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【発明の名称】 駆動装置
【発明者】 【氏名】和田 晃

【氏名】岡本 泰弘

【氏名】並川 威人

【要約】 【課題】電気機械変換素子を用いた、駆動効率の高い駆動装置を提供する。

【構成】固定体2に接着剤3で一端を固定した電気機械変換素子4と、電気機械変換素子4の他端に接着剤5で一端を固定した駆動軸6と、駆動軸6に摩擦係合する移動体7とからなる駆動装置1において、接着剤3,5に、直径が1μm以上、5μm以下の微粒子10を混入することで、接着剤の厚みをt(μm)、接着剤の縦弾性係数をE(GPa)としたときに、8≧E/t≧0.48を満たすようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体に接着剤で一端を固定した電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の他端に接着剤で一端を固定した駆動軸と、前記駆動軸に摩擦係合する移動体とからなり、
前記接着剤の厚みをt(μm)、前記接着剤の縦弾性係数をE(GPa)とすると、
E/t≧0.48
を満たすことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
さらに、E/t≦8を満たすことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記接着剤は、微粒子が混入されていることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記微粒子は、直径が1μm以上、5μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、特に、電気機械変換素子を用いた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錘などの固定体に圧電素子などの電気機械変換素子の一端を接着剤で固定し、電気機械変換素子の他端に駆動軸の一端を接着剤で固定し、駆動軸に移動体を摩擦係合させてなる駆動装置が公知である。また、固定端に駆動軸の一端を固定し、駆動軸の他端に電気機械変換素子を接着剤で固定し、駆動軸に移動体を摩擦係合させてなる駆動装置も公知である。このような駆動装置において、電気機械変換素子の電極に非対称な変動電圧を印加すると、電気機械変換素子が伸長方向と収縮方向とで異なる速度(加速度)で振動し、駆動軸が軸方向に非対称に往復移動する。駆動軸に摩擦係合する移動体は、駆動軸が緩慢に移動すると摩擦係合したまま駆動軸とともに移動するが、駆動軸が急峻に移動すると自身の慣性力によってその場に留まろうとして駆動軸に対して滑り移動する。駆動装置は、このような動作を繰り返すことで、移動体を移動して位置決めする。
【0003】
従来の駆動装置の製造工程において、固定体と電気機械変換素子との間、および、電気機械変換素子と駆動軸との間の接着剤の厚みは、塗布する接着剤の重量を一定にすることと、固定体と電気機械変換素子とを押圧する押し付け力、および、電気機械変換素子と駆動軸とを押圧する押し付け力の大きさを一定にすることとで、略一定になるように管理していた。
【0004】
図5は、電気機械変換素子に一定量の接着剤を塗布して、駆動軸を接着剤の上から電気機械変換素子に押し付けた際の、押し付け力による接着層の厚みの変化を示す。実際の製造において、接着剤の塗布量と押し付け力とを厳密に管理することは困難であり、製品の接着層の厚みには大きなバラツキがあった。
【0005】
電気機械変換素子を用いた駆動装置には、圧電素子と両電極とを積層した層の断面に、固定体や駆動軸を接着するタイプのものがある。このタイプの駆動装置において、特許文献1では、絶縁性の接着剤に粒子径5〜50μmのガラス粒子を混入することで、接着層の厚みを確保して、固定体や駆動軸によって両電極が短絡しないようにすることが記載されている。
【0006】
図6は、接着剤に微粒子を混入したときの、押し付け力による接着層の厚みの変化を示す。図示するように、押し付け力を一定の大きさ(Fs)以上にすることで、接着層の厚みを混入した微粒子の直径(td)に揃えることができる。
【0007】
このように、接着剤に微粒子を混入することによって電気機械変換素子の短絡を防止できるようになったが、接着層の厚みを大きくすることによって電気機械変換素子の伸縮が接着層の弾性により吸収され、或いは、接着層の弾性が駆動軸への伝動に遅れを生じさせ、駆動効率が悪くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−69100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、前記問題点に鑑みて、本発明は、電気機械変換素子を用いた、駆動効率の高い駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明による駆動装置は、固定体に接着剤で一端を固定した電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の他端に接着剤で一端を固定した駆動軸と、前記駆動軸に摩擦係合する移動体とからなり、前記接着剤の厚みをt(μm)、前記接着剤の縦弾性係数をE(GPa)とすると、E/t≧0.48を満たすものとする。
【0010】
この構成によれば、電気機械変換素子を構成するPZTの粒子の隙間からなる表面の凹凸を接着剤で埋めるために必要な接着層の厚みを確保しつつ、接着層の弾性による駆動効率の低下が起きない程度に接着層を薄くすることができる。これによって、本発明の駆動装置は、電気機械変換素子の短絡がなく、駆動効率が高い。
【0011】
また、本発明の駆動装置において、E/t≦8を満たしてもよい。
【0012】
この構成によれば、現在、縦弾性係数が最も高い8GPa程度のエポキシ系接着剤を用いたとき、接着層の厚みを1μm以上にすることになり、接着剤の膜切れを防止して、電気機械変換素子と駆動軸との絶縁を保つことができる。
【0013】
また、本発明の駆動装置において、前記接着剤は、微粒子が混入されていてもよく、好ましくは、前記微粒子は、直径が1μm以上、5μm以下であるとよい。
【0014】
この構成によれば、接着剤に混入した微粒子によって接着層の厚みを所望の厚みに形成することができる。一般に、PZTの粒子径が3〜5μmであるので、直径が1μm以上の微粒子であれば、PZTの粒子の隙間に完全に埋没することなく、電気機械変換素子の表面に部分的に突出する。これによって、電気機械変換素子と駆動軸または固定体との間に接着剤の層を形成して、電気機械変換素子の両電極が短絡することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、電気機械変換素子と駆動軸または固定体との間の接着層の厚みを最適化するので、駆動効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の1つの実施形態である駆動装置1を示す。駆動装置1は、錘である固定体2と、固定体2に接着剤3で一端が固定された電気機械変換素子4と、電気機械変換素子4の他端に接着剤5で一端が固定された駆動軸6と、駆動軸に摩擦力によって係合している移動体7とからなる。電気機械変換素子4には、その2つの電極に変動電圧を印加するために、フレキシブル基板8が導電性接着剤9で接続されている。
【0017】
電気機械変換素子4は、印加された電圧に応じて伸縮し、駆動軸6を軸方向に往復移動させる。駆動軸6の移動速度(加速度)は、電気機械変換素子4に印加される変動電圧の波形に応じて変化し、印加する変動電圧の波形を非対称にすることで、駆動軸6は、移動方向によって異なる速度で移動する。移動体7は、駆動軸6が緩慢に移動するときは、駆動軸6に摩擦係合したまま駆動軸6と共に移動するが、駆動軸6が急峻に移動するときは、自身の慣性によってその場に留まろうとして駆動軸6に対して滑り移動する。移動体7は、このような駆動軸6に対する係合移動と滑り移動とを繰り返すことで軸方向に移動させられる。
【0018】
図2に、電気機械変換素子4と駆動軸6とを固定する接着剤5の接着層の詳細を示す。電気機械変換素子4は、直径約0.5μmのPZTの粉末を焼成して形成される直径約3〜5μmのジャガイモのような形状の多数のPZT粒子4aがびっしりと並んで構成されている。電気機械変換素子4は、駆動軸6との接合面に、PZT粒子4aの形状による微細な凹凸が形成される。
【0019】
接着剤5は、例えば、絶縁性のエポキシ系接着剤が用いられ、例えば直径1μmのジビニルベンゼン、アクリルなどの樹脂性の、または、シリカなどの無機系の絶縁性の微粒子10が体積比で例えば10%混入されている。ここで、接着剤5による接着層の厚みtは、電気機械変換素子4の表面から駆動軸6の接合面までを言うものとする。
【0020】
続いて、接着剤5に微粒子10を混入したことによる作用を説明する。
製造工程において、接着剤5を塗布してから電気機械変換素子4と駆動軸6とを圧接すると、微粒子10は、PZT粒子4aの隙間に入り込むことで、圧接力から逃れようとする。しかし、微粒子10は、直径が1μm以上あれば、PZT粒子4aの隙間に完全に埋没することはなく、PZT粒子4aよりも突出することになる。このため、電気機械変換素子4と駆動軸6とを、いくら大きな力で押し付けても、図示するように、微粒子10が電気機械変換素子4と駆動軸6との間の接着層の厚みtを一定の値以上に保つスペーサとして作用する。これによって、各PZT粒子4aの表面を覆う接着層が途切れず電気機械変換素子4と駆動軸6とを堅固に固定できる。
【0021】
また接着剤5による接着層が途切れないということは、電気機械変換素子4と駆動軸6とが電気的に絶縁されることを意味し、駆動軸が導電性であっても電気機械変換素子4の短絡を防止できるという効果がある。
【0022】
さらに、接着剤5の接着層の厚みtと移動体7の移動速度との関係を、接着剤5の縦弾性係数E=2.4GPaの場合を図3に、接着剤5の縦弾性係数E=3.6GPaの場合を図4に示す。図3(E=2.4GPa)においては、接着層の厚みtが約5μm以上で、急激に移動体7の移動速度が低下、つまり、電気機械変換素子4の伸縮を駆動軸6にリニアに伝達できなくなっていることが分かる。また、図4(E=3.6GPa)においては、接着層の厚みtが約7.5μm以上で、駆動軸6を効果的に駆動できなくなることが分かる。このような実験データを基に、本願の発明者らは、移動体7の移動速度、つまり、駆動装置1の駆動効率は、E/t<0.48になると低下することを見出したのである。
【0023】
また、接着剤5として適用できるエポキシ系の接着剤の中には、最大8GPaの縦弾性係数を有するものがあること、および、接着層の厚みtは、膜切れしない最低限度の1μ以上にすべきことを勘案すると、接着剤5は、8≧E/t≧0.48の条件を満たすことが望ましい。
【0024】
この条件に従うと、例えば、接着剤5の縦弾性係数Eが2.4GPaであれば、接着層の厚みtは40μm以下であればよい。しかし、接着層の厚みを40μmにするような大きな微粒子10を混入して接着剤5の必要量を無用に増加させることは好ましくなく、微粒子10の直径は大きくてもPZT粒子4aと同程度、つまり、最大でも5μm程度にすることが好ましい。
【0025】
また、電気機械変換素子4と固定体2との接着においても、接着層の厚みtを適正化するために、接着剤3に微粒子10を混入することが有効であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の駆動装置の断面図。
【図2】図1の駆動装置の詳細部分断面図。
【図3】接着層の厚みと移動体の移動速度の関係を示すグラフ。
【図4】異なる接着剤を用いたときの接着層の厚みと移動体の移動速度の関係を示すグラフ。
【図5】押し付け力と接着層の厚みとの関係を示すグラフ。
【図6】接着剤に微粒子を混入したときの押し付け力と接着層の厚みとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0027】
1 駆動装置
2 固定体
3 接着剤
4 電気機械変換素子
5 接着剤
6 駆動軸
7 移動体
10 微粒子
【出願人】 【識別番号】303000408
【氏名又は名称】コニカミノルタオプト株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏

【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司

【識別番号】100105016
【弁理士】
【氏名又は名称】加野 博


【公開番号】 特開2008−48479(P2008−48479A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219254(P2006−219254)