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【発明の名称】 内燃機関用スパークプラグ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】福澤 怜門

【氏名】弓野 次郎

【要約】 【課題】主体金具の外周にガスケットが設けられてなるスパークプラグに関し、発火ポイントのばらつきの抑制を図り、気密性能を確保しつつ、ガスケットの脱落防止を図る。

【解決手段】スパークプラグ1は、絶縁碍子2や、これを保持する主体金具3などから構成され、シリンダヘッド41のネジ孔42に対し、雄ネジ部15を螺着させることによって取付けられる。螺着に伴いガスケット18は、ガスケット受け部16aとネジ孔42の開口周縁部との間で潰れるように圧縮される。ガスケット18は、中実円環状をなし、本体部51と、本体部51よりも内周側に括れ部52を介して延びる環状爪部53とを備える。括れ部52に対応する部位においては先端側に開口する環状溝部54が形成され、ガスケット18の内径は、雄ネジ部15の外径よりも小さく形成されている。また、環状溝部54のうち、内周側の壁面がテーパ面55となっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に貫通する軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記軸孔に挿設された中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられ、自身の外周に取付用の雄ネジ部を有する筒状の主体金具と、
自身の一部が前記中心電極の先端部と対向するように、前記主体金具に設けられ、前記中心電極の先端部との間に火花放電間隙を形成する接地電極とを備え、
前記主体金具の前記雄ネジ部の後端側には、外周方向へ突出する環状のガスケット受け部が形成されるとともに、前記主体金具の外周には、前記ガスケット受け部に当接可能な金属製のガスケットが設けられてなる内燃機関用スパークプラグであって、
前記ガスケットは、中実円環状をなすとともに、その内径は、前記雄ネジ部の外径よりも小さく、かつ、前記軸線方向を深さとする溝部が全周に亘って形成されていることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記溝部よりも内周側の内周側部分と、前記溝部よりも外周側の外周側部分とを具備し、前記軸線方向における前記内周側部分の厚みよりも、前記軸線方向における前記外周側部分の厚みの方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用スパークプラグ。
【請求項3】
前記溝部は、前記軸線方向における前記外周側部分の厚みの半分を超えて深く形成される一方で、
前記軸線方向における前記内周側部分の厚みは、前記軸線方向における前記外周側部分の厚みの半分を超えて大きく形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用スパークプラグ。
【請求項4】
前記溝部のうち、内周側の壁面がテーパ面となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関用スパークプラグ。
【請求項5】
前記ガスケットの最内周側部分の前記軸線方向における厚みをtとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関用スパークプラグ。
【数1】


但し、Aはガスケットの内径であり、
Pはネジのピッチであり、
Dpはネジ有効径であり、
Hはネジの谷の仮想点とネジの山の仮想点との水平距離であり、
θはガスケットの内端が雄ネジ部に沿って摺動すると仮定したときの軸線に沿った任意の断面におけるガスケットの内端線と軸線とのなす角(リード角)である。
【請求項6】
請求項1に記載の内燃機関用スパークプラグの製造方法であって、
環状をなすとともに、自身の内径が前記主体金具の雄ネジ部の外径よりも大きいガスケット前駆体を形成する工程と、
前記ガスケット前駆体を前記ガスケット受け部に当接させ、
外周側には、押圧方向に突出する前記溝部形成用の凸部を有するとともに、当該凸部の内周側に押圧方向に拡径するテーパ面を介して前記溝部が形成される部位よりも内周側の部位を受ける受け面を有する加工治具を用いて、前記ガスケット前駆体を押圧することに基づき、前記溝部よりも内周側の内周側部分の内径が前記雄ネジ部の外径よりも小さい前記ガスケットを形成する工程と
を備えることを特徴とする内燃機関用スパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に使用されるスパークプラグに係り、特に、主体金具の外周にガスケットが設けられてなるスパークプラグ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば自動車用ガソリンエンジンの点火に使用される一般的なスパークプラグは、中心電極と、その外周に設けられた絶縁体と、当該絶縁体の外周に設けられた筒状の主体金具と、基端部が前記主体金具の先端部に接合された接地電極とを備える。主体金具の外周面には、雄ネジ部が形成されており、雄ネジ部の後端側には、外周方向へ突出する環状のガスケット受け部が形成されている。一方、エンジンのシリンダヘッドには、雌ネジ部を有するネジ孔が形成されている。そして、当該ネジ孔に、前記雄ネジ部が螺着させられることで、スパークプラグがエンジンに対し取付けられる。ここで、主体金具の雄ネジ部の後端側とガスケット受け部との間はネジ首と称される部位となっており、当該ネジ首には、環状のガスケットが設けられている。そして、前記ネジ孔への雄ネジ部の螺着、つまりねじ込みに伴って、ガスケットは、ガスケット受け部と、ネジ孔の開口周縁部との間で潰れるように圧縮され、これにより、ネジ孔とガスケット受け部との間がシールされる。
【0003】
従来のガスケットとしては、リング状の金属薄板部材を、特殊な金型装置を用いて径方向に曲げ加工する等して得られた、所定形状(例えば、断面略S字状等のいわば中空形状)をなすものが一般的である(例えば、特許文献1等参照)。かかるガスケットは、前記ネジ首に挿通された後、所定の爪出し加工が施されることで、内周方向に向けて複数の(例えば3つの)爪部が突出形成される。このように従来では、ガスケット挿通後において爪部が形成されることで、ガスケットが雄ネジ部のネジ山に乗り上げたりすることがなく、もってガスケットの脱落防止が図られている。
【0004】
ところで、近年の成層燃焼タイプのエンジン等にあっては、発火ポイント(すなわち、中心電極と接地電極との間に形成される火花放電間隙の燃焼室内における位置)にばらつきが生じると、予定していた燃焼態様が得られなくなってしまう場合がある。それ故、このようなエンジンにおいては、接地電極の角度位置(向き)もさることながら、スパークプラグの取付状態における、発火ポイントの上下方向(プラグ軸線方向)の位置というのが、安定した燃焼態様を確保する上で非常に重要であるといえる。
【0005】
しかし、上述したいわば中空形状のガスケットを用いた場合、螺着に際しての潰れ変形量が比較的大きいので、変形量のばらつきも大きいものとなってしまう。このため、スパークプラグをエンジンに所定の規定トルクで取付けた場合であっても燃焼室内における発火ポイントがばらついてしまうことがあり、安定した燃焼を図る上で支障が生じてしまうことが懸念される。
【0006】
これに対し、所定の肉厚を有し、円環板状をなすいわば中実状のガスケットを用いることも考えられる(例えば、特許文献2等参照)。このようなガスケットを用いることで、螺着に際しての潰れ変形量を比較的少なくでき、発火ポイントのばらつきの抑制を図ることができる。また、かかる中実状のガスケットにおいても、上記同様、ガスケット挿通後の爪出し加工によって、内周方向に向けて複数の爪部を突出形成して脱落防止を図ることが考えられる。
【特許文献1】特開2001−187966号公報
【特許文献2】実開昭61−57830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような断面略S字状等の中空形状のガスケットの場合、爪部を形成したとしても爪部よりも外周側は所定の高さを有しており、スパークプラグがエンジンに取付けられガスケットが潰れて変形したときに、エンジンのネジ孔の開口部周縁部とガスケット受け部との間に隙間が形成されてしまうことがないため、スパークプラグの気密性能に支障が生じることはない。ところが、円環板状等の中実状のガスケットの場合、爪部を形成することで、爪部の周囲分に局所的な凹みが形成されてしまうおそれがある。そのため、当該凹みを介してガスが漏れてしまい、気密性能に支障が生じてしまうことが懸念される。
【0008】
また、複数の爪部を突出形成することで、当該爪部がネジ山に引っかかり、プラグ軸線方向への抜け防止を図ることができるものの、一旦スパークプラグを装着してしまうと、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、爪出し加工により形成された爪部というのは、局所的であって、螺着に際して潰れ変形しやすく、螺着完了後には、比較的薄肉となってしまうことが想定される。この場合、ネジを緩めてスパークプラグを取り外そうとした場合、或いは、取り外した後において、薄肉となった爪部内端が雄ネジ部のネジ谷に入り込んでしまい、ネジ谷に沿ってガスケットが相対回転し、最終的にスパークプラグから脱落してしまうおそれがある。また、爪出し加工のばらつきにより、取付作業中においても脱落のおそれがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、主体金具の外周にガスケットが設けられてなるスパークプラグに関し、発火ポイントのばらつきの抑制を図ることができ、気密性能を確保しつつ、ガスケットの脱落防止を図ることのできるスパークプラグ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題等を解決するのに適した各構成を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果等を付記する。
【0011】
構成1.本構成のスパークプラグは、
軸線方向に貫通する軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記軸孔に挿設された中心電極と、
前記絶縁体の外周に設けられ、自身の外周に取付用の雄ネジ部を有する筒状の主体金具と、
自身の一部が前記中心電極の先端部と対向するように、前記主体金具に設けられ、前記中心電極の先端部との間に火花放電間隙を形成する接地電極とを備え、
前記主体金具の前記雄ネジ部の後端側には、外周方向へ突出する環状のガスケット受け部が形成されるとともに、前記主体金具の外周には、前記ガスケット受け部に当接可能な金属製のガスケットが設けられてなる内燃機関用スパークプラグであって、
前記ガスケットは、中実円環状をなすとともに、その内径は、前記雄ネジ部の外径よりも小さく、かつ、前記軸線方向を深さとする溝部が全周に亘って形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成1によれば、エンジン等の内燃機関に形成されたネジ孔に対し、スパークプラグの主体金具外周の雄ネジ部を螺着させること、つまりねじ込むことに伴って、ガスケットは、ガスケット受け部と、ネジ孔の開口周縁部との間で潰れるように圧縮され、これにより、ネジ孔とガスケット受け部との間がシールされる。
【0013】
さて、構成1におけるガスケットは、中実円環状をなしている。このため、断面略S字状等のいわば中空形状をなすガスケットに比べ、螺着に際しての潰れ変形量を小さくでき、変形量のばらつきも抑制することができる。その結果、スパークプラグの取付状態における発火ポイントにばらつきが生じにくく、安定した燃焼態様を確保することができる。また、ガスケットの内径は、雄ネジ部の外径よりも小さいので、ガスケットが雄ネジ部のネジ山に乗り上げたりすることがない。結果として、軸線方向に沿ったガスケットの脱落防止を図ることができる。
【0014】
さらに、構成1におけるガスケットは、(1)中実円環状をなしており、その内端も略円形状をなしていること、(2)内径は、前記雄ネジ部の外径よりも小さいこと、(3)軸線方向を深さとする溝部が全周に亘って形成されていること、
から、一旦雄ネジ部を通って挿通させられた後、従来の爪出し加工に相当する内径小径化加工(いわば環状爪出し加工)が施されることで、前記主体金具のネジ首に設けられたものであるといえる。すなわち、所定の環状の治具等が用いられた上で、押し込まれることで、前記溝部が形成され、もって押し込まれた肉部が内周側に張り出すことで、ガスケットの内径が雄ネジ部の外径よりも小さくなったものであるといえる。従って、構成1におけるガスケットは、従来技術で説明したような複数の局所的な爪部を具備するものとは異なり、全周に亘って一様に変形するため、局所的な凹みが形成されてしまうことがない。そのため、当該局所的な凹みを介してガスが漏れてしまうといった事態が生じず、気密性能に支障が生じてしまうという不具合を防止することができる。
【0015】
また、爪部が局所的でないことから、螺着に際して潰れ変形が生じにくい。そのため、螺着完了後に、ガスケット内周部が比較的薄肉となってしまうことが起こりにくく、内周部が雄ネジ部のネジ谷に入り込んでガスケットが相対回転してしまうといった事態も起こりにくくすることができる。
【0016】
構成2.本構成のスパークプラグは、上記構成1において、
前記ガスケットは、前記溝部よりも内周側の内周側部分と、前記溝部よりも外周側の外周側部分とを具備し、前記軸線方向における前記内周側部分の厚みよりも、前記軸線方向における前記外周側部分の厚みの方が大きいことを特徴とする。
【0017】
上記構成2によれば、スパークプラグの螺着過程において、溝部よりも外周側の外周側部分がより優先的に圧縮応力を受けることとなる。従って、螺着に際してのガスケットの潰れ変形量は、前記外周側部分に基づいて、主として決定されることとなる。ここで、ガスケットの外周側部分が中実状をなすことから、個々のガスケットにおける前記外周側部分の厚みのばらつきを極力少なくすることができ、比較的容易に、スパークプラグの取付状態における発火ポイントのばらつきを抑制できる。その結果、より安定した燃焼態様を確保することができる。また、逆に、溝部よりも内周側の内周側部分は、螺着に際し圧縮されにくいといえる。そのため、螺着に際しての潰れ変形によるガスケット内周部の薄肉化、及び、薄肉化による不具合を防止することができる。
【0018】
構成3.本構成のスパークプラグは、上記構成2において、
前記溝部は、前記軸線方向における前記外周側部分の厚みの半分を超えて深く形成される一方で、
前記軸線方向における前記内周側部分の厚みは、前記軸線方向における前記外周側部分の厚みの半分を超えて大きく形成されていることを特徴とする。
【0019】
構成3によれば、所定の環状の治具等が用いられた上で、押し込まれることで、前記溝部が形成される場合、押し込まれた肉部が内周側に張り出されやすい。しかも、軸線方向における前記内周側部分の厚みも比較的大きい。これらのことから、より一層の脱落防止を図ることができる。
【0020】
構成4.本構成のスパークプラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、
前記溝部のうち、内周側の壁面がテーパ面となっていることを特徴とする。
【0021】
上述したように、構成1等におけるガスケットは、所定の治具等が用いられた上で、環状に押し込まれることで、前記溝部が形成され、もって押し込まれた肉部が内周側に張り出すことで、ガスケットの内径が雄ネジ部の外径よりも小さくなったものであるといえる。ここで、形成される溝部の断面形状が矩形状等になるような治具が用いられると、内周側に張り出された内周側部分の厚みが極端に小さくなってしまう場合も想定される。これに対し、構成3では、内周側の壁面がテーパ面となるような治具等が用いられることで、溝部が形成されている。そのため、押し込まれて内周側に張り出されて形成された内周側部分の厚みは溝部の変形に連られて小さくなりすぎることなく、ガスケット内径の小径化を実現することができる。
【0022】
構成5.本構成のスパークプラグは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、
前記ガスケットの最内周側部分の前記軸線方向における厚みをtとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0023】
【数2】


但し、Aはガスケットの内径であり、
Pはネジのピッチであり、
Dpはネジ有効径であり、
Hはネジの谷の仮想点とネジの山の仮想点との水平距離であり、
θはガスケットの内端が雄ネジ部に沿って摺動すると仮定したときの軸線に沿った任意の断面におけるガスケットの内端線と軸線とのなす角(リード角)である。
【0024】
上述したように、ガスケットの最内周側部分が比較的薄肉の場合、内周側部分が雄ネジ部のネジ谷に入り込んでしまい、ネジ谷に沿ってガスケットが相対回転してしまうことが懸念される。この点、上記構成4によれば、ガスケットの最内周側部分の軸線方向における厚みをtとしたとき、厚みtが十分に大きいことから、内周側部分が雄ネジ部のネジ谷に入り込んでしまうといった事態が起こらない。その結果、ガスケットの離脱をより確実に防止することができる。
【0025】
また、上述したスパークプラグは、次のようにして製造することができる。
【0026】
構成6.本構成のスパークプラグの製造方法は、
環状をなすとともに、自身の内径が前記主体金具の雄ネジ部の外径よりも大きいガスケット前駆体を形成する工程と、
前記ガスケット前駆体を前記ガスケット受け部に当接させ、
外周側には、押圧方向に突出する前記溝部形成用の凸部を有するとともに、当該凸部の内周側に押圧方向に拡径するテーパ面を介して前記溝部が形成される部位よりも内周側の部位を受ける受け面を有する加工治具を用いて、前記ガスケット前駆体を押圧することに基づき、前記溝部よりも内周側の内周側部分の内径が前記雄ネジ部の外径よりも小さい前記ガスケットを形成する工程と
を備えることを特徴とする。
【0027】
構成6によれば、上述した作用効果を奏し得るスパークプラグを、作業の煩雑化等を招くことなく、安定的かつ効率的に製造することができる。また、形成されたガスケットが、加工治具に食いつくという生産性の妨げとなる要因を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、スパークプラグ1を示す一部破断正面図である。なお、図1では、スパークプラグ1の軸線C1方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
【0029】
スパークプラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
【0030】
絶縁碍子2には、軸線C1に沿って軸孔4が貫通形成されている。そして、軸孔4の先端部側には中心電極5が挿入、固定され、後端部側には端子電極6が挿入、固定されている。軸孔4内における中心電極5と端子電極6との間には、抵抗体7が配置されており、この抵抗体7の両端部は導電性のガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0031】
中心電極5は、絶縁碍子2の先端から突出し、端子電極6は絶縁碍子2の後端から突出した状態でそれぞれ固定されている。また、中心電極5には、その先端に貴金属チップ31が溶接により接合されている(これについては後述する)。
【0032】
一方、絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、軸線C1方向略中央部において径方向外向きに突出形成されたフランジ状の大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれより細径に形成され、内燃機関(エンジン)の燃焼室に晒される脚長部13とを備えている。絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、脚長部13を含む先端側は、筒状に形成された主体金具3の内部に収容されている。そして、脚長部13と中胴部12との連接部には段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
【0033】
主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面にはスパークプラグ1をエンジンのシリンダヘッド41(図2参照)に取付けるための雄ネジ部15が形成されている。雄ネジ部15の後端側には外周側に突出するフランジ部16が形成され、フランジ部16の先端側面がガスケット受け部16aとなっている。雄ネジ部15の後端とガスケット受け部16aとの間には、雄ネジの形成されていないネジ首17が形成され、当該ネジ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている(これについては後述する)。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を前記シリンダヘッド41に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
【0034】
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するための段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定される。なお、絶縁碍子2及び主体金具3双方の段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料空気が外部に漏れないようにしている。
【0035】
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
【0036】
また、主体金具3の先端面26には、略L字状をなす接地電極27が接合されている。すなわち、接地電極27は、前記主体金具3の先端面26に対しその基端部が溶接されるとともに、先端側が曲げ返されて、その側面が中心電極5の先端部(貴金属チップ31)と対向するように配置されている。当該接地電極27には、前記貴金属チップ31に対向するようにして貴金属チップ32が設けられている。そして、これら貴金属チップ31,32間の隙間が火花放電間隙33となっている。
【0037】
中心電極5は、銅又は銅合金からなる内層5Aと、ニッケル(Ni)合金からなる外層5Bとにより構成されている。また、接地電極27は、Ni合金等で構成されている。
【0038】
中心電極5は、その先端側が縮径されるとともに、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端面が平坦に形成されている。ここに円柱状をなす上記貴金属チップ31を重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザ溶接、電子ビーム溶接、或いは抵抗溶接等を施すことにより貴金属チップ31と中心電極5とが接合されている。一方、これに対向する貴金属チップ32は、接地電極27の所定位置上に貴金属チップ32を位置合わせし、その接合面外縁部に沿って溶接することにより接合される。尚、貴金属チップ31及びこれに対向する貴金属チップ32のうちいずれか一方(のチップ)又は両方を省略する構成としてもよい。この場合には、貴金属チップ31と接地電極27の本体部との間、或いは対向する貴金属チップ32と中心電極5の本体部との間で火花放電間隙33が形成される。
【0039】
ここで、本実施形態の特徴的部分であるガスケット18について詳述する。図2に示すように、スパークプラグ1は、エンジンのシリンダヘッド41のネジ孔42に対し、前記雄ネジ部15を螺着させることによって取付けられる。前記螺着、つまりねじ込みに伴って、ガスケット18は、ガスケット受け部16aと、ネジ孔42の開口周縁部43との間で潰れるように圧縮され、これにより、ネジ孔42とガスケット受け部16aとの間がシールされるようになっている。
【0040】
さて、本実施形態におけるガスケット18は、図3(b)に示すように、中実円環状をなしている。より詳しくは、ガスケット18は、銅合金からなり、外周側部分としての本体部51と、本体部51よりも内周側に括れ部52を介して延びる内周側部分としての環状爪部53とを備えている。また、括れ部52に対応する部位においては先端側(図3(b)では上側、図2では下側)に開口する環状溝部54が形成されている。ガスケット18の内径Aは、雄ネジ部15の外径D(図4(a)参照)よりも小さく形成されており、これにより、ガスケット18のネジ山への乗り上げ防止が図られている。また、環状溝部54のうち、内周側の壁面がテーパ面55となっている。
【0041】
さらに、本体部51の幅(図3(b)の左右方向の長さ)は、環状爪部53の幅以上となるよう設定されている。また、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtよりも、本体部51の厚みthの方が大きく設定されている。但し、本実施形態では、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtは、下記式(1)を満たしている。
【0042】
【数3】


但し、Aはガスケットの内径であり、
Pはネジのピッチであり、
Dpはネジ有効径であり、
Hはネジの谷の仮想点とネジの山の仮想点との水平距離であり、
θはガスケットの内端が雄ネジ部に沿って摺動すると仮定したときの軸線に沿った任意の断面におけるガスケットの内端線と軸線とのなす角(リード角)である。
【0043】
ここで、上記式(1)について説明する。図4(a),(b)に示すように、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtがあまりに小さい場合、つまり薄肉である場合、たとえガスケット18の内径Aが、雄ネジ部15の外径Dよりも小さかったとしても、薄肉の環状爪部53内端が雄ネジ部15のネジ谷に入り込んでしまう場合もある。この場合、ネジ谷に沿ってガスケット18が相対回転し、最終的に脱落してしまうことが懸念される。例えば、図4(a)に示すように、環状爪部53内端が雄ネジ部15のネジ谷に入り込み、雄ネジ部15に沿って摺動してしまう場合が想定される。このような事態を回避するためには、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtが、ネジ谷に入り込まない程度に十分に大きければよいといえる。
【0044】
そこで、同図に示すような状態、つまり環状爪部53内端が雄ネジ部15のネジ谷に入り込み、雄ネジ部15に沿って摺動してしまう状態になったときを想定すると、次の式(2)が成立する。
【0045】
P:L=H:[A−(Dp−H)]/2 ・・・(2)
但し、Lはガスケット18の内端(2つの内端点X1,X2)が雄ネジ部15に沿って(ネジ山に当接した状態で)摺動すると仮定したときの最内端点X1(図4(a)のβ部分を示す拡大図たる図4(b)参照)から相対するネジ山までの鉛直距離(点X1,Z間の距離)である。
【0046】
上記式(2)より、下記式(3)が成立する。
【0047】
L=P(A+H−Dp)/2H ・・・(3)
一方、図4(b)の三角形X1X2Zに着目すると、正弦定理より、次の式(4)が成立する。
【0048】
【数4】


但し、t1は、環状爪部53内端が雄ネジ部15のネジ谷に入り込み、雄ネジ部15に沿って摺動してしまう場合の軸線C1方向の最大厚みである。
【0049】
上記式(4)より、次の式(5)が成立する。
【0050】
【数5】


上記式(5)のLに、上記式(3)のLを代入すると、次の式(6)が成立する。
【0051】
【数6】


それ故、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtが、上記式(1)を満たしていれば、環状爪部53がネジ谷に入り込まないといえる。
【0052】
さらに、本実施形態では、前記環状溝部54は、前記本体部51の厚みthの半分を超えて深く形成されている(図5(a)の太線参照)。その一方で、前記環状爪部53の軸線C1方向における厚みtは、本体部51の厚みthの半分を超えて大きく形成されている(図5(b)の太線参照)。
【0053】
次に、上記のように構成されてなるスパークプラグ1の製造方法について説明する。まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状の金属素材(例えばS17CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)を冷間鍛造加工により貫通孔を形成し、概形を製造する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
【0054】
続いて、主体金具中間体の先端面に、Ni系合金(例えばインコネル系合金等)からなる接地電極27が抵抗溶接される。当該溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位に雄ネジ部15が転造によって形成される。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。接地電極27の溶接された主体金具3には、亜鉛メッキ或いはニッケルメッキが施される。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理が施されることとしてもよい。
【0055】
さらに、接地電極27の先端部には、上述した貴金属チップ32が、抵抗溶接やレーザ溶接等により接合される。尚、溶接をより確実なものとするべく、当該溶接に先だって溶接部位のメッキ除去が行われたり、或いは、メッキ工程に際し溶接予定部位にマスキングが施されたりする。また、当該貴金属チップ32の溶接を、後述する組付けの後に行うこととしてもよい。
【0056】
一方、前記主体金具3とは別に、絶縁碍子2を成形加工しておく。例えば、アルミナを主体としバインダ等を含む原料粉末を用い、成型用素地造粒物を調製し、これを用いてラバープレス成形を行うことで、筒状の成形体が得られる。得られた成形体に対し、研削加工が施され整形される。そして、整形されたものが焼成炉へ投入され焼成される。焼成後、種々の研磨加工を施すことで、絶縁碍子2が得られる。
【0057】
また、前記主体金具3、絶縁碍子2とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、Ni系合金が鍛造加工され、その中央部に放熱性向上を図るべく銅合金からなる内層5Aが設けられる。そして、その先端部には、上述した貴金属チップ31が抵抗溶接やレーザ溶接等により接合される。
【0058】
そして、上記のようにして得られた絶縁碍子2及び中心電極5と、抵抗体7と、端子電極6とが、ガラスシール層8,9によって封着固定される。ガラスシール層8,9としては、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調製されており、当該調製されたものが抵抗体7を挟むようにして絶縁碍子2の軸孔4内に注入された後、後方から前記端子電極6が押圧された状態とした上で、焼成炉内にて焼き固められる。尚、このとき、絶縁碍子2の後端側の胴部表面には釉薬層が同時に焼成されることとしてもよいし、事前に釉薬層が形成されることとしてもよい。
【0059】
その後、上記のようにそれぞれ作成された中心電極5及び端子電極6を備える絶縁碍子2と、接地電極27を備える主体金具3とが組付けられる。より詳しくは、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定される。
【0060】
そして、接地電極27を屈曲させることで、中心電極5の先端に設けられた貴金属チップ31及び接地電極27に設けられた貴金属チップ32間の前記火花放電間隙33を調整する加工が実施される。
【0061】
最後に、前記雄ネジ部15を通るようにして、前記ガスケット18の前駆体18Aがネジ首17まで挿通される。この前駆体18Aは、挿通時点においては図3(a)に示すように、断面矩形状の円環状をなしている。また、当該前駆体18Aの内径は、主体金具3の雄ネジ部15の外径よりも大きく設定されている。そして、当該前駆体18Aは、前記ガスケット受け部16aに支持された状態で、図3(a)に2点鎖線で示す円環状をなす所定の加工治具PC(以下、単に「治具PC」と称する)により押圧される。尚、当該治具PCは、外周側に、押圧方向(図の下方)に突出する環状溝部形成用の凸部PC1を有するとともに、当該凸部PC1の内周側に押圧方向に拡径するテーパ面PC2を介して環状爪部53を受ける受け面PC3を有するものである。そして、このように円環状の治具PCが押し込まれることで前記環状溝部54が形成される。このとき押し込まれた肉部が内周側に張り出すことで、環状爪部53が形成される。これにより、ガスケット18の内径Aが雄ネジ部15の外径Dよりも小さくされることとなり、ガスケット18の抜けが防止されることとなる。尚、前記治具PCには上記のとおりテーパ面PC2が設けられていることから、結果として環状溝部54の内周側壁面がテーパ面55とされる。また、当該治具PCのテーパ面PC2の存在により、押し込まれて内周側に張り出されて形成された環状爪部53の厚みtは環状溝部54の変形に連られて小さくなりすぎることなく、ガスケット18内径の小径化を実現することができる。
【0062】
そして、上述した一連の工程を経ることで、ガスケット18の取付けられたスパークプラグ1が製造される。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ガスケット18が中実円環状をなしているため、断面略S字状等のいわば中空形状をなすガスケットに比べ、螺着に際しての潰れ変形量を小さくでき、変形量のばらつきも抑制することができる。その結果、スパークプラグ1の取付状態における発火ポイントにばらつきが生じにくく、安定した燃焼態様を確保することができる。
【0064】
また、上記のとおり、ガスケット18は、その前駆体18Aが挿通された後、所定の治具PCが用いられ、押し込まれることで、環状溝部54が形成され、もって押し込まれた肉部が内周側に張り出すことで、環状爪部53が形成される。従って、複数の局所的な爪部を具備するものとは異なり、本実施形態におけるガスケット18に関しては、局所的な凹みが形成されない。そのため、当該局所的な凹みを介してガスが漏れてしまうといった事態が生じず、気密性能に支障が生じてしまうという不具合を防止することができる。
【0065】
また、爪部が局所的でないことから、螺着に際して潰れ変形が生じにくい。そのため、螺着完了後に、ガスケット18内周部が比較的薄肉となってしまうことが起こりにくく、内周部が雄ネジ部のネジ谷に入り込んでガスケットが相対回転してしまうといった事態も起こりにくくすることができる。
【0066】
さらに、ガスケット18は、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtよりも、本体部51の厚みthの方が大きく設定されている。このため、スパークプラグ1の螺着過程において、本体部51がより優先的に圧縮応力を受け、螺着に際してのガスケット18の潰れ変形量は、主として当該本体部51に基づいて決定されることとなる。ここで、本体部51も中実状をなすことから、個々のガスケット18における本体部51の厚みのばらつきを極力少なくすることができ、比較的容易に、スパークプラグ1の取付状態における発火ポイントのばらつきを抑制できる。また、逆に、環状溝部54よりも内周側の環状爪部53は、螺着に際し圧縮されにくいといえる。そのため、螺着に際しての潰れ変形によるガスケット18内周部の薄肉化、及び、薄肉化による不具合を防止することができる。
【0067】
特に、本実施形態では、環状爪部53の軸線C1方向における厚みtが、上記式(1)を満たしている。すなわち、厚みtが十分に大きいことから、環状爪部53が雄ネジ部のネジ谷に入り込んでしまうといった事態が起こらない。その結果、ガスケット18の離脱をより確実に防止することができる。
【0068】
ここで、一実施例におけるガスケットが上記式(1)を満たしているかについての検証実験を行ったので、その検証結果を次に記す。ここではまず、M12S×1.25のスパークプラグを用いることとした(この場合、ネジ寸法は、JIS B0207を引用することとした。また、P=1.25、D=12.000、H=P/(2tan30゜)=1.083、Dp=11.188、θ=2.92であった)。一方、ガスケットの前駆体として、銅合金からなり、内径12.01mm、厚み1.5mmの円環状のものを用いることとした。そして、上記治具PCを用いて環状爪出し加工を行った。環状爪出し加工後のガスケットの内径A=11.45mm(n=20の平均値)、環状爪部の厚みt=1.14mm(n=20の平均値)となった。上記条件下において、環状爪部内端が雄ネジ部のネジ谷に入り込み、雄ネジ部に沿って摺動してしまう場合の軸線方向の最大厚みt1は、上記式(6)より、t1≒0.801mmである。これに対し、この度の一実施例におけるt=1.14mm>t1(=0.801mm)となり、従って、この度の実施例は、上記式(1)を満たしているといえる。勿論、A(=11.45mm)<D(12.000mm)も満たしている。
【0069】
また次に、上述したガス漏れ防止に関連する作用効果を確認するべく、種々のサンプルを作製し、評価を試みた。その実験結果を以下に記す。まず、従来技術に相当する円環板状をなす中実状のガスケットを主体金具のネジ首に挿通させ、ガスケット挿通後の爪出し加工によって、内周方向に向けて3ヶ所に爪部を突出形成したスパークプラグを複数本(4本)用意した(サンプル1〜4)。また、本実施形態に相当する環状爪部53を有するガスケット18の取付けられたスパークプラグ1を複数本(4本)用意した(サンプル5〜8)。さらに、従来技術に相当する断面略S字状の中空形状をなすガスケットを主体金具のネジ首に挿通させ、ガスケット挿通後の爪出し加工によって、内周方向に向けて3ヶ所に爪部を突出形成したスパークプラグを複数本(4本)用意した(サンプル9〜12)。そして、図7に示すように、エアチャンバ61と、アルミブッシュ62と、漏洩エア測定ケース63とを用意し、これらを用いて、空気漏洩試験を実施した。より詳しくは、エアチャンバ61には、図示しない電磁弁を介して圧縮空気が導入可能となっており、供給口64が設けられている。この供給口64に対応させて、ネジ孔65及び空気供給路66の形成されたアルミブッシュ62を固定し、前記ネジ孔65に対し各サンプル1〜12が取付けられる。但し、このときの締め付けトルクは、全てのサンプルにつき20N・mと一定である。また、漏洩エア測定ケース63は、各サンプル(スパークプラグ)とアルミブッシュ62とを取り囲むようにして固定される。この漏洩エア測定ケース63は、その側面にメスシリンダーのように目盛りが付されているとともに、その内部が液体(たとえばエタノール)で満たされている。そして、漏洩したエアによってそのレベル(水位)が変動し、漏洩エア量を測定することができるようになっている。また、図に示すように、この漏洩エア測定ケース63には内部に充填する液体やエアを任意に出し入れ可能なよう電磁弁67を設けることとしてもよい。そして、かかる構成下、エアチャンバ61内に所定の空気圧(1.5MPa)を加え、供給口64、空気供給路66を介して、ガスケットと、アルミブッシュ62のネジ孔65開口部との間からの単位時間(1分間)あたりの空気漏洩量を測定した。
【0070】
その結果を図6に示す。同図に示すように、円環板状をなす中実状のガスケットであっても、局所的に複数の爪部を突出形成した場合(サンプル1〜4)、気密性能が著しく悪化してしまった。これに対し、本実施形態の場合(サンプル5〜8)、断面略S字状の中空形状をなすガスケットの場合(サンプル9〜12)と同程度の気密性能が得られた。これにより、本実施形態のガスケット18は、サンプル1〜4のような局所的な凹みが形成されてしまうことがなく、当該局所的な凹みを介してガスが漏れてしまうといった事態を防止できるといえる。
【0071】
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0072】
(a)上記実施形態では、スパークプラグ1の製造過程の最後に、雄ネジ部15を通るようにして、前記ガスケット18の前駆体18Aをネジ首17に挿通することとしている。これに対し、例えば火花放電間隙33を調整する加工の前段階において、前駆体18Aを挿通させ、環状爪部53の形成を施すこととしてもよい。
【0073】
(b)上記実施形態におけるガスケット18の断面形状は、あくまでも模式的なものである。従って、治具PCが押し込まれることに伴って、多少の膨出部分が形成されたり、丸みを帯びたりすることがあったとしても何ら差し支えない。また、図3(a),(b)は、本発明の概念を模式的に図示したものであり、実際のガスケットの断面形状が必ずしも直線で描かれる必要はない。
【0074】
(c)また、ガスケット18の材質も、銅合金に限定されるものではなく、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄及びこれらの合金等を使用してもよい。
【0075】
(d)上記実施形態では、主体金具3の先端に、接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
【0076】
(e)上記実施形態では、環状溝部54のうち、内周側の壁面をテーパ面55とすることとしているが、テーパ面が形成されていない場合についても適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態のスパークプラグの構成を示す一部破断部分正面図である。
【図2】スパークプラグの取付状態を示す部分断面図である。
【図3】(a)はガスケットの前駆体を示す部分断面図であり、(b)はガスケットを示す部分断面図である。
【図4】(a)は雄ネジ部や、環状爪部の軸線方向における厚み等を説明するための概念図であって、(b)は(a)のβ部分の拡大図である。
【図5】(a),(b)はともにガスケットの構成を示す部分断面図である。
【図6】各サンプル毎の空気漏洩量の関係を示すグラフである。
【図7】各サンプルの空気漏洩量の測定手法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1…スパークプラグ、2…絶縁碍子、3…主体金具、4…軸孔、5…中心電極、15…雄ネジ部、16a…ガスケット受け部、17…ネジ首、18…ガスケット、27…接地電極、33…火花放電間隙、41…シリンダヘッド、42…ネジ孔、51…本体部、53…環状爪部、54…環状溝部、55…テーパ面、C1…軸線、PC…(加工)治具、PC1…凸部、PC2…テーパ面、PC3…受け面。
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成19年9月25日(2007.9.25)
【代理人】 【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男


【公開番号】 特開2008−135370(P2008−135370A)
【公開日】 平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願番号】 特願2007−246490(P2007−246490)