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【発明の名称】 PTC素子および電池保護システム
【発明者】 【氏名】山下 保英

【氏名】佐藤 広一

【要約】 【課題】電極板と端子板とを溶接等によって接合する際に、素子本体が熱劣化することを防止できると共に、クラッド板を用いることなく、電極板と端子板とを容易に接続でき、素子本来の機能を有効に発揮することができるPTC素子を提供すること。

【構成】所定の温度領域において温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子本体4と、前記素子本体4の表裏面に接合された一対の第1電極板10および第2電極板12と、を有するPTC素子2であって、前記第1電極板10における外部に露出する表面の少なくとも一部に、アルミニウムを含む第1端子接合膜14が形成してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度領域において温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子本体と、
前記素子本体の表裏面に接合された一対の第1および第2電極板と、を有するPTC素子であって、
前記第1電極板における外部に露出する表面の少なくとも一部に、アルミニウムを含む第1端子接合膜が形成してあることを特徴とするPTC素子。
【請求項2】
前記素子本体が、正の温度係数を持つ導電性ポリマーである請求項1に記載のPTC素子。
【請求項3】
前記第1電極板が、前記素子本体に対して接合する第1素子接合片と、前記第1素子接合片と一体に成形される第1端子接合片と、を有し、
前記第1端子接合片の表面に前記第1端子接合膜が形成してある請求項1または2に記載のPTC素子。
【請求項4】
前記第1端子接合膜の厚みが、3〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項5】
前記第1素子接合片の素子接合面が、前記素子本体の表面に直接接触し、前記素子接合面には素子接合用凹凸部が形成されており、
前記第1端子接合膜が形成される前記第1電極板の表面には膜接合用凹凸部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項6】
前記素子接合用凹凸部と、前記膜接合用凹凸部とが、前記第1電極板の片面に同時に形成してある請求項5に記載のPTC素子。
【請求項7】
前記第1および第2電極板で覆われていない前記素子本体の露出面には、保護膜が形成してある請求項1〜6のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項8】
前記素子本体の表裏面には、金属箔が積層してあり、各金属箔に対して、前記第1および第2電極板が接合してある請求項1〜7のいずれかに記載のPTC素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のPTC素子と、
前記PTC素子の第1電極板に電気的に接続される電池と、
前記PTC素子の第2電極板に電気的に接続される保護回路と、を有する電池保護システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電池や電子回路を過電流から保護すること等を目的として使用されるPTC素子と、そのPTC素子を有する電池保護システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
PTC(positive temperature coefficient)素子は、所定の温度領域において、素子の温度が上昇すると、素子の抵抗値が増加する特性を有する。特に、PTC素子の温度がポリマーの融解温度に達すると、PTC素子の抵抗が急激に増加する。このような性質はPTC特性と呼ばれる。
【0003】
PTC素子は、電子機器等の電気回路に組み込まれる。電子機器の使用中に、何らかの理由によって回路に過剰電流が流れた場合、電子機器の温度が上昇し、それに伴いPTC素子自体の温度も上昇する。そして、PTC素子の温度がポリマーの融解温度に達すると、PTC素子の抵抗値が急激に増加する。その結果、電気回路において、PTC素子が過剰電流を遮断する。よって、電気機器が過剰電流によって故障することを未然に防止できる。
【0004】
このように、PTC素子は、過熱、過剰電流に対する安全保護装置として使用される。具体的には、PTC素子は、携帯電話の電源である2次電池を過電流から保護するための回路(保護回路)に組み込まれたりする。2次電池の充電中または放電中に過剰電流が流れた場合、PTC素子は電流を遮断して2次電池を保護する。
【0005】
このようなPTC素子の一例としては、ポリマー材料(結晶性重合体)に導電性粒子を分散させた素子本体(重合体正温度係数抵抗体)を、電極板(あるいは金属箔)で挟んだ構造を有するポリマーPTC素子が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
ポリマーPTC素子は、従来、以下のような方法によって製造される。まず、金属粒子、カーボンブラック等の導電性フィラーを含む高分子(高密度ポリエチレン等)を押出成形し、素子本体を形成する。次に、素子本体の表裏面に、電極板を熱圧着することによって、ポリマーPTC素子が完成する。
【0007】
このポリマーPTC素子を所定の保護回路に組み込む際は、通常、その電極板と、電池用電極端子との間に、クラッド板を介して、接合する。この接合は、ハンダ付け、溶接等により実施される。
【0008】
クラッド板とは、異種金属同士を接合したものであり、上記の場合においては、素子の電極板を構成するニッケルまたはニッケル合金と、端子板を構成するアルミニウム材とを接合したものである。このようなクラッド板を用いると、クラッド板と、素子の電極板および電池用電極端子との接合が、同種の金属同士で実施できるため、接合が容易となる。
【0009】
しかしながら、ハンダ付け、溶接等を行う場合、クラッド板、素子の電極板および電池用電極端子の少なくとも一部分を高温に加熱する必要がある。ポリマーPTC素子の電極板(あるいは金属箔)は非常に薄いため、ハンダ付け、溶接の際に素子の電極板へ加わる熱が、直ちに素子本体に伝導する。その結果、素子本体が高温となり、熱劣化(軟化または溶融)することがある。素子本体が軟化または溶融すると、ポリマー中の導電性粒子の分散性が局所的に不均一となる。このような熱履歴を経たポリマーPTC素子においては、室温での抵抗値(室温抵抗値)がこの熱履歴前に比べて大きく増大してしまう。
【0010】
さらには、このようなポリマーPTC素子に対して、温度の上昇、下降を繰り返すと、ポリマーPTC素子の室温抵抗値がますます高くなってしまう。このように室温抵抗値の高くなったポリマーPTC素子においては、消費電力が増加してしまう。
【0011】
このように、素子の電極板と電池用電極端子とを接合する際の加熱に起因するポリマーPTC素子の室温抵抗値の増大は、携帯電話などの小型機器に搭載する場合に、電池の短寿命化などの問題につながる。
【0012】
また、素子の電極板と電池用電極端子とを接合するためにクラッド板を介しているため、回路全体として、薄型化や軽量化を実現するのが困難であった。
【特許文献1】国際公開第2004/023499号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、電極板と端子板とを溶接等によって接合する際に、素子本体が熱劣化することを防止できると共に、クラッド板を用いることなく、電極板と端子板とを容易に接続でき、素子本来の機能を有効に発揮することができるPTC素子を提供することである。また、本発明の別の目的は、保護回路全体として薄型化および軽量化を実現することができる電池保護システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係るPTC素子は、
所定の温度領域において温度上昇に伴い抵抗値が増加する素子本体と、
前記素子本体の表裏面に接合された一対の第1および第2電極板と、を有するPTC素子であって、
前記第1電極板における外部に露出する表面の少なくとも一部に、アルミニウムを含む第1端子接合膜が形成してあることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記素子本体が、正の温度係数を持つ導電性ポリマーである。
【0016】
本発明に係るPTC素子では、第1電極板に対して、アルミニウムを含む第1端子接合膜が直接形成してある。このようにすることで、第1電極板にクラッド板を接合することなく、スポット溶接等を用いて、第1電極板と、他の電極端子(たとえば、2次電池用端子)とを容易に接続することができる。
【0017】
クラッド板を用いることなく、PTC素子の第1端子接合膜が形成された電極板と、2次電池等の電極端子と容易に接合することができるため、保護回路全体の薄型化および軽量化を実現することができる。
【0018】
第1端子接合膜の形成方法は、特に制限されず、たとえば、種々の薄膜形成法を用いることができる。具体的には、スパッタによる蒸着、プラズマによる溶射、超音波による接合等を用いることができる。
【0019】
好ましくは、前記第1電極板が、前記素子本体に対して接合する第1素子接合片と、前記第1素子接合片と一体に成形される第1端子接合片と、を有し、
前記第1端子接合片の表面に前記第1端子接合膜が形成してある。
【0020】
第1端子接合膜が、第1端子接合片に形成されており、第1端子接合膜と素子本体とが離れているため、第1電極板と、電極端子との接合において、スポット溶接等により発生した熱が、素子本体に伝導しにくい。そのため、素子本体の熱劣化を防止することができる。
【0021】
その結果、本発明に係るPTC素子では、高感度を維持でき、通常使用時においては、消費電力の低減を図ることができると共に、必要な場合には、電流を遮断して電子機器を保護するという本来の機能を有効に発揮することができる。
【0022】
さらに、使用時においてPTC素子全体に熱が掛かると、第1端子接合片を構成する金属(ニッケルまたはニッケル合金)と、第1端子接合膜を構成する金属(アルミニウムを含む金属)と、が異なるため、熱膨張の差による歪みを生じることがある。このような場合であっても、第1端子接合膜は、第1素子接合片に形成されていないため、上記の歪みに起因する第1電極板と素子本体との剥離を有効に防止することができる。
【0023】
好ましくは、前記第1端子接合膜の厚みが、3〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。第1端子接合膜の厚みが薄すぎると、スパッタ等の薄膜形成が困難となり、さらにスポット溶接等も困難となるおそれがある。また、第1端子接合膜の厚みが厚すぎると、上記の薄膜形成を効率的に行うことが困難となる傾向にある。
【0024】
好ましくは、前記第1素子接合片の素子接合面が、前記素子本体の表面に直接接触し、前記素子接合面には素子接合用凹凸部が形成されており、
前記第1端子接合膜が形成される前記第1電極板の表面には膜接合用凹凸部が形成されている。
【0025】
素子接合面に凹凸を形成することで、第1電極板と素子本体との接合強度が向上し、第1端子接合膜が形成される面に凹凸を形成することで、第1電極板と第1端子接合膜との接合強度が向上する。また、第1素子接合片の素子接合面が素子本体の表面に直接に接触することで、ロウ付けなどの作業が不要になり、製造コストの低減を図ることもできる。
【0026】
好ましくは、前記素子接合用凹凸部と、前記膜接合用凹凸部とが、前記第1電極板の片面に同時に形成してある。素子接合用凹凸部と、膜接合用凹凸部とが、第1電極板の片面に形成されることで、凹凸部を形成する処理を効率的に行うことができる。
【0027】
好ましくは、前記第1および第2電極板で覆われていない前記素子本体の露出面には、保護膜が形成してある。保護膜は、酸素バリア性を有することが好ましい。保護膜を構成することで、素子本体の劣化を防止することができる。
【0028】
本発明では、前記素子本体の表裏面には、金属箔が積層してあり、各金属箔に対して、前記第1および第2電極板が接合してあっても良い。
【0029】
本発明に係る電池保護システムは、
上記のいずれかに記載のPTC素子と、
前記PTC素子の第1電極板に電気的に接続される電池と、
前記PTC素子の第2電極板に電気的に接続される保護回路と、を有する。
【0030】
本発明に係る電池保護システムでは、クラッド板を用いていないため、保護システム全体として薄型化および軽量化を実現をできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るPTC素子の使用状態を示す要部断面図、
図2は図1に示すPTC素子の斜視図、
図3は本発明の他の実施形態に係るPTC素子の使用状態を示す要部断面図、
図4は本発明の他の実施形態に係るPTC素子の断面図である。
ポリマーPTC素子の全体構成
【0032】
まず、本発明に係るPTC素子の一実施形態として、携帯電話の電源として用いられる2次電池セルを保護するためのポリマーPTC素子について説明する。
【0033】
図1に示すポリマーPTC素子2は、携帯電話の電源である2次電池セル32と、その2次電池セル32を過電流から保護するための保護回路30との間に組み込まれる。ポリマーPTC素子2は、保護回路30によっても制御しきれない過電流が2次電池セル32の充電中または放電中に流れた場合、保護回路30と2次電池セル32との間の電流を遮断して2次電池セル32を保護する。
以下では、まず、ポリマーPTC素子の全体構成について説明する。
【0034】
図1および図2に示すポリマーPTC素子2は、正の抵抗温度特性(PTC特性)を有する導電性ポリマーで構成してある素子本体4を備えている。この素子本体4は、表裏面(互いに対向する第1面6および第2面8)を有する。第1面6および第2面8には、それぞれ第1電極板10と、第2電極板12とが接合されている。その結果、素子本体4は、第1電極板10と第2電極板12との間に挟まれるように配置される。
【0035】
第1電極板10の外部に露出する表面の少なくとも一部に、アルミニウムを含む第1端子接合膜14が厚みt0で形成してある。好ましくは、厚みt0は、3〜100μm、より好ましくは、5〜50μm、さらに好ましくは、10〜50μmである。第1端子接合膜14の形成方法は、特に制限されないが、本実施形態では、第1端子接合膜14は、スパッタ法により形成される。
【0036】
第1端子接合膜14は、アルミニウムを含む金属で構成されているため、スポット溶接等によりアルミニウム材で構成される電極端子34との接続を容易に行うことができる。また、クラッド板を用いることなく、素子本体の電極板と電池の電極端子とを接続できるため、システム全体として薄型化および軽量化を実現することができる。
【0037】
本実施形態では、第1電極板10は、素子本体4に対して接合する第1素子接合片10aと、この第1素子接合片10aに対して一体に成形してある第1端子接合片10bとを有している。
【0038】
図2に示すように、第1端子接合片10bは、第1素子接合片10aよりも幅が狭く形成されている。第1素子接合片10aの幅をW2、第1端子接合片10bの幅をW1とすると、好ましくは、W1/W2=0.5〜1.0、さらに好ましくは、0.76〜1.0である。
【0039】
第1端子接合膜14は、第1素子接合片10aに形成されていてもよいが、第1端子接合片10bのみに形成されていることが好ましく、しかも、第1端子接合片10bの先端側に形成されていることが好ましい。第1端子接合膜14の幅をW0としたときに、さらに好ましくは、W0/W1=0.5〜1.0、特に好ましくは、0.56〜1.0である。また、第1端子接合膜14の長さをL0とし、第1端子接合片10bの長さをL1としたときに、さらに好ましくは、L0/L1が、0.41〜1.0、特に好ましくは、0.59〜1.0である。
【0040】
また、第1素子接合片10aの素子接合面10cが素子本体4の第1面6に直接に接触しており、素子接合面10cには凹凸が形成してある。また、第1端子接合片10bにおける第1端子接合膜14との端子接合面10dは、素子接合面10cよりも平坦面にしてある。
【0041】
素子接合面10cに形成してある凹凸は、素子本体4との熱圧着を強固にするためのものであり、その形成方法は、特に限定されないが、たとえばメッキ膜形成による粗面化処理が好ましい。メッキ膜形成による粗面化処理により、第1素子接合片10aの素子接合面10cには、節瘤状の突起が多数形成できる。この節瘤状の突起は、凹凸差が5〜15μm程度で頭部に対して中間部または基部がくびれている凸部であり、素子本体4と素子接合片10aの素子接合面10cとの熱圧着強度を向上させることができる。
【0042】
なお、素子接合面10cに形成してある凹凸の形成方法としては、メッキ膜形成による粗面化処理以外に、酸による表面処理、エッチング処理、ブラスト処理、切削などの機械加工による粗面化処理、その他の処理が例示される。第1電極板10における端子接合面10dは、第1電極板10の片面全面に対して凹凸を形成した後に、プレス加工などにより平坦化処理することにより形成しても良い。あるいは、素子接合面10c以外の部分をマスクして、素子接合面10cのみに凹凸を形成しても良い。
【0043】
第1端子接合膜14が形成された第1端子接合片10bは、図1に示す電極端子に対してスポット溶接され、電極端子は、電池に対して電気的に接続される。
【0044】
第2電極板12は、特に限定されないが、本実施形態では、第2電極板12は、図2に示すような第1電極板と同一の形状であり、第2素子接合片12aと、第2端子接合片12bと、を有している。また、第2電極板12は、第1電極板10と同様にニッケルまたはニッケル合金で構成してあり、第2端子接合片12bには、端子板16が接続してある。端子板16の厚みは、通常100〜300μm程度である。
【0045】
また、第2電極板12における第2素子接合片12aの素子接合面12cには、素子接合面10cと同様な凹凸が形成してあり、素子本体の第2面8と直接接触している。
【0046】
第2電極板12における第2素子接合片12aの素子接合面12c以外の表面12dには、素子接合面12cに形成してある凹凸が形成されず、平坦面となっていることが好ましい。第2電極板12において素子接合面12cに凹凸を形成するための方法と、素子接合面12c以外の表面12dを平坦化する方法は、第1電極板10において部分的に凹凸面を形成するための方法と同様である。
【0047】
図1に示すように、素子本体4の表面のうち、電極板10および12で囲まれていない側面には、必要に応じて保護膜3が形成されている。保護膜3を形成することで、大気中の酸素による素子本体4の酸化を抑制し、素子本体4の劣化を防止することができる。保護膜3の種類としては、酸素を遮蔽する機能を有するものであれば特に限定されないが、エポキシ樹脂、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示される。
【0048】
素子本体4の形状は、特に限定されず、直方体型、円柱型等が例示される。素子本体4の形状が直方体の場合、素子本体4の寸法は、縦3〜5mm×横2〜5mm×厚さ0.5〜1.0mm程度である。
ポリマーPTC素子2の製造方法
【0049】
次に、ポリマーPTC素子2の製造方法について説明する。
(1)素子本体4
素子本体4は、通常、主成分である重合体(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の高分子化合物)および導電性粒子を含む樹脂組成物(導電性ポリマー)から構成される。なお、素子本体4は、重合体として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との両方を含んでもよい。
【0050】
まず、高分子化合物(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等)、導電性粒子(金属粉、カーボンブラック等)、低分子有機化合物および、高分子化合物同士を架橋反応させるための反応開始剤等を秤量、混練し、PTC組成物を調整する。混練の方法としては、特に限定されないが、ニーダ、押出機、ミル等が例示される。また、PTC組成物に含有させる導電性粒子としては、ふるい機等によって所定の粒径をもつ導電性粒子のみを分級し、これを用いる。次に、このPTC組成物を成形し、素子本体4(図1)を得る。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂及びフェノール樹脂等が挙げられる。好ましくは、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂を用いることによって、ポリマーPTC素子が、十分な抵抗変化量及び耐熱性を有することができる。熱硬化性樹脂の分子量は、通常、重量平均分子量Mwが300〜10000程度である。上記の熱硬化性樹脂は単独で用いてもよく、また複数種の樹脂を用いてもよい。また、異なる種類の熱硬化性樹脂同士が架橋された構造を有する化合物を用いてもよい。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、好ましくは、結晶性ポリマーをを用いる。熱可塑性樹脂の融点は、特に限定されないが、好ましくは、70〜200℃程度である。融点がこの範囲にある樹脂を用いることによって、ポリマーPTC素子動作時における熱可塑性樹脂の融解、流動、素子本体の変形を防止することができる。
【0053】
具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニルコポリマ−等のコポリマ−、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド等のハロゲン化ビニルおよびビニリデンポリマ−、12−ナイロン等のポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、熱可塑性エラストマ−、ポリエチレンオキサイド、ポリアセタ−ル、熱可塑性変性セルロ−ス、ポリスルホン類、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0054】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、好ましくは、10000〜5000000である。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、また複数種の樹脂を用いてもよい。また、異なる種類の熱可塑性樹脂同士が架橋された構造を有する化合物を用いてもよい。
【0055】
素子本体4に含まれる導電性粒子としては、特に限定されないが、金属粉、カーボンブラック等が例示される。好ましくは、導電性粒子として金属粉を用いる。この金属粉としては、好ましくは、ニッケルを主成分とするものを用いる。金属粉の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5〜4.0μm程度である。
【0056】
素子本体4において、樹脂組成物中の導電性粒子の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは、20〜80質量%である。導電性粒子の含有量をこの範囲内とすることによって、非動作時の室温抵抗値を十分に低くすることができ、また、大きな抵抗変化量を得ることができる。さらには、素子抵抗のバラツキを十分に減少させることができる。
【0057】
素子本体4を構成する樹脂組成物は、上記の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、および導電性粒子以外に、例えば、ワックス、油脂、脂肪酸、高級アルコ−ル等の低分子有機化合物を更に含んでもよい。その結果、素子本体4の温度上昇に伴う抵抗変化量を増大させることができる。
【0058】
素子本体4は、内部に空隙を有し、この空隙に上記樹脂組成物を充填することが可能な基材を含んでもよい。このような基材としては、上記の役割を果たすことが可能なものであれば特に制限されず、織布、不織布、連続多孔質体等が例示される。
【0059】
素子本体4には、必要に応じて、電子線照射を行う。この電子線照射によって、反応開始剤が機能し、高分子同士の架橋反応が促進される。架橋反応のエネルギー源としては、電子線に限定されず、ガンマ線、紫外線、熱等も用いられる。照射する電子線の加速電圧及び電子線照射量は、素子本体4に含まれる高分子化合物の種類、あるいは素子本体の寸法等に応じて、適宜調整すればよい。なお、電子線照射は、電極板10および12の接合後であっても良い。
【0060】
(2)第1金属板10および第2電極板12の形成および熱圧着
第1金属板10および第2金属板12は、所定厚みのニッケル金属板あるいはニッケル合金板を打ち抜き成型して形成される。第1金属板10における素子接合面10cと、第2金属板12における素子接合面12cには、前述した方法により、素子本体4との熱圧着を強固にするための凹凸が形成してある。
【0061】
次に、素子本体4の表裏面(第1面6および第2面8)それぞれに、第1電極板10および第2電極板12を、熱プレス機等により、熱圧着する。熱圧着時の加熱温度は、素子本体4の材質にもよるが、好ましくは、130〜180°C程度である。また、熱圧着時の圧力は、好ましくは1×10〜3×10Pa程度である。
【0062】
なお、熱圧着時には、圧力により素子本体4が厚み方向に多少潰れて、電極板10および12の側方に多少はみ出すこともあるが、不要部分は、容易に除去することができる。
【0063】
(3)第1端子接合膜14の形成
次に、あるいは、その前後に、第1端子接合片10bに、アルミニウムからなる第1端子接合膜14を、スパッタ法により形成する。条件は、バックグラウンド真空度:1E−3Pa、プロセスガス:Ar、スパッタ中ガス圧:0.5〜2Pa、DCスパッタ、電圧300〜800Vである。
【0064】
(4)保護膜3の形成
次に、素子本体4の表面のうち、電極板10および12で囲まれていない露出側面に、必要に応じて保護膜3を形成する。保護膜3の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、前述した樹脂を塗布して乾燥させる方法が例示される。
このようにして、図2に示すように、本実施形態に係るポリマーPTC素子2が完成する。
ポリマーPTC素子2の組み付け方法
【0065】
ポリマーPTC素子2は、図1に示すように、2次電池セル32と、保護回路30との間に組み込まれる。ポリマーPTC素子2を、図1に示すように接続するために、たとえば、まず、素子2における第1電極板の第1端子接合片10bに形成された第1端子接合膜14と、2次電池セル32の電極端子34と接触してスポット溶接する。素子2と2次電池セル32との間に隙間が形成される場合には、スペーサ36などを、素子2と2次電池セル32との間に配置させる。
【0066】
次に、あるいは、その前後に、第2電極板12の第2端子接合片12bに対して、保護回路30に接続してある端子板16をスポット溶接により接合する。
【0067】
本実施形態に係るポリマーPTC素子2では、第1端子接合膜14は、第1端子接合片10bに形成されている。この第1端子接合片10bは、素子本体4と直接接触する部分を有していない。したがって、第1電極板10と、2次電池セル32の電極端子34とを、スポット溶接等で接合する際に生じる熱は、素子本体4にまで伝わりにくく、素子本体4の熱劣化を防止することができる。
【0068】
素子本体4の熱劣化を防止することができるため、本実施形態に係るポリマーPTC素子2は高感度を維持できる。さらに、通常使用時においては、消費電力の低減を図ることができると共に、必要な場合には、電流を遮断して2次電池セル32を保護すると言う本来の機能を有効に発揮することができる。
【0069】
また、第1端子接合膜14が、第1素子接合片10aに形成されていないため、異種金属同士が接合された第1端子接合膜14と第1端子接合片10bとが、熱による歪みを生じたとしても、その影響により第1電極板10と素子本体4とが剥離することはない。
【0070】
さらに、本実施形態では、クラッド板を介することなく、PTC素子の電極板と電池セルの電極端子とを接合することができるため、回路全体としての薄型化、軽量化等の要求にも応えることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態に係るポリマーPTC素子2と、保護回路30と、2次電池セル32とを有する電池保護システムでは、過剰な電流が流れた場合や、衝撃や圧力が作用したとしても、電池を有効に保護することができる。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0073】
たとえば、図3では、本発明に係るPTC素子の第1電極板10の片面が全面的に粗面化されている構成となっている。このような構成とすることで、素子接合面10cと素子本体4との熱圧着強度を向上させるだけでなく、第1端子接合面10dが粗面化されているため、第1端子接合膜14を形成した際の接合強度をも向上させることができる。しかも、第1電極板10の片面のみを全体的に粗面化処理すればよいため、効率よく処理することができる。
【0074】
また、図4では、本発明に係るPTC素子本体4の表裏面には、ニッケルなどの金属箔60が積層してあり、各金属箔60に対して、第1金属板10および第2電極板12が、ハンダ層62を介して接合してあっても良い。金属箔60は、ニッケルなどの金属または合金で構成してあり、シート状の素子本体4の両面に金属箔を熱プレスした後に、これを所定の寸法に打ち抜くことによって、素子本体4と一体化することができる。金属箔60の厚みは、電極板10および12の厚みよりも薄く、一般的には、25〜30μmである。
【0075】
さらに、第2電極板を図4のような構成とすることで、端子板とのスポット溶接等による接合時に生じる熱が素子本体4に伝わりにくくすることができる。また、第2電極板12が折り曲げられて配置されていることで、落下などにより、第2電極板12と端子板16との間の接合部に衝撃が加わったとしても、第2電極板12における折曲部12eが衝撃を有効に吸収する。そのため、第2電極板12と端子板16との間の接合部が外れることはない。なお、第2電極板12の折曲部12eは、断面略U字状、断面略V字状、断面略コ字状等の形状を有している。
【0076】
また、2次電池セル32の熱膨張などにより、ポリマーPTC素子2に対して圧力が作用したとしても、第2電極板12における折曲部12eが圧力による変位を有効に吸収し、素子本体4に圧力が加わることはなく、過剰電流の遮断機能を有効に発揮することができる。
【0077】
さらには、第1電極板10が、第1端子接合片10bを有していない構成であってもよい。すなわち、第1素子接合片10aのみに第1端子接合膜14が形成されていてもよい。
【0078】
これらの実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、本発明に係るポリマーPTC素子2は、2次電池セル32の過電流保護素子としてのみならず、自己制御型発熱体、温度センサー、限流素子、過電流保護素子等としても使用されることが可能である。
【0080】
また、本発明では、ポリマーPTC素子2の製造方法は、特に限定されない。たとえば上述した実施形態のように、素子本体4、第1電極板10、第2電極板12を、それぞれ単独の状態で互いに接合することなく、以下のようにしてポリマーPTC素子2を製造しても良い。すなわち、切断後に素子本体4を構成するシート状素子本体と、切断後に第1電極板10および第2電極板12をそれぞれ構成することになる一対のシート状電極とを、熱圧着した後に、不要部分をプレスで打ち抜くことによって個別のポリマーPTC素子2を形成しても良い。その場合には、ポリマーPTC素子2を構成する部品の集合体同士を、一度に接合することによって、ポリマーPTC素子2の製造工程の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るPTC素子の使用状態を示す要部断面図である。
【図2】図2は図1に示すPTC素子の斜視図である。
【図3】図3は本発明の他の実施形態に係るPTC素子の使用状態を示す要部断面図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態に係るPTC素子の断面図である。
【符号の説明】
【0082】
2… ポリマーPTC素子
3… 保護膜
4… 素子本体
10… 第1電極板
10a… 第1素子接合片
10b… 第1端子接合片
10c… 素子接合面
10d… 端子接合面
12… 第2電極板
12a… 第2素子接合片
12b… 第2端子接合片
12c… 素子接合面
12d… 素子接合面12c以外の表面
12e… 折曲部
14… 第1端子接合膜
16… 端子板
30… 保護回路
32… 2次電池セル
34… 2次電池用電極端子
60… 金属箔
62… ハンダ層
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【出願日】 平成18年8月15日(2006.8.15)
【代理人】 【識別番号】100097180
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 均

【識別番号】100135404
【弁理士】
【氏名又は名称】圓尾 龍哉


【公開番号】 特開2008−47681(P2008−47681A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−221492(P2006−221492)