トップ :: H 電気 :: H04 電気通信技術

【発明の名称】 無線受信装置および方法
【発明者】 【氏名】田邉 康彦

【要約】 【課題】受信性能を高める。

【構成】MIMO−OFDM信号を受信するための無線受信装置において、複数のアンテナと、複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定する推定手段1141と、複数の伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算する第1の計算手段1142と、推定誤差を使用して、前記推定された伝搬路応答を補正する補正手段1143と、補正された伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行う第2の計算手段1144と、を具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO−OFDM(Multiple Input Multiple Output - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を受信するための無線受信装置において、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定する推定手段と、
複数の前記伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算する第1の計算手段と、
前記推定誤差を使用して、前記推定された伝搬路応答を補正する補正手段と、
前記補正された伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行う第2の計算手段と、を具備することを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記補正された伝搬路応答を利用して、前記MIMO−OFDM信号の位相を補正する補正手段と、
前記前処理が施された伝搬路応答を使用して、前記位相が補正されたMIMO−OFDM信号を復調する復調手段と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記第1の計算手段は、少なくとも1以上のサブキャリアの受信信号を使用して該各サブキャリアに対応する、伝搬路応答の推定誤差を求め、サブキャリアごとに伝搬路応答の推定誤差を抽出するウエイトを計算し、該1以上のウエイトを使用して前記全サブキャリアで共通の推定誤差を計算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記第1の計算手段は、前記サブキャリアで受信した信号系列から、伝搬路推定用既知信号の系列にしたがって信号行列を生成し、該信号行列と、前記推定された伝搬路応答を使用して全サブキャリアに共通の逆行列を計算し、該逆行列を使用して前記第1の計算手段で計算されたウエイトを計算することを特徴とする請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記第1の計算手段は、前記サブキャリアで受信した信号系列から、伝搬路推定用既知信号の系列にしたがって信号行列を生成し、前記信号系列から雑音電力を検出し、前記信号行列と、前記推定された伝搬路応答と、前記雑音電力を使用して全サブキャリアに共通の逆行列を計算し、該逆行列を使用して前記第1の計算手段で計算されたウエイトを計算することを特徴とする請求項3に記載の無線受信装置。
【請求項6】
前記第1の計算手段は、少なくとも一つ以上のサブキャリアの受信信号を使用して該サブキャリアごとに送信された信号を抽出するためのウエイトを計算し、
前記サブキャリアごとのウエイトを対応するサブキャリアの受信信号に乗算し、送信信号の系列に応じてウエイト乗算後の信号を合成して前記推定誤差を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項7】
前記第1の計算手段は、前記各サブキャリアで少なくとも一つ以上の空間多重される各信号を要素とする送信信号ベクトルが二つのサブキャリア間で線形従属になるサブキャリアの組み合わせが存在する場合に、前記ウエイトを乗算し当該サブキャリアで送信された信号を抽出した後、サブキャリアごとの伝搬路応答に応じて加重合成し、該加重合成された信号を用いて送信された信号系列に応じて信号をさらに合成して、前記推定誤差を推定することを特徴とする請求項6に記載の無線受信装置。
【請求項8】
前記第1の計算手段は、少なくとも一つ以上のサブキャリアで送信された信号系列から伝搬路推定用既知信号の系列にしたがって生成される信号行列と、複数の前記推定された伝搬路応答と、該サブキャリアの受信信号とを使用して、Total Least Square法に基づいて前記推定誤差を計算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項9】
前記補正手段は、既知のサブキャリアであるパイロットサブキャリアについて前記推定誤差を使用して推定した伝搬路応答を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項10】
前記第1の計算手段は、既知の信号である少なくとも1以上のパイロットサブキャリアを使用して該各サブキャリアに対応する、伝搬路応答の推定誤差を求め、パイロットサブキャリアごとに伝搬路応答の推定誤差を抽出するウエイトを計算し、該1以上のウエイトを使用して前記全サブキャリアで共通の推定誤差を計算することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項11】
前記パイロットサブキャリアは、推定に用いる各サブキャリアの伝搬路推定用既知信号の系列と、該パイロットサブキャリアで送信される信号系列とによって形成される信号行列を結合して拡張した信号行列のランクが空間多重されるストリーム数の二乗に等しくなる条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の無線受信装置。
【請求項12】
伝搬路推定用既知信号として直交系列の信号が送信されている場合に、前記パイロットサブキャリアは、推定に用いる各サブキャリアの前記伝搬路推定用既知信号の系列と、該パイロットサブキャリアで送信される信号系列によって形成される信号行列とを結合して拡張した信号行列のランクが空間多重されるストリーム数に等しくなる条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の無線受信装置。
【請求項13】
前記第1の計算手段は、前記条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせの中から受信電力が大きいパイロットサブキャリアの組み合わせを使用することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の無線受信装置。
【請求項14】
前記第1の計算手段は、前記条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせの中から通信路容量が大きいパイロットサブキャリアの組み合わせを使用することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の無線受信装置。
【請求項15】
前記受信されたMIMO−OFDM信号の時間領域の信号から、パイロットサブキャリアの信号を抽出する抽出手段をさらに具備し、
前記第1の計算手段は、前記抽出されたパイロットサブキャリアを使用して前記推定誤差を計算することを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の無線受信装置。
【請求項16】
前記第1の計算手段は、伝搬路推定用既知信号を使用して前記推定手段において伝搬路応答が推定された信号の次のOFDMシンボルの信号を用いて前記推定誤差を求めることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の無線受信装置。
【請求項17】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM(Multiple Input Multiple Output - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定する推定手段と、
複数の前記伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行う第1の計算手段と、
複数の前記伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算する第2の計算手段と、
前記推定誤差を使用して、前記ウエイトを補正する補正手段と、を具備することを特徴とする無線受信装置。
【請求項18】
前記補正手段は、前記推定誤差の逆行列を計算し、該逆行列を使用して前記前処理された伝搬路応答を補正することを特徴とする請求項17に記載の無線受信装置。
【請求項19】
前記第1の計算手段は、前記受信されたMIMO−OFDM信号と該MIMO−OFDM信号の複素共役から相互相関行列を計算し、該相互相関行列を使用して前記前処理を行うことを特徴とする請求項17または請求項18に記載の無線受信装置。
【請求項20】
前記第2の計算手段は、既知の信号である少なくとも1以上のパイロットサブキャリアを使用して該各サブキャリアに対応する、伝搬路応答の推定誤差を求め、パイロットサブキャリアごとに伝搬路応答の推定誤差を抽出するウエイトを計算し、該1以上のウエイトを使用して前記全サブキャリアで共通の推定誤差を計算することを特徴とする請求項17から請求項19のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項21】
前記パイロットサブキャリアは、推定に用いる各サブキャリアの伝搬路推定用既知信号の系列と、該パイロットサブキャリアで送信される信号系列とによって形成される信号行列を結合して拡張した信号行列のランクが空間多重されるストリーム数の二乗に等しくなる条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせであることを特徴とする請求項20に記載の無線受信装置。
【請求項22】
伝搬路推定用既知信号として直交系列の信号が送信されている場合に、前記パイロットサブキャリアは、推定に用いる各サブキャリアの前記伝搬路推定用既知信号の系列と、該パイロットサブキャリアで送信される信号系列によって形成される信号行列とを結合して拡張した信号行列のランクが空間多重されるストリーム数に等しくなる条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせであることを特徴とする請求項20に記載の無線受信装置。
【請求項23】
前記第2の計算手段は、前記条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせの中から受信電力が大きいパイロットサブキャリアの組み合わせを使用することを特徴とする請求項21または請求項22に記載の無線受信装置。
【請求項24】
前記第2の計算手段は、前記条件を満たすパイロットサブキャリアの組み合わせの中から通信路容量が大きいパイロットサブキャリアの組み合わせを使用することを特徴とする請求項21または請求項22に記載の無線受信装置。
【請求項25】
前記受信されたMIMO−OFDM信号の時間領域の信号から、パイロットサブキャリアの信号を抽出する抽出手段をさらに具備し、
前記第2の計算手段は、前記抽出されたパイロットサブキャリアを使用して前記推定誤差を計算することを特徴とする請求項20から請求項24のいずれか1項に記載の無線受信装置。
【請求項26】
前記第2の計算手段は、伝搬路推定用既知信号を使用して前記推定手段において伝搬路応答が推定された信号の次のOFDMシンボルの信号を用いて前記推定誤差を求めることを特徴とする請求項20から請求項25のいずれか1項に記載の無線受信装置。
【請求項27】
複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM(Multiple Input Multiple Output - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定し、
複数の前記伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算し、
前記推定誤差を使用して、前記推定された伝搬路応答を補正し、
前記補正された伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行うことを特徴とする無線受信方法。
【請求項28】
複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM(Multiple Input Multiple Output - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定し、
複数の前記伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行い、
複数の前記伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算し、
前記推定誤差を使用して、前記前処理された伝搬路応答を補正することを特徴とする無線受信方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の送受信アンテナを用いて通信を行うMIMO−OFDM(Multiple Input Multiple Output - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)通信において、複数のサブキャリアで受信した信号を用いて伝搬路応答推定値を補正する無線受信装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を高速化する技術として、送信信号を複数の無線部に分配し、複数の送信アンテナから同一の周波数を用いて同時に信号を送信するMIMO伝送が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。MIMO伝送では、各アンテナから送信された信号がそれぞれ異なる伝搬路を経て受信されるため、受信装置が複数の受信アンテナを用いて受信を行い、受信した各信号を用いて同時に送信された各信号を復調および復号することによって信号を復号することができる。この結果、通信に用いる周波数帯域幅を広げることなく、多重化した信号の数に応じて伝送速度を高速化することが可能となる。したがって、この方式によれば、周波数利用効率を高め、スループットを向上することができる。
【0003】
一方、マルチパス伝搬路において、送受信間の伝搬遅延時間が異なる信号が到来する環境では、符号間干渉による波形歪みが通信品質を劣化させる大きな要因となる。このような環境において、直交周波数分割多重(以下OFDMと記述)方式は、伝搬遅延時間の異なる信号を受信しても符号間干渉に起因する波形ひずみを補償することができる方式として知られている。
【0004】
以上説明したOFDM方式をMIMO伝送に拡張したMIMO−OFDM伝送方式は、通信の高速化、通信品質の向上、周波数利用効率、スループットの向上などの効果が得られる方式として無線通信の分野で注目を集めている方式である。
【0005】
一般に無線通信における送信装置はベースバンド信号を無線周波数に変換して送信し、受信装置は無線周波数で受信した信号をベースバンド信号に変換した後、受信処理を行う。この時、送信装置と受信装置はそれぞれ発信器を用いて正弦波を生成しているが、正確な正弦波を生成することは一般に困難であり、送信装置と受信装置の間に周波数のオフセットが生じてしまう。
【0006】
この結果、受信信号は時間の経過とともに不要な位相回転により位相誤差が生じ、通信品質を劣化させる要因となる。このため、OFDM方式では一部のサブキャリアを受信装置が既知のパイロット信号を送信するサブキャリアとし(以下、パイロットサブキャリアと呼ぶ)、データ伝送に既知の信号を含めることにより参照信号とする方式が一般に用いられる。
【0007】
従来の無線受信装置には、パイロットサブキャリアの受信信号における各ストリームを分離し、位相誤差の平均値を求め、対応するシンボルにおける位相誤差を補正するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−252602公報
【非特許文献1】A. Paulraj, R. Nabar, and D. Gore, Introduction to Space-Time Wireless Communications, Cambridge University Press, UK, 2003, pp. 6-10.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の無線受信装置では位相誤差によって伝搬路応答推定に含まれる誤差を補正することはできない。また、各ストリームを分離した後、位相誤差を推定するため、位相誤差の推定精度が伝搬路応答に強く依存し、伝搬路応答の相関が高い場合は推定精度が劣化し、受信性能が劣化する問題点がある。
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、伝搬路推定精度を高め、受信性能の高い無線受信装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の無線受信装置は、MIMO−OFDM信号を受信するための無線受信装置において、複数のアンテナと、前記複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定する推定手段と、複数の前記伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算する第1の計算手段と、前記推定誤差を使用して、前記推定された伝搬路応答を補正する補正手段と、前記補正された伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行う第2の計算手段と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の無線受信装置は、複数のアンテナと、前記複数のアンテナで受信されたMIMO−OFDM信号に含まれる複数のサブキャリアの各サブキャリアの伝搬路応答を推定する推定手段と、複数の前記伝搬路応答を使用して、前記MIMO−OFDM信号を復調するための前処理を行う第1の計算手段と、複数の前記伝搬路応答の全サブキャリアで共通の推定誤差を計算する第2の計算手段と、前記推定誤差を使用して、前記ウエイトを補正する補正手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無線受信装置および方法によれば、伝搬路推定精度を高め、受信性能を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る無線受信装置および方法について詳細に説明する。
まずは、本実施形態の無線受信装置において受信するMIMO−OFDM信号を送信する送信装置の一例について図1から図10を参照して説明する。図1は多重化するストリーム数が2の場合の例を示している。
【0014】
図1に示す送信装置では送信する情報信号を二つのストリームに分割し、多重化して送信するため、ストリーム1の信号系列である送信信号1と、ストリーム2の信号系列である送信信号2とに対して後に説明する変調等を施し、信号を送信する。
【0015】
このとき、情報信号から送信信号1および送信信号2を生成する手段は様々な方式が考えられ、一例として図2に示すように直並列変換部201を用いて情報信号を並列信号に変換し、各信号を送信信号1および送信信号2にする方式が挙げられる。ここで、直並列変換部201は、情報信号を1ビットずつ並列信号に変換しても構わないし、複数ビットずつ変換しても構わない。また、変調器101、102で施される変調方式の変調次数に応じて送信する信号ごとに異なるビット数で並列信号に変換しても構わない。予め定められていて無線受信装置が既知の変換方式であればいかなる変換方式を用いても構わない。
【0016】
また、送信する情報信号を送信信号1および送信信号2に変換するその他の例として、図3に示すように、符号器301が誤り訂正符号化を施した後、直並列変換部201が信号を分配する方式が挙げられる。このように誤り訂正符号を施すことによって、信号に冗長性が付加されるため情報信号の伝送速度は劣化するものの、誤り訂正によって通信品質が向上するため、結果として高いスループット特性が得られることが期待される。
図3の例では符号器301で情報信号を符号化した後、直並列変換部201で送信信号1と送信信号2に分配する。
【0017】
ここで、符号器301はリード−ソロモン符号や畳込み符号、ターボ符号やLDPC(Low Density Parity Check codes)などいかなる符号化方式を用いても構わない。予め定められた符号化方式で無線受信装置が既知な方式であり、復号できる方式であればいかなる手法を用いても構わない。また、複数の符号化方式を実装し、送信するフレームごとに方式を変更しても構わない。
【0018】
なお、符号器301で適用する符号化方式によっては隣接する符号語間の相関が高くなるため、図4に示すようにインターリーバー401、402を用いて直並列変換後の信号を並び替えても構わない。このとき、インターリーバー401、402は、信号の並び替え方は様々な手法が存在するが、いかなる規則で並べ替えを行っても構わない。また、インターリーバー401と402で同一の規則で並び替えを行っても構わないし、異なる規則で並べ替えを行っても構わない。予め定められた規則に従い、無線受信装置が既知の規則であればいかなる方式を用いても構わない。
【0019】
一方、これまで符号化を行う方式として一つの符号器301を用いて符号化を行う方式について説明してきたが、図5に示すように直並列変換後の信号に対して二つの符号器301、502を用いてそれぞれ符号化を施しても構わない。このとき、符号器502は符号器301と同一の符号化方式を適用しても構わないし、異なる符号化方式を適用しても構わない。また、同一の符号化方式で符号化率だけ変えても構わない。予め定められた符号化方式であり、無線受信装置が既知の方式であればいかなる方式でも構わない。
【0020】
さらに、図6に示すように二つのインターリーバー401、402を用いて符号器301と符号器502で符号化された信号にそれぞれインターリーバーを適用しても構わない。
【0021】
さらに、符号器301と符号器502で符号化された信号を信号入替部701で入れ替えることにより、送信信号1および送信信号2に符号器301と符号器502で符号化された両信号が含まれるように入替をおこなっても構わない。信号入替部701は、1ビットずつ符号器301と符号器502から信号を入力し、複数ビットずつ送信信号1、送信信号2に出力しても構わないし、複数ビットずつ符号器301と符号器502から入力し、1ビットずつ送信信号1と送信信号2に出力しても構わない。また、複数ビットずつ符号器301と符号器502から信号を入力し、複数ビットずつ送信信号1と送信信号2に出力しても構わないし、後に説明する変調器で施される変調方式に従って入れ替えの規則を変更しても構わない。予め定められた規則であり、無線受信装置が既知の順序であればいかなる規則で信号を入れ替えても構わない。
【0022】
さらに、図8に示すように信号入替部701の出力に対してインターリーバー401と402を用いてさらに信号の並べ替えを行っても構わない。
【0023】
以上、送信する情報信号から二つのストリーム、送信信号1と送信信号2を生成する例を述べたが、本実施形態における二つのストリームの生成手段は上記方式に制限されるものではない。予め定められた方式であり、無線受信装置が既知の手段であればいかなる方式を用いても構わない。
【0024】
以上のようにして生成された情報信号1と情報信号2に対し、それぞれ変調器101、102で各サブキャリアに信号を分配し、サブキャリアごとに変調を施す。ここで、変調器101、102において入力信号を各サブキャリアに分配する順番はいかなる順番でも構わない。高い周波数のサブキャリアから順次割り当てても構わないし、低い周波数のサブキャリアから順次割り当てても構わないし、中心周波数近辺のサブキャリアから分配しても構わない。予め定められた順序であり、本実施形態の無線受信装置が既知の順序であればいかなる順番でも構わない。
【0025】
なお、サブキャリアごとに適用される変調方式についてもいかなる変調方式を用いても構わない。BPSK(Binary Phase Shift Keying)やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)などの位相変調方式や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や64QAMなどの直交振幅変調方式、DPSK(Differential Phase Shift Keying)などいかなる変調方式を用いても構わない。予め定められた変調方式で無線受信装置が既知の方式であり、復調可能な方式であればいかなる方式を用いても構わない。また、全てのサブキャリアで同一の変調方式を用いてもサブキャリアごとに異なる変調方式を用いても構わないし、送信するフレームごとに異なる変調方式を適用してもかまわない。予め定められた方式の中からどの変調方式を適用したか無線受信装置に通知する手段があればいかなる方式を適用しても構わない。
【0026】
次に、パイロット生成部111について説明する。パイロット生成部111では各ストリームにおけるパイロットサブキャリアの信号を生成して出力する。一般に、OFDM伝送では送信装置と受信装置間のローカル周波数のずれや位相のずれ、伝搬路変動を補正するため、全てのサブキャリアで情報を送信するのではなく、一部のサブキャリアは受信装置が既知の信号を送信する。当該サブキャリアをここではパイロットサブキャリアと呼び、情報を送信するサブキャリアをデータサブキャリアと呼ぶ。
【0027】
ここで、データサブキャリアとパイロットサブキャリアの配置の一例について図9に示す。図9で、−21番、−7番、7番、21番のサブキャリアがパイロットサブキャリアであり、この例では四つのサブキャリアをパイロットサブキャリアとして用いている。
【0028】
なお、図9の例ではパイロットサブキャリアを−21番、−7番、7番、21番のサブキャリアに配置したが、本実施形態におけるパイロットサブキャリアの配置は上記四つのサブキャリアに制限されるものではない。予め定められた番号であり、無線受信装置が既知の番号であればその他の番号のサブキャリアを用いても構わない。また、パイロットサブキャリア数も4本のサブキャリアに制限されない。本実施形態においては後に説明するように、ストリーム数以上のサブキャリア数であればいかなる数のサブキャリアをパイロットサブキャリアとして用いても構わない。
【0029】
ここで、ストリームi(図1の例ではi=1,2)におけるサブキャリア番号kのパイロットサブキャリアにおけるmシンボル目の信号をp(k)(m)とおき、各ストリームのパイロット信号を要素とするパイロット信号ベクトルである<p(k)(m)>を次式(1)のように定義する。なお、以後、<A>は「ベクトルA」を示しているとする。
【0030】
【数1】


【0031】
ただし、は行列の転置を表している。
【0032】
本実施形態ではパイロット信号ベクトルが特定の条件を満たす必要がある。この条件については伝搬路推定の誤差成分を推定する手法を説明する際に第9の実施形態で説明する。
【0033】
次に、逆フーリエ変換器121、122が、変調器101、102およびパイロット生成部111を用いて生成された周波数領域の信号をそれぞれ時間領域の信号に変換する。このとき、逆フーリエ変換を計算する手段はIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を用いてもIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)を用いて計算しても構わない。周波数領域の信号を時間領域の信号に変換することができればいかなる手段を用いても構わない。また、時間領域の信号を巡回遅延させ、ずらして出力しても、一つのフレーム内で同一の遅延量であれば構わないし、受信装置が既知であるならばフレーム内で遅延量を変更しても構わない。
【0034】
GI付加部131、132が、逆フーリエ変換器121、122で時間領域の信号に変換された信号に対し、OFDMシンボルごとにガードインターバルまたはサイクリックプレフィクスと呼ばれる信号を付加する。これらは、伝搬遅延時間の異なるマルチパス信号が到来したときに、信号の周期性を保ち、周波数領域において符号間干渉が生じないようにするためにOFDM伝送において用いられる手法であり、一般的であるので詳細な説明は省略する。
【0035】
以上では、一つのフレームにおける情報信号部分をMIMO−OFDM伝送するための信号生成について説明してきたが、フレーム伝送では一般に情報信号を送信する前にフレームの先頭でヘッダ信号を送信する。ヘッダ信号は、同期をとるための信号やフレームで適用される変調方式やストリーム数、符号化方式、符号化率などの無線受信装置において復調を行うために必要な情報や、伝搬路応答を推定するために無線受信装置が既知なプリアンブル信号や他の通信システムとの共存をはかるための信号である。これらの信号は、無線受信装置が既知の信号である。既知信号生成部141はこの既知信号を生成する。スイッチ171、172は、GI付加部131、132の出力である情報信号と、既知信号生成部141が出力する既知信号を切り替えてそれぞれ、無線部151、152に出力する。
【0036】
ヘッダ信号の一例として図10にフレームフォーマットの一例を示す。
図10において、1001はストリーム1のフレームフォーマットであり、1002はストリーム2のフレームフォーマットを表している。1011、1012、1021、1022は同期をとるための周期信号である。1031、1032、1041、1042はフレームの信号長、変調方式、符号化率、ストリーム数などの復調に必要な情報が含まれている信号である。1051、1052はAGC(Auto Gain Control)の電力測定用の信号である。1061〜1064は伝搬路推定用の既知信号である。ここまでがヘッダ信号となる。以上のヘッダ信号に続いて情報信号1071〜1074が伝送される。
【0037】
ヘッダ信号の一例として図10のフォーマットを用いて説明したが、本実施形態におけるフレームフォーマットは図10のフォーマットに制限されるものではないし、ヘッダ信号のフォーマットも図10のフォーマットに制限されるものではない。また、復調に必要な情報として上記の信号を例としてあげたが、無線受信装置が復調できるのであればこれらの信号全てを必ずヘッダ信号として送信する必要は無く、また、他の信号をヘッダ信号に含めて送信しても構わない。
【0038】
以上のようにして生成されたデジタルの送信信号を無線部151、152でアナログの無線周波数に変換する。無線部151、152はデジタル信号を無線周波数信号に変換し、利得を調整する機能と、アナログの無線周波数信号の利得を調整し、デジタル信号に変換する機能を有し、送信時はデジタル信号をアナログの無線周波数信号に変換する機能が利用される。
なお、無線部151、152はA/D変換器、D/A変換器、フィルタ、直交変調器、直交復調器、周波数変換器、増幅器などから構成される一般的な無線器であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
無線部151、152で無線周波数に変換された信号は送信アンテナ161、162を介してそれぞれ送信される。このとき、送信アンテナ161、162は所望の周波数の信号を送受信することができればいかなるアンテナを用いても構わない。また、送信アンテナ161と162でそれぞれ同一の形態、同一の性質のアンテナを用いても構わないし、別々のアンテナを用いても構わない。
【0040】
以上が本実施形態の無線受信装置が受信する送信信号についての説明である。以下、この送信信号を受信する無線受信装置について詳細に説明する。
【0041】
(第1の実施形態)
本実施形態の無線受信装置の構成について図11を参照して説明する。図11は、本実施形態に係る無線通信装置についてのブロック図の一例であり、多重化されるストリーム数2、受信アンテナ数2の場合を一例として示している。
本実施形態の無線受信装置は、受信アンテナ1101、1102、無線部1111、1112、GI除去部1121、1122、フーリエ変換器1131、1132、伝搬路推定部1141、伝搬路推定誤差推定部1142、伝搬路推定誤差補正部1143、位相補正部1145、MIMO復調前処理部1144、MIMO復調部1146を備えている。
【0042】
無線部1111、1112は、受信アンテナ1101、1102を介して、無線処理を行い、無線周波数の信号をデジタル信号に変換する。受信アンテナ1101、1102は、送信装置のアンテナと同様にいかなるアンテナを用いても構わない。送信時と受信時で異なるアンテナを用いても構わないし、同一のアンテナを用いても構わない。さらに、送信時と受信時で電気的に性質を変えて用いても構わない。所望の周波数の信号を受信することができれば、いかなるアンテナ構成を用いても構わない。
無線部1111、1112は、送信装置の説明をしたときと同一の性質を持つものであり、無線受信装置では無線周波数の信号をデジタル信号に変換するために用いられる。このとき、無線周波数の信号を一旦、中間周波数の信号に変換してからベースバンド信号に変換しても構わないし、中間周波数を介せず直接ベースバンド信号に変換しても構わない。また、アナログで直交復調を適用しても構わないし、中間周波数信号をA/D変換器でデジタル信号に変換した後、デジタルで直交復調を用いても構わないし、無線周波数の信号を直接デジタル信号に変換した後、デジタルで直交復調を用いても構わない。無線周波数の信号をデジタル信号に変換することができればいかなる構成および手段を用いても構わない。なお、無線部1111、1112における増幅器やフィルタ、周波数変換器やA/D変換器は一般的な物であり、本実施形態にとって本質ではないので、それぞれの詳細な説明は省略する。
【0043】
GI除去部1121、1122は、無線部1111、1112でデジタル信号に変換された信号から、マルチパスによる符号間干渉を防ぐために送信装置で付加されたGIを除去する。
【0044】
フーリエ変換器1131、1132は、GI除去部1121、1122によりガードインターバルが除去された時間領域の信号を周波数領域に変換する。フーリエ変換器1131、1132は離散フーリエ変換を行う。OFDM伝送では複数のサブキャリアを用いて信号が送信されており、フーリエ変換器1131、1132が受け取った信号に離散フーリエ変換を適用することによって各サブキャリアで送信された信号を抽出することができる。
フーリエ変換器1131、1132は、ガードインターバルを除いた有効OFDMシンボルを1シンボルずつ離散フーリエ変換する。このとき、DFT(Discrete Fourier Transform)を用いて演算してもFFT(Fast Fourier Transform)を用いて演算しても構わない。OFDMシンボルごとに離散フーリエ変換を適用することができればいかなる手法を用いても構わない。フーリエ変換器1131、1132が出力する信号について後に式(2)〜式(11)を参照して説明する。
【0045】
伝搬路推定部1141は、サブキャリアごとの伝搬路応答を推定する。伝搬路推定部1141の詳細は後に式(12)〜式(19b)を参照して説明する。なお、伝搬路推定部1141の変形例(伝搬路推定部1301)について後に図13、式(20)、式(21)を参照して説明する。
【0046】
伝搬路推定誤差推定部1142は、伝搬路推定部1141で推定した伝搬路推定の誤差を推定する。伝搬路推定誤差推定部1142の詳細は後に式(31)〜式(51)を参照して説明する。
【0047】
伝搬路推定誤差補正部1143は、各サブキャリアの伝搬路応答の推定誤差を補正する。伝搬路推定誤差補正部1143の詳細は後に式(52)を参照して説明する。
【0048】
位相補正部1145は、伝搬路推定誤差補正部1143で補正された伝搬路推定を使用して受信信号に生じる位相誤差を補正する。周波数オフセットおよび位相雑音の影響で、受信信号はシンボルごとに異なる位相誤差を受けている。よって、位相補正部1145は、MIMO復調を行う前にシンボルごとにパイロットサブキャリアの信号を用いて位相誤差を補正する。位相補正部1145の詳細は後に式(53)〜式(58)を参照して説明する。
【0049】
MIMO復調前処理部1144は、MIMO復調を行うための前処理を行う。MIMO復調前処理部1144は、伝搬路推定誤差補正部1143で補正された伝搬路応答を用いてデータサブキャリアのMIMO伝送された信号を復調するための前処理を行う。MIMO復調前処理部1144の詳細は後に式(52)の下以降で説明する。
【0050】
MIMO復調部1146は、多重化された各ストリームを復調する。なお、ここでいう復調とは送信装置で誤り訂正符号化がなされていない場合、またはMIMO復調部1146の後段で硬判定復号を施す場合は、0または1の判定した各ビットを復調信号1または復調信号2として出力することを意味する。一方、MIMO復調部1146の後段で軟判定復号が適用される場合は各ビットの尤度情報、すなわち軟出力を復調信号1または復調信号2として出力することを意味する。MIMO復調部1146における復調手法の詳細については本実施形態の要旨と異なるため、詳細な説明については省略する。
MIMO復調部1146で得られた復調信号1および2は送信装置における送信信号1および送信信号2の生成手法に応じてデインターリーブや信号入替、復号などの処理が施されるが、本実施形態における無線受信装置では送信装置の送信手段に応じてこれらの処理を施し、情報信号を抽出する必要はあるが、その手段はいかなる手段にも制限しないため、詳細な説明は省略する。
【0051】
次に、図11の無線受信装置の動作の一例について図12を参照して説明する。
伝搬路推定部1141が、受信信号に含まれる伝搬路推定用プリアンブルを使用して伝搬路推定を行う(例えば、下記式(12)参照)(ステップS1201)。
【0052】
伝搬路推定誤差推定部1142が、ステップS1201で得られた伝搬路推定結果と、例えば、OFDMシンボルの第1番目のデータシンボルで送信されるパイロット信号の系列を使用して、伝搬路推定誤差推定用のウエイトをパイロットサブキャリアごとに計算する(例えば、下記式(42)〜式(45)参照)(ステップS1202)。なお、パイロット信号は、第1番目のデータシンボルに含まれるものでなくてもよい。
【0053】
伝搬路推定誤差推定部1142が、受け取ったシンボルがデータの第1番目OFDMシンボルであるか否かを判定する(ステップS1203)。
ステップS1203で受け取ったシンボルがデータの第1番目OFDMシンボルである場合には、伝搬路推定誤差推定部1142が、パイロットサブキャリアに伝搬路推定誤差推定用のウエイトを乗算し、伝搬路推定誤差成分を推定する(例えば、下記式(46)参照)(ステップS1204)。
【0054】
伝搬路推定誤差補正部1143が、ステップS1204で推定された伝搬路推定誤差成分と、ステップS1201で得られた伝搬路推定結果とを入力して、パイロットサブキャリアの伝搬路推定結果を補正する(例えば、下記式(52)参照)(ステップS1205)。
【0055】
MIMO復調前処理部1144が、ステップS1205で補正された伝搬路推定結果を使用してデータサブキャリア用の復調の前処理を行う(ステップS1206)。
【0056】
一方、ステップS1203で受け取ったシンボルがデータの第1番目OFDMシンボルでない場合には、位相補正部1145が、パイロットサブキャリアの受信信号を使用して位相誤差を推定する(ステップS1207)。位相補正部1145が、ステップS1207で推定された位相誤差を使用してデータサブキャリアの位相誤差を補正する(ステップS1208)。ステップS1207、S1208については、下記の式(53)以降を参照。
【0057】
その後、MIMO復調部1146が、多重化された各ストリームを復調する(ステップS1209)。MIMO復調部1146が、最終シンボルまで復調されたかどうか判定し、最終シンボルまで復調されている場合には処理を終了し、最終シンボルまで復調されていない場合にはステップS1203に戻る(ステップS1210)。
【0058】
次に、各フーリエ変換器が出力する信号について考える。各パスの伝搬遅延時間が異なるマルチパス伝搬路を伝搬した信号は、伝搬遅延時間差の異なる遅延波の影響で周波数選択性フェージングの影響を受ける。この結果、OFDM伝送ではサブキャリアごとに伝搬路応答が異なり、OFDM伝送をMIMOに拡張したMIMO−OFDM伝送においても同様にサブキャリアごとに伝搬路応答が異なることになる。さらに、複数の信号が空間多重されて送信されているため、i番目のフーリエ変換器が出力する第m番目のOFDMシンボルにおける第k番目のサブキャリアの受信信号r(k)(m)は次式(2)で表すことができる。
【0059】
【数2】


【0060】
ただし、hi,j(k)はj番目の空間多重されたストリームの、i番目の受信アンテナのk番目のサブキャリアにおける伝搬路応答を表しており、s(k)(m)はj番目のストリームのk番目のサブキャリアにおける変調信号、n(k)(m)はk番目のサブキャリアにおける熱雑音を表している。また、Dはストリーム数を表しており、本実施形態ではストリーム数が2の場合を例に説明を行うため、D=2となる。
【0061】
さらに、各フーリエ変換器が出力するm番目のOFDMシンボルのk番目のサブキャリアの信号を要素とする受信ベクトル<r(k)(m)>を次式(3)〜(6)のように定義する。
【0062】
【数3】


【0063】
式(3)のように表される受信ベクトルから変調信号、ひいては情報信号を推定するためには式(4)で表される伝搬路行列H(k)を全サブキャリアにわたり推定しなければならない。
【0064】
無線通信では一般に伝搬路応答を推定するために無線受信装置が既知の信号が送信される。ここで、既知シンボルを受信している区間の受信信号ベクトルを<y(k)(m)>と表し、j番目のストリームがmシンボル目にk番目のサブキャリアで送信する既知信号をx(k)(m)とおき、各ストリームが送信する既知信号を要素とするk番目のサブキャリアにおけるmシンボル目の既知信号ベクトルを<x(k)(m)>とおくと、式(2)、式(3)と同様に<y(k)(m)>は次式(7)で表すことができる。
【0065】
【数4】


【0066】
ただし、<v(k)(m)>は既知信号の受信区間のk番目のサブキャリアにおける熱雑音ベクトルを表している。さらに、既知信号受信区間の各シンボルの受信ベクトルを列ベクトルとする行列を次式(8)〜(11)のように定義する。
【0067】
【数5】


【0068】
伝搬路推定部1141は、以上の信号を用いて伝搬路推定を行う。
伝搬路推定部1141は、式(8)より、X(k)の一般化逆行列X(k)−を両辺に右から乗算することにより、サブキャリアごとに伝搬路推定を行うことができる。すなわち、伝搬路推定部1141は、次式(12)、(13)の伝搬路応答行列を求める。
【0069】
【数6】


【0070】
ただし、は複素共役転置を示す。
【0071】
また、MIMO−OFDM伝送における伝搬路推定用既知信号は演算の簡略化および雑音強調の影響を防ぐことを目的として、X(k)の各行ベクトルが直交するように設計される場合がある。このとき、式(13)における一般化逆行列X(k)−は次式(14)で表すことができる。
【0072】
【数7】


【0073】
ただし、EはX(k)の各行ベクトルのノルムの2乗を表しており、直交系列を用いる場合は逆行列の演算が不要になることがわかる。
【0074】
例として、図10に示したフレームフォーマットを考える。図10の一例ではシンボル1061〜1064が伝搬路推定用の既知シンボルに相当し、二つのストリームを分離するため、各ストリームが2シンボルずつ既知シンボルを送信している。また、シンボル1061、1062、1064は各サブキャリアで同一の既知信号を送信しており、シンボル1063のみ全サブキャリアでシンボル1061の既知信号の符号を反転した信号を送信している。ここで、シンボル1061のk番目のサブキャリアの既知信号をx(k)(1)とおくと、X(k)は次式(15)で表すことができる。
【0075】
【数8】


【0076】
よって、一般化逆行列X(k)−は次式(16)で表され、伝搬路推定部1141は伝搬路応答行列を次式(17)に基づき推定することができる。
【0077】
【数9】


【0078】
さらに行列を展開すると、次式(18a)、(18b)はフーリエ変換器1131で得られる信号における各ストリームの伝搬路推定であり、次式(19a)、(19b)はフーリエ変換器1132で得られる信号における各ストリームの伝搬路推定になっていることがわかる。
【0079】
【数10】


【0080】
このように、フーリエ変換器の出力ごとに簡単な四則演算を適用することによって、伝搬路応答をサブキャリアごとに推定することができる。受信アンテナやフーリエ変換器の数が増えた場合も全く同様の処理を追加するのみであり、簡易に拡張することができる。
【0081】
なお、ここでは図10のフレームフォーマットを例にシンボル1063の符号が反転している場合を例に説明したが、伝搬路推定用の既知信号の送信手法は様々な方式が考えられる。例えば、シンボル1063の代わりにシンボル1064のみ符号を反転する方式でも同一の伝搬路推定精度が得られるし、雑音による耐性を高めるため、同一シンボルを複数回送信する方式も考えられる。伝搬路推定部1141は送信される既知シンボルの送信方式に応じた方式で伝搬路応答を推定する。
【0082】
また、図10のようにプリアンブルとしてデータ伝送の前に伝搬路推定用既知信号を全てのサブキャリアで送信する方式以外にデータ伝送中に一部のサブキャリアで既知信号を送信し、順次伝搬路推定を行うサブキャリアを変更していくスキャッタードパイロット方式も考えられる。このような方式においても既知信号を送信しているサブキャリアについては式(8)の関係が成り立つため、当該サブキャリアにおいては前述した方式と同様の方式で伝搬路推定を行うことができる。
【0083】
さらに、一般にMIMO−OFDM伝送では有限の遅延時間の伝搬路を想定して設計がなされているため、伝搬路応答がサブキャリア間で相関を持つ。よって、推定された伝搬路応答を用いてサブキャリア間で平均化を施すことにより、雑音V(k)の影響を抑圧することができる。伝搬路推定部1141はこのような平均化を施しても構わない。
【0084】
<変形例:フーリエ変換前に伝搬路推定を行う場合>
次に、フーリエ変換前で周波数領域の信号に変換する前の時間領域の信号を用いて伝送路推定を行う場合について図13を参照して説明する。図13の無線受信装置は、図11の無線受信装置と伝搬路推定部が異なるだけであり、その他の装置部分は同一である。なお、以下、既に説明した装置部分と同様なものは同一の番号を付してその説明を省略する。
【0085】
伝搬路推定は、図11とは異なり図13に示す伝搬路推定部1301のようにフーリエ変換器1131、1132で周波数領域の信号に変換する前の時間領域の信号を用いて実行する。
【0086】
伝搬路推定部1141が周波数領域でサブキャリアごとに伝搬路応答を推定する際に、図10に示したフレームフォーマットの場合、式(18a)、式(18b)および式(19a)、式(19b)を用いて既知シンボル2シンボルの和や差を求めることによって、特定のストリームの伝搬路応答だけを推定できることを示した。時間領域の推定においても同様に、伝搬路推定用既知信号が送信されている区間は二つのシンボルの差を求めることによってストリーム1のみ抽出でき、二つのシンボルの和を求めることによってストリーム2のみを抽出できる。
【0087】
一例として、受信アンテナ1101で受信し、無線部1111でデジタル信号に変換され、GI除去部1121でガードインターバルが除去された信号におけるストリーム1の伝搬路推定を伝搬路推定部1301が行う方式について説明する。ガードインターバルが除去された伝搬路推定用既知シンボル1シンボル目のkサンプル番目の信号をq(k)、2シンボル目のkサンプル番目の信号をq(k)とおく。上述したように、ストリーム1の信号は二つのシンボルの差をとることにより抽出できるため、次式(20)で表されるz(k)を求める。
【0088】
【数11】


【0089】
ここで、伝搬路推定用既知シンボル1061を逆フーリエ変換し、時間領域の信号に変換した信号のkサンプル目の信号をLp(k)とおくと、z(k)は次式(21)で表すことができる。
【0090】
【数12】


【0091】
ここで、各a(l)はl番目のパスの時間領域での伝搬路応答、Lはパス数を表し、v(k)はz(k)に含まれる熱雑音を表している。このとき、a(0)〜a(L−1)は、全体として伝搬路のインパルス応答を表しており、伝搬路推定部1301がa(0)〜a(L−1)をフーリエ変換することにより周波数領域の伝搬路応答を推定することができる。よって、伝搬路推定部1301は、受信信号z(k)と既知信号Lp(k)からインパルス応答a(0)〜a(L−1)を推定し、フーリエ変換を施すことによって各サブキャリアの伝搬路応答を推定する。インパルス応答の推定法としては、最小自乗法や平均自乗誤差最小法などの手法が挙げられる。また、求めたインパルス応答をフーリエ変換する手法としてはFFTを用いる方式やDFTを用いる方式が考えられるし、フーリエ変換器1131、1132を利用しても構わない。
【0092】
このように、インパルス応答を推定し、各サブキャリアの伝搬路応答を推定する手法は様々な手法が挙げられるが、本実施形態ではいかなる手法を用いても構わない。以上の推定を各受信アンテナで受信した信号の全てのストリームに対して適用することによって各サブキャリアの伝搬路応答を推定できる。
【0093】
以上説明したように、伝搬路推定部1141または1301において各フーリエ変換器出力における全ストリームの伝搬路応答を推定することができる。
【0094】
<位相回転による伝搬路推定への影響>
しかしまだ他の問題がある。前述したように、送信装置では送信するベースバンド信号を無線周波数に変換するために、送信装置で発生した正弦波信号を用い、無線受信装置では受信した無線周波数の信号をベースバンド信号に変換するために無線部で発生した正弦波信号を用いる。このとき、両装置で正確に同一周波数の正弦波を発生させることは非常に困難である。また、無線部内の発信器には位相雑音が含まれ、周波数の揺らぎが生じるため、AFC(Auto Frequency Control)などを用いても正確に周波数を合わせることは困難である。その結果、送信装置と無線受信装置に周波数オフセットが生じ、通信品質劣化の大きな要因となる。周波数オフセットおよび位相雑音による波形ひずみはサブキャリア間の干渉およびOFDMシンボル全体の位相回転という形であらわれる。一般にサブキャリア間の干渉よりもOFDMシンボル全体の位相回転の方が大きな劣化要因となるため、OFDM伝送では一部のサブキャリアで既知信号を送信し、位相回転を補正する処理が一般に行われている。
【0095】
ここで、周波数オフセットおよび位相雑音による位相回転による伝搬路応答の推定誤差について考える。上記式(7)で示した伝搬路推定用既知信号を受信している区間の信号は位相回転の影響を受けるため、次式(22)で表すことができる。
【0096】
【数13】


【0097】
ただし、φはmシンボル目の既知シンボル受信時における位相誤差を表している。よって、上記式(8)に示した既知信号受信区間の受信ベクトルを各列ベクトルとする受信行列は列ごとに異なる位相回転を受けるため、次式(23)で表すことができる。
【0098】
【数14】


【0099】
ただし、diag[]は括弧[]内の文字列を対角成分とする対角行列を表している。
【0100】
以上の信号に対して式(12)で示したような手法で伝搬路推定部1141または1301で伝搬路推定を行うと、推定される伝搬路応答は次式(24)、(25)で表される。
【0101】
【数15】


【0102】
式(24)では雑音項を無視し、伝搬路推定で得られる期待値が示されている。
【0103】
このように、伝搬路推定結果は伝搬路推定用既知シンボルの系列に依存した推定誤差が生じる。ここで、図10に示したフレームフォーマットを例に伝搬路推定のひずみについて考える。図10のように同一の信号系列をシンボル単位で符号を変えることによって送信する場合、シンボル1061におけるk番目のサブキャリアの既知信号x(k)(1)を用いて式(24)はさらに次式(26)のように展開できる。
【0104】
【数16】


【0105】
ただし、QはX(k)からx(k)(1)を取り除き、正負の符号のみを要素とする信号系列を表す行列であり、全サブキャリアで共通の行列となる。さらに、図10の例のようにストリーム間で直交する系列が用いられる場合、Qの各行が相互に直交するため、式(26)は次式(27)、(28)で表すことができる。
【0106】
【数17】


【0107】
式(26)、式(27)から伝搬路推定結果は各伝搬路推定用既知シンボルを受信している際の位相誤差および伝搬路推定用既知信号の信号系列Qに依存したひずみを受けることがわかる。
【0108】
図10のフレームフォーマットの場合、信号系列QおよびΦは次式(29)、(30)で表すことができる。
【0109】
【数18】


【0110】
このように、行列Φの非対角成分が値を持つことから、推定した伝搬路応答は他のストリームの伝搬路応答を干渉成分として含むことがわかる。
【0111】
上記の伝搬路推定誤差行列Φは周波数オフセットおよび位相雑音が生じている中で複数のシンボルにまたがり伝搬路推定を行うことによって生じる推定誤差であり、単一のOFDMシンボルを受信している場合には生じない。また、式(24)〜式(28)から、この伝搬路推定誤差行列Φは全サブキャリアで共通の推定誤差であることがわかる。
【0112】
伝搬路推定誤差推定部1142は伝搬路応答の推定誤差について上述の特徴をふまえ、本実施形態ではデータシンボルのパイロットサブキャリアの信号を利用して伝搬路推定誤差を推定し、伝搬路推定誤差補正部1143は伝搬路推定結果を補正する。
伝搬路推定誤差推定部1142がパイロットサブキャリアを用いて伝搬路応答の推定誤差を推定する方式について以下に詳細を述べる。一例として、図9に示すように、−21、−7、7、21番目の四つのサブキャリアがパイロットサブキャリアとして既知信号を送信している場合を考える。パイロットサブキャリアにおけるm番目のOFDMシンボルの受信信号は式(1)および伝搬路応答、推定した伝搬路応答、伝搬路推定誤差を用いて次式(31)〜(34)で表すことができる。
【0113】
【数19】


【0114】
ここで、Ψはm番目のOFDMシンボルにおける位相誤差を表している。式(31)において推定する未知係数はα、β、γ、δの四つであるのに対し、式(34)のP(k)(m)のランクは2であり、最小ノルム解しか存在しない。
【0115】
そこで、複数のパイロットサブキャリアを用いて推定を行うことを考える。<r(k)(m)>とサブキャリア番号k’のパイロットサブキャリアにおける受信信号<r(k’(m)>を結合し、ベクトルの次元拡大を行ったベクトル<r(m)>を次式(35)、(36)のように定義する。
【0116】
【数20】


【0117】
ここで、サブキャリア番号kおよびサブキャリア番号k’のパイロットサブキャリアでそれぞれ各ストリームから同一の信号を送信する場合を考える(例:<p(k)(m)>=[1 1]、<p(k’)(m)>=[−1 −1])。このとき、二つのパイロット行列P(m)のランクは2であり、単一のパイロットサブキャリアを用いて推定する場合と同一の問題が生じる。
【0118】
一方、サブキャリア番号k’のパイロットサブキャリアで各ストリームから異なる符合の信号(例:<p(k)(m)>=[1 1]、<p(k’)(m)>=[1 −1])が送信されているとする。この場合、P(m)のランクは4になり、最小二乗法などの推定法を用いて<φ>を推定することができる。
【0119】
以上説明したように、パイロットサブキャリアを用いて伝搬路応答の推定誤差を求める場合、推定に用いるパイロットサブキャリアのパイロット行列から生成されるパイロット行列P(m)のランクが4(ストリーム数の二乗)に等しくなるようなパイロット信号が送信されている必要がある。
【0120】
本実施形態ではデータシンボルの1シンボル目の全パイロットサブキャリアを用いて推定を行うことを想定し、次式(37)で表されるパイロット行列のランクが上述の条件を満たすようにパイロットサブキャリアから信号が送信されているものとする。
【0121】
【数21】


【0122】
ただし、パイロットサブキャリアの配置は図9に示したものと同一である。
【0123】
以上のパイロットサブキャリアの受信ベクトルを接続し、ベクトルの次元拡大を行った受信ベクトル<r(1)>を次式(38)のように定義する。
【0124】
【数22】


【0125】
このとき、受信ベクトルは各サブキャリアの伝搬路応答、各パイロットサブキャリアのパイロット行列、伝搬路推定の誤差成分を用いて次式(39)のように表される。
【0126】
【数23】


【0127】
式(39)から、<φ>は最小自乗法を用いて推定できる(次式(40)、(41))。
【0128】
【数24】


【0129】
よって、伝搬路推定誤差推定部1142は、伝搬路推定部1141または1301が推定した伝搬路応答を用いてパイロットサブキャリアごとに次式(42)〜(45)で示される伝搬路推定誤差成分抽出用のウエイトを計算する。
【0130】
【数25】


【0131】
ただし、W(k)(k=−21,−7,7,21)はサブキャリア番号kのパイロットサブキャリア用のウエイトを表している。
【0132】
次に、伝搬路推定誤差推定部1142は、データの第1シンボルを受信した際に、各パイロットサブキャリアに求めたウエイト(式(42)〜式(45))をそれぞれ乗算し、乗算結果を加算することによって次式(46)により伝搬路推定誤差成分α、β、γ、δを推定する。
【0133】
【数26】


【0134】
得られたα、β、γ、δを用いて式(32)に従い、Φ−1を求める。以上のようにして、伝搬路推定誤差推定部1142は、周波数オフセットおよび位相雑音に起因する伝搬路応答の推定誤差を推定することができる。
【0135】
<伝搬路推定誤差推定部1142:伝送路推定用既知シンボルが直交している場合>
一方、図10に示したフレームフォーマットのように、伝搬路推定用既知シンボルが直交し、伝搬路推定誤差行列Φが式(28)や式(30)のように表される場合を考える。このとき、伝搬路推定誤差成分の逆行列は対角項がそれぞれ等しく、非対角項もそれぞれ等しいため、次式(47)のように表すことができる。
【0136】
【数27】


【0137】
よって、伝搬路推定用既知信号として直交系列が送信されている場合はαおよびβの2値を推定することができれば伝搬路推定誤差を推定することができる。よって、式(33)に示した<φ>は次式(48)のように書き換えることができる。
【0138】
【数28】


【0139】
このような場合にパイロットサブキャリアで送信されるパイロット信号に要求される条件ついて考える。パイロットサブキャリアにおいて、全ストリームでパイロット信号を送信するのではなく、次式(49)で表すように特定のストリームからのみパイロット信号を送信するとする。
【0140】
【数29】


【0141】
このとき、式(31)で表されるパイロットサブキャリアの受信信号は次式(50)で表すことができる。
【0142】
【数30】


【0143】
よって、推定した伝搬路応答H(k)を用いてZF(Zero-Forcing)やMMSE(Minimum Mean Square Error)でαおよびβを単一のパイロットサブキャリアのみを用いて推定することができる。
【0144】
一方、全てのストリームからパイロット信号を送信する場合を考える。サブキャリア番号kのパイロットサブキャリアにおけるパイロット行列P(k)(m)は次式(51)で表すことができる。
【0145】
【数31】


【0146】
よって、伝搬路推定用既知信号が直交系列の場合、各サブキャリアのパイロット行列を式(37)のように並べたパイロット行列P(m)のランクはストリーム数と同数であれば式(40)に示したように伝搬路応答の推定誤差を推定することができる。
【0147】
このように、パイロットサブキャリアの送信方式によって必要なサブキャリア数が異なる。ただし、上述した説明をまとめると、推定に必要なサブキャリア数は伝搬路推定用既知シンボルの系列によって以下のように分類することができる。
(1)伝搬路推定用既知信号が直交系列の場合:パイロット行列P(m)のランクがストリーム数と同数になるパイロットサブキャリア数
(2)伝搬路推定用既知信号が直交系列でない場合:パイロット行列P(m)のランクがストリーム数の二乗と同数になるパイロットサブキャリア数
以上、パイロットサブキャリアが図9に示す配置であり、パイロットサブキャリア数が4の場合を例に伝搬路推定誤差を推定する方式について説明したが、本実施形態におけるパイロットサブキャリア数を4に制限するものではない。パイロットサブキャリア数はいくつでも構わない。式(37)に示すように各パイロットサブキャリアで送信する信号を用いてパイロット行列を生成し、生成される行列のランクがストリーム数以上であればいかなるパイロットサブキャリア数、パイロットの系列を用いても構わない。
【0148】
以上説明したように、伝搬路推定誤差推定部1142で推定されたejΨ1Φ−1を用いてパイロットサブキャリアを含め、信号を送信しているサブキャリアの伝搬路応答を伝搬路推定誤差補正部1143で補正する。
【0149】
推定された誤差を含む伝搬路応答Hハット(伝搬路推定部1141、1301の出力)と真の伝搬路応答H(伝搬路推定誤差補正部1143の出力)には式(24)の関係が成り立つため、伝搬路推定誤差補正部1143は、次式(52)に示すように推定された全サブキャリアの伝搬路応答にejΨ1Φ−1を乗算し、補正を行う。
【0150】
【数32】


【0151】
ここで、1シンボル目のデータシンボルにおけるパイロットサブキャリアを用いて伝搬路応答の推定誤差を推定する場合を想定しているため、Ψが乗算されている。
【0152】
<MIMO復調前処理部1144>
本実施形態において、MIMO復調方式をいかなる方式にも制限しない。MIMO伝送された信号を復調することができればZFやMMSEなどの空間フィルタリングを用いる方式やOSIC(Ordered Successive Interference Cancellation)などの空間フィルタリングとキャンセラーを併用させる方式や最尤判定方式および最尤判定の演算量を削減するsphere decodingやK-Best、M-algorithmや、上記以外のいかなる方式を用いても構わない。
【0153】
MIMO復調前処理部1144は、MIMO復調にあわせた前処理を行う。例えば、ZFを用いてMIMO復調を行う場合は伝搬路推定誤差補正部1143で補正された伝搬路応答を用いて全てのデータサブキャリアのウエイトをZF基準で計算し、各サブキャリアのストリームごとに乗算するメトリックの重み係数を計算する。また、sphere decodingやM-algorithmを用いる場合は伝搬路推定誤差補正部1143で補正した伝搬路応答を用いて全てのデータサブキャリアの伝搬路応答をQR分解またはZF基準のウエイトの計算および伝搬路応答とその複素共役行列の積をCholesky分解する。
【0154】
以上説明したように、MIMO復調前処理部1144は伝搬路推定誤差補正部1143で補正した伝搬路応答を用いてMIMO復調を行うための前処理を行う。なお、本実施形態におけるMIMO復調手法は上記手法に制限するものではなく、MIMO復調前処理部1144で施す処理も上記の処理に制限するものではない。その他、MIMO復調に必要な処理があれば適用しても構わないし、処理を施す必要が無ければ特に何も処理を行わなくても構わない。MIMO伝送された信号を復調することができればいかなる処理を施しても構わない。
【0155】
<位相補正部1145>
なお、前述した周波数オフセットおよび位相雑音の影響で、受信信号はシンボルごとに異なる位相誤差を受けている。よって、MIMO復調を行う前に位相補正部1145でシンボルごとにパイロットサブキャリアの信号を用いて位相誤差を補正する。
【0156】
1シンボル目の信号は伝搬路推定誤差推定部1142で推定される誤差成分に位相誤差も含まれており、伝搬路推定誤差補正部1143で伝搬路の方に補正がなされているため、補正を行う必要はなく、2シンボル目から補正を行う。
【0157】
式(22)と同様に、データシンボルにおいてもシンボルごとに位相誤差が生じるため、式(3)で表される受信ベクトルは次式(53)で表すことができる。
【0158】
【数33】


【0159】
なお、パイロットサブキャリアで送信される信号は無線受信装置で既知の信号なので、レプリカ信号を次式(54)のように生成することができる。
【0160】
【数34】


【0161】
パイロット信号のレプリカ信号の複素共役ベクトルと受信信号の内積を次式(55)のように求める。
【0162】
【数35】


【0163】
伝搬路推定誤差補正部1143で伝搬路推定が正しく補正されているとすると、式(55)の右辺第1項の括弧でくくられた部分はエルミート形式になるため、実数となる。また、右辺第2項の雑音成分が無視できるとすると、式(55)は次式(56)、(57)のように書きなおすことができる。
【0164】
【数36】


【0165】
(k)(m)は実数に1シンボル目の位相誤差の逆特性が乗算されているので、式(56)の偏角を求めることにより第1シンボルの位相誤差を基準にしたmシンボル目の位相誤差を推定することができる。伝搬路応答の推定誤差を補正することによって、各サブキャリアの位相は1シンボル目の位相誤差に合わされているため、このように1シンボル目の位相誤差を基準にした位相誤差を求めることによって受信信号を推定された伝搬路応答の基準位相に合わせることができる。
【0166】
このように、一つのパイロットサブキャリアのみを用いて位相誤差を推定することができるが、雑音の影響を軽減するため複数のパイロットサブキャリアを用いて推定を行っても構わない。パイロットサブキャリアの本数および配置が図9のように示される場合、次式(58)にしたがって推定を行うことによって、パイロットサブキャリアを用いて位相誤差を推定することができる。
【0167】
【数37】


【0168】
ただし、arg()は偏角を表しており、Ψ’は1シンボル目の位相誤差を基準にしたmシンボル目の位相誤差を表している。
【0169】
以上のようにして、位相補正部1145は、推定した位相誤差の逆特性を全データサブキャリアに乗算することによって位相誤差の補正を行う。
【0170】
ここで、一つのパイロットサブキャリアを用いて推定を行う方式、全てのパイロットサブキャリアを用いて推定を行う方式について説明したが、推定に用いるパイロットサブキャリアの数をこれらに制限するものではない。二つのパイロットサブキャリアを用いても構わないし、三つのパイロットサブキャリアを用いて推定を行っても構わない。式(58)に従い、推定に用いるパイロットサブキャリア数だけ和を求めれば推定を行うことができる。
【0171】
また、レプリカ信号を生成して位相誤差を推定する手法について説明したが、パイロットの送信手法によっては次式(59)のように前のシンボルとの差分を求めても位相誤差を推定することができる。
【0172】
【数38】


【0173】
このように、位相補正部1145は、前のシンボルとの差分を求めることによって位相誤差を推定しても構わない。その他、過去に推定した位相誤差やレプリカ信号と受信信号の内積を、忘却係数を用いて再帰的に加算することによって推定を行っても構わない。
以上のようにして位相補正部1145で位相誤差が補正された受信信号に対し、MIMO復調前処理部1144で処理されたウエイト等を用いてMIMO復調部1146でMIMO復調を行う。
【0174】
MIMO復調前処理部1144について説明した際に述べたように、本実施形態においてMIMO復調部1146はいかなる方式にも制限しない。MIMO伝送された信号を復調することができればいかなる手段を用いても構わない。
【0175】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。
【0176】
(第2の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成は図11または図13に示した第1の実施形態における無線受信装置の構成と同一であり、送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で発生する位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて補正する点も第1の実施形態と同様である。
【0177】
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、伝搬路推定誤差を求めるためのパイロットサブキャリアごとのウエイトの計算手法である。すなわち、伝搬路推定誤差推定部1142内のウエイト計算手法が異なる。第1の実施形態では式(42)〜式(45)にしたがってパイロットサブキャリアごとのウエイトを求めた。この手法ではSNR(Signal power to Noise Power Ratio)が高く、雑音電力に対して信号電力が十分大きい場合は問題ないが、SNRが小さくなると、各パイロットサブキャリアの伝搬路応答次第で雑音を強調してしまう可能性がある。本実施形態におけるウエイトは、以上の問題を鑑み、雑音強調を防ぎ、低SNR領域でも伝搬路推定のひずみを高い精度で推定できるウエイトを提供する。
【0178】
<ウエイト計算>
以下に、本実施形態におけるウエイトの詳細とウエイト計算手法について説明する。
第2の実施形態では、第1の実施形態のようにZF基準でウエイトを求めると雑音強調が生じる可能性があるため、MMSE基準でウエイトを求める。まずは、伝搬路推定誤差成分ではなく、送信されたパイロット信号をMMSE基準のウエイトで抽出するためのウエイトについて考える。このとき、ウエイトの計算方法として、受信信号の自己相関行列と受信信号と参照信号の相互相関行列を計算して、ウエイトを求める方式と、推定した伝搬路応答からウィナー解を近似的に求める方式が挙げられる。
【0179】
まずは、自己相関行列と相互相関行列を用いる方式から説明する。
サブキャリア番号kのパイロットサブキャリアの信号を抽出するためのウエイトをW(k)とおく。このとき、MMSE基準のウエイトは次式(60)、(61)、(62)により求めることができる。
【0180】
【数39】


【0181】
ただし、E[]はアンサンブル平均を表している。図10に示したフレームフォーマットの例では伝搬路推定用既知シンボルが2シンボル送信されるため、その2シンボルを用いて式(61)、式(62)はそれぞれ次式(63)、(64)のように計算する。
【0182】
【数40】


【0183】
式(63)、式(64)を用いて式(60)を計算することによって、パイロット信号を抽出するMMSE基準のウエイトを求めることができる。なお、ここでは2つの伝搬路推定用既知シンボル受信区間の信号の単純な平均を求めたが、平均処理はシンボルごとに加重合成を行うことによって求めても構わない。また、ここでは相関行列を限られたシンボル数の中で直接計算してウエイトを求めたが、LMS(Least Mean Square)やRLS(Recursive Least Square)のように逐次更新を行うことによってウエイトを計算しても構わない。
【0184】
その他、ウエイトの計算はウィナー解を用いて計算することもできる。式(61)および式(62)のアンサンブル平均の結果、各相関行列はそれぞれ次式(65)、(66)、(67)で表すことができる。
【0185】
【数41】


【0186】
ただし、Rnnは対角項が各無線部から出力される信号に含まれる熱雑音電力の対角行列であり、σおよびσはそれぞれ無線部1111、1112の出力に含まれる熱雑音電力を表している。
【0187】
式(65)から、この方式でMMSE基準のウエイトを求めるためには雑音電力を推定しなければならないことがわかる。雑音電力の推定法はフレームフォーマットによって様々な方式が考えられる。図10のフレームフォーマットの一例ではシンボル1011、1012やシンボル1021、1022がそれぞれ周期信号になっているため、周期に応じてシンボル間の差分を計算することにより雑音信号のみ抽出することができ、抽出された雑音信号から電力を直接計算することができる。また、シンボル1031、1032またはシンボル1041、1042の復調結果を用いてレプリカ信号を生成し、受信信号からレプリカ信号を引くことにより雑音信号のみを抽出し、雑音電力を推定することができる。このように、フレームフォーマットによって雑音電力を推定する手法は様々な方式が考えられ、本実施形態における雑音電力推定はいかなる手法を用いても構わない。上記二つのうちいずれかの手法を用いても構わないし、全く異なる手法を用いても構わない。雑音電力を推定することができればいかなる手法を用いても構わない。
【0188】
図10のフレームフォーマットの信号に対し、式(65)、式(66)に従ってウエイトを求めるとすると、ウエイトは次式(68)のように得られる。
【0189】
【数42】


【0190】
また、図10のフレームフォーマットの場合は式(28)、式(29)、式(30)の関係が成り立つため、Φはユニタリ行列をスカラー倍したものとなり、ウエイトはさらに次式(69)のように展開できる。
【0191】
【数43】


【0192】
このウエイトは伝搬路推定のひずみがない場合のウエイトに右からΦを乗算したものであり、このウエイトにより抽出されるパイロットサブキャリアの信号は次式(70)で表すことができる。
【0193】
【数44】


【0194】
この結果、式(37)で示されるパイロット行列のランクがストリーム数以上の場合、伝搬路推定誤差推定部1142が、第1の実施形態と同様にパイロットサブキャリアの受信信号を用いて式(47)で示される伝搬路推定誤差成分を推定することができる。
【0195】
一方、第1の実施形態と異なり、式(70)のようにウエイトを乗算して抽出した信号に含まれる不要信号は相関を有している。また、サブキャリアごとに伝搬路応答が異なるため、ウエイト適用後の不要信号成分の電力も異なる。よって、ウエイト適用後の各パイロットサブキャリアの信号を式(35)や式(39)のように結合して最小二乗法を適用しても、不要信号の影響で精度の高い推定を行うことはできない。
【0196】
そこで、不要信号の相関行列を用いて一般化最小二乗法を適用することを考える。MMSEを適用した際の不要信号の相関行列Ree(k)は次式(71)で表されることが知られている。
【0197】
【数45】


【0198】
ここで、Iはストリーム数の次元の単位行列である。式(71)の不要信号の相関行列は、伝搬路推定のひずみの影響を受けるため、前述のように求めたウエイトおよび推定した伝搬路応答を用いて式(71)を計算すると、次式(72)のように伝搬路推定誤差行列Φの影響を受けることがわかる。
【0199】
【数46】


【0200】
一般化最小自乗法では式(33)または式(48)の<φ>を、式(34)や式(51)で表されるサブキャリア番号kのパイロット行列を用いて次式(73)に従い推定する。
【0201】
【数47】


【0202】
(k)(m)のランクがストリーム数と同数の場合は上式のように単一のサブキャリアの信号のみで推定を行えるが、ランクが足りない場合は式(38)と同様にウエイト適用後の各パイロットサブキャリアの信号を接続してベクトルの次元拡大を行うことによって推定することができる。このとき、式(73)に示した一般化最小自乗法に基づいて推定を行うと、次式(74)、(75)のようにして推定を行うことができる。
【0203】
【数48】


【0204】
ここで、不要信号の相関行列の逆行列について考える。不要信号の相関行列は、式(72)で表されるため、逆行列の補助定理を用いて式を次式(76)のように展開することができる。
【0205】
【数49】


【0206】
同様に、式(68)で示されるウエイト行列も逆行列の補助定理を用いることによって次式(77)のように表すことができる。
【0207】
【数50】


【0208】
式(76)、式(77)を式(74)に代入することによって次式(78)、(79)を得る。
【0209】
【数51】


【0210】
よって、第1の実施形態と同様に、伝搬路推定誤差を抽出するためのウエイトをパイロットサブキャリアごとに求め、データの第1シンボルにウエイトを乗算し、全サブキャリアの和を求めることによって伝搬路推定のひずみ成分を推定することができる。このとき、各サブキャリアのウエイトは次式(80)〜(83)で表すことができる。これらは、第1の実施形態での式(42)〜(45)と同一である。
【0211】
【数52】


【0212】
この結果、本実施形態において用いられる伝搬路推定誤差を抽出するための各パイロットサブキャリアのウエイトは第1の実施形態と全く同一の式の構成で表せることがわかる。第1の実施形態におけるウエイトとの差異は第1の逆行列G−1の計算手法のみである。第1の実施形態における式(40)と本実施形態における式(78)を比べると、本実施形態では雑音の相関行列の逆行列が含まれており、これによって雑音強調を防ぐ効果がある。その他の処理は第1の実施形態と全く同一であり、伝搬路推定部1141で得られる伝搬路推定結果を用い、伝搬路推定誤差推定部1142で雑音電力、1シンボル目のパイロットの系列からパイロットサブキャリアごとに異なるウエイト式(80)〜式(83)を計算し、1シンボル目のパイロットサブキャリアにそれぞれ乗算する。ウエイトが乗算された各パイロットサブキャリアの信号を合成することにより、伝搬路推定誤差成分αおよびβを推定し、Φ−1を求める。
【0213】
以上のようにして推定されたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差補正部1143で伝搬路推定を補正する手法、MIMO復調前処理部1144、位相補正部1145、MIMO復調部1146の動作については第1の実施形態と全く同一なため詳細な説明は省略する
以上説明したように、本実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。このとき、雑音電力を加味して伝搬路推定誤差を推定することにより、低SNR領域においても雑音強調の影響を防ぐことができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。
【0214】
(第3の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成は図11または図13に示した第1または第2の実施形態における無線受信装置の構成と同一であり、送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で生じる位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて補正する点も第1または第2の実施形態と同様である。
【0215】
本実施形態が第1または第2の実施形態と異なる点は、伝搬路推定誤差を求めるためのパイロットサブキャリアごとのウエイトの計算手法である。すなわち、伝搬路推定誤差推定部1142内のウエイト計算手法が異なる。
【0216】
第1の実施形態では式(42)〜式(45)、第2の実施形態では式(80)〜式(83)にしたがってパイロットサブキャリアごとのウエイトを求めている。これらの手法では、全サブキャリアを通して共通の逆行列G−1が用いられるため逆行列演算の負荷は軽減されるが、推定に用いる全サブキャリアの伝搬路応答が必要なため、当該サブキャリア全ての伝搬路応答が求まらないとウエイトの計算ができず、処理遅延を生じる可能性があることが問題として挙げられる。
【0217】
第3の実施形態では以上の問題点に鑑み、伝搬路推定誤差を推定するためのサブキャリアごとのウエイトを当該サブキャリア以外のサブキャリアの伝搬路応答を用いずに計算することによって、処理遅延を防ぐ方式を提案する。
【0218】
以下に本実施形態における伝搬路推定誤差推定部1142の動作について説明する。
式(60)に示したようにMMSE基準のウエイトを用いて式(70)のようにパイロットサブキャリアの受信信号にウエイトを乗算することにより、送信した系列と伝搬路推定誤差成分の逆行列の積を抽出することができる。
【0219】
ここで、全パイロットサブキャリアのウエイト適用後の信号ベクトルを列ベクトルとする行列を次式(84)のように定義する。
【0220】
【数53】


【0221】
このとき、式(84)におけるパイロット信号ベクトルを列ベクトルとする行列のランクがストリーム数に等しい場合、当該行列の一般化逆行列を式(84)の両辺に右から乗算することによって、次式(85)、(86)により、ejΨmΦ−1を推定することができる。
【0222】
【数54】


【0223】
ここで、式(84)の一般化逆行列をΠとおき、Πのi行目の行ベクトルを<Π>とおく。このとき、1シンボル目のパイロットサブキャリアを用いて次式(87)に示すようにサブキャリアごとにウエイト乗算した信号の和を求めることによってejΨ1Φ−1を推定することができる。
【0224】
【数55】


【0225】
このとき、Πはパイロット信号として無線受信装置が既知の信号が送信されるため、予め計算しておくことができる。したがって、Πの計算のために処理遅延が生じることはない。よって、各サブキャリアのウエイトは当該サブキャリアの伝搬路推定が完了していれば直ちに実行することができ、全サブキャリアの伝搬路推定が完了するのを待つ必要がない。
【0226】
一方、式(84)で示されるパイロット信号ベクトルを列ベクトルとして並べた行列の各行が直交している場合を例として考える。このとき、一般化逆行列は簡易な構成で表されるため、式(85)は次式(88)のように書き直すことができる。
【0227】
【数56】


【0228】
また、伝搬路推定用既知信号が図10に示したようなフレームフォーマットで送信されている場合は、式(47)のように伝搬路推定誤差成分の逆行列が表されるため、次式(89)のように各パイロットサブキャリアへのウエイト乗算をスカラー倍して合成するだけで推定ができ、推定をさらに簡易化することができる。
【0229】
【数57】


【0230】
さらに、各パイロット信号が+1または−1のいずれかのみを送信している場合は各パイロットサブキャリアのウエイト出力を送信したパイロット信号の系列に合わせて和または差を求めるだけなので、より一層推定を簡略化できる。
【0231】
一方、次式(90)で示すように伝搬路推定用既知信号があるシンボルでは特定のストリームからのみ信号が送信される場合をフォーマットの一例として考える。
【0232】
【数58】


【0233】
このとき、伝搬路推定誤差行列Φと、サブキャリア番号kのパイロットサブキャリアのパイロット行列P(k)(1)はそれぞれ次式(91)、(92)で表すことができる。
【0234】
【数59】


【0235】
サブキャリアごとに、式(90)のプリアンブル系列と以下の式(93)で表す系列のいずれかの系列を伝搬路推定用既知信号として送信する。式(93)で表す系列を伝搬路推定用既知信号として送信する場合にはサブキャリアごとにパイロット行列は式(92)の場合と異なり、次式(93)、(94)のように表すことができる。
【0236】
【数60】


【0237】
以上のような場合も、伝搬路推定用既知シンボルに応じて上述したパイロット行列を適切に設定することにより、次式(95)に示すように各パイロットサブキャリアの受信信号のウエイト出力を合成することによって簡易に推定を行うことができる。
【0238】
【数61】


【0239】
ここで、パイロット行列が式(92)または式(94)で表される場合、P(k)(1)とウエイト行列の複素共役転置の積はウエイト行列W(k)の各列ベクトルをパイロット行列の対角成分、または非対角成分の複素共役値でスカラー倍するだけの演算であり、パイロット信号は無線受信装置で既知の信号なので、予めウエイト行列に次式(96)〜(99)で示すように反映させることもできる。
【0240】
【数62】


【0241】
よって、伝搬路推定誤差成分の抽出は各パイロットサブキャリアにおける1シンボル目の受信信号に式(96)〜式(99)に示したウエイトをそれぞれ乗算し、加算するだけで推定を行うことができる。
【0242】
以上説明したように、伝搬路推定用既知信号の信号系列にしたがって、ウエイトの演算は異なるものの、パイロットサブキャリアの受信信号にウエイトを乗算することによって伝搬路推定誤差を抽出することができ、かつ他のサブキャリアの伝搬路応答に影響されずに各パイロットサブキャリアのウエイトを求めることができるため、ウエイトを計算する際の処理遅延を小さくすることができる。
【0243】
一方、これまで各パイロットを抽出するためのウエイトとしてMMSE基準のウエイトを想定して説明を行ったが、MMSEと同様に一般的なウエイト計算法であるZF基準のウエイトを用いる場合を考える。ZF基準のウエイトは次式(100)で表すことができる。
【0244】
【数63】


【0245】
伝搬路推定が式(24)に示すようにH(k)とΦの積で表されるとき、式(100)のウエイトは次式(101)のように書き表すことができる。
【0246】
【数64】


【0247】
以上のウエイトを式(70)と同様にパイロットサブキャリアの受信信号に乗算することによって、次式(102)を得る。
【0248】
【数65】


【0249】
このように、雑音成分の影響はMMSEとZFで異なるものの、伝搬路推定誤差の逆行列と送信系列の積が抽出される点は両者に差がないことがわかる。よって、本実施形態で説明した方式と全く同様の手法がウエイトをZF基準で求めても実施できる。
【0250】
また、本実施形態では図10のフレームフォーマットや式(90)、式(93)で示されるような伝搬路推定用既知信号を送信する場合を例に説明したが、本実施形態による伝搬路推定用既知信号をこれらの信号に制限するものではない。
【0251】
以上のようにして推定されたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差補正部1143で伝搬路推定を補正する手法、MIMO復調前処理部1144、位相補正部1145、MIMO復調部1146の動作については第1の実施形態と全く同一なため詳細な説明は省略する。
【0252】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。このとき、伝搬路推定誤差を抽出するためのウエイトを各サブキャリアの伝搬路応答およびパイロット系列、雑音電力からのみ計算することにより他のサブキャリアの伝搬路応答を必要としないため、ウエイトを計算する際の処理遅延を小さくすることができる。
【0253】
(第4の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成は図11または図13に示した第1及至第3の実施形態における無線受信装置の構成と同一であり、送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で生じる位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて補正する点も第1及至第3の実施形態と同一である。
【0254】
本実施形態が第1及至第3の実施形態と異なる点は伝搬路推定誤差を求めるためのパイロットサブキャリアごとのウエイトの計算手法である。すなわち、伝搬路推定誤差推定部1142内のウエイト計算手法が異なる。すなわち、伝搬路推定誤差推定部1142内のウエイト計算手法が異なる。
【0255】
第3の実施形態では各パイロットサブキャリアのウエイト計算の処理遅延を小さくするため、各パイロットサブキャリアのウエイトを計算する際に他のサブキャリアの伝搬路応答を必要としない方式でウエイトを計算していた。しかし、この手法では処理遅延は小さくすることができるが、ウエイト適用後の出力を用いて伝搬路推定誤差成分を抽出する際に各サブキャリアの伝搬路特性が反映されていないため、周波数選択性フェージング環境下でサブキャリアごとに特性が異なる場合、特性の良いサブキャリアも特性の悪いサブキャリアも同一の比重で計算されるため、特性が劣化する場合がある。
【0256】
本実施形態では以上の問題に鑑み、伝搬路推定誤差を推定するためのサブキャリアごとのウエイトを当該サブキャリア以外の伝搬路応答を用いずに計算し、かつ伝搬路推定誤差推定時に各サブキャリアの伝搬路応答の特性を反映させることによって特性の劣化を防ぐ方式を用いる。
【0257】
以下に本実施形態における伝搬路推定誤差推定部1142の動作について説明する。
式(60)(第2の実施形態)や式(100)(第3の実施形態)で示したウエイトを各サブキャリアに乗算することによって、式(70)に示すように伝搬路推定誤差行列の逆行列Φ−1と送信したパイロットベクトルの積を抽出することができ、各パイロットの出力を用いてΦ−1を推定できる。
【0258】
ここで、式(37)で示されるパイロット行列において、各列ベクトルが相互に直交する信号を各パイロットサブキャリアで送信している場合を考える。なお、このような信号が送信されているパイロット信号を直交パイロットと呼ぶことにする。
【0259】
このような直交パイロットが送信されている場合は、第3の実施形態で示したように各パイロットサブキャリアのウエイト乗算後の出力の和や差を求めることによって伝搬路応答の推定誤差成分を推定することができる。また、第1の実施形態で示したように必要なパイロットサブキャリア数はストリーム数が2の場合は1または2になるため、パイロットサブキャリア数が2よりも多い場合はパイロット信号ベクトルが線形従属になる。
【0260】
一例として、ストリーム数が2、パイロットサブキャリア数が図9に示すように4本、各パイロットサブキャリアのパイロット信号ベクトルが次式(103)で表される場合を考える。
【0261】
【数66】


【0262】
このとき、次式(104)、(105)で示される関係が成立することからサブキャリア番号−21と7のパイロット信号ベクトルは線形従属であり、同様にサブキャリア番号−7と21のパイロット信号ベクトルは線形従属である。
【0263】
【数67】


【0264】
このように、直交パイロットを用いており、パイロット信号ベクトルが線形従属になる組み合わせが存在する場合は、本実施形態では線形従属になる組み合わせ同士を最大比合成した後、第3の実施形態で示したように和や差を計算し伝搬路応答の推定誤差成分を求める。この結果、周波数選択性フェージング環境においてサブキャリアごとに伝搬路応答に差異がある場合、周波数ダイバーシチの効果が得られ、サブキャリア間の特性差による劣化を抑圧することができる。
【0265】
以下に、線形従属の組み合わせを最大比合成する手法について説明する。
各サブキャリアのパイロット信号を抽出するウエイトとして式(68)に示すようなMMSE基準のウエイトを用いる場合を考える。このとき、j番目のストリームを抽出する際の最大比合成係数は誤差の二乗平均値でウエイト出力を規格化することにより得られるため、次式(106)で表される。
【0266】
【数68】


【0267】
ここで、<w(k)>はウエイト行列のj列目の列ベクトルであり、<h(k)>は式(24)で示される推定した伝搬路応答行列のj列目の列ベクトルを表している。
【0268】
一方、各パイロットサブキャリアのパイロット信号を抽出するウエイトとして式(100)で示すようにZF基準のウエイトを用いる場合は誤差の二乗平均値で規格化するために次式(107)の係数を用いることができる。
【0269】
【数69】


【0270】
以上の係数を用いて合成を行うと、伝搬路応答によって出力されるパイロット信号の大きさにばらつきが生じてしまうため、合成を行うサブキャリア内で規格化を行う。式(103)で示されるパイロット信号が用いられている場合、次式(108)〜(111)のように規格化を行う。
【0271】
【数70】


【0272】
以上の規格化された係数を用いて抽出したパイロット信号を合成すると、次式(112)、(113)が得られる。
【0273】
【数71】


【0274】
ここで、式(108)〜式(111)に示した最大比合成用の係数を予めウエイトに乗算し、受信信号に乗算するウエイトは最大比合成用の係数で重み付けされたものを用いても構わないし、ウエイト乗算後の信号に対して最大比合成用の係数をあらためて乗算しても構わない。式(112)や式(113)で示した出力が得られるのであれば、最大比合成用係数を乗算する対象や手順はいかなる手法を用いても構わない。
【0275】
さらに、式(112)と式(113)の和を求めることによってΦ−1の第1列を、差を求めることによってΦ−1の第2列を次式(114)、(115)のように求めることができる。
【0276】
【数72】


【0277】
なお、伝搬路推定用既知信号として直交系列を用いている場合は式(47)に示すようにΦ−1の第1列のみを推定すれば第2列も求めることができるため、式(114)に示す式(112)と式(113)の和のみを計算すればよい。
【0278】
以上、式(103)で示すパイロット信号ベクトルを用いて説明を行ったが、本実施形態におけるパイロット信号ベクトルは式(103)に制限されるものではない。直交パイロットを用いていればどのような系列を用いても構わず、各パイロットサブキャリアからは特定のストリームからのみパイロット信号を送信しても構わない。また、パイロットサブキャリアの本数も4本に制限されるものではなく、線形従属な組み合わせが存在するパイロット数であればいかなる本数でも構わない。
【0279】
以上のようにして推定されたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差補正部1143で伝搬路推定を補正する手法、MIMO復調前処理部1144、位相補正部1145、MIMO復調部1146の動作については第1の実施形態と全く同一なため詳細な説明は省略する。
【0280】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。このとき、伝搬路推定誤差を抽出するためのウエイトを推定に用いる全サブキャリアの伝搬路応答を考慮して計算する必要がないため、ウエイトを計算する際の処理遅延を小さくすることができる。また、最大比合成により複数のパイロットサブキャリアの信号を合成することによってサブキャリアごとに伝搬路応答が異なる際の特性差によって生じる劣化を抑圧することができる。
【0281】
(第5の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成は図11または図13に示した第1及至第4の実施形態における無線受信装置の構成と同一であり、送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で生じる位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて補正する点も第1及至第4の実施形態と同様である。
【0282】
本実施形態が第1及至第4の実施形態と異なる点は伝搬路推定誤差を求める推定手法である。すなわち、伝搬路推定誤差推定部1142内のウエイト計算手法が異なる。第1及至第4の実施形態ではパイロットサブキャリアごとに伝搬路推定誤差成分を抽出するためのウエイトを、推定した伝搬路応答を用いて計算し、各パイロットサブキャリアに乗算することによって伝搬路推定誤差成分を求めている。これらの手法では、伝搬路推定結果に熱雑音の影響が含まれることを考慮せず、周波数オフセットおよび位相雑音による伝搬路応答の推定誤差を推定している。
【0283】
しかし、一般に伝搬路推定用既知信号は有限のシンボル数しか送信されないため、伝搬路推定結果に熱雑音など不要信号の影響が含まれてしまう。この影響は伝送効率を向上させるためにヘッダ信号を短くしようとするとより顕著にあらわれてしまい、周波数オフセットおよび位相雑音に起因する伝搬路推定誤差成分を推定する際の推定精度を劣化させてしまう。
【0284】
本実施形態では以上の問題点に鑑み、推定した伝搬路応答に不要信号による誤差が含まれることを考慮した最小自乗法であるTLS(Total Least Square)法を用いて周波数オフセットおよび位相雑音による伝搬路推定誤差成分を推定する。
【0285】
以下に本実施形態における伝搬路推定誤差推定部1142の動作について説明する。
伝搬路推定用既知シンボルの系列および1シンボル目のデータシンボルのパイロット信号の系列によって決定される各パイロットサブキャリアのパイロット行列、および伝搬路推定誤差成分に式(39)の関係が成り立つとする。
【0286】
このとき、推定した伝搬路応答とパイロット行列の積を並べた行列をA、各サブキャリアにおける熱雑音ベクトルを並べたベクトルを<n(1)>とおき、式(39)を次式(116)、(117)、(118)のように書き直す。
【0287】
【数73】


【0288】
TLSによる推定では次式(119)を最小とするξおよび<e>を求め、次式(120)から伝搬路推定誤差<φ>を推定する。
【0289】
【数74】


【0290】
ここで‖ ‖はベクトルノルムを表している。式(119)の最小化は自明な解、<e>=<0>,ξ=0を含むため、ラグランジェの未定乗数法を用いてさらに次式(121)のように展開することができる。
【0291】
【数75】


【0292】
以上の結果、次式(122)を満たすξおよび<e>が求める値となる。
【0293】
【数76】


【0294】
式(121)を最小にする[<e> −ξ]は[A <r(1)>][A <r(1)>]の最小固有値に対応する固有ベクトルであることがわかる。よって、各パイロットサブキャリアの受信ベクトルを並べた受信ベクトル<r(1)>と各パイロットサブキャリアにおける推定した伝搬路応答およびパイロット行列を並べて生成されるAを用いて行列[A <r(1)>][A <r(1)>]を計算し、当該行列の最小固有値に対応する固有ベクトルを求め、得られた固有ベクトルから式(120)を計算することによって伝搬路推定誤差成分を推定できる。さらに、推定した<φ>を用いて式(32)、(33)に従いΦ−1を推定することができる。
【0295】
また、伝搬路推定用既知信号が直交系列を用いている場合は<φ>やP(k)(1)は式(48)や式(51)で示されるように変形されるため、伝搬路推定既知シンボルの系列に応じて式(47)や式(91)などに従いΦ−1を推定することができる。
【0296】
以上のようにして推定されたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差補正部1143で伝搬路推定を補正する手法、MIMO復調前処理部1144、位相補正部1145、MIMO復調部1146の動作については第1の実施形態と全く同一なため詳細な説明は省略する。
【0297】
以上説明したように、本実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。このとき、推定した伝搬路応答に雑音の影響が含まれることを考慮して伝搬路推定誤差を推定するため、伝搬路推定結果に熱雑音の影響が加わっている環境下においても高い精度で周波数オフセットや位相雑音に起因する伝搬路推定の誤差を補正することができる。
【0298】
(第6の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成について図14を参照して説明する。図14は本実施形態に係る無線通信装置についてのブロック図の一例であり、多重化されるストリーム数2、受信アンテナ数2の場合を例として説明する。
【0299】
第1及至第5の実施形態では周波数オフセットおよび位相雑音により生じた伝搬路応答の推定誤差を推定し、伝搬路応答を補正していた。しかし、この手法では伝搬路推定誤差を推定してからデータサブキャリアの復調までの間にMIMO復調前処理を実施する必要があるため、MIMO復調前処理部を高速に動作させなければならない。また、処理遅延を許容させるために大きなバッファを用意し、信号を蓄積する必要があり、チップの面積やモジュールのサイズが大きくなってしまう問題点がある。
【0300】
本実施形態では、以上の問題に鑑み、各データサブキャリアにおけるMIMO復調前処理は伝搬路推定誤差を補正する前の推定した伝搬路応答を用いて計算しておき、伝搬路応答の推定誤差成分を推定した後、伝搬路応答ではなくMIMO復調前処理結果を直接補正することによって上述の問題を解決する。
【0301】
本実施形態の無線受信装置は、受信アンテナ1101、1102、無線部1111、1112、GI除去部1121、1122、フーリエ変換器1131、1132、伝搬路推定部1141、伝搬路推定誤差推定部1142、位相補正部1145、MIMO復調部1146、MIMO復調前処理部1401、伝搬路推定誤差補正部1402を備えている。なお、伝搬路推定部1141は、図14ではフーリエ変換器出力を用いて推定を行う構成について図示しているが、図13に示すようにフーリエ変換前の時間領域の信号を用いて推定を行っても構わない。サブキャリアごとの伝搬路応答を推定することができればいかなる手段を用いても構わない。
【0302】
MIMO復調前処理部1401は、MIMO復調を行うための前処理を行う。補正前の信号に対してMIMO復調前処理を適用する。第1及至第5の実施形態では式(52)に示すように伝搬路応答の推定誤差を補正した後の伝搬路推定結果に対してMIMO復調前処理を適用していたが、本実施形態では補正前の信号に対してMIMO復調前処理を適用する。
【0303】
MIMO復調前処理部1401は、第1の実施形態で説明したようにMIMO復調部1146で適用される復調方式に従って推定した伝搬路応答に処理を加える。本実施形態においても第1の実施形態で説明したように、MIMO復調部1146ではいかなる手法を用いて復調を行っても構わないし、MIMO復調前処理部1401についても第1の実施形態と同様に処理を行う。
【0304】
伝搬路推定誤差補正部1402は、各サブキャリアの伝搬路応答の推定誤差およびMIMO復調前処理部1401で計算された係数を補正する。
【0305】
以下に本実施形態における詳細な動作について図14および図15を参照して説明する。図14は本実施形態に係わる装置構成の一例を示す図であり、図15はフローチャートを表している。なお、本実施形態において受信する信号を送信する送信装置の構成は第1の実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。以下、既に説明したステップと同様なものは同一の番号を付してその説明を省略する。
【0306】
図14の無線受信装置の動作の一例について図15を参照して説明する。以下、既に説明したステップと同様なものは同一の番号を付してその説明を省略する。ステップS1201〜S1205、ステップS1207〜1210は図12に示したステップと同様である。図15では、ステップS1501、S1502が図12のフローチャートに付加されている。
【0307】
ステップS1501では、MIMO復調前処理部1401が、ステップS1201で得られた伝搬路推定結果を使用してデータサブキャリア用のウエイトを計算する。
【0308】
ステップS1502では、伝搬路推定誤差補正部1402が、ステップS1201得られた伝搬路推定結果と、ステップS1204で推定された伝搬路推定誤差成分を使用してパイロットサブキャリアの伝搬路推定結果を補正し、この補正された伝搬路推定結果を使用してステップS1501で計算されたデータサブキャリア用のウエイトを補正する。
【0309】
次に、例としてMIMO復調方式として空間フィルタ法を適用する場合について説明する。空間フィルタ法はMMSE基準やZF基準で求めたサブキャリアごとのウエイトを各サブキャリアの受信ベクトルに乗算し、多重化されたストリームを分離し、ストリームごとに復調を行う方式である。
【0310】
伝搬路推定用既知信号が直交系列を用いており、かつ式(10)で示されるX(k)がユニタリ行列の場合、式(25)で示される伝搬路推定誤差行列Φも式(28)または式(30)に示すようにユニタリ行列となる。
【0311】
このとき、MMSE基準のウエイトは式(69)で表され、ZF基準のウエイトは式(101)のように表される。なお、式(69)および式(101)はパイロットサブキャリアのパイロット信号を抽出するためのウエイトだが、データサブキャリアについても全く同一の演算でウエイトが求められる。なお、式(101)において、Φはユニタリ行列になるため、ウエイトは次式(123)のように書きなおすことができる。
【0312】
【数77】


【0313】
式(69)、式(123)からMMSE基準でウエイトを求めた場合とZF基準でウエイトを求めた場合のいずれも、伝搬路応答の推定誤差が存在しない場合のウエイトに右から伝搬路推定誤差行列Φが乗算された形でウエイトが得られることがわかる。
【0314】
一方、第1及至第5の実施形態で示したように、伝搬路応答の推定誤差成分を推定する場合、いずれの場合もΦの逆行列に、推定に用いたシンボルにおける位相誤差が乗算されたものが推定されていることがわかる。よって、伝搬路応答の推定結果を補正し、補正された伝搬路を用いてウエイトを計算する必要はなく、次式(124)に示すように直接ウエイトを補正することができる。
【0315】
【数78】


【0316】
ただし、W(k)はデータサブキャリアのデータ信号を抽出するためのウエイトを表している。伝搬路推定誤差補正部1402は、以上のようなウエイトの補正を全てのデータサブキャリアに対して行う。
【0317】
一方、パイロットサブキャリアについては第1の実施形態で説明したように式(54)のレプリカ信号を推定した伝搬路応答から生成して位相補正部1145で位相誤差の補正を行う場合、伝搬路推定誤差補正部1402は第1及至第5の実施形態と同様に推定した伝搬路応答の補正を行い、補正された伝送路応答が位相補正部1145に供給される。
【0318】
以上のようにして、位相補正部1145が補正された伝搬路応答を使用して各OFDMシンボルの位相誤差を補正し、MIMO復調部1146が補正されたウエイトを使用して復調を行う手順については第1及至第5の実施形態と同一なため、詳細な説明は省略する。
【0319】
以上説明したように、第6の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路推定の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。また、補正を行う際に推定した伝搬路応答を補正するのではなくMIMO復調前処理部1401で処理された値に対して補正を行うことにより、処理遅延や大きなバッファ、または高速なMIMO復調前処理部の動作などが要求されなくなり、簡易な回路構成を実現することができる。
【0320】
(第7の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成は図14に示した第6の実施形態における無線受信装置の構成と同一であり、送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で生じる位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて推定し、MIMO復調前処理部で処理された値に対して補正を行う点も第6の実施形態と同様である。本実施形態が第6の実施形態と異なる点は伝搬路推定用既知信号系列がユニタリ行列ではない点である。
【0321】
伝搬路応答の推定誤差は式(25)のように伝搬路推定用既知シンボルに依存する。式(10)で示した伝搬路推定用既知シンボル行列X(k)がユニタリ行列になる場合は第6の実施形態に示したようにMIMO復調前処理部1401で計算したウエイトを簡易に補正することができる。
【0322】
しかし、X(k)がユニタリ行列にならない場合、MIMO復調用のウエイト行列は式(69)や式(123)のように伝搬路応答の推定誤差が生じていない場合のウエイトに伝搬路推定誤差成分を乗積したような簡易な形では表すことができない。
【0323】
そのような伝搬路推定用既知シンボルとして、次式(125)のような系列を例として考える。
【0324】
【数79】


【0325】
このような直交系列を用いてもユニタリ行列ではない場合は式(25)のΦはユニタリ行列にはならない。よって、MMSE基準のウエイトは式(68)、ZF基準のウエイトは式(101)のように表され、第1及至第5の実施形態に示した手法でΦの逆行列を推定してもそのままでは補正を行うことができない。
【0326】
そこで、第1及至第5の実施形態に示したいずれかの手法を用いてΦの逆行列を推定し、推定したΦの逆行列を変形することによってMIMO復調前処理部1401で推定したウエイトを補正する。
【0327】
MIMO復調方式としてZF基準のウエイトを用いる場合を考える。このとき、ウエイトは式(101)で表され、ウエイトの誤差はΦの逆行列の複素共役転置で表されることがわかる。よって、得られたΦの逆行列のさらに逆行列を計算することによって補正用の行列を計算することができる。
【0328】
第1OFDMシンボルのパイロットサブキャリアを用いてΦの逆行列を推定すると第1OFDMシンボルにおける位相誤差も含まれるため、補正後のウエイトは次式(126)で表される。
【0329】
【数80】


【0330】
以上のように求めたウエイトを用いてMIMO復調を行うことにより、第6の実施形態で示したように伝搬路推定用既知シンボルとしてユニタリ系列を用いた場合と同一の効果が得られる。
【0331】
次に、MIMO復調方式としてMMSE基準のウエイトを用いる場合を考える。このとき、伝搬路推定結果を用いてウィナー解でウエイトを求めると式(68)のように伝搬路推定誤差の影響を受けてしまうため、補正を行うことが困難になる。よって、式(63)および式(64)に基づき自己相関行列と相互相関行列を計算し、ウエイトを求める。ただし、式(125)に示した伝搬路推定用既知シンボルはシンボル数が4なので、平均化を行うシンボル数は4になる。
【0332】
この結果、式(63)の計算は受信ベクトルと受信ベクトルの複素共役転置を乗算するため、位相誤差が相殺され、相関行列は周波数オフセットおよび位相雑音の影響を受けずに推定することができる。一方、式(64)の相互相関行列の計算は式(18b)、式(19a)に示した伝搬路推定と等価の演算である。よって、このようにしてMMSE基準のウエイトを求めた場合、式(69)と同様のウエイトが得られる。この場合、第1及至第5の実施形態に示したような手法でΦの逆行列を推定し、そのまま補正することができる。
【0333】
一方、パイロットサブキャリアについては第6の実施形態と同様に式(54)のレプリカ信号を推定した伝搬路応答から生成して位相補正部1145で位相誤差の補正を行う場合、伝搬路応答の補正を行う。
【0334】
以上のようにして、位相補正部1145が補正された伝搬路応答を使用して各OFDMシンボルの位相誤差を補正し、MIMO復調部1146が補正されたウエイトを使用して復調を行う手順については第1及至第6の実施形態と同一なため、詳細な説明は省略する。
【0335】
以上説明したように、本実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路推定の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。また、補正を行う際に推定した伝搬路応答を補正するのではなくMIMO復調前処理部で処理された値に対して補正を行うことにより、処理遅延や大きなバッファ、または高速なMIMO復調前処理部の動作などが要求されなくなり、簡易な回路構成を実現することができる。このとき、伝搬路推定用既知信号系列がユニタリ行列でなくてもウエイトを直接補正することができる。
【0336】
(第8の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成について図16を参照して説明する。図16は本実施形態に係る無線通信装置についてのブロック図の一例であり、多重化されるストリーム数2、受信アンテナ数2の場合を例として説明する。
【0337】
本実施形態の無線受信装置は、受信アンテナ1101、1102、無線部1111、1112、GI除去部1121、1122、フーリエ変換器1131、1132、MIMO復調部1146、パイロット抽出部1601、伝搬路推定部1602、伝搬路推定誤差推定部1603、MIMO復調前処理部1604、伝搬路推定誤差補正部1605、位相補正部1606を備えている。
【0338】
パイロット抽出部1601は、GI除去部1121、1122が出力した信号からパイロットサブキャリアの信号のみを周波数領域に変換する。
【0339】
伝搬路推定部1602は、パイロット抽出部1601から入力するパイロットサブキャリア信号とフーリエ変換器1131、1132が出力した信号を使用してサブキャリアごとの伝搬路応答を推定する。
【0340】
伝搬路推定誤差推定部1603は、パイロット抽出部1601から入力するパイロットサブキャリア信号を使用して、伝搬路推定部1602で推定した伝搬路推定の誤差を推定する。
【0341】
MIMO復調前処理部1604は、MIMO復調を行うための前処理を行う。伝搬路推定誤差補正部1605は、各サブキャリアの伝搬路応答の推定誤差およびMIMO復調前処理部で計算された係数を補正する。位相補正部1606は、受信信号に生じる位相誤差を補正する。
【0342】
第1及至第7の実施形態では周波数オフセットおよび位相雑音により生じた伝搬路応答の推定誤差を推定し、伝搬路応答またはMIMO復調前処理部で処理された信号に対して補正を行う際にフーリエ変換器1131および1132の出力を利用していた。しかし、この手法ではフーリエ変換器1131および1132がパイロットサブキャリアの信号を出力してからデータサブキャリアの信号を出力するまでの時間が短く、データサブキャリアの復調までの間に伝搬路応答の推定誤差を推定し、補正を行う処理を実行するのが困難な場合がある。これらの処理が終わるまでデータの復調を遅延させると復調にかけることのできる時間が短くなったり、伝搬路応答の推定誤差を推定するシンボルとその他のシンボルでパイロットサブキャリアの信号を出力するタイミングとデータ信号を出力するタイミングを変えるような制御を行ったりする必要がある。また、処理遅延を許容させるために大きなバッファを用意し、信号を蓄積する必要があり、チップの面積やモジュールのサイズが大きくなってしまう問題点がある。
【0343】
以下に本実施形態における詳細な動作について説明する。
一般に、OFDM伝送におけるフーリエ変換器はFFTが用いられる。この理由は、DFTはFFTに比べ演算に冗長性があり、演算量が多くなり、回路規模も大きくなってしまうからである。一方、FFTは実装方式にも依存するが1OFDMシンボルの一定以上のサンプルを受信しないと処理を開始することができない。よって、FFTを用いると処理量を削減することはできるが、処理遅延が生じてしまう。
【0344】
それに対しDFTは1サンプルずつ処理していくことが可能なので、FFTのような処理遅延を発生させずに処理を行うことが可能である。そこで、パイロットサブキャリアの信号のみDFTで処理するように1サンプルずつ処理することによって周波数領域に変換する。この結果、1OFDMシンボルの信号の受信が終了してからわずかな遅延時間でパイロットサブキャリアの信号を周波数領域に変換することができる。
【0345】
例としてk番目のサブキャリアの信号を周波数領域に変換する手法について説明する。i番目の受信アンテナで受信したm番目のOFDMシンボルのtサンプル目の信号をu(m)(t)とおく。k番目のサブキャリアの信号を抽出するため、各サンプルにおいて次式(127)の処理を行う。
【0346】
【数81】


【0347】
このような処理を行うことによってm番目のOFDMシンボルのk番目のサブキャリアの信号を抽出することができる。図9に示したサブキャリア配置の場合、−21、−7、7、21番目のサブキャリアがパイロットサブキャリアであり、パイロット抽出部1601は、以上4つのサブキャリアの信号を式(127)に示したような手法でそれぞれ抽出する。この結果、1OFDMシンボルの受信を終了してわずかな遅延時間でパイロットサブキャリアの信号は周波数領域の信号に変換できている。一方、FFTはこれらの処理に比べて処理遅延が大きいため、データサブキャリアの信号を周波数領域の信号へ変換するまでには時間がかかる。よって、FFTの処理遅延内で伝搬路応答の推定誤差を推定し、補正を完了することによって、データサブキャリアの復調において補正を行うシンボルとその他のシンボルにおいて異なるタイミングで処理する必要がなくなり、制御が簡易になる。
【0348】
なお、伝搬路応答の推定誤差成分の推定や補正のやり方は第1及至第7の実施形態で示しているので詳細な説明は省略する。
【0349】
また、位相補正部1606における位相誤差の推定はパイロット抽出部1601で抽出した信号を用いても、フーリエ変換器1131、1132で変換された信号を用いても構わない。
【0350】
パイロット抽出部1601の信号を用いる場合、パイロットサブキャリアの信号を周波数領域に変換してからデータサブキャリアの信号が周波数領域に変換されるまでに時間差が生じるため、位相誤差の推定にかけられる時間が長くなる利点がある。一方、フーリエ変換器1131、1132の出力を用いる場合、伝搬路応答の推定誤差を求めるOFDMシンボル以外のシンボルではパイロット抽出部1601の動作を停止させることができるため、消費電力を小さくすることができる。パイロット抽出部1601をはじめ、各装置部分の動作の開始停止は、制御部(図示せず)によって行われる。
【0351】
また、本実施形態における位相補正部1606はいずれの信号を用いても構わず、必要に応じていずれの信号を用いるかを選択できる。
【0352】
以上説明したように、第8の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。また、補正を行う際にパイロットサブキャリアの信号のみをフーリエ変換器を介せず抽出することにより、伝搬路応答の推定誤差を推定し、補正を行う処理に許容される時間を長く設定することが可能になり、伝搬路応答の推定誤差を求めるOFDMシンボルとその他のシンボルにおいてMIMO復調を行うタイミングを同一に保つことができ、タイミングを調整するための制御が不要になり、回路構成を簡略化することができる。
【0353】
(第9の実施形態)
本実施形態における無線受信装置の構成は第1及至第8の実施形態で説明した図11〜図16のいずれかの構成と同一であり、送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で生じる位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて推定し、伝搬路応答またはMIMO復調前処理部で処理された値に対して補正を行う点も第1及至第8の実施形態と同一である。本実施形態が第1及至第8の実施形態と異なる点は、全てのパイロットサブキャリアを用いずに一部のパイロットサブキャリアの信号のみを用いて伝搬路応答の推定誤差を求める点である。
【0354】
第1の実施形態で説明したように、式(37)で示すパイロット行列のランクが伝搬路推定用既知信号の系列に依存して決定される以下の条件を満たす場合、パイロットサブキャリアを用いて推定を行うことができる。
【0355】
1.伝搬路推定用既知信号が直交系列を用いている場合(式(10)のX(k)の各行が相互に直交する場合)
(条件)パイロット行列のランクがストリーム数に等しい
2.伝搬路推定用既知信号が直交系列を用いていない場合
(条件)パイロット行列のランクがストリーム数の2乗に等しい
一例として図9のようにパイロットサブキャリアが配置されており、各パイロットサブキャリアから式(103)のように信号が送信される場合を考える。
【0356】
このとき、伝搬路推定用既知信号として式(90)や式(93)で示されるような直交系列が送信される場合は各パイロットサブキャリアのパイロット行列は式(92)や式(94)のように表され、パイロットサブキャリア1本でもランクがストリーム数に一致し、推定を行えることがわかる。
【0357】
一方、伝搬路推定用既知信号として式(15)で示されるように、直交系列を用いない場合は各パイロットサブキャリアのパイロット行列は式(51)や式(34)のように表され、送信されるパイロットの系列が適した組み合わせの2本以上のサブキャリアを用いる必要がある。
【0358】
式(103)のパイロット信号が送信されている場合、以下の4通りの組み合わせを選択すると2本のパイロットサブキャリアだけで伝搬路応答の推定誤差成分を求めることができる。
(−21、−7)、(−21、21)、(−7、7)、(7、21)
伝搬路推定用既知信号の系列、送信されるパイロットの系列は予め定められた値となるため、無線受信装置で既知であり、予め特定の組み合わせを選択しておくことにより、全てのパイロットサブキャリアを使わずに伝搬路応答の推定誤差を求めることができる。
【0359】
このときパイロットサブキャリアの組み合わせの選択は前述の四つの組み合わせのうちいかなる組み合わせを選択しても構わない。伝搬路推定誤差補正部は、伝搬路応答の推定誤差を求めてから伝搬路応答、またはMIMO復調前処理で計算された値の補正を行い、データ復調を開始するまでの時間を長く設定するためにフーリエ変換器から出力される順番の早いパイロットサブキャリアを用いると処理に許容される時間が長く設定できる。同様に、パイロット抽出部1601を利用する場合、パイロット抽出部1601がパイロットサブキャリアを並列に抽出せず、順次抽出している場合は抽出する順番の早いパイロットサブキャリアの組み合わせを選択しても同様の効果が得られる。
【0360】
一方、周波数選択性フェージング環境下ではサブキャリアごとに伝搬路の特性が異なるため、伝搬路特性の優れたサブキャリアの組み合わせを選択することによって、伝搬路応答の推定誤差を求める際の精度を高めることができる。
【0361】
よって、伝搬路推定誤差推定部は、全ての組み合わせに対応できるように装置を構成し、伝搬路応答に応じて組み合わせを選択する。このとき、選択に用いられる伝搬路のパラメータとしては受信電力や次式(128)で示されるキャパシティ(通信路容量)があげられ、これらの値が大きくなる組み合わせを選択して利用する。
【0362】
【数82】


【0363】
ここで、サブキャリアの組み合わせを選択する際に、全組み合わせの中から電力やキャパシティが最も大きい組み合わせを選択しても構わないし、予め優先順位を決めておき、優先順位が高い組み合わせの受信電力やキャパシティが閾値を下回った場合のみ優先順位の低い組み合わせを選択しても構わない。なお、優先順位を決める一例としてフーリエ変換器が出力するパイロットサブキャリアの順番やパイロット抽出部が出力する順番などが挙げられる。
【0364】
以上のようにして推定されたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差補正部で伝搬路推定を補正する手法、MIMO復調前処理部、位相補正部、MIMO復調部の動作については第1及至第8の実施形態のいずれかと同様なため詳細な説明は省略する。
【0365】
以上説明したように、第9の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。また、伝搬路応答の推定誤差を求める際に全てのパイロットサブキャリアを用いずに一部のサブキャリアのみを用いて推定を行うことによって演算量を削減でき、消費電力を低減することができる。また、一部のサブキャリアのみを推定に用いることによって、伝搬路応答の推定誤差を求め、補正を行う処理に許容される時間を増加させることができる。
【0366】
(第10の実施形態)
本実施形態における無線受信装置は送信装置と無線受信装置間の周波数オフセットおよびそれぞれの装置で生じる位相雑音に起因する伝搬路推定誤差を、パイロットサブキャリアを用いて推定し、推定した伝搬路応答またはMIMO復調前処理部で処理された値に対して補正を行う点は第1及至第9の実施形態と同一である。本実施形態が第1及至第9の実施形態と異なる点は、無線受信装置が受信する信号のストリーム数である。
【0367】
本実施形態における無線受信装置の構成について図17を参照して説明する。図17は本実施形態に係る無線通信装置についてのブロック図の一例であり、多重化されるストリーム数4、受信アンテナ数4の場合を例として説明する。
【0368】
本実施形態の無線受信装置は、受信アンテナ1101、1102、1701、1702、無線部1111、1112、1711、1712、GI除去部1121、1122、1721、1722、フーリエ変換器1131、1132、1731、1732、伝搬路推定部1741、伝搬路推定誤差推定部1742、伝搬路推定誤差補正部1143、位相補正部1743、MIMO復調前処理部1144、MIMO復調部1744を備えている。
【0369】
本実施形態において受信する信号を送信する送信装置の構成は図1を用いて第1の実施形態で説明した送信装置を4ストリームの信号を空間多重できるように送信アンテナ、無線部、GI付加部、逆フーリエ変換器、変調器を4に拡張しただけであり、基本的な機能や動作はストリーム数が2の場合と同一であるため詳細な説明は省略する。
同様に、図17における受信アンテナ、無線部、GI除去部、フーリエ変換器についてもストリーム数が4の信号を受信するために四つずつ用いられているが、個々の機能および動作についてはストリーム数が2の場合と同一なため詳細な説明は省略する。
【0370】
次に、伝搬路推定部1741について説明する。伝搬路推定部1741の推定手法についてはストリーム数が2の場合と同様であり、一般的には式(12)に示したような手法で推定を行う。ただし、伝搬路推定用既知信号の系列次第では4ストリームの場合も式(18a)、(18b)や式(19a)、(19b)に示したように伝搬路推定用既知信号の系列に従い受信信号の和や差などの簡易な演算で推定することも可能であり、図13に示した伝搬路推定部1301のように時間領域の信号を用いて推定を行っても構わない。
【0371】
以上のようにして推定される伝搬路応答の推定誤差について考える。推定した伝搬路応答の推定誤差はストリーム数が2の場合と同様に式(24)、式(25)を用いて表され、ストリーム数が2の場合と同様に、式(36)、式(51)、式(92)、式(94)のように伝搬路推定用既知シンボルとパイロットの送信方式に依存して決定されるサブキャリアごとのパイロット行列と推定した伝搬路応答を用いて推定誤差を第1及至第9の実施形態と同様に求めることができる。
【0372】
ストリーム数が4の場合の一例として、図10のフレームフォーマットをストリーム数4に拡張し、図19に示す伝搬路推定用既知信号を用いる場合を考える。このとき、伝搬路推定誤差行列Φは次式(129)、(130)、(131)、(132)、(133)で表すことができる。
【0373】
【数83】


【0374】
この結果、サブキャリア番号kのパイロット行列は次式(134)で表すことができる。
【0375】
【数84】


【0376】
以上のパイロット行列および推定した伝搬路応答を用いることによって第1及至第9の実施形態で示したストリーム数が2の場合と同様に伝搬路推定誤差行列Φの逆行列を推定することができる。なお、得られたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差推定部で伝搬路応答またはMIMO復調前処理部で処理された値を補正する手法は第1及至第9の実施形態と同様の手法で補正を行うことができる。
【0377】
一方、伝搬路推定用既知信号として図18に示すようにHadamard系列を用いる場合を考える。このとき、Φ−1とP(k)(m)は次式(135)、(136)、(137)、(138)、(139)、(140)で表すことができる。
【0378】
【数85】


【0379】
このように、ストリーム数が2の場合と同様に伝搬路推定用既知信号の系列に依存してパイロット行列は異なる。しかし、伝搬路推定用既知信号もパイロット信号も無線受信装置で既知の信号なので、予め式(25)を用いてΦの形式を見積もることができ、式(31)を用いることによってパイロット行列も求めることができる。
【0380】
以上、伝搬路推定用既知信号として図19および図18の系列を用いる場合を例に説明したが、本実施形態における伝搬路推定用既知信号は以上説明した二つに制限されるものではない。式(25)および式(31)に基づき伝搬路推定誤差成分、パイロット行列を計算することによってその他の系列を用いる場合も対応することができる。
【0381】
また、本実施形態ではストリーム数が4の場合を例に説明を行ったが、本実施形態におけるストリーム数を4に制限するものではない。式(25)、式(31)および式(37)に示される複数のサブキャリアのパイロット行列を拡張したパイロット行列が条件を満たせば推定を行うことができる。
【0382】
以上のようにして推定されたΦ−1を用いて伝搬路推定誤差補正部で伝搬路推定を補正する手法、MIMO復調前処理部、位相補正部、MIMO復調部の動作については第1及至第9の実施形態の手法を受信アンテナ4本、ストリーム数4に拡張するのみであり、基本的な構成および手法については同一なため詳細な説明は省略する。
以上説明したように、第10の実施形態によれば、周波数オフセットおよび位相雑音が原因となり生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することができ、高い精度でMIMO復調を実現することができる。また、ストリーム数が2以上の場合も伝搬路推定用既知信号の系列を考慮することによって伝搬路応答の推定誤差を補正することができる。
【0383】
以上に示した実施形態の無線受信装置および方法によれば、伝搬路応答の推定誤差を求め、伝搬路推定結果を補正することにより、伝搬路推定精度を高め、受信性能を高くすることができる。また、本実施形態によれば、位相誤差によって生じる伝搬路応答の推定誤差を補正することにより、復調精度を高め、誤り率特性を向上させることが可能となる。
【0384】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0385】
【図1】本実施形態の無線受信装置に信号を送信する送信装置のブロック図。
【図2】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図3】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図4】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図5】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図6】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図7】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図8】図1の変調器に入力する信号を生成する装置の一例を示すブロック図。
【図9】データサブキャリアとパイロットサブキャリアの配置の一例を示す図。
【図10】フレームフォーマットの一例を示す図。
【図11】第1、2、3、4、5、9の実施形態に係る無線受信装置のブロック図。
【図12】図11の無線受信装置の動作の一例を示すフローチャート。
【図13】図11の無線受信装置の変形例のブロック図。
【図14】第6、7、9の実施形態に係る無線受信装置のブロック図。
【図15】図14の無線受信装置の動作の一例を示すフローチャート。
【図16】第8の実施形態に係る無線受信装置のブロック図。
【図17】第10の実施形態に係る無線受信装置のブロック図。
【図18】伝搬路推定用既知信号の系列の一例を示す図。
【図19】伝搬路推定用既知信号の系列の一例を示す図。
【符号の説明】
【0386】
101、102・・・変調器、111・・・パイロット生成部、121、122・・・逆フーリエ変換器、131、132・・・GI付加部、141・・・既知信号生成部、151、152・・・無線部、161、162・・・送信アンテナ、171、172・・・スイッチ、201・・・直並列変換部、301、502・・・符号器、401、402・・・インターリーバー、701・・・信号入替部、1101、1102・・・受信アンテナ、1111、1112・・・無線部、1121、1122・・・GI除去部、1131、1132・・・フーリエ変換器、1141、1301、1602、1741・・・伝搬路推定部、1142、1603、1742・・・伝搬路推定誤差推定部、1143、1402、1605・・・伝搬路推定誤差補正部、1144、1401、1604・・・MIMO復調前処理部、1145、1606、1743・・・位相補正部、1146、1744・・・MIMO復調部、1301・・・伝搬路推定部、1601・・・パイロット抽出部。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦

【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲

【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠

【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊

【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司

【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘

【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男

【識別番号】100092196
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 良郎


【公開番号】 特開2008−17143(P2008−17143A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185876(P2006−185876)