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【発明の名称】 イオン発生装置
【発明者】 【氏名】片岡 康孝

【要約】 【課題】イオンを拡散するための送風のあらゆる方向に対してもイオンの発生量の検出を可能にして多様な電気機器に応用することができ、プラスイオン及びマイナスイオン、又は何れか一方の発生量が最適な値となるように制御することが可能なイオン発生装置を提供する。

【構成】誘電体基板61の一の面に放電電極63、他の面に誘導電極64を対向するように形成し、放電電極63の先鋭部63b,63b,…に囲まれる位置にイオンを捕集する捕集用導体65を形成する。捕集用導体65が捕集したイオンを検出するイオン検出回路7及び捕集したイオンの量を判定するイオン量判定回路8の出力に基づいて放電電極63及び誘導電極64間に電圧印加回路9が印加する電圧を制御する電圧制御回路10を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体を介して対向するように配置された放電電極及び誘導電極からなるイオン発生素子と、前記放電電極及び前記誘導電極に電圧を印加する電圧印加回路とを備えるイオン発生装置において、
前記放電電極は前記誘電体の一の面に形成され複数の先鋭部を有し、前記誘導電極は前記誘電体の他の面又は内部に形成されており、
前記イオン発生素子は、イオンを捕集する捕集用導体を備え、
該捕集用導体は、前記誘電体の表面であって前記放電電極の先鋭部群に囲まれる位置に形成されており、
前記捕集用導体が捕集するイオンを検出する検出手段と、
該検出手段によるイオンの検出量を判定する判定手段と、
該判定手段による判定結果に基づいて前記電圧印加回路が印加すべき電圧を制御する制御手段と
を備えることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記放電電極は、略C字形に形成され、
前記放電電極が有する先鋭部は、C字の内側に中心方向へ突出するように形成され、
前記誘導電極は、前記放電電極と略同心を有する略O字形に形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記検出手段が検出したイオンの量が所定量以上であるか否かを判定するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記電圧印加回路が第1電圧を印加し、前記判定手段がイオンの検出量が所定量以上であると判定した後は、前記電圧印加回路が前記第1電圧より低い第2電圧を印加するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電圧印加回路による電圧印加中はイオンの量が所定量以上となるように、前記電圧印加回路が印加する電圧の値を制御するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記電圧印加回路は、前記放電電極及び前記誘導電極に印加する電圧を安定化させる安定化手段を備えること
を特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載のイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電によりプラスイオン及びマイナスイオンを発生することができるイオン発生装置に関し、特に、イオンの発生の有無、及びイオンの発生量を検出し、検出した結果に基づいてイオンの発生量を安定化することができるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスイオン及びマイナスイオンの両イオンを発生することができるイオン発生装置が開発され、実用化されている。そして、このような当該イオン発生装置を備える電気機器、例えば空気調和機、除湿機、加湿器、空気清浄機、冷蔵庫、ファンヒータ、電子レンジ、洗濯乾燥機、掃除機、殺菌装置、又は、車載用空気調和機などの需要が急激に拡大している。
【0003】
イオンを発生させる方式には、大きく分けてレナード式、コロナ放電式、電子放射式、放射線物質利用式がある。しかし、一般的なイオン発生装置では、針電極の間又は放電電極と誘導電極との間に高圧交流の駆動電圧を印加することによりコロナ放電を起こし、プラスイオン及びマイナスイオンを発生させるコロナ放電式が採用されることが多い。
【0004】
コロナ放電によって発生するイオンは、様々な効果をもたらすと考えられているが、そのためには一定量以上のイオンが必要になる。従って、イオン発生装置から、効果をもたらす一定量以上のイオンが発生しているか否かを測定する必要がある。しかし、プラスイオン及びマイナスイオンは無味無臭であって可視性もないので実際に発生しているか否かを容易に確認することができない。
【0005】
また、コロナ放電式のイオン発生装置では、長時間の放電による放電電極の劣化、又は電極面への塵埃の付着に起因して、初期状態と比較して放電が不安定になり、イオンの発生量が低下するという可能性がある。さらに、放電電極と誘導電極との間に高圧交流の駆動電圧を印加する場合、放電電極を保護するための保護層の厚さのばらつきによって、放電が開始されるまでの電圧、時間に差が生じるため、イオン発生素子で放電が開始されてイオン量が効果をもたらす一定量以上となるまでの電圧、時間に差が生じる可能性がある。
【0006】
従って、イオン発生装置では、放電電極が劣化してイオンが発生しない状態であるか否か、イオンの発生量が最適な量以上であるか否か等、イオンの実際の発生量を測定した上で、放電電極等の劣化又は汚れの通知、実際の発生量に基づく印加電圧の調整等の制御が必要になる。しかし、イオンが実際に発生しているか否かを容易に確認することができないので、多様な機器に対応できるような簡易な構成によって実際の発生量に基づいた制御をすることができない。
【0007】
そこで、特許文献1には、コロナ放電を起こす電極と近接させてコロナイオン検出電極を設け、コロナイオン検出電極が検出したコロナイオン電流値に基づいて、イオンが実際に発生するための臨界電圧を検出し、印加する電圧を決定することができるイオン発生装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、シートを帯電させるためのマイナスイオンを発生するイオン発生素子を備えるプリンタ装置において、イオン検出器を設け、イオン検出器からの信号に基づいて、イオン発生素子に印加すべき電圧を制御することが可能な装置が開示されている。
【特許文献1】特開平2−130568号公報
【特許文献2】特開平1−232063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の急激に拡大する需要に対し、プラスイオン及びマイナスイオン、又は何れか一方を発生するイオン発生装置は、更に多様な電気機器に備えられることが考えられる。イオン発生装置をより効果的に使用するためには、イオンの発生の有無及びイオンの発生量を検出した上でイオンの発生量を調整することが可能なように制御する必要がある。また、イオンの発生の有無及びイオンの発生量を検出するための機構は、電気機器の小型軽量化、低コスト化、及び省電力化の要望に鑑みて、装置規模の拡大を回避することが必要である。
【0010】
また、イオン発生装置が発生したイオンを効率よく拡散させるために送風手段が必要である。イオン発生装置を多様な電気機器に応用するには、イオン発生素子に対する送風の向きを限定せずにイオンの発生の有無及びイオンの発生量の検出をすることが必要である。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、イオン発生素子の放電電極及び誘導電極とコロナイオン検出電極との配置関係から、イオン発生素子と送風手段との配置によってはイオンの発生量の検出効率が悪化して検出ができない可能性も考えられる。
【0011】
また、特許文献2に開示されている技術は、特にイオン発生装置を使用してシートを帯電させることができるプリンタ装置に限定したものである。また、発生したイオンの量を検出する方法については具体的な開示がされていないため不明である。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、イオンを拡散するための送風のあらゆる方向に対してもイオンの発生量の検出を可能にして多様な電気機器に応用することができ、プラスイオン及びマイナスイオン、又は何れか一方の発生量が最適な値となるように制御することが可能なイオン発生装置を提供することを主たる目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、イオンの発生量の制御については、小さい電圧で安定して制御することを可能にし、省電力化を実現することができるイオン発生装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、イオン発生素子毎の特性のばらつきによって異なる、イオンが所定の量以上を満たすまでの時間の均一化を図り、イオン発生開始時のイオン発生量を安定化させることができるイオン発生装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、最適なイオン量を安定して満たすようにイオンを発生することができるイオン発生装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、より長期的にしてイオンを発生することができるイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るイオン発生装置は、誘電体を介して対向するように配置された放電電極及び誘導電極からなるイオン発生素子と、前記放電電極及び前記誘導電極に電圧を印加する電圧印加回路とを備えるイオン発生装置において、前記放電電極は前記誘電体の一の面に形成され複数の先鋭部を有し、前記誘導電極は前記誘電体の他の面又は内部に形成されており、前記イオン発生素子は、イオンを捕集する捕集用導体を備え、該捕集用導体は、前記誘電体の表面であって前記放電電極の先鋭部群に囲まれる位置に形成されており、前記捕集用導体が捕集するイオンを検出する検出手段と、該検出手段によるイオンの検出量を判定する判定手段と、該判定手段による判定結果に基づいて前記電圧印加回路が印加すべき電圧を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明では、放電電極と誘導電極との間で起こるコロナ放電により発生したマイナスイオン及びプラスイオンは、放電電極及び誘導電極が形成された誘電体の表面に更に形成された捕集用導体で捕集される。プラスイオン及びマイナスイオンは、放電電極付近の水分がコロナ放電によって分離することにより発生する。捕集用導体は、放電電極が有する先鋭部の突出端群に囲まれる位置に形成されるため、発生したイオン群の略中心に存在する。従って、発生したイオンを拡散させるための送風の方向が変化した場合であっても、先鋭部から発生したイオンを捕集する。捕集用導体で捕集されたイオンは、検出手段により検出され、検出されたイオンの量が判定される。イオンの発生量は、印加される電圧の値で増減するのに対して、判定されたイオンの発生量に基づいて印加する電圧の値が制御される。
【0019】
本発明に係るイオン発生装置は、前記放電電極は、略C字形に形成され、前記放電電極が有する先鋭部は、C字の内側に中心方向へ突出するように形成され、前記誘導電極は、前記放電電極と略同心を有する略O字形に形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明では、イオンを捕集する捕集用導体は、略C字形の内側から突出端が略中心を向くように形成された放電電極の先鋭部群に囲まれるように配される。略C字形をなすように配される放電電極の先鋭部から、放電電極と対向して略同心をなす略O字形に形成された誘導電極へコロナ放電が起こる。プラスイオン及びマイナスイオンは、放電電極付近の水分がコロナ放電によって分離することにより発生する。先鋭部の各突出端に囲まれるような位置に形成される捕集用導体は、発生したイオン群の略中心に存在する。そのため、発生したイオンを拡散させるための送風の方向が変化した場合であっても、先鋭部から発生したイオンを捕集する。捕集されたイオンは検出手段により検出され、検出されたイオンの量が判定される。イオンの発生量は印加される電圧の値で増減するのに対して、判定されたイオンの発生量に基づいて印加する電圧の値が制御される。
【0021】
本発明に係るイオン発生装置は、前記判定手段は、前記検出手段が検出したイオンの量が所定量以上であるか否かを判定するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明では、発生したイオンの量は設定された所定量以上であるか否かに基づいて多いか少ないかで判定される。このため、印加する電圧の制御についてはイオンの発生量が所定量以上であるか否かの判定に対して、印加する電圧の高低を設定することにより制御される。
【0023】
本発明に係るイオン発生装置は、前記制御手段は、前記電圧印加回路が第1電圧を印加し、前記判定手段がイオンの検出量が所定量以上であると判定した後は、前記電圧印加回路が前記第1電圧より低い第2電圧を印加するようにしてあることを特徴とする。
【0024】
本発明では、発生したイオンの検出量が所定量以上である判定するまでは高い電圧が印加される。
【0025】
本発明に係るイオン発生装置は、前記制御手段は、前記電圧印加回路による電圧印加中はイオンの量が所定量以上となるように、前記電圧印加回路が印加する電圧の値を制御するようにしてあることを特徴とする。
【0026】
本発明では、放電電極と誘導電極との間に印加する電圧は、イオン発生装置で発生するイオンの量が所定量以上を満たすように制御される。
【0027】
本発明に係るイオン発生装置は、前記電圧印加回路は、前記放電電極及び前記誘導電極に印加する電圧を安定化させる安定化手段を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明では、放電電極と誘導電極との間に印加する電圧が安定化される。
【発明の効果】
【0029】
本発明による場合は、放電電極及び誘導電極を形成した誘電体の表面にイオンを捕集する捕集用導体を形成し、該捕集用導体で捕集したイオンを検出し、検出したイオンの量を判定する構成により、イオンの発生の有無を確認してイオンの発生量を検出することができる。また、捕集用導体を、放電電極及び誘導電極が形成される誘電体の表面であって、放電電極が有する複数の先鋭部の突出端の略中心位置に形成する構成とすることにより、イオンを拡散するための送風のあらゆる方向に対してイオンの検出が可能になる。また、イオンの発生量は放電電極及び誘導電極に印加される電圧の値で増減するのに対し、検出したイオンの発生量を判定し、判定したイオンの発生量に応じて放電電極及び誘導電極に印加する電圧を制御する構成により、イオン発生装置から発生するプラスイオン及びマイナスイオン、又は何れか一方の発生量が最適な値となるようにすることができる。
【0030】
本発明による場合は、イオンの発生量が所定量以上であるか否かにより判定し、当該判定の結果に対して印加すべき電圧を制御する構成とする。イオンの発生量が所定の値になるように印加する電圧の値を細かく制御するのではなく、印加する電圧の値を高低で設定しておき、またイオンの発生量の閾値をイオンの効果が十分な最低限の値に設定しておくことで制御する。イオンの発生量が閾値以上である場合は印加する電圧を低くし、閾値未満である場合は印加する電圧を高くする簡易な制御により、イオンの発生量が効果を発揮する最適な量となるよう安定して制御することができる。更に、イオン発生装置の省電力化、小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0031】
本発明による場合は、イオンの検出量が所定量以上であると判定した後は、放電電極及び誘導電極の間への電圧印加開始時に印加する第1電圧より低い電圧を印加する構成とする。これにより、イオンの発生量が最適な量を満たすまでの時間が、放電電極及び誘導電極を有するイオン発生素子毎の特性のばらつきによって異なることに対し、特性のばらつきを吸収してイオンの発生量が最適な量を満たすまでの時間の均一化を図る。そのため、イオン発生開始後にイオンの発生量が最適量を満たすまでの時間を安定化させることができる。
【0032】
本発明による場合は、イオン発生素子に電圧を印加してイオンを発生させている間は、イオンの発生量が所定量以上となるようにイオンの発生量の判定結果に基づいて印加する電圧の値を制御する構成とする。これにより、安定して所定量を満たすようイオンを発生させることができる。
【0033】
本発明による場合は、イオン発生素子に印加する電圧を安定化させる手段を備える構成とすることにより、イオン発生素子の汚染、又はイオン発生装置の使用環境でイオン発生素子に印加される電圧が変化してイオン発生量が変化してしまうことを防ぎ、安定してイオンを発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係るイオン発生装置を備える電気機器1の構成を示す略示側面断面図である。電気機器1は略直方体をなす筐体からなり、少なくとも、筐体内部にプラスイオン及びマイナスイオン、又は何れか一方を発生するイオン発生装置2と、イオン発生装置2へ送風するための送風ファン3とを備える。更に、電気機器1の筐体の送風ファン3に近い一の面には、筐体内部へ外部から空気を吸い込むための吸込口4が形成されている。また、吸込口4が形成された面と対向する筐体の一の面には、イオン発生装置2が発生したイオンと共に、空気を筐体内部から外部へ放出するための吹出口5が形成されている。図1において白矢印は、電気機器1の筐体外部から内部へ、及び内部から外部への空気の流れの方向を示している。
【0036】
送風ファン3は、吸込口4を介して空気を電気機器1の筐体内部へ取り込み、取り込んだ空気をイオン発生装置2へ送風し、イオン発生装置2が発生したプラスイオン及びマイナスイオン、又は何れか一方を含む空気を、電気機器1の筐体外部へ吹出口5を介して放出するための空気の流れを発生させるように設置されている。吸込口4は、電気機器1の筐体の一の面に複数の略長方形の開口部をなすように形成されている。吹出口5は、吸込口4と同様に、筐体の一の面に複数の略長方形の開口部をなすように形成されている。なお、吸込口4及び吹出口5の形状は、略長方形に限られるものではないことは勿論である。
【0037】
イオン発生装置2は略板状に形成されており、送風ファン3によって発生する空気の流れを妨げないような向きで設置されている。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置2の構成を示すブロック図である。イオン発生装置2は、イオン発生素子6と、イオン検出回路7と、イオン量判定回路8と、電圧印加回路9と、電圧制御回路10とを備える。
【0039】
イオン発生素子6は、プラスイオン及びマイナスイオンをコロナ放電により発生させる素子である。イオン検出回路7は、イオン発生素子6から発生したプラスイオン又はマイナスイオンを検出するための回路であり、イオン発生素子6に接続されている。イオン量判定回路8は、イオン検出回路7が検出したイオンの量を判定する回路であり、イオン検出回路7に接続されている。電圧印加回路9は、イオン発生素子6にイオンを発生させるために高圧交流の駆動電圧を印加する回路であり、イオン発生素子6に接続されている。電圧制御回路10は、イオン発生素子6に印加すべき駆動電圧を制御する回路であり、イオン量判定回路8及び電圧印加回路9に接続されている。
【0040】
以下、イオン発生装置2の各構成部について説明する。
【0041】
図3は、実施の形態1におけるイオン発生素子6の構成を示す模式図である。なお、図3(a)は、実施の形態1におけるイオン発生素子6の構成を模式的に示す平面図である。また図3(b)は、(a)に示したイオン発生素子6のP1−P2線での断面をP3方向から見た略示断面図であり、イオン発生装置2の他の構成部との接続関係も併せて示している。
【0042】
イオン発生素子6は略板状の形状であり、誘電体基板61と、保護層62と、放電電極63と、誘導電極64と、捕集用導体65と、電極接点66a,66b,66cとを備える。
【0043】
誘電体基板61は、何れも誘電体からなる略長方形の板状の上部基板61aと下部基板61bとが上下に重ねられて構成されている。保護層62は、上部基板61aの、下部基板61bと重なる面とは反対側の表面を覆うように形成されている。
【0044】
誘電体基板61は、例えば、上部基板61a及び下部基板61bの厚みを夫々0.45mmとし、平面形状が15mm×37mm×0.9mmの大きさとなるように形成してある。また、誘電体基板61を構成する上部基板61a及び下部基板61b、並びに保護層62の素材としては、例えばアルミナを使用する。ただし、アルミナに限定するものではなく、上部基板61a、下部基板61b、及び保護層62の素材として他に、結晶化ガラス、フォルステライト、ステアタイト等のセラミック材料、又は、ポリイミド、エポキシ等の樹脂材料を用いることも可能である。
【0045】
放電電極63は、4つの略長方形の基部63a,63a,63a,63aが上部基板61aの表面で略C字形をなすように結合されて形成されている。4つの基部63a夫々には、略C字形の放電電極63の内側へ突出した3つの先鋭部63b,63b,…が形成されている。また、放電電極63は、高電圧によって劣化し易いため、保護層62に覆われている。
【0046】
誘導電極64は、上部基板61aと下部基板61bとの間に、放電電極63と対向するように略O字形をなすように形成されている。
【0047】
捕集用導体65は、放電電極63と同様に、上部基板61aの表面に略円形状に形成される。捕集用導体65は、放電電極63の先鋭部63b,63b,…の先端同士を結んで得られる閉領域の略中心位置に形成される。捕集用導体65は、上部基板61aの表面に形成されるが、イオンを捕集することができるように、保護層62に覆われないように露出させてある。このように、捕集用導体65を放電電極63の先鋭部63b,63b,…に取り囲まれるように形成することにより、イオンを拡散するための送風方向を何れの方向に設定した場合でも、放電電極63の先鋭部63b,63b,…でコロナ放電によって発生したプラスイオン及びマイナスイオンは、捕集用導体65に捕集される。
【0048】
なお、捕集用導体65は、放電電極63と接触しない形状であって先鋭部63b,63b,…の突出端群に囲まれるように配されるのであれば、その形状は限定されない。捕集用導体65が先鋭部63b,63b,…に囲まれていることで、放電電極63の先鋭部63b,63b,…に電界が集中して局部的にコロナ放電が生じてイオンが発生した場合、いずれの方向から送風されても捕集用導体65は先鋭部63b,63b,…のうち何れかの風下に位置するからである。また、放電電極63及び誘導電極64の形状は、捕集用導体65を取り囲むように形成された放電電極63に対して、誘導電極64が対向するように配置されている形状であれば、夫々上述の略C字形、略O字形の平面的な形状に限らない。
【0049】
また、放電電極63、誘導電極64、及び捕集用導体65の素材は、実施の形態1ではタングステンを使用する。ただし、放電電極63、誘導電極64、及び捕集用導体65の素材は、タングステンに限定されず、他に、モリブデン等の高融点の金属材料を使用してもよい。捕集用導体65の素材は、放電電極63及び誘導電極64と同一材料である必要はなく、銅等の導電性の金属であってもよい。
【0050】
電極接点66a,66b,66cは、下部基板61bの、上部基板61aと重なる面とは反対面に形成されている。電極接点66aは、放電電極63と接続するように下部基板61b及び上部基板61aを貫通して形成されている。放電電極63と電圧印加回路9とは、電極接点66aを介して接続されている。電極接点66bは、誘導電極64と接続するように下部基板61bを貫通して形成されている。誘導電極64と電圧印加回路9とは、電極接点66bを介して接続されている。また、電極接点66cは、捕集用導体65と接続するように下部基板61b及び上部基板61aを貫通して形成されている。捕集用導体65とイオン検出回路7とは、電極接点66cを介して接続されている。なお、放電電極63は電極接点66aを介して接地されている。イオン検出回路7及び電圧印加回路9も同様に接地されている。
【0051】
ここで、上述のように構成されるイオン発生素子6を製造する方法の概略を説明する。まず、アルミナシートからなる下部基板61bの表面に、タングステン材料を使用して、略O字形の誘導電極64をパターン印刷により形成する。下部基板61bには、電極接点66a,66b,66cが貫通するように貫通孔が形成される。次に、アルミナシートからなる上部基板61aを誘導電極64を覆うように下部基板61b上に載置し、下部基板61bと上部基板61aとを圧着する。上部基板61aにも、電極接点66a,66cが貫通するように貫通孔が形成される。次に、上部基板61aの表面にタングステン材料を使用して、略C字形の放電電極63と略円形状の捕集用導体65をパターン印刷により形成する。次に、放電電極63を覆うように、アルミナからなる保護層62をコーティングして形成する。このとき、捕集用導体65が保護層62に覆われないよう、捕集用導体65にはマスキング等の処理を行っておく。
【0052】
このようにして形成された部材を、1400℃〜1600℃の温度で、非酸化性雰囲気下で焼結する。電極接点66a用に形成された貫通孔には、放電電極63に使用される材料と同じ材料が充填される。電極接点66b用に形成された貫通孔には、誘導電極64に使用される材料と同じ材料が充填される。同様に、電極接点66c用に形成された貫通孔には、捕集用導体65に使用される材料と同じ材料が充填される。このようにして、イオン発生素子6が製造される。
【0053】
次に、捕集用導体65が捕集したイオンを検出するためのイオン検出回路7について説明する。イオン検出回路7は、電極接点66cを介して捕集用導体65と接続されており、捕集用導体65の電位に基づいて、コロナ放電により発生したイオンを検出する。図4は、本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置2のイオン検出回路7の構成を示す回路図である。図4に示す例では、捕集用導体65でプラスイオンを検出することができるように構成されている。ただし、マイナスイオンを検出するためには、イオン検出回路7を、各素子の極性を逆にして構成すればよい。
【0054】
イオン検出回路7は、入力端子71と、整流用ダイオード72と、ツェナーダイオード73と、Nチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)74と、定圧電源75と、抵抗76と、出力端子77とを備える。
【0055】
入力端子71は、イオン発生素子6の電極接点66cを介して捕集用導体65に接続されている。入力端子71は、整流用ダイオード72のアノードに接続されている。整流用ダイオード72のカソードは、ツェナーダイオード73のカソード及びNチャネル型MOSFET74のゲートに接続されている。ツェナーダイオード73のアノードは、接地電位になるように接続されている。Nチャネル型MOSFET74のドレインには、定電圧Vccが印加されるように定圧電源75が接続されている。抵抗76の一端はNチャネル型MOSFET74のソースに接続されており、抵抗76の他端は接地電位になるように接続されている。また、Nチャネル型MOSFET74のソースの電位を検出することができるようにNチャネル型MOSFET74のソースに出力端子77が接続されている。
【0056】
整流用ダイオード72は、イオンを捕集する捕集用導体65の電位を、プラス又はマイナスのいずれかに特定するために備えられている。イオン発生素子6からは、プラスイオン及びマイナスイオン双方が発生し、捕集用導体65はいずれのイオンも捕集する。このため、捕集用導体65の電位はプラス又はマイナスいずれにもなり得る。従って、イオン検出回路7には、捕集用導体65と接続する入力側に整流用ダイオード72を設けることにより測定する捕集用導体65の電位の極性を特定することができるので、迅速にイオンを検出することができる。図4に示す例では、捕集用導体65の極性をプラスに特定する例を示している。
【0057】
Nチャネル型MOSFET74では、ゲート電位が上昇した場合にドレインからソースへ電流が流れる。この場合、ソース電位を測定することでゲート電位が上昇したか否かを検知することができる。このようなNチャネル型MOSFET74の特性を利用して、捕集用導体65がプラスイオンを捕集することにより上昇する電位を測定することができる。捕集用導体65が整流ダイオード72を介してNチャネル型MOSFET74のゲートに接続されているので、Nチャネル型MOSFET74のゲート電位は捕集用導体65の電位に相当する。
【0058】
抵抗76は、Nチャネル型MOSFET74のソースを接地させると共に、ソース電位を測定するために接地電位との間に配置されている。ツェナーダイオード73は、捕集用導体65の電位がNチャネル型MOSFET74のゲート耐圧よりも高くなることが考えられるので、Nチャネル型MOSFET74のゲート電位の上昇を制限するために備えられている。従って、ツェナーダイオード73は、Nチャネル型MOSFET74のゲート耐圧よりも低いツェナー電圧を特性として有するものを使用している。実施の形態1では、例えば、16Vのツェナー電圧を特性として有するツェナーダイオード73を使用している。
【0059】
上述のような構成のイオン検出回路7により、イオンを検出する方法について説明する。イオン発生素子6の放電電極63と誘導電極64との間に高圧交流の駆動電圧を印加してイオン発生装置2を動作させると共に、送風ファン3を動作させた場合、発生したプラスイオンが捕集用導体65に捕集される。捕集用導体65が捕集したプラスイオンの量が増加するに従い、捕集用導体65の電位が上昇する。これにより、捕集用導体65に接続されたNチャネル型MOSFET74のゲート電位が上昇し、Nチャネル型MOSFET74のドレイン及びソース間に電流が流れる。そして、Nチャネル型MOSFET74のソース電位が上昇して、やがて定電圧Vccと一致する。従って、Nチャネル型MOSFET74のソース電位を出力端子77を介して測定することにより、プラスイオンが発生しているか否かを検出することができる。
【0060】
図5は、本発明の実施の形態1におけるイオン検出回路7が備えるNチャネル型MOSFET74のソース電位の時間変化を示すグラフである。横軸はNチャネル型MOSFET74のソース電位の測定を開始してからの時間を示し、縦軸は電位の大きさを示している。なお、図5に示す例では、定圧電源75が出力する定電圧Vccは12Vである。
【0061】
図5にVS1で示す曲線は、放電電極63と誘導電極64との間に高圧交流の駆動電圧を印加している場合の、Nチャネル型MOSFET74のソース電位の時間変化を示している。図5にVS1で示す曲線では、測定を開始した後に駆動電圧の印加を開始している。図5にVS0で示す曲線は、放電電極63と誘導電極64との間に高圧交流の駆動電圧を印加していない場合の、Nチャネル型MOSFET74のソース電位の時間変化を示している。
【0062】
図5にVS0で示す曲線は、時間が経過してもNチャネル型MOSFET74のソース電位は上昇しないことを示している。放電電極63と誘導電極64との間に高圧交流の駆動電圧を印加していない場合、Nチャネル型MOSFET74のドレインに12Vの定電圧が印加されているにも拘わらず、ゲート電位が上昇しないからである。これは、放電電極63と誘導電極64との間に駆動電圧を印加していないためにプラスイオンが発生しないことから捕集用導体65がプラスイオンを捕集することができず、補修用導体65の電位が上昇しないからである。
【0063】
逆に、図5にVS1で示す曲線は、放電電極63と誘導電極64との間に高圧交流の駆動電圧を印加している場合は、Nチャネル型MOSFET74のソース電位が時間の経過と共に上昇し、最終的に定電圧12Vに到達することを示している。つまり、Nチャネル型MOSFET74のゲート電位が時間の経過と共に上昇するためにNチャネル型MOSFET74のドレイン及びソース間に電流が流れ、最終的にソース電位はドレインに印加されている定電圧12Vになることを示している。これは、放電電極63と誘導電極64との間に駆動電圧を印加しているのでプラスイオンが発生し、捕集用導体65がプラスイオンを捕集することができることにより、捕集用導体65の電位が上昇しているからである。
【0064】
また、図5にVS1で示す曲線は、放電電極63と誘導電極64との間における駆動電圧の印加を開始した後は、ソース電位が徐々に上昇することを示している。これは、放電電極63と誘導電極64との間に駆動電圧を印加し始めてプラスイオンの発生量が一定量を満たすまでに時間を要することを示している。
【0065】
以上のように、捕集用導体65がプラスイオンを捕集した場合は、イオンの発生の有無をイオン検出回路7により検出することができる。
【0066】
次に、イオン検出回路7で検出したイオンの量を判定するイオン量判定回路8について説明する。イオン検出回路7の出力端子77は、イオン量判定回路8と接続されている。
【0067】
図6は、実施の形態1におけるイオン量判定回路8の構成を示す回路図である。イオン量判定回路8は、入力端子81と、電源82と、コンパレータ83と、出力端子84とを備える。なお、入力端子81はイオン検出回路7の出力端子77と接続されている。電源82は基準電位を供給するために備えられている。従って、イオン量判定回路8のみのための電源を備える必要はない。例えば、イオン検出回路7に備えられている定圧電源75から、抵抗分圧にて所定の電圧に分圧することにより、イオン量判定回路8の電源82とする構成としてもよい。
【0068】
コンパレータ83は、2つの入力端子83a,83bと1つの出力端子83cを有するオペレーショナルアンプであり、出力端子83cの出力電位として所定の高低2段階の電位が設定されている。コンパレータ83は、入力端子83aの電位を入力端子83bの電位と比較し、入力端子83aの電位が高い場合は出力端子83cの出力電位が所定の高い電位(ハイレベル)になり、入力端子83aの電位が低い場合は出力端子83cの出力電位が所定の低い電位(ローレベル)になる。従って、出力端子83cの出力電位を測定することにより、入力端子83aに印加される電圧と入力端子83bに印加される基準電圧とのいずれが高いかを判定することができる。
【0069】
コンパレータ83の入力端子83aにはイオン検出回路7の出力端子77が入力端子81を介して接続される。コンパレータ83の入力端子83bには基準電位として定電圧を供給する電源82が接続されている。これにより、コンパレータ83は、入力端子81を介して接続されるイオン検出回路7のNチャネル型MOSFET74のソース電位と、定電圧を供給する電源82の電位とを比較し、Nチャネル型MOSFET74のソース電位が高い場合は出力端子83cからハイレベルの信号が出力される。一方、Nチャネル型MOSFET74のソース電位が低い場合は出力端子83cからローレベルの信号が出力される。これにより、コンパレータ83の出力端子83cの電位を出力端子84を介して測定することにより、Nチャネル型MOSFET74のソース電位が基準電位よりも高いか否かを判定することができる。
【0070】
なお、コンパレータ83の入力端子83bに入力される定電圧の値は、イオン発生素子6から発生するイオンの量が効果を発揮するために最低限必要な値を満たしている場合のイオン検出回路7のNチャネル型MOSFET74のソース電位の実測値に基づいて設定した値である。
【0071】
従って、コンパレータ83の出力端子83cの電位が電源82の定電圧の値と比較して高いか否かを判定することにより、イオン検出回路7を介して捕集用導体65が捕集したイオンの発生量が効果を発揮するために最低限必要な値を満たすか否かを判定することができる。
【0072】
次に、イオン発生素子6でプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるために、駆動電圧を印加する電圧印加回路9、及び電圧印加回路9で印加する電圧を制御するための電圧制御回路10について説明する。
【0073】
電圧印加回路9は、イオン発生素子6の電極接点66a及び電極接点66bと接続してあり、電極接点66a及び電極接点66bを介して放電電極63と誘導電極64との間に高圧交流の駆動電圧を印加することによりコロナ放電を生じさせ、プラスイオン及びマイナスイオンを発生させるようにしてある。例えば、電圧印加回路9により、放電電極63と誘導電極64との間に、ピーク値が4.5kVで、周波数が45kHzであるインパルス状の極短時間の正負振動減衰波形を有する電圧を印加した場合、放電電極63の先鋭部63b,63b,…に電界が集中して局部的にコロナ放電が生じる。コロナ放電の作用によりプラスイオン及びマイナスイオンが発生する。例えば、イオン発生素子6から約25cm離れた位置では、16万個/m3 を超えるプラスイオン及びマイナスイオンが夫々発生する。
【0074】
電圧制御回路10は、イオン量判定回路8からの出力を検出し、その結果に基づいて電圧印加回路9で印加する電圧を制御する。電圧制御回路10はイオン量判定回路8の出力端子84と接続しており、イオン量判定回路8の出力端子84で検知される電位に基づいて電圧印加回路9で放電電極63及び誘導電極64に印加する駆動電圧、及び駆動電圧を印加するインパルス周期を制御する。
【0075】
図7は、本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置2の電圧印加回路9及び電圧制御回路10の構成を示すブロック図である。電圧印加回路9は、電源91と、充放電回路92と、トランス93と、高電圧出力部94と、スイッチ回路95とを備え、スイッチ回路95を介して電圧制御回路10と接続している。電源91は充放電回路92に接続され、充放電回路92はトランス93を介して高電圧出力部94に接続されている。また、スイッチ回路95は充放電回路92及びトランス93に接続されている。高電圧出力部95は、イオン発生素子6の放電電極63及び誘導電極64に電極接点66a及び電極接点66bを介して接続されている。
【0076】
図8は、本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置2の電圧印加回路9の構成の一例を示す回路図である。まず、図8を参照して、インパルス的な極短時間の正負振動減衰波形の駆動電圧を発生し、発生した駆動電圧を放電電極63と誘導電極64との間に印加するための電圧印加回路9を説明する。そのため、電圧制御回路10を省略して説明する。
【0077】
電源91は一定の直流電圧を出力する直流電源である。電源91の正電圧出力側は充放電回路92に接続されており、負電圧出力側は接地されている。
【0078】
充放電回路92は抵抗921とコンデンサ922とからなるローパスフィルタを構成している。抵抗921の一端は電源91の正電圧出力側と接続されており、抵抗921の他端はスイッチ回路95に接続されていると共に、コンデンサ922を介して接地されている。
【0079】
トランス93は一次巻線931と二次巻線932とを備える。一次巻線931の一端は充放電回路92の抵抗921とコンデンサ922との接続点に接続されており、他端はスイッチ回路95に接続されている。一次巻線931に流れる電流により、二次巻線932を介して高電圧出力部94に電圧が印加される。トランス93の一次巻線931と二次巻線932との巻線比は、十分に大きく設定してある。二次巻線932を介して高電圧出力部94に印加される電圧は、一次巻線931に印加される電圧がトランス93の巻線比に応じて昇圧された電圧である。
【0080】
高電圧出力部94はトランス93の二次巻線932の両端である電極941と電極942とを備える。電極941はイオン発生素子6の電極接点66bを介して誘導電極64に接続されており、電極942はイオン発生素子6の電極接点66aを介して放電電極63に接続されている。なお、電極942は図示しないが接地されている。トランス93の二次巻線932に高電圧が印加された場合、電極941及び電極942を介して放電電極63及び誘導電極64間に高電圧が印加され、コロナ放電によってプラスイオン及びマイナスイオンが発生する。
【0081】
スイッチ回路95は、ツェナーダイオード951と、コンデンサ952と、トリガ用抵抗953と、ダイオード954と、制御整流素子(SCR;Silicon Controlled Rectifier)955とを備える。ツェナーダイオード951のカソードは充放電回路92の抵抗921とコンデンサ922との接続点に接続されている。コンデンサ952の一端、トリガ用抵抗953の一端、及びダイオード954のカソードはツェナーダイオード951のアノードと接続されており、更に制御整流素子955のゲートに共通に接続されている。コンデンサ952の他端、トリガ用抵抗953の他端、及びダイオード954のアノードは接地されている。制御整流素子955のアノードはトランス93の一次巻線931の一端に接続されている。また、制御整流素子955はゲートに所定の正のゲートトリガ電圧が印加された場合に、アノードとカソードとの間が導通して電流が流れる。
【0082】
次に、イオン量判定回路8の出力により駆動電圧を制御する電圧制御回路10が接続されていない状態で、通常、図8に示した電圧印加回路9によって放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧について説明する。図9は、実施の形態1における電圧印加回路9により印加される駆動電圧の時間変化を示すタイムチャートである。図9の横軸は時間の経過を示している。図9(a)に示す曲線は、図8に示した電圧印加回路9の充放電回路92が備える抵抗921とコンデンサ922との接続点での電圧V1の時間変化を示す。図9(b)に示す曲線は、図8に示したスイッチ回路95が備えるツェナーダイオード951のアノードと、コンデンサ952、トリガ用抵抗953、及びダイオード954のカソードとの接続点、即ち制御整流素子955のゲートでの電圧V2の時間変化を示している。図9(c)に示す曲線は、高電圧出力部94の電極941及び電極942間の電圧、即ちイオン発生素子6の放電電極63と誘導電極64との間に印加される電圧V3の時間変化を示している。
【0083】
図9(a)に示すように、電源91により抵抗921を介してコンデンサ922に電荷が供給されてコンデンサ922に電荷が蓄えられ、充放電回路92が徐々に充電される。コンデンサ922の電荷の蓄積量に応じて電圧V1も上昇する。電圧V1が上昇中ではあるが電圧V1がスイッチ回路95のツェナーダイオード951のツェナー電圧Vzdを超えるまでの時間Taでは、ツェナーダイオード951は導通しない。従って、制御整流素子955のゲートでの電圧V2は接地電位である。
【0084】
コンデンサ922に蓄えられた電荷が徐々に増加して電圧V1がツェナー電圧Vzdを超えた場合、ツェナーダイオード951が導通して抵抗953に電流が流れ始める。抵抗953に印加される電圧、即ち制御整流素子955のゲートに印加される電圧V2が上昇する。しかし、スイッチ回路95の制御整流素子955のゲートに所定の正のゲートトリガ電圧Vtが印加されない間は、制御整流素子955のアノードとカソードとの間は導通しない。このため、トランス93の一次巻線931には電流は流れず、放電電極63と誘導電極64との間に印加される電圧V3は接地電位である。
【0085】
電圧V1が更に上昇して制御整流素子955のゲートに印加される電圧V2が制御整流素子955のゲートトリガ電圧Vtに到達した場合、制御整流素子955のアノードとカソードとの間が導通する。この場合の電圧V1は、V1=Vzd+Vtで表される。制御整流素子955が導通した場合は、コンデンサ922に蓄えられた電荷がトランス93の一次巻線931及び制御整流素子955を介して放電される。また、コンデンサ922の両端に印加されていた電圧V1がトランス93の一次巻線931に印加される。
【0086】
コンデンサ922に蓄えられた電荷が放電されてトランス93の一次巻線931に電流が流れた場合、一次巻線931側のエネルギーが二次巻線932側へ伝達される。この結果、図9(c)に示すように、放電電極63と誘導電極64との間にインパルス状の電圧が印加される。放電電極63と誘導電極64との間に印加される電圧のパルス部の電圧値は例えば1kV〜10kVである。なお、負の極性で電圧を印加した場合、パルス部の電圧値はマイナス1kV〜マイナス10kVである。
【0087】
また、放電によりコンデンサ922の両端に加わる電圧V1は接地電位に戻ると共に、制御整流素子955に流れる電流は保持電流を下回る。したがって制御整流素子955は非導通状態になる。制御整流素子955が非導通状態になった後は、電荷が再び電源91によりコンデンサ922に供給されて徐々に蓄えられる。以上のようにして充放電が繰返される。
【0088】
充放電回路92での充放電がスイッチ回路95により周期的に繰返され、図9(c)に示される電圧が放電電極63と誘導電極64との間に繰り返し印加される。なお、充放電の周期Tは、電源91の出力電圧、抵抗921の抵抗値、コンデンサ922の静電容量、ツェナーダイオード951のツェナー電圧Vzd、抵抗953の抵抗値、及び、制御整流素子955のゲートトリガ電圧Vtによって定まる。
【0089】
次に、上述のように構成される電圧印加回路9に対し、本発明に係るイオン発生装置2が備える、イオン量判定回路8の出力によって印加電圧を制御する電圧制御回路10について説明する。電圧制御回路10は電圧印加回路9に組み込まれて構成される。図10は、本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置2が備える電圧印加回路9の構成を示す回路図である。図10に示す回路は図9に示した電圧印加回路9に電圧制御回路10を加えた構成であるので、電源91、充放電回路92、トランス93、高電圧出力部94、スイッチ回路95については、図9の説明と同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0090】
電圧制御回路10が組み込まれた電圧印加回路9では、充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点とツェナーダイオード951のカソードとの間に、新たに抵抗956を挿入する。抵抗956により、充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点とツェナーダイオード951のカソードとの間に電位差が生じる。電圧制御回路10はトランジスタを2つ使用して抵抗956によって生じる上述の電位差を制御することにより、制御整流素子955が導通するまでの時間、及び制御整流素子955が導通した場合に一次巻線931に印加される電圧を制御することができる。
【0091】
電圧制御回路10は、2つのトランジスタ101,102と、6つの抵抗103,104,105,106,107,108とを備える。トランジスタ101のコレクタは、電源91と充放電回路92の抵抗921との接続点、即ち電源91の正電圧側に、抵抗105を介して接続されている。トランジスタ101のエミッタは接地されている。トランジスタ101のベースは抵抗103を介してイオン量判定回路8の出力端子84に接続されている。また、トランジスタ101のベースは抵抗104を介してエミッタと接続されており、ノイズによりトランジスタ101がオンになることを回避している。
【0092】
また、トランジスタ102のコレクタは、スイッチ回路95の抵抗956とツェナーダイオード951のカソードとの接続点に、抵抗108を介して接続されている。トランジスタ102のエミッタは接地されている。トランジスタ102のベースは抵抗106を介してトランジスタ101のコレクタに接続されている。また、トランジスタ102のベースは抵抗107を介してエミッタと接続されており、ノイズによりトランジスタ102がオンになることを回避している。
【0093】
次に、電圧制御回路10による、スイッチ回路95の制御整流素子955が導通するまでの時間の制御、及びトランス93の一次巻線931に印加される電圧の値の制御について説明する。以下の説明では、充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点と、スイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間に挿入された抵抗956によって生じる電位差をVrとして表す。
【0094】
電圧印加回路9では、電圧制御回路10が組み込まれた場合も、コンデンサ922に電荷が蓄えられることによって充放電回路92の抵抗921とコンデンサ922との接続点の電圧V1が上昇する。電圧V1から抵抗956によって生じる電位差Vrを差し引いても、ツェナーダイオード951のカソードにツェナー電圧Vzdを超える電圧が印加されるまでは、電圧V1の上昇には拘わらずツェナーダイオード951は導通しない。そして、コンデンサ922に蓄えられた電荷が更に増加し、電圧V1から抵抗956によって生じる電位差Vrを差し引いても、ツェナーダイオード951のカソードに印加される電圧がツェナー電圧Vzdを超えるようになった場合は、ツェナーダイオード951が導通する。この場合抵抗953に電流が流れ始め、抵抗953に加わる電圧、即ち制御整流素子955のゲートに印加される電圧V2が上昇する。
【0095】
また、電圧V1が上昇することによりスイッチ回路95の制御整流素子955のゲートに印加される電圧V2が上昇する。そして、電圧V2が制御整流素子955のゲートトリガ電圧Vtに到達した場合、制御整流素子955のアノードとカソードとの間が導通する。この場合の電圧V1は、V1=Vr+Vzd+Vtで表される。制御整流素子955が導通した場合は、コンデンサ922の両端に印加されていた電圧V1がトランス93の一次巻線931に印加される。
【0096】
次に、電圧制御回路10の制御について説明する。電圧制御回路10のトランジスタ101は、イオン量判定回路8の出力端子84の電位がローレベルである場合はオフになるように設定されている。そのため、イオン量判定回路8の出力端子84の電位がローレベルである場合は、コンデンサ922に蓄積された電荷による電流の一部又は全部が、スイッチ回路95の抵抗956、電圧制御回路10の抵抗108、及びトランジスタ102を介して接地電位に流れる。従って、電圧V1が上昇してV1マイナスVrがツェナー電圧Vzdに到達し、更に電圧V2が制御整流素子955のゲートトリガ電圧Vtに到達するまでに要する時間が長くなる。更に、電圧V1マイナスVrがツェナー電圧Vzdとゲートトリガ電圧Vtとの和を超過する場合に流れる電流量は、トランジスタ102を介して接地電位へ流れる分だけ増加するので、抵抗956によって生じる電位差Vrは増加する。この場合、制御整流素子955が導通してトランス93の一次巻線931に印加される電圧V1=Vr+Vzd+Vtの値は、Vrの値が増加するので、電源91からの電流がトランジスタ102を介して流れない場合と比較して増加する。
【0097】
また、この場合、電圧V1が上昇してV1マイナスVrがツェナー電圧Vzdとゲートトリガ電圧Vtとの和に到達するまでに要する周期T、及びその時点の電圧V1は抵抗956の抵抗値により定まる。抵抗956及びトランジスタ102を介して接地電位へ流れる電流量分だけ、V1マイナスVrがツェナー電圧Vzdとゲートトリガ電圧Vtとの和に到達するまでに余分に時間を要するので、抵抗956に流れる電流量が増加するからである。
【0098】
一方、電圧制御回路10のトランジスタ101は、イオン量判定回路8の出力端子84の電位がハイレベルである場合はオンになるように設定されている。トランジスタ101がオンである場合はトランジスタ101のコレクタ電位が低下するのでトランジスタ102のベース電圧も低下してトランジスタ102はオフになる。これにより、トランジスタ102を介してスイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードから接地電位へ電流が流れないように設定されている。この場合、制御整流素子955が導通する電圧V1=Vr+Vzd+Vtの値は電圧制御回路10を考慮しない場合と同様である。
【0099】
図11は、実施の形態1における電圧制御回路10を組み込んだ電圧印加回路9で印加される駆動電圧の時間変化を示すタイムチャートである。図11の横軸は時間の経過を示している。図11(a)に示す曲線は図10に示した電圧印加回路9の充放電回路92が備える抵抗921とコンデンサ922との接続点の電圧V1の時間変化を示す。図11(b)に示す曲線は高電圧出力部94、即ちイオン発生素子6の放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧V3の時間変化を示している。
【0100】
なお、時間軸において時刻T0はイオン発生装置2への駆動電圧の印加を開始した時刻を示している。時刻T1までは捕集用導体65が捕集したイオンの量が所定の最適量未満であり、従ってイオン量判定回路8の出力端子84の電位がローレベルである時間を示している。一方、時刻T1以降は捕集用導体65が捕集したイオンの量が所定の最適量以上であり、従ってイオン量判定回路8の出力端子84の電位がハイレベルである時間を示している。
【0101】
図11(a)に示す曲線は、時刻T0から時刻T1までの間に、充放電が4回発生していることが示されている。時刻T1以降では充放電は3回発生し、その後も続いていることが示されている。電圧V1が上昇して制御整流素子955が導通する電圧に至る都度、放電が発生していることを示している。図11(b)に示す曲線で、イオン発生素子6の放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧V3が、図11(a)に示すように充放電回路92のコンデンサ922で放電が起こる都度、インパルス状の極短時間の正負振動減衰波形を示している。
【0102】
図11(a)に示す曲線は、制御整流素子955が導通して放電が発生する時点での電圧V1の値が、時刻T1以降よりも時刻T0から時刻T1までの間の時間での値の方が大きいことを示している。また、電圧V1が上昇して制御整流素子955が導通し、放電に至るまでの周期についても、時刻T1以降の周期T´よりも時刻T0から時刻T1までの間の時間での周期Tが長いことが示されている。これは、時刻T0から時刻T1までは、イオン量判定回路8の出力端子84の電位がローレベルであり、電圧制御回路10のトランジスタ101がオフでトランジスタ102がオンであるので、電圧V1がV1=Vr+Vzd+Vtを満たすまでに余分に時間を要し、抵抗956に流れる電流量が増加するからである。
【0103】
上述のように、電圧制御回路10をトランジスタからなるスイッチによって構成することにより、電圧印加回路9で電源91から通電がされている間イオンの発生量が所定の最適量未満、即ちイオン量判定回路8の出力端子84の電位がローレベルである場合、放電電極63と誘導電極64との間には比較的高い駆動電圧が印加される。一方、イオンの発生量が所定の最適量以上、即ちイオン量判定回路8の出力端子84の電位がハイレベルである場合は、放電電極63と誘導電極64との間には出力端子84の電位がローレベルである場合より低い駆動電圧が印加される。これにより、イオン発生装置2で電源91から電流が供給され始める時間のみだけでなく、イオン発生装置2が通電中である場合は、イオンの発生量の所定の最適量に対して多いか少ないかの判断により、放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧の高低が制御される。
【0104】
図12は、実施の形態1におけるイオン検出回路7により検知される電位と、イオン量判定回路8の出力端子84の電位と、放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧との関係を示すタイムチャートである。横軸は本発明に係るイオン発生装置2に通電を開始してからの通電時間を表している。図12(a)はイオン検出回路7のNチャネル型MOSFET74のソース電位を示しており、縦軸は電位の大きさを表している。図12(b)はイオン量判定回路8の出力端子84の電位を示しており、縦軸は電位を表している。図12(c)は放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧のパルス部の電圧を示しており、縦軸は電圧を表している。
【0105】
図12(a)に示すように、電圧印加回路9に通電を開始した時刻T0から時刻T1までの間は、捕集用導体65により捕集されて検出されるイオンの量は最低限必要な量よりも少ない。このため、イオン検出回路7で検出されるNチャネル型MOSFET74のソース電位は最低限必要な量に該当する基準電位よりも低い。従って、図12(b)に示すように時刻T0から時刻T1までの間は、イオン検出回路7の出力端子77の電位がイオン量判定回路8のコンパレータ83で基準電圧より低いと判定されるので、イオン量判定回路8の出力端子84の電位はローレベルである。従って、図12(c)に示すように、時刻T0から時刻T1までの間は、放電電極63と誘導電極64との間に高い電圧をパルス部に有するインパルス状の正負振動減衰波形の駆動電圧が印加される。このとき、駆動電圧のパルス周期は長くなる。
【0106】
図12(a)に示すように、時刻T1から時刻T2までの間は、捕集用導体65により捕集されて検出されるイオンの量は最低限必要な量を満たしている。このため、イオン検出回路7で検出されるNチャネル型MOSFET74のソース電位は最低限必要な量に該当する基準電位よりも高い。従って、図12(b)に示すように、時刻T1から時刻T2までの間は、イオン検出回路7の出力端子77の電位がイオン量判定回路8のコンパレータ83で基準電圧よりも高いと判定されるので、イオン量判定回路8の出力端子84の電位はハイレベルである。従って、図12(c)に示すように、時刻T1から時刻T2までの間は、放電電極63と誘導電極64との間に、比較的低い電圧をパルス部に有するインパルス状の正負振動減衰波形の駆動電圧が印加される。このとき、駆動電圧のパルス周期は時刻T0から時刻T1までの間での周期よりも短い。
【0107】
以上のような構成とすることにより、イオン発生装置2は、イオンの発生量を検出することができ、検出したイオンの量に応じてイオンを発生するために放電電極63と誘導電極64との間に印加する駆動電圧の値を制御することが可能である。通電開始時に、保護層62の厚さのばらつきによって放電が開始されるまでの電圧又は時間に差が出る場合であっても、イオンの発生量を検出することによりイオン量に応じて印加する電圧を制御することができる。このため、保護層62の厚さのばらつきに拘わらず放電が開始されるまでの電圧又は時間の差を縮小することができる。
【0108】
更に、イオンの効果を発揮させるために最低限必要なイオンの量を検出した場合に検知される電位をイオン量判定回路8の基準電位として設定し、イオン検出回路7の出力端子77の電位の平均値が基準電位を満たすように制御することも可能である。これにより、放電電極63と誘導電極64とに印加される駆動電圧が過剰な電圧値になることを防ぐことができる。結果として、イオン発生装置2の省電力を実現し、より長期的に安定してイオンの発生量を制御することができる。
【0109】
実施の形態1では、イオン発生装置2の通電開始から、イオンの発生量が所定の最適量を満たすまでは高い駆動電圧を印加するための手段と、イオン発生装置2の通電中に、イオンの発生量が所定の最適量を満たすように駆動電圧を制御するための手段とを、同一の電圧制御回路10によって実現した。しかし本発明はこれに限らず、夫々の制御のために用意した制御回路により制御する構成としてもよい。例えば、実施の形態1では、電圧印加回路9で通電を開始した時点からイオンの発生量が所定の最適量を満たす時点までの駆動電圧のパルス部の電圧値は、その後の電圧印加回路9での通電中にイオンの発生量が所定の最適量未満となった場合に印加する駆動電圧のパルス部の電圧値と等しい値としている。これに限らず、通電を開始した後の所定の最適量を満たす時点までは更に高い電圧値をパルス部に有する駆動電圧を印加する構成としてもよい。
【0110】
なお、イオン発生装置の通電開始時に、より高い駆動電圧を印加する場合は円滑に放電を開始させることができ、加えて、イオン発生装置を長時間使用することに起因して放電電極等の電極面に付着した汚染物質を取り除き、長期的に安定してイオンを発生させることができる。
【0111】
実施の形態1では、電圧制御回路10を電圧印加回路9に組み込む構成としたが、イオン量判定回路8の判定結果を検知することにより電圧印加回路9で印加する電圧を制御する構成であれば、電圧制御回路10と電圧印加回路9とを別回路として構成してもよい。
【0112】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1におけるイオン発生装置2の電圧印加回路9において充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点とスイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間に設けた抵抗956(図10参照)を可変抵抗957に置き換える構成とする。
【0113】
実施の形態2における電気機器1の構成は電圧印加回路9を除いて実施の形態1と同様であるため説明を省き、可変抵抗957を備える電圧印加回路9について実施の形態1と同一の符号を用いて以下に説明する。また、実施の形態2では可変抵抗957によって生じる電位差をVvrと表して以下に説明する。
【0114】
一般に、ツェナーダイオード951のツェナー電圧Vzdの値にはある程度のばらつきがある。従って、制御整流素子955が導通する場合の電圧V1は、V1=Vvr+Vzd+Vtであるので、Vzdにばらつきがあるときは制御整流素子955が導通してトランス93の一次巻線931に印加される電圧V1にもばらつきが発生する。また、充放電回路92のコンデンサ922に一定の割合で電荷が蓄えられる場合、電圧V1がV1=Vvr+Vzd+Vtを満たすまでに要する時間にもツェナーダイオード951によってばらつきが発生する。従って、電圧V1の値及びこの電圧V1が印加されるまでの周期Tが変動する。このため、トランス93の二次巻線932に発生する高電圧の値及びその発生する周期が変動する。
【0115】
例えば、ツェナーダイオード951のツェナー電圧Vzdの値は中心値から約±2.5〜3.0%の範囲でばらつく。ツェナー電圧Vzdが中心値から2.5%小さい値である場合は、周期Tは10%短くなり、トランス93の二次巻線932に発生する高電圧の値は2%小さくなることが判っている。同様に、ツェナー電圧Vzdが中心値から2.5%大きい値である場合、周期Tは10%長くなり、トランス93の二次巻線932に発生する高電圧の値は2%大きくなることが判っている。
【0116】
そこで実施の形態2では、充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点とスイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間に、可変抵抗957を備える。図13は、本発明の実施の形態2におけるイオン発生装置2が備える電圧印加回路9の構成を示す回路図である。図13に示す回路は電圧印加回路9に電圧制御回路10が組み込まれている。充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点と、スイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間に、可変抵抗957が備えられている。
【0117】
図13に示すように可変抵抗957を設け、可変抵抗957の抵抗値をツェナーダイオード951のツェナー電圧Vzdに対して調整することによって、電圧V1がV1=Vvr+Vzd+Vtを満たす場合の可変抵抗957により生じる電位差Vvrを調整し、制御整流素子955が導通する場合の電圧V1の値を制御することができる。また、電位差Vvrを調整することにより、制御整流素子955が導通して放電が発生するまでの周期Tを制御することができる。例えば、可変抵抗957の抵抗値を大きくした場合は、電圧V1がV1=Vvr+Vzd+Vtを満たすときの電流値が減少し、制御整流素子955が導通するまでの時間は長くなる。これにより、可変抵抗957の抵抗値を大きくする前と比較してトランス93の二次巻線932に発生する高電圧の値は大きくなり高電圧が発生する周期Tも長くなる。
【0118】
上述のように、電圧印加回路9で用いるツェナーダイオード951のツェナー電圧Vzdのばらつきに対して可変抵抗957の抵抗値を変更することにより、放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧の値、及び駆動電圧のパルス周期Tを調整することができる。従って、イオン発生素子6の特性のばらつきによって生じる、イオン発生量が最適量となるまでの時間及び駆動電圧の均一化を図ることができる。
【0119】
なお、イオン量判定回路8の出力端子84の電位の高低に応じて、可変抵抗957の抵抗の値を制御する構成とすることにより、放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧の値、及び駆動電圧のパルス周期Tを調整することができる。従って、イオンの実際の発生量が安定して最適な値となるように制御することができる。
【0120】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1におけるイオン発生装置2の電圧印加回路9において充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点とスイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間に設けた抵抗956(図10参照)をサーミスタ958に置き換える構成とする。
【0121】
実施の形態3における電気機器1の構成は電圧印加回路9を除いて実施の形態1と同様であるため説明を省き、サーミスタ958を備える電圧印加回路9について実施の形態1と同一の符号を用いて以下に説明する。
【0122】
充放電回路92のコンデンサ922として周囲温度により静電容量が変化するコンデンサを使用した場合は、周囲温度の変化に起因して放電電極63と誘導電極64との間に印加される駆動電圧の値と、駆動電圧のパルス周期Tとが変化する虞がある。
【0123】
例えば、セラミックコンデンサは30℃での静電容量よりも50℃での静電容量が小さい特性を有している。そのようなセラミックコンデンサを充放電回路92のコンデンサ922として使用した場合、温度の上昇に従ってコンデンサ922で蓄えることができる電荷の量が減少する。従って、温度が上昇した場合、制御整流素子955が導通したときにトランス93の一次巻線931に流れる電流量が減少するので二次巻線932に発生する高電圧の電圧値も減少する。
【0124】
他の例として、フィルムコンデンサは30℃での静電容量よりも10℃での静電容量が小さい特性を有している。そのようなフィルムコンデンサを充放電回路92のコンデンサ922として使用した場合、温度の下降に従ってコンデンサ922で蓄えることができる電荷の量が減少する。従って、温度が低下した場合、制御整流素子955が導通したときにトランス93の一次巻線931に流れる電流量が減少するので二次巻線932に発生する高電圧の電圧値も減少する。
【0125】
そこで、実施の形態3では、充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点とスイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間にサーミスタ958を備える。図14は、本発明の実施の形態3におけるイオン発生装置2が備える電圧印加回路9の構成を示す回路図である。図14に示す回路は電圧印加回路9に電圧制御回路10が組み込まれている。充放電回路92の抵抗921及びコンデンサ922の接続点と、スイッチ回路95のツェナーダイオード951のカソードとの間に、サーミスタ958が備えられている。実施の形態3では、サーミスタ958によって生じる電位差をVthと表して以下に説明する。
【0126】
温度の上昇に対して静電容量が低下するセラミックコンデンサ等をコンデンサ922として使用する場合は、正の温度特性を有するサーミスタ(Positive Temperature Coefficient)を用いる。温度の上昇につれて静電容量が低下するコンデンサ922に対し、正の温度特性を有するサーミスタ958は温度の上昇に対して抵抗値が上昇するので、電圧V1がV1=Vth+Vzd+Vtを満たすときの電流値が減少する。この結果、制御整流素子955が導通するまでに要する時間が長くなり、トランス93の二次巻線932に発生する高電圧の値は大きくなる。従って、温度の上昇に起因してコンデンサ922の静電容量が低下することによる、二次巻線932に発生する高電圧の電圧値の減少が抑制されるので安定してイオンを発生させることができる。
【0127】
逆に、温度の低下と共に静電容量が低下するフィルムコンデンサ等をコンデンサ922として使用する場合は、負の温度特性を有するサーミスタ(Negative Temperature Coefficient)を用いる。温度の下降につれて静電容量が低下するコンデンサ922に対し、負の温度特性を有するサーミスタ958は温度の下降に対して抵抗値が上昇するので、電圧V1がV1=Vth+Vzd+Vtを満たすときの電流値が減少する。この結果、制御整流素子955が導通するまでに要する時間が長くなり、トランス93の二次巻線932に発生する高電圧の値は大きくなる。従って、温度の下降に起因してコンデンサ922の静電容量が低下することによる、二次巻線932に発生する高電圧の電圧値の減少が抑制されるので安定してイオンを発生させることができる。
【0128】
上述のように、電圧印加回路9で用いるコンデンサ922の温度に対する静電容量の変化に対し、スイッチ回路95に温度により抵抗値が変化するサーミスタ958を備えることにより、トランス93の一次巻線931に印加する電圧の値の減少が抑制されるので、イオン発生装置2は長期的に安定してイオンを発生させることができる。
【0129】
なお、実施の形態1乃至3の電気機器1において、イオン量判定回路8の出力端子84の電位と発生しているイオン量との関係を実測によって求めて設定しておき、イオン量判定回路8の出力端子84の電位を検知してイオンの発生量を示す信号を出力する回路等をイオン発生装置2に加える構成も可能である。これにより、イオン発生量を電気機器1が更に備える液晶モニタ等に表示して実施の形態1乃至3の何れかの電気機器を使用するユーザがイオンの発生量を認識できるようにすることが可能である。
【0130】
実施の形態1乃至3の電子機器1では、イオン発生装置2が発生したイオンが効率よく吹出口5から放出されるように、イオン発生素子6の上部基板61a表面に対する法線方向と送風ファン3の送風方向とが略垂直をなすように送風ファン3とイオン発生装置2とを配置することが望ましい。
【0131】
実施の形態1乃至3では、イオン量判定回路の判定結果に基づいて、放電電極63と誘導電極64との間に印加する電圧を制御するために、イオン量判定回路8からの電位の高低に応じて印加する電圧の高低を切り替えるスイッチをトランジスタによって実現した電圧制御回路10を設ける構成とした。本発明の電圧制御回路10の構成はイオンの発生量に応じて電圧印加回路9が印加する電圧の高低を制御する構成であれば、これに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明に係るイオン発生装置を備える電気機器の構成を示す略示側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるイオン発生素子の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置のイオン検出回路の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるイオン検出回路が備えるNチャネル型MOSFETのソース電位の時間変化を示すグラフである。
【図6】実施の形態1におけるイオン量判定回路の構成を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置の電圧印加回路及び電圧制御回路の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置の電圧印加回路の構成の一例を示す回路図である。
【図9】実施の形態1における電圧印加回路により印加される駆動電圧の時間変化を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置が備える電圧印加回路の構成を示す回路図である。
【図11】実施の形態1における電圧制御回路を組み込んだ電圧印加回路で印加される駆動電圧の時間変化を示すタイムチャートである。
【図12】実施の形態1におけるイオン検出回路により検知される電位と、イオン量判定回路の出力端子の電位と、放電電極と誘導電極との間に印加される駆動電圧との関係を示すタイムチャートである。
【図13】本発明の実施の形態2におけるイオン発生装置が備える電圧印加回路の構成を示す回路図である。
【図14】本発明の実施の形態3におけるイオン発生装置が備える電圧印加回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0133】
2 イオン発生装置
6 イオン発生素子
61 誘電体基板
63 放電電極
63b 先鋭部
64 誘導電極
65 捕集用導体
7 イオン検出回路
8 イオン量判定回路
9 電圧印加回路
10 電圧制御回路
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【出願日】 平成18年8月29日(2006.8.29)
【代理人】 【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫

【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁


【公開番号】 特開2008−59795(P2008−59795A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−232459(P2006−232459)