トップ :: H 電気 :: H01 基本的電気素子

【発明の名称】 エージング処理方法およびエージング処理装置
【発明者】 【氏名】大町 修
【氏名】菅原 孝
【課題】エージングの進行状況を把握し、適切な処理を施すことによりチップ実装後の不良発生率を大幅に低下させ得るようにする。

【解決手段】ヒータ2と、チップ1に通電するプローブ4及び定電流源5a,5bと、チップ1に流す電流をエージング電流Ie、微弱電流Im、加熱電流Ih、微弱電流Imの順に切り換える切換スイッチ7と、チップ1の電極間電圧を検出する増幅器8、S/H回路部9、A/D変換器10と、演算を実行する制御部11とを備える。ヒータ2でチップ1を加熱し、その状態でチップ1にエージング電流Ieを流した後、チップ1に微弱電流Imを流してチップ1の電極間電圧Vm1を検出する。次いで、チップ1に加熱電流Ihを流した後、チップ1に流す電流を微弱電流Imに戻してチップ1の電極間電圧Vm2として検出する。Vm1,Vm2を基に制御部11で演算を実行し、チップ1の良否判定を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極を有し、該2つの電極間に電流を流すことにより発光する光半導体チップに対し、所定温度に加熱した状態で所定のエージング電流を流す加速エージング工程と、
前記加速エージング工程後、前記光半導体チップを前記所定温度に加熱した状態に保ったまま、該光半導体チップに前記エージング電流より小さい微弱電流を流し、このときの光半導体チップの電極間電圧を第1測定電圧として検出する第1電圧検出工程と、
前記第1電圧検出工程に次いで、前記光半導体チップに前記微弱電流より大きな加熱電流を流した後、光半導体チップに流す電流を前記微弱電流に戻し、このときの光半導体チップの電極間電圧を第2測定電圧として検出する第2電圧検出工程と、
を含むことを特徴とするエージング処理方法。
【請求項2】
前記第1、第2電圧検出工程により検出された第1、第2測定電圧を基に、光半導体チップの良否を判定するための演算を実行する良否判定工程を含み、
前記良否判定工程による演算結果が規定範囲内に収まるまで前記加速エージング工程及び第1、第2電圧検出工程を繰り返し行い、
前記加速エージング工程を規定回数行っても前記良否判定工程による演算結果が規定範囲に収まらなかった光半導体チップを不良チップとして排除することを特徴とする請求項1記載のエージング処理方法。
【請求項3】
前記良否判定工程による演算結果が規定範囲内に収まった光半導体チップを対象に、常温下で当該光半導体チップの電流−光出力特性を検査することを特徴とする請求項2記載のエージング処理方法。
【請求項4】
2つの電極を有し、該2つの電極間に電流を流すことにより発光する光半導体チップを加熱するための外部加熱手段と、
前記光半導体チップに対し、所定のエージング電流、該エージング電流より小さい微弱電流、及び該微弱電流より大きい加熱電流を流すための通電手段と、
前記通電手段から光半導体チップに流される電流を前記エージング電流、前記微弱電流、前記加熱電流、及び前記微弱電流の順に切り換える通電量変換手段と、
前記光半導体チップに対して前記加熱電流の通電前に前記微弱電流を流したときの光半導体チップの電極間電圧を第1測定電圧として検出すると共に、前記光半導体チップに対して前記加熱電流の通電後に前記微弱電流を流したときの光半導体チップの電極間電圧を第2測定電圧として検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された第1、第2測定電圧に基づき、光半導体チップの良否を判定するための演算を実行する良否判定手段と、
を具備することを特徴とするエージング処理装置。
【請求項5】
前記通電手段は、複数の光半導体チップに対応する複数のプローブを有し、その各プローブから各光半導体チップのそれぞれに個別に通電可能とされていることを特徴とする請求項4記載のエージング処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザなどの光半導体デバイスを製造する際に適用されるエージング処理技術に係わり、特に光半導体チップにその電流−光出力特性を安定化するためのエージング電流を流した直後に、エージングの進行状況を把握して、不良チップを早期に発見できるようにした方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、AlGaInP材料系の半導体レーザでは、半導体結晶中に拡散させるドーパント(不純物)としてZnが多用されるが、その種の半導体レーザによれば通電により半導体結晶の性状が物理的に変化し、これに起因して通電初期段階で電流−光出力特性に変動がみられる。具体的には、通電初期段階では、所定の光出力を得るための電流(以下、定格駆動電流と称す)が大きく変動する。このため、半導体レーザの製造に際しては初期変動を無くして特性の安定化を図るためにエージング処理が行われる。
【0003】
係るエージング処理は、チップに通電してその結晶構造を安定化させるものであり、これには通電量などにもよるが通常数時間から数百時間を要する。尚、エージング処理の進行状況は、一般的に定格駆動電流をチップに流し、その変化をモニタリングすることにより行われる。
【0004】
ここに、エージング処理による効果は、環境温度(エージング温度)が高く、チップに流す電流(エージング電流)が大きいほど高くなるので、一般には半導体結晶の性状変化を促進して処理効率を上げるべく、加速エージングといって半導体レーザをバーンインチャンバと呼ばれる恒温槽内に置き、当該槽内における高温環境下でチップに通電することが行われる。
【0005】
但し、加速エージングでは、半導体レーザなどの構成部材が熱破損せぬようチップに流されるエージング電流が通常、定格駆動電流以下に制限される。
【0006】
特に、チップを基板(サブマウントやリードフレーム等)に実装した状態でエージング処理を行う場合には、エージング温度が高いと、ボンディング部分などが熱劣化してしまうので、エージング温度を高く設定することができず、このため処理に時間が掛かり、処理効率の低下を招くという問題がある。
【0007】
又、チップ実装後のエージング処理では、バーンインチャンバをはじめ、大型の処理装置を必要とする上、チップの電流−光出力特性が改善せずして不良品と認定された場合、チップのみならず、その他の実装部品の全てが無駄になってしまう。
【0008】
そこで、半導体レーザをチップ状態のまま、該チップに加速エージング処理を施す方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
【特許文献1】特開2006−135245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のように高温下で行われる加速エージングでは、上述のようにエージング電流が閾値電流よりも小さい値に制限されるので、通常行われる定格駆動電流によるエージング進行状況の把握ができない。このため、処理時間(通電時間)を実験データや経験則に基づいて設定せざるを得ず、チップ実装後の検査で多くの不良品が発見されることがあった。
【0011】
又、定格駆動電流を流して電流−光出力特性を検査する場合には、環境温度を下げてチップ温度が下がるまで待たねばならないので時間が掛かり、ひいては半導体デバイスの生産効率の悪化を招くという問題がある。
【0012】
更に、加速エージングでは、エージングの進行が速いので、チップの特性ばらつき、処理時間、エージング電流等の僅かな違いにより、エージングの度合のバラツキが大きくなるため、電流−光出力特性に大きなバラツキを生ずる。従って、処理時間の管理だけでは過度の処理によりチップの劣化が進行し、製品寿命を低下させてしまうことになる。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は高温下で行われる加速エージングでもエージングの進行状況を把握し、適切な処理を施すことによりチップ実装後の不良発生率を大幅に低下させ得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の目的を達成するため、
2つの電極(アノード/カソード)を有し、該2つの電極間に電流を流すことにより発光する光半導体チップ1に対し、所定温度に加熱した状態で所定のエージング電流Ieを流す加速エージング工程と、
前記加速エージング工程後、前記光半導体チップ1を前記所定温度に加熱した状態に保ったまま、該光半導体チップ1に前記エージング電流Ieより小さい微弱電流Imを流し、このときの光半導体チップ1の電極間電圧を第1測定電圧Vm1として検出する第1電圧検出工程と、
前記第1電圧検出工程に次いで、前記光半導体チップ1に前記微弱電流Imより大きな加熱電流Ihを流した後、光半導体チップ1に流す電流を前記微弱電流Imに戻し、このときの光半導体チップ1の電極間電圧を第2測定電圧Vm2として検出する第2電圧検出工程と、
を含むことを特徴とするエージング処理方法を提供する。
【0015】
加えて、本発明に係るエージング処理方法は、
前記第1、第2電圧検出工程により検出された第1、第2測定電圧Vm1,Vm2を基に、光半導体チップ1の良否を判定するための演算を実行する良否判定工程を含み、
前記良否判定工程による演算結果が規定範囲内に収まるまで前記加速エージング工程及び第1、第2電圧検出工程を繰り返し行い、
前記加速エージング工程を規定回数行っても前記良否判定工程による演算結果が規定範囲に収まらなかった光半導体チップ1を不良チップとして排除することを特徴とする。
【0016】
更に、前記良否判定工程による演算結果が規定範囲内に収まった光半導体チップ1を対象に、常温下で当該光半導体チップ1の電流−光出力特性を検査することを特徴とする。
【0017】
一方、本発明は、
2つの電極(アノード/カソード)を有し、該2つの電極間に電流を流すことにより発光する光半導体チップ1を加熱するための外部加熱手段(ヒータ2)と、
前記光半導体チップ1に対し、所定のエージング電流Ie、該エージング電流より小さい微弱電流Im、及び該微弱電流より大きい加熱電流Ihを流すための通電手段(プローブ4及び定電流源5a,5b)と、
前記通電手段4,5a,5bから光半導体チップ1に流される電流を前記エージング電流Ie、前記微弱電流Im、前記加熱電流Ih、及び前記微弱電流Imの順に切り換える通電量変換手段(切換スイッチ7)と、
前記光半導体チップ1に対して前記加熱電流Ihの通電前に前記微弱電流Imを流したときの光半導体チップ1の電極間電圧を第1測定電圧Vm1として検出すると共に、前記光半導体チップ1に対して前記加熱電流Ihの通電後に前記微弱電流Imを流したときの光半導体チップ1の電極間電圧を第2測定電圧Vm2として検出する電圧検出手段(増幅器8、S/H回路部9、A/D変換器10)と、
前記電圧検出手段8,9,10により検出された第1、第2測定電圧Vm1,Vm2に基づき、光半導体チップ1の良否を判定するための演算を実行する良否判定手段(制御部11)と、
を具備することを特徴とするエージング処理装置を提供する。
【0018】
又、前記通電手段は、複数の光半導体チップ1,・・に対応する複数のプローブ4,・・を有し、その各プローブ4,・・から各光半導体チップ1,・・のそれぞれに個別に通電可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る方法および装置によれば、高温下で行われる加速エージングでも、チップを高温加熱状態に保ったまま、これを熱破損させることなく、エージング電流通電後におけるチップの電極間電圧の変化からエージング進行状況を把握できる。
【0020】
従って、チップに最適なエージング処理を施して不良チップを早期に発見し、チップ実装後の不良発生率を低下させて歩留まりを向上させることができ、しかも過度なエージングによるチップの劣化を防いで良品チップの製品寿命を可及的長くすることができる。
【0021】
又、良否判定工程で規定範囲内に収まらなかったチップを対象に、加速エージング工程を繰り返し行う方法によれば、加速エージング工程を小刻みに行って過度なエージングを防止しながら可及的多くのチップを良品として選出することができる。
【0022】
更に、通電手段として、複数の光半導体チップに個別に通電可能とされる複数のプローブを有する装置によれば、処理効率を高くできる上、各チップ間に特性のばらつきが生じていてもチップ単位で最適なエージング処理を行えるので、過度なエージングによるチップの劣化を防止しながら、不良チップを早期に発見して歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。尚、本発明はエージング処理対象の光半導体として、発光デバイスに属する半導体レーザや発光ダイオードに適用することができるが、本例ではこれを半導体レーザとして説明する。
【0024】
図1は、半導体レーザチップに対して環境温度65℃の下で20mAのエージング電流を流したときの熱抵抗値の経時変化を示すグラフである。これによれば、半導体レーザチップの熱抵抗値Rthがエージング初期段階で大きく上昇した後、エージングの進行に伴って漸次減少しながら安定していく現象が認められる。
【0025】
尚、熱抵抗値とは、半導体レーザチップの発熱を外部にどれだけ放出できるかの放熱路特性を示す値であり、換言すれば半導体レーザチップに所定の電力を印加した場合に、半導体接合部(以下、ジャンクションとする)の温度が周囲の環境温度に対して何度上昇するかを示す重要なパラメータである。
【0026】
ここに、熱抵抗値をRth、ジャンクション温度をTj、通電によるジャンクションの温度上昇をΔTj、環境温度(エージング温度)をTa、印加電力をWとしたとき、
Rth=(Tj−Ta)/W=ΔTj/W[℃/W] ・・・式1
で表わすことができる。
【0027】
ここに、半導体レーザチップの電流−電圧特性は、ジャンクション温度Tjに対応して相関的に変化するので、ΔTjはチップに印加された電圧の変化量から概算することができる。
【0028】
例えば、図2に示すように、半導体レーザチップに対し、その発熱が抑えられる程度の十分に小さな微弱電流Imを順方向に通電し、このときの半導体レーザチップの電極間電圧Vm1(アノード/カソード間の電圧)を検出すると共に、これに続いて半導体レーザが発熱するような加熱電流Ihを通電し、このときの半導体レーザチップの電極間電圧Vhを検出し、その直後に電流値を先の微弱電流Imに戻して微小な待ち時間Td後に半導体レーザチップの電極間電圧Vm2を検出すれば、通電による半導体レーザチップのジャンクションの温度上昇ΔTjは、
ΔTj=(Vm1−Vm2)/Tm=ΔV/Tm[℃] ・・・式2
として求めることができる。但し、Tm[V/℃]は、微弱電流Imを通電したときの電圧変動ΔV=(Vm1−Vm2)を示す半導体レーザの温度係数とする。
【0029】
従って、上記式1、2から、
Rth=ΔV/(Tm・W)=ΔV/(Tm・Ih・Vh)[℃/W] ・・・式3
として求めることができる。
【0030】
尚、図2における加熱電流Ihは、半導体レーザのジャンクション近傍のみが加熱されるよう、その通電時間Tmが数m秒以下の短いパルスであることが望ましい。
【0031】
ここに、以上のような条件で測定される熱抵抗値Rthは過渡熱抵抗と呼ばれるが、係る熱抵抗値Rthの変化を検出する場合、上記Tm、Ih、Vhを一定とすると、ΔV(Vm1,Vm2)を検出すれば、Rthの変化を簡易的に求めることができる。
【0032】
従って、高温加熱下で行われる加速エージングでも、Vm1,Vm2を検出することにより、チップのエージング進行状況を把握して適切なエージング処理を施し、実装後のチップから不良チップが多量に検出されることを未然に防止することが可能となる。
【実施例1】
【0033】
図3は、半導体レーザチップに対して上記のようなエージング処理を施すための装置の構成例を示す。
【0034】
図3において、1は半導体レーザチップ、2は半導体レーザチップ1を加熱する外部加熱手段を構成する熱源(ヒータ)であり、その熱源2上には電極3を介して半導体レーザチップ1が載せられる。そして、熱源2から電極3への固体伝熱によって半導体レーザチップ1を高温加熱しながら、その半導体レーザチップ1に対しプローブ4から通電が行われる構成とされる。尚、半導体レーザチップ1は、アノード/カソードの何れか一方が電極3に接触され、その他方にプローブ4の先端が接触される。
【0035】
プローブ4は、2つの定電流源5a,5bに導電接続されて通電手段を構成するものであり、一方の定電流源5bとプローブ4とを繋ぐ電路にはダイオード6ならびに通電量変換手段としての切換スイッチ7が設けられる。
【0036】
そして、本例によれば、切換スイッチ7をON−OFF制御することにより、半導体レーザチップ1に対する通電量を過渡的な影響を抑えて瞬時に切り換えられるようになっている。具体的には、切換スイッチ7を閉じることにより一方の定電流源5aからプローブ4を通じて半導体レーザチップ1に微弱電流Imが供給され、切換スイッチ7を開いたときには他方の定電流源5bからプローブ4を通じて半導体レーザチップ1に微弱電流Imより大きいエージング電流Ieおよび加熱電流Ihが供給されるようにしてある。
【0037】
又、定電流源5a,5bから半導体レーザチップ1への通電時における半導体レーザチップ1の電極間電圧(アノード/カソード間の電圧)を検出するため、プローブ4と電極3には増幅器8が導電接続され、増幅器8の出力側にはS/H(サンプルホールド)回路部9を介してA/D(アナログデジタル)変換器10が導電接続されている。そして、半導体レーザチップ1の電極間電圧が増幅器8により増幅され、増幅器8の出力がS/H回路部9によりサンプリングホールドされると共に、その出力がA/D変換器10により数値データ(デジタル信号)に変換され、これが制御部11に入力されて信号処理されるようになっている。
【0038】
尚、制御部11は、A/D変換器10より数値データとして入力された半導体レーザチップ1の電極間電圧を基に、半導体レーザチップ1の良否を判定するための演算を実行する図示せぬ演算回路(良否判定手段)を含み、その演算結果によって半導体レーザチップ1のエージング進行状況を把握できるようになっている。又、制御部11には、熱源2、定電流源5a,5b、切換スイッチ7、S/H回路部9がそれぞれ導電接続され、それらが制御部11により駆動制御されるようになっている。
【0039】
図4は、以上のように構成されるエージング処理装置の制御態様を示すフローチャートである。ここに、係る装置によるエージング処理方法について説明すると、先ず加熱工程S1として、熱源2への電源投入により該熱源2が発熱され、その発熱量を制御部11により制御しながら電極3上に載置された半導体レーザチップ1を高温(チップ1の熱破損を防止できる温度で、100〜300℃の範囲内に設定されるが、本例では150℃)に加熱する。
【0040】
そして、半導体レーザチップ1が所定温度に達したら、加速エージング工程S2として、上記の切換スイッチ7を開き、半導体レーザチップ1にプローブ4を接触させ、定電流源5bから高温加熱状態の半導体レーザチップ1に対して一定のエージング電流Ieを所定時間流す。尚、エージング電流Ieは、半導体レーザチップ1を発光させないような電流値、すなわち閾値電流よりも小さい電流に制限され、本例ではこれが30mAとされる。又、エージング電流Ieの通電時間は例えば2分に設定される。
【0041】
次に、エージング電流Ieの通電により上昇した半導体レーザチップ1のジャンクション温度が熱源2による加熱温度(150℃)に下がるまで待機(約10秒)した後、上記のように半導体レーザチップ1の熱抵抗値Rthを算出するために、電圧検出工程S3として、半導体レーザチップ1の電極間電圧Vm1、Vm2、Vhを測定する。
【0042】
具体的には、切換スイッチ7を閉じ、定電流源5aからプローブ4を通じて半導体レーザチップ1に先のエージング電流Ieより小さい微弱電流Im(半導体レーザチップ1を熱源2による加熱温度以上に昇温させないための小さな電流であり、例えば1mA)を順方向に流し、このときの半導体レーザチップ1の電極間電圧を第1測定電圧Vm1として検出する(第1電圧検出工程)。次いで、切換スイッチ7を開き、加熱電流Ihとして定電流源5bの出力電流を微弱電流Imより大きく定格駆動電流より小さい値(例えば20mA)に設定し、その定電流源5bからプローブ4を通じて半導体レーザチップ1に20mAの加熱電流Ihを微小時間(例えば1m秒)だけ流し、このときの半導体レーザチップ1の電極間電圧をVhとして検出する(加熱電圧検出工程)。その後、切換スイッチ7を閉じ、定電流源5aからプローブ4を通じて半導体レーザチップ1に第1測定電圧Vm1の検出時と同じ微弱電流Imを流し、このとき(微弱電流Imの通電開始から約1μ秒後)の半導体レーザチップ1の電極間電圧を第2測定電圧Vm2として検出する(第2電圧検出工程)。尚、それらの検出電圧Vm1、Vh、Vm2は図3に示されるA/D変換器10から制御部11の記憶領域に一時的に格納される。
【0043】
そして、制御部11では良否判定工程S4として、Vm1、Vm2、Vhを基に、半導体レーザチップ1の良否を判定するための演算が実行される。具体的には、Vm1、Vm2、Vhを基に、上記式3から加速エージング工程S2を経た半導体レーザチップ1の熱抵抗値Rthを算出し、その演算結果が規定範囲内(基準レベルRthmより小さい値)に収まっていた場合には、係る半導体レーザチップ1を良品として検査工程(スクリーニング工程)に移し、これに常温下で定格駆動電流を流し、所定の光が出力されるか否かの確認、検査を行う。尚、検査工程における検査項目として電流−光出力特性等があるが、係る検査工程は、半導体レーザチップ1を基板に実装してパッケージ状態として行っても、チップ状態のまま行っても良い。
【0044】
一方、良否判定工程S4による演算結果が規定範囲内に収まらなかった場合には、最大許容回数Nmaxを上限に、良否判定工程S4による演算結果が規定範囲内に収まるまで加速エージング工程S2〜良否判定工程S4を繰り返し行い、その回数Nをその都度制御部11でカウントし、加速エージング工程S2を規定回数行っても(N=Nmaxになっても)良否判定工程S4による演算結果が規定範囲に収まらなかったときには処理を終了し、係る半導体レーザチップ1を不良チップとして排除する。
【0045】
尚、上記例では電圧検出工程でVm1、Vm2のほかVhを検出し、それらを基にチップ1の良否を判定するための指標となる熱抵抗値を算出するようにしているが、Vm1,Vm2のみを検出するだけでもよく、この場合でもそのチップ1の良否を判定するに足る熱抵抗値を概算することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、図5は本発明に係る装置の変更例を示す。尚、本例の装置は、複数の半導体レーザ1,・・に対応する複数のプローブ4,・・を備え、その各プローブ4に対応してマルチスイッチ12を設けることにより、各プローブ4から対応する半導体レーザチップ1への通電を個別に行えるようにしたもので、それ以外の構成は上記例と同一とされる。
【0047】
ここで、係る半導体レーザチップ1は、例えばその複数が直列に連なった状態に切り出されたバー状の形態であり、プローブ4もそれら半導体レーザチップ1に対応して複数が所定の間隔をあけて配列される。
【0048】
又、マルチスイッチ12は制御部11に導電接続され、その制御部11によりマルチスイッチ12の開閉動作が各プローブ4,・・毎に行えるようになっている。
【0049】
以下、図5および図6に基づいて係る装置によるエージング処理方法について説明すると、先ず加熱工程S1として、熱源2への電源投入により該熱源2が発熱され、その発熱量を制御部11により制御しながら電極3上に載置された複数の半導体レーザチップ1を同時に高温加熱(例えば150℃)する。
【0050】
そして、それら半導体レーザチップ1が所定温度に達したら、加速エージング工程S2として、切換スイッチ7を開くと共に、マルチスイッチ12の全接点を閉じ、各プローブ4をそれぞれ半導体レーザチップ1に接触させ、定電流源5bから高温加熱状態の半導体レーザチップ1に対して一定のエージング電流Ieを所定時間流す。尚、エージング電流Ieは半導体レーザチップ1を発光させないような電流値、すなわち閾値電流より小さい電流に制限され、本例ではこれが30mAとされる。但し、全ての半導体レーザチップ1に30mAのエージング電流Ieが流れるよう、定電流源5bの出力電流は半導体レーザチップ1の数×30mAに設定され、その通電時間は例えば2分に設定される。
【0051】
次に、エージング電流Ieの通電により上昇した半導体レーザチップ1のジャンクション温度が、熱源2による加熱温度(150℃)に下がるまで待機(約10秒)した後、上記のように半導体レーザチップ1の熱抵抗値Rthを算出するために、電圧検出工程S3として、マルチスイッチ12を一つずつ順番に閉じ、各半導体レーザチップ1の電極間電圧Vm1、Vm2、Vhを実施例1と同様にして一つずつ順番に測定する。
【0052】
その後、電圧検出工程S3が終わった半導体レーザチップ1を対象に、良否判定工程S4として実施例1と同様の演算を実行し、その演算結果が規定範囲内(基準レベルRthmより小さい値)に収まっていた場合には、係る半導体レーザチップ1が良品チップであることを示すフラグを制御部11の記憶領域に格納し、良否判定工程S4による演算結果が規定範囲内に収まらなかった場合には、係る半導体チップ1が規定外チップであることを示すフラグを制御部11の記憶領域に格納する。
【0053】
そして、全ての半導体レーザチップ1について、上記のような処理が行われた後、規定外チップと判定された半導体レーザチップ1が存在する場合には、これに該当する半導体レーザチップ1についてのみ、最大許容回数Nmaxを上限に、良否判定工程S4による演算結果が規定範囲内に収まるまで加速エージング工程S2〜良否判定工程S4を繰り返し行い、その回数Nをその都度制御部11でカウントし、加速エージング工程S2を規定回数行っても(N=Nmaxになっても)良否判定工程S4による演算結果が規定範囲に収まらなかったときには処理を終了し、係る半導体レーザチップ1を不良チップとして排除する。
【0054】
その後、上記良否判定工程S4による演算結果が規定範囲内に収まった光半導体チップ1(良品チップ)については、実施例1と同様、これに検査工程として常温下で定格駆動電流を流し、所定の光が出力されるか否かの確認、検査を行う。
【0055】
尚、本例において、加熱エージング工程S2と電圧検出工程S3を繰り返す場合、制御部11は規定外と判定された半導体レーザチップ1にのみ通電が行われるようマルチスイッチ12を制御し、加熱エージング工程S2では定電流源5bの出力電流が規定外チップの数に応じて調整される。
【0056】
又、本例でも電圧検出工程でVm1、Vm2のほかVhを検出し、それらを基にチップ1の良否を判定するための指標となる熱抵抗値を算出するようにしているが、Vm1,Vm2のみを検出するだけでもよく、この場合でもそのチップ1の良否を判定するに足る熱抵抗値を概算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】チップへの通電による熱抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図2】チップの電極間電圧を測定する原理説明図
【図3】本発明に係るエージング処理装置の構成例を示す説明図
【図4】本発明に係るエージング処理のフローチャート
【図5】本発明に係るエージング処理装置の変更例を示す説明図
【図6】本発明に係るエージング処理のフローチャート
【符号の説明】
【0058】
1 光半導体チップ(半導体レーザチップ)
2 ヒータ(外部加熱手段)
3 電極
4 プローブ(通電手段)
5a,5b 定電流源(通電手段)
7 切換スイッチ(通電量変換手段)
8 増幅器(電圧検出手段)
9 S/H回路部(電圧検出手段)
10 A/D変換器(電圧検出手段)
11 制御部(良否判定手段)

特許の図
【出願人】 【識別番号】000004329
【氏名又は名称】日本ビクター株式会社
【出願日】 平成18年12月27日(2006.12.27)
【代理人】 【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘

【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 希望
【公開番号】 特開2008−166319(P2008−166319A)
【公開日】 平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願番号】 特願2006−350793(P2006−350793)