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【発明の名称】 駆動装置
【発明者】 【氏名】山本 建

【要約】 【課題】コスト/サイズアップを伴うことなく、動力損失を抑制して安定した駆動性能を実現できる駆動装置を提供する。

【構成】所定方向に移動可能な被駆動部材3と、所定方向に対して垂直方向の押し付け力により被駆動部材3と摩擦係合する駆動部材2と、この駆動部材2を所定方向に往復運動させるための駆動力を駆動部材2に入力する圧電素子1と、を有する駆動装置において、駆動部材2は、往復運動の一方向(駆動方向)では、駆動力の一部を押し付け力に変換し、他方向(反駆動方向)では、駆動方向よりも小さな変換比率で押し付け力に変換する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に移動可能な被駆動部材と、前記所定方向に対して垂直方向の押し付け力により前記被駆動部材と摩擦係合する駆動部材と、この駆動部材を前記所定方向に往復運動させるための駆動力を駆動部材に入力する駆動源と、を有する駆動装置において、
前記駆動部材は、前記往復運動の一方向(駆動方向)では、前記駆動力の一部を所定の変換比率で前記押し付け力に変換し、他方向(反駆動方向)では、前記駆動方向よりも小さな変換比率で押し付け力に変換することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記駆動部材は、前記反駆動方向では、前記駆動力から前記押し付け力への変換比率をゼロとすることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置において、
前記駆動部材は、前記駆動方向と前記反駆動方向とを切り替え可能であることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記駆動部材と前記被駆動部材の少なくとも一方は、押し付け力の反力を相殺する構造を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記被駆動部材に押し付け力を付与する押し付け力発生手段を設けたことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記駆動部材は、前記被駆動部材に対する前記駆動部材の相対速度が前記駆動方向に対して正である場合には、前記駆動力の一部を前記押し付け力に変換し、前記相対速度が駆動方向に対して負またはゼロである場合には、駆動力を押し付け力に変換しないことを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動装置において、
前記駆動部材は、前記駆動源と当接する第1部材と、前記被駆動部材と摩擦係合する第2部材とを有し、
前記第1部材および第2部材は、第2部材に対する第1部材の相対速度が前記駆動方向に対して正である場合には、互いに当接して駆動力の一部を押し付け力に変換する第1カム面を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動装置において、
前記第1部材および第2部材は、第2部材に対する第1部材の相対速度が前記駆動方向に対して負である場合には、互いに当接して第1部材から第2部材へ駆動力を伝達する駆動力伝達面を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記駆動源を圧電素子としたことを特徴とする駆動装置。
【請求項10】
請求項9に記載の駆動装置において、
前記圧電素子に供給する電圧波形を正弦波としたことを特徴とする駆動装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記駆動部材と前記被駆動部材とが共振運動となるよう、前記駆動源を制御することを特徴とする駆動装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記被駆動部材に対し、前記駆動部材および前記駆動源を複数設定したことを特徴とする駆動装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の駆動装置において、
前記被駆動部材は、所定の回動中心回りに回動可能であり、
前記駆動部材の往復運動の方向を、前記被駆動部材の回動運動における接線方向としたことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源の往復運動を利用して被駆動部材を一方向へ移動させる駆動装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動装置では、ロッド(駆動部材)と移動子(被駆動部材)をバネによって一定の押し付け力で摩擦係合させ、圧電素子(駆動源)の伸縮速度を制御している。駆動方向ではロッドを小さい速度で動かすことですべりなく移動子を移動させるのに対し、反駆動方向ではロッドを大きな速度で動かし、移動子に生じる慣性力によってすべりを生じさせることにより、移動子を一方向に駆動する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この従来技術では、押し付け力が往復運動の方向によらず一定であるため、ロッドが反駆動方向に運動するときは、摩擦による大きな動力損失を生じる。この対策のために押し付け力を小さくした場合、押し付け力不足によりロッドと移動子との間にすべりが生じるという問題があった。
【0004】
そこで、バネに代えて第2の圧電素子を用い、ロッドの駆動方向に応じて押し付け力を制御するものが知られている。ロッドが駆動方向に動く場合は押し付け力を与え、反駆動方向に動く場合は押し付け力を与えないよう制御することで、動力損失を低減することができる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−41953号公報
【特許文献2】特開2005−57907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の駆動装置にあっては、2つの駆動源(圧電素子)とこれらを駆動する電気回路がそれぞれ必要であるため、コスト/サイズアップを伴う。さらに、2つの圧電素子に電力を供給しなければならず、消費電力増を招くという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、コスト/サイズアップを伴うことなく、動力損失を抑制して安定した駆動性能を実現できる駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の駆動装置では、
所定方向に移動可能な被駆動部材と、前記所定方向に対して垂直方向の押し付け力により前記被駆動部材と摩擦係合する駆動部材と、この駆動部材を前記所定方向に往復運動させるための駆動力を駆動部材に入力する駆動源と、を有する駆動装置において、
前記駆動部材は、前記往復運動の一方向(駆動方向)では、前記駆動力の一部を所定の変換比率で前記押し付け力に変換し、他方向(反駆動方向)では、前記駆動方向よりも小さな変換比率で押し付け力に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の駆動装置にあっては、往復運動の一方向(駆動方向)では、駆動力の一部が所定の変換比率で押し付け力に変換され、他方向(反駆動方向)では、駆動方向よりも小さな変換比率で駆動力の一部が押し付け力に変換される。すなわち、駆動部材において、駆動力の一部を押し付け力に変換しつつ、駆動方向と反駆動方向とで変換比率を変えることで、1つの駆動源のみを用いて押し付け力を最適に制御しようとするものである。
この結果、コスト/サイズアップを伴うことなく、動力損失を抑制して安定した駆動性能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の駆動装置を実施するための最良の形態を、図面に基づく実施例1〜実施例7に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の駆動装置を示す側面図である。実施例1の駆動装置は、圧電素子1と、駆動部材2と、被駆動部材3と、駆動回路4と、を備えている。
【0011】
圧電素子1は、その伸縮方向(図1左右方向)の一面が固定部材5に固定され、他面には駆動部材2が取り付けられている。この圧電素子1には、駆動回路4を経由して図外の電源から電力が供給される。
【0012】
駆動部材2は、圧電素子1の伸縮運動と平行な面で被駆動部材3と摩擦接触する。駆動部材2は、圧電素子1に取り付けられた第1部材6と、被駆動部材3に接触する第2部材7とから構成されている。
【0013】
第1部材6および第2部材7は、第2部材7と被駆動部材3の接触面に対して角度α(0<α<90°)を有し、互いに対向する第1カム面6a,7aと、第2部材7と被駆動部材3の接触面に対して角度90°を有し、互いに対向する第2カム面(駆動力伝達面)6b,7bとを有している。
【0014】
第1カム面6a,7aは、第1部材6の駆動方向(図1左方向)への移動時に当接し、反駆動方向(図1右方向)への移動時に離間するよう設定されている。第2カム面6b,7bは、第1部材の反駆動方向への移動時に当接し、駆動方向への移動時に離間するように設定されている。
【0015】
駆動回路4は、指令値に応じた振幅と周波数の正弦波電圧を圧電素子1に供給する。圧電素子1は、電圧を上昇させることで伸長し、電圧を下降させることで縮退する特性を有する。圧電素子1は、面積当たりの発生力が大きく、小さな寸法で必要な力を得られる。また、矩形波や三角波などに対して正弦波電圧であれば、電流の最大値が小さくなり、駆動回路4の低コスト化を図ることができる。
【0016】
次に、作用を説明する。
[被駆動部材駆動作用]
駆動部材2は、圧電素子1の伸縮によって往復運動し、摩擦力を介して駆動力を被駆動部材3へ伝えることで、被駆動部材3を駆動方向へ移動させる。ここで、第1部材6と第2部材7の力の伝達を考える。
【0017】
駆動力が左(駆動方向)に向いている場合、第1部材6は、第1カム面6aで第2部材7の第1カム面7aを押す。このとき、第1カム面7aに発生する力は、駆動力/sinαであり、その力の駆動力と直角方向の成分は、駆動力/tanαとなる。
【0018】
よって、第2部材7には駆動力および駆動力の直角方向に駆動力/tanαの二つの力が与えられる。この直角方向の力が第2部材7と被駆動部材3の接触面に与えられる押し付け力となり、接触面の摩擦係数がtanαよりも高ければ、駆動力を被駆動部材3に伝達することができる。一方、駆動力が右(反駆動方向)に向いている場合、第1部材6の第2カム面6bは、第2部材7の第2カム面7bを圧電素子1側へ引き戻すが、第2カム面6b,7bの角度は90°であるため、押し付け力は、駆動力/tan90°=0となる。
【0019】
すなわち、第2部材7と被駆動部材3との間に摩擦力が発生することはなく、被駆動部材3に駆動力を伝達しない。したがって、被駆動部材3には駆動方向の駆動力のみが伝達され、動力損失(反駆動方向の駆動力)が発生しないので、効率よく電力を被駆動部材3の運動に変換できる。
【0020】
また、実施例1では、第1カム面6a,7aにより、駆動力の一部(垂直方向成分)を押し付け力に変換しているため、駆動部材2を往復運動させる1つの圧電素子1のみを用いて押し付け力を最適に制御することができる。
【0021】
[カム面による駆動力→押し付け力変換作用]
圧電素子1の伸縮を利用して駆動部材2を往復運動させ、この駆動部材2と摩擦接触させた被駆動部材3を一方向移動させる駆動装置では、駆動力の方向と駆動部材2の運動方向とが完全には一致しない。
【0022】
図2は、駆動部材2と被駆動部材3の時間に対する速度変化を示しており、駆動方向への速度を正としている。図2の左半分の領域(駆動部材の速度が正の領域)では、圧電素子1が延びて駆動部材2が左に動き、右半分では速度が負になるため圧電素子1が縮んで右に動く。ここでは簡単のため、被駆動部材3はほぼ一定の速度で運動するものと考える。
【0023】
このとき、被駆動部材3に対する駆動部材2の相対速度、すなわち駆動部材2の速度から被駆動部材3の速度を差し引いたものが正の場合には、駆動方向に摩擦力が発生し、相対速度が負の場合には、反駆動方向に摩擦力を発生する。したがって、相対速度が正となる間だけ第1部材6から第2部材7へ押し付け力を与えることが望ましいが、その範囲は運転条件によって変化する。
【0024】
特開2005−57907号公報に記載の駆動装置では、ロッド(駆動部材)を往復運動させる第1の電圧素子に加えて、移動子(被駆動部材)に対するロッドの接触圧力を制御する第2の圧電素子を設け、移動子の駆動方向に応じて押し付け力を制御している。この従来技術では、移動子の移動方向を一方向に限定し、動力損失の低減を図ることを目的とし、第2の電圧素子に対して第1の圧電素子に与える電圧波形の立ち上がり時に電圧を付与している。
【0025】
ところが、この従来技術では、移動子に対するロッドの相対速度が駆動方向に対して負から正へと変化する段階で既に押し付け力が発生する。すなわち、移動子に対するロッドの相対速度に応じて押し付け力を発生させるものではないため、動力損失を伴う。
【0026】
これに対し、実施例1では、駆動部材2を第1部材6と第2部材7とに分割し、駆動方向移動時には、第1カム面6a,7aにより駆動力の垂直成分(駆動力/tanα)を押し付け力として発生させる。一方、反駆動方向移動時には、第2カム面6b,7bにより駆動力のみを被駆動部材3に伝達する。
【0027】
すなわち、第2部材7に対する第1部材6の相対速度が正の場合にのみ、第1カム面6a,7aを介して駆動力が押し付け力に変換され、第2部材7に対する第1部材6の相対速度が負またはゼロの場合には、駆動力は押し付け力に変換されない。つまり、実施例1では、カム面の形状(傾斜角度)により、駆動力の方向で押し付け力の有無が自動的に決定されるが、駆動力の方向(駆動方向,反駆動方向)と相対速度の符号(正,負)とは常に一致するため、正確に押し付け力の有無を決定でき、動力損失をほぼゼロに抑えることができる。
【0028】
次に、効果を説明する。
実施例1の駆動装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
【0029】
(1) 所定方向に移動可能な被駆動部材3と、所定方向に対して垂直方向の押し付け力により被駆動部材3と摩擦係合する駆動部材2と、この駆動部材2を所定方向に往復運動させるための駆動力を駆動部材2に入力する圧電素子1と、を有する駆動装置において、駆動部材2は、往復運動の一方向(駆動方向)では、駆動力の一部を所定の変換比率で押し付け力に変換し、他方向(反駆動方向)では、駆動方向よりも小さな変換比率で押し付け力に変換する。これにより、コスト/サイズアップを伴うことなく、動力損失を抑制して安定した駆動性能を実現することができる。
【0030】
(2) 駆動部材2は、反駆動方向では、駆動力から押し付け力への変換比率をゼロとするため、駆動部材2が反駆動方向へ移動するとき、駆動力の一部が押し付け力に変換されず、動力損失を大幅に低減することができる。
【0031】
(3) 駆動部材2は、被駆動部材3に対する駆動部材2の相対速度が、駆動方向に対して正である場合には、駆動力の一部を押し付け力に変換し、相対速度が駆動方向に対して負またはゼロである場合には、駆動力を押し付け力に変換しないため、反駆動方向の駆動力が被駆動部材3に作用せず、動力損失を低減することができる。
【0032】
(4) 駆動部材2は、圧電素子1と当接する第1部材6と、被駆動部材3と摩擦係合する第2部材7とを有し、第1部材6および第2部材7は、第2部材7に対する第1部材6の相対速度が駆動方向に対して正である場合には、互いに当接して駆動力の一部を押し付け力に変換する第1カム面6a,7aを有する。これにより、駆動方向で駆動力の一部を押し付け力に変換する構造を簡単な構成で実現することができる。また、特別な制御を用いることなく駆動力の方向や大きさに合わせて、適切な押し付け力を与えることができる。
【0033】
(5) 第1部材6および第2部材7は、第2部材7に対する第1部材6の相対速度が駆動方向に対して負である場合には、互いに当接して第1部材6から第2部材7へ駆動力を伝達する第2カム面6b,7bを有する。これにより、反駆動方向では押し付け力をゼロとして動力損失を抑制する構造を簡単な構成で実現することができる。
【0034】
(6) 駆動部材3を往復運動させる駆動源を圧電素子1としたため、装置を小型化することができる。
【0035】
(7) 圧電素子1に供給する電圧波形を正弦波としたため、最大電流を小さくすることができ、駆動回路4を含む電気回路の小型化、低コスト化を図ることができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2は、駆動方向と反駆動方向とを切り替え可能とした例である。
【0037】
まず、構成を説明する。
図3は、実施例2の駆動装置の側面図である。
駆動部材11は、固定部材5に支持された2つの左右圧電素子12a,12bで挟まれている。駆動部材11は、第1部材13と第2部材14により構成され、第1部材13には、左右第1カム面13a,13cと左右第2カム面13b,13dとが形成され、第2部材14には、左右第1カム面14a,14cと、左右第2カム面14b,14dとが形成されている。
【0038】
第1部材13の左右第2カム面13b,13dと、第2部材14の左右第2カム面14b,14dとの間には、伸縮可能な左右切り替え素子15a,15bが介装されている。左切り替え素子15aは、駆動方向が左方向のとき縮退し、右方向のとき伸長するよう制御される。右切り替え素子15bは、駆動方向が左方向のとき伸長し、右方向のとき縮退するよう制御される。
【0039】
左切り替え素子15aを伸長させて右切り替え素子15bを退縮させた場合には、右第1カム面13c,14c同士が接触すると共に、左第2カム面13d,14d同士が左切り替え素子15aを介して連結するよう設定されている。
【0040】
逆に、左切り替え素子15aを縮退させて右切り替え素子15bを伸長させた場合には、左第1カム面13a,14a同士が接触すると共に、右第2カム面13b,14b同士が右切り替え素子15bを介して連結するよう構成されている。
【0041】
次に、作用を説明する。
[駆動方向切り替え作用]
【0042】
実施例2では、図3のように右切り替え素子15bを伸ばして左第1カム面13a,14a同士を接触させ、右第2カム面14b,15b同士を連結すると共に、左切り替え素子15aを縮めて右第1カム面13c,14c同士および左第2カム面13d,14d同士は接触させず隙間を空けることで、実施例1と同じ駆動方向とすることができる。この状態で、左右圧電素子15a,15bを互いに反対の位相で伸縮させることにより、実施例1と同様に、左方向の摩擦力だけが被駆動部材に伝わり、高い効率で駆動できる。
【0043】
逆に、左切り替え素子15aを伸ばして右第1カム面13c,14c同士を接触させ、左第2カム面13d,14d同士を連結すると共に、右切り替え素子15bを縮めて左第1カム面13c,14c同士および右第2カム面13b,14b同士は接触させず隙間を空けることで、右方向の摩擦力だけが被駆動部材3に伝わり、同じく高い効率で駆動できる。
【0044】
すなわち、実施例2では、左右切り替え素子15a,15bの伸縮状態を逆にすることで、駆動方向と反駆動方向を簡単に切り替えることができる。
【0045】
次に、効果を説明する。
実施例2の駆動装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏する。
【0046】
(8) 駆動部材11は、駆動方向と反駆動方向とを切り替え可能であるため、被駆動部材3の運動方向を選択的に決定することが可能となり、正逆運転可能な駆動装置として適用範囲の拡大を図ることができる。
【実施例3】
【0047】
実施例3は、駆動部材および被駆動部材を、押し付け力の反力を相殺する構造とした例である。
【0048】
まず、構成を説明する。
図4(a)は実施例3の駆動装置の側面図、図4(b)は駆動装置の背面図である。
実施例3の駆動部材16は、第1部材17と上下2つの第2部材18a,18bとを備え、図1に示した実施例1の駆動部材2と被駆動部材3を、駆動部材2の上面に対して対称にもう一組設け、それぞれの駆動部材と被駆動部材を一体結合した形状を呈している。
【0049】
被駆動部材19は、駆動部材16により上部19aと下部19bとに上下分断されているが、図4(b)に示すように、連結部19cにより、断面コ字状として駆動部材17を避けて結合されている。
【0050】
次に、作用を説明する。
[押し付け力方向成分キャンセル作用]
実施例1において、駆動部材2に働く力の釣り合いを考えると、第1カム面6a,7aに発生する力のうち、駆動力方向成分は、圧電素子1からの駆動力と釣り合うが、押し付け力方向成分は、釣り合う力が存在しないため、軸受等を介して駆動部材2を固定物に支持する必要がある。同様に、被駆動部材3に働く押し付け力も支持する必要があり、それぞれの支持部において摩擦損失が発生する。
【0051】
これに対し、実施例3では、駆動部材17に対し、2つの第2部材18a,18bから同じ大きさの押し付け力方向成分を互いに逆方向に作用させることで、駆動部材17に作用する押し付け力方向成分をキャンセルすることができる。また、被駆動部材19に対し、2つの第2部材18a,18bから同じ大きさの押し付け力方向成分を互いに逆方向に作用させることで、被駆動部材19に作用する押し付け力方向成分をキャンセルすることができる。
【0052】
すなわち、駆動部材17および被駆動部材19に働く押し付け力方向成分を、どちらもキャンセルすることができるため、両者に支持部を設ける必要がなく、支持部との摩擦摺動等による損失を発生しない構成とすることができる。
【0053】
次に、効果を説明する。
実施例3の駆動装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏する。
【0054】
(9) 駆動部材17と被駆動部材19は、押し付け力の反力を相殺する構造を備えるため、駆動部材17および被駆動部材19に作用する押し付け力の反力を支持する構造が不要となり、支持部での摺動による摩擦損失をなくすことができる。
【実施例4】
【0055】
実施例4は、被駆動部材に押し付け力を付与する押し付け力発生手段を設けた例である。
【0056】
まず、構成を説明する。
図5は、実施例4の駆動装置の側面図である。
実施例4では、実施例3の構成に対し、駆動部材20の第1部材を上下二分割し、上部第1部材21aと下部第1部材20bとの間に、押し付け力方向に作用するバネ(押し付け力発生手段)22を設けた。
【0057】
次に、作用を説明する。
[ガタ防止作用]
実施例3では、図4に示したように、上下2個所の第1カム面6a,7aと上下2個所の第2カム面6b,7bのすべてが隙間なく接触しているが、寸法誤差がある場合、図6に示すように、第2カム面6b,7b間に隙間を生じる。このような隙間が生じた場合、圧電素子1および駆動部材16の移動量に対して、隙間がガタとなることで、被駆動部材19の移動量が小さくなり、駆動装置として得られる速度が小さくなる。
【0058】
これに対し、実施例4では、バネ22によって駆動部材21a,21bを被駆動部材19a,19bにそれぞれ押し付ける構成としたため、寸法誤差等により生じる隙間をなくすことができる。なお、バネ22の力は小さいため、反駆動方向への摩擦損失は小さく抑えられる。
【0059】
次に、効果を説明する。
実施例4の駆動装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)、実施例3の効果(9)に加え、以下の効果を奏する。
【0060】
(10) 被駆動部材20に押し付け力を付与するバネ22を設けたため、圧電素子1と駆動部材20および被駆動部材19との間の接触部分におけるガタ(隙間)をなくすことができる。
【実施例5】
【0061】
実施例5は、往復運動の周波数を、系の共振周波数近傍とした例である。
なお、構成については、図1に示した実施例1と同様であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0062】
次に、作用を説明する。
[共振周波数領域を利用した速度向上作用]
図7は、実施例5の駆動部材2の往復運動周波数に対する、被駆動部材3の速度を計算したものであるが、ある周波数近傍で共振現象を示しており、急激に速度が増加している。よって、この条件を満足する電圧波形を圧電素子1に与えることにより、被駆動部材3の高速移動が可能となり、用途拡大を図ることができる。
【0063】
次に、効果を説明する。
実施例5の駆動装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏する。
【0064】
(11) 駆動部材2の往復運動が共振運動となるよう、電圧素子1を制御するため、被駆動部材3を高速移動させることができ、駆動装置の用途範囲の拡大を図ることができる。
【実施例6】
【0065】
実施例6は、被駆動部材に対して駆動部材を複数設定した例である。
【0066】
図8は、実施例6の駆動装置の側面図であり、実施例6では、1つの被駆動部材3に対し、3つの駆動部材2を設けている。各圧電素子1に供給する正弦波電圧は、それぞれ位相を120°ずつずらしたものとする。
【0067】
次に、作用を説明すると、駆動部材を1つとした場合には、駆動部材が反駆動方向に動いているときは力を発生しないため、図9に示すように、駆動力に変動が発生する。このような変動は、装置の振動を引き起こすため好ましくない。
【0068】
これに対し、実施例6では、3つの駆動部材2を、位相を120°ずつづらして往復動させるため、1つの駆動部材2が駆動量を発生しない場合であっても、他の2つの駆動部材2が力を発生する。すなわち、各駆動部材2の駆動量の合計を、図10のように滑らかな駆動力とすることができ、被駆動部材3の速度変動を小さくすることができる。
【0069】
次に、効果を説明する。
実施例6の駆動装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)に加え、以下の効果を奏する。
【0070】
(12) 駆動部材2を複数(3個)設定したため、被駆動部材3の速度変動を小さくできる。
【実施例7】
【0071】
実施例7は、被駆動部材を回転体とした例である。
【0072】
まず、構成を説明する。
図11は、実施例7の駆動装置の正面図である。
実施例7では、被駆動部材23を、所定の回動中心23a回りに回動可能な円筒形状とし、その外周面に接して実施例2の駆動部材11を90°ピッチで4つ配置している。
【0073】
次に、作用を説明すると、4つの駆動部材11が発生する駆動力は、被駆動部材23を回転させるモーメントになるため、回転出力を得ることができる。すなわち直動だけでなく、回転アクチュエータとしての用途にも使える。
【0074】
次に、効果を説明する。
実施例7の駆動装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(7)、実施例2の効果(8)に加え、以下の効果を奏する。
【0075】
(13) 被駆動部材23は、所定の回動中心23a回りに回動可能であり、駆動部材11の往復運動の方向を、被駆動部材23の回動運動における接線方向としたため、機構の追加なしに回転出力を得ることができる。
【0076】
(他の実施例)
以上、本発明の駆動装置を実施例1〜実施例7に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
例えば、駆動源は圧電素子に限らず、電磁ソレノイドや形状記憶合金、イオン性高分子など他のアクチュエータを用いてもよい。また駆動力の一部を押し付け力に変換する機構として、一般的なカム機構を用いてもよい。
【0078】
実施例4では、駆動部材20の第1部材を上下二分割し、上部第1部材21aと下部第1部材20bとの間にバネ22を挿入した例を示したが、バネ22を挿入する位置は、第2カム面6b,7bの間や被駆動部材19の連結部19cでもよい。また実施例1の構成の場合には、駆動部材2や被駆動部材3の支持部に挿入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1の駆動装置を示す側面図である。
【図2】実施例1の駆動部材2と被駆動部材3の時間に対する速度変化を示す図である。
【図3】実施例2の駆動装置の側面図である。
【図4】実施例3の駆動装置の側面図(a)、および駆動装置の背面図(b)である。
【図5】実施例4の駆動装置の側面図である。
【図6】ガタ発生時の状態を示す実施例3の側面図である。
【図7】実施例5の駆動部材2の往復運動周波数に対する被駆動部材3の速度を示す図である。
【図8】実施例6の駆動装置の側面図である。
【図9】実施例1の駆動力変化を示す図である。
【図10】実施例6の駆動力変化を示す図である。
【図11】実施例7の駆動装置の正面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電素子(駆動源)
2 駆動部材
3 被駆動部材
4 駆動回路
5 固定部材
6 第1部材
6a 第1カム面
6b 第2カム面
7 第2部材
7a 第1カム面
7b 第2カム面
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道


【公開番号】 特開2008−5614(P2008−5614A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172117(P2006−172117)