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【発明の名称】 無線通信システム、無線基地局、通信制御方法、および通信制御プログラム
【発明者】 【氏名】黒川 英貴

【要約】 【課題】帰属先を変更する必要なく、無線基地局間での無線通信によるトラフィックを低減することができ、無線通信の帯域を有効に活用することができるようにする。

【構成】(1)無線通信端末3がパケットを送信。無線AP2aおよび有線AP1bが受信する。(2)有線AP1bは、ACK(Acknowledge;確認応答)パケットに代理送信(代理処理)する旨の識別子を格納して送信する。(3)無線AP2aは、有線AP1bからのACKパケットの代理処理識別子を確認し、バックホールへの配送を停止する。有線AP1bがパケットを送信先へ配送する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信によりパケットを受信する無線受信手段を備えた無線基地局であって、
前記無線受信手段により受信されたパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路よりも、当該パケットの送信先アドレスに該無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により該無線基地局から該パケットを送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、前記無線受信手段により受信された該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項2】
前記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられ、
前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から前記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを前記無線受信手段が受信すると、
前記判定手段は、前記第2の無線基地局を経由して送信する無線送信経路よりも、該パケットの送信先アドレスに前記無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定し、
前記送信制御手段は、前記判定手段の該判定により該パケットを前記バックボーン回線へ送信することを特徴とする請求項1記載の無線基地局。
【請求項3】
前記判定手段により前記無線基地局から送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを前記送信先アドレスに送信する旨を、前記無線受信手段により受信されたパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路にある他の無線基地局に通知する送信通知手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の無線基地局。
【請求項4】
前記送信通知手段による通知情報は、前記無線受信手段により受信されたパケットに対する受信確認パケットと、前記送信制御手段が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項3記載の無線基地局。
【請求項5】
前記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを前記バックボーン回線へ送信する旨の通知を前記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の無線基地局。
【請求項6】
無線通信によりパケットを受信する無線受信手段を備えた無線基地局であって、
前記無線受信手段により受信されたパケットの発信元装置の帰属先無線基地局よりも該無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により該無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、前記無線受信手段により受信された該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項7】
前記発信元装置は無線通信端末であり、
前記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられ、
前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から前記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを前記無線受信手段が受信すると、
前記判定手段は、前記第2の無線基地局よりも前記無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いと判定し、
前記送信制御手段は、前記判定手段の該判定により該パケットを前記バックボーン回線へ送信することを特徴とする請求項6記載の無線基地局。
【請求項8】
前記判定手段により前記無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを前記送信先アドレスに送信する旨を前記帰属先無線基地局に通知する送信通知手段を備えたことを特徴とする請求項6または7記載の無線基地局。
【請求項9】
前記送信通知手段による通知情報は、前記無線受信手段により受信されたパケットに対する受信確認パケットと、前記送信制御手段が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項8記載の無線基地局。
【請求項10】
前記受信確認パケットは、前記無線受信手段により受信されたパケットの発信元装置の帰属先である無線基地局からのパケットとして送信されることを特徴とする請求項9記載の無線基地局。
【請求項11】
前記発信元装置は無線通信端末であり、
前記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを前記バックボーン回線へ送信する旨の通知を前記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の無線基地局。
【請求項12】
バックボーン回線に有線で接続された第1の無線基地局と、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局と、を備えた無線通信システムであって、
前記第1の無線基地局は、前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から当該第1の無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを受信すると、当該パケットを前記バックボーン回線へ送信する送信制御手段を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項13】
前記第1の無線基地局は、前記送信制御手段が前記パケットを前記バックボーン回線へ送信する時に、当該送信する旨を前記第2の無線基地局に通知する送信通知手段を備えたことを特徴とする請求項12記載の無線通信システム。
【請求項14】
前記第2の無線基地局は、前記送信通知手段からの前記通知を受信すると、当該通知により前記第1の無線基地局が送信するパケットを該第2の無線基地局から他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止手段を備えたことを特徴とする請求項13記載の無線通信システム。
【請求項15】
前記送信通知手段による前記通知は、前記無線通信端末からのパケットに対する当該無線通信端末の帰属先である前記第2の無線基地局としての受信確認パケットと、前記送信制御手段が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項13または14記載の無線通信システム。
【請求項16】
無線基地局が無線通信によりパケットを受信する無線受信工程と、
前記無線受信工程で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路よりも、当該パケットの送信先アドレスに該無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により該無線基地局から該パケットを送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、前記無線受信工程で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御工程と、を備えたことを特徴とする通信制御方法。
【請求項17】
前記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられ、
前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から前記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを前記無線受信工程で受信すると、
前記判定工程では、前記第2の無線基地局を経由して送信する無線送信経路よりも、該パケットの送信先アドレスに前記無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定し、
前記送信制御工程では、前記判定工程の該判定により該パケットを前記バックボーン回線へ送信することを特徴とする請求項16記載の通信制御方法。
【請求項18】
前記判定工程により前記無線基地局から送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを前記送信先アドレスに送信する旨を、前記無線受信工程で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路にある他の無線基地局に通知する送信通知工程を備えたことを特徴とする請求項16または17記載の通信制御方法。
【請求項19】
前記送信通知工程における通知情報は、前記無線受信工程で受信したパケットに対する受信確認パケットと、前記送信制御工程が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項18記載の通信制御方法。
【請求項20】
前記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを前記バックボーン回線へ送信する旨の通知を前記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止工程を備えたことを特徴とする請求項16記載の通信制御方法。
【請求項21】
無線基地局が無線通信によりパケットを受信する無線受信工程と、
前記無線受信工程で受信したパケットの発信元装置の帰属先無線基地局よりも該無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程により該無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、前記無線受信工程で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御工程と、を備えたことを特徴とする通信制御方法。
【請求項22】
前記発信元装置は無線通信端末であり、
前記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられ、
前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から前記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを前記無線受信工程で受信すると、
前記判定工程では、前記第2の無線基地局よりも前記無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いと判定し、
前記送信制御工程では、前記判定工程の該判定により該パケットを前記バックボーン回線へ送信することを特徴とする請求項21記載の通信制御方法。
【請求項23】
前記判定工程により前記無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを前記送信先アドレスに送信する旨を前記帰属先無線基地局に通知する送信通知工程を備えたことを特徴とする請求項21または22記載の通信制御方法。
【請求項24】
前記送信通知工程における通知情報は、前記無線受信工程で受信したパケットに対する受信確認パケットと、前記送信制御工程が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項23記載の通信制御方法。
【請求項25】
前記受信確認パケットは、前記無線受信工程で受信したパケットの発信元装置の帰属先である無線基地局からのパケットとして送信されることを特徴とする請求項24記載の通信制御方法。
【請求項26】
前記発信元装置は無線通信端末であり、
前記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを前記バックボーン回線へ送信する旨の通知を前記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止工程を備えたことを特徴とする請求項21記載の通信制御方法。
【請求項27】
無線基地局に、
無線通信によりパケットを受信する無線受信処理と、
前記無線受信処理で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路よりも、当該パケットの送信先アドレスに該無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理により該無線基地局から該パケットを送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、前記無線受信処理で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御処理と、を実行させることを特徴とする通信制御プログラム。
【請求項28】
前記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられ、
前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から前記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを前記無線受信処理で受信すると、
前記判定処理では、前記第2の無線基地局を経由して送信する無線送信経路よりも、該パケットの送信先アドレスに前記無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定し、
前記送信制御処理では、前記判定処理の該判定により該パケットを前記バックボーン回線へ送信することを特徴とする請求項27記載の通信制御プログラム。
【請求項29】
前記判定処理により前記無線基地局から送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、
前記無線基地局に、
当該無線基地局が受信したパケットを前記送信先アドレスに送信する旨を、前記無線受信処理で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路にある他の無線基地局に通知する送信通知処理を実行させることを特徴とする請求項27または28記載の通信制御プログラム。
【請求項30】
前記送信通知処理における通知情報は、前記無線受信処理で受信したパケットに対する受信確認パケットと、前記送信制御処理が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項29記載の通信制御プログラム。
【請求項31】
前記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、
前記無線基地局に、
当該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを前記バックボーン回線へ送信する旨の通知を前記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止処理を実行させることを特徴とする請求項27記載の通信制御プログラム。
【請求項32】
無線基地局に、
無線通信によりパケットを受信する無線受信処理と、
前記無線受信処理で受信したパケットの発信元装置の帰属先無線基地局よりも該無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理により該無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、前記無線受信処理で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御処理と、を実行させることを特徴とする通信制御プログラム。
【請求項33】
前記発信元装置は無線通信端末であり、
前記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられ、
前記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から前記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを前記無線受信処理で受信すると、
前記判定処理では、前記第2の無線基地局よりも前記無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いと判定し、
前記送信制御処理では、前記判定処理の該判定により該パケットを前記バックボーン回線へ送信することを特徴とする請求項32記載の通信制御プログラム。
【請求項34】
前記判定処理により前記無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、
前記無線基地局に、
当該無線基地局が受信したパケットを前記送信先アドレスに送信する旨を前記帰属先無線基地局に通知する送信通知処理を実行させることを特徴とする請求項32または33記載の通信制御プログラム。
【請求項35】
前記送信通知処理における通知情報は、前記無線受信処理で受信したパケットに対する受信確認パケットと、前記送信制御処理が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることを特徴とする請求項34記載の通信制御プログラム。
【請求項36】
前記受信確認パケットは、前記無線受信処理で受信したパケットの発信元装置の帰属先である無線基地局からのパケットとして送信されることを特徴とする請求項35記載の通信制御プログラム。
【請求項37】
前記発信元装置は無線通信端末であり、
前記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、
前記無線基地局に、
当該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを前記バックボーン回線へ送信する旨の通知を前記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止処理を実行させることを特徴とする請求項32記載の通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、バックボーン回線への接続に、有線のみを用いる無線基地局と無線を用いる無線基地局とが混在する無線通信システム、無線基地局、通信制御方法、および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有線LAN(Local Area Network)などのバックボーン回線との接続点までの通信経路、例えばアクセスポイント間通信などに無線回線を用いたメッシュネットワークでは、ユーザから送信されたパケットが接続先のアクセスポイント(無線基地局)により受信され、上位ネットワーク(バックホール)へとリレー処理される。
こうしたバックボーン回線との接続点までの通信経路として利用される無線回線の帯域は、バックボーン回線に無線通信を用いて接続されるアクセスポイント(以下、無線AP)の複数により共用され、各無線APに接続される無線通信端末によるユーザトラフィックは、この共有される無線回線を通してパケットの送信先へと配送される。
【0003】
また、従来の無線通信システムとして、無線局がホップ数情報を取得し、その無線局が上位接続先無線基地局に直接接続できない場合、ホップ数が最小となる他の無線基地局を選定して接続するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
こうした従来の無線通信システムでは、バックボーン回線との接続点までの通信経路として使用される無線回線の帯域に上限があるため、この帯域を各無線APに接続している無線通信端末のユーザパケットがシェアして利用することとなっている。
例えば、図7の例を用いて説明すると、無線AP502aに帰属している無線通信端末が、送信先アドレス192.168.1.0/24に対してパケットを送信する場合、送信されたパケットは、帰属先の無線AP502aから無線基地局間の無線通信のリレーを2回行い、送信先アドレス192.168.1.0/24を担当アドレスとする有線AP501bに送信され、そこから有線回線により送信先へと送られることになる。
【0005】
また、モバイルノードがホームエージェントとの間でのホップ数および通信遅延時間の少なくとも何れかを計測し、通信遅延時間が所定値以上になると、属するエージェントを通信遅延が所定値以下であるものに変更し、そうでないときは、ホップ数が所定値以上になると、属するエージェントをホップ数が所定値以下であるものに変更するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
こうした従来のシステムによる、ホップ数に応じて帰属先の変更を行う構成の問題点について、図8を参照して説明する。
図8の例に示すように、無線AP502aに帰属している無線通信端末が、送信先アドレス192.168.1.0/24に対してパケットを送信する場合、送信先アドレス192.168.1.0/24を担当アドレスとする有線AP501bに帰属した方がホップ数が少なくて済むため、まず帰属先無線基地局を有線AP501bに切り替え、その後にデータフレームの送信を行うとする(通信経路A)。
【0007】
この後、例えば無線通信端末が使用するアプリケーションを切り替える動作などにより、送信先アドレスが10.1.1.0/24に切り替えられたとすると、新たな帰属先無線基地局となっている有線AP501bから、図8の例に示される順に無線AP502b、無線AP502a、有線AP501aと3回のリレーを行う必要がある(通信経路B)。
【特許文献1】特開2001−237764号公報
【特許文献2】特開2004−7578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図7を用いて上述した従来の無線通信システムでは、無線通信端末がパケットの送信先に対してネットワーク的に遠い位置にある場合、バックボーン回線に有線のみで接続されるアクセスポイント(有線AP)に送信されるまでにリレーされる回数(ホップ数)が多くなってしまい、帯域を多く消費してしまう虞があった。
【0009】
また、上述した特許文献1のものは、無線局がホップ数情報を取得する処理が必要であると共に、バックボーン回線に無線を用いて接続された無線基地局がクライアント端末からパケットを受信した場合、少なくとも1回はホップする必要があり、トラフィック低減につながらないこともあった。
【0010】
また、上述した特許文献2のものは、通信遅延時間やホップ数を所定値以下とするように帰属先を変更するため、モバイルノードからの送信先アドレスが変更されると、その度に帰属先変更を行う必要が発生してしまっていた。
【0011】
図8を用いて上述した例で述べると、送信先アドレス10.1.1.0/24を担当アドレスとする有線AP501aに帰属先無線基地局を切り替えれば上述した問題を回避できるが、そのためにはアプリケーションによって送信先アドレスが変更される度に帰属先のアクセスポイントを切り替えていく必要があった。
【0012】
ここで、送信先アドレスが変更される度に帰属先を切り替えるとなると、以下のような問題が発生する虞がある。
(1) 帰属先切り替え処理のために切り替え時間がかかり、無通信状態が発生しかねず、場合によってはセッションが切れる虞もあるなど、通信に支障が発生する虞があった。
(2) 認証サーバにより認証を行う場合であれば、切り替え処理に伴って暗号鍵情報の送受信が必要となることもあり、トラフィック量の増大を招いてしまう虞があった。
(3) 切り替え先での通信のために必要な帯域を取り直す必要があるため、例えば切り替え処理と同時に他の端末が帰属要求を同時に発信してくると、場合によっては帰属のし直しができない虞があった。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、他の装置からホップ数の情報を取得する必要なく、さらに帰属先を変更する必要もなく、無線基地局間での無線通信によるトラフィックを低減することができ、無線通信の帯域を有効に活用することができる無線通信システム、無線基地局、通信制御方法、および通信制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、本発明の第1の態様としての無線基地局は、無線通信によりパケットを受信する無線受信手段を備えた無線基地局であって、上記無線受信手段により受信されたパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路よりも、当該パケットの送信先アドレスに該無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いか否かを判定する判定手段と、上記判定手段により該無線基地局から該パケットを送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、上記無線受信手段により受信された該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
上記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられる。
上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から上記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを上記無線受信手段が受信すると、上記判定手段は、上記第2の無線基地局を経由して送信する無線送信経路よりも、該パケットの送信先アドレスに上記無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定する。
上記送信制御手段は、上記判定手段の該判定により該パケットを上記バックボーン回線へ送信することが好ましい。
【0016】
上記判定手段により上記無線基地局から送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを上記送信先アドレスに送信する旨を、上記無線受信手段により受信されたパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路にある他の無線基地局に通知する送信通知手段を備えたことが好ましい。
【0017】
上記送信通知手段による通知情報は、上記無線受信手段により受信されたパケットに対する受信確認パケットと、上記送信制御手段が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0018】
上記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを上記バックボーン回線へ送信する旨の通知を上記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止手段を備えたことであってもよい。
【0019】
また、本発明の第2の態様としての無線基地局は、無線通信によりパケットを受信する無線受信手段を備えた無線基地局であって、上記無線受信手段により受信されたパケットの発信元装置の帰属先無線基地局よりも該無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いか否かを判定する判定手段と、上記判定手段により該無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、上記無線受信手段により受信された該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
上記発信元装置は無線通信端末であり、上記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられる。
上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から上記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを上記無線受信手段が受信すると、上記判定手段は、上記第2の無線基地局よりも上記無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いと判定する。
上記送信制御手段は、上記判定手段の該判定により該パケットを上記バックボーン回線へ送信することが好ましい。
【0021】
上記判定手段により上記無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを上記送信先アドレスに送信する旨を上記帰属先無線基地局に通知する送信通知手段を備えたことが好ましい。
【0022】
上記送信通知手段による通知情報は、上記無線受信手段により受信されたパケットに対する受信確認パケットと、上記送信制御手段が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0023】
上記受信確認パケットは、上記無線受信手段により受信されたパケットの発信元装置の帰属先である無線基地局からのパケットとして送信されることが好ましい。
【0024】
上記発信元装置は無線通信端末であり、上記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを上記バックボーン回線へ送信する旨の通知を上記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止手段を備えたことであってもよい。
【0025】
また、本発明の第3の態様としての無線通信システムは、バックボーン回線に有線で接続された第1の無線基地局と、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局と、を備えた無線通信システムであって、上記第1の無線基地局は、上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から当該第1の無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを受信すると、当該パケットを上記バックボーン回線へ送信する送信制御手段を備えたことを特徴とする。
【0026】
上記第1の無線基地局は、上記送信制御手段が上記パケットを上記バックボーン回線へ送信する時に、当該送信する旨を上記第2の無線基地局に通知する送信通知手段を備えたことが好ましい。
【0027】
上記第2の無線基地局は、上記送信通知手段からの上記通知を受信すると、当該通知により上記第1の無線基地局が送信するパケットを該第2の無線基地局から他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止手段を備えたことが好ましい。
【0028】
上記送信通知手段による上記通知は、上記無線通信端末からのパケットに対する当該無線通信端末の帰属先である上記第2の無線基地局としての受信確認パケットと、上記送信制御手段が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0029】
また、本発明の第4の態様としての通信制御方法は、無線基地局が無線通信によりパケットを受信する無線受信工程と、上記無線受信工程で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路よりも、当該パケットの送信先アドレスに該無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いか否かを判定する判定工程と、上記判定工程により該無線基地局から該パケットを送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、上記無線受信工程で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御工程と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
上記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられる。
上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から上記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを上記無線受信工程で受信すると、上記判定工程では、上記第2の無線基地局を経由して送信する無線送信経路よりも、該パケットの送信先アドレスに上記無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定する。
上記送信制御工程では、上記判定工程の該判定により該パケットを上記バックボーン回線へ送信することが好ましい。
【0031】
上記判定工程により上記無線基地局から送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを上記送信先アドレスに送信する旨を、上記無線受信工程で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路にある他の無線基地局に通知する送信通知工程を備えたことが好ましい。
【0032】
上記送信通知工程における通知情報は、上記無線受信工程で受信したパケットに対する受信確認パケットと、上記送信制御工程が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0033】
上記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを上記バックボーン回線へ送信する旨の通知を上記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止工程を備えたことであってもよい。
【0034】
また、本発明の第5の態様としての通信制御方法は、無線基地局が無線通信によりパケットを受信する無線受信工程と、上記無線受信工程で受信したパケットの発信元装置の帰属先無線基地局よりも該無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いか否かを判定する判定工程と、上記判定工程により該無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、上記無線受信工程で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御工程と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
上記発信元装置は無線通信端末であり、上記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられる。
上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から上記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを上記無線受信工程で受信すると、上記判定工程では、上記第2の無線基地局よりも上記無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いと判定する。
上記送信制御工程では、上記判定工程の該判定により該パケットを上記バックボーン回線へ送信することが好ましい。
【0036】
上記判定工程により上記無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、該無線基地局が受信したパケットを上記送信先アドレスに送信する旨を上記帰属先無線基地局に通知する送信通知工程を備えたことが好ましい。
【0037】
上記送信通知工程における通知情報は、上記無線受信工程で受信したパケットに対する受信確認パケットと、上記送信制御工程が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0038】
上記受信確認パケットは、上記無線受信工程で受信したパケットの発信元装置の帰属先である無線基地局からのパケットとして送信されることが好ましい。
【0039】
上記発信元装置は無線通信端末であり、上記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを上記バックボーン回線へ送信する旨の通知を上記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止工程を備えたことであってもよい。
【0040】
また、本発明の第6の態様としての通信制御プログラムは、無線基地局に、無線通信によりパケットを受信する無線受信処理と、上記無線受信処理で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路よりも、当該パケットの送信先アドレスに該無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いか否かを判定する判定処理と、上記判定処理により該無線基地局から該パケットを送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、上記無線受信処理で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御処理と、を実行させることを特徴とする。
【0041】
上記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられる。
上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から上記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを上記無線受信処理で受信すると、上記判定処理では、上記第2の無線基地局を経由して送信する無線送信経路よりも、該パケットの送信先アドレスに上記無線基地局から送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定する。
上記送信制御処理では、上記判定処理の該判定により該パケットを上記バックボーン回線へ送信することが好ましい。
【0042】
上記判定処理により上記無線基地局から送信する方が無線送信経路として短いと判定された場合、上記無線基地局に、当該無線基地局が受信したパケットを上記送信先アドレスに送信する旨を、上記無線受信処理で受信したパケットに基づいて判断される当該パケットの無線送信経路にある他の無線基地局に通知する送信通知処理を実行させることが好ましい。
【0043】
上記送信通知処理における通知情報は、上記無線受信処理で受信したパケットに対する受信確認パケットと、上記送信制御処理が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0044】
上記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、上記無線基地局に、当該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを上記バックボーン回線へ送信する旨の通知を上記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止処理を実行させることであってもよい。
【0045】
また、本発明の第7の態様としての通信制御プログラムは、無線基地局に、無線通信によりパケットを受信する無線受信処理と、上記無線受信処理で受信したパケットの発信元装置の帰属先無線基地局よりも該無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いか否かを判定する判定処理と、上記判定処理により該無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、上記無線受信処理で受信した該パケットを該送信先アドレスに送信する送信制御処理と、を実行させることを特徴とする。
【0046】
上記発信元装置は無線通信端末であり、上記無線基地局は、バックボーン回線に有線で接続されると共に、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される第2の無線基地局に無線で接続されて用いられる。
上記第2の無線基地局に帰属する無線通信端末から上記無線基地局の担当するアドレスに送信するパケットを上記無線受信処理で受信すると、上記判定処理では、上記第2の無線基地局よりも上記無線基地局の方が該パケットの送信先アドレスに送信経路として近いと判定する。
上記送信制御処理では、上記判定処理の該判定により該パケットを上記バックボーン回線へ送信することが好ましい。
【0047】
上記判定処理により上記無線基地局の方が送信経路として近いと判定された場合、上記無線基地局に、当該無線基地局が受信したパケットを上記送信先アドレスに送信する旨を上記帰属先無線基地局に通知する送信通知処理を実行させることが好ましい。
【0048】
上記送信通知処理における通知情報は、上記無線受信処理で受信したパケットに対する受信確認パケットと、上記送信制御処理が送信を行う旨の識別子とを含む情報として構成されることが好ましい。
【0049】
上記受信確認パケットは、上記無線受信処理で受信したパケットの発信元装置の帰属先である無線基地局からのパケットとして送信されることが好ましい。
【0050】
上記発信元装置は無線通信端末であり、上記無線基地局は、バックボーン回線に接続された第1の無線基地局に無線通信で接続されて用いられ、上記無線基地局に、当該無線基地局に帰属する無線通信端末からのパケットを受信した際、該パケットを上記バックボーン回線へ送信する旨の通知を上記第1の無線基地局から受信すると、該パケットを無線通信により他の無線基地局へ送信しないようにする送信停止処理を実行させることであってもよい。
【発明の効果】
【0051】
以上のように、本発明によれば、帰属先を変更する必要なく、無線基地局間での無線通信によるトラフィックを低減することができ、無線通信の帯域を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
次に、本発明に係る無線通信システム、無線基地局、通信制御方法、および通信制御プログラムを適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
まず、本実施形態の概要について説明する。
【0053】
本実施形態は、アクセスポイント間通信といった、有線LANなどのバックボーン回線との接続点までの通信経路に無線回線を用いたメッシュネットワークに関するものである。
クライアント(無線通信端末)が送信するパケットを受信可能で、そのクライアントが送信するパケットの送信先にネットワーク的に近いアクセスポイント(無線基地局)が受信処理を代理で行い、パケットを配送するようにすることで、バックホール(backhaul)のトラフィックを低減することができる無線メッシュネットワークを提供する。
【0054】
次に、本実施形態としての無線通信システムの構成について説明する。
本実施形態としての無線通信システムは、図1に示すように、バックボーン回線に有線のみで接続される有線AP1(1a,1b)と、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される無線AP2(2a,2b)とを備える。
【0055】
有線AP1は、ルータ4に有線回線のみで接続され、本無線通信システムとして担当するネットワークアドレスが割り当てられている。この担当するネットワークアドレスとは、ルータ4から割り当てられたネットワークアドレスのことである。
図1の例では、有線AP1aは、担当するネットワークアドレスが10.1.1.0/24として割り当てられてルータ4aに接続される。有線AP1bは、担当するネットワークアドレスが192.168.1.0/24として割り当てられてルータ4bに接続される。
【0056】
有線AP1および無線AP2は、無線通信端末3と無線通信可能に構成され、無線通信端末3による無線通信を制御する。
図1の例では、有線AP1a、1b、および無線AP2aが、インフラストラクチャモードで6chにより無線通信端末3との無線通信接続可能に設定されている。
無線AP2bは、インフラストラクチャモードで1chにより無線通信端末3との無線通信接続可能に設定されている。
また、以下の説明では、有線AP1a、1b、および無線AP2a、2bが、無線通信端末3からのパケットを正常に受信可能な距離内に設置されていることとして説明する。
【0057】
無線AP2(2a,2b)は、無線通信端末3からのパケットを、無線基地局間の無線通信による中継回線(バックホール)を用いて有線AP1(1a,1b)に送信する。
図1の例では、14chの周波数により中継回線としての無線通信が行われ、この中継回線が、有線AP1a、1b、および無線AP2a、2bにより共有されている。
【0058】
有線AP1は、図2に示すように、無線通信端末3など他の装置と無線通信を行う無線通信部11と、ルータ4などネットワークを構成する他の装置と有線での通信を行う有線通信部12と、本有線AP1の動作全体を制御する制御部13と、担当するネットワークアドレス(担当アドレス)14aなどを格納する記憶部14とを備える。
【0059】
無線AP2は、図3に示すように、無線通信端末3など他の装置と無線通信を行う無線通信部21と、本無線AP2の動作全体を制御する制御部23と、記憶部24とを備える。
【0060】
無線通信端末3は、図4に示すように、有線AP1や無線AP2との間で無線通信を行う無線通信部31と、帰属先無線基地局の選択などの制御を行う通信制御部32と、本音声通話端末3の動作全体を制御する制御部33と、記憶部34とを備える。
【0061】
次に、本実施形態としての無線通信システムによる動作について説明する。
処理手順の概要は以下のようになる。
(1) 無線通信端末3がパケットを送信。無線AP2aおよび有線AP1bが受信する。
(2) 有線AP1bは、ACK(Acknowledge;確認応答)パケットに代理送信(代理処理)する旨の識別子を格納して送信する。
(3) 無線AP2aは、有線AP1bからのACKパケットの代理処理識別子を確認し、バックホールへの配送を停止する。有線AP1bがパケットを送信先へ配送する。
【0062】
次に、本実施形態としての無線通信システムによる動作について、図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。
まず、無線通信端末3は、無線AP2aに帰属要求を発信するなどして、無線AP2aに帰属した状態であるとする(ステップS1)。
【0063】
ここで、無線通信端末3で使用するアプリケーションを変更するなどにより、送信先アドレスが変更されたとする。図5の例では、送信先アドレスが192.168.1.0/24に変更され、その送信先アドレスに対して無線通信端末3からのパケット送信を行うとする(ステップS2)。
【0064】
このことにより、無線通信端末3との無線通信に用いるユーザサービスチャンネルが同じである有線AP1a、1b、および無線AP2aが、送信されたパケットを正常に受信できたとする。ここで、図5の例での通信チャンネルが異なる無線AP2bは、通信チャンネルが異なるため、無線通信端末3が電波到達範囲内にあったとしても、パケットを受信しない。
【0065】
また、ステップS2でのパケット送信では、有線AP1bの担当アドレスに対してパケットが送信されている。すなわち図5の例で言えば、192.168.1.0/24のアドレスに対してパケットが送信されている。
このため、有線AP1aは自局の担当アドレスと異なるため、ステップS2で送信されたパケットに対して反応しない。
【0066】
こうして、ステップS2で無線通信端末3から送信されたパケットを有線AP1bが受信すると、受信したパケットから発信元の無線通信端末3を特定し、自局の担当アドレスに対してパケットが送信されていることから、その発信元の無線通信端末3が帰属する無線AP2aよりも自局の方が送信先アドレスに送信経路として近いと判定する。
この判定に基づき、有線AP1bは、代理受信処理として、無線通信端末3の帰属先である無線AP2aのBSSID(基本サービス識別子)によるACKパケットに、有線AP1bがパケットの代理送信処理を行うことを示す代理送信の識別子を含めて無線通信端末3に送信する。
【0067】
また、ステップS2で無線通信端末3から送信されたパケットは、無線通信端末3の帰属先である無線AP2aにも受信され、無線AP2aは、通常の受信処理として、自局のBSSIDによるACKパケットを無線通信端末3に送信する(ステップS3)。
【0068】
無線通信端末3は、有線AP1bおよび無線AP2aから送信されたACKパケットを受信し、ステップS2でのパケット送信処理を完了する。
【0069】
無線AP2aは、有線AP1bからの代理送信の識別子を含んだACKパケットを受信すると、ステップS2で無線通信端末3から送信されたパケットの中継回線(バックホール)への送信処理を停止する。
すなわち、通常のパケット受信処理であれば、この後、無線AP2bを経由して、有線AP1bへ2回のリレー処理によりパケットの送信処理を行うが、この無線AP2aから無線AP2bへのアクセスポイント間無線通信を停止する(ステップS4)。
【0070】
有線AP1bは、上述したステップS3で代理送信の識別子を含んだACKパケットを送信した後、ステップS2で無線通信端末3から送信されたパケットの中継回線(バックホール)への送信処理を、代理処理として行う(ステップS5)。
【0071】
このように、本実施形態としての無線メッシュネットワークでは、有線AP1が、以下の機能を有する。
(1) パケット送信先(エンドポイント)にネットワークの距離が近いAPが代理で受信し、パケットを送信先へ代理送信する機能を有する。
(2) 無線通信端末3の受信確認のパケット(ACK)を送信するとともに、帰属先無線基地局に対して代理送信処理する旨の通知を行う機能を有する。
【0072】
また、無線AP2が、以下の機能を有する。
(1) 無線通信端末3からのパケットを代理送信する旨の通知を受信すると、バックホールへのパケット配送を停止する機能を有する。
【0073】
以上のように、本実施形態としての無線通信システムでは、有線AP1a、1b、および無線AP2aが使用するユーザサービスチャンネルが同じであり、無線AP2aに帰属している無線通信端末3からのパケットを、そのパケットの送信先アドレスを担当アドレスとしている有線AP1bも正常に受信できた場合、その有線AP1bがパケットの受信処理を行い、パケットを送信先へ送信する。
このことにより、無線AP2aから無線AP2b、さらにその無線AP2bから有線AP1bという2回のリレー処理を行うことなく、パケットを送信先へ送信することができるため、リレー処理によるバックホールトラフィックを低減させることができる。
【0074】
また、パケットを受信した有線AP1bが、帰属先無線基地局である無線AP2aの代理としてパケットの送信処理を行うことにより、帰属先無線基地局の切り替え処理を必要とせず、上述したバックホールトラフィックの低減を実現することができる。
【0075】
このため、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 帰属先切り替え処理のための切り替え時間が不要であり、切り替えに伴う無通信状態も発生しないなど、通信に支障が発生しないようにしてバックホールトラフィックの低減を実現することができる。
(2) 不図示の認証サーバにより認証を行う構成であっても、帰属先の切り替え処理に伴う暗号鍵情報の送受信といったことが不要であり、その送受信によるトラフィック量の増大を招くことなく、バックホールトラフィックの低減を実現することができる。
(3) 帰属先切り替えにより新たな帰属先での通信のための帯域を取り直す必要がないため、例えば切り替え処理と同時に他の端末が帰属要求を同時に発信してきた場合に切り替え不能となるといったリスクを発生させることなく、バックホールトラフィックの低減を実現することができる。
【0076】
また、上述したバックホールトラフィックの低減だけでなく、リレー処理のための処理遅延時間も抑えることができる。
【0077】
このように、本実施形態によれば、アクセスポイントに接続する端末が送信したパケットをパケットの配送先に近い受信可能なAPが代理送信できるため、無線通信端末3の帰属先である無線APが無線通信により中継する必要をなくすことができる。
このため、無線基地局間で無線通信が行われることによるトラフィックを低減し、無線通信の帯域を有効に活用することができると共に、リレー処理のための処理遅延時間も抑えることができる。
【0078】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
例えば、無線基地局が有線AP2、無線AP2それぞれ2台の合計4台であることとして説明したが、バックボーン回線に無線通信を用いて接続される無線基地局と、バックボーン回線に有線のみで接続される無線基地局とが混在して無線メッシュネットワークを構成していれば台数はこのものに限定されず、任意の台数であってよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、有線APと無線APとが異なる構成の別々の装置であることとして説明したが、この構成に限定されず、各アクセスポイントが有線APとしても無線APとしても動作しうる構成を備え、1つの装置がモード切替により、有線APとしても無線APとしても使用可能であるように構成されていても、本発明は同様に実現することができる。
【0080】
また、上述した各実施形態では、有線AP1bがパケットを受信し(ステップS2)、その有線AP1bの担当アドレスに対してパケットが送信されていると判定した場合に代理受信(ステップS3)、代理送信(ステップS5)を行うこととして説明したが、このことに限定されるものではない。
例えば、受信したパケットからパケット発信元装置を特定し、その特定されたパケット発信元からの通常の無線送信経路を推定し、その推定される無線送信経路よりも、受信した有線AP1bから送信先アドレスに送信する無線送信経路の方が無線送信経路として短いと判定した場合に、上述した代理受信、代理送信を行う構成であってもよい。
【0081】
この場合、上述した実施形態における有線APの動作は、無線通信端末3からのパケットを代理受信、代理送信することに限定されず、無線基地局からのパケットを受信した時に、代理受信、代理送信を行う構成であってもよい。
すなわち、図6の例を用いて説明すると、無線AP2aに帰属する無線通信端末3からのパケットを無線AP2aが受信し、無線AP2b宛にリレー送信した時に、その無線AP2b宛のリレー送信パケットを有線AP1bが受信した場合、有線AP1bが無線AP2bに代わって代理受信、代理送信を行う構成(図6における一般通信経路でなく、無線AP2bを経由しない通信経路とする構成)であっても、本発明は同様に実現することができる。
【0082】
また、有線AP1は、有線LANなどのバックボーン回線に有線で接続されることとして説明したが、無線基地局間の無線通信帯域に比べて十分に大容量の通信容量を有する回線で接続されていればこのものに限定されず、例えば、上述した実施形態における有線AP1が、バックボーンネットワークに大容量の無線通信で接続される構成であっても、本発明は同様に適用することができる。
【0083】
また、上述した各実施形態としての無線通信システムを実現するための処理手順をプログラムとして記録媒体に記録することにより、本発明の各実施形態による上述した各機能を、その記録媒体から供給されるプログラムによって、システムを構成するコンピュータのCPUに処理を行わせて実現させることができる。
この場合、上記の記録媒体により、あるいはネットワークを介して外部の記録媒体から、プログラムを含む情報群を出力装置に供給される場合でも本発明は適用されるものである。
すなわち、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記録媒体および該記録媒体から読み出された信号は本発明を構成することになる。
この記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROM,EEPROM等を用いてよい。
【0084】
この本発明に係るプログラムによれば、当該プログラムによって制御される無線通信システムに、上述した本発明に係る各実施形態としての無線通信システムにおける各機能を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態としての無線通信システム周りの構成例を示すブロック図である。
【図2】有線AP1の構成例を示すブロック図である。
【図3】無線AP2の構成例を示すブロック図である。
【図4】無線通信端末3の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態としての無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図6】該実施形態の他の動作例を説明するためのブロック図である。
【図7】従来の無線通信システムによるリレー処理を示すブロック図である。
【図8】従来の無線通信システムで帰属先変更を行う場合のリレー処理を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0086】
1(1a,1b) 有線AP(第1の無線基地局の一例)
11 無線通信部
12 有線通信部
13 制御部
14 記憶部
14a 担当するネットワークアドレス(担当アドレス)
2(2a,2b) 無線AP(第2の無線基地局の一例)
21 無線通信部
23 制御部
24 記憶部
3 無線通信端末
31 無線通信部
32 通信制御部
33 制御部
34 記憶部
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫


【公開番号】 特開2008−17419(P2008−17419A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−189342(P2006−189342)