トップ :: H 電気 :: H01 基本的電気素子

【発明の名称】 静電気対策回路
【発明者】 【氏名】植野 兼司

【氏名】米田 尚継

【氏名】田口 豊

【氏名】中山 祥吾

【要約】 【課題】本発明は、伝送インピーダンスが低下するのを抑制することができる静電気対策回路を提供することを目的とするものである。

【構成】本発明の静電気対策回路は、一端部11aとIC12に接続された他端部11bとを有する信号ライン11と、この信号ライン11とグランドとの間に接続された静電気対策部品14と、前記信号ライン11と直列接続されたコイル部品15とを備え、前記静電気対策部品14の静電容量を0.3pF以下としたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部とICに接続された他端部とを有する信号ラインと、この信号ラインとグランドとの間に接続された静電気対策部品と、前記信号ラインと直列接続されたコイル部品とを備え、前記静電気対策部品の静電容量を0.3pF以下とした静電気対策回路。
【請求項2】
静電気対策部品をコイル部品よりも信号ラインの一端部側に設けた請求項1記載の静電気対策回路。
【請求項3】
静電気対策部品を、1つの絶縁層と、この1つの絶縁層の同一面またはこの絶縁層の対向する表裏面に設けられた一対の電極と、この一対の電極間に設けられた電圧依存性抵抗材料とにより構成した請求項1記載の静電気対策回路。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器を静電気から保護するために使用される静電気対策回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の静電気対策回路は、図12、図13に示すように、IC1に接続された2本の信号ライン2と、前記2本の信号ライン2とグランド3との間に設けられたバリスタやツェナーダイオード等の静電気対策部品4と、前記2本の信号ライン2に直列接続されたコイル部品5とを備えた構成とし、そして人体と電子機器の端子が接触したときに発生する静電気パルスを静電気対策部品4にバイパスさせることにより、電子機器内部のIC1等の電気回路に印加される静電気を抑制して、この静電気による電気回路の破壊を防止するようにしていた。
【0003】
図14は、従来の静電気対策回路に8kVの静電気パルスが印加されたときのIC1に印加される電圧波形図である。この図14からも明らかなように、IC1に印加されるピーク電圧は約200Vに低減されるものである。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−223240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の静電気対策回路においては、静電気対策部品4を構成するバリスタやツェナーダイオードの静電容量が大きいため、伝送信号が静電気対策部品4を介してグランド3へ流れてしまい、これにより、伝送インピーダンス(TDR特性)が低下してしまうという課題を有していた。
【0006】
すなわち、伝送信号の高速化が進み、伝送レートがギガビットレベルまで高速化してくると輻射ノイズの発生や信号波形の変形によって信号が正確に伝わらないなどの課題が大きくなっている。この課題解決には、伝送信号の反射や損失をより厳しく抑制する必要が重要になっている。
【0007】
特に伝送ラインの設計においては、上記伝送信号の反射や損失を抑制するために伝送ラインのインピーダンスを入出力の回路やICのインピーダンスと整合させる必要があり、一般的に伝送ラインのインピーダンスを、シングルエンド回路では50Ω、差動伝送回路では100Ωにしている。
【0008】
例えば、DVIなどの高速差動伝送ラインは伝送インピーダンスを100±15Ωにする規格があり、この規格を外れた伝送インピーダンスの伝送ラインはデータ伝送ができなくなるおそれがある。
【0009】
図15は従来の静電気対策回路における伝送インピーダンスを示したもので、この図15からも明らかなように、伝送インピーダンスは規格を外れているため、データ伝送ができなくなっていた。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、伝送インピーダンスが低下するのを抑制することができる静電気対策回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、一端部とICに接続された他端部とを有する信号ラインと、この信号ラインとグランドとの間に接続された静電気対策部品と、前記信号ラインと直列接続されたコイル部品とを備え、前記静電気対策部品の静電容量を0.3pF以下としたもので、この構成によれば、静電気対策部品の静電容量が小さいため、伝送信号が静電気対策部品を介してグランドへ流れるということはなく、これにより、伝送インピーダンスが低下するのを抑制することができるという作用効果が得られるものである。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、静電気対策部品をコイル部品よりも信号ラインの一端部側に設けたもので、この構成によれば、信号ラインの一端部からICに向って侵入した静電気パルスを静電気対策部品により除去することができるとともに、除去できなかった静電気パルスは後のコイル部品がローパスフィルタとして機能して除去するため、これらにより、ICに印加される静電気をより多く抑制できるという作用効果が得られるものである。
【0014】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、静電気対策部品を、1つの絶縁層と、この1つの絶縁層の同一面または前記絶縁層の対向する表裏面に設けられた一対の電極と、この一対の電極間に設けられた電圧依存性抵抗材料とにより構成したものであり、この構成によれば、容易に静電気対策部品の静電容量を0.3pF以下にすることができるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の静電気対策回路は、一端部とICに接続された他端部とを有する信号ラインと、この信号ラインとグランドとの間に接続された静電気対策部品と、前記信号ラインと直列接続されたコイル部品とを備え、前記静電気対策部品の静電容量を0.3pF以下としているため、静電気対策部品の静電容量は小さなものとなり、これにより、伝送信号が静電気対策部品を介してグランドへ流れるということはないため、伝送インピーダンスが低下するのを抑制することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の一実施の形態における静電気対策回路の模式図、図2は同静電気対策回路の等価回路図である。
【0017】
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態における静電気対策回路は、一端部11aとIC12に接続された他端部11bとを有する2本の信号ライン11と、この信号ライン11とグランド13との間に接続された静電気対策部品14と、前記信号ライン11と直列接続されたコイル部品15とを備えており、そして前記静電気対策部品14の静電容量を0.3pF以下としたものである。
【0018】
上記構成において、前記2本の信号ライン11はそれぞれその一端部11aをコネクタ16aを介して他の電気回路(図示せず)と接続し、かつ他端部11bをコネクタ16bを介して前記IC12と接続している。
【0019】
前記静電気対策部品14は、各信号ライン11とグランド13との間に接続されたESDサプレッサーからなるもので、その静電容量は0.3pF以下となっている。また、この静電気対策部品14は、図3、図4に示すように、1つの絶縁層17と、この1つの絶縁層17の同一面に設けられた一対の電極18a,18bと、この一対の電極18a,18b間に設けられた電圧依存性抵抗材料19とを備えた構造となっている。
【0020】
なお、前記静電気対策部品14は、バリスタのように複数の絶縁層に設けられた複数対の電極を用いた構造にすれば、静電容量は大きくなるが、上記図3、図4に示すような構造にすることによって、容易に静電容量を0.3pF以下とすることができる。また、前記一対の電極18a,18bは絶縁層17の対向する表裏面に設けるようにしてもよいが、図3、図4に示すような構造にすれば、一対の電極18a,18b間の対向面積を小さくできるため、静電容量をより低減できるものである。
【0021】
また、前記静電気対策部品14は、一対の電極18a,18bのうち、一方の電極18aを信号ライン11と接続し、かつ他方の電極18bをグランド13と接続している。そしてまた、電圧依存性抵抗材料19は、アルミニウム、ニッケル、銅のうち少なくとも1つを含む金属粉と、シリコン、エポキシ、フェノールのうち少なくとも1つを含む樹脂等からなる材料を使用している。
【0022】
前記コイル部品15は、各信号ライン11とそれぞれ直列接続されたコモンモードノイズフィルタ、コモンモードチョーク、インダクタ等のインダクタンス要素を有するものである。なお、この場合、コモンモードノイズフィルタを使用すればコモンモードノイズを除去することもできる。また、このコイル部品15の各インダクタンス要素における一対の電極はそれぞれ信号ライン11と接続されている。
【0023】
なお、前記コイル部品15のインピーダンスは、静電気対策部品14の静電容量に応じて選ぶ必要があり、例えば伝送ラインのインピーダンスが50Ωの場合、コイル部品15のインピーダンスは50〜60Ωにすればよい。また、このコイル部品15を設けることによって、伝送インピーダンスを大きくすることができ、これにより、伝送インピーダンス(TDR特性)を規格の範囲内に収めることができる。
【0024】
上記した本発明の一実施の形態においては、静電気対策部品14の静電容量を0.3pF以下と小さくしているため、伝送信号が静電気対策部品14を介してグランド13へ流れるということはなく、これにより、伝送インピーダンスが低下するのを抑制することができるという効果が得られるものである。
【0025】
図5は本発明の一実施の形態における静電気対策回路における伝送インピーダンスを示す図である。
【0026】
図5から明らかなように、伝送インピーダンスは低下することなく規格の範囲内に収めることができる。また、これにより、データ伝送ができなくなるというのも防止できる。
【0027】
また、図6は静電容量と伝送インピーダンスとの関係を示す図で、この図6において、Aは0.1pF、Bは0.3pF、Cは0.5pFの静電容量を有する静電気対策部品14におけるそれぞれの伝送インピーダンスを示している。
【0028】
図6から明らかなように、静電気対策部品14の静電容量を0.3pF以下にすれば、伝送インピーダンスを規格の範囲内に収めることができるものである。
【0029】
そしてまた、本発明の一実施の形態における静電気対策回路においては、図7に示すように、8kVの静電気パルスが印加された場合にIC12に印加されるピーク電圧を大幅に低減できるものである。
【0030】
なお、図8、図9に示すように、静電気対策部品14をコイル部品15よりも信号ライン11の一端部11a側、すなわち、IC12に向って静電気パルスが侵入してくる前方側に設けるようにすれば、信号ライン11の一端部11aからIC12に向って侵入した静電気パルスを静電気対策部品14により除去することができるとともに、除去できなかった静電気パルスは後のコイル部品15がローパスフィルタとして機能して除去するため、これらにより、IC12に印加される静電気をより多く抑制できるものである。
【0031】
図10は図8、図9に示した静電気対策回路において、8kVの静電気パルスが印加されたときのIC12に印加される電圧波形図を示したもので、この図10から明らかなように、IC12に印加されるピーク電圧は約60Vまで大幅に低減される。また、図11に示すように、伝送インピーダンスも規格の範囲内に収めることができる。そしてまた、万一、静電気対策部品14の静電容量により伝送インピーダンスが低下したとしても、静電気対策部品14の後ろにコイル部品15を設けているため、伝送インピーダンスを大きいまま保持することができるものである。
【0032】
なお、上記本発明の一実施の形態においては、信号ライン11が2本である差動伝送回路について説明したが、1本のシングルエンド回路においても上記本発明の一実施の形態と同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る静電気対策回路は、伝送インピーダンスの低下を抑制できるという効果を有するものであり、各種電子機器を静電気から保護するために使用される静電気対策回路等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態における静電気対策回路の模式図
【図2】同静電気対策回路の等価回路図
【図3】同静電気対策回路に用いる静電気対策部品の上面図
【図4】同静電気対策回路に用いる静電気対策部品の斜視図
【図5】同静電気対策回路における伝送インピーダンスを示す図
【図6】静電容量と伝送インピーダンスとの関係を示す図
【図7】同静電気対策回路に静電気パルスが印加されたときのICに印加される電圧波形図
【図8】本発明の一実施の形態における他の例を示す静電気対策回路の模式図
【図9】同静電気対策回路の等価回路図
【図10】同静電気対策回路に静電気パルスが印加されたときのICに印加される電圧波形図
【図11】同静電気対策回路における伝送インピーダンスを示す図
【図12】従来の静電気対策回路の模式図
【図13】同静電気対策回路の等価回路図
【図14】同静電気対策回路に静電気パルスが印加されたときのICに印加される電圧波形図
【図15】同静電気対策回路における伝送インピーダンスを示す図
【符号の説明】
【0035】
11 信号ライン
11a 信号ラインの一端部
11b 信号ラインの他端部
12 IC
13 グランド
14 静電気対策部品
15 コイル部品
17 絶縁層
18a,18b 一対の電極
19 電圧依存性抵抗材料
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年7月24日(2006.7.24)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄

【識別番号】100109667
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 浩樹

【識別番号】100109151
【弁理士】
【氏名又は名称】永野 大介


【公開番号】 特開2008−28214(P2008−28214A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−200317(P2006−200317)