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無線通信装置及び無線通信方法 - 特開2008−22339 | j-tokkyo
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【発明の名称】 無線通信装置及び無線通信方法
【発明者】 【氏名】黒田 慎一

【要約】 【課題】位相雑音に耐性をも考慮しながら、パイロット・サブキャリアから検出される位相変移を基に精度の高い位相補正を行なう。

【構成】ランダムな白色雑音に対する耐性を高めるときは、平均化の度合いを強くして残留周波数オフセットに起因する固定的な位相変移値に収束させる。一方、位相雑音に対する耐性を高めるときは、逆に平均化の度合いを小さくして、当該OFDMシンボルにおける検出値の重みを高める。SNRが高い受信パケットを受信するときには多値変調が施されることが想定され、位相雑音の低域部分に追従する働きを強くして、精度の高い位相補正を行なうことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM信号を受信処理する無線通信装置であって、
OFDM信号からなるパケットを受信する受信手段と、
OFDMシンボルに含まれるパイロット・サブキャリアを用いて位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差検出手段による位相誤差の検出結果を所定の期間にわたって平均化する平均化処理手段と、
OFDM信号が到来する伝搬路におけるSNR情報を取得するSNR情報取得手段と、
該取得したSNR情報に基づいて、前記平均化処理手段による平均化処理方法を決定する平均化処理制御手段と、
前記平均化処理手段から出力される位相誤差に基づいて、受信信号に含まれる位相変移を除去する位相変移除去手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記平均化処理制御手段は、該取得したSNR情報に基づいて、ランダムな白色雑音に対する耐性を高めた平均化処理、又は、位相雑音に対する耐性を考慮した平均化処理を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記平均化処理制御手段は、前記伝搬路におけるSNRが低いパケットを受信しているときにはランダムな白色雑音に対する耐性を高めた平均化処理を選択し、前記伝搬路におけるSNRが高いパケットを受信しているときには位相雑音に対する耐性を考慮した平均化処理を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記平均化処理制御手段は、前記伝搬路におけるSNRが低いパケットを受信しているときには平均化の度合いを強くした平均化処理を選択し、前記伝搬路におけるSNRが高いパケットを受信しているときには平均化の度合いを小さくした平均化処理を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記平均化処理制御手段は、前記所定の区間内で検出された複数の位相誤差をほぼ均等に重み付けして平均化の度合いを強め、又は、前記区間内で検出された複数の位相誤差のそれぞれに対し経過時間に応じて重みを減じて平均化の度合いを小さくする、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記SNR情報取得手段は、受信したパケットの伝送レートに基づいてSNR情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
OFDM信号を受信処理する無線通信方法であって、
OFDM信号からなるパケットを受信する受信ステップと、
所定の期間にわたってOFDMシンボルに含まれるパイロット・サブキャリアを用いて位相誤差を検出する位相誤差検出ステップと、
OFDM信号が到来する伝搬路におけるSNR情報を取得するSNR情報取得ステップと、
該取得したSNR情報に基づいて、複数の位相誤差についての平均化処理方法を決定する平均化処理制御ステップと、
該決定された平均化処理方法に従って、前記位相誤差検出ステップにおける複数の位相誤差の検出結果を平均化する平均化処理ステップと、
前記平均化処理手段から出力される位相誤差に基づいて、受信信号に含まれる位相変移を除去する位相変移除去ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
前記平均化処理制御ステップでは、前記伝搬路におけるSNRが低いパケットを受信しているときには平均化の度合いを強くした平均化処理を選択し、前記伝搬路におけるSNRが高いパケットを受信しているときには平均化の度合いを小さくした平均化処理を選択する、
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調された無線信号を受信する無線通信装置及び無線通信方法に係り、特に、OFDMシンボルに挿入されているパイロット・サブキャリアから検出される位相変移をデータ信号から矯正して残留周波数オフセットの補正を行なう無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation )変調されたOFDM信号に対して精度の高い位相誤差の補正を行なう無線通信装置及び無線通信方法に係り、特に、位相雑音への耐性をも考慮しながら、パイロット・サブキャリアから検出される位相変移を基に精度の高い位相補正を行なう無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0003】
室内で無線ネットワークを構築した場合、受信装置では直接波と複数の反射波・遅延波の重ね合わせを受信するというマルチパス環境が形成されるという問題がある。マルチパスにより遅延ひずみ(又は、周波数選択性フェージング)が生じ、通信に誤りが引き起こされる。そして、遅延ひずみに起因するシンボル間干渉が生じる。このため、無線LANの代表的な標準規格のIEEE802.11などでは、マルチキャリア方式の1つであるOFDM変調方式が採用されている。
【0004】
OFDM送信機は、シリアルで送られてきた情報を情報伝送レートより遅いシンボル周期毎にシリアル/パラレル変換して出力される複数のデータを各サブキャリアに割り当ててサブキャリア毎に振幅及び位相の変調を行ない、その複数サブキャリアについて逆FFTを行なうことで周波数軸での各サブキャリアを時間軸の信号に変換して送信する。また、OFDM受信機は、この逆の操作、すなわちFFTを行なって時間軸の信号を周波数軸の信号に変換して各サブキャリアについてそれぞれの変調方式に対応した復調を行ない、パラレル/シリアル変換して元のシリアル信号で送られた情報を再生する。ここで、各サブキャリアがシンボル区間内で相互に直交するように各キャリアの周波数が設定されている。サブキャリアが互いに直交するとは、任意のサブキャリアのスペクトラムのピーク点が常に他のサブキャリアのスペクトラムのゼロ点と一致していることを意味する。したがって、送信データを周波数の異なる複数のキャリアに分配して伝送するので、各キャリアの帯域が狭帯域となり、周波数利用効率が非常に高く、周波数選択性フェージング妨害に強いという特徴がある。
【0005】
ここで、OFDM通信機においては、周波数オフセットと位相雑音の問題がある。
【0006】
周波数オフセットとは、送受信機にそれぞれ搭載されている発振器の周波数が持つ微妙な誤差に起因するものであり(例えば、無線LANでは20ppm程度の精度の発振器が使用される)、送受信機のアナログ部分における発振器の誤差は、受信機側のデジタル部分では受信信号の位相の回転という現象として観測される。
【0007】
また、位相雑音とは、送受信機のアナログ部のIQ変調部及び復調部の間で発生する位相の雑音のことである。受信機側でFFTした値の周波数領域でのデータで見ると、位相雑音の低域成分は、OFDMシンボル毎に全サブキャリアがほぼ同一角度だけ位相が回転するという現象として観測することができる。別々のOFDMシンボルでは回転する角度は区々であるが、サブキャリア毎の角度は同一のように観測される。
【0008】
無線LANにおける周波数オフセットの対策として、送信機側からの伝送フレーム(若しくはパケット)の先頭(すなわちユーザ・データの前段)に、既知パターンからなるプリアンブルすなわちリファレンス信号が付加される。受信機側ではこのリファレンス信号を利用して同期獲得並びに送信機との周波数オフセットの観測を行ない、周波数のずれに対応してデータの位相を逆回転することにより周波数オフセットの補正が行なわれる。
【0009】
また、プリアンブルを用いた周波数オフセットの推定は実際には誤差を含むため、ペイロードに対する周波数オフセットの補償を完全には実行できない。このため、残留周波数オフセットが残ったままペイロードを受信してしまうことになる。例えば、ノイズその他の影響により周波数オフセット量の算出において誤差が生じた場合などには周波数オフセットが残留する。
【0010】
OFDM通信システムでは、受信側でFFTを行なった後のデータは周波数領域のデータになる。周波数オフセットはOFDMシンボル毎にすべてのサブキャリアが一様すなわち同一角度だけ回転するという現象として観測される。図5には、位相空間(コンスタレーション)上でチャネル補正後のサブキャリアと変調点との比を3次元的に表している。残留周波数オフセットは、サブキャリア間干渉の原因になるとともに、FFTを掛けた後の信号に対して位相変移を引き起こす。
【0011】
残留周波数オフセットの影響により、OFDMシンボルのすべてのサブキャリアが同一角度だけ位相が回転するが、その回転量はOFDMシンボル毎に異なる。そこで、送信機が各OFDMシンボルに挿入する既知のパイロット・サブキャリア(例えば52本のサブキャリア中に4本のパイロット・サブキャリアを挿入する)を利用して、受信機側において残留周波数オフセットを補償する「パイロット・トーン・トラッキング(Pilot Tone Tracking)」を行なうことが一般的である。すなわち、受信機側では、OFDMシンボルに付随しているパイロット・サブキャリアを抽出し、OFDMシンボル毎の位相回転量を推定し、推定された位相の逆回転をデータ信号に与えることで、残留周波数オフセットに起因する位相変移を矯正することができる。
【0012】
例えば、バースト先頭部で基準位相・振幅を再生し、検波を行なうシンボルに含まれるパイロット情報と直前の基準位相情報から残留周波数オフセットを推定し、推定された残留周波数オフセットからシンボル検波時に用いる基準位相情報を生成することにより、良好な復調が可能となる(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0013】
また、プリアンブル部における周波数誤差に基づいてシンボル単位の相対位相誤差を補正する周波数誤差1次補正部と、FFTを掛けて周波数成分に展開された信号に対してシンボル毎の残留位相誤差をパイロット・キャリアで補正する周波数誤差2次補正手段を備え、演算量及びメモリ量を少なくした回路構成によりOFDM信号の周波数誤差を補正する受信装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0014】
ここで、パイロット・シンボルにランダム雑音が混入しているという問題がある。このため、パイロット・トーン・トラッキングを行なう際に、パイロット・サブキャリア毎の位相誤差の検出値を平均化して(ある区間の複数のシンボルにわたって検出値の平均をとる)、混入しているランダム雑音を極力抑制するようにしている。
【0015】
最近の伝送レートの高速化の要望とともに変調方式の多値化が進んできている。例えば、256QAMのような多値変調では、送受信器のローカル発振器で発生する位相雑音をも除去することが望ましい。ところが、従来のパイロット・トーン・トラッキング技術においては、ある区間の位相誤差の検出結果を平均化して、ランダムな白色雑音を抑制することにのみ主眼が置かれており、言い換えれば、位相雑音に対する耐性についてはほとんど考慮されていない。
【0016】
【特許文献1】特開2001−69113号公報、段落0014、0016
【特許文献2】特開2003−333009号公報、段落0037
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、OFDMシンボルに挿入されているパイロット・サブキャリアから検出される位相変移をデータ信号から矯正して残留周波数オフセットの補正を好適に行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、多値QAM変調されたOFDM信号に対して精度の高い位相誤差の補正を行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、位相雑音への耐性をも考慮しながら、パイロット・サブキャリアから検出される位相変移を基に精度の高い位相補正を行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、OFDM信号を受信処理する無線通信装置であって、
OFDM信号からなるパケットを受信する受信手段と、
OFDMシンボルに含まれるパイロット・サブキャリアを用いて位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差検出手段による位相誤差の検出結果を所定の期間にわたって平均化する平均化処理手段と、
OFDM信号が到来する伝搬路におけるSNR情報を取得するSNR情報取得手段と、
該取得したSNR情報に基づいて、前記平均化処理手段による平均化処理方法を決定する平均化処理制御手段と、
前記平均化処理手段から出力される位相誤差に基づいて、受信信号に含まれる位相変移を除去する位相変移除去手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置である。
【0021】
本発明は、OFDM信号を受信処理する無線通信装置に関する。OFDM変調方式は、マルチパスによる遅延歪みに起因するシンボル間干渉に対して耐性があるが、送受信機間のローカル発振器が微妙に持つ周波数誤差に起因して、周波数オフセットと位相雑音の問題がある。
【0022】
周波数オフセットに関しては、伝送フレームの先頭に付加されたプリアンブルを用いて周波数オフセットの1次補正を施すとともに、さらにデータ信号(ペイロード)部分においてもOFDMシンボル内に挿入されている複数のパイロット・サブキャリアを利用して残留周波数オフセットに起因する位相変移を除去する2次補正すなわちパイロット・トーン・トラッキングを行なうことが一般的である。
【0023】
今後は256QAMといった多値変調方式が進むと、さらに精度の高い位相補正が求められる。すなわち、残留周波数オフセットに起因する固定的な位相変移を除去するだけでは不十分で、ローカル発振器で発生する移相雑音も合わせて除去することが望ましい。しかしながら、ある区間の位相誤差の検出結果を平均化するという従来のパイロット・トーン・トラッキングでは、ランダムな白色雑音の抑制にのみ主眼が置かれ、位相雑音に対する耐性についてはほとんど考慮されていない。
【0024】
そこで、本発明に係る無線通信装置では、OFDM信号の送信元との間の伝送路のSNRに基づいて、ランダムな白色雑音に対する耐性を高めた位相変移除去動作と、位相雑音に対する耐性を考慮した位相変移除去動作のうちいずれかを選択的に行なうように構成されている。具体的には、受信したパケットのSNRに応じて、パイロット・サブキャリアを用いて検出された位相誤差の平均化処理方法を切り替えて、白色雑音又は位相雑音のいずれかに適応させるようになっている。
【0025】
本発明に係る無線通信装置においても、基本的には、パイロット・サブキャリアを用いて検出された位相誤差をある区間にわたって平均化する。ここで、ランダムな白色雑音に対する耐性を高めるためには、平均化の度合いを強くして、より正確に残留周波数オフセットに起因する固定的な位相変移値に収束させる。平均化を強くするとは、例えば、ある区間内で検出された複数の位相誤差をほぼ均等に重み付けして平均化すること(さらには平均化する区間を長くとること)に相当する。SNRが低いパケットを受信しているときには、ランダムな白色雑音に起因する補正誤りが、受信性能を決定する支配的要因の1つになるから、平均化の度合いを強くすることが適当である。
【0026】
一方、位相雑音に対する耐性を高めるためには、逆に平均化の度合いを小さくすることによって、当該OFDMシンボルにおける検出値の重みを高めるようにする。平均化の度合いを小さくするとは、例えば、ある区間内で検出された複数の位相誤差のそれぞれに対し経過時間に応じて重みを減じながら平均化すること(さらには平均化する区間を短くすること)に相当する。OFDMシンボルの検出値には、すべてのサブキャリアに共通する位相雑音の低域部分(すなわち、信号帯域幅未満の低域部分)が含まれており、SNRが高いパケットを受信しているときにはこれが支配的となる。そこで、平均化の度合いを小さくして、主に当該OFDMシンボルから検出された位相誤差の逆回転を掛けて補正することによって、位相雑音の低域部分に関する成分の除去を図る。これによって、パイロット・トーン・トラッキングは、位相雑音の低域部分に追従する働きが強くなる。
【0027】
なお、SNR情報の検出・測定方法は従来技術を適用することができる。また、IEEE.802.11など、SNRに応じて伝送レートを適応的に選択するような通信システムにおいては、パケットのヘッダ内に記載されている伝送レート情報でSNR情報を代替することができる。
【0028】
例えば、SNRが高い受信パケットを受信するときには、256QAMなどの伝送レートの高い多値変調が施されることが想定される。本発明に係る無線通信装置によれば、平均化の度合いを小さくして、主に当該OFDMシンボルから検出された位相誤差の逆回転を掛けて補正することで、位相雑音に対する耐性を考慮しながら残留周波数オフセットの補正が行なわれる。この結果、パイロット・トーン・トラッキングは、位相雑音の低域部分に追従する働きが強くなり、多値変調においても十分に精度の高い位相補正を行なうことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、OFDMシンボルに挿入されているパイロット・サブキャリアから検出される位相変移を矯正して残留周波数オフセットの補正を好適に行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【0030】
また、本発明によれば、多値QAM変調されたOFDM信号に対して精度の高い位相誤差の補正を行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【0031】
また、本発明によれば、位相雑音への耐性をも考慮しながら、パイロット・サブキャリアから検出される位相変移を基に精度の高い位相補正を行なうことができる、優れた無線通信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【0032】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0034】
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信装置10の、主にデジタル・ベースバンド処理部分における構成を示している。
【0035】
受信アンテナ(図示しない)からのデジタル・ベースバンド信号は、バッファ11において、同期回路(Timing Detector)12によりOFDMシンボル毎に切り分けられる。これと同時に、周波数誤差補正部14では、周波数誤差推定回路(Frequency Estimator)13からの周波数誤差推定値に基づいて、デジタル・ベースバンド信号に対し周波数オフセットの補正が行なわれる。その後、それぞれフーリエ変換器(FFT)15へ送られる。
【0036】
この段階で周波数誤差並びにタイミング誤差はほとんど除去される。しかしながら、周波数誤差推定回路13におけるノイズその他の影響により周波数オフセット量の算出において誤差が生じた場合などには誤差が残留する。この残留周波数オフセットはFFT15に送られてしまう。
【0037】
FFT15は、時間軸の受信信号を周波数軸の信号に変換して、受信信号をサブキャリア信号に分解する。
【0038】
サブキャリア信号は等化及び位相トラッキング部16に送られ、残留周波数オフセット並びに位相誤差に起因する位相変移の除去が行なわれた後、復調器(Demapper)17で位相空間(constallation)上に変調点から元の値に復調される。
【0039】
上述したように、周波数誤差補正部13では、周波数誤差推定回路14からの周波数誤差推定値に基づいて各信号の周波数補正を行なうが、周波数誤差推定回路14におけるノイズやその他の影響により周波数オフセット量の算出において誤差が生じた場合などには誤差が残留する。この残留周波数オフセットは、データ信号とともにFFT15でサブキャリア信号に含まれる。
【0040】
残留周波数オフセットは、OFDMシンボル毎の全サブキャリアで一律の位相回転として現れる(図5を参照のこと)。データOFDMシンボルでは変調が既知のパイロット・サブキャリアを使って位相誤差を求めることができる。
【0041】
図2には、等化及び位相トラッキング部16の内部構成を詳細に示している。同図を参照しながら、残留周波数オフセット並びに位相雑音の補正について説明する。
【0042】
FFT15にてOFDM復調された後のデータ信号からパイロット・サブキャリアが抽出され、複素乗算部21において参照信号メモリ22に格納されている既知のパイロット・サブキャリアと複素乗算される。
【0043】
ベクトル→角度変換部23は、この複素乗算して得られたIQ空間上のベクトルを角度情報に変換して出力する。
【0044】
Dフリップ・フロップからなる遅延部27では、位相変移量が当該パケットにわたって蓄積される。
【0045】
符号反転部28は、遅延部27から出力される位相変移量を符号反転し、加算部24において、ベクトル→角度変換部23の出力と加算することで、当該OFDMシンボルの位相誤差が求められる。
【0046】
平均化処理部25では、所定の期間にわたるOFDMシンボルの位相誤差を平均化する。本実施形態では、受信したパケットのSNRに応じた平均化処理を施す。すなわち、SNRが低いパケットを受信しているときにはランダムな白色雑音に対する耐性を高めた平均化処理を選択し、SNRが高いパケットを受信しているときには位相雑音に対する耐性を考慮した平均化処理を選択するが、詳細については後述に譲る。
【0047】
加算部26では、遅延部27からの当該パケットにわたる位相変移量に、平均化処理部25から出力される新たに加える位相変移量を加算する。
【0048】
符号反転部29は、このような平均化された位相変移量の位相を反転して、位相補正量を求める。次いで、角度→ベクトル変換部30は、この位相補正量をIQ空間上にベクトルに変換する。
【0049】
そして、位相変移除去部としての複素乗算部31では、データ信号に対して角度→ベクトル変換部30の出力を複素乗算することで、位相変移を矯正し、すべてのデータ信号から残留周波数オフセットや位相雑音を除去する。
【0050】
平均化処理部25では、所定の期間にわたるOFDMシンボルの位相誤差について、受信したパケットのSNRに応じた平均化処理を施すが、以下ではこの点について詳解する。
【0051】
本実施形態に係る無線通信装置10においても、基本的には、パイロット・サブキャリアを用いて検出された位相誤差をある区間にわたって平均化する。
【0052】
ここで、ランダムな白色雑音に対する耐性を高めるためには、平均化の度合いを強くして、より正確に残留周波数オフセットに起因する固定的な位相変移値に収束させることができる。SNRが低いパケットを受信しているときには、ランダムな白色雑音に起因する補正誤りが受信性能を決定する支配的要因の1つになるから、平均化の度合いを強くすることが適当である。
【0053】
一方、位相雑音に対する耐性を高めるためには、逆に平均化の度合いを小さくすることによって、当該OFDMシンボルにおける検出値の重みを高めるようにする。OFDMシンボルの検出値には、すべてのサブキャリアに共通する位相雑音の低域部分(すなわち、信号帯域幅未満の低域部分)が含まれており、SNRが高いパケットを受信しているときにはこれが支配的となる。そこで、平均化の度合いを小さくすることで、主に当該OFDMシンボルから検出された位相誤差の逆回転を掛けて補正することで、位相雑音の低域部分に関する成分の除去を図る。これによって、パイロット・トーン・トラッキングは、位相雑音の低域部分に追従する働きが強くなる。
【0054】
なお、SNR情報の検出・測定方法は従来技術を適用することができる。また、IEEE.802.11など、SNRに応じて伝送レートを適応的に選択するような通信システムにおいては、パケットのヘッダ内に記載されている伝送レート情報でSNR情報を代替することができる。
【0055】
平均化を強くするとは、例えば、ある区間内で検出された複数の位相誤差をほぼ均等に重み付けして平均化すること(さらには平均化する区間を長くとること)に相当する。また、平均化の度合いを小さくするとは、例えば、ある区間内で検出された複数の位相誤差のそれぞれに対し経過時間に応じて重みを減じながら平均化すること(さらには平均化する区間を短くすること)に相当する。
【0056】
図3には、平均化処理部25の内部構成例を示している。
【0057】
当該OFDMシンボルについての位相誤差検出値Δdkを入力すると、増幅部25Aにおいて忘却係数μkによって重み付けされる。ここで、kは入力信号の通し番号(シンボル・カウンタ)を表す。
【0058】
また、過去の位相補正係数Ck-1が、Dフリップ・フロップからなる遅延部25Cを介して増幅部25Dに入力され、忘却係数1−μkによって重み付けされる。
【0059】
加算部25Bは、増幅部25Aからの、忘却係数μkによって重み付けされた位相誤差検出値Δdkと、増幅部25Dからの、忘却係数1−μkによって重み付けされた過去の位相補正係数Ck-1を加算して、これを現在の位相補正係数Ckとして出力する。
【0060】
このような回路構成によれば、適当な忘却係数μkを選択することによって、平均化の度合いを調整することができる。μkを小さくすると、各位相誤差の検出値にはほぼ均等な重み付けがなされるので、平均化の度合いは強くなる。逆に、μkを大きくすることによって、経過時間に応じて重みを減じて平均化の度合いを小さくすることができる。
【0061】
SNRが低い(若しくは伝送レートが低い)パケットを受信しているときには、低めの忘却係数値を採用して平均化の度合いを強くすることができる。逆に、SNRが高い(若しくは伝送レートが高い)パケットを受信しているときには、高めの忘却係数を用いることで平均化の度合いを小さくすることができる。
【0062】
平均化処理部25内では、SNR情報から所定の演算処理によってμkを算出するようにしてもよい。あるいは、あらかじめμkを格納したテーブルを用意しておき、SNR情報を基にテーブル中から適当なものを平均化処理部25に適用するようにしてもよい。
【0063】
以下の表1には、その忘却係数値μkの具体例を示している。同表中のセット番号(1)では、シンボルが進む毎に忘却係数値が下げられ、最終的には1/8という低い値に固定されており、平均化の度合いが強められている。一方のセット番号(2)では、すべてのシンボルにわたり3/4という高めの値で固定されるため、平均化の度合いが弱められている。
【0064】
【表1】


【0065】
図4には、図3並びに表1を用いた具体例を採用した際のシミュレーション結果の一例を示している。ここでは、IEEE802.11a/gの仕様(サブキャリア帯域幅:312.5KHz、サブキャリア本数:52本のOFDM伝送方式)に準拠したMMSE2×2のMIMO受信機において、BPSK(Bi Phase Shift Keying)(符号化率:1/2)、64QAM(符号化率:1/2)、256QAM(符号化率:3/4)という3種の変調方式を行なう際に、表1の忘却係数セット(1)並びに(2)をそれぞれ採用した場合のPER(Packet Error Rate:パケット誤り率)特性を示している。但し、パケット長は1000バイトであり、シミュレーションに用いたチャネル・モデルはIEEE802.11nで規定されたチャネルDである。
【0066】
例えば、伝送レートが低いBPSK変調した2本のストリームを空間多重したデータ通信が実用に供するのは、SNRが10dB前後となる通信環境である。このような低SNRの領域では、ランダムな白色雑音に起因する補正誤りが受信性能を決定する支配的要因の1つになる。したがって、忘却係数セット(1)を用いて、位相誤差の検出値の平均化の度合いを強くした方が、より良好なPER特性を得ることができる。
【0067】
一方、256QAMや64QAMといった伝送レートが高い変調方式が実用に供するのは、SNRが30dB以上となる通信環境である。このような高SNRの領域では、OFDMシンボルの検出値に含まれる、すべてのサブキャリアに共通する位相雑音の低域部分(すなわち、信号帯域幅未満の低域部分)が、受信性能を決定する支配的要因になる。このため、ランダムな白色雑音よりもむしろ位相雑音に対する耐性を高める必要がある。したがって、忘却係数セット(2)を用いて位相誤差の検出値の平均化の度合いを小さくした方が、PER特性が良くなる。図4に示した例では、256QAM(符号化率:3/4)において忘却係数(1)及び(2)を用いた場合のPER特性を比較すると、後者の方がはるかに良好な特性を示していることが判る。
【0068】
このように、伝送レート若しくはSNRによって「最適な忘却係数」、ひいては「最適な位相誤差検出値の平均化の度合い」は異なる。本発明に係る無線通信装置によれば、伝送レート若しくはSNRに適応して「忘却係数」すなわち「位相誤差検出値の平均化の度合い」を変えることによって、良好な特性を保ちながらOFDM信号を受信することができる。
【0069】
なお、MIMO(Multi−Input Multi−Output)通信は、複数のアンテナを備えた送受信機間で複数の伝送ストリームを空間多重して伝送する通信方式である。MIMO受信機は、空間多重された信号をチャネル特性に基づいて空間分離して元のストリームをクロストークなしに復号することができる。MMSE(Minimum MeanSquare Error)は、空間分離するための受信重み行列を計算する1つの方法である。MIMO通信自体は本発明の要旨に直接関連しないので、本明細書ではこれ以上説明しない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0071】
本明細書では、主に無線LANに関する実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、テレビやラジオなどのデジタル放送波を受信するチューナや、携帯電話機など、多値変調されたOFDM信号を受信するさまざまなタイプの無線通信機に対して、同様に本発明を適用することができる。
【0072】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置10のデジタル・ベースバンド処理部分における構成を示した図である。
【図2】図2は、等化及び位相トラッキング部16の内部構成を詳細に示した図である。
【図3】図3は、平均化処理部25の内部構成例を示した図である。
【図4】図4は、図3並びに表1を用いた具体例を採用した際のシミュレーション結果の一例を示した図である。
【図5】図5は、位相空間(コンスタレーション)上でチャネル補正後のサブキャリアと変調点との比を3次元的に表した図である。
【符号の説明】
【0074】
10…無線通信装置
11…バッファ
12…同期回路
13…周波数誤差推定部
14…周波数誤差補正部
15…高速フーリエ変換部(FFT)
16…等化及び位相トラッキング部
17…復調器
21…複素乗算部
22…参照信号メモリ
23…ベクトル→角度変換部
24…加算部
25…平均化処理部
26…加算部
27…遅延部
28…符号反転部
29…符号反転部
30…角度→ベクトル変換部
31…複素乗算部(位相変移除去部)

【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭

【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治

【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二

【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫


【公開番号】 特開2008−22339(P2008−22339A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192896(P2006−192896)