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【発明の名称】 放電素子、この放電素子を用いた放電モジュール、並びに、この放電モジュールを用いたオゾン発生装置及びイオン発生装置
【発明者】 【氏名】竹之内 浩

【要約】 【課題】硝酸塩やNOxの保護層表面への付着を抑制する一方で、放電効率を高めて、イオンやオゾンの発生量を増大させることが困難であった。

【解決手段】保護層が、絶縁性基板から上面までの高さが互いに異なる第1の領域と第2の領域とを有し、平面視した場合に第2の領域は第1の領域を挟むように配置され、第1の領域が第2の領域よりも放電電極上の厚みが小さいことにより、硝酸塩やNOxの保護層表面への付着を抑制する一方で、放電効率を高め、多くのイオンやオゾンを発生させることが可能な放電素子を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、該絶縁性基板の少なくとも一方の面に形成された放電電極と、前記絶縁性基板に埋設された誘電電極と、前記絶縁性基板及び前記放電電極上に形成された保護層と、を備えた放電素子であって、
前記保護層は、前記放電電極上の厚みの互いに異なる第1の領域と、第2の領域と、を有し、平面視した場合に前記第2の領域が前記第1の領域を挟むように配置され、前記第1の領域における前記放電電極上の厚みが、前記第2の領域における前記放電電極上の厚みよりも小さいことを特徴とする放電素子。
【請求項2】
前記第1の領域を含む部分の放電素子の厚みが、前記第2の領域を含む部分の放電素子の厚みと略等しいことを特徴とする請求項1に記載の放電素子。
【請求項3】
前記第1の領域を含む部分の放電素子の厚みが、前記第2の領域を含む部分の放電素子の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の放電素子。
【請求項4】
前記保護層は、前記第1の領域と前記第2の領域とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電素子。
【請求項5】
前記第1の領域は、前記絶縁性基板の中央部上に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放電素子。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域との厚みの差が30〜90μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放電素子。
【請求項7】
前記絶縁性基板の少なくとも一方の面には複数の放電電極が互いに離隔して形成されており、前記第1の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの個数が、前記第2の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの個数より多いことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の放電素子。
【請求項8】
前記第1の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの周長さが、前記第2の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの周長さより長いことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の放電素子。
【請求項9】
前記放電電極は複数の尖状部を有し、前記第1の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの前記尖状部の個数が、前記第2の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの前記尖状部の個数より多いことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の放電素子。
【請求項10】
前記放電電極は複数の尖状部を有し、前記複数の尖状部の先端の間隔が0.1〜2mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の放電素子。
【請求項11】
前記放電電極の少なくとも一部は、短い尖状部と長い尖状部とが交互に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の放電素子。
【請求項12】
前記放電電極が、前記絶縁性基板の一方の面及び他方の面の両面に配設されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の放電素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の放電素子と、該放電素子が配設されている通風路と、を備えた放電モジュール。
【請求項14】
前記通風路内に流体を流したときに、前記第1の領域上を流れる流体の流速は、前記第2の領域上を流れる流体の流速よりも大きいことを特徴とする請求項13に記載の放電モジュール。
【請求項15】
前記放電電極上の前記保護層上を流れる流体の流速が最も速い箇所が前記第1の領域上にあることを特徴とする請求項14に記載の放電モジュール。
【請求項16】
前記放電電極上の前記保護層上を流れる流体の流速が最も遅い箇所が前記第2の領域上にあることを特徴とする請求項14に記載の放電モジュール。
【請求項17】
絶縁性基板と、該絶縁性基板の少なくとも一方の面に形成された放電電極と、前記絶縁性基板に埋設された誘電電極と、前記絶縁性基板及び前記放電電極上に形成された保護層と、を備えた放電素子であって、
前記保護層のうちの前記放電電極上に形成された領域は、前記保護層上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有していることを特徴とする放電素子。
【請求項18】
前記厚みは、前記保護層上を流れる流体の流速が遅い領域よりも前記保護層上を流れる流速が速い領域の方が小さい請求項17に記載の放電素子。
【請求項19】
前記放電電極は複数の尖状部を有し、前記複数の尖状部の先端の間隔が0.1〜2mmであることを特徴とする請求項17又は18に記載の放電素子。
【請求項20】
前記放電電極の少なくとも一部には、短い尖状部と長い尖状部とが交互に形成されていることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の放電素子。
【請求項21】
前記放電電極が、前記絶縁性基板の一方の面及び他方の面の両面に配設されていることを特徴とする請求項17〜20のいずれかに記載の放電素子。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれかに記載の放電素子と、該放電素子が配設されている通風路と、を備えた放電モジュール。
【請求項23】
請求項13〜16、22のいずれかに記載の放電モジュールを備えたオゾン発生装置。
【請求項24】
請求項13〜16、22のいずれかに記載の放電モジュールを備えたイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン発生装置、イオン発生装置などに用いられる放電素子、この放電素子を用いた放電モジュール、及び、この放電モジュールを用いたオゾン発生装置、イオン発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沿面コロナ放電を利用した放電素子は、放電電極と誘電電極との間で通電することによりコロナ放電を発生させ、イオンやオゾンを発生させることができるため、オゾン発生装置やイオン発生装置などに用いられている。
【0003】
また、より効率良くイオン、或いはオゾンを発生させられるようにするため、このような放電素子を構成する放電電極直上で通風路の高さを変えたものが提案されている(特許文献1)。このように通風路の高さを変えて、放電素子上を流れる空気の流速を制御することにより、イオン又はオゾンの発生量を制御することができる。
【特許文献1】特開平8−217413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような放電素子を用いてイオン又はオゾンを発生させた場合、同時に硝酸塩が発生して放電効率が低下してしまうという問題があった。しかしながら、特許文献1に開示されている放電素子は、イオン又はオゾンの発生量を増大させることはできるが、一方で、イオン又はオゾンの発生量を維持しつつ、放電効率を低下させる硝酸塩の発生量を小さくすることは困難であった。これは、特許文献1に開示されている放電素子は、放電素子上を流れる空気全体の流速を速くする、或いは遅くするというものであるからである。
【0005】
また、保護層の厚みを小さくすることにより、イオン又はオゾンの発生量を増大させることができる。しかしながら、このように保護層の厚みを小さくすると、保護層の効果が小さくなり、硝酸塩による放電効率の低下が大きくなってしまう。
【0006】
或いは、放電電圧を大きくすることにより、イオン又はオゾンの発生量を増大させることができる。しかしながら、放電電圧を大きくした場合、消費電力が増加してしまうとともに、放電による放電電極や誘電体層(絶縁性基板)への影響が大きくなり、耐久性を向上させることが困難となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、イオン又はオゾンの発生量を維持しつつ、放電効率を低下させる硝酸塩の発生量が抑制された放電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の放電素子は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の少なくとも一方の面に形成された放電電極と、前記絶縁性基板に埋設された誘電電極と、前記絶縁性基板及び前記放電電極上に形成された保護層と、を備え、前記保護層が、前記放電電極上の厚みの互いに異なる第1の領域と、第2の領域と、を有し、平面視した場合に前記第2の領域が前記第1の領域を挟むように配置され、前記第1の領域における前記放電電極上の厚みが、前記第2の領域における前記放電電極上の厚みよりも小さいことを特徴とする。
【0009】
また、前記第1の領域を含む部分の放電素子の厚みが、前記第2の領域を含む部分の放電素子の厚みと略等しいことが好ましい。或いは、前記第1の領域を含む部分の放電素子の厚みが、前記第2の領域を含む部分の放電素子の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0010】
また、前記保護層が、前記第1の領域と前記第2の領域とからなることが好ましい。また、前記第1の領域が、前記絶縁性基板の中央部上に形成されていることが好ましい。ここで、絶縁性基板の中央部上に形成されているとは、第1の領域が、風向に垂直な方向での絶縁性基板の幅の中心を含んでいる、ということを意味している。また、前記第1の領域と前記第2の領域との厚みの差が30〜90μmであることが好ましい。
【0011】
また、前記絶縁性基板の少なくとも一方の面には複数の放電電極が互いに離隔して形成されており、前記第1の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの個数が、前記第2の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの個数より多いことが好ましい。ここで、放電電極の単位面積当たりの個数とは、放電素子を平面図で見たときの保護層の第1の領域又は第2の領域の面積に対する放電電極の単位面積あたりの数を意味する。また、前記第1の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの周長さが、前記第2の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの周長さより長いことが好ましい。ここで、放電電極の単位面積当たりの周長さとは、放電素子を平面図で見たときの保護層の第1の領域又は第2の領域の面積に対する放電電極と絶縁性基板との境界線の単位面積あたりの周長さの合計を意味する。
【0012】
また、前記放電電極は複数の尖状部を有し、前記第1の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの前記尖状部の個数が、前記第2の領域の下に位置する前記放電電極の単位面積当たりの前記尖状部の個数より多いことが好ましい。また、前記放電電極は複数の尖状部を有し、前記複数の尖状部の先端の間隔が0.1〜2mmであることが好ましい。また、前記放電電極の少なくとも一部が、短い尖状部と長い尖状部とが交互に形成されていることが好ましい。また、前記放電電極が、前記絶縁性基板の一方の面及び他方の面の両面に配設されていることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の放電素子は、絶縁性基板と、該絶縁性基板の少なくとも一方の面に形成された放電電極と、前記絶縁性基板に埋設された誘電電極と、前記絶縁性基板及び前記放電電極上に形成された保護層と、を備え、前記保護層のうちの前記放電電極上に形成された領域が、前記保護層上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有していることを特徴とする。
【0014】
また、前記厚みが、前記保護層上を流れる流体の流速が遅い領域よりも前記保護層上を流れる流速が速い領域の方が小さいことが好ましい。また、前記放電電極は複数の尖状部を有し、前記複数の尖状部の先端の間隔が0.1〜2mmであることが好ましい。また、前記放電電極の少なくとも一部には、短い尖状部と長い尖状部とが交互に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、前記放電電極が、前記絶縁性基板の一方の面及び他方の面の両面に配設されていることが好ましい。
【0016】
本発明の放電モジュールは、上記のいずれかに記載の放電素子と、該放電素子が配設されている通風路と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の放電モジュールは前記通風路内に流体を流したときに、前記第1の領域上を流れる流体の速度は、前記第2の領域上を流れる流体の流速よりも大きいことが好ましい。また、前記放電電極上の前記保護層上を流れる流体の流速が最も速い箇所が前記第1の領域上にあることが好ましい。また、前記放電電極上の前記保護層上を流れる流体の流速が最も遅い箇所が前記第2の領域上にあることが好ましい。
【0018】
本発明のオゾン発生装置は、上記のいずれかに記載の放電モジュールを備えていることを特徴とする。また、本発明のイオン発生装置は、上記のいずれかに記載の放電モジュールを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の放電素子によれば、保護層は、放電電極上の厚みの互いに異なる第1の領域と、第2の領域と、を有し、平面視した場合に第2の領域が第1の領域を挟むように配置され、第1の領域における放電電極上の厚みが、第2の領域における放電電極上の厚みよりも小さい。
【0020】
このように、本発明の第1の放電素子では、硝酸塩やNOxが発生しやすい端部である第2の領域における放電電極上の厚みが大きくされ、反対に、第1の領域における放電電極上の厚みが小さくされている。そのため、硝酸塩の発生しやすい第2の領域上での放電が硝酸塩の発生しにくい第1の領域上での放電と比較して抑制される。結果として、硝酸塩やNOxの発生量が抑制され、保護層表面への付着量が抑制される。また一方で、放電効率が高められ、多くのオゾンを発生させることが可能となる。
【0021】
本発明の第2の放電素子によれば、保護層のうちの放電電極上に形成された領域は、保護層上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有している。そのため、不要な放電を抑制し、所定の領域で効果的に放電をすることができる。
【0022】
放電素子上を通過する空気などの流体の流速分布は一般的に一定ではない。しかしながら、保護層が、保護層上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有していることから、硝酸塩の発生しやすい領域での放電が抑制される。結果として、硝酸塩やNOxの発生量が抑制され、保護層表面への付着量が抑制される。また一方で、放電効率が高められ、多くのオゾンを発生させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の放電素子について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の一例を示す展開斜視図である。図2(a)は図1に示す実施形態の放電素子にかかる放電電極の配設状態を示す断面図である。図2(b)は図2(a)における領域Aの拡大断面図である。また、図3は図1に示す放電素子の断面図である。
【0024】
図1〜3に示すように、本実施形態の放電素子1は、絶縁性基板3と、絶縁性基板3の少なくとも一方の面に形成された放電電極5と、絶縁性基板3に埋設された誘電電極7と、絶縁性基板3及び放電電極5上に形成された保護層9と、を備えている。そして、保護層9は、放電電極5上の厚みの互いに異なる第1の領域9aと、第2の領域9bと、を有し、放電素子1を平面視した場合に、第2の領域9bが第1の領域9aを挟むように配置されている。さらに、第1の領域9aにおける放電電極5上の厚みが、第2の領域9bにおける放電電極5上の厚みよりも小さい。
【0025】
従来の放電素子は、放電電極上の保護層の厚みが一定であったため、イオンやオゾンの発生量を増加させながらも、放電素子の耐久性を高めることが困難であった。しかしながら、本実施形態にかかる放電素子1は、第1の領域9aにおける放電電極5上の保護層9の厚みが、第2の領域9bにおける放電電極5上の保護層9の厚みよりも小さいことにより、硝酸塩(NOx)の発生量を抑制しつつも、多くのイオンやオゾンを発生させることを可能としている。また、同時に、第1の領域9aよりも第2の領域9bの厚みが大きいので、放電電極5への硝酸塩による影響を小さくすることができる。
【0026】
また、これらのことから、保護層9の第1の領域9aと第2の領域9bとの厚みの差L1は、30μm以上であることが好ましい。厚みの差を30μm以上とすることで、硝酸塩の発生量をより低減させ、より多くのイオンやオゾンを発生させることが可能となるからである。
【0027】
また、保護層9の第1の領域9aと第2の領域9bとの厚みの差は、90μm以下であることが好ましい。厚みの差を90μm以下とすることで、焼成時に保護層9の第1の領域9aと第2の領域9bとの境界に集中しやすい応力を低減することができる。結果、この境界にクラックが発生する可能性を抑制することができるので、放電素子1の生産性を向上させることができる。また、絶縁性基板3に達して絶縁破壊が生じてしまうことを抑制することができるので、放電電極5の耐久性を向上させることができる。
【0028】
保護層9は硝酸塩による放電電極5の劣化を防止するために形成されるものである。そのため、放電素子1上の保護層9の厚みは、最も厚みの小さい場所でも10μm以上となるように形成されることが好ましい。厚みを10μm以上とすることで高電圧が印加された場合でも、絶縁性を保つことができる。また、最も厚みの大きい場所でも100μm以下となるように形成されることが好ましい。厚みを100μm以下とすることで放電効率の低下を抑えることができるので、より多くのイオンやオゾンを発生させることができる。
【0029】
保護層9の材料としては、絶縁性のよいものであれば良く、例えば、アルミナ、ムライト、コージライト、ジルコニア等からなるセラミックス等を用いることができる。保護層9として、上記に代表される絶縁性のよいものを用いることにより、この領域での不要な放電が抑制されることから、硝酸塩の発生や放電自体による放電電極5の耐久性の低下をより効果的に抑制することができる。また、不要な放電を抑えることにより、消費電力を抑制することもできる。
【0030】
図4は本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の他の一例を示す断面図である。図4に示すように、第1の領域9aを含む部分の放電素子1の厚みL2が、第2の領域9bを含む部分の放電素子1の厚みL3と略等しいことが好ましい。第1の領域9aに位置する放電電極5の放電素子1の下面からの高さを、第2の領域9bに位置する放電電極5の放電素子1の下面からの高さよりも高くすることにより、図4に示すような形状とすることができる。
【0031】
このような場合には、保護層9の上面が平らになり、第1の領域9aと第2の領域9bとの間に段差が形成されないので、この段差への応力の集中を低減することができるまた、ここで、「略等しい」とは、製造上不可避である保護層9上面の凹凸の大きさよりも、第1の領域9aと第2の領域9bのそれぞれの平均厚みの差が小さいことを意味している。
【0032】
図5は本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の他の一例を示す断面図である。図5に示すように、第1の領域9aを含む部分の放電素子1の厚みL2が、第2の領域9bを含む部分の放電素子1の厚みL3よりも小さいことも好ましい。このように、保護層9の上面の高さに関して、第2の領域9bの上面の高さが第1の領域9aの上面の高さよりも高いときには、放電素子1上の空気の流れを滑らかにすることができるからである。
【0033】
第2の領域9b直上の空気の流れは、第1の領域9a直上の空気の流れと比較して滞りやすく、硝酸塩が発生しやすい。しかし、図3に示すように、第2の領域9bを含む部分の放電素子1の厚みを大きくすることで、この硝酸塩が発生しやすい空間を小さくすることができる。このようにして、硝酸塩の発生量を抑制することができる。
【0034】
また、図5に示すように、第1の領域9aと第2の領域9bとの間には傾斜面が設けられることが好ましい。このように傾斜面が設けられることにより、焼成時に保護層9の第1の領域9aと第2の領域9bとの間で生じる応力を小さくすることができるからである。
【0035】
また、保護層9が、第1の領域9aと第2の領域9bとのみからなることが好ましい。例えば、図3に示すように、保護層9が第1の領域9aと第2の領域9bからなることで、単純な構造でありながらも、複雑な工程やコストをかけることなく放電効率を高めることができるからである。
【0036】
図6は、本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の他の一例を示す断面図である。保護層9は、図3に示すように、第1の領域9aと第2の領域9bとのみからなる形状であっても良いが、一方で、図6に示すように、第3の領域9cのような絶縁性基板3から上面までの高さが第1の領域9aおよび第2の領域9bと異なる別の領域を設けることも好ましい。第1の領域9a、第2の領域9bだけでなく、更に、第3の領域9cなどを設けて、保護層9の厚みを段階的に変化させることで、より効果的に硝酸塩の発生量を減少させ、かつ、より効率良くイオンやオゾンを発生させることが可能となるからである。
【0037】
また、第1の領域9aが、絶縁性基板3の中央部上に形成されていることが好ましい。第1の領域9aが、このように形成されていることにより、より確実に、保護層9上を流れる空気の流速の相対的に速い部分に第1の領域9aを位置させることができ、保護層9上を流れる空気の流速の相対的に遅い部分に第2の領域9bを位置させることが出来るからである。これにより、硝酸塩の保護層9表面への付着が効果的に抑制され、効率よくイオンやオゾンを発生させることができる。
【0038】
また、第1の領域9a及び第2の領域9bのそれぞれの領域は、例えば、風向に直交する方向に保護層9を4分割し、概ね中心の2/4の領域を第1の領域9aとし、第1の領域9aの両側端の領域を第2の領域9bとすることがより好ましい。このようにすることで、放電効率をより向上させることができるため、硝酸塩の発生がより抑制され、また、より多くのイオンやオゾンを発生させることができるからである。
【0039】
また、図1〜3に示すように、絶縁性基板3の少なくとも一方の面には複数の放電電極5が互いに離隔して形成されていることが好ましい。複数の放電電極5が互いに離隔して形成されていることによって、放電電極5の表面積をより大きくすることができるからである。放電電極5の表面に放電が集中しやすいことから、上記のように放電電極5が形成されている場合には、放電効率をより向上させることができる。この場合には、図1、3に示すように、各々の放電電極5は、充填材11及び配線回路13を介して互いに電気的に導通している。
【0040】
また、線状の放電電極5を用いた放電素子1において、保護層9が第1の領域9a及び第2の領域9bを有している場合、焼成時において、連続的に保護層9の広い範囲で収縮差が発生する。一方で、複数の放電電極5が互いに離隔して形成されている場合には、上記の収縮差を低減することができる。これにより、放電電極5や保護層9にかかる応力を低減させ、放電素子1の耐久性を向上させることができる。
【0041】
さらに、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの個数が、第2の領域9bの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの個数より多いことが好ましい。このように放電電極5が形成されることにより、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の密度を相対的に大きくすることができるので、より多くのイオンやオゾンを発生させることができるからである。直上を流れる空気の流速が相対的に速い領域ではイオンやオゾンを効率良く発生させることができる。そして、第1の領域9aの下に配設された放電電極5の個数を増やすことにより、第1の領域9a上での放電量を増加させることができる。結果として、不要な放電を抑制しつつ、イオンやオゾンを効率良く発生させることができる。
【0042】
また、互いに離隔して形成された放電電極5同士の間隔は0.5mm以上とすることが好ましい。これらの間隔を0.5mm以上とすることで、放電による絶縁性基板3や保護層9の劣化が抑制され、放電素子1の耐久性が向上する。
【0043】
また、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの周長さが、第2の領域9bの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの周長さより長いことが好ましい。既に示したように、放電電極5の表面に放電が集中しやすいことから、放電電極5の周長さを大きくすることにより、放電電極5の表面積を大きくすることが出来る。そのため、上記のように放電電極5が形成されている場合には、放電効率を向上させることが出来るので、不要な放電を抑制しつつ、イオンやオゾンを効率良く発生させることができる。
【0044】
また、図2に示すように、放電電極5は、複数の尖状部15を有していることが好ましい。これは、尖状部15の先端において、放電が起きやすいからである。放電電極5は複数の尖状部15が放射状に形成されていることが好ましい。具体的には、各尖状部15は、頂点を放電電極5の外側に向けた三角形状やカスプ形状であることがよい。このような形状とすることで、放電が先端に集中して発生するようになるからである。このような尖状部15が複数形成されることで、より放電効率を高めることができる。
【0045】
また、尖状部15の角度、すなわち、前記三角形状の頂点から延びる2辺のなす角度は、30°以上が好ましい。尖状部15の角度を30°以上とすることで印刷時のインクにじみによる影響を抑制し、鋭角に形成することができる。これにより、イオンやオゾンの発生量を確実に増加させることが出来る。また、尖状部15の角度は、90°以下が好ましい。尖状部15の角度を90°以下とすることで、尖状部15で強い電流集中を起こすことが出来るので、放電量を増加させることができる。
【0046】
それぞれの放電電極5での尖状部15同士の先端の間隔は100μm以上であることが好ましい。これらの間隔を100μm以上とすることで、尖状部15の間での放電が防止されるので、放電効率が低下することがなく、また絶縁性基板3や保護層9の劣化が抑制されるので、放電素子1の耐久性を向上させることができるからである。また、尖状部15同士の先端の間隔は2mm以下であることが好ましい。これらの間隔を2mm以下とすることで、放電素子1を小型化することができる。
【0047】
さらに、放電電極5は複数の尖状部15を有し、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの尖状部15の個数が、第2の領域9bの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの尖状部15の個数より多いことが好ましい。放電電極5の鋭角になっている箇所に放電が強く集中することから、上記のように放電電極5が形成される場合には、より効率良くイオンやオゾンを発生させることができる。
【0048】
また、放電電極5の少なくとも一部に短い尖状部15aと長い尖状部15bとが交互に形成される場合には、各々の尖状部15間の距離を十分に保つことができるので、尖状部15間でのコロナ放電による干渉が抑制される。その結果、放電による絶縁性基板3や保護層9の劣化が抑制され、放電素子1の耐久性が向上する。
【0049】
また、放電電極5が上記のように形成されているときには、より確実に各尖状部15の先端の間隔を100μm以上にすることができ、尖状部15間の放電をより確実に防止することができる。また、短い尖状部15aと長い尖状部15bとが交互に形成されることで、より確実に互いに離隔する放電電極5同士の間隔を前述の0.5mm以上にできることから、尖状部15の数を増加させることも可能となる。
【0050】
具体的には、図2に示すように、絶縁性基板3上で互いに離隔して形成され、充填材11及び配線回路13を介して互いに電気的に導通された各々の放電電極5が、短い尖状部15aと長い尖状部15bとが交互に形成された形状であることにより、尖状部15同士の先端の間隔を保つことが可能となる。また、図2(b)に示すように、放電電極5の尖状部15間の間隔、及び、各々の放電電極5の短い尖状部15aと長い尖状部15bとの間隔を前述した100μm以上にすることで、十分な量のイオンやオゾンを発生させるために必要な放電量を保ちつつ、尖状部15間の放電を抑制することが可能となる。
【0051】
また、図3に示すように、放電電極5が、絶縁性基板3の一方の面及び他方の面の両面に配設されているときには、放電面積をより大きくすることができるため、イオンやオゾンの発生量を大幅に増加させることができる。
【0052】
次に、本発明の第2の放電素子について説明する。図7は本発明の第2の放電素子にかかる実施形態の一例を示す断面図である。
【0053】
図7に示すように、本実施形態の放電素子1は、絶縁性基板3と、絶縁性基板3の少なくとも一方の面に形成された放電電極5と、絶縁性基板3に埋設された誘電電極7と、絶縁性基板3及び放電電極5上に形成された保護層9と、を備えている。そして、保護層9のうちの放電電極5上に形成された領域は、保護層9上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有している。このように、本実施形態の放電素子1における保護層9は、保護層9上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有しているため、不要な放電が抑制されるので、所定の領域で効果的に放電をすることが可能となる。
【0054】
放電素子1上を通過する空気などの流体の流速分布は一般的に一定ではない。そのため、保護層9の厚みが一定であると、上記流体の流速の遅い領域において放電のロスが生じてしまう。しかしながら、本実施形態の放電素子1では、この保護層9のうちの放電電極5上に形成された領域が、保護層9上を流れる流体の流速の分布に応じた厚みを有していることから、放電ロスを抑えて、放電効率を向上させることができる。また、硝酸塩が発生しやすく、保護層9に付着しやすい空気などの流体の流速の遅い領域において、保護層9の厚みが大きいので、放電素子1の耐久性を向上させることもできる。
【0055】
放電素子1上の流速は、小径ピトー管を用い、放電素子1直上にピトー管を配置することで、発生する圧力差から速度を計測することができる。また、この測定値を放電素子1上の流速として、流速分布を求めることができる。
【0056】
保護層9は、この保護層9の上を流れる空気の流速分布に応じて、滑らかに形成されていることが好ましい。保護層9が滑らかに形成されていることで、段差がないので放電素子1の劣化につながるクラックが生じにくいからである。
【0057】
保護層9の材料としては、本発明の第1の放電素子と同様に、絶縁性のよいものであれば良く、例えば、アルミナ、ムライト、コージライト、ジルコニア等からなるセラミックス等を用いることが出来る。
【0058】
保護層9は硝酸塩による放電電極5の劣化を防止するために形成されるものであるが、保護層9の厚みは、最も厚みの小さい場所でも10μm以上となるように形成されることが好ましい。厚みを10μm以上とすることで高電圧が印加された場合でも、絶縁性を保つことができる。また、最も厚みの大きい場所でも100μm以下となるように形成されることが好ましい。厚みを100μm以下とすることで、放電効率が向上するので、より確実に所望の量のイオンやオゾンが得られる。
【0059】
また、放電電極5の表面に放電が集中しやすいことから、複数の放電電極5が互いに離隔して形成されていることが好ましい。互いに離隔して形成されていることで、放電電極5の表面積をより大きくすることができる。この場合には、第1の放電素子の場合と同様に、各々の放電電極5は、充填材11及び配線回路13を介して互いに電気的に導通している。そして、上部を流れる流体の流速が速い領域の方が単位面積あたりの放電電極5の密度が大きいことで放電電極5の表面積がより大きくなり、より多くのイオンやオゾンを発生させることができる。
【0060】
さらに、流体の流速が速い領域の下に位置する放電電極5の単位面積当たりの個数が、流速が遅い領域の下に位置する放電電極5の単位面積当たりの個数より多いことが好ましい。このように放電電極5が形成される場合には、放電効率をより向上させることができる。これは、放電電極5から放電が起こるため、流速が速く、酸素の供給量の多い領域の下に位置する放電電極5の密度を大きくすることで、結果として、より多くのイオンやオゾンを発生させることができるからである。さらに、線状の放電電極5で保護層9の厚みを変えると、焼成時に連続的に広い範囲で収縮差が発生するため、放電電極5にクラックが発生する恐れがあるが、複数の放電電極5を互いに離隔して形成することで、上記の理由によるクラックの発生を防止することができる。
【0061】
また、流速が速い領域の下に位置する放電電極5の単位面積当たりの周長さが、流速が遅い領域の下に位置する放電電極5の単位面積当たりの周長さより長いことが好ましい。このように放電電極5が形成されることにより、放電電極5の表面積を大きくすることができる。放電電極5の表面で放電が集中しやすいことから、放電電極5の表面積が大きくなることで、放電効率を高めることができる。これにより、より多くのイオンやオゾンを発生させることができる。さらに、流速が速く酸素の供給量の多い領域の下に位置する放電電極5の周長さが長いので、結果として、より多くのイオンやオゾンを発生させることができ、放電効率を更に向上させることができる。
【0062】
また、放電電極5が複数の尖状部15を有し、単位面積当たりの尖状部15の個数が、流体の流速が遅い領域よりも流速が速い領域の方が多いときには、放電電極5の鋭角になっている箇所に放電が強く集中することから、より効率良くイオンやオゾンを発生させることが出来る。
【0063】
また、放電電極5の少なくとも一部は、短い尖状部15aと長い尖状部15bが交互に形成されるときには、各々の尖状部15間の距離を十分に保つことができるので、尖状部15間でのコロナ放電が抑制され、その結果、放電による絶縁性基板3や保護層9の劣化が抑制され、放電素子1の耐久性が向上する。
【0064】
また、放電電極5が、絶縁性基板3の一方の面及び他方の面の両面に配設されているときには、放電電極5が配設されているそれぞれの面上を空気が通過するので、放電面積が倍になるため、イオンやオゾンの発生量が大幅に増加する。その結果として、効率よく多くのイオンやオゾンを発生させることが可能となる。
【0065】
放電電極5は絶縁性基板3の少なくとも一方の面上に形成されるが、この放電電極5の厚みは、焼成後に5〜50μmとなることが好ましい。厚みを5μm以上とすることで、放電電極5の形状のばらつきが小さくなり、また、放電に対する放電電極5の耐久性を向上させることができるので、放電素子1の寿命を長くすることができるからである。また、50μm以下とすることで放電電極5の外周部での絶縁性基板3との段差が小さくなり、保護層9を形成する際に起き得るクラックの発生を抑制できるからである。
【0066】
放電電極5の材料としては、導電性がよいものであれば良い。絶縁性基板3と同時焼成により形成する場合には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)等の高融点金属を主成分とするものが好ましい。
【0067】
絶縁性基板3の厚みは、0.5mm以上であることが好ましい。絶縁性基板3の厚みを0.5mm以上とすることで、放電素子1自体の変形や反りを防止することが出来るので、放電素子1の耐久性が向上する。
【0068】
また、絶縁性基板3としては、絶縁性のよいものであれば良く、保護層9と同様に、例えば、アルミナ、ムライト、コージライト、ジルコニア等からなるセラミックス等を用いることが出来る。また、絶縁性基板3は保護層9と同じ材料を用いることが好ましい。同一の材料を用いることにより、焼成時に、熱膨張差に起因するクラックが絶縁性基板3と保護層9の境界付近に発生することを防止することができる。
【0069】
誘電電極7は絶縁性基板3の内部に埋設される。誘電電極7の厚みは焼成後に5〜50μmとなることが好ましい。厚みを5μm以上とすることで、誘電電極7の形状のばらつきが小さくなり、また、放電に対する電極の耐久性が向上するので、放電素子1の寿命を長くすることができる。また、50μm以下とすることで、焼成時にメタライズインクの脱媒が可能となり、セラミック積層内に気泡が生じてしまうことを防止することができる。
【0070】
誘電電極7の材料としては、放電電極5と同様に、導電性がよいものであれば良いが、好ましくはタングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)等の高融点金属を主成分とするものが用いられる。
【0071】
また、放電電極5及び誘電電極7に給電するための給電部17は、絶縁性基板3の側面部3a、または、絶縁性基板3の放電電極5が配設されていない他方の面に形成されることが好ましい。これにより、給電部17と放電電極5との沿面距離を確保することができる。なお、図3に示すように、放電電極5が一方の面及び他方の面の両面に配設されている場合には、絶縁性基板3の側面部3a、または、絶縁性基板3の放電電極5が配設されている面で放電電極5が形成されていない周縁部3b等に形成されることが好ましい。
【0072】
以下、本実施形態の放電素子1の製造方法について説明する。
【0073】
まず、放電電極5や誘電電極7となるメタライズインクを作製する。具体的には、タングステン、モリブデン、レニウム等の高融点金属の粉末と、バインダーと、溶剤と、を混合し、練り合わせてスラリーを作製する。そして、このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法などのテープ成型法用いて、メタライズインクを作製する。
【0074】
次に、絶縁性基板3となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、アルミナ、ムライト、コージライト、ジルコニア等を含有するスラリーを作製することでセラミックシートが作製される。このようにして作製されたセラミックグリーンシートに、スルーホールを形成し、このスルーホールに充填材11としてタングステン、モリブデン、レニウム等の高融点金属を主成分とするインクを充填する。さらに、このセラミックグリーンシートの表面に上記のメタライズインクを用いて、スクリーン印刷法により複数の放電電極5パターンを印刷する。
【0075】
同様にして、上記高融点金属を主成分とするインクがスルーホールに充填されたセラミックグリーンシートを形成し、前記セラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷法により、面状の誘電電極7のパターンを、メタライズインクを用いて印刷する。誘電電極7には複数の孔パターン19が形成され、孔パターン19の中央にスルーホールが形成される。
【0076】
更に、アルミナ、ムライト、コージライト、ジルコニア等からなるセラミックグリーンシートの表面に、スルーホールに充填された充填材11を介して上記の複数の放電電極5を電気的に導通する配線回路13を、スクリーン印刷法により印刷する。また、配線回路13は絶縁性基板3となるセラミックグリーンシートの側面部3aや周縁部3b等に形成される給電部17に電気的に接続される。
【0077】
これらのセラミックグリーンシートを接合する。絶縁性基板3の一方の面及び他方の面の両面に放電電極5を配設するときには、配線回路13が印刷されたセラミックグリーンシートの両面に、それぞれ誘電電極7のパターンが印刷されたセラミックグリーンシートを接合する。ついで、それぞれの誘電電極7のパターンが印刷されたセラミックグリーンシートに、それぞれ放電電極5パターンが印刷されたセラミックグリーンシートを接合する。
【0078】
このとき、放電電極5と誘電電極7との間の絶縁性基板3(誘電層)の厚みが、20μm以上となるよう形成することが好ましい。この絶縁性基板3の厚みを20μm以上とすることで、放電電極5と誘電電極7の間で絶縁破壊が生じることを防止することができる。
【0079】
また、誘電電極7と配線回路13との間の絶縁性基板3の厚みが、300μm以上となるよう形成することが好ましい。この絶縁性基板3の厚みを300μm以上とすることで、誘電電極7と配線回路13の間で絶縁破壊が生じることを防止することができる。
【0080】
また、誘電電極7とスルーホールとの間の間隔は300μm以上であることが好ましい。誘電電極7とスルーホールとの間の間隔を300μm以上とすることで、放電素子1に高電圧を印加した場合でも絶縁破壊が生じることを防止することができる。また、誘電電極7とスルーホールとの間の間隔は2mm以下であることが好ましい。誘電電極7とスルーホールとの間の間隔は2mm以下とすることで、放電素子1を小型化することができる。
【0081】
さらに、放電電極5上に絶縁性基板3と同じ成分のアルミナ、ムライト、コージライト、ジルコニア等からなるセラミックスの粉末と、バインダーと、溶剤と、を混合し、スラリー状にしたセラミックグリーンシートを作製し、それを放電電極5パターンの表面にスクリーン印刷法により印刷することで保護層9が形成される。ここで、放電電極5パターンの表面に部分的にスクリーン印刷をするなどして、スクリーン印刷の回数を変えることで第1の領域9aと第2の領域9bの保護層9の厚みに違いをもたせ、第1の領域9aや第2の領域9b等を形成することが出来る。
【0082】
また、絶縁性基板3と保護層9とが同じ成分である場合には、図4に示す実施形態の放電素子1は、以下のようにしても作製することができる。
【0083】
まず、上記の実施形態と同様にして、放電電極5及び誘電電極7となるメタライズインク、絶縁性基板3及び保護層9となるとなるセラミックグリーンシートを作製する。そして、セラミックグリーンシート上にメタライズインクを印刷する。このとき、第1の領域の下に位置する放電電極5となるメタライズインクと第2の領域の下に位置する放電電極5となるメタライズインクとを、異なるセラミックグリーンシートにそれぞれ印刷する。
【0084】
そして、第2の領域9bの下に位置する放電電極5となるメタライズインクが印刷されたセラミックグリーンシートの上に、第1の領域9aの下に位置する放電電極5となるメタライズインクが印刷されたセラミックグリーンシートを積層する。さらに、この上に保護層9となるセラミックグリーンシートを積層する。
【0085】
その後、所定の寸法に裁断し、1500〜1650℃の還元雰囲気中で焼成することで、放電素子1が形成される。
【0086】
焼成後、給電部17にメッキを施し、ロウ付けや半田等により放電素子1の給電線(不図示)と接続する。さらに、配線した給電部17上にシリコンなどによりコーティングして、酸化防止の措置をとることが好ましい。
【0087】
なお、本発明の第1の放電素子及び第2の放電素子は、印加する電圧の大きさや周波数を変えることにより、イオンやオゾンの発生量を変化させることができる。例えば、高電圧を印加することにより、主に空気中の酸素をオゾンにすることが可能となるので、脱臭器等に利用されるオゾン発生用の放電素子1として用いることができる。また一方、低電圧を印かすることにより、空気中の様々な分子をイオン化することが可能となるので、空気清浄機等に用いられるイオン発生用の放電素子1として用いることができる。
【0088】
また、放電電極5が絶縁性基板3の一方の面及び他方の面の両面に形成されているときには、それぞれの面に印加する電圧値を変えることで、一方の面をオゾン発生用として、他方の面をイオン発生用として用いるなどして用途を使い分けることもできる。
【0089】
次に本実施形態にかかる放電モジュールについて説明する。図8(a)は本発明の第1の放電素子を用いた放電モジュールの実施形態の一例における放電素子と放電素子上を流れる流体の流速との関係を示した断面図である。また、図8(b)は本発明の第2の放電素子を用いた放電モジュールにおける放電素子と放電素子上を流れる流体の流速との関係を示した断面図である。
【0090】
また、図9は、本発明の放電モジュールにかかる実施形態の一例を示す斜視図である。図9に示すように、本実施形態にかかる放電モジュール21は上記の実施形態に代表される放電素子1と、放電素子1が配設されている通風路23と、を備えている。
【0091】
このように、上記の実施形態における放電モジュールは、通風路23を備えていることにより、風向を安定させることができるので、高い放電効率が得られ、より多くのオゾン或いはイオンが発生され、硝酸塩の発生をより抑制することが可能となる。
【0092】
通風路23は、放電素子1上を流れる空気の通り道であり、この空気が流れる方向を所望の方向に安定させるものであればどのようなものを用いてもよい。例えば、図9に示すように筒形状のものを用いることで内部の空洞を通風路23として、空気の流れる方向を一定にすることができる。また、ファンなどの送風機を用いることで、空気の流れの方向を一定にしても良い。
【0093】
このとき、通風路23内を流れる流体の流速分布に応じて、放電素子1を配設することが好ましい。例えば、図8(a)に示すように、通風路23の中央は流速(風速)が比較的速く、端の方は比較的流速が遅い場合には、第1の領域9a上にこの比較的流速の速い領域25があり、第2の領域9b上にこの比較的流速の遅い領域27があることで、より効果的に、硝酸塩の保護層9表面への付着を抑制し、また、放電効率を高めてより多くのイオンやオゾンを発生させることができる。
【0094】
更に、放電素子1は、保護層9の厚みの小さい第1の領域9a上に最も流速の速い領域25が位置するように配設されることで、放電効率をより向上させることができ、イオンやオゾンの発生量をより増加させることができる。また、厚みの大きい第2の領域9b上に最も流速の遅い領域27が位置するように配設されることで、不要な放電をさらに抑制し、硝酸塩の保護層9表面への付着を、より確実に抑制することが可能となる。
【0095】
絶縁性基板3の一方の面のみに放電電極5が形成されている場合には、通風路23中を流れる空気に放電電極5が面するように放電素子1が配設され、絶縁性基板3の一方の面及び他方の面の両面に放電電極5が形成されている場合には、通風路23を二分するように放電素子1が配設されることが好ましい。この場合には、例えば、絶縁性基板3の側面部3a又は周縁部3bに固定部(不図示)を設け、通風路23に側壁等があればそれらに固定し、側壁等がない場合は支持板(不図示)を別途設けて浮かせることで、放電素子1が固定される。
【0096】
次に本実施形態にかかるオゾン発生装置、イオン発生装置について説明する。図10は本発明のオゾン発生装置又はイオン発生装置にかかる実施形態の一例を示す概略図である。図10に示すように、本実施形態にかかるオゾン発生装置29又はイオン発生装置31は上記の実施形態に代表される放電モジュール21を備え、放電モジュール21の放電素子1上の空気の流れの上流側に空気の流れをつくるブロアー33を備え、下流側にオゾンが滞留する事を防止するオゾン吸着ハニカム35を備えている。
【実施例】
【0097】
実施例を以下に示す。
【0098】
(実施例 1)
純度96%のアルミナグリーンシートとタングステンインクにより、幅15mm長さ40mmの形状の絶縁性基板3に、放電電極5を最大片面42個設けた放電素子1を作製した。そして、放電電極5の形状、数量、密度、周長さ、または保護層9の厚みの異なるサンプルを13個作成した。また、長さ方向に中心基準で20mm幅を保護層9の第1の領域9aとし、その両端10mmをそれぞれ保護層9の第2の領域9bとした
放電評価として、以下の方法で行った。
【0099】
放電評価:3kV(P−P)、10kHzの高周波高電圧電源を用い、25℃−60%RHの環境条件にて発生するオゾンの量を測定した。測定方法は、恒温恒湿槽内にて、空気流量20L/min、内径52mmの円筒内で放電素子1に高電圧を印加して放電させ、下流に、オゾン濃度測定器(ダイレックス(株)社製DY−1500型)のサンプリングチューブ37を設置し、測定を行った。サンプリングチューブ37の下流にはオゾン吸着ハニカム35を置き、恒温恒湿槽内にオゾンが滞留することを防止した。
【0100】
測定は、放電素子1に電圧を印加した後、1分後の濃度を測定した。なお、測定の精度は0.01PPMである。比較用としては、試料番号9に従来の線状の放電電極構造である放電素子1を用いた。
【0101】
結果は表1に示すとおりである。ただし、表1において放電電極5の形状の「島状」とは、図1に示しているように、スルーホール、配線回路13を介して、複数の放電電極5が互いに離隔して形成されていることを意味している。
【表1】


【0102】
試料番号1〜8の放電素子1と試料番号9〜13の放電素子1とを比較すると、試料番号1〜8の放電素子1は、放電効率が良く、多量のオゾンを発生させることができることが分かる。
【0103】
また、表1に示しているように、試料番号1〜8の放電素子1の保護層9は第1の領域9aと第2の領域9bのみから形成されているが、試料番号9〜13の放電素子1と比較して、放電効率が向上していることが分かる。
【0104】
このように、保護層9が第1の領域9aと第2の領域9bのみから形成され、高いコストを要しない単純な構造であっても、高い放電効率が得られる。なお、保護層9は第1の領域9a、第2の領域9bだけでなく、更に、保護層9の厚みの異なる別の領域を設けていれば、保護層9の厚みが段階的に変化されているので、効率良くオゾンを発生させることが期待できる。
【0105】
また、試料番号1と9を比較すると、放電素子1上の空気の流速分布を考慮し、上方を流れる空気の流速の速い、第1の領域9aの保護層9の厚みを薄くして、上方を流れる空気の流速の遅い、第2の領域9bの保護層9の厚みを厚くした方が、放電効率が良く、より多くのオゾンを発生するためには有効であることが分かる。これは第1の領域9a上では風速が速く、より多くの酸素が供給されるので、コロナ放電による酸素からオゾンへの化学反応が効率良く行われていることによるものである。
【0106】
さらに、試料番号1及び2の測定結果から、放電電極5が線状電極の形状で形成されているものより、複数の放電電極5が互いに離隔して形成されている方が、コロナ放電によるオゾン発生において、より有効であることが分かる。これは、複数の放電電極5を互いに離隔して形成した方が、放電電極5の周長さをより長く取ることができるためである。
【0107】
また、試料番号2及び10、または試料番号5及び13の測定結果より、互いに離隔して形成された複数の放電電極5を用いた場合でも、放電素子1上の空気の流速分布を考慮し、上方を流れる空気の流速の速い、第1の領域9aの保護層9の厚みを薄くして、上方を流れる空気の流速の遅い、第2の領域9bの保護層9の厚みを厚くした方が、放電効率が良く、より多くのオゾンを発生するためには有効であることが分かる。
【0108】
また、試料番号3及び11の測定結果より、第2の領域9bよりも、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の密度が、第2の領域9bの下に位置する放電電極5の密度を大きくした方が、オゾンの発生量が多く、コロナ放電によるオゾン発生に有効であることが分かる。これは、第1の領域9a上の空気の流速が速く酸素の供給量が多いため、この第1の領域9aの単位面積当たりの放電電極5の密度を大きくして強い放電を集中させたことにより、放電による酸素からオゾンへの反応が効率良く行われているからである。
【0109】
さらに、試料番号4及び12の測定結果から、上方の空気の流速が遅く、保護層9の厚みの大きい第2の領域9bの下に位置する放電電極5よりも、上方の空気の流速が速く、保護層9の厚みの小さい第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの周長さが長い方が、オゾンの発生量がより多くなっていることが分かる。このことから、第2の領域9bよりも、第1の領域9aの単位面積あたりの放電電極5の周長さが長い方が、放電効率を高めるために、より有効であることが分かる。
【0110】
さらに、試料番号5、6、13の測定結果より、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの数が、第2の領域9bの下に位置する放電電極5の単位面積当たりの数よりも多いことにより、オゾンの発生量が多いことが分かる。このことから、第2の領域9bの下に位置する放電電極5よりも、第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積あたりの数を増やした方が、より放電効率が高められることが分かる。
【0111】
また、試料番号4及び5の測定結果を比較すると、第2の領域9bの下に位置する放電電極5よりも第1の領域9aの下に位置する放電電極5の単位面積あたりの尖状部15の数を増やした方が、より多くのオゾンを発生させることができることが分かる。これは、放電電極5に設けた尖状部15の単位面積当たりの数を増やすことにより、放電効率を向上させることができるからである。
【0112】
さらに、試料番号6及び7の測定結果を比較すると、異なる長さの尖状部15を交互に配置した複数の放電電極5に設けることで、より多くのオゾンを発生出来ることが分かる。同一長さの尖状部15を交互に配設した複数の放電電極5を設けた試料番号6よりも、異なる長さの尖状部15を交互に配設した複数の放電電極5を設けた試料番号7の方が、放電効率がより良くなり、多くのオゾンを発生させることが出来ている。
【0113】
これは、異なる長さの尖状部15を設けることで、放電電極5の単位面積あたりの周長さを大きくすることが出来るとともに、隣り合う放電電極5同士の放電領域が重なることによる、放電領域の減少を防止することが出来る。
【0114】
そして、試料番号8、9を比較することにより、放電電極5を絶縁性基板3の一方の面及び他方の面の両面に設けた場合の方が、放電面積を増やすことができ、より多くのオゾンを発生できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の一例を示す展開斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す実施形態の放電素子の平面図であり、(b)は(a)における領域Aの拡大平面図である。
【図3】図1に示す放電素子の断面図である。
【図4】本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の他の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の他の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の放電素子にかかる実施形態の他の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の放電素子にかかる実施形態の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の放電素子を用いた放電モジュールと通風路内の流体の流速との関係を示した図である。(a)は第1の放電素子を用いた放電モジュールに関するものであり、(b)は第2の放電素子を用いた放電モジュールに関するものである。
【図9】本発明の放電モジュールにかかる実施形態の一例を示す斜視図である。
【図10】本発明のオゾン発生装置又はイオン発生装置にかかる実施形態の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0116】
1・・・放電素子
3・・・絶縁性基板
3a・・・側面部
3b・・・周縁部
5・・・放電電極
7・・・誘電電極
9・・・保護層
9a・・・第1の領域
9b・・・第2の領域
9c・・・第3の領域
11・・・充填材
13・・・配線回路
15・・・尖状部
15a・・・短い尖状部
15b・・・長い尖状部
17・・・給電部
19・・・孔パターン
21・・・放電モジュール
23・・・通風路
25・・・速い領域
27・・・遅い領域
29・・・オゾン発生装置
31・・・イオン発生装置
33・・・ブロアー
35・・・オゾン吸着ハニカム
37・・・サンプリングチューブ
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【出願日】 平成19年9月26日(2007.9.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−108720(P2008−108720A)
【公開日】 平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願番号】 特願2007−248942(P2007−248942)