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【発明の名称】 色素増感太陽電池
【発明者】 【氏名】森 竜雄
【氏名】村山 正樹
【課題】入射光をより効率よく吸収(利用)して電気エネルギーに変換することが可能な色素増感太陽電池を提供すること。

【構成】本発明に係る色素増感太陽電池1は、第一増感色素24を有する第一アノード10と、上記第一増感色素とは異なる第二増感色素44を有する第二アノード30とが前後に離隔して配置された構成を有する。両アノード10,30の間にカソード50(典型的には網目電極)が配置されている。これらの電極10,30,50によって、電気的に並行に接続された二つのサブセル6,7が前後に積み重なった構成の太陽電池1が形成されている。これにより、第一アノード10を透過した光L2を第二アノード30に効率よく導入し、該光L2からさらにエネルギーを取り出すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレッツェル・セル型の色素増感太陽電池であって:
第一増感色素が保持された第一色素層を備えた透光性の第一アノード;
前記第一増感色素とは異なる第二増感色素が保持された第二色素層を備え、光の入射方向に対して前記第一アノードよりも後側に且つ該入射方向からみて前記第一色素層と前記第二色素層とが重なり合うように配置された第二アノード;
前記光の入射方向からみて前記第一アノードと前記第二アノードとの間に配置され、それらのアノードと電気的に接続された透光性のカソード;および、
前記第一アノード、前記第二アノードおよび前記カソードの間に充填された電解質;
を含む、色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記第一増感色素および前記第二増感色素のうち、一方はN3色素であり、他の一方はブラックダイである、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第一増感色素がN3色素であり、前記第二増感色素がブラックダイである、請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第一色素層および前記第二色素層の厚さがいずれも20μm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第一色素層と前記第二色素層との合計厚さが10〜40μmである、請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記カソードは導電性を有する網状部材である、請求項1から5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第二アノードは、前記光の入射方向に対して後側に光反射用の金属膜を備え、少なくとも該金属膜よりも前記入射方向側の部分は透光性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第一色素層は、平均粒径10〜40nmの酸化チタン粒子を焼成して成る多孔質層に前記第一増感色素を保持させたものであり、
前記第二色素層は、平均粒径100〜1000nmの酸化チタン粒子を焼成して成る多孔質層に前記第二増感色素を保持させたものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第一色素層は、平均粒径15〜25nmの酸化チタン粒子を焼成して成る比表面積60〜80m2/gの多孔質層に、該多孔質層1cm2当たり5×10-8mol以上の前記第一色素を保持させたものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は色素増感太陽電池に関し、詳しくは、複数の増感色素を効果的に利用して入射光を効率よく吸収することのできる色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
グレッツェル・セル型(湿式)の色素増感太陽電池(以下、単に「色素増感太陽電池」ということもある。)は、他の太陽電池(例えばシリコン系太陽電池)に比べて原材料の資源的制約が少ない、製造コストを低減し得る、理論変換効率ではシリコン系太陽電池を上回る、等の特長を有する。しかし、現実に得られる色素増感太陽電池の変換効率は単結晶シリコン系太陽電池等に比べて低く、さらなる高効率化が要望されている。色素増感太陽電池に関する従来技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平1−220380号公報
【特許文献2】特開2006−024574号公報
【特許文献3】特開2006−066215号公報
【0004】
図5を参照しつつ、従来の典型的な色素増感太陽電池の構成および作動を説明する。図5に示す色素増感太陽電池100は、大まかにいって、アノード110およびカソード150と、それらの間に充填された電解質160とから構成されている。アノード110は、ガラス基板112と、該ガラス基板の内側(カソード150に対向する側)表面に形成された透明導電層114とを備え、さらに該導電層上に形成された色素層120を備える。この色素層120は、ナノサイズの酸化チタン粒子を用いて形成された多孔質膜122に、ルテニウム錯体等の増感色素124が保持された構成を有する。カソード150は、ガラス基板152と、その内側(アノード110に対向する側)に順に形成された導電層154および白金膜156とを備える。アノード110とカソード150とは、負荷172を含む導電経路170によって電気的に接続されている。かかる構成の太陽電池100にアノード110側から光を照射すると、その入射光によって増感色素124が励起され、該色素から多孔質膜122を構成する酸化チタン(n型半導体)の伝導体に電子(e-)が注入される。その電子は、アノード110から導電経路(外部回路)170を経由してカソード150に至る。酸化チタンに電子を供与して酸化状態にある増感色素124は、電解質160に含まれるイオンから電子を受け取って中性状態に戻る。これにより上記イオンは電子を失って酸化状態となるが、カソード150から電子を受け取ることで元の酸化数に戻る。このようなサイクルが繰り返されることによって光エネルギーが電気エネルギー(電流)に変換される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記増感色素は各々特有の吸光特性(吸光スペクトル)を有し、当該吸光特性において吸光係数の高い波長の光はよく吸収する一方、吸光係数の低い波長の光はあまり吸収されない(利用効率が低い)。そこで、吸光特性の異なる複数の増感色素を用いれば、より広い波長域の光を吸収(利用)可能な色素増感太陽電池が構築され得るものと考えられる。しかし、従来の構成の太陽電池100において(図5参照)、増感色素124として単に複数の色素の混合物を多孔質酸化チタン層122に保持させることによっては、該電池の効率は必ずしも向上しない。これは、複数の色素が混在する状態では該色素間でエネルギー移動が生じるためと推察される。
【0006】
また、太陽光のように幅広い波長域を有する光を従来の構成の太陽電池100(図5参照)に照射すると、該電池のアノード110に具備される増感色素124が高い吸光係数を示す波長の光はよく吸収され、該増感色素124を励起してカソード150へと電子を送り出す(電気エネルギーを取り出す)ことができるが、当該増感色素124が低い吸光係数を示す波長の光は十分に吸収されることなく色素層120を透過してしまう。かかる透過光からさらに電気エネルギーを取り出すことができれば、より高い性能(短絡電流密度、変換効率等)が実現され得るものと考えられる。
【0007】
ところが、従来の太陽電池100におけるアノード110の構成を、増感色素124を有する色素層120の上に異種の増感色素を有する色素層を単純に積層した構成に変更すると、それら積層された色素層(積層体)全体の厚さが大きくなりすぎる場合がある。このため電子の再結合による消失が起こりやすくなり、十分な性能向上が実現されないか、あるいはむしろ性能が低下してしまう。かかる事象を回避するために上記積層体全体の厚さを従来の色素層120と同程度の厚さに制限すると、該積層体を構成する個々の色素層の厚さが小さくなってしまうため入射光を十分に利用(吸収)することができない。
【0008】
そこで本発明は、複数の増感色素を効果的に用いることにより、入射光をより効率よく吸収(利用)して電気エネルギーに変換することが可能な色素増感太陽電池を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、光の入射方向に対して前後に離隔して配置された複数のアノードを備え、互いに異なる増感色素を有する色素層をそれら複数のアノードに分けて配置した構成の色素増感型太陽電池によれば、各色素層に保持された増感色素を効果的に利用して入射光を効率よく吸収可能となることを見出して本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明に係る一つの色素増感太陽電池は、グレッツェル・セル型(湿式)の色素増感太陽電池であって、第一増感色素が保持された第一色素層を備えた第一アノードを含む。該第一アノードは透光性を示すもの(透光性アノード)であり得る。上記太陽電池は、また、第二増感色素が保持された第二色素層を備えた第二アノードを含む。上記第二増感色素は、典型的には、前記第一増感色素とは異なる色素である。この第二アノードは、光の入射方向に対して前記第一アノードよりも後側に配置されている。また、該第二アノードは、前記光の入射方向からみて前記第一色素層と前記第二色素層とが概ね重なり合うように配置されている。上記太陽電池は、また、前記光の入射方向からみて前記第一アノードと前記第二アノードとの間に配置されたカソードを含む。該カソードは透光性を示すもの(透光性カソード)であり得る。該カソードは、前記第一アノードおよび前記第二アノードと電気的に接続されている。上記太陽電池は、さらに、前記第一アノード、前記第二アノードおよび前記カソードの間に充填された電解質を含む。
【0011】
かかる構成の太陽電池では、上記第一アノードおよび上記第二のアノードの各々と前記カソードとの間に、光の入射方向に対して前後に積み重なり且つ互いに電気的に並列に接続された二つのサブセル(すなわち、上記第一アノードと上記カソードとを備え光の入射方向に対して前側に位置する第一サブセル、および、上記第二アノードと上記カソードとを備え光の入射方向に対して上記第一サブセルの後側に位置する第二サブセル)が構成されている。典型的には、上記カソードは上記二つのサブセルに共有されている。このように二つのサブセルが積み重なった(タンデムに配置された)構成とすることにより、第一色素層を透過した光(第一色素層で吸収されなかった光)を第二色素層へと効率よく導入し、該第二色素層において効率よく吸収することができる。すなわち、第一増感色素を有する第一色素層を透過した光を利用して第二増感色素を励起することにより、該透過光からさらにエネルギーを取り出すことができる。上記第二色素層は、上記第一色素層上に直接積層されるのではなく、上記第一色素層を有する第一アノードとは前後に間を隔てて配置された第二アノード上に形成されている。このため、各色素層に保持された増感色素を効率よく利用して、該色素の吸光特性に応じた波長域の光をより適切に吸収することができる。したがって、ここに開示される太陽電池によると、上記第二アノードを有しない構成の太陽電池に比べて、より良好なエネルギー変換効率が実現され得る。
【0012】
上記第一増感色素および上記第二増感色素は、色素増感太陽電池のアノードに用いられ得る増感色素として知られている種々の色素から任意に選択される二種類の色素であり得る。ここに開示される太陽電池の好ましい一つの態様では、前記第一増感色素および前記第二増感色素のうち一方がN3ダイであり、他の一方がブラックダイである。このN3ダイとブラックダイとの組み合わせは、互いの吸光特性(吸光スペクトル)を補い合うことで、より広い波長域の光を効率よく吸収することのできる増感色素の組み合わせの一例である。例えば、前記第一増感色素としてN3ダイを、前記第二増感色素としてブラックダイを好ましく採用することができる。
【0013】
ここに開示される太陽電池の好ましい一つの態様では、前記第一色素層および前記第二色素層の厚さがいずれも凡そ20μm以下(典型的には凡そ3μm〜20μm)である。上述したように、色素層の厚さを過剰に大きくすると、電子の再結合の寄与等によって出力特性(例えば短絡電流密度Jsc)が低下し得る。個々の色素層を上記厚さとすることにより、各色素層に保持された増感色素から生じた電子を効率よく利用する(例えば、外部回路に取り出す)ことができる。前記第一色素層と前記第二色素層との合計厚さは、例えば凡そ10〜40μmの範囲とすることが好ましい。該合計厚さが小さすぎると十分な変換効率が得られにくくなることがある。一方、該合計厚さが大きすぎると、少なくとも一方の色素層の厚さが大きくなりすぎるため、電子の再結合の寄与等によって出力特性(例えば短絡電流密度Jsc)が低下し得る。
【0014】
前記カソードとしては、透光性を確保するとともに電解質との接触効率を高めるという観点から、導電性を有する網状部材を好ましく用いることができる。例えば、導電性金属(プラチナ等)製のメッシュ、導電性繊維(プラチナ線、カーボンファイバー等)からなる織布または不織布の使用が好ましい。
【0015】
ここに開示される太陽電池の好ましい一つの態様では、前記第二アノードが、前記光の入射方向に対して後側(背面側)に、光反射用の金属膜(金属反射膜)を備える。該第二アノードのうち、少なくとも該金属膜よりも前記入射方向側(前側すなわち入射側)の部分は透光性を有することが好ましい。かかる構成によると、いったん第二色素層を通り抜けた(吸収されなかった)光を該金属膜で反射させて再び第二色素層に進入させることにより、該光が第二増感色素を励起する(吸収される)機会を増すことができる。このことによって、入射光をより効率よく吸収し、電気エネルギーに変換することができる。
【0016】
ここに開示される太陽電池の他の一つの好ましい態様では、前記第一色素層が、平均粒径10〜40nm程度の酸化チタン粒子を焼成して成る多孔質層に前記第一増感色素を保持させたものである。また、前記第二色素層が、平均粒径100〜1000nm程度の酸化チタン粒子を焼成して成る多孔質層に前記第二増感色素を保持させたものである。かかる構成によると、第一色素層については、平均粒径10〜40nm程度の酸化チタン粒子を用いることにより、透明性が高く、且つ入射光の散乱(反射成分、すなわちセル外に出て行ってしまう光の増加を招く。)が少ない多孔質層が形成され得る。一方、第二色素層については、平均粒径100〜1000nm程度の(相対的に大きな)酸化チタン粒子を用いて光の散乱を起こさせることにより、短絡電流密度の向上(ひいては変換効率の向上)を図ることができる。したがって、第一色素層および第二色素層にそれぞれ上記平均粒径の酸化チタン粒子を用いることにより、入射光をより効率よく吸収(利用)して電気エネルギーに変換することができる。
【0017】
前記第一色素層は、平均粒径が凡そ15〜25nmの酸化チタン粒子を焼成して成る比表面積凡そ60〜80m2/gの多孔質層に第一増感色素を保持させたものであり得る。かかる多孔質層に、該多孔質層の面積1cm2当たり凡そ5×10-8mol以上(典型的には、凡そ5×10-8mol/cm2〜凡そ30×10-8mol/cm2)の第一増感色素が保持されたものであり得る。このような構成の第一色素層は、第一色素層の有する第一増感色素によって入射光を吸収する性能と、該第一色素層において吸収されなかった光を透過させる(第二色素層に導入する)性能とのバランスに優れるので好ましい。
【0018】
ここに開示される他の一つの色素増感太陽電池は、グレッツェル・セル型の色素増感太陽電池であって、増感色素が保持された色素層を有する複数のアノードを含む。典型的には、該複数のアノードの各色素層に保持された前記増感色素は互いに異なる。上記太陽電池は、また、前記複数のアノードと電気的に接続されたカソードを含む。さらに、前記複数のアノードおよび前記カソードの間に充填された電解質を含む。ここで、前記複数のアノードは、光の入射方向に対して前後に間を隔てて配置されている。また、それら複数のアノードは、上記入射方向からみて各アノードの有する前記色素層が重なり合うように配置されている。そして、前記複数のアノードおよび前記カソードのうち、少なくとも前記光の入射方向に対して最も後側に配置されるアノードよりも入射側(前側)に配置されるアノードおよびカソードはいずれも透光性を有する。
【0019】
かかる構成の太陽電池では、前記複数のアノードの各々と前記カソードとの間に、光の入射方向に対して前後に積み重なり且つ互いに電気的に並列に接続された複数のサブセルが形成されている。上記複数のサブセルは、上記カソードを共有するものであり得る。このように複数のサブセルが積み重なった(タンデムに配置された)構成とすることにより、上記複数のアノードのうち相対的に前側(入射側)に配置されたアノードの色素層を透過した光(該色素層で吸収されなかった光)を、より後側に配置された他のアノードの色素層に効率よく導入して、該色素層において吸収することができる。すなわち、前側アノードの色素層を透過した光を利用して後側アノードの有する増感色素を励起することにより、該透過光からさらにエネルギーを取り出すことができる。上記太陽電池の構成では、互いに異なる増感色素を保持する複数の色素層が、直接積層されるのではなく、前後に間を隔てて配置された複数のアノードの各々に設けられている。このため、各色素層に保持された増感色素を効率よく利用して、該色素の吸光特性に応じた波長域の光をより適切に吸収することができる。したがって、ここに開示される太陽電池によると、上記後側アノードを有しない構成の太陽電池に比べて、より良好なエネルギー変換効率が実現され得る。
【0020】
好ましい一つの態様では、前記色素層の厚さがいずれも凡そ20μm以下(典型的には凡そ3μm〜20μm)である。これにより、各色素層に保持された増感色素から生じた電子を効率よく利用することができる。他の好ましい一つの態様では、前記複数のアノードが有する色素層の合計厚さが凡そ10μm以上(例えば凡そ10μm〜100μm)である。上記合計厚さが厚すぎると、得られるエネルギーの割に原材料費および製造コストが嵩むこととなり得る。
さらに他の一つの好ましい態様では、前記カソードは透光性を有し、前記光の入射方向からみて該カソードの前側および後側にはそれぞれ少なくとも一つの前記アノードが配置されている。前記複数のアノードのうち光の入射方向からみて最も後側に位置するアノードは、前記光の入射方向に対して後側(背面側)に光反射用の金属膜を備えることができる。該アノードのうち、少なくとも該金属膜よりも前記入射方向側(前側)の部分は透光性を有することが好ましい。
この明細書により開示される発明には、さらに以下のものが含まれる。
【0021】
(1)グレッツェル・セル型の色素増感太陽電池素子(セル)であって:
増感色素が保持された色素層を有する複数のアノード、ここで該複数のアノードの各色素層に保持された前記増感色素は互いに異なる;
カソード;および、
前記複数のアノードおよび前記カソードの間に充填された電解質;
を含み、
前記複数のアノードは、光の入射方向に対して前後に間を隔てて、且つ該入射方向からみて各アノードの有する前記色素層が重なり合うように配置されており、
前記複数のアノードおよび前記カソードのうち、少なくとも前記入射方向に対して最も後側に配置されるアノードよりも入射側に配置されるアノードまたはカソードはいずれも透光性を有する、色素増感太陽電池素子。
該太陽電池素子は、典型的には、前記複数のアノードと前記カソードとが電気的に接続されることで、該複数のアノードの各々と前記カソードとの間に、光の入射方向に対して前後に積み重なり(タンデムに配置され)且つ互いに電気的に並列に接続された複数のサブセルを構成することができる。前記複数のサブセルは、前記カソードを共有するものであり得る。ここに開示される太陽電子素子は、前記複数のアノードとカソードとがこのように接続された状態で好ましく使用され得る。
【0022】
(2)前記カソードは透光性を有し、前記光の入射方向からみて該カソードの前側および後側にはそれぞれ少なくとも一つの前記アノードが配置されている、上記(1)に記載の太陽電池素子。
(3)前記複数のアノードのうち光の入射方向からみて最も後側に位置するアノードは前記光の入射方向に対して後側に光反射用の金属膜を備え、該アノードのうち少なくとも該金属膜よりも前記入射方向側の部分は透光性を有する、上記(1)または(2)に記載の太陽電池素子。
【0023】
(4)グレッツェル・セル型の色素増感太陽電池素子(セル)であって:
第一増感色素が保持された第一色素層を備えた透光性の第一アノード;
前記第一増感色素とは異なる第二増感色素が保持された第二色素層を備え、光の入射方向に対して前記第一アノードよりも後側に、且つ該入射方向からみて前記第一色素層と前記第二色素層とが重なり合うように配置された第二アノード;
前記光の入射方向からみて前記第一アノードと前記第二アノードとの間に配置された透光性のカソード;および、
前記第一アノード、前記第二アノードおよび前記カソードの間に充填された電解質;
を含む、色素増感太陽電池素子。
該太陽電池素子は、典型的には、前記第一アノードおよび前記第二のアノードと前記カソードとが電気的に接続されることで、それら二つのアノードの各々と前記カソードとの間に、光の入射方向に対して前後に積み重なり(タンデムに配置され)且つ互いに電気的に並列に接続された二つのサブセル(すなわち、前記第一アノードと前記カソードとを備え光の入射方向に対して前側に位置する第一サブセル、および、前記第二アノードと前記カソードとを備え光の入射方向に対して前記第一サブセルの後側に位置する第二サブセル)を構成することができる。前記二つのサブセルは、前記カソードを共有するものであり得る。ここに開示される太陽電子素子は、前記第一アノードおよび前記第二アノードと前記カソードとがこのように接続された状態で好ましく使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0025】
ここに開示される色素増感太陽電池の一つの典型的な構成例を図1に模式的に示す。
図1に示す色素増感太陽電池1は、大まかにいって、光の入射方向(図1では左から右へ向かう方向)に対して前側(入射側)に配置された第一アノード10と、該入射方向に対して後側(背面側)に配置された第二アノード30と、前記二つのアノード10,30の間に配置されたカソード50と、それら電極10,30,50の間に充填された電解質60とから構成されている。すなわち、前面および背面に配置された二つのアノード10,30の間に、カソード50および電解質60を挟み込んだ構成となっている。
【0026】
第一アノード10は、透明基板12と、該基板のセル内側(光の入射方向に対して背面側)の表面に形成された透明導電層14とを備える。第一アノード10は、さらに、透明導電層14上に形成された第一色素層20を備える。この第一色素層20は、酸化物半導体(典型的にはn型半導体、例えば酸化チタン)から構成された多孔質層22と、該多孔質層に保持された第一増感色素24とを有する。
また、第二アノード30は、透明基板32と、該基板のセル内側(光の入射方向に対して前面側)の表面に形成された透明導電層34とを備える。第二アノード30は、さらに、透明導電層34上に形成された第二色素層40を備える。この第二色素層40は、酸化物半導体(典型的にはn型半導体、例えば酸化チタン)から構成された多孔質層42と、該多孔質層に保持された第二増感色素44とを有する。ここで、第一増感色素24と第二増感色素44とは互いに異なる色素である。
【0027】
第一アノード10と第二アノード30とは、光の入射方向からみて、第一色素層20が設けられた領域と第二色素層40が設けられた領域とが重なり合うように(ただし、前後に離隔して)配置されている。例えば、第一色素層20の面積のうち凡そ70%以上(より好ましくは凡そ90%以上、典型的には略100%)が、第二色素層40の設けられた領域と重なっていることが好ましい。あるいは、第二色素層40の面積のうち凡そ70%以上(より好ましくは凡そ90%以上、典型的には略100%)が、第一色素層20の設けられた領域と重なっていることが好ましい。かかる構成とすることにより、第一色素層20を透過した光を第二色素層40へと効率よく導入することができる。なお、図1に示される色素増感太陽電池1は、第二アノード30の後側(図1に示す例では透明基板32の背面)に設けられた金属反射膜(光反射用の金属膜)36をさらに備える構成であってもよい。この金属反射膜36は、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)等の金属またはこれらの金属のいずれかを主成分とする合金であり得る。金属反射膜36の厚さは、例えば凡そ0.2〜20μm程度であり得る。このような金属反射膜36は、例えば、一般的な真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレート法、電解メッキ法等を適用して作製することができる。
【0028】
カソード50は、導電性金属から構成された網状(網目状)の部材であって、第一アノード10と第二アノード30との間に充填された電解質60に浸漬されている。電解質60としては、酸化還元可能なイオン(例えばI-/I3-レドックス対)が適当な溶媒に溶解されたもの等が用いられる。
カソード50は、負荷72を含む導電経路(外部回路)70を介して、第一アノード10および第二アノード30の各々と電気的に接続されている。このことによって、第一アノード10とカソード50の間に第一サブセル6が形成され、第二アノード30とカソード50の間に第二サブセル7が形成されている。第一サブセル6と第二サブセル7とは、光の入射方向に対して前後に積み重なって(タンデムに)配置されている。第一サブセル6と第二サブセル7とはカソード50を共有している。また、カソード50は網状であるので電解質(典型的には液状)60はカソード50の網目を通り抜けて第一サブセル6と第二サブセル7との間を行き来し得る。したがって、図2に示す構成の太陽電池1では、電解質60は第一サブセル6および第二サブセル7に共有されている。なお、第一サブセル内の電解質と第二サブセル内の電解質とが分離(例えばカソードによって分離)されていてもよい。
【0029】
かかる構成の色素増感太陽電池1に第一アノード10側(図1の左側)から光L1を照射すると、その光L1によって第一増感色素24が励起され、該色素から多孔質層22を構成する酸化物半導体に電子(e-)が注入される。その電子は、第一アノード10から導電経路(外部回路)70を経由してカソード50に至る。上記酸化物半導体に電子を与えて酸化状態となった第一増感色素24は、電解質60に含まれる溶質イオン(例えばI-)から電子を受け取って中性状態に戻る。これにより上記イオンは電子を失って酸化状態(例えばI3-)となる。該酸化状態のイオンは、導電経路70を流れてきた電子をカソード50から受け取って元の酸化数の状態(例えばI-)に戻る。このようなサイクルの繰り返しによって、該電池に照射された光L1から電気エネルギーを取り出すことができる。かかるサイクルによるエネルギー変換は、太陽電池1のうち、光の入射方向に対して前側に位置する第一サブセル6によって行われる。
【0030】
一方、入射光L1のうち一部は第一アノード10を透過し(光L2)、さらにカソード50を透過して第二色素層40に入射する。その光L2によって第二増感色素44が励起され、該色素から多孔質層42を構成する酸化物半導体に電子(e-)が注入される。その後の過程は第一アノード10の場合と同様である。すなわち、酸化状態となった第二増感色素44は、電解質60の溶質から電子を受け取って中性状態に戻る。第二増感色素24に電子を与えて酸化状態となった溶質は、カソード50から電子を受け取って元の酸化数に戻る。かかるサイクルによるエネルギー変換は、太陽電池1のうち、光の入射方向に対して後側(背面側)に位置する第二サブセル7によって行われる。該サイクルの繰り返しによって、第一アノード10(第一サブセル6)では利用できなかった光L2から、第二サブセル7においてさらに電気エネルギーを取り出すことができる。
【0031】
なお、金属反射膜36を有する態様の電池1では、第二アノード30をも透過した光L3の少なくとも一部を金属反射膜36によって反射させ、その反射された光L4を再び第二色素層40へと戻すことができる。上記光L4によって第二増感色素44を励起することにより、最初に第一アノード10および第二アノード30に入射したときには利用できなかった(透過した)光L3から、さらに電気エネルギーを取り出すことができる。
【0032】
このような構造を有する太陽電池1は、その機能(光電変換機能)を適切に発揮し得る限り、従来公知の種々の材料を用いて構築することができる。
例えば、透明基板12,32としては、透光性を有し、適当な物理的強度および電解質に対する化学的安定性を具備するものを適宜選択して使用することができる。例えば、従来の太陽電池(典型的には色素増感太陽電池)の透明電極に利用され得るものとして知られている各種基板を特に限定なく用いることができる。好ましい一つの態様では、透明基板12,32としていずれもガラス基板を用いる。第一アノード10に用いられる透明基板12と、第二アノード30に用いられる透明基板32とは、同じ(同種の)透明基板であってもよく異なる透明基板であってもよい。
なお、本明細書中において「透光性」とは、特記しない限り、太陽光またはソーラーシミュレータ等により得られる模擬太陽光(典型的には、AM(エアマス)1.5,光量100mW/cm2の光)の少なくとも一部(強度の一部であってもよく、波長の一部領域であってもよく、これらの両方であってもよい。)を透過させる性質を指す。
【0033】
透明基板12の表面に設けられた透明導電層14および透明基板32の表面に設けられた透明導電層34は、従来の太陽電池のアノードに備えられる透明導電層と同様のものであり得る。透明導電層14の好適例としては、インジウム−スズ酸化物(ITO)膜、フッ素ドープされた酸化スズ(以下、これを「F:SnO2」と表記することもある。)膜等が挙げられる。第一アノード10の備える透明導電層14と第二アノード30の備える透明導電層34とは、同じ(同種の)材質からなるものであっても異なる材質からなるものであってもよい。なお、このような透明導電層がガラス基板上に形成された導電性ガラス基板が市販されているので、これを利用して太陽電池を構築してもよい。
【0034】
好ましい一つの態様では、第一色素層20を構成する多孔質層22および第二色素層40を構成する多孔質層42が、酸化物半導体(典型的にはn型半導体)の微粒子を用いて形成された層である。例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化タングステン(WO3)等の酸化物であり得る。これらの酸化物相互の複合酸化物であってもよく、これらの酸化物と他の酸化物との複合酸化物であってもよい。該微粒子の平均粒径は、例えば凡そ10nm〜1000nm程度の範囲であり得る。好ましい一つの態様では、多孔質層22が、酸化チタン(典型的には、アナターゼ型の酸化チタン)の微粒子を用いて形成された多孔質層である。例えば、平均粒径が凡そ10nm〜40nm程度(より好ましくは15〜25nm程度、例えば20nm程度)の酸化チタン微粒子を用いることができる。かかる平均粒径の酸化チタン微粒子を用いて第一色素層を作製することが好ましい。また、例えば、平均粒径が凡そ100nm〜1000nm程度(より好ましくは200〜600nm程度、例えば400nm程度)の酸化チタン微粒子を用いることができる。かかる平均粒径の酸化チタン微粒子を用いて第二色素層を作製することが好ましい。
【0035】
かかる酸化物半導体微粒子を用いて透明導電層14上に多孔質層22を形成する方法としては、色素増感太陽電池の分野において従来公知の各種方法を適宜採用することができる。例えば、該粒子を適当な媒体に分散させた液状組成物を用意し、該組成物をスキージ法、ドクターブレード法、スピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式プロセスにより透明導電層14上に塗布し、必要に応じて乾燥させた後に、適当な温度(酸化チタン微粒子の場合には凡そ400〜500℃、典型的には450℃程度を好ましく採用し得る。)に加熱する(焼成する)方法を好ましく採用することができる。
【0036】
第一増感色素24および第二増感色素44としては、色素増感太陽電池の電極(典型的にはアノード)に用いられて光増感機能を発揮し得るものとして知られている種々の色素を適宜選択することができる。かかる色素の例として、ルテニウムポリピリジル錯体(N3色素、ブラックダイ等)、ルテニウムフェナントロリン錯体、キノリン系ルテニウム錯体等のルテニウム金属錯体が挙げられる。カルボン酸基、無水カルボン酸基、スルホン酸基、アルコキシ基等の、該錯体と酸化物半導体(典型的にはTiO2)との間に化学結合を形成し得る官能基を分子中に備える色素の使用が好ましい。
【0037】
第一増感色素(光の入射方向に対して最も前面側に配置される色素層に含まれる色素)としては、太陽光をよく吸収し得る吸光スペクトルを示す色素が好ましく採用され得る。一方、第二増感色素としては、(1)太陽光をよく吸収し得る吸光スペクトルを示すこと、および/または、(2)第一色素層および電解質を透過した光(より一般化すれば、入射光のうち第二色素層に到達する光)をよく吸収し得る吸光スペクトルを示すこと、の少なくとも一方を満たす色素が好ましく採用され得る。かかる観点から好ましく採用し得る第一増感色素と第二増感色素との組み合わせの一例として、N3色素とブラックダイとの組み合わせが挙げられる。N3色素を第一増感色素としブラックダイを第二増感色素としてもよく、ブラックダイを第一増感色素としN3色素を第二増感色素としてもよい。第一増感色素としてN3色素、第二増感色素としてブラックダイを用いた太陽電池によると、より好ましい結果が実現され得る。
【0038】
上記多孔質層(典型的には、多孔質酸化チタン層)に増感色素を保持させる手法としては、多孔質酸化チタン層に増感色素を保持した単一のアノードを備える従来の色素増感太陽電池において該多孔質酸化チタン層に増感色素を保持させる場合と同様の各種方法を適宜採用することができる。例えば、増感色素を適当な溶媒に溶解させた溶液を上記多孔質層に含浸させること、および、その含浸された増感色素溶液を乾燥させる(溶媒を除去する)ことを含む手法を採用し得る。上述のように多孔質層の形成過程で酸化物半導体微粒子を加熱する場合には、その加熱後に多孔質層の温度が適度に(例えば150〜250℃程度まで)低下した段階で、該多孔質層を上記増感色素溶液に浸漬するとよい。このことによって該多孔質層の各部に上記増感色素溶液をよく行き渡らせることができ、より多くの増感色素が保持された色素層が形成され得る。かかる手法は、第一色素層の作製にも第二色素層の作製にも好ましく適用可能である。
【0039】
好ましい一つの態様では、第一色素層および第二色素層の少なくとも一方(好ましくは両方)が、色素層(典型的には、多孔質酸化チタン層に増感色素が保持された構成の色素層)の面積1cm2当たり凡そ5×10-8mol以上(例えば凡そ5×10-8mol/cm2〜30×10-8mol/cm2)の増感色素が保持された色素層である。該色素層の面積1cm2当たり凡そ10×10-8mol/cm2以上(例えば凡そ10×10-8mol/cm2〜30×10-8mol/cm2)の増感色素が保持された色素層がより好ましい。少なくとも第一色素層の面積1cm2当たりの増感色素保持量が上記範囲にあることが好ましい。
また、色素層(典型的には、多孔質酸化チタン層に増感色素が保持された構成の色素層)の体積1cm3当たりに保持されている増感色素の量が凡そ3×10-5mol/cm3以上(例えば凡そ3×10-5mol/cm3〜50×10-5mol/cm3)である色素層が好ましく、10×10-5mol/cm3以上(例えば凡そ10×10-5mol/cm3〜50×10-5mol/cm3、典型的には凡そ10×10-5mol/cm3〜30×10-5mol/cm3)である色素層がより好ましい。少なくとも第一色素層の体積1cm3当たりの増感色素保持量が上記範囲にあることが好ましい。
【0040】
一般に、色素層の単位面積当たりに保持される増感色素の量が多くなれば、該色素層に入射した光によって励起される増感色素分子が多くなるため、より多くの電流を該色素層から取り出すことができる。増感色素の量を多くするには、多孔質層の比表面積を大きくすることが有効である。したがって、多孔質層の比表面積が同程度であれば、多孔質層の厚さが大きくなるにつれて、該多孔質層に保持させることのできる増感色素の保持量は増加する傾向にある。しかし、上述のように色素層の厚さを過剰に大きくすると、増感色素から取り出された電子が再結合により消失してしまいうため外部回路に取り出される電流密度が低下し得る。このため、他の条件を同等にして色素層の厚さと該色素層をアノード上に有するセルの短絡電流密度(Jsc)との関係を調べると、一般に、(a)色素層の厚さが比較的小さい間は該多孔質層の厚さが増加するとともに短絡電流密度の値が上昇し、(b)色素層の厚さがより大きくなると短絡電流密度の値の上昇が鈍り、(c)色素層の厚さがさらに大きくなると該色素層の厚さが増加しても短絡電流密度の値は概ね同程度となり、(d)色素層の厚さがなお大きくなると該色素層の厚さが増加するにつれて短絡電流密度が減少する、という傾向がみられる。
【0041】
したがって、第一色素層および第二色素層の厚さとしては、色素層の厚さと短絡電流密度とが上記(a),(b)または(c)の関係にある程度の厚さとすることが好ましい。例えば、第一色素層および第二色素層の厚さをいずれも凡そ25μm以下(典型的には凡そ3μm〜25μm、より好ましくは3μm〜20μm、例えば5μm〜20μm)とすることが好ましい。特に、光の入射方向に対して第二色素層よりも前側に配置される第一色素層の厚さは、色素層の厚さと短絡電流密度とが上記(a)または(b)の関係にある程度の厚さとすることが好ましい。例えば、該第一色素層の厚さを凡そ20μm以下(典型的には3μm〜20μm、より好ましくは凡そ3μm〜15μm、例えば5μm〜15μm)とすることが好ましい。
なお、前記第一色素層と前記第二色素層との合計厚さは、例えば凡そ10〜40μmの範囲とすることができる。該合計厚さが凡そ15〜30μmの範囲であってもよい。
【0042】
ここに開示される色素増感電池を構成するカソードは、透光性および導電性を提供し得るものであればよく、特に限定されない。例えば、透光性および導電性を確保するとともに電解質との接触効率を高める(内部抵抗を低減する)という観点から、導電性を有する網状部材を好ましく用いることができる。例えば、導電性金属(プラチナ(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等)製のメッシュ、導電性繊維(プラチナ線、カーボンファイバー等)からなる織布または不織布等の使用が好ましい。また、カーボンファイバー、グラスファイバー、合成樹脂繊維等からなる織布または不織布の表面に、スパッタリング、メッキ等の手法により導電性金属(プラチナ等)を薄く付着させた部材を用いることもできる。
カソードの厚さは特に限定されないが、透光性および太陽電池全体の体格(厚さ)を考慮すると、該カソードの厚さを過剰に大きくすることは好ましくない。通常は、該カソードの厚さを凡そ5μm〜1000μm程度(例えば凡そ30μm〜300μm程度)とすることが適当である。光の入射方向(典型的には、カソードの厚み方向)からみて、カソード全体の面積に対して、該カソードを貫通する孔の開口面積の割合が少なくとも凡そ25%以上(より好ましくは40%以上)であることが好ましい。
【0043】
電解質としては、色素増感太陽電池の電解質に利用され得るものとして知られている種々の電解質を適宜選択して用いることができる。例えば、溶質としてのヨウ素系(I-/I3-)、臭素系(Br-/Br3-)等の酸化還元対(レドックスカップル)が適当な溶媒に溶解された、該酸化還元対を含有する一般的なレドックス系の電解質を好ましく採用し得る。上記溶媒としては、ニトリル系(例えばアセトニトリル)、カーボネート系(例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)等の有機溶媒またはこれらの混合溶媒を好ましく用いることができる。
【0044】
なお、以上では主として図1および図2に模式的に示される構成の太陽電池、すなわち互いに異なる増感色素を有する二つのアノード(第一アノードおよび第二アノード)が透光性のカソードの前後に配置した構成の色素増感太陽電池について説明したが、光の入射方向に対して前後に離隔して配置された複数のアノードを備え、互いに異なる増感色素を有する色素層をそれら複数のアノードに分けて配置するという本発明の思想は他の態様でも実現され得る。
【0045】
例えば、図1に示す構成では、第一アノード、第二アノードおよびカソードが、光の入射側から順に「(入射側)第一アノード/カソード/第二アノード(背面側)」のように配置されているが、例えば、これらの電極の配置を「(入射側)第一アノード/第二アノード/カソード(背面側)」としてもよい。ここで、第一アノードと第二アノードとはそれぞれ互いに異なる増感色素が保持された第一色素層および第二色素層を有し、光の入射方向に対して前後に離隔して配置されている。また、上記カソードは上記第一アノードおよび上記第二アノードと電気的に接続されている。このことによって、上記第一アノードと上記カソードとの間に第一サブセルが、また上記第二アノードと上記カソードとの間に第二サブセルが構成されている。これら第一サブセルと第二サブセルとは、上記カソードを共有して電気的に並列に接続されており、かつ光の入射方向に対して前後に積み重なって配置されている。なお、上記第一サブセルのうち上記第二アノードよりも後側の部分は上記第二サブセルと重複している。このような構成の色素増感太陽電池では、カソードとして、表面に透明導電膜(ITO等)を有する導電性ガラス基板上に白金膜が設けられた構成のカソード等を好ましく用いることができる。また、該太陽電池を構成する第二アノードは、第一アノードとカソードとの間で電解質を介しての電荷移動を確保するために、電解質の流通が可能な一または二以上の貫通孔を有するものであり得る。上記第二アノードの色素層は、該第二アノードを構成する透明基板の背面側(カソード側)に設けられていてもよく、前面側(第一カソード側すなわち入射側)に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。通常は、少なくとも背面側(カソード側)に色素層を有する構成の第二アノードとすることが好ましい。
【0046】
さらに他の態様として、互いに異なる増感色素を有し前後に離隔して配置された3以上のアノード(第一アノード、第二アノード、第三アノード・・・)を備える構成としてもよい。例えば、これら複数のアノードとカソードとが、光の入射側から順に「(入射側)第一アノード/第二アノード/第三アノード/カソード(背面側)」のように配置された構成、あるいは「(入射側)第一アノード/第二アノード/カソード/第三アノード(背面側)」のように配置された構成、等とすることができる。
【0047】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0048】
<例1:N3増感アノードとBD増感アノードとを備えるセル>
[N3増感アノード(A)の作製]
導電層としてのフッ素ドープ酸化スズ(F:SnO2)膜を表面に有する導電性ガラス基板(幅10mm、長さ25mm、厚さ1.1mm)を用意した。上記ガラス基板の導電層上に、直径20nmのアナターゼ型酸化チタン粒子(触媒化成工業株式会社製品、商品名「PST−18NR」を使用した。)を含むペースト状組成物を、5mm×5mmの正方形状の範囲に塗布した。該組成物が塗布された基板を乾燥させた後、大気雰囲気下にて室温から450℃まで30分かけて昇温し、同温度に30分間保持してTiO2膜を焼成した。その後、該基板を200℃まで自然放冷させ、ここで上記基板を増感色素としてのN3色素(Ru(4,4'-dicarboxy-2,2'bipyridine)2(NCS)2)のエタノール溶液に浸漬してTiO2膜にN3色素を吸着させた。このようにして、導電性ガラス基板上の5mm×5mmの範囲にN3色素吸着TiO2膜(色素層)が形成されたN3増感アノード(A)を得た。上記N3色素吸着TiO2膜の厚さは6μmであり、比表面積は72m2/gであった。また、単位面積あたりのN3色素吸着量は8.8×10-8mol/cm2であった。
【0049】
[BD増感アノード(a)の作製]
増感色素としてN3色素に代えてブラックダイ(BD)を吸着させた点(該吸着は、BDテトラブチルアンモニウム塩([Ru(4,4’,4”-tricarboxy-2,2’:6,2”-terpyridine)(NCS)3]3-[(C4H9)4N]+3)のエタノール溶液を用いて行った。)、および厚さ約10μmのTiO2膜が形成されるようにペースト状組成物の塗布厚を調節した点以外は上記N3増感アノード(A)の作製と同様にして、導電性ガラス基板上に厚さ11μmのBD吸着TiO2膜(色素層)が5mm×5mmの範囲に形成されたBD増感アノード(a)を得た。上記BD吸着TiO2膜の比表面積は、上記N3増感アノード(A)のN3色素吸着TiO2膜と同程度であった。また、単位面積あたりのBD吸着量は12.0×10-8mol/cm2であった。
【0050】
[セルの構築]
上記N3増感アノード(A)を第一アノード(光の入射方向に対して前面側に配置されるアノード)に用い、上記BD増感アノード(a)を第二アノード(上記入射方向に対して背面側に配置されるアノード)に用いて、図2に模式的に示す構成のセルを構築した。なお、カソードとしては、厚さ70μmのプラチナメッシュ(株式会社高純度化学研究所製品、プラチナ線を織ってなる100メッシュのPt金網。正方形状の網目が約200μmのピッチで縦横に連続して形成されている。)を使用した。このプラチナメッシュの厚み方向からAM1.5,光量100mW/cm2の模擬太陽光を照射した場合における該メッシュの透光率は50%程度である。
【0051】
図2に示すように、カソード(上記プラチナメッシュ)50の両側にスペーサ62,64を挟んで、第一アノード(N3増感アノード(A))10および第二アノード(BD増感アノード(a))30を配置した。第一アノード10と第二アノード30とは、それぞれ色素層20,40を内側(向かい合わせ)とし、また光の入射方向(セルの厚み方向)からみて色素層20の位置と色素層40の位置とが一致する(重なり合う)ように配置した。スペーサ62,64としては、厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレンフィルムに色素層20,40の大きさ(平面形状)に対応する孔を形成したものを使用した。
そして、両アノード10,30間のスペースに電解液60を注入した。この電解液60としては、0.1Mのヨウ化リチウム(LiI)、0.05Mのヨウ素(I2)、0.5Mの4−tert−ブチルピリジンおよび0.5Mのテトラブチルアンモニウムヨージド((C494NI)を含むアセトニトリル溶液を使用した。このようにして、全体の厚さが約2.37mmのセル1を構築した。このセル1は、第一アノード10とカソード50の間に形成された第一サブセル6と、第二アノード30とカソード50の間に形成された第二サブセル7とが、光の入射方向に対して前後に積み重なって(タンデムに)配置された構成を有する。カソード50および電解質60は、第一サブセル6と第二サブセル7とに共有されている。
【0052】
[出力特性の評価]
上記で得られたセル1の第一アノード10および第二アノード30をカソード50と電気的に接続することにより、第一サブセル6と第二サブセル7とを電気的に並列に接続した(図1参照)。そして、第一アノード10側(図2の左側)からソーラーシミュレータを用いて(ウシオ電機株式会社製品、機種名「ModuleX」を使用した。)AM1.5,光量100mW/cm2の模擬太陽光を照射し、ソースメータ(ケースレー社製品、機種名「Model 2400」を使用した。)により電流−電圧特性を測定した。得られた電流−電圧曲線から、セルの短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)およびエネルギー変換効率(η)を算出した。その結果、本例に係るセルの短絡電流密度(Jsc)は11.5mA/cm2であり、開放電圧(Voc)は0.70V、フィルファクター(FF)は0.49、エネルギー変換効率(η)は4.0%であった。
【0053】
<例2:N3増感アノードとBD増感アノードとを備えるセル>
上記例1に係るN3増感アノード(A)の作製と同様の手順により、導電性ガラス基板上に厚さ6μmのN3色素吸着TiO2膜(色素層)が5mm×5mmの範囲に形成されたN3増感アノード(B)を得た。また、厚さ約10μmのTiO2膜が形成されるようにペースト状組成物の塗布厚を調節した点以外は上記例1に係るBD増感アノード(a)の作製と同様にして、導電性ガラス基板上に厚さ10μmのBD吸着TiO2膜(色素層)が5mm×5mmの範囲に形成されたBD増感アノード(b)を得た。
上記N3増感アノード(B)を第一アノード(前面側)に用い、上記BD増感アノード(b)を第二アノード(背面側)に用いた点以外は例1と同様にしてセルを構築し、その出力特性を評価した。その結果、本例に係るセルの短絡電流密度(Jsc)は7.3mA/cm2であり、変換効率(η)は3.9%であった。また、同セルにつき、第二アノードとカソードとを接続する導電経路を遮断して第一アノード(第一サブセル)のみによる出力特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc)4.6mA/cm2、変換効率(η)3.1%であった。一方、第一アノードとカソードとを接続する導電経路を遮断して第二アノード(第二サブセル)のみによる出力特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc)2.2mA/cm2、変換効率(η)0.9%であった。
【0054】
ここで、上記N3増感アノード(A)の作製と同様の手法によってTiO2膜にN3色素を吸着させる場合につき、該TiO2膜の厚さとN3色素の吸着量との関係を検討した結果を説明する。上記検討は、例1で使用したものと同じTiO2粒子を用いた場合および該TiO2粒子とは性状の異なるTiO2粒子を用いた場合について行った。
【0055】
すなわち、例1で使用したものと同じ酸化チタン粒子(商品名「PST−18NR」)を使用して、上記N3増感アノード(A)の作製と同様の手法により、導電性ガラス基板上にN3色素吸着TiO2膜(色素層)を有する複数のサンプルを作製した。このとき、上記ペースト状組成物の塗布量を調節することにより、各サンプルの有する上記色素層の厚さを凡そ3〜15μmの範囲で異ならせた。これらPST−18NRを用いて形成された色素層の比表面積は、いずれも72m2/g程度であった。
また、直径30nmの酸化チタン粒子(Degussa社製品、商品名「AWROXIDE(商標)TiO2 P25」を使用した。以下、これを「P25」と標記することもある。)を含むペースト状組成物を使用して、上記N3増感アノード(A)の作製と同様の手法により、導電性ガラス基板上にN3色素吸着TiO2膜(色素層)を有する複数のサンプルを作製した。このとき、上記ペースト状組成物の塗布量を調節することにより、各サンプルの有する上記色素層の厚さを凡そ6〜20μmの範囲で異ならせた。これらP25を用いて形成された色素層の比表面積は49〜50m2/g程度であった。
【0056】
これらのサンプルに吸着されたN3色素の量(色素吸着量)を測定した。該測定は、各サンプルを0.1M濃度の水酸化カリウム水溶液に浸漬して色素を脱着させた後、該水酸化カリウム水溶液の色素濃度を比色法で求めることにより行った。
各サンプルの色素層に吸着されたN3色素の量(色素吸着量[mol/cm2])を該色素層の厚さに対してプロットした結果を図3に示す。図3中、白丸で示されたプロットは酸化チタン粒子としてPST−18NRを用いたサンプルに係るデータであり、黒丸で示されたプロットは酸化チタン粒子としてP25を用いたサンプルに係るデータである。この図から判るように、いずれの酸化チタン粒子を用いた場合にも、それら酸化チタンの種類毎に、色素層の厚さ(膜厚)と色素吸着量との間には概ね比例関係が認められた。また、より平均粒径の小さい(より比表面積の大きな色素層を形成し得る)PST−18NRを用いたサンプルは、P25を用いたサンプルに比べて、同程度の膜厚においてより多くの色素を吸着し得ることが判る。
【0057】
<例3:BD増感アノードとN3増感アノードとを備えるセル>
例2で作製したセルにつき、該セルのBD増感アノード(b)側から上記模擬太陽光を照射して、該セルの出力特性を測定した。すなわち、ここで評価したセルでは、BD増感アノード(b)が第一アノード(前面側)として、N3増感アノード(B)が第二アノード(背面側)として用いられている。その結果、本例に係るセルの短絡電流密度(Jsc)は6.5mA/cm2、変換効率(η)は2.9%であった。また、同セルにつき、第二アノードとカソードとを接続する導電経路を遮断して第一アノードのみによる出力特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc)6.2mA/cm2、変換効率(η)2.6%であった。一方、第一アノードとカソードとを接続する導電経路を遮断して第二アノードのみによる出力特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc)0.7mA/cm2、変換効率(η)0.5%であった。
【0058】
例2および例3に係るセルについて測定された出力特性を、各例に係るセルの第一アノードおよび第二アノードの概略構成とともに表1にまとめて示す。この表には、例2および例3に係るセルについて、第一アノードのみおよび第二アノードのみを用いて得られた出力特性を併せて示している。
【0059】
【表1】


【0060】
表1に示されるように、個々のアノードを用いて得られた短絡電流密度および変換効率と、第一アノードおよび第二アノードの二つのアノードを用いて得られた短絡電流密度および変換効率との間には加成性が認められた。すなわち、例2に係るセルの短絡電流密度は、該セルの具備する二つのアノードのうち第一アノードのみを用いたときの短絡電流密度と第二アノードのみを用いたときの短絡電流密度との和とほぼ一致した。また、例2に係るセルの変換効率は、該セルの具備する二つのアノードのうち第一アノードのみを用いたときの効率および第二アノードのみを用いたときの効率との和とほぼ一致した。同様に、例3に係るセルの短絡電流密度および変換効率は、それぞれ、第一アノードのみを用いたときの測定値および第二アノードのみを用いたときの測定値との和とほぼ一致した。なお、例2に係るセルについて第一アノードのみを用いて測定された短絡電流密度および変換効率は、例2に係る第一アノード(N3増感アノード(B))と導電性ガラス基板上に白金膜を有するカソードとの間に電解質が充填された構成のセル(第二アノードを有しない。)の短絡電流密度および変換効率と同程度であった。これらの結果は、第一アノードに加えて第二アノードを有する構成とすることに伴って生じる不都合(例えば、第一アノードの性能が大きく低下する等)は特に認められないことを支持している。また、第二アノード(第二サブセル)により得られる性能(光電変換性能)は、第一アノード(第一サブセル)により得られる性能に対する追加分として、セル全体の性能向上に効果的に寄与し得ることを支持している。
【0061】
<例4:N3増感アノードを備えるセル>
厚さ約15μmのTiO2膜が形成されるようにペースト状組成物の塗布厚を調節した点以外は上記N3増感アノード(A)の作製と同様にして、導電性ガラス基板上に厚さ14.9μmのN3吸着TiO2膜(色素層)が5mm×5mmの範囲に形成されたN3増感アノード(C)を得た。また、表面にITO膜を有する導電性ガラス基板上に白金膜が設けられた構成のカソードを用意した。厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレンフィルム(上記色素層に対応する形状の孔が形成されている。)をスペーサとして上記N3増感アノード(C)と上記カソードとを対向配置し、その間に例1〜3で用いたものと同じ電解質を充填した。このようにして、上記N3増感アノード(C)を単一のアノードとして備える(第二アノードに相当する構成要素を有しない)セルを構築した。該セルの出力特性を例1と同様に評価したところ、短絡電流密度(Jsc)は10.1mA/cm2であり、開放電圧(Voc)は0.74V、フィルファクター(FF)は0.56、エネルギー変換効率(η)は4.2%であった。
【0062】
<例5:BD増感アノードを備えるセル>
厚さ約15μmのTiO2膜が形成されるようにペースト状組成物の塗布厚を調節した点以外は上記BD増感アノード(a)の作製と同様にして、導電性ガラス基板上に厚さ13.5μmのBD吸着TiO2膜(色素層)が5mm×5mmの範囲に形成されたBD増感アノード(c)を得た。N3増感アノード(C)に代えて上記BD増感アノード(c)を用いた点以外は上記例4と同様にして、該BD増感アノード(c)を単一のアノードとして備えるセルを構築した。該セルの出力特性を例1と同様に評価したところ、短絡電流密度(Jsc)は6.1mA/cm2であり、開放電圧(Voc)は0.68V、フィルファクター(FF)は0.60、エネルギー変換効率(η)は2.5%であった。
【0063】
<例6:N3−BD混合色素増感アノードを備えるセル>
厚さ約15μmのTiO2膜が形成されるようにペースト状組成物の塗布厚を調節した点、および増感色素としてN3色素とブラックダイとの混合物を吸着させた点以外は上記N3増感アノード(A)の作製と同様にして、導電性ガラス基板上に厚さ16.2μmのN3−BD混合色素吸着TiO2膜(色素層)が5mm×5mmの範囲に形成されたN3−BD混合色素増感アノードを得た。上記吸着は、N3色素とブラックダイとを1:1の質量比で含む溶液を用いて行った。N3増感アノード(C)に代えて上記N3−BD混合色素増感アノードを用いた点以外は上記例4と同様にして、該N3−BD混合色素増感アノードを単一のアノードとして備えるセルを構築した。該セルの出力特性を例1と同様に評価したところ、短絡電流密度(Jsc)は4.1mA/cm2であり、開放電圧(Voc)は0.69V、フィルファクター(FF)は0.60、エネルギー変換効率(η)は1.7%であった。
【0064】
例1および例4〜6に係るセルについて測定された出力特性を、各例に係るセルの概略構成とともに表2にまとめて示す。また、例1および例4〜6に係るセルについて測定された電流−電圧曲線を図4に示す。
【0065】
【表2】


【0066】
表2および図4に示されるように、例1に係るセル(N3増感アノード(A)を有する第一サブセルとBD増感アノード(a)を有する第二サブセルとがこの順に積み重なって且つ電気的に並列に接続された構成を備える。)によると、第一色素層の厚さ6μmにおいて、この第一色素層に相当する位置に二倍以上(14.9μm)の厚さの色素層が配置された例4に係るセルに匹敵する短絡電流密度および変換効率が得られた。この結果は、例えば例1に係るセル構成におけるN3増感アノード(A)を例4で用いたN3増感アノード(C)に置き換えたセルによれば、例4の特性を大きく上回る性能(短絡電流密度、変換効率等)が実現され得ることを示すものである。
【0067】
また、表1に示されている例3に係るセル(BD増感アノード(b)を有する第一サブセルとN3増感アノード(B)を有する第二サブセルとがこの順に積み重なって且つ電気的に並列に接続された構成を備える。)の特性と表2中の例5に係るセルの特性との比較から判るように、例3に係るセルによると、第一色素層の厚さ10μmにおいて、この第一色素層に相当する位置により厚い色素層(13.5μm)が配置された例5に係るセルをも上回る短絡電流密度および変換効率が得られた。この結果は、例えば例3に係るセル構成におけるBD増感アノード(b)を例5で用いたBD増感アノード(c)に置き換えた構成のセルによれば、例5の特性をさらに大きく上回る性能(短絡電流密度、変換効率等)が実現され得ることを示すものである。
なお、一つの色素層にN3色素とBDとを混合状態で保持された例6に係るセルの性能(短絡電流密度、変換効率等)は、各色素を有する色素層を第一アノードおよび第二アノード上に分離して設けた例1〜3に係るセルに比べて明らかに劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一実施態様に係る色素増感太陽電池の構成および作動を示す模式的説明図である。
【図2】例1〜3に係るセルの構成を示す模式図である。
【図3】色素層の厚さと色素吸着量との関係を示すグラフである。
【図4】例1および例4〜6に係るセルの電流−電圧特性を示すチャートである。
【図5】従来の色素増感太陽電池の構成および作動を示す模式的説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1:色素増感太陽電池(セル)
10:第一アノード
20:第一色素層
24:第一増感色素
30:第二アノード
40:第二色素層
44:第二増感色素
50:カソード
60:電解質
70:導電経路

特許の図
【出願人】 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【出願日】 平成18年8月24日(2006.8.24)
【代理人】 【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠

【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子

【識別番号】100115510
【弁理士】
【氏名又は名称】手島 勝
【公開番号】 特開2008−53042(P2008−53042A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227937(P2006−227937)