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【発明の名称】 スパークプラグ
【発明者】 【氏名】鳥居 計良

【氏名】寺村 英己

【氏名】加藤 友聡

【氏名】無笹 守

【要約】 【課題】電極部材とチップとのより接合強度を確実に確保することもできるスパークプラグ及びその製造方法を提供する。

【構成】第1工程S10において、フランジ部1bと、フランジ部1bの一面1cから突出する凸部1aとからなるチップ1を製作する。第2工程S20において、中心電極30及び接地電極40の少なくとも一方における電極母材の放電ギャップ側の接合面32、42にフランジ部1bの他面1dを抵抗溶接により仮止めする。第3工程S30において、凸部1aの側面の仮想延長線とフランジ部1bの他面1dとの交点より他面1d上の内側に溶融部3が存在するように接合面32、42にフランジ部1bをレーザにより溶接する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、両端を該主体金具の両端から突出させて該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部と該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とからなり、該中心電極及び該接地電極の少なくとも一方は各々電極母材と該放電ギャップを形成する位置に耐火花消耗材からなるチップとを有するスパークプラグの製造方法において、
前記チップとして、フランジ部と、該フランジ部の一面から突出する凸部とからなるものを製作する第1工程と、
前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方における前記電極母材の前記放電ギャップ側の接合面に該フランジ部の前記凸部とは反対側の他面を抵抗溶接により仮止めする第2工程と、
該凸部の側面を構成する母線の仮想延長線と該フランジ部の該他面との交点より該他面上の内側を通り前記電極母材と前記チップとに溶融部が存在するように該接合面に該フランジ部をレーザにより溶接する第3工程とを備えたことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
【請求項2】
前記接合面は前記接地電極における前記電極母材の前記放電ギャップ側のものであることを特徴とする請求項1記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項3】
前記交点間の最大距離をDとし、該交点よりD/5以上前記他面上の内側を通る前記溶融部が存在することを特徴とする請求項1又は2記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項4】
前記第1工程では、前記電極母材及び前記チップの中間的な融点又は線膨張係数をもち、前記フランジ部の前記他面より大きい面を有する板状の中間部材を製作し、
前記第2工程では、前記接合面と該チップとの間に該中間部材を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記接合面に前記中間部材を抵抗溶接により仮止めした後、該中間部材に該フランジ部の該他面を抵抗溶接により仮止めすることを特徴とする請求項4記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項6】
前記接合面は前記接地電極における前記電極母材の前記放電ギャップ側のものであり、該接地電極を該中心電極の一端側とは反対方向に屈曲した状態において、前記チップを該接地電極に溶接することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項7】
筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、両端を該主体金具の両端から突出させて該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部と該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とからなり、該中心電極及び該接地電極の少なくとも一方は各々電極母材と該放電ギャップを形成する位置に耐火花消耗材からなるチップとを有するスパークプラグにおいて、
前記チップは、フランジ部と、該フランジ部の一面から突出する凸部とからなり、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方における前記電極母材の前記放電ギャップ側の接合面には、該フランジ部の該凸部とは反対側の他面が抵抗溶接により仮止めされ、かつ該凸部の側面を構成する母線の仮想延長線と該フランジ部の該他面との交点より該他面上の内側を通り前記電極母材と前記チップとに溶融部が存在するように該フランジ部がレーザにより溶接されていることを特徴とするスパークプラグ。
【請求項8】
前記溶融部は前記チップの成分を20〜80質量%含有することを特徴とする請求項7記載のスパークプラグ。
【請求項9】
前記溶融部は前記チップの成分を30〜60質量%含有することを特徴とする請求項8記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1記載のスパークプラグが知られている。このスパークプラグは、筒状の主体金具を備えており、この主体金具内には、主体金具の軸方向に延在し、両端を主体金具の両端から突出させた筒状の絶縁体が固定されている。また、主体金具の軸方向には中心電極が延在し、中心電極の先端は絶縁体の先端から突出され、中心電極の後端は絶縁体内に固定されている。一方、主体金具には接地電極の一端が固定され、接地電極の他端部は中心電極との間に放電ギャップを形成している。中心電極及び接地電極は、各々Inconel(登録商標)600等のNi合金等からなる電極母材と、放電ギャップ側を形成する位置にIrを含むPt合金等の耐火花消耗材からなるチップとを有している。
【0003】
このスパークプラグの中心電極は、以下ように製造される。まず、フランジ部と、このフランジ部の一面から突出する凸部とを有するチップを製作する。そして、このチップの凸部とは反対側の他面を電極母材の放電ギャップ側の接合面にレーザ溶接して中心電極とする。この際、チップのフランジ部と電極母材との間に溶融部が形成される。
【0004】
このスパークプラグでは、チップのフランジ部の直径が凸部の直径より大きいため、一般的な円柱状のチップに比べ、広範囲に溶融部が形成される。また、フランジ部と電極母材との間に溶融部が形成されるため、レーザ溶接により生じる電極母材の飛散による溶接部の小径化を防止することができる。こうして、このスパークプラグでは、電極母材とチップとの接合強度を確保することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−244042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のスパークプラグでは、溶融部がフランジ部の外周から内部方向に単に一定距離以上存在することとされているため、チップの形状によっては、電極母材とチップとの接合強度の確保が難しい場合もあり得る。つまり、例えばフランジ部と円柱状の凸部とからなるチップを採用し、その凸部の直径が比較的大きい場合、溶融部はフランジ部の外周近傍にのみ形成され、フランジ部の中心部近傍においては溶融部の存在しない部分が広範囲に存在することとなる。そのため、このような場合には、電極母材とチップとの接合強度を十分に確保することができず、スパークプラグの耐久性を長期に亘って維持することが困難となる。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、電極母材とチップとの接合強度を確実に確保することのできるスパークプラグ及びその製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスパークプラグの製造方法は、筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、両端を該主体金具の両端から突出させて該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部と該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とからなり、該中心電極及び該接地電極の少なくとも一方は各々電極母材と該放電ギャップを形成する位置に耐火花消耗材からなるチップとを有するスパークプラグの製造方法において、
【0009】
前記チップとして、フランジ部と、該フランジ部の一面から突出する凸部とからなるものを製作する第1工程と、
前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方における前記電極母材の前記放電ギャップ側の接合面に該フランジ部の該凸部とは反対側の他面を抵抗溶接により仮止めする第2工程と、
該凸部の側面を構成する母線の仮想延長線と該フランジ部の該他面との交点より該他面上の内側を通り前記電極母材と前記チップとに溶融部が存在するように該接合面に該フランジ部をレーザにより溶接する第3工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のスパークプラグの製造方法では、第1工程において、フランジ部と、このフランジ部の一面から突出する凸部とからなるチップを製作する。次いで、第2工程において、中心電極及び接地電極の少なくとも一方における電極母材の放電ギャップ側の接合面にフランジ部の他面を抵抗溶接により仮止めする。そして、第3工程において、チップを電極母材の接合面にフランジ部をレーザにより溶接する。この際、凸部の側面を構成する母線の仮想延長線とフランジ部の他面との交点より他面上の内側を通り前記電極母材と前記チップとに溶融部が存在するように溶接する。ここで、母線とは、チップの凸部が円柱状、角柱状、円錐状、角錐状、円錐台状又は角錐台状である場合において、凸部の側面上に延び、チップの凸部の中心軸と同一平面を構成し得る線をいう。これにより、フランジ部の中心部近傍において溶融部の存在しない部分が広範囲に存在することを防止することができる。そのため、電極母材の接合面にフランジ部が確実に接合されることとなる。
【0011】
したがって、本発明のスパークプラグの製造方法によれば、電極母材とチップとの接合強度を確実に確保することができる。
【0012】
このスパークプラグの製造方法は、接合面は接地電極における電極母材の放電ギャップ側のものとすることができる。つまり、この製造方法は、中心電極における電極母材にチップを溶接する場合のみならず、より強固に溶接しないといけない接地電極における電極母材にチップを溶接する場合にも使用することができる。
【0013】
このスパークプラグの製造方法では、凸部の側面を構成する母線の仮想延長線とフランジ部の他面との交点間の最大距離をDとし、交点よりD/5以上他面上の内側を通る溶融部が存在することが好ましい。発明者らの試験結果によれば、これにより電極母材の接合面にフランジ部が確実に接合されるからである。
【0014】
このスパークプラグの製造方法では、第1工程では、電極母材及びチップの中間的な融点又は線膨張係数をもち、フランジ部の他面より大きい面を有する板状の中間部材を製作し、第2工程では、接合面とチップとの間に中間部材を設けることが好ましい。こうであれば、レーザ照射により中間部材と電極母材及びチップとがなじみ易く、また中間部材と電極母材及びチップとの間に生じる熱応力差を小さくすることができる。このため、電極母材と中間部材との間又は中間部材とチップとの間に剥離が生じ難い。
【0015】
第2工程では、接合面に中間部材を抵抗溶接により仮止めした後、中間部材にフランジ部の他面を抵抗溶接により仮止めすることが好ましい。これにより、レーザ溶接時に中間部材及びチップが移動することを防止でき、電極母材とチップとを確実に溶接することができる。
【0016】
このスパークプラグの製造方法では、接合面が接地電極における電極母材の放電ギャップ側のものである場合、接地電極を中心電極の一端側とは反対方向に屈曲した状態において、チップを接地電極に溶接することが好ましい。これにより、レーザ照射角の制限を回避することができるため、最適なレーザ照射角によりチップを接地電極に溶接することができる。
【0017】
また、本発明のスパークプラグは、筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、両端を該主体金具の両端から突出させて該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部と該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とからなり、該中心電極及び該接地電極の少なくとも一方は各々電極母材と該放電ギャップを形成する位置に耐火花消耗材からなるチップとを有するスパークプラグにおいて、
【0018】
前記チップは、フランジ部と、該フランジ部の一面から突出する凸部とからなり、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方における前記電極母材の前記放電ギャップ側の接合面には、該フランジ部の該凸部とは反対側の他面が抵抗溶接により仮止めされ、かつ該凸部の側面を構成する母線の仮想延長線と該フランジ部の該他面との交点より該他面上の内側を通り前記電極母材と前記チップとに溶融部が存在するように該フランジ部がレーザにより溶接されていることを特徴とする。
【0019】
本発明のスパークプラグでは、チップがフランジ部と凸部とからなり、レーザ溶接により、凸部の側面を構成する母線の仮想延長線とフランジ部の他面との交点より他面上の内側を通り前記電極母材と前記チップとに溶融部が存在している。そのため、フランジ部の中心部近傍において溶融部の存在しない部分が広範囲に存在することがない。こうして、電極母材の接合面にフランジ部が確実に接合されるため、電極母材とチップとの接合強度を確保することができ、スパークプラグの耐久性を長期に亘って維持することが可能となる。
【0020】
溶融部はチップの成分を20〜80質量%含有することが好ましい。発明者らの試験結果によれば、溶融部におけるチップの成分が20質量%未満又は80質量%を超える場合、電極母材とチップとがなじみ難く、また電極母材とチップとの間に生じる熱応力差が大きいため、電極母材とチップとの接合強度を確保することができない虞がある。これに対し、溶融部がチップの成分を20〜80質量%含有すれば、電極母材とチップとがなじみ易く、また電極母材とチップとの間に生じる熱応力差が小さいため、電極母材とチップとの接合強度を確保し易い。特に、溶融部はチップの成分を30〜60質量%含有することがより好ましい。こうであれば、電極母材とチップとの接合強度を確実に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のスパークプラグ及びその製造方法を具体化した実施形態及び試験を図面1〜10を参照しつつ説明する。
【0022】
(実施形態)
先ず、図1に示すように、第1工程S10において、1〜20質量%のRh、1〜10質量%のPt、1〜5質量%のY23及びNi1〜20質量%の少なくともいずれかを含むIr合金製、又は20〜60質量%のRh、10〜40質量%のIr及び1〜20質量%Niの少なくともいずれかを含むPt合金製の耐火花消耗材からなるチップ1を製作する。なお、中心電極30及び接地電極40の両方にチップ1を付ける場合(図9参照)、同一材料のチップ1を使用してもよいし、別材料のチップ1を使用してもよい。このチップ1は、図2に示すように、フランジ部1bと、このフランジ部1bの一面1cから突出する凸部1aとから構成されている。フランジ部1bは直径L=1(mm)、厚さ0.2(mm)の円板状をなし、凸部1aは直径R=0.6(mm)、厚さ0.5(mm)の円柱状をなしている。
【0023】
また、図3に示すように、40質量%のNiを含有するIr合金からなる中間部材2を製作する。この中間部材2は、直径L=1.2(mm)、厚さ0.2(mm)の円板状をなしている。
【0024】
そして、図1に示す第2工程S20では、図3に示すように、中心電極30に中間部材2を抵抗溶接して仮止めする。この中心電極30は、Inconel(登録商標)600のNi合金を電極母材とする直径2.5(mm)のものである。その際、まず中心電極30の放電ギャップ側の接合面32に中間部材2を配置する。そして、中間部材2上に第1電気抵抗溶接機50を設け、所定の加圧力の下、所定の電流を通電することにより、中心電極30に中間部材2を抵抗溶接して仮止めする。
【0025】
続いて、図4に示すように、中心電極30に仮止めした中間部材2上にチップ1のフランジ部1bを配置する。そして、フランジ部1bの一面1c上に第2電気抵抗溶接機60を設け、所定の加圧力の下、所定の電流を通電する。なお、第2電気抵抗溶接機60はチップ1の先端面に接触しない構造になっている。これにより、チップ1の先端面が抵抗溶接による影響を受けないようにしている。そして、中間部材2にフランジ部1bの他面1dを抵抗溶接により仮止めする。こうして、中心電極30に中間部材2とチップ1とが仮止される。
【0026】
次に、図1に示す第3工程S30では、図5の矢印で示すようにレーザを照射し、中心電極30の接合面32にチップ1のフランジ部1bを溶接する。この際、図6に示すように、円柱状の凸部1aの側面上に延び、凸部1aの中心軸と同一平面を構成し得る線である母線の仮想延長線と、フランジ部1bの他面1dとの交点間の最大距離をDとし、交点から溶融部3の他面1d上の最深部までの距離をaとすると、aの大きさがD/5以上になるようにする。そして、電極母材とチップ1とに溶融部が存在するようにする。これにより、溶融部3はチップ1の成分を30〜60質量%含有する。なお、この実施形態では、Dと凸部1の直径Rとは一致する。
【0027】
その後、図9に示すように、先端が突出するように絶縁体62内に中心電極30を組み込み、絶縁体62内の中心電極30の後端に端子63を挿入する。そして、これらを主体金具60に組み込む。
【0028】
次に、図1に示す第4工程S40では、図9に示すように、予め主体金具60に溶接された接地電極40を製作する。この接地電極40は、中心電極30と同様、Inconel(登録商標)600のNi合金を電極母材とする幅2.5(mm)のものである。図7又は図8に示すように、接地電極40は中心電極30の一端側とは反対方向に屈曲した状態にされている。
【0029】
そして、図3に示すように、接地電極40に中間部材2を抵抗溶接して仮止めする。その際、まず接地電極40の放電ギャップ側の接合面42に中間部材2を配置する。そして、中間部材2上に第1電気抵抗溶接機50を設け、所定の加圧力の下、所定の電流を通電することにより、接地電極40に中間部材2を抵抗溶接して仮止めする。
【0030】
続いて、図4に示すように、接地電極40に仮止めした中間部材2上にチップ1のフランジ部1bを配置する。そして、フランジ部1bの一面1c上に第2電気抵抗溶接機60を設け、所定の加圧力の下、所定の電流を通電することにより、中間部材2にフランジ部1bの他面1dを抵抗溶接により仮止めする。こうして、接地電極40にも中間部材2とチップ1とが仮止される。
【0031】
次に、図1に示す第5工程S50では、図5の矢印で示すようにレーザを照射し、接地電極40の接合面42にチップ1のフランジ部1bを溶接する。この際、図6に示すように、円柱状の凸部1aの側面上に延び、凸部1aの中心軸と同一平面を構成し得る線である母線の仮想延長線と、フランジ部1bの他面1dとの交点間の最大距離をDとし、交点から溶融部3の他面1d上の最深部までの距離をaとすると、aの大きさがD/5以上になるようにする。そして、電極母材とチップ1とに溶融部が存在するようにする。これにより、溶融部3はチップ1の成分を30〜60質量%含有する。なお、この実施形態では、Dは凸部1の直径Rと一致する。
【0032】
そして、図7及び図8に示すように、チップ1を溶接した接地電極40の電極母材の一端を中心電極30側に屈曲する。こうして、図9に示すスパークプラグが得られる。
【0033】
このスパークプラグの製造方法では、円柱状の凸部1aの側面上に延び、凸部1aの中心軸と同一平面を構成し得る線である母線の仮想延長線と、フランジ部1bの他面1dとの交点間の最大距離Dに対して、交点よりD/5以上他面1d上の内側に溶融部3が存在する。このため、フランジ部1bの中心部近傍において溶融部3の存在しない部分が広範囲に存在することを防止することができる。そのため、電極母材の接合面32、42にフランジ部1bが確実に接合されることとなる。
【0034】
さらに、このスパークプラグの製造方法では、中間部材2が電極母材及びチップ1の中間的な融点及び線膨張係数をもつことから、レーザ照射により中間部材2と電極母材及びチップ1とがなじみ易く、また中間部材2と電極母材及びチップ1との間に生じる熱応力差を小さくすることができる。このため、電極母材と中間部材2との間又は中間部材2とチップ1との間に剥離が生じ難い。
【0035】
また、このスパークプラグの製造方法では、接合面32、42に中間部材2を抵抗溶接により仮止めした後、中間部材2にフランジ部1bの他面1dを抵抗溶接により仮止めするため、レーザ溶接時に中間部材2及びチップ1が移動することを防止でき、電極母材とチップ1とを確実に溶接することができる。
【0036】
したがって、本実施形態のスパークプラグの製造方法では、電極母材とチップ1との接合強度を確実に確保することができる。
【0037】
また、このスパークプラグの製造方法では、接地電極40を中心電極30の一端側とは反対方向に屈曲した状態において、チップ1を接地電極40に溶接している。このため、レーザ照射角の制限を回避することができ、最適なレーザ照射角によりチップ1を接地電極40に溶接することができる。
【0038】
こうして得られたスパークプラグは、図9に示すように、筒状の主体金具60を備えており、この主体金具60内には、主体金具60の軸方向に延在し、両端を主体金具60の両端から突出させた筒状の絶縁体62が固定されている。また、主体金具60の軸方向には中心電極30が延在し、中心電極30の先端は絶縁体62の先端から突出され、中心電極30の後端は絶縁体62内に固定されている。一方、主体金具60には接地電極40の一端が固定され、接地電極40の他端部は中心電極30との間に放電ギャップを形成している。中心電極30及び接地電極40にはチップ1が放電ギャップを維持しながら対向して設けられている。
【0039】
このスパークプラグでは、チップ1がフランジ部1bと凸部1aとからなり、レーザ溶接により、円柱状の凸部1aの側面上に延び、凸部1aの中心軸と同一平面を構成し得る線である母線の仮想延長線と、フランジ部1bの他面1dとの交点より他面1d上の内側を通り電極母材とチップ1とに溶融部3が存在している。そのため、フランジ部1bの中心部近傍において溶融部3の存在しない部分が広範囲に存在することがない。こうして、電極母材の接合面32、42にフランジ部1bが確実に接合されるため、電極母材とチップ1との接合強度を確保することができ、スパークプラグの耐久性を長期に亘って維持することが可能となる。
【0040】
また、このスパークプラグでは、溶融部3がチップ1の成分を30〜60質量%含有しているため、電極母材とチップ1とがなじみ易く、また電極母材とチップ1との間に生じる熱応力差が小さいため、電極母材とチップ1との接合強度を確実に確保することができる。
【0041】
(試験)
実施形態のスパークプラグの製造方法についての効果を確認する試験を行った。まず、実施形態と同様の合金であり、同様の形状をしたチップ1及び中間部材2を製作した。ただし、チップ1として、図6に示すように、円柱状の凸部1aの側面上に延び、凸部1aの中心軸と同一平面を構成し得る線である母線の仮想延長線と、フランジ部1bの他面1dとの交点間の最大距離をD(凸部1の直径Rと同じ。以下、「凸部1の直径R」という。)とし、D=0.6(mm)、0.8(mm)、1.0(mm)、1.2(mm)の4種類のものを製作した。また、フランジ部1bの直径は各凸部1の直径Rより0.4mm大きい。
【0042】
このチップ1を実施形態の中心電極30及び接地電極40と同様の合金の電極母材に実施形態と同様の方法でレーザ溶接した。ただし、実施形態のように中間部材2を用いる場合と、中間部材2を用いず、直接チップ1を電極母材にレーザ溶接した場合とについて試験を行った。
【0043】
試験内容を以下に示す。まず、チップ1を電極母材にレーザ溶接する際、凸部1aの側面を構成する仮想延長線とフランジ部1bの他面1dとの交点から溶融部3の他面1d上の最深部までの距離(以下、「溶け深さ」という。)をaとして、チップ1の種類毎に所定の溶け深さaの溶融部3を形成した。そして、バーナーで溶融部を2分間加熱した後、常温にて1分間徐冷した。これを50時間繰り返した後、酸化スケールの長さを調べた。ここで、酸化スケールとは、熱応力差によりチップ1の断面に生じたひび割れやチップ1の剥離をいう。バーナー温度は900°C及び950°Cとした。
【0044】
試験結果を表1〜4に示す。表1は凸部1の直径R=0.6(mm)のものについての試験結果であり、表2は凸部1の直径R=0.8(mm)のものについての試験結果であり、表3は凸部1の直径R=1.0(mm)のものについての試験結果であり、表4は凸部1の直径R=1.2(mm)のものについての試験結果である。各表において、フランジ部1bの直径をLとして、○はスケールの長さbがL/3より小さいものであり、△は酸化スケールの長さbがL/3以上、L/2より小さいものであり、×は酸化スケールの長さbがL/2以上のものである。
【0045】
【表1】


【0046】
【表2】


【0047】
【表3】


【0048】
【表4】


【0049】
表1〜4により、溶け深さaがD/5以上であれば試験結果が全て○であり、スケールの長さbがL/3より小さい。この試験結果より、溶融部3の溶け深さaがD/5以上であれば、電極母材とチップ1との接合強度を確実に確保することができることがわかる。
【0050】
なお、実施形態の製造方法では、例えば、図10(a)〜(c)に示すように、様々な形状のチップ71〜73を採用することもできる。図10(a)に示すチップ71は凸部71aがテーパ面を有するものである。図10(b)に示すチップ72はフランジ部72bがテーパ面を有するものである。図10(c)に示すチップ73は凸部73aがテーパ面を有し、凸部73aの底面73cの径とフランジ部72bの径とが一致しているものである。このようなチップ71〜73であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0051】
また、実施形態の製造方法では、凸部、フランジ部ともに円形形状をしているが、これに限らず、多角形(例えば三角形、四角形)のチップを使用してもよい。また、凸部とフランジ部とが同一形状でなくてもよい。
【0052】
また、実施形態の製造方法では、中心電極、接地電極の電極母材がInconel(登録商標)であるが、これに限定されず、Ni又はNi合金、Fe又はFe合金等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明はスパークプラグに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態に係り、スパークプラグの製造方法の工程図である。
【図2】実施形態に係り、チップの側面図である。
【図3】実施形態に係り、抵抗溶接時の中間部材の側面図である。
【図4】実施形態に係り、抵抗溶接時のチップ及び中間部材の側面図である。
【図5】実施形態に係り、レーザ溶接時のチップ及び中間部材の側面図である。
【図6】実施形態に係り、レーザ溶接後の中心電極又は接地電極の断面図である。
【図7】実施形態に係り、スパークプラグの一部拡大側面図である。
【図8】実施形態に係り、スパークプラグの一部拡大側面図である。
【図9】実施形態に係り、スパークプラグの一部断面の側面図である。
【図10】実施形態に係り、他のチップの側面図である。
【符号の説明】
【0055】
60…主体金具
62…絶縁体
30…中心電極
40…接地電極
1…チップ
1a…凸部
1b…フランジ部
2…中間部材
3…溶融部
32、42…接合面
S10…第1工程
S20…第2工程
S30…第3工程
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成19年9月24日(2007.9.24)
【代理人】 【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所


【公開番号】 特開2008−34393(P2008−34393A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−246334(P2007−246334)