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【発明の名称】 避雷装置
【発明者】 【氏名】アンヘル ロドリゲス モンテス

【氏名】アントニオ クラベリア カナル

【氏名】石崎 誠

【要約】 【課題】

【構成】絶縁体11Aを介して支持部材Tに設置された避雷極部材1、50、100と、該避雷極部材と大地Eに設置された接地極体15とを接続する絶縁被覆ケーブルからなる引下げ線14とを有する避雷装置Aにおいて、前記避雷極部材を構成する電極体2、51、101の雷雲Ctと対向する上面を、突針部のない面状の放電面部として形成したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体を介して支持部材に設置された避雷極部材と、該避雷極部材と大地に設置された接地極体とを接続する絶縁被覆ケーブルからなる引下げ線とを有する避雷装置において、前記避雷極部材を構成する電極体の雷雲と対向する上面を、突針部のない面状の放電面部として形成したことを特徴とする避雷装置。
【請求項2】
前記避雷極部材を構成する電極体を、逆碗状或いはリング状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の避雷装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、雷害から設備機器等を保護するための避雷装置に関するものであり、特に、設備機器等周辺の落雷を避けるための避雷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中に雷雲が発生し発達すると、雷雲の雲底から先行放電(ステップリーダー)が大地に向かって発生し、この先行放電が進展すると、地表面側から、先行放電の電荷と反対の電荷を有するストリーマー放電が上昇する。そして、先行放電とストリーマー放電が結合すると、大地と雷雲との間に放電路が形成され、この放電路を通って、雷雲と大地との間に大電流が流れる。この現象が落雷現象である。
【0003】
従来の避雷装置は、建造物を含む設備機器等の被保護対象物より高い位置に配置された避雷突針で落雷を受けて、大電流を、大地に吸収するように構成されており、落雷を避雷突針が受けることで、被保護対象物に落雷が生じないように構成されている。
【0004】
落雷を被保護対象物より高い位置に配置した避雷突針で受け、被保護対象物を保護するようにした避雷装置が、一例として、特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−261495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
落雷を、被保護対象物より高い位置に配置した避雷突針で受けて、雷雲と大地間の絶縁破壊で起きる落雷を吸収する従来の避雷装置は、被保護対象物への直撃雷を回避することはできるが、落雷自体を無くすことは極めて困難である。
【0007】
また、従来の避雷突針による避雷装置においては、避雷突針の設置における設計手法である角度法での計算では、必ずしも、被保護対象物の保護が充分ではないために、新たに回転球体法が取り入れられたが、この新たな設計手法である回転球体法で再計算すると、角度法で計算した場合に比較して、10m以上もより高い位置に避雷突針を設置することが必要となるとの設計例もあり、従って、避雷装置の建設費用が高くなるという問題があった。
【0008】
更に、落雷を大地に吸収するに際し、大地電位上昇が高電位となり、被保護対象物に悪影響を及ぼす可能性を有していた。そのために、大地接地抵抗を、低抵抗値にする必要があり、従って、避雷装置の接地費用が高くなるという問題を有していた。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の避雷装置が有する課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した目的を達成するために、絶縁体を介して支持部材に設置された避雷極部材と、該避雷極部材と大地に設置された接地極体とを接続する絶縁被覆ケーブルからなる引下げ線とを有する避雷装置において、第1には、前記避雷極部材を構成する電極体の雷雲と対向する上面を、突針部のない面状の放電面部として形成したものであり、第2には、前記避雷極部材を構成する電極体を、逆碗状或いはリング状に形成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述した構成を有しているので、以下に記載する効果を奏することができる。
【0012】
絶縁体を介して支持部材に設置された避雷極部材と、該避雷極部材と大地に設置された接地極体とを接続する絶縁被覆ケーブルからなる引下げ線とを有する避雷装置において、前記避雷極部材を構成する電極体の雷雲と対向する上面を、突針部のない面状の放電面部として形成したので、多くの放電点から、一度に多量の電荷が、弱い勢いで放電することになり、従って、避雷極部材からの先行放電と雷雲の電荷とが極めて結合しにくいため、雷雲と大地との間に、大電流の帰還電流が流れるようなことがなく、よって、大きな大地電位上昇を回避することができるので、落雷による被保護対象物の損傷を最小限に抑えることができる。
【0013】
前記避雷極部材を構成する電極体を、逆碗状或いはリング状とすることにより、避雷極部材を構成する電極体の雷雲と対向する放電面部が突針部のない面状に形成されているので、従って、落雷による被保護対象物の損傷を、より効果的に抑えることができる。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り、何ら、実施例に限定されるものではない。
【0015】
1は、避雷極部材であり、避雷極部材1は、上部電極体2と下部電極体3と環状絶縁体4とから構成されている。上部電極体2と下部電極体3は、金属製で、且つ、少なくとも空中部を有しており、本実施例においては、上部電極体2は、内部が空洞の逆碗状体(お碗の開放部が下方に位置する、お碗を伏せたような形態)として形成されており、下部電極体3は、内部が空洞の碗状体(お碗の開口部は上方に位置する、お碗を立てたような形態)として形成されている。また、上部電極体2の天部中心部には、半球体状の上部凸部2aが形成されており、また、下部電極体3の底部中心部には、半球体状の下部凸部3aが形成されている。
【0016】
上部電極体2の周状端部2bは、他の部分より肉厚に形成されており、周状端部2bには、周方向に沿って、所定の間隔で、複数個のネジ孔2cが形成されている。同様に、下部電極体3の周状端部3bは、他の部分より肉厚に形成されており、周状端部3bには、周方向に沿って、所定の間隔で、複数個のボルト挿通孔3cが穿設されている。
【0017】
環状絶縁体4は、例えば、耐侯性に優れ、また、強度にも優れたメタアクリル樹脂やエボキシ樹脂等の合成樹脂、或いは、磁器等で形成されており、所定の厚さを有する高絶縁性の環状体として形成されている。中央領域に貫通孔4aが穿設されている環状絶縁体4は、上部電極体2の周状端部2bと下部電極体3の周状端部3bとにより挟持されるように構成されており、環状絶縁体4は、上部電極体2の周状端部2bと下部電極体3の周状端部3bとにより挟持された際には、環状絶縁体4の外周部4bが、上部電極体2及び下部電極体3の外側に位置するように構成されている。
【0018】
環状絶縁体4の外周部4bには、周方向に沿って、所定の間隔で、複数個のボルト挿通孔4cが穿設されており、また、環状絶縁体4の外周部4bには、環状絶縁体4の下面4’から、環状絶縁体4の上面4”に向かって、且つ、環状絶縁体4の上面4”に達しない深さを有するネジ孔4dが、所定の間隔で、複数個、形成されている。
【0019】
Paは、上部電極体2の周状端部2bと略同じ外径を有する上部環状パッキンであり、上部環状パッキンPaの内径は、環状絶縁体4の貫通孔4aと同じか、或いは、それより大径に形成されている。また、上部環状パッキンPaには、上部電極体2の周状端部2bに形成されているネジ孔2cに対応して、ボルト挿通孔p1が穿設されている。
【0020】
Pbは、上述した上部環状パッキンPaと同様の下部パッキンであり、下部パッキンPbは、下部電極体3の周状端部3bと略同じ外径を有しており、下部環状パッキンPbの内径は、環状絶縁体4の貫通孔4aと同じか、或いは、それより大径に形成されている。また、下部環状パッキンPbには、下部電極体3の周状端部3bに穿設されているボルト挿通孔3cに対応して、ボルト挿通孔p2が穿設されている。
【0021】
上部電極体2の周状端部2bと下部電極体3の周状端部3bとが対向するように、それぞれ、上部環状パッキンPaと下部パッキンPbを介して、上部電極体2と下部電極体3とにより、環状絶縁体4を挟持した際には、環状絶縁体4の外周部4bに穿設されたボルト挿通孔4c、上部環状パッキンPaに穿設されたボルト挿通孔p1及び上部電極体2の周状端部2bに形成されたネジ孔2cとが、上下方向に直線状に一致するとともに、環状絶縁体4の外周部4bに形成されたネジ孔4d、下部環状パッキンPbに穿設されたボルト挿通孔p2及び下部電極体3の周状端部3bに形成されたボルト挿通孔3cとが、上下方向に直線状に一致するように構成されている。そして、上下方向に直線状に一致して配置されている環状絶縁体4の外周部4bに穿設されたボルト挿通孔4cと上部電極体2の周状端部2bに形成されたネジ孔2cと、上下方向に直線状に一致して配置されている環状絶縁体4の外周部4bに形成されたネジ孔4dと下部電極体3の周状端部3bに形成されたボルト挿通孔3cとは、周方向にずれて配置されるように構成されている。また、下部電極体3には、半球体状の下部凸部3aが位置する下部電極体3の中央下面から上方に向かって、且つ、下部凸部3aを貫通しないように、垂直なネジ孔3dが形成されている。
【0022】
環状絶縁体4の上面4”に、上部環状パッキンPaを配置し、次いで、上部環状パッキンPaを介して、環状絶縁体4の上面4”に、上部電極体2の周状端部2bを配置し、同様に、環状絶縁体4の下面4’に、下部環状パッキンPbを配置し、次いで、下部環状パッキンPbを介して、環状絶縁体4の下面4’に、下部電極体3の周状端部3bを配置することにより、上部電極体2の周状端部2bと下部電極体3の周状端部3bとが対向するように、上部電極体2と下部電極体3により、環状絶縁体4を挟持する。その後、上下方向に直線状に一致した状態の環状絶縁体4の外周部4bに穿設されたボルト挿通孔4c、上部環状パッキンPaに穿設されたボルト挿通孔p1及び上部電極体2の周状端部2bに形成されたネジ孔2cとに、環状絶縁体4の下方から、ボルトBを挿通するとともに、ボルトBの先端部に形成されたネジ部b1を、上部電極体2の周状端部2bに形成されたネジ孔2cに螺合させることにより、上部環状パッキンPaを介して、上部電極体2に、環状絶縁体4を取り付ける。同様にして、上下方向に直線状に一致した状態の下部電極体3の周状端部3bに形成されたボルト挿通孔3c、下部環状パッキンPbに穿設されたボルト挿通孔p2及び環状絶縁体4の外周部4bに形成されたネジ孔4dとに、下部電極体3の下方から、ボルトBを挿通するとともに、ボルトBの先端部に形成されたネジ部b1を、環状絶縁体4の外周部4bに形成されたネジ孔4dに螺合させることにより、下部環状パッキンPbを介して、下部電極体3を、絶縁体4を取り付ける。このようにして、上部環状パッキンPa及び下部環状パッキンPbを介して、上部電極体2と下部電極体3により、環状絶縁体4が挟持された避雷極部材1が組み立てられることになる。避雷極部材1を構成する上部電極体2の天部中央部に形成された半球体状の上部凸部2aと下部電極体3の底部中央部に形成された半球体状の下部凸部3aとは、上下方向に対向するように配置されている。なお、上部環状パッキンPa及び下部環状パッキンPbは、適宜、省略することができる。
【0023】
環状絶縁体4に形成されたネジ孔4dは、環状絶縁体4の上面4”に達しない深さに形成されているので、下部電極体3の周状端部3bに形成されたボルト挿通孔3cに、下方から挿通され、且つ、環状絶縁体4の外周部4bに形成されたネジ孔4dに螺合されたボルトBが、環状絶縁体4を貫通し、ボルトBの先端が、上部電極体2の周状端部2bに当接し、上部電極体2と下部電極体3とが、ボルトBを介して、電気的に導通することはない。
【0024】
5は、周囲にネジが刻設された金属等の導電材料からなる長尺支持ボルトである。6は、略円柱状の台座であり、台座6の上面には、下部電極体3の下面中央部が面接触するような載置凹部6aが形成されており、また、台座6の中心部には、長尺支持ボルト5が挿通可能な挿通孔6bが穿設されているとともに、台座6の下部には、嵌合凹部6cが形成されている。
【0025】
7は、合成樹脂や金属で形成された円筒状の保護筒であり、8は、円周壁8aと天部8bとからなる保持体であり、天部8bの上部角部に環状の段差部8cを形成することにより、天部8bの上端部には、保護筒7の下端部が嵌合可能な円柱凸部8dが形成されており、更に、天部8bの中央部には、長尺支持ボルト5が挿通可能な挿通孔8eが穿設されている。
【0026】
次に、上部電極体2、下部電極体3及び上部環状パッキンPaと下部環状パッキンPbを介して、上部電極体2と下部電極体3とに挟持された環状絶縁体4とからなる避雷極部材1の長尺支持ボルト5への取り付けについて説明する。
【0027】
先ず最初に、避雷極部材1を構成する下部電極体3の下面中央部に、台座6のの載置凹部6aが面接触するように、台座6を配置する。次いで、台座6の挿通孔6bに、長尺支持ボルト5の上端部を挿通するとともに、長尺支持ボルト5の上端部を、下部電極体3に形成された垂直なネジ孔3dに螺合し、その後、ワッシャーWを介して、ナットNを、長尺支持ボルト5に螺合させるとともに、ワッシャーWを介して、ナットNを、下方から台座6に当接するように締め付けることにより、長尺支持ボルト5の上端部に、避雷極部材1を取り付ける。
【0028】
次いで、保護筒7を、長尺支持ボルト5を囲むように配置するとともに、保護筒7の上端部を、台座6の嵌合凹部6cに嵌合させ、その後、保持体8の天部8bに穿設された挿通孔8eに、長尺支持ボルト5の下端部を挿通し、保護筒7の下端部を、保持体8の円柱凸部8dに嵌合させる。次いで、長尺支持ボルト5の下端から、ナットNを螺合させて、ナットNを、保持体8の円周壁8a内に位置させるとともに、天部8bに当接させることにより、避雷極部材1、台座6、長尺支持ボルト5、保持体8等からなる避雷装置Aが形成されることになる。なお、長尺支持ボルト5の下端部は、所定に長さ、保持体8から露出しており、また、ナットNと保持体8の天部8bとの間に、ワッシャーを介在させることもできる。長尺支持ボルト5を囲むように、保護筒7を配設することにより、長尺支持ボルト5が錆びないように構成されている。
【0029】
次に、鉄塔や鉄柱等の支持部材Tへの避雷装置Aの取り付けについて説明する。なお、支持部材Tは、大地Eに、直接、建立されているか、或いは、建物の上に建立されている。本実施例においては、鉄塔や鉄柱等の支持部材Tが、大地Eに埋設されている土台Fに建立されている例が示されている。
【0030】
支持部材Tの上部には、適当な取付け具9を介して、アンテナ等の被保護対象物10が取り付けられている。支持部材Tの上端部には、碍子等の高絶縁性の絶縁体11Aが取り付けられており、絶縁体11Aの上端部には、金属等の導電材料からなるフランジ12が取着されており、フランジ12の上面には、中央に、ネジ孔13aが穿設された金属等の導電材料からなる連結フランジ13が、ボルト・ナット等の適当な固着具により取着されている。そして、連結フランジ13のネジ孔13aに、上述した避雷装置Aを構成する長尺支持ボルト5の下端部を螺合させることにより、避雷装置Aを、絶縁体11Aを介して、支持部材Tに取り付ける。
【0031】
14は、絶縁被覆ケーブルからなる引下げ線であり、引下げ線14の上端部は、連結フランジ13に接続されており、また、引下げ線14の下端部は、大地Eに設置された接地極体15に接続されている。なお、16は、引下げ線14を、支持部材Tに固定するための締結バンドである。
【0032】
次に、碍子等の絶縁体11Aを介して、支持部材Tに取り付けられた避雷装置Aの動作について説明する。
【0033】
被保護対象物10の上部に取付けられた避雷装置Aに、大気中の成熟した雷雲Ctが近づくと、雷雲Ctの雲底に分布する電荷(多くは、マイナス電荷であるので、マイナス電荷として説明する。)に引き寄せられて、大地Eの表面には、雷雲Ctの雲底に分布するマイナス電荷と反対の電荷、即ち、プラス電荷が分布することになる。そして、大地Eの表面に分布したプラス電荷が、飽和レベルに達すると、大地Eに設置された接地極体15及び引下げ線14を介して、大地Eと等電位の避雷極部材1を構成する下部電極体3に、雷雲Ctの電荷と反対の電荷、即ち、プラス電荷が集まることになる。すると、環状絶縁体4を介して、下部電極体3に取り付けられている上部電極体2は、下部電極体3との電位差を解消するように働くために、下部電極体3のプラス電荷と反対のマイナス電荷を、周辺の大気中から収集することになり、従って、雷雲Ctに分布するマイナス電荷が飽和することがなく、落雷の発生を回避することができる。また、上部電極体2に集まったマイナス電荷と下部電極体3のプラス電荷は、環状絶縁体4及びその周辺の大気を介して、中和されることになる。
【0034】
上述したように、下部電極体3は、雷雲Ctの電荷と反対の電荷(大地と同一の電荷)を保有することになり、また、上部電極体2は、下部電極体3との電位差を解消するために、下部電極体3の電荷と反対の電荷を、周辺の大気中から収集するために、大気が落雷を起こす条件に達することがなく、従って、落雷の発生を回避することができる。更に、大地電位の上昇も回避でき、従って、被保護対象物10には、大地電位の高電圧が生じないので、絶縁破壊も生じない。
【0035】
大地Eに設置された接地極体15を、平面的に見て、被保護対象物10を囲むように配置された環状接地やメッシュ接地とすることで、下部電極体3は、引下げ線14を介して、接地極体15からの大地Eの電荷(雷雲Ctの電荷と反対の電荷)を得て、また、上部電極体2は、下部電極体3との電位差を解消するように、活発に活動して、下部電極体3が保有する電荷と反対の電荷を、周辺の大気中から得ることになり、その結果、落雷をより一層の回避することができる。
【0036】
更に、雷雲Ctと避雷装置Aとの動作状態を詳細に説明する。
【0037】
雷雲Ctが発生し、避雷装置Aに近づくと、大地Eの表面には、雷雲Ctの雲底に分布する電荷(多くは、マイナス電荷であるので、マイナス電荷として説明する。)と反対の電荷、即ち、プラス電荷することになる。そして、大地Eの表面に分布したプラス電荷が、飽和レベルに達すると、大地Eに設置された接地極体15及び引下げ線14を介して、大地Eと等電位の避雷極部材1を構成する下部電極体3に、雷雲Ctの電荷と反対の電荷、即ち、プラス電荷が集まることになる。一方、上部電極体2は、下部電極体3との電位差を解消するために、下部電極体3のプラス電荷と反対のマイナス電荷を、周辺の大気中から収集する。
【0038】
上部電極部2のマイナス電荷と下部電極部3のプラス電荷は、環状絶縁部4に穿設された貫通孔4aを通じて、上部電極体2の上部凸部2aと下部電極体3の下部凸部3aとの間で、プラス電荷とマイナス電荷の電荷移動が始まり、その後、次第に、電荷移動が、上部電極体2と下部電極体3の全体に拡がり、電荷同士が活発に動き、また、環状絶縁体4を介して、電荷の移動が生じる。そして、更に、雷雲Ctが、避雷装置Aに近づくと、電荷レベルが更に活発に動き、小電流を流すとともに、避雷極部材1の周辺の大気中から、上部電極体2が、マイナス電荷を活発に収集して、避雷極部材1の周辺の大気中のマイナス電荷の飽和を解消し、従って、落雷の発生が回避されることになる。このように、上部電極体2の天部中央部に上部凸部2aを形成するとともに、下部電極体3の底部中央部に下部凸部3aを形成したので、上部電極体2と下部電極体3との間での電荷移動を確実に、且つ、迅速に開始することができる。
【0039】
避雷極部材1を構成する上部電極体2と下部電極体3内の環状絶縁体4を介しての電荷移動現象は、雷雲Ctが近づくと始まり、更に近づくにつれて活発化し、雷雲Ctが遠ざかるにつれて活動が弱まり、雷雲が去るまで連続して生じることになる。
【0040】
フィールド試験によると、逆碗状体として形成された上部電極体2及び碗状体として形成された下部電極体3のそれぞれの外径を、半径100mmとし、環状絶縁物4の板厚を40mmとし、更に、予め周知の特に落雷が多い地域を選んで、上述した避雷装置Aを、支持部材Tに設置した結果、設置場所の半径200mの範囲には、落雷は生じなかった。
【0041】
上述したようにして、落雷を回避できるので、落雷に起因する大電流による大地電圧の上昇を回避することができ、従って、高電圧から被保護対象物を保護することができる。
【0042】
また、避雷突針を用いた角度法及び回転球体法による保護範囲を有するため、より高所に設置することを必要とせず、被保護対象物10より、避雷装置Aを、高い位置に設置すればよく、従って、鉄塔や鉄柱等の支持部材Tの建立費用を低減することができる。
【0043】
更に、上述したような構成を有する避雷装置Aを設置することにより、落雷の保護範囲が広範囲となり、周辺も保護範囲の恩恵を受けられる。
【0044】
上述した実施例には、避雷極部材1を構成する上部電極体2と下部電極体3を、内部が空洞の球体を半割りした碗状体として形成した例が示されているが、碗状体に限定されるものではなく、内部が空洞の角体を半割りした箱体のような構造であってもよい。
【0045】
また、上部電極体2と下部電極体3を大型化するとともに、環状絶縁部4を大きく厚くすることにより、電荷Cレベルの収集能力を増大することもできる。
【0046】
なお、上述実施例には、上部電極体2と下部電極体3とが、内部が空洞の逆碗状体及び碗状体として形成されている例が示されているが、上部電極体2と下部電極体3とは、少なくとも、中空部を有し、上部電極体2の中空部と下部電極体3の中空部とが、環状絶縁体4を挟んで対向するように配置されているとともに、上部電極体2の中空部と下部電極体3の中空部とが、環状絶縁体4の貫通孔4aを通して、連通していればよく、上部電極体2と下部電極体3の形状は、逆碗状体や碗状体に限定されるものではない。
【0047】
上部電極体2の形状は、縁部や角部のない逆碗状体とすることが好ましい。このように、上部電極体2を逆碗状体とすることにより、落雷を防ぐための上部電極体2には、縁部や角部のないので、落雷が生じにくくなるからである。一方、下部電極体3は、そもそも、落雷ポイントには、なり難いので、中空部を有するものであれば、例えば、円筒状や角筒状であってもよい。
【0048】
次に、図6及び図7を用いて、上述した避雷極部材1と異なる構成を有する避雷極部材50について説明するが、避雷極部材1以外の構成部材については、実質的に同じであるので、以下においては、避雷極部材1と異なる構成を有する避雷極部材50についてのみ説明する。
【0049】
本実施例においては、避雷極部材50は、内部が空洞の逆碗状(お碗の開放部が下方に位置する、お碗を伏せたような形態)の電極体51と、電極体51の天部の中央部に垂設された円柱部52とを有しており、円柱部52には、下端から上方に向かうネジ孔53が形成されている。なお、円柱部52は、電極体51内に位置するように構成することも、円柱部52が、電極体51の下端周縁51aを超えて、下方に延在するように構成することもできる。
【0050】
上述した避雷極部材50は、台座6を介して、円柱部52に形成されたネジ孔53に、長尺支持ボルト5の上端部を螺合させることにより、長尺支持ボルト5の上端部に、避雷極部材50を取り付けるように構成されている。
【0051】
次に、図8及び図9を用いて、上述した避雷極部材1と異なる構成を有する更なる避雷極部材100について説明するが、避雷極部材1以外の構成部材については、実質的に同じであるので、以下においては、避雷極部材1と異なる構成を有する避雷極部材100についてのみ説明する。
【0052】
本実施例においては、避雷極部材100は、リング状の電極体101と、電極体101の下部に連接された、内部が空洞の碗状(お碗の開放部が上方に位置する、お碗を立てたような形態)の支持部102と、支持部102の下面中央部に垂設された円柱部103とを有しており、円柱部103には、下端から上方に向かうネジ孔104が形成されている。リング状の電極体101の外径D1は、支持部102の肉厚D2より大径に形成されている。なお、支持部102は、リング状の電極体101と円柱部103とを連結するものであり、その形状は、碗状に限定されるものではなく、棒体や板材等により連結することもできる。
【0053】
上述した避雷極部材100は、台座6を介して、円柱部103に形成されたネジ孔104に、長尺支持ボルト5の上端部を螺合させることにより、長尺支持ボルト5の上端部に、避雷極部材100を取り付けるように構成されている。
【0054】
ところで、上述したように、雷雲Ctの雲底から大地Eに向かって発生した先行放電と地表面側からのストリーマー放電との結合により、雷雲Ctと大地Eとの間に、放電路が形成され、この放電路を介して、雷雲Ctと大地Eとの間に、大電流の帰還電流が流れて発生する落雷現象は、夏季に多い落雷現象である。
【0055】
一方、雷雲Ctが発生した際に、先行放電が、大地E側から雷雲Ctに向かって発生する場合があり、この上向き放電が、雷雲Ctの電荷と結びつかない場合には、放電時間は長いが、雷電流は小さいので、被保護対象物10への被害は小さい。
【0056】
また、大地E側から雷雲Ctに向かって発生する先行放電が、雷雲Ctからのストリーマー放電と結合した際には、夏季の落雷現象に比して、放電時間が長いことから、エネルギーが大きく、雷雲Ctから大電流の帰還電流が流れ、大きい落雷現象となる。このような落雷現象は、冬季に多い落雷現象で、特に、日本海側で多く発生する。このように、大地E側から雷雲Ctに向かって発生する先行放電と雷雲Ctからのストリーマー放電とが結合した、冬季に多い落雷現象は、雷雲Ctからの帰還電流が大きく、被保護対象物10に多大な被害を与えることになる。
【0057】
以下に、上述したような、冬季に多い落雷現象の際の避雷極部材1、50、100が配設された避雷装置Aの動作について説明する。
【0058】
被保護対象物10の上部に取付けられた避雷装置Aに、大気中の成熟した雷雲Ctが近づくと、雷雲Ctの電荷に誘因されて、雷雲Ctと反対の電荷を有する大地Eの地表面の電荷が、絶縁被覆ケーブルからなる引下げ線14を介して、避雷装置Aの避雷極部材1、50、100に分布することになる。そして、避雷極部材1、50、100の電荷が、一定のレベルにある場合には、放電は起きないが、所定のレベルに達すると、避雷極部材1の上部電極体2或いは避雷極部材50の電極体51又は避雷極部材100の電極体101から、雷雲Ctに向かって、先行放電が発生することになるが、引下げ線14が持つインピーダンスによって、大地Eの地表面から引下げ線14を介して上昇する電荷量が制限されるとともに、避雷極部材1の上部電極体2或いは避雷極部材50の電極体51又は避雷極部材100の電極体101の雷雲Ctと対向する上面が、突針部を有する避雷針と異なり、広面積を有する面状の放電面部として形成されているので、多くの放電点から、一度に多量の電荷が、弱い勢いで放電することになる。従って、避雷極部材1、50、100から雷雲Ctに向かう先行放電の延伸距離が短く、雷雲Ctに届き難い。よって、先行放電が、雷雲Ctの電荷と結合するようなことがなく、落雷現象の発生を防止することができる。
【0059】
また、上述したように、避雷極部材1、50、100を構成する電極体2、51、101を、逆碗状或いはリング状に形成したので、避雷極部材1、50、100を構成する電極体2、51、101の雷雲Ctと対向する放電面部を、突針部のない面状に形成したので、従って、落雷による被保護対象物10の損傷を、より効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の避雷装置の垂直断面図である。
【図2】図2は、本発明の避雷装置の分解斜視図である。
【図3】図3は、支持部材に取り付けられた状態の本発明の避雷装置の正面図である。
【図4】図4は、一部断面を含む図3の部分拡大正面図である
【図5】図5は、雷雲と支持部材に取り付けられた状態の本発明の避雷装置の正面図である。
【図6】図6は、本発明の避雷装置を構成する別の実施例の避雷極部材の正面図である。
【図7】図7は、図6に示されている避雷極部材の垂直断面図である。
【図8】図8は、本発明の避雷装置を構成する更に別の実施例の避雷極部材の正面図である。
【図9】図9は、図8に示されている避雷極部材の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0061】
A・・・・・・・・・・・・避雷装置
B・・・・・・・・・・・・ボルト
N・・・・・・・・・・・・ナット
Pa・・・・・・・・・・・上部環状パッキン
Pb・・・・・・・・・・・下部環状パッキン
T・・・・・・・・・・・・支持部材
1、50、100・・・・・避雷極部材
2・・・・・・・・・・・・上部電極体
3・・・・・・・・・・・・下部電極体
4・・・・・・・・・・・・環状絶縁体
5・・・・・・・・・・・・長尺支持ボルト
6・・・・・・・・・・・・台座
7・・・・・・・・・・・・保護筒
8・・・・・・・・・・・・保持体
10・・・・・・・・・・・被保護対象物
11A・・・・・・・・・・絶縁体
14・・・・・・・・・・・引下げ線
15・・・・・・・・・・・接地極体
51、101・・・・・・・電極体
【出願人】 【識別番号】000130835
【氏名又は名称】株式会社サンコーシヤ
【出願日】 平成18年7月31日(2006.7.31)
【代理人】 【識別番号】100099542
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 保


【公開番号】 特開2008−34670(P2008−34670A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−207358(P2006−207358)