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内燃機関用スパークプラグ - 特開2008−53017 | j-tokkyo
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【発明の名称】 内燃機関用スパークプラグ
【発明者】 【氏名】松谷 渉

【氏名】吉本 修

【氏名】布目 健二

【要約】 【課題】Irを主成分とする貴金属チップを備えるスパークプラグに関し、Ir特有の触媒反応に起因する孔食現象を抑制する。

【構成】スパークプラグ1の中心電極5先端には貴金属チップ31が設けられ、接地電極27先端には貴金属チップ32が設けられ、両貴金属チップ31,32の隙間が火花放電間隙33となっている。貴金属チップ31,32を構成するIr合金にはAu及びAgのうち少なくとも一方が含まれる。貴金属チップ31,32は、Irを主成分とする原材料を一旦溶融してIr合金を得、これを熱間鍛造し、熱間圧延し、線引き加工することで形成される。すなわち、Ir並びにAuやAgは、いずれも一旦溶融されて均一化されている。そのため、IrがAuやAgで保護され、燃料がチップに直接当たるような場合であっても、Ir特有の触媒反応を効果的に抑制することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、
前記中心電極の外側に設けられた絶縁体と、
前記絶縁体の外側に設けられた主体金具と、
前記主体金具に接合され、先端部が前記中心電極の先端部と対向するように配置された接地電極とを備え、
前記中心電極の先端部及び前記接地電極の先端部間に火花放電間隙を有する内燃機関用スパークプラグであって、
前記中心電極の先端部及び前記接地電極の先端部のうち少なくとも一方には、貴金属チップが接合されており、
前記貴金属チップは、イリジウムを主成分とする原材料を一旦溶融してイリジウム合金を得、これを熱間鍛造し、熱間圧延し、線引き加工することで形成され、かつ、前記イリジウム合金には金及び銀のうち少なくとも一方が含まれるようにしたことを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
【請求項2】
前記貴金属チップに含まれる金及び銀のうち少なくとも一方に関し、その総含有量が0.1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用スパークプラグ。
【請求項3】
前記イリジウム合金は、ロジウムを含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関用スパークプラグ。
【請求項4】
前記貴金属チップに含まれるロジウムの含有量が5質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用スパークプラグ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車エンジン等の内燃機関用のスパークプラグとして、例えば中心電極や接地電極の先端部に貴金属合金よりなるチップが溶接されたものがある。昨今では、上記チップを構成する素材として、イリジウム(Ir)を主成分とする貴金属合金を採用することが提案されている。
【0003】
しかし、Irは、900℃以上の高温域において酸化、揮発しやすいという性質を有しているため、そのままチップとして使用すると、火花消耗よりも酸化、揮発による消耗が問題となるおそれがある。そこで、銅(Cu)などを含有させた焼結材料で、チップを構成するという技術がある(例えば、特許文献1参照)。当該技術における焼結材料は、Irを主成分とするIr系金属相に対し、Cuなどの放熱金属相が混在した組織を有するものである。ここで、放熱金属相はIr系金属相よりも熱伝導率が大きいため、結果として材料全体の熱伝導率が高められることとなる。そのため、高速・高負荷運転時においてもチップにおける放熱が促進され、チップの温度が上昇しにくくなり、結果としてIr成分の酸化、揮発が抑制される。
【特許文献1】特開平11−40314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、最近増加傾向にある直噴エンジンや、エタノールを燃料とするエンジンに、スパークプラグが取付けられるような場合においては、孔食と称される、えぐれるようにチップの側面が異常消耗するという現象が起こるおそれがある。このような孔食現象は、燃料が直接当たる方向で発生しやすい。すなわち、チップに燃料が直接当たるような条件下では、貴金属(ここではIr)特有の触媒燃焼反応が起こりやすく、チップ自身が局部的に加熱されやすい。そして、当該加熱された部分において酸化が促進され、結果としてIrの酸化、揮発が増加してしまうのである。特に、エタノール等のアルコールが燃焼する場合においては、ガソリンが燃焼する場合よりも水蒸気がより多く生成されるため、Irの酸化がより進行しやすい傾向にある。
【0005】
尚、上記特許文献1に記載された技術では、Ir系金属相や放熱金属相といった組織は、粉体又は粒体が焼結されることで構成されている。そのため、チップ化されたものであっても微視的にみれば個々に粉状又は粒状をなしており、全体としては、いわばポーラスなものである。従って、たとえ粉状又は粒状の放熱金属相が存在していたとしても、ポーラス状であるため、燃料が含まれる混合気が腐食性ガスとして接触する面積が大きく、耐食性の面では不利である。また、Ir系金属相と放熱金属相とが分離した状態にある、ともいえるため、Ir系金属相の触媒反応を抑制できない部分が生じ、上述した使用条件下における孔食現象の懸念は依然として払拭されるものではない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、Irを主成分とする貴金属チップを備えるスパークプラグに関し、Ir特有の触媒反応に起因する孔食現象を抑制することのできる内燃機関用スパークプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題等を解決するのに適した各構成を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
構成1.本構成のスパークプラグは、中心電極と、前記中心電極の外側に設けられた絶縁体と、前記絶縁体の外側に設けられた主体金具と、前記主体金具に接合され、先端部が前記中心電極の先端部と対向するように配置された接地電極とを備え、
前記中心電極の先端部及び前記接地電極の先端部間に火花放電間隙を有する内燃機関用スパークプラグであって、
前記中心電極の先端部及び前記接地電極の先端部のうち少なくとも一方には、貴金属チップが接合されており、
前記貴金属チップは、Irを主成分とする原材料を一旦溶融してIr合金を得、これを熱間鍛造し、熱間圧延し、線引き加工することで形成され、かつ、前記Ir合金には金(Au)及び銀(Ag)のうち少なくとも一方が含まれるようにしたことを特徴とする。
【0009】
ここで、「主成分」とあるのは、材料中、最も質量比の高い成分を指すものであり、特に本発明においては50質量%以上であることを意味する。
【0010】
上記構成1によれば、中心電極の先端部及び接地電極の先端部のうち少なくとも一方に設けられた貴金属チップは、主成分をIrとしている。このように比較的融点の高い貴金属合金を用いることで、当該貴金属チップの消耗が抑制され、ひいては長寿命化が図られる。ところで、このようなスパークプラグが、最近増加傾向にある直噴エンジンや、エタノールを燃料とするエンジン等に用いられた場合、燃料がチップに直接当たるような場合があったり、エタノールにより腐食が促進されることも起こりうる。この点、構成1では、貴金属チップを構成するIr合金にはAu及びAgのうち少なくとも一方が含まれている。しかも、貴金属チップは、上記従来技術で説明したような焼結材料ではなく、Irを主成分とする原材料を一旦溶融してIr合金を得、これを熱間鍛造し、熱間圧延し、線引き加工することで形成されている。すなわち、Ir、並びに、Au及びAgのうち少なくとも一方は、いずれも一旦溶融されて均一化されており、IrがAuやAgで保護される格好となる。それ故、燃料がチップに直接当たるような場合であっても、Ir特有の触媒反応を効果的に抑制することができる。結果として、触媒反応に起因する孔食現象を防止することができる。
【0011】
構成2.本構成のスパークプラグは、上記構成1において、前記貴金属チップに含まれるAu及びAgのうち少なくとも一方に関し、その総含有量が0.1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする。
【0012】
上述した作用効果をより確実なものとするためには、構成2のように、貴金属チップに含まれるAu及びAgのうち少なくとも一方の総含有量が0.1質量%以上5質量%以下であることが望ましい。Au及びAgのうち少なくとも一方の総含有量(Au、Ag双方ともに含まれる場合は双方トータルの含有量)が0.1質量%未満の場合には、AuやAgを含有させることによる上記作用効果が十分に奏されず、触媒反応を起こしてしまうことが懸念される。一方、Au及びAgのうち少なくとも一方の総含有量が5質量%を超える場合には、耐火花消耗性が悪化してしまい、火花放電間隙の増加を招いてしまうおそれがある。
【0013】
構成3.本構成のスパークプラグは、上記構成1又は2のいずれかにおいて、前記Ir合金は、ロジウム(Rh)を含有していることを特徴とする。
【0014】
構成3によれば、貴金属チップにRhが含有される。当該Rhの存在により、Irが保護され高温条件下でのIrの酸化、揮発が抑制される。
【0015】
構成4.本構成のスパークプラグは、上記構成3において、前記貴金属チップに含まれるRhの含有量が5質量%以下であることを特徴とする。
【0016】
既述のとおり、Rhが存在することで高温条件下でのIrの酸化、揮発の抑制が図られるのであるが、これは、Rhが所定量以上含まれている場合においてより確実に奏される作用効果である。すなわち、Rhの含有量が5質量%以下と比較的少ない場合には、RhがIr成分を十分に保護できず、微小なRh成分の存在によって却ってIrの触媒活性が高められてしまうことが懸念される。これに対し、上記各構成のように、Ir合金にAuやAgが均質に含有されていることから、IrがAuやAgで保護される。従って、構成4のようにRhの含有量が比較的少ない場合は、特にAuやAgの添加によって、Ir特有の触媒反応を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、スパークプラグ1を示す一部破断正面図である。なお、図1では、スパークプラグ1の軸線C1方向を図面における上下方向とし、下側をスパークプラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
【0018】
スパークプラグ1は、長尺状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
【0019】
絶縁碍子2には、軸線C1に沿って軸孔4が貫通形成されている。そして、軸孔4の先端部側には中心電極5が挿入、固定され、後端部側には端子電極6が挿入、固定されている。軸孔4内における中心電極5と端子電極6との間には、抵抗体7が配置されており、この抵抗体7の両端部は導電性ガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
中心電極5は、絶縁碍子2の先端から突出し、端子電極6は絶縁碍子2の後端から突出した状態でそれぞれ固定されている。また、中心電極5には、その先端に貴金属チップ31が溶接により接合されている(これについては後述する)。
【0021】
一方、絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成されたコルゲーション部10と、軸線C1方向略中央部において径方向外向きに突出形成されたフランジ状の大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれより細径に形成され、内燃機関(エンジン)の燃焼室に曝される脚長部13とを備えている。絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、脚長部13を含む先端側は、筒状に形成された主体金具3の内部に収容されている。そして、脚長部13と中胴部12との連接部には段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
【0022】
主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面にはスパークプラグ1をエンジンヘッドに取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。ねじ部15の後端側の外周面には座部16が形成され、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3をエンジンヘッドに取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。
【0023】
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するための段部21が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定される。なお、絶縁碍子2及び主体金具3双方の段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に曝される絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料空気が外部に漏れないようにしている。
【0024】
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁碍子2を保持している。
【0025】
また、主体金具3の先端面26には、略L字状をなす接地電極27が接合されている。すなわち、接地電極27は、前記主体金具3の先端面26に対しその基端部が溶接されるとともに、先端側が曲げ返されて、その側面が中心電極5の先端部(貴金属チップ31)と対向するように配置されている。当該接地電極27には、前記貴金属チップ31に対向するようにして貴金属チップ32が設けられている。そして、これら貴金属チップ31,32間の隙間が火花放電間隙33となっている。
【0026】
図2に示すように、中心電極5は、銅又は銅合金からなる内層5A及びニッケル(Ni)合金からなる外層5Bからなる。また、接地電極27は、ニッケル(Ni)合金等で構成されている。
【0027】
中心電極5は、その先端側が縮径されるとともに、その先端面が平坦に形成されている。ここに円柱状をなす上記貴金属チップ31を重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザ溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等により溶接部B1を形成してこれを固着することにより貴金属チップ31が接合されている。また、これに対向する貴金属チップ32は、接地電極27の所定位置上に貴金属チップ32を位置合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部B2を形成してこれを固着することにより接合される。なお、貴金属チップ31及びこれに対向する貴金属チップ32のうちいずれか一方(のチップ)を省略する構成としてもよい。この場合には、貴金属チップ31と接地電極27の本体との間、あるいは対向する貴金属チップ32と中心電極5の本体部との間で火花放電間隙33が形成される。
【0028】
本実施形態において、前記貴金属チップ31,32は、イリジウム(Ir)を主成分としており、金(Au)及び銀(Ag)のうち少なくとも一方が含有されている。特に、貴金属チップ31,32に含まれるAu及びAgのうち少なくとも一方の総含有量が0.1質量%以上5質量%以下とされ、特に、Au及びAgは、原子レベルで均質にIr中に存在している。また、貴金属チップ31,32には、ロジウム(Rh)が含まれていてもよい。当該Rhの存在により、高温条件下でのIrの酸化、揮発が抑制されうる。尚、当該Rhが所定量(例えば10質量%)以上含まれている場合においては、Irの酸化、揮発の抑制効果がより確実に奏されるのであるが、本実施形態では、Rhの含有量が5質量%以下と比較的少量であっても差し支えない。これは上記のように、Ir合金にAuやAgが均質に含有されており、IrがAuやAgで保護されるからである。
【0029】
次に、これら貴金属チップ31,32の製造方法について説明する。まず、主成分をIrとするインゴットを用意し、所定の組成となるように各合金成分(本実施形態では、Au、Ag等)を配合・溶融し、当該溶融合金に関し再度インゴットを形成し、その後、当該インゴットについて熱間鍛造、熱間圧延(溝ロール圧延)を施す。その後、線引き加工を施すことで、棒状素材を得た後、それを所定長に切断することで、円柱状の貴金属チップ31,32を得る。
【0030】
次に、上記のように構成されてなるスパークプラグ1の製造方法について説明する。まず、主体金具3を予め加工しておく。すなわち、円柱状の金属素材(例えばS17CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)を冷間鍛造加工により貫通孔を形成し、概形を製造する。その後、切削加工を施すことで外形を整え、主体金具中間体を得る。
【0031】
続いて、主体金具中間体の先端面に、ニッケル(Ni)系合金(例えばインコネル系合金等)からなる接地電極27が抵抗溶接される。当該溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位にねじ部15が転造によって形成される。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。接地電極27の溶接された主体金具3には、亜鉛メッキ或いはニッケルメッキが施される。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理が施されることとしてもよい。
【0032】
さらに、接地電極27の先端部には、上述した貴金属チップ32が、抵抗溶接やレーザ溶接等により接合される。尚、溶接をより確実なものとするべく、当該溶接に先だって溶接部位のメッキ除去が行われたり、或いは、メッキ工程に際し溶接予定部位にマスキングが施されたりする。また、当該貴金属チップ32の溶接を、後述する組付けの後に行うこととしてもよい。
【0033】
一方、前記主体金具3とは別に、絶縁碍子2を成形加工しておく。例えば、アルミナを主体としバインダ等を含む原料粉末を用い、成形用素地造粒物を調製し、これを用いてラバープレス成形を行うことで、筒状の成形体が得られる。得られた成形体に対し、研削加工が施され整形される。そして、整形されたものが焼成炉へ投入され焼成される。焼成後、種々の研磨加工を施すことで、絶縁碍子2が得られる。
【0034】
また、前記主体金具3、絶縁碍子2とは別に、中心電極5を製造しておく。すなわち、Ni系合金が鍛造加工され、その中央部に放熱性向上を図るべく銅合金からなる内層5Aが設けられる。そして、その先端部には、上述した貴金属チップ31が、抵抗溶接やレーザ溶接等により接合される。
【0035】
そして、上記のようにして得られた絶縁碍子2及び中心電極5と、抵抗体7と、端子電極6とが、ガラスシール層8,9によって封着固定される。ガラスシール層8,9としては、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調整されており、当該調整されたものが抵抗体7を挟むようにして絶縁碍子2の軸孔4内に注入された後、後方から前記端子電極6が押圧された状態とした上で、焼成炉内にて焼き固められる。尚、このとき、絶縁碍子2の後端側のコルゲーション部10表面には釉薬層が同時に焼成されることとしてもよいし、別工程で釉薬層が形成されることとしてもよい。
【0036】
その後、上記のようにそれぞれ作製された中心電極5及び端子電極6を備える絶縁碍子2と、接地電極27を備える主体金具3とが組付けられる。より詳しくは、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定される。
【0037】
そして、最後に、接地電極27を屈曲させることで、中心電極5の先端に設けられた貴金属チップ31及び接地電極27に設けられた貴金属チップ32間の前記火花放電間隙33を調整する加工が実施される。
【0038】
このように一連の工程を経ることで、上述した構成を有するスパークプラグ1が製造される。
【0039】
次に、本実施形態によって奏される作用効果を確認するべく、各種条件を変更することで種々のサンプルを作製し、種々の評価を試みた。その実験結果を以下に記す。
【0040】
先ずサンプルとしては、いずれも主成分をIrとし、他の成分の含有割合の異なる各種サンプルを作製した(サンプル1〜23)。そして、各サンプルを用いて、触媒反応試験、及び、耐火花消耗試験を行った。その評価結果を表1に示す。
【0041】
但し、触媒反応試験については、当該試験用のサンプルとして、直径0.6mmで長さ150mmの線材を用意した。そして、当該線材の両端に電極を取付け、通電加熱を行い、何もしない基本状態において、線材の温度が、基準温度たる900℃となるようにした。その状態において、アルコールランプを、その芯の部分がサンプル線材の中心近傍に位置するように設置した。かかる状態においては、アルコールランプの芯の部分からアルコール(エタノール)が揮発する。アルコールが到達した部分において、触媒反応が起こる場合には、サンプル線材の温度が著しく上昇する筈であり、触媒反応がさほど起こらない場合には、サンプル線材の温度がさほど上昇しない筈である。ここでは、所定時間後における基準温度からの昇温分を評価することとした(例えば、表1において「120℃」とあるのは、900℃からの昇温分が120℃という意味であり、実際の温度は「1020℃」であったことを意味する)。そして、「100℃」以上の昇温があった場合に、触媒反応が起こったものとして「×」の評価を下すこととし、昇温が「100℃」未満で済んだ場合には、触媒反応がさほど起こらないものとして「○」の評価を下すこととしている。
【0042】
また、耐火花消耗性試験については、上記実施形態に記載した円柱状の貴金属チップを具備するスパークプラグのサンプルを用意し、窒素雰囲気下で1秒間に60回の頻度で点火試験を500時間実施した(但し、燃料は噴射せず、初期の火花放電間隙を1.1mmとした)。そして、初期の火花放電間隙に対する試験後の火花放電間隙の増加分を測定した。但し、当該試験においては、中心電極に設けられる貴金属チップを、この度の各サンプルにおける成分比率とし、接地電極側の貴金属チップについては、消耗を考慮しなくてもよい白金を主成分とするものを用いた。
【0043】
【表1】


表1に示すように、AuやAgを含有しないサンプル(サンプル1〜4)に関しては、たとえ白金(Pt)やRhを含有していたとしても、触媒反応が起こりやすくなってしまうことがわかる。
【0044】
これに対し、0.1質量%以上5質量%以下のAu又はAgを含有してなるサンプル(サンプル5〜8)については、温度上昇が抑えられ触媒反応を効果的に抑制でき、しかも、耐火花消耗性にも優れることが明らかとなった。これは、IrがAuやAgで保護される格好となっているからであり、燃料(ここではエタノール)がチップに直接当たるような場合であっても、Ir特有の触媒反応を効果的に抑制できているものと考えられる。
【0045】
一方、AuやAgを含有していたとしても、その含有量が7質量%のサンプル(サンプル9,10)については、耐火花消耗性が低下してしまい、火花放電間隙の増大を招いたしまう結果となった。これは、Ir成分の減少に伴い、火花消耗が起こりやすくなったことが原因と考えられる。しかしながら、触媒反応の抑制効果は認められた。
【0046】
また、Rhを含有してなるサンプルについても実験を行った(サンプル12〜23)。この中で、0.1質量%以上5質量%以下のAu,Agを含有してなるサンプル(サンプル12〜21については、やはり温度上昇が抑えられ触媒反応を効果的に抑制でき、しかも、耐火花消耗性にも優れることが明らかとなった。これは、上記同様、IrがAuやAgで保護される格好となっているからであると考えられる。
【0047】
ここで、Rhが存在することで高温条件下でのIrの酸化、揮発の抑制が図られるということは従来知られているが、これは、Rhが所定量以上(例えば10質量%以上)含まれている場合においてより確実に奏される作用効果である。すなわち、Rhの含有量が5質量%以下と比較的少ない場合には、RhがIr成分を十分に保護できず、微小なRh成分の存在によって却ってIrの触媒活性が高められてしまうことが懸念される(サンプル3)。これに対し、サンプル12〜15を参酌すれば明らかなように、Ir合金にAuやAgが均質に含有されていることから、IrがAuやAgで保護される格好となり、Rhの含有量が比較的少ない場合であっても、Ir特有の触媒反応を効果的に抑制できることがわかった。
【0048】
しかしながら、AuやAgを含有していたとしても、その含有量が7質量%のサンプル(サンプル22,23)については、Rhが存在したとしても、耐火花消耗性が低下してしまう結果となった。従って、上記結果より、AuやAgの総含有量は、少なくとも0.1質量%あり、また、5質量%以下であることが望ましいといえる。
【0049】
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0050】
(a)上記実施形態では、中心電極5に設けられる貴金属チップ31、及び、接地電極27に設けられる貴金属チップ32いずれについても、Irを主成分とし、Au及びAgのうち少なくとも一方が含有されている構成としているが、中心電極5に設けられる貴金属チップ31、接地電極27に設けられる貴金属チップ32のいずれか一方のみが、Irを主成分とし、AuやAgが含有されている構成としてもよい。但し、噴射燃料による孔食現象を抑制するという観点からは、中心電極5側の貴金属チップ31について、上記組成を具備しているのが望ましい。
【0051】
(b)上記実施形態における中心電極5は、その先端側が縮径されているものであるが、かならずしも縮径されていなくてもよく、全体として棒状(円柱状)をなしていても何ら差し支えない。また、中心電極5は、内層5A及び外層5Bからなる2層構造を具備しているが、1層からなっていても差し支えない。
【0052】
(c)Rhが含有される場合の含有量については、特に限定されるものではないが、Irの機能を存分に発揮させるという観点においては、30質量%以下であることが望ましく、20質量%以下であることがより望ましい。
【0053】
(d)スパークプラグのタイプについては、上記実施形態のものに特に限定されるものではない。従って、例えば2乃至4本の接地電極を具備するタイプに具現化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態のスパークプラグの構成を示す一部破断正面図である。
【図2】スパークプラグの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…スパークプラグ、2…絶縁碍子、3…主体金具、5…中心電極、27…接地電極、31…貴金属チップ、32…貴金属チップ、33…火花放電間隙。
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成18年8月24日(2006.8.24)
【代理人】 【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男


【公開番号】 特開2008−53017(P2008−53017A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227257(P2006−227257)