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【発明の名称】 等化回路
【発明者】 【氏名】久保田 寛和

【氏名】吉田 英二

【氏名】宮川 裕三

【要約】 【課題】等化回路を構成する各素子の帯域特性が有限である等化回路において、等化特性を最大限に引き出す。

【構成】入力信号を複製して重み付けを行い、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号に重ね合わせることで信号波形を等化する回路において、複製された信号の帯域を制限し、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号から減算する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を複製して重み付けを行う第一の手段と、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号に重ね合わせる第二の手段とを備えた等化回路において、
前記第一の手段で複製された信号の帯域を制限する手段を備え、前記第二の手段は前記元の入力信号から前記複製されて重み付けされた信号を減算する
ことを特徴とする等化回路。
【請求項2】
前記第一の手段は、入力信号から複数の複製信号を生成してそれぞれに異なる遅延を与える手段を含み、前記帯域を制限する手段は前記複数の複製信号の帯域を制限する請求項1記載の等化回路。
【請求項3】
前記帯域を制限する手段は、前記複数の複製信号にそれぞれ重み付けを行って加算した信号の帯域を制限する請求項2記載の等化回路。
【請求項4】
前記帯域を制限する手段は前記第一の手段の伝達特性によって実現される請求項1または2記載の等化回路。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はディジタルデータ信号の伝送に関する。特に、受信したデータ信号の波形を等化して識別再生する等化回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のディジタル伝送システムの高速化に伴い、伝送路における信号品質劣化は無視できなくなっている。光伝送システムでは伝送路の損失のみならず、波長分散(GVD)や偏波モード分散(PMD)、さらにマルチモードファイバを用いたシステムでは、モード分散による波形劣化が大きな課題である。特に、PMDの状態は時間と共に変化していくため、静的な波形補償では対応できず、伝送路の状態変化に追随して等化条件を最適化していく適応等化技術が検討されてきた。
【0003】
従来、小型かつ低コストな解決策のひとつとして、電気回路による適応波形等化技術が適用されている。代表的な等化回路として、トランスバーサル型等化回路(Finite Impulse Response Filter、有限インパルス応答フィルタとも呼ばれる)と、再帰形等化回路(Infinite Response filter、無限インパルス応答フィルタとも呼ばれる)とが広く通信システムに利用されている(非特許文献1参照)。
【0004】
トランスバーサル型等化回路は、分配回路によって入力信号の複製(「レプリカ」という)を複数作り、遅延回路によって各レプリカに異なる遅延を与え、さらに、各レプリカに乗算回路によって信号強度の重み付けをして重ね合わせて出力する。分配数(段数)、および各レプリカの重み付け設定を変更することで、等化回路の伝達関数を変更することができ、多様な波形等化を実現可能である。受信波形を時間軸でずらして、重み付けして加算または減算を行うことにより、符号間干渉部分を抑圧し、送信波形に近い波形へ整形することができる。伝送路の状態変化が前もってわからないため、各レプリカの重み付け設定を最適条件となるように自己学習させるのが適応等化である。
【非特許文献1】M.Nakamura, H.Nosaka, M.Ida,K.Kurishima and M.Tokumitsu, TuG4, OFC2004, "Electrical PMD equalizer ICs for a40-Gbit/s transmission"
【非特許文献2】「新編 画像解析ハンドブック」高木幹雄、下田陽久監修、東京大学出版会、2004年9月、ISBN4-13-061119-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランスバーサル型等化回路の解析や設計は、通常は各素子の帯域を無限大として行っている。しかし、実際の素子は増幅器やアナログ演算回路であり、変調速度が高速になると必ずしも十分な帯域を確保できるとは限らず、所望の特性を得ることは困難であった。
【0006】
特に、等化回路を構成する遅延回路の遅延時間を延長しようとすると、回路構成上、帯域が狭くなるため、最適な遅延時間を得ることと帯域の確保とを両立させることは困難であった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決し、等化回路を構成する各素子の帯域特性が有限である等化回路において、等化特性を最大限に引き出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の等化回路は、入力信号を複製して重み付けを行う第一の手段と、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号に重ね合わせる第二の手段とを備えた等化回路において、前記第一の手段で複製された信号の帯域を制限する手段を備え、前記第二の手段は前記元の入力信号から前記複製されて重み付けされた信号を減算することを特徴とする。
【0009】
画像処理の分野では、ピントのぼけた写真を鮮鋭化する「アンシャープマスク」と呼ばれる技法が知られている(非特許文献2参照)。本発明は、これと類似の技術をディジタル伝送システム用の等化回路に応用したものである。ディジタル画像処理でラプラシアンフィルタと呼ばれるものはこの技法をディジタル処理で近似するものであるが、ディジタル的な処理に対しても、通常、アンシャープマスクという呼称を用いている。
【0010】
前記第一の手段は、入力信号から複数の複製信号を生成してそれぞれに異なる遅延を与える手段を含み、前記帯域を制限する手段は前記複数の複製信号のそれぞれの帯域を制限することもできる。前記帯域を制限する手段は、前記複数の複製信号を別々に帯域制限してもよく、前記複数の複製信号にそれぞれ重み付けを行って加算した信号の帯域を制限してもよい。
【0011】
前記帯域を制限する手段を前記第一の手段の伝達特性によって実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、各素子の帯域特性が有限であることを積極的に利用している。本発明によれば、等化回路を構成する各回路の帯域特性が有限であっても、等化回路の特性を最大限に引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に本発明第一実施例の等化回路を示すブロック構成図である。この実施例は、ディレイ時間をもたない2段のトランスバーサル型等化回路で本発明を実施したものであり、入力信号を複製して重み付けを行う第一の手段として分配回路11および乗算回路13を備え、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号に重ね合わせる第二の手段として減算回路14を備える。ここで本実施例の特徴とするところは、分配回路11で複製された信号の帯域を制限する帯域制限回路12を備え、減算回路14は、元の入力信号から乗算回路13の出力を減算することにある。
【0015】
入力信号は分配回路11により二つに分けられ、一方が主信号、他方が補正信号となる。補正信号は帯域制限回路12により帯域制限され、乗算回路13によって重み付けされ、減算回路14により主信号から減算される。重み付けと帯域制限は逆の順番に行ってもよい。なお、帯域制限回路12を独立した回路として設けるのではなく、乗算回路13の特性を調整することで実現することもできる。
【0016】
主信号の帯域もある程度制限することもできるが、その場合、帯域が変調速度の2分の1以下となると急激に特性が劣化するため、帯域は変調速度の2分の1以上とすることが必要である。
【0017】
図2は数値解析による本実施例の信号品質改善効果の例を示す。この例は、44Gbit/sのDQPSK信号を伝送した場合の偏波分散による品質劣化を計算したものであり、横軸に偏波による群遅延時間差(DGD)、縦軸に信号品質(Quality、Q値)を示す。Q値が大きいほど、信号品質がよい。
【0018】
DGDの大きい場合に特に品質の改善が得られている。DGDが小さい場合、すなわち元々波形歪が少ない場合には、帯域制限された信号を足し合わせることが品質の劣化を招くことは容易に想像されることである。そのため、より好ましくは、波形歪の大きさに応じて、足し合わせる信号の強度、ならびに帯域制限の程度を変更する適応制御が必要となる。簡易法としては、帯域制限された信号を付加することによる品質劣化を、伝送性能に影響を及ぼさない範囲で許容し、帯域制限の程度、もしくは加える強度、あるいはその双方を固定にしてもよい。
【実施例2】
【0019】
図3は本発明第二実施例の等化回路を示すブロック構成図である。この実施例はディレイ時間をもつ3段のトランスバーサル型等化回路に本発明を実施したものであり、入力信号を複製して重み付けを行う第一の手段として分配回路21、乗算回路23、分配回路25および乗算回路28を備え、分配回路21、25で生成された複数の複製信号にそれぞれに異なる遅延を与える遅延回路24、26を備え、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号に重ね合わせる第二の手段として加算回路29および減算回路30を備える。ここで本実施例の特徴とするところは、分配回路21、25でそれぞれ複製された信号のそれぞれの帯域を制限する帯域制限回路22、27を備え、減算回路30は、入力信号から乗算回路23および28の出力信号を減算することにある。
【0020】
本実施例では、分配回路34で分配された信号(2段目)の一方を主信号とし、分配回路21で分配された信号(1段目)と分配回路25で分配された他方の信号(3段目)を補正信号としている。遅延回路24は、主信号に遅延を与えることで、1段目の補正信号に相対的に負の遅延を与えている。二つの補正信号はそれぞれ、帯域制限回路22、27で帯域制限され、乗算回路23、28で重み付けされて、加算回路29により加算される。この加算された信号を減算回路30で主信号から減算する。
【0021】
帯域制限回路22、27を独立した回路として設けるのではなく、遅延回路24、26、乗算回路23、28、あるいは加算回路29などの特性を調整して実現することもできる。
【実施例3】
【0022】
図4は本発明第三実施例の等化回路を示すブロック構成図である。この実施例はディレイ時間をもつ3段のトランスバーサル型等化回路に本発明を実施したものであり、入力信号を複製して重み付けを行う第一の手段として分配回路31、乗算回路32、分配回路34および乗算回路36を備え、分配回路31、34で生成された複数の複製信号にそれぞれに異なる遅延を与える遅延回路33、36を備え、複製されて重み付けされた信号を元の入力信号に重ね合わせる第二の手段として加算回路37および減算回路39を備える。ここで本実施例の特徴とするところは、帯域制限回路38が加算回路37の出力に設けられ、複数の複製信号にそれぞれ重み付けを行って加算した信号の帯域を制限することにある。
【0023】
図5は数値解析による本実施例による信号品質改善効果の例を示す。この例は44Gbit/sのDQPSK信号を伝送した場合の計算結果であり、偏波による群遅延時間差(DGD)が35psの場合において、補正信号の帯域制限による等化特性の改善効果を計算したものである。横軸は補正信号の帯域制限幅、横軸は信号品質を示す。Q値が大きいほど信号品質が良いことを表している。帯域制限がない場合に比較して、帯域を変調速度のほぼ0.3倍に制限した場合に、等化回路を通過した後の信号は最も良い特性を示している。
【0024】
上述した実施形態は、信号品質劣化要因としてDGD、変調方式としてDQPSK方式を使用した計算例であるが、品質劣化要因は群速度分散(GVD)や増幅器の自然放出光雑音(ASE)、その他の要因であっても同様に適応でき、また、変調方式もNRZ方式を始めとして任意の方式に適用できる。等化回路の段数もここで述べたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、回路を構成する各素子の帯域特性が有限であっても、良好な特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明第一実施例の等化回路を示すブロック構成図。
【図2】数値解析による本実施例の信号品質改善効果の例を示す図。
【図3】本発明第二実施例の等化回路を示すブロック構成図。
【図4】本発明第三実施例の等化回路を示すブロック構成図。
【図5】数値解析による本実施例による信号品質改善効果の例を示す図。
【符号の説明】
【0027】
11、21、25、31、34 分配回路
12、22、27、38 帯域制限回路
13、23、28、32、36 乗算回路
14、30、39 減算回路
24、26、33、35 遅延回路
29、37 加算回路

【出願人】 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100078237
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 直孝

【識別番号】100083518
【弁理士】
【氏名又は名称】下平 俊直


【公開番号】 特開2008−17427(P2008−17427A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−189392(P2006−189392)