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【発明の名称】 金属リン酸塩
【発明者】 【氏名】日比野 高士

【氏名】田中 利彦

【氏名】服部 武司

【要約】 【課題】より高出力でより安価の燃料電池に有用な高いプロトン伝導度を示す金属リン酸塩を提供する。

【構成】M(ここで、Mは長周期型周期律表第4A族および第4B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。)、PおよびOを含有する化合物であって、Mの一部をドーピング元素J(ここで、Jは長周期型周期律表第3A族、第3B族、第5A族および第5B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、少なくとも、B、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbから選ばれる元素を含有する。)で置換されてなるプロトン伝導性の金属リン酸塩。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M(ここで、Mは長周期型周期律表第4A族および第4B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。)、PおよびOを含有する化合物であって、Mの一部をドーピング元素J(ここで、Jは長周期型周期律表第3A族、第3B族、第5A族および第5B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、少なくとも、B、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbから選ばれる元素を含有する。)で置換されてなるプロトン伝導性の金属リン酸塩。
【請求項2】
M(ここで、Mは前記と同じ意味を有する。)、PおよびOを含有する化合物が、実質的に以下の式(1)で表される請求項1記載の金属リン酸塩。
MP27 (1)
【請求項3】
実質的に以下の式(2)で表される請求項1または2記載の金属リン酸塩。
1-xx27 (2)
(ここで、式(2)中のxは、0.001以上0.5以下の範囲の値であり、MおよびJは前記と同じ意味を有する。)
【請求項4】
JがB、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbからなる群より選ばれる1種以上の元素である請求項1〜3のいずれかに記載の金属リン酸塩。
【請求項5】
Jが少なくともAlを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の金属リン酸塩。
【請求項6】
JがAlである請求項1〜5のいずれかに記載の金属リン酸塩。
【請求項7】
MがSn、Ti、Si、Ge、Pb、ZrおよびHfからなる群より選ばれる1種以上の元素である請求項1〜6のいずれかに記載の金属リン酸塩。
【請求項8】
MがSnである請求項1〜7のいずれかに記載の金属リン酸塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の金属リン酸塩とバインダーとを有するフィルム。
【請求項10】
バインダーがフッ素樹脂である請求項9記載のフィルム。
【請求項11】
フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである請求項10記載のフィルム。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の金属リン酸塩または請求項9〜11のいずれかに記載のフィルムを固体電解質として有する燃料電池。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属リン酸塩に関する。詳しくは、燃料電池用の固体電解質に使用されるプロトン伝導性の金属リン酸塩に関する。
【背景技術】
【0002】
金属リン酸塩は、プロトン伝導性を示すことが知られており、固体電解質として燃料電池に使用される。固体電解質としては、高分子、燐酸、溶融塩、固体酸化物が知られており、それぞれを用いた燃料電池が研究されている。これらの固体電解質のうち高分子を用いる固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、室温〜100℃程度の低温で動作可能であること、フィルム化が容易であること、二酸化炭素の影響が少ないことから、これらの固体電解質の中では、可搬電源用または小型の定置電源用に適するといわれている。ところが固体高分子型燃料電池は低温で動作させるために、触媒として白金を大量必要とし、資源確保やコストの点で普及の障害になっている。一方、固体電解質としてジルコニアなどの固体酸化物を用いる固体酸化物燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は、900〜1000℃程度の高温で動作させるために、白金を触媒に用いる必要がなく、また触媒被毒も解消され、高出力が期待できるが、高い動作温度を必要とすることから、これらの固体電解質の中では、大型の定置電源用に適するといわれている。
【0003】
このような状況下、金属リン酸塩は、固体酸化物でありながら、ジルコニアの動作温度より低い温度(低温〜中温)でプロトン伝導性を示し、白金の使用量削減または代替、触媒被毒の解消の可能性があり、自動車等に搭載される可搬電源用または小型の定置電源用として期待されている。
【0004】
従来のプロトン伝導性の金属リン酸塩として、特許文献1にはSnP27が具体的に開示され、非特許文献1にはドーピング元素としてInを用いたSnP27が具体的に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−294245号公報
【非特許文献1】エレクトロケミカル・アンド・ソリッド・ステート・レターズ、第9巻、A105〜A109頁(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の金属リン酸塩であるSnP27は、プロトン伝導度が十分ではなく、プロトン伝導度をより高めることが必要である。また、プロトン伝導度の観点で、ドーピング元素としてInを用いたSnP27はドーピング元素を用いないSnP27よりも高い傾向にあるが、Inは白金同様、希少金属であり、高価であり、さらには透明導電膜等の需要拡大により、その供給量低下も逼迫していることからコストの点でも十分ではない。本発明の目的は、より高出力でより安価の燃料電池に有用な高いプロトン伝導度を示す金属リン酸塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の発明を提供するものである。
<1>M(ここで、Mは長周期型周期律表第4A族および第4B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。)、PおよびOを含有する化合物であって、Mの一部をドーピング元素J(ここで、Jは長周期型周期律表第3A族、第3B族、第5A族および第5B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、少なくとも、B、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbから選ばれる元素を含有する。)で置換されてなるプロトン伝導性の金属リン酸塩。
<2>M(ここで、Mは前記と同じ意味を有する。)、PおよびOを含有する化合物が、実質的に以下の式(1)で表される前記<1>記載の金属リン酸塩。
MP27 (1)
<3>実質的に以下の式(2)で表される前記<1>または<2>記載の金属リン酸塩。
1-xx27 (2)
(ここで、式(2)中のxは、0.001以上0.5以下の範囲の値であり、MおよびJは前記と同じ意味を有する。)
<4>JがB、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbからなる群より選ばれる1種以上の元素である前記<1>〜<3>のいずれかに記載の金属リン酸塩。
<5>Jが少なくともAlを含有する前記<1>〜<4>のいずれかに記載の金属リン酸塩。
<6>JがAlである前記<1>〜<5>のいずれかに記載の金属リン酸塩。
<7>MがSn、Ti、Pb、ZrおよびHfからなる群より選ばれる1種以上の元素である前記<1>〜<6>のいずれかに記載の金属リン酸塩。
<8>MがSnである前記<1>〜<7>のいずれかに記載の金属リン酸塩。
<9>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の金属リン酸塩とバインダーとを有するフィルム。
<10>前記バインダーがフッ素樹脂である前記<9>記載のフィルム。
<11>前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである前記<10>記載のフィルム。
<12>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の金属リン酸塩または前記<9>〜<11>のいずれかに記載のフィルムを固体電解質として有する燃料電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属リン酸塩は、高いプロトン伝導度を示し、燃料電池用の固体電解質として、好適に使用され、自動車等に搭載される可搬電源用または小型の定置電源用として特に好適に使用され、高いプロトン伝導度を示す金属リン酸塩を、安価に製造することができ、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、M(ここで、Mは長周期型周期律表第4A族および第4B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。)、PおよびOを含有する化合物であって、Mの一部をドーピング元素J(ここで、Jは長周期型周期律表第3A族、第3B族、第5A族および第5B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、少なくとも、B、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbから選ばれる元素を含有する。)で置換されてなるプロトン伝導性の金属リン酸塩を提供する。本発明の金属リン酸塩は、前記の構成により、高いプロトン伝導度を示す。
【0010】
M(ここで、Mは前記と同じ意味を有する。)、PおよびOを含有する化合物としては、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩などの化合物を挙げることができ、具体的には、リン酸スズ、リン酸チタン、リン酸シリコン、リン酸ゲルマニウム、リン酸ジルコニウムなどを挙げることができる。本発明においては、該化合物の中でもピロリン酸塩を好ましく用いることができ、ピロリン酸塩は、実質的に以下の式(1)で表される。
MP27 (1)
【0011】
また、本発明の金属リン酸塩は、実質的に以下の式(2)で表されることが好ましい。
1-xx27 (2)
(ここで、式(2)中のxは、0.001以上0.5以下の範囲の値であり、MおよびJは前記と同じ意味を有する。)
【0012】
実質的に式(2)で表されるとは、式(2)の組成比、すなわちM:J:P:Oのモル比である(1−x):x:2:7において、効果を阻害しない範囲で、PおよびOの成分それぞれが、2および7それぞれのモル比に対して若干の割合増減されていてもよいことを示す。若干の割合とは、用いるM、Jの種類にもよるが、通常10%程度以内である。この割合は、小さいことが好ましい。
【0013】
式(2)中のxは、ドーパント元素Jの置換割合に相当し、Mの種類にもよるが、通常0.001以上0.5以下の範囲の値であり、0.001以上0.3以下であることが好ましく、0.02以上0.3以下の範囲の値であることがより好ましく、0.02以上0.2以下の範囲の値であることがさらにより好ましい。MがSnでかつJがAlの場合においては、より高いプロトン伝導度を示す意味で、xは0.01以上0.1以下の範囲の値であることが好ましく、0.02以上0.08以下の範囲の値がより好ましく、さらにより好ましくは0.03以上0.07以下の範囲の値である。
【0014】
本発明において、Mは長周期型周期律表第4A族および第4B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、Sn、Ti、Si、Ge、Pb、ZrおよびHfからなる群より選ばれる1種以上の元素が好ましく用いられる。金属リン酸塩の安定性、プロトン伝導性の観点で、Mは、Sn、TiおよびZrからなる群より選ばれる1種以上の元素がより好ましく、さらにより好ましくはSnおよび/またはTiであり、特に好ましくはSnである。
【0015】
本発明において、Jは長周期型周期律表第3A族、第3B族、第5A族および第5Bの元素からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、少なくとも、B、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbから選ばれる元素を含有する。好ましいJとしては、Mの種類にもよるが、B、Al、Ga、Sc、Yb、Y、La、Ce、Sb、Bi、V、TaおよびNbからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、より好ましくは、B、Al、Ga、Sc、YおよびNbから選ばれる1種以上の元素であり、さらにより好ましくはAl、Ga、Sc、YおよびNbから選ばれる1種以上の元素である。金属リン酸塩の安定性、プロトン伝導性の観点で、MがSnを含有する場合を考慮すると、Jは、Alおよび/またはGaがさらにより好ましく、コストの観点をも含めれば、特に好ましくはAlである。いずれの場合においても、コストの観点で、Jは少なくともAlを含有しておくのが好ましい。
【0016】
本発明は、例えば、次のようにして、製造することができる。原料として、M(ここで、Mは長周期型周期律表第4A族および第4B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。)を含有する化合物と、J(ここで、Jは長周期型周期律表第3A族、第3B族、第5A族および第5B族の元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。)を含有する化合物と、Pを含有する化合物と、を使用する製造方法によって、製造することができる。
【0017】
Mを含有する化合物としては、Mの種類によって、適宜選択すればよいが、酸化物を用いるか、または水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化して酸化物になりうるものを用いることができる。例えばMとしてSnを用いる場合、各種の酸化スズおよびその水和物を用いることができ、二酸化スズまたはその水和物を好ましく用いることができる。
【0018】
Pを含有する化合物としては、リン酸、ホスホン酸等が挙げられ、MおよびJとの反応性の観点から、リン酸が好ましい。リン酸としては、通常50%以上の濃リン酸水溶液を用い、操作性の観点から、80〜90%の濃リン酸水溶液が好ましい。
【0019】
Jを含有する化合物としては、公知の化合物から適宜選択すればよいが、具体的には、酸化物を用いるか、または炭酸塩、シュウ酸塩など高温で分解および/または酸化して酸化物になりうるものを用いればよい。例えば、JがAlを含有する場合には、α−Al23、γ−Al23等のアルミナ等を用いることができる。同様に、例えば、酸化ホウ素、酸化ガリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ニオブ等を用いることができる。
【0020】
上記の原料を用いて、以下の(a)および(b)の工程をこの順で含むようにして金属リン酸塩を製造することができる。
(a)Mを含有する化合物とJを含有する化合物とリン酸とを反応させ、反応物を得る工程。
(b)該反応物を熱処理する工程。
【0021】
工程(a)において、反応温度は、合成する金属リン酸塩の組成によって適宜選択し、通常200〜400℃の範囲の温度で行う。たとえば、MがSnを含有する場合は、250〜350℃の範囲の温度で行うことが好ましく、270〜330℃がより好ましい。また反応時においては、攪拌することにより混合を十分に行うのがよい。得られる反応物の操作性の観点で、反応物の適切な粘度を維持し固化を防ぐ意味で、反応時に適量の水を添加することが有効な場合もある。反応時間は、合成する金属リン酸塩の組成によって適宜選択し、可能な限り長時間であるのがよい。ただし生産性を考慮すると、MがSnである場合には、1〜20時間の範囲であることが好ましい。
【0022】
工程(a)において得られる反応物は、ペースト状のものであり、工程(b)において該反応物を熱処理することで、金属リン酸塩を得ることができる。熱処理の温度としては、合成する金属リン酸塩の組成によって適宜選択し、たとえば、MがSnである場合には500〜800℃の範囲で行うことが好ましく、600〜700℃の範囲がより好ましく、630〜680℃の範囲がさらにより好ましい。熱処理の時間は、合成する金属リン酸塩の組成によって適宜選択し、たとえば、MがSnである場合には通常、1〜20時間の範囲であり、1〜5時間の範囲が好ましく、2〜5時間の範囲がより好ましい。
【0023】
次に本発明の金属リン酸塩を用いて得られるフィルムおよび燃料電池について説明する。本発明の金属リン酸塩は、燃料電池の固体電解質として用いることができる。本発明の金属リン酸塩を燃料電池の固体電解質として用いるには、金属リン酸塩を一定の形状に加工、たとえば成型体またはフィルムとする必要がある。本発明における金属リン酸塩は、固化していることが多いことから、これを一旦粉砕して粉末とするのがよい。この粉末を用いて目的の形状に成形、フィルム化して、燃料電池の固体電解質とする。
【0024】
成形体を製造するには、粉末を加圧成形すればよい。また、加圧成形する前に、粉末を脱水しておくことが好ましい。脱水の方法としては、たとえば水蒸気を含まないアルゴン等の不活性ガス中で加熱する方法が挙げられる。
【0025】
フィルムを製造するには、上記の金属リン酸塩の粉末とバインダーとを混合し、加圧成形する方法が挙げられる。ここで、バインダーとしては、公知の樹脂、シリコン化合物(有機珪素化合物等)、有機酸性化合物等を挙げることができ、成形性の観点では、フッ素樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂は、公知のフッ素樹脂から適宜選択して用いればよいが、具体的には、ポリテトラフルオロエチレンおよびその共重合体(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、等)、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体、等が挙げられる。これらフッ素樹脂の中では、好ましくはポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンを用いることができる。
【0026】
また、バインダーとして有機珪素化合物等のシリコン化合物1種以上を含有してもよい。シリコン化合物は、上記混合時に添加することによって、フィルムに含有させればよい。有機珪素化合物としては、公知の化合物から適宜選択して用いればよく、具体的には、ビニルシラン類〔アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、等〕、アミノシラン類、アルキルシラン類〔1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタン、n−オクチルトリエトキシシラン〕、3−(トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸、等が挙げられる。これら有機珪素化合物の中で好ましいのは、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタン、等の末端に複数のシリル基を有するアルキルシラン類である。また、有機珪素化合物は複数選択して用いてもよい。
【0027】
また、バインダーとして有機酸性化合物を1種以上含有してもよい。有機酸性化合物として、具体的には、有機スルホン酸化合物、有機燐酸化合物、等を挙げることができる。
【0028】
上記の成形体またはフィルムを燃料電池の固体電解質として用いることにより、燃料電池を得ることができる。すなわち典型的には一対のアノードとカソードの間に固体電解質として本発明の金属リン酸塩の成型体またはフィルムを用いて、燃料電池を得ることができる。燃料電池の他の構成部材(例えば、触媒、燃料供給部、空気供給部等)は公知の技術を適宜選択して使用すればよい。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0030】
実施例1
(金属リン酸塩の合成)
SnO2(和光純薬製)143.2g、Al23(和光純薬製αアルミナ)2.549g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)322.7gをビーカーに仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながらホットプレートで300℃に加熱した。加熱中粘度を調整する為に適宜イオン交換水を添加した。1時間加熱して得られた粘ちょうなペーストをアルミナ製ルツボに仕込み、電気炉中で1.5時間かけて650℃まで昇温し、2.5時間保持した後、1.5時間で室温まで冷却し、金属リン酸塩1を合成した。
【0031】
(ペレット成型)
得られた金属リン酸塩1をルツボから掻き出し、アルミナ製乳鉢で解砕した。得られた粉末を金型に充填し、一軸成型した後、CIP(冷間静水圧縮装置)で2t/cm2の圧力で成型し、ペレットを得た。
【0032】
(プロトン伝導度測定)
得られたペレットを白金箔電極で挟み、四端子伝導度測定装置を用いて、インピーダンススペクトルを周波数1MHz〜0.1Hz、電圧10mVの実験条件下で、温度を50℃から300℃まで変化させつつ測定した。該スペクトルから得られたプロトン伝導度の値を図1に示した。250℃におけるプロトン伝導度(Proton conductivity)は0.13Scm-1で、200℃におけるプロトン伝導度は0.11Scm-1であった。
【0033】
実施例2
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)143.2g、Ga23(和光純薬製99.99%)4.686g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)322.7gとした以外は実施例1と同じ方法で金属リン酸塩2を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃における伝導度は0.23Scm-1であった。
【0034】
実施例3
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)143.2g、Sc23(和光純薬製99.9%)3.448g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)322.7gとした以外は実施例1と同じ方法で金属リン酸塩3を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.17Scm-1であった。
【0035】
実施例4
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)7.159g、Yb23(和光純薬製)0.497g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)16.141gとし、さらにイオン交換水80gをビーカーに仕込む以外は実施例1と同じ方法で金属リン酸塩4を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.21Scm-1であった。
【0036】
実施例5
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)7.159g、Y23(和光純薬製)0.282g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)16.141gとし、さらにイオン交換水80gをビーカーに仕込む以外は実施例1と同じ方法で金属リン酸塩5を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.13Scm-1であった。
【0037】
実施例6
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)5.27g、Nb25(和光純薬製)1.99g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)15.56gとし、さらにイオン交換水80gをビーカーに仕込み、アルミナ製ルツボの代わりにアルミナ製角サヤを使用する以外は実施例1と同じ方法で金属リン酸塩6を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.18Scm-1、250℃におけるプロトン伝導度は0.22Scm-1であった。
【0038】
実施例7
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)6.78g、Nb25(和光純薬製)0.66gとした以外は実施例6と同じ方法で金属リン酸塩7を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.17Scm-1、250℃におけるプロトン伝導度は0.19Scm-1であった。
【0039】
実施例8
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)3.76g、Nb25(和光純薬製)3.32gとした以外は実施例6と同じ方法で金属リン酸塩8を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.19Scm-1、250℃におけるプロトン伝導度は0.17Scm-1であった。
【0040】
実施例9
実施例1で合成した金属リン酸塩1の粉末を乳鉢にて粉砕し、1,8−ビストリエトキシシリルオクタン、3−トリヒドロキシシリル−1−プロパンスルホン酸30−35%水溶液を混合させたものを少量加える。さらにポリテトラフルオロエチレンの粉末を少量加えて一塊になるまで乳鉢を用いてよく練りこみ、それを真空パックしローラーを用いて圧延して、フィルムを得ることができる。得られるフィルムはプロトンを伝導する性質を示す。
【0041】
比較例1
仕込み原料をSnO2(和光純薬製)150.7g、H3PO4(和光純薬製、85%の濃リン酸水溶液)322.7gとした以外は実施例1と同じ方法で金属リン酸塩9を合成し、ペレットを得て、プロトン伝導度を測定した。200℃におけるプロトン伝導度は0.056Scm-1であった。その結果を図1に示した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】上記実施例および比較例における金属リン酸塩1、6、7、8および9それぞれのプロトン伝導度の温度依存性を示す図。図においてTは絶対温度(K)である。

特許の図
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【出願日】 平成19年7月25日(2007.7.25)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之


【公開番号】 特開2008−53224(P2008−53224A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−193179(P2007−193179)