機構の開放度合を増減し、すなわち絞り量を大小させることにより、状況に応じて分解能を変化させることができ、撮像素子の出力値をより鮮明にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像システムの構成を模式的に示す図である。本実施の形態では、走行中に周辺の画像を撮像する一組の遠赤外線撮像装置1、1を、車両前方の中央近傍のフロントグリル内(バンパー内でも可能)に搭載している。なお、遠赤外線撮像装置1、1は、波長が7〜14マイクロメートルの赤外光を用いた撮像装置である。
【0014】
図1において、遠赤外線撮像装置1、1は、車両のフロントグリル内の左右方向の略対称な位置に並置してある。遠赤外線撮像装置1、1で撮像された画像データは、NTSC等のアナログ映像方式、又はデジタル映像方式に対応した映像ケーブル7を介して接続してある演算装置3へ送信される。
【0015】
演算装置3は、取得した遠赤外線画像データを用いて種々の演算処理を実行する。演算装置3は、遠赤外線撮像装置1、1の他、操作部を備えた表示装置4とは、NTSC、VGA、DVI等の映像方式に対応したケーブル8を介して接続されており、音声、効果音等により聴覚的な警告を発する警報装置5等の出力装置とは、CANに準拠した車載LANケーブル6を介して接続されている。
【0016】
また、演算装置3は、車両の速度を検出する車速センサ2及び周辺の照度を検出する照度センサ9ともCANに準拠した車載LANケーブル6を介して接続されており、それぞれ車両の速度及び車両周辺の照度(明るさ)を取得することができる。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像装置1の構成を示すブロック図である。図2において、画像撮像部11は、光学信号を電気信号に変換する撮像素子をマトリックス状に備えている。遠赤外線用の撮像素子としては、マイクロマシニング(micromachining)技術を用いた酸化バナジウムのボロメータ型、BSTO(Barium−Titanium Oxide)の焦電型等の赤外線センサを用いる。
【0018】
画像撮像部11は、車両の周囲の赤外光を輝度信号として読み取り、読み取った輝度信号を、LSI基板である画像処理回路10へ送信する。本実施の形態では、絞り量を調整することが可能な絞り機構32を対物レンズ31の外側に設けてあり、絞り機構32により絞り量を調節することにより、画像撮像部11への入光量を調整する。なお、絞り機構32の構成は公知の絞り機構であれば特に限定されるものではなく、例えばアンマウントタイプのアイリス絞り、アセンブリタイプのアイリス絞りであれば良い。
【0019】
画像処理回路10は、信号処理部12及び画像メモリ13で構成されている。信号処理部12は、画像撮像部11から受信した輝度信号をデジタル信号に変換し、光学系で生じた各種の歪みを取り除くための処理、低周波ノイズの除去処理、ガンマ特性を補正する補正処理等を行う。さらに、通信インタフェースにおける伝送フォーマットに応じて、輝度信号をYUV(Y:輝度、U、V:色差)信号等に変換し、変換した信号を画像データとして画像メモリ13へ記憶する。信号処理部12は、さらに演算装置3が取得した車両の速度及び/又は周辺の照度を受信し、絞り機構32による適切な絞り度合を算出して、アクチュエータ33へ動作指令を送信する。アクチュエータ33は、受信した動作指令に従って絞り機構32の開閉を行う。
【0020】
通信インタフェース部14は、LSI基板であり、通信ケーブル等の通信線2を介して外部の装置から受信した指令に従って、画像メモリ13に記憶された画像データの外部の装置への送出、撮像した画像の解像度による転送レートの変換、画像データを送出するためのデータのフォーマット変換等を行う。RAM16は、SRAM、フラッシュメモリ等であり、演算処理での一時的に発生するデータを記憶するとともに、車両の速度と絞りとの対応関係、周辺の照度と絞りとの対応関係を記憶してある。
【0021】
演算装置3は、出力された画像データを受信し、公知の画像認識技術を用いて障害物を検出する。検出された結果は、表示装置4へ表示出力され、必要に応じて警報装置5を鳴動させることにより障害物の存在を運転者へ通知する。図3は、本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像システムの演算装置3の構成を示すブロック図である。
【0022】
演算装置3は画像処理ECUであり、少なくとも撮像装置インタフェース部31a、映像出力部31b、通信インタフェース部31c、画像メモリ32、及びRAM331を内蔵するLSI33で構成されている。
【0023】
撮像装置インタフェース部31aは、遠赤外線撮像装置1、1から映像信号の入力を行うとともに、車速センサ2及び/又は照度センサ9の検出値を遠赤外線撮像装置1、1へ転送する。撮像装置インタフェース部31aは、遠赤外線撮像装置1、1から入力された画像データを、1フレーム単位に同期させて画像メモリ32に記憶する。また、映像出力部31bは、映像ケーブル8を介して液晶ディスプレイ等の表示装置4に対して画像データを出力する。
【0024】
通信インタフェース部31cは、車載LANケーブル6を介してブザー、スピーカ等の警報装置5に対して合成音等の出力信号を送信する。また、通信インタフェース部31cは、車載LANケーブル6を介して車速センサ2から車両の速度を、照度センサ9から周辺の照度を、それぞれ受信し、RAM331に記憶する。
【0025】
画像メモリ32は、SRAM、フラッシュメモリ、SDRAM等であり、映像入力部31aを介して遠赤外線撮像装置1、1から入力された画像データを記憶する。
【0026】
画像処理を行うLSI33は、画像メモリ32に記憶された画像データをフレーム単位で読み出し、公知の障害物認識処理、障害物までの測距処理等を実行して、障害物と衝突するおそれの大小を判断する。LSI33は、障害物と衝突するおそれが高いと判断した場合には、通信インタフェース部31cを介して警報装置5に対して合成音等の出力信号を送信し、あるいは表示装置4へ表示信号を送信する。
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像システムで用いる遠赤外線撮像装置1の信号処理部12の処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像装置1の信号処理部12での処理手順を示すフローチャートである。
【0028】
遠赤外線撮像装置1が撮像を開始する状態、たとえば電源スイッチがオン状態となった場合、信号処理部12は、演算装置3から車速センサ2で検出された車両の速度を受信し(ステップS401)、RAM16に記憶してある車両の速度と絞り量との対応関係を照会して、受信した車両の速度に対応する適切な絞り量を抽出する(ステップS402)。なお、絞り量は、必要とされる分解能と対応付けてRAM16に記憶してあり、車両の速度と必要とされる分解能との対応関係もRAM16に記憶してある。
【0029】
図5は、車両の速度と必要とされる分解能との対応関係を示す図である。図5に示すように、わが国の車両の平均的な走行速度である50km/hでは、分解能が0.2強あれば問題なく画像を撮像することができる。また、80km/h以上では、一般に分解能が0.4以上必要となる。
【0030】
信号処理部12は、車両の速度に基づいて必要とされる分解能を抽出し、抽出された分解能に対応付けて記憶されている絞り量を抽出する。信号処理部12は、抽出された絞り量に対応した絞り機構32の開放度合となるよう絞り機構32の絞りを調整する指示信号を、絞り機構32のアクチュエータ33に対して送信する(ステップS403)。指示信号を受信したアクチュエータ33は、絞り機構32を指示された開放度合となるよう漸次開放又は閉止する。
【0031】
画像撮像部11は、入光した赤外光を撮像素子ごとに電気信号に変換し、信号処理部12へ送信する。信号処理部12は、画像撮像部11から撮像素子ごとの輝度信号を受信する(ステップS404)。
【0032】
このようにすることで、例えば車両の速度が増大した場合には、絞り機構32の絞り量を小さくすることにより、分解能を向上させることができる。よって、撮像素子の出力値をより鮮明にすることが可能となる。逆に車両の速度が減少した場合には、絞り機構32の絞り量を大きくすることにより、撮像素子の出力値を鮮明にすることが可能となる。
【0033】
なお、遠赤外線撮像装置1は、RAM16に照度と絞り量との対応関係を記憶しておき、周辺の明るさに応じて絞り機構32の開放度合を調整するものであっても良い。すなわち信号処理部12が、演算装置3から照度センサ9で検出された周辺の明るさを示す照度を受信し、RAM16に記憶してある照度と絞り量との対応関係を照会して、受信した照度に対応する適切な絞り量を抽出する。信号処理部12は、抽出した絞り量に対応した絞り機構32の開放度合となるよう絞り機構32の絞り量を調整する指示信号を、絞り機構32のアクチュエータ33に対して送信する。指示信号を受信したアクチュエータ33は、絞り機構32を指示された開放度合となるよう漸次開放又は閉止する。
【0034】
例えば車両の周辺が明るい場合には、障害物と周辺の対象物との温度差が比較的小さいことが予想されることから、絞り機構32の絞り量を大きくすることにより、分解能を向上させることができ、輝度値のわずかな差異でも検出することが可能となる。一方、車両の周辺が暗い場合には、障害物と周辺の対象物との温度差が比較的大きいことが予想されることから、絞り機構32の絞り量を小さくすることにより、わずかな動きに対して過敏に対応することなく、安定して対象物を撮像することが可能となる。
【0035】
以上のように本実施の形態によれば、車両の速度、車両の周辺の明るさに応じて、絞り機構32の開放度合を増減し、すなわち絞り量を大小させることにより、分解能を状況に応じて変化させることができ、撮像素子の出力値をより鮮明にすることが可能となる。
【0036】
なお、上述した実施の形態では、絞り機構32の開放度合を調整する機能を全て遠赤外線撮像装置1、1に備える場合について説明しているが、特にこれに限定されるものではなく、外部の演算装置3にて絞り機構32の開放度合を算出して遠赤外線撮像装置1、1へ送信するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像システムの演算装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る遠赤外線撮像装置の信号処理部での処理手順を示すフローチャートである。
【図5】車両の速度と必要とされる分解能との対応関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 遠赤外線撮像装置
2 車速センサ
3 演算装置
9 照度センサ
11 画像撮像部
12 信号処理部
13 画像メモリ
14 通信インタフェース部
15 内部バス
16 RAM
31 対物レンズ
32 絞り機構
33 アクチュエータ


【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫


【公開番号】 特開2008−48066(P2008−48066A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−220444(P2006−220444)