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【発明の名称】 回転体及びその製造方法及び回転式電子部品
【発明者】 【氏名】木下 茂明

【氏名】一柳 和夫

【氏名】播 篤志

【氏名】佐藤 卓

【要約】 【課題】小型・薄型化を図ることができる回転体及びその製造方法及び回転式電子部品を提供する。

【構成】第1ケース10に設けた収納部11内に回動自在に収納され、且つ摺動子100を取り付けてなる回転体80において、摺動子100は、回転体80内に設置される基部101と、回転体80の外周側面から半径方向外方に向かって突出する摺動冊子103とを有して構成される。回転体80の外周側面から突出した摺動冊子103は、回転体80の回転方向に沿うように湾曲している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに設けた収納部内に回動自在に収納され、且つ摺動子を取り付けてなる回転体において、
前記摺動子は、前記回転体内に設置される基部と、前記回転体の外周側面から半径方向外方に向かって突出する摺動冊子とを有して構成されていることを特徴とする回転体。
【請求項2】
前記回転体の外周側面から突出した摺動冊子は、回転体の回転方向に沿うように湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の回転体。
【請求項3】
前記摺動子の基部は、前記回転体の内部にインサート成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転体。
【請求項4】
ケースと、ケースに設けた収納部内に回動自在に収納される回転体と、前記回転体とケースの間に設置され回転体の回転によってその電気的出力を変化する電気的機能部とを具備する回転式電子部品において、
前記回転体は請求項1又は2又は3に記載の回転体であり、
前記電気的機能部は回転体側に設置される前記摺動子と、ケース側に設置される摺接パターンとを具備して構成され、
一方前記回転体は、ケース又は回転体の何れか一方に設けた軸部を他方に設けた軸支孔に回動自在に挿入することで回動自在に軸支されていることを特徴とする回転式電子部品。
【請求項5】
線材をコイル状に巻き回してなるコイル部及びコイル部の両側から引き出されるコイル引出部とを有するコイルスプリングを具備し、
前記ケース又は回転体の何れか一方に設けた軸部を前記コイルスプリングのコイル部に挿入し、コイル部両側のコイル引出部を回転体に設けた一対の係止部に係止すると共に前記ケースに設けた一対の当接部に係止し、これによって回転体の自動復帰機構を構成し、
さらにケース底面の前記係止部に対向する部分に係止部の移動範囲にわたる係止部挿入部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の回転式電子部品。
【請求項6】
前記摺接パターンは回路基板上に形成され、且つこの回路基板には前記摺接パターンに接続される端子板当接部が形成され、
前記回路基板は前記ケース内にその摺接パターンの部分が収納部の底面に露出するとともに、前記端子板当接部に端子板を当接した状態でケース内にインサート成形され、各端子板から前記ケースの外部に突出する端子の先端部分を同一面としてこの面を実装面としたことを特徴とする請求項4又は5に記載の回転式電子部品。
【請求項7】
ケースに設けた収納部内に回動自在に収納され、且つ摺動子を取り付けてなる回転体の製造方法において、
基部と基部の外周から外方に向かって突出する摺動冊子とを具備する摺動子を用意し、
金型に設けた回転体成型用のキャビティー内に前記摺動子の基部を設置し、その際金型からキャビティー内に突出するピンを前記摺動子の基部に当接して支持し、前記基部の前記ピンが当接した反対面側から溶融成形樹脂を圧入してキャビティー内を満たし、
溶融成形樹脂硬化後にキャビティーを取り外すことを特徴とする回転体の製造方法。
【請求項8】
前記キャビティー内に溶融成形樹脂を圧入する際、前記基部に設けられている樹脂貫通穴に前記溶融成形樹脂を注入することを特徴とする請求項7に記載の回転体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式可変抵抗器等の回転式電子部品に用いて好適な回転体及びその製造方法及び回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式可変抵抗器や回転式スイッチ等の回転式電子部品は、ケースに設けた収納部内に回転自在に回転体を収納し、その際回転体の下面(ケースの収納部の底面に対向する面)に取り付けた摺動子をケースの収納部底面に設けた摺接パターンに当接し、回転体を収納したケースの上面をカバーで覆って構成されていた(例えば特許文献1)。
【0003】
そしてこの種の回転式電子部品は、その厚みをより薄くすることが求められているが、ケースや回転体を構成する成形樹脂の厚みをより薄くすることは、強度上の限界があり、さらなる回転式電子部品の小型化は困難となっていた。
【特許文献1】特開2005−78844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、小型・薄型化を図ることができる回転体及びその製造方法及び回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、ケースに設けた収納部内に回動自在に収納され、且つ摺動子を取り付けてなる回転体において、前記摺動子は、前記回転体内に設置される基部と、前記回転体の外周側面から半径方向外方に向かって突出する摺動冊子とを有して構成されていることを特徴とする回転体にある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、前記回転体の外周側面から突出した摺動冊子は、回転体の回転方向に沿うように湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の回転体にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、前記摺動子の基部は、前記回転体の内部にインサート成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転体にある。
【0008】
本願請求項4に記載の発明は、ケースと、ケースに設けた収納部内に回動自在に収納される回転体と、前記回転体とケースの間に設置され回転体の回転によってその電気的出力を変化する電気的機能部とを具備する回転式電子部品において、前記回転体は請求項1又は2又は3に記載の回転体であり、前記電気的機能部は回転体側に設置される前記摺動子と、ケース側に設置される摺接パターンとを具備して構成され、一方前記回転体は、ケース又は回転体の何れか一方に設けた軸部を他方に設けた軸支孔に回動自在に挿入することで回動自在に軸支されていることを特徴とする回転式電子部品にある。
【0009】
本願請求項5に記載の発明は、線材をコイル状に巻き回してなるコイル部及びコイル部の両側から引き出されるコイル引出部とを有するコイルスプリングを具備し、前記ケース又は回転体の何れか一方に設けた軸部を前記コイルスプリングのコイル部に挿入し、コイル部両側のコイル引出部を回転体に設けた一対の係止部に係止すると共に前記ケースに設けた一対の当接部に係止し、これによって回転体の自動復帰機構を構成し、さらにケース底面の前記係止部に対向する部分に係止部の移動範囲にわたる係止部挿入部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の回転式電子部品にある。
【0010】
本願請求項6に記載の発明は、前記摺接パターンは回路基板上に形成され、且つこの回路基板には前記摺接パターンに接続される端子板当接部が形成され、前記回路基板は前記ケース内にその摺接パターンの部分が収納部の底面に露出するとともに、前記端子板当接部に端子板を当接した状態でケース内にインサート成形され、各端子板から前記ケースの外部に突出する端子の先端部分を同一面としてこの面を実装面としたことを特徴とする請求項4又は5に記載の回転式電子部品にある。
【0011】
本願請求項7に記載の発明は、ケースに設けた収納部内に回動自在に収納され、且つ摺動子を取り付けてなる回転体の製造方法において、基部と基部の外周から外方に向かって突出する摺動冊子とを具備する摺動子を用意し、金型に設けた回転体成型用のキャビティー内に前記摺動子の基部を設置し、その際金型からキャビティー内に突出するピンを前記摺動子の基部に当接して支持し、前記基部の前記ピンが当接した反対面側から溶融成形樹脂を圧入してキャビティー内を満たし、溶融成形樹脂硬化後にキャビティーを取り外すことを特徴とする回転体の製造方法にある。
【0012】
本願請求項8に記載の発明は、前記キャビティー内に溶融成形樹脂を圧入する際、前記基部に設けられている樹脂貫通穴に前記溶融成形樹脂を注入することを特徴とする請求項7に記載の回転体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、回転体の外周側面から半径方向外方に向かって摺動子の摺動冊子を突出したので、摺動子を回転体の厚みの中に包含でき、その分この回転体を装着する回転式電子部品の厚みの薄型化が図れる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、外周側面から摺動冊子を突出する構造の回転体であっても、その外形を小型化できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、摺動子の基部を回転体内にインサート成形するので、摺動子が確実に回転体に固定できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は2又は3に記載の回転体を用いることで、回転式電子部品の厚みの薄型化が図れる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ケース底面に設けた係止部挿入部に、回転体に設けた係止部を挿入するので、コイルスプリングのコイル引出部が係止部から外れる恐れを確実に防止できると同時に、回転体をケース底面に接近して設置でき、回転式電子部品の薄型化が図れる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、回転式電子部品を容易に面実装構造にすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、例え摺動子が薄くて溶融成形樹脂の注入圧力によって変形する恐れがある場合でも、ピンが摺動子を支えることで、前記変形を確実に防止できる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、回転体に対する摺動子の固定がより強固になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかる回転体80を用いた回転式電子部品1−1を上側から見た斜視図、図2は回転式電子部品1−1を下側から見た斜視図、図3は図1のA−A断面斜視図、図4は回転式電子部品1−1を上側から見た分解斜視図、図5は回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上側(上)」とはこの回転式電子部品1−1を載置する面の反対側の面、「下側(下)」とはこの回転式電子部品1−1を載置する側の面を言うものとする。
【0022】
図4,図5に示すようにこの回転式電子部品1−1は、1枚の回路基板40と3枚の端子板50,55,60とがインサート成形された第1ケース10と、自動復帰機構を構成する弾発手段(以下この実施形態では「コイルスプリング」という)70と、電気的機能部である摺動子100がインサート成形された回転体80と、前記コイルスプリング70と回転体80とを収納した第1ケース10の上面に取り付けられる第2ケース120とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0023】
図6は第1ケース10と第1ケース10内にインサート成形される回路基板40と端子板50,55,60とを分離してそれぞれを別々に示す分解斜視図である。同図に示すように第1ケース10は、合成樹脂を略矩形板状に成形し、その上面中央に略円形凹状の収納部11を設けるとともに、第1ケース10の外周辺の内の1辺の中央部分を前記収納部11の底面に至るまで切り欠くことで操作つまみ挿通部13を設け、また収納部11の中央にその底面から突出する円柱状の軸部15を設けて構成されている。操作つまみ挿通部13の両端部分には下記するコイルスプリング70のコイル引出部73,73を弾接する自動復帰機構を構成する当接部14,14を設けている。収納部11の底面の前記軸部15の両側部には一対の円形の凹部19が設けられ、また底面の前記操作つまみ挿通部13の両端近傍部分には円弧状の凹部からなる係止部挿入部21が設けられている。係止部挿入部21には下記する回転体80の係止部87が収納される。また第1ケース10の上端面の2つの角部と、それ以外の二ヶ所とに、それぞれ円形の凹部25が設けられている。前記角部の2つの凹部25の底面には端子板55の表面が露出しており、図6の奥側の外周側壁上の上端面中央の凹部25の底面には端子板50の表面が露出しており、図6の手前側の外周側壁上の上端面中央の凹部25の底面には端子板60の表面が露出している。第1ケース10の下面の所定位置にはこの第1ケース10を下記する図9に示す回路基板200に設けた位置決め穴203,203に挿入して位置決めする位置決め突起29,29が設けられている。第1ケース10の下面には下記する第2ケース120の取付部123の先端を収納する凹状の係止部35を設けている。この実施形態においては第1ケース10の材質としてポリアミド樹脂を用いているが、他の各種樹脂材を用いても良い。
【0024】
回路基板40は可撓性を有する合成樹脂フイルム上に円弧状に一対の電気的機能部である摺接パターン41,43とそれらに接続する端子板当接部45,47,49とを設けてなるフレキシブル回路基板によって構成されている。合成樹脂フイルムの材質はこの実施形態ではポリフェニレンスルフイド(PPS)フイルムを用いているが、ポリイミドフイルムやポリエチレンテレフタレートフイルム等、他の各種材質のものを用いても良い。一対の摺接パターン41,43は同一円弧上にあり、一方の摺接パターン41は高導電性のコモンパターン、もう一方の摺接パターン43は抵抗体パターンである。摺接パターン41は銀ペーストを印刷してなるパターン上に硫化対策のためのカーボンペーストを印刷して構成され、摺接パターン43はカーボンペーストを印刷して構成されている。端子板当接部45は摺接パターン41の一端に接続されその外方に設けられている。端子板当接部47,49は摺接パターン43の両側に接続されその外方に設けられている。端子板当接部45,47,49は何れも銀ペーストを印刷してなるパターン上にウレタン樹脂中に銀粉を混練してなる銀ペーストを印刷して構成されている。ウレタン樹脂を用いた銀ペーストは所定のゴム弾性を有する。回路基板40中央の前記第1ケース10の軸部15に対向する位置には円形に貫通する貫通孔46が設けられており、また貫通孔46の両側の前記第1ケース10の凹部19に一致する位置にも円形に貫通する貫通孔48が設けられている。端子板50,55,60は金属板製であり、それぞれ前記回路基板40の外周近傍部分を囲むように設置され、端子板50は略矩形状であって前記端子板当接部45上に位置する形状に、端子板55は細長い略矩形状であってその一端部が前記端子板当接部47上に位置する形状に、端子板60は略矩形状であって前記端子板当接部49上に位置する形状に形成されている。各端子板50,55,60の外方を向く辺からはそれぞれ細帯状の端子51,57,61を突出し、その根元部分を直角に下方向に向けて折り曲げ、さらにその先端部分を直角に外方向(端子板50,55,60から離れる方向)に向けて折り曲げ、前記先端部分を実装面53,59,63として構成している。これら実装面53,59,63の下面は第1ケース10の下面と同一面に位置する。端子板50,55,60の材質はこの実施形態ではリン青銅板の表面に銀めっきを施したものを用いているが、他の材質であっても良い。
【0025】
そして実際には図4,図5に示すように、回路基板40と各端子板50,55,60は、第1ケース10内にインサート成形されるが、その際回路基板40の摺接パターン41,43は第1ケース10の収納部11の底面に露出する。また回路基板40の端子板当接部45,47,49上にはそれぞれ端子板50,55,60が載置され、両者は第1ケース10を構成する合成樹脂によって挟持され確実に接続される。具体的に前記インサート成形工程を説明すると、回路基板40の端子板当接部45,47,49に端子板50,55,60をそれぞれ当接した状態でこれら回路基板40と端子板50,55,60とを金型内に収納し、これら回路基板40と端子板50,55,60の周囲に形成される金型のキャビティー(第1ケース10の形状)内に溶融成形樹脂を、回路基板40の下面側(摺接パターン41,43等を設けていない反対面側)から圧入し、その際の圧力によって前記回路基板40を端子板50,55,60に押し付けながら溶融成形樹脂をキャビティー内に満たし、樹脂硬化後に金型を取り外し、第1ケース10を取り出す。第1ケース10の凹部19は、金型のキャビティー内に突出して前記回路基板40の貫通孔48に挿入される位置決め用のピンによって形成される。また第1ケース10の凹部25は、金型のキャビティー内に突出してその先端面が各当接板50,55,60を支えて注入される溶融成形樹脂によって当接板50,55,60が変形・変位するのを防止するピンによって形成される。
【0026】
コイルスプリング70はバネ弾性を有する線材の中間部分を巻き回して巻き回した部分をコイル部71、その両端から直線状に突出する引出部分を弾発部(以下この実施形態では「コイル引出部」という)73,73として構成されている。コイルスプリング70の材質としてこの実施形態ではステンレス製の線材を用いているが、他の各種材質の線材を用いても良い。
【0027】
図7は回転体80と回転体80内にインサート成形される摺動子100とを分離してそれぞれを別々に示す分解斜視図である。また図8(a)は摺動子100をインサート成形した回転体80の平面図、図8(b)は摺動子100単体の平面図、図8(c)は回転体80単体の平面図である。両図に示すように回転体80は、合成樹脂を略矩形平板状に成形した本体部81と、本体部81の外周から半径方向外側(下記する軸支孔85の中心軸から放射状に延びる直線上)に向かって突出する棒状の操作つまみ83とによって構成されている。
【0028】
本体部81は前記第1ケース10の収納部11内に回動自在に収納される外形寸法形状に形成されている。本体部81は略矩形状であるが、詳細に説明すると、本体部81には上下に貫通する円形の軸支孔85があり、操作つまみ83を設けていない反対側の軸支孔85の外周は軸支孔85に沿って円弧状の切り欠き91がある。言い換えれば図8(a)に示すように、摺動子100をインサート成形した回転体80の切り欠き91は、摺動冊子103の円弧形状に合せて摺動冊子103から同一寸法離れるように円弧状に形成されている。また本体部81の下面の前記操作つまみ83を突出するその両側部分には一対の下方向に突出する自動復帰機構を構成する係止部87,87が設けられている。軸支孔85は前記第1ケース10の軸部15に回動自在に挿入される寸法形状に形成されている。また軸支孔85の下部は図5に示すようにその内径を大きくして前記コイルスプリング70のコイル部71を収納するコイル部収納部89となり、またコイル部収納部89よりも操作つまみ83側の面は扇状に凹むコイル引出部収納部88となっている。即ちコイル部収納部89とコイル引出部収納部88とを合せてコイルスプリング収納部を形成している。この実施形態においては回転体80の材質としてポリアミド樹脂を用いているが、他の各種樹脂材を用いても良い。
【0029】
摺動子100は前記回転体80内に設置(内蔵)される基部101と、前記回転体80の外周側面から突出して回転体80の回転方向に向かって延びる摺動冊子103とを有して構成されている。基部101はその外形形状が前記回転体80の本体部81の外形形状と略一致するように略矩形状であり、突出した摺動冊子103に対向する側の下記する連結部111以外の外周辺は摺動冊子103の円弧形状に合せて摺動冊子103から同一寸法離間するように円弧状に形成されている。また基部101は中央に上下に貫通する円形の開口部105を有し、また開口部105の両側に樹脂貫通穴109を設けて構成されている。樹脂貫通穴109はその内部に回転体80を構成する成形樹脂を入り込ませ、樹脂貫通穴109の上下の成形樹脂を一体に連結するためのものであり、摺動子100の固定がより強固になる。開口部105の内径は、前記回転体80の軸支孔85の内径よりも少し大きく形成されている。摺動冊子103は基部101から半径方向外側に向けて突出する連結部111の先端からその両側に向けて円弧状に形成され、円弧の両側部分に一対ずつの冊子部113を設け、冊子部113中に下方向に湾曲変形する弾接部115を設けて構成されている。この実施形態では連結部111から見て摺動冊子103は左右対象になっている。摺動子100の材質はこの実施形態ではリン青銅板の表面に銀めっきを施したものを用いているが、他の材質であっても良い。この摺動子100は、円弧の両側部分に一対の冊子部113を設けたので、1トラック上の摺接パターン41,43に摺接でき、外形の小型化が図れる。また弾接部115の弾接力は、冊子部113の他に連結部111の部分も含んだ長さによって得られるので、その分長さが長くなり、冊子部113と連結部111全体の変形量を小さくでき、摺動子100の高寿命化が図れる。
【0030】
そして実際には図4,図5に示すように、摺動子100は、回転体80内にインサート成形されるが、その際摺動子100の基部101が回転体80の本体部81内に内蔵される。摺動子100の摺動冊子103は本体部81の外周を円弧状に囲むように位置する。図12は回転体80への摺動子100のインサート成形方法を示す図(図8(a)のC−C線断面部分)である。同図を用いて具体的にインサート成形工程を説明すると、金型500,510に設けた回転体80成型用のキャビティーC1内に摺動子100の基部101を設置する。その際金型510からキャビティーC1内に突出するピン513を前記摺動子100の基部101に当接して支持する。基部101のピン513が当接した反対面側(金型500のゲート503)から溶融成形樹脂を圧入してキャビティーC1内を満たす。このとき前記基部101に設けている樹脂貫通穴109には溶融成形樹脂が注入され、埋められる。溶融成形樹脂硬化後にキャビティーC1を取り外し、摺動子100をインサート成形した回転体80を取り出す。なお図7に示す軸支孔85の両側にある一対の凹部86は、前記摺動子100を支持するピン513によって形成されるものである。
【0031】
なお回転体80は図8に示すように、操作つまみ83と軸支孔85の中心とを結ぶ線に対して線対称に形成されており、また摺動子100は開口部105の中心と連結部111の中央部分とを結ぶ線に対して線対称に形成されている。そして前記操作つまみ83と、摺動冊子103が回転体80から突出する連結部111の部分とは、軸支孔85の中心(即ち開口部105の中心)から見て180°反対側に位置し、従って摺動子100をインサート成形した回転体80は、操作つまみ83と軸支孔85の中心とを結ぶ線(即ち開口部105の中心と連結部111とを結ぶ線)に対して左右対称(線対称)の形状となっている。従って左右一対の弾接部115も左右対称なので、これら一対の弾接部115を回路基板40の摺接パターン41,43に摺接させて回転した際、左右の回転力が同一になり、左右何れの方向へもスムーズな回転が行える。また基部101の外径寸法を前記回転体80の本体部81の外径寸法と略同じになるように大きく形成しているので、回転体80に摺動子100を強い強度で固定できる。なお回転体80の一対の凹部86と、摺動子100の樹脂貫通穴109の位置は重ならないようにしている。
【0032】
第2ケース120は平板矩形状で前記第1ケース10上を覆う外形寸法形状のケース本体部121と、ケース本体部121の対向する一対の外周辺から突出して下方向に直角に折り曲げられる複数本(4本)の取付部123とを具備して構成されている。第2ケース120の材質はこの実施形態ではステンレス板を用いているが、他の金属板、その他の各種材質のものを用いても良い。
【0033】
次にこの回転式電子部品1−1の組立方法を主として図4,図5を用いて説明する。まず第1ケース10の収納部11内にコイルスプリング70を収納し、その際コイルスプリング70のコイル部71に第1ケース10の軸部15を挿入し、同時にコイルスプリング70の両コイル引出部73を第1ケース10の当接部14に当接する。次に摺動子100を取り付けた回転体80を前記収納部11内に収納し、その際回転体80の軸支孔85内に前記軸部15を回動自在に挿入し、同時に回転体80の一対の係止部87の内側(対向する側)にコイルスプリング70の両コイル引出部73を当接する。またこのとき回転体80の操作つまみ83は第1ケース10の操作つまみ挿通部13を通過してその外側に突出する。操作つまみ83はコイルスプリング70の両コイル引出部73によって中立位置に保持される。このとき摺動子100の両弾接部115,115はそれぞれ摺接パターン41,43の略中央に弾接している。そして回転体80等を収納した第1ケース10の上に第2ケース120を被せ、その際第2ケース120の各取付部123を第1ケース10の外周側壁に沿わせ、4つの取付部123の内の3つの取付部123を第1ケース10の下面側に折り曲げて矩形凹状の係止部35に収納する。もう1つの取付部123はその下面が第1ケース10の下面に一致するように外方向に向けて折り曲げ、アースの取り出し等に利用する。これによって回転式電子部品1−1が完成する。
【0034】
そしてこの回転式電子部品1−1は、例えば図9に示す回路基板200上に載置され、回路基板200に設けた各端子パターン201及びアースパターン205に回転式電子部品1−1の前記各実装面53,59,63及び第1ケース10の外方向に向けて折り曲げた1つの取付部123の先端部分(アースパターン205に対向する面、実装面)を半田付け等によって取り付ける。203,203は第1ケース10の位置決め突起29,29を挿入して位置決めする位置決め穴である。そして例えば上記第2ケース120のケース本体部121上には図示しない回転つまみが回転自在に設置され、この回転つまみの下部から突出する係止部を前記操作つまみ83に係止することで回転つまみの回転によって操作つまみ83を回動するようにする。なお操作つまみ83の先端部分は、根元部分よりも上下に厚みを厚く形成し、これによってこの操作つまみ83の先端部分に図示しない回転つまみの係止部を係止した際の強度を強くしている。ところで操作つまみ83を突出した側の外周側面ではこの操作つまみ83が可動し、また上述のように操作つまみ83の厚みが厚いので、この外周側面に面実装用の実装面53,59,63を設置するのは困難である。そこでこの実施形態では、各実装面53,59,63、即ち端子51,57,61を回転式電子部品1−1の操作つまみ83を突出する外周側面の両側の外周側面に配置したのである。なお上記以外の外周側面に端子51,57,61を設置しても良い。
【0035】
次にこの回転式電子部品1−1の動作を説明する。まず例えば上述のように操作つまみ83に係止されて操作つまみ83と一体に回転する回転つまみを回転すると、回転つまみと共に回転体80及びこれに取り付けられている摺動子100が回転し、摺動子100の弾接部115が摺接パターン41,43上を摺動することで、各端子板50,55,60間の電気的出力(この実施形態の場合は抵抗値)が変化する。回転体80の左右への回転は、その回転力が前述のように同一なので、スムーズに行える。前記回転体80が回転した際、前記コイルスプリング70の一方のコイル引出部73が回転体80の一方の係止部87によって押圧され、その際もう一方のコイル引出部73は第1ケース10の当接部14に当接したままなのでコイルスプリング70のコイル部71は絞られ、弾発力が増加し、前記回転体80を回転させる力を解除すると回転体80は元の中立位置に自動復帰し、その電気的出力も元の状態に戻る。回転体80の係止部87は第1ケース10の係止部挿入部21にその先端が挿入されており、従って回転体80を回転した際、係止部挿入部21内を係止部87が移動することとなるが、これによってコイル引出部73は係止部87から外れることがなくなる。
【0036】
図10は本発明の第2実施形態にかかる回転式電子部品1−2を上側から見た斜視図、図11は回転式電子部品1−2を上側から見た分解斜視図である。両図に示す回転式電子部品1−2において、前記図1〜図9に示す回転式電子部品1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図9に示す実施形態と同じである。
【0037】
この回転式電子部品1−2において前記回転式電子部品1と相違する点は、回転体80の操作つまみ83Bを、第1実施形態のように本体部81の外周から半径方向外側に向かって突出させる代りに、本体部81の上面側(本体部81の回転軸に平行で回路基板40から離れる方向)に柱状に突出する操作つまみ83Bを設け、これに伴なって、第2ケース120のケース本体部121の前記操作つまみ83Bに対向する位置に、操作つまみ83Bの回動範囲にわたって円弧状に貫通するつまみ挿通孔125を形成し、同時に不要となった第1ケース10のつまみ挿通部13を省略して外周側壁で覆った点である。なおこの回転式電子部品1−2の組立方法及び他の回路基板への面実装方法及び操作方法は何れも前記回転式電子部品1−1と同様である。このように回転式電子部品1−2を構成すれば、操作つまみ83Bを回転式電子部品1−2の上面側から操作でき、また回転式電子部品1−2の設置面積の小型化が図れる。
【0038】
なお上記各実施形態では第1ケース10側に収納部11や回路基板40等を取り付けたが、逆に第2ケース120側に収納部を設けても良く、場合によっては第2ケース120側に回路基板等を取り付けても良い。また上記実施形態では回転体80を回動自在に軸支するため、回転体80に設けた軸支孔85に第1ケース10に設けた軸部15を回動自在に挿入したが、軸部15は第2ケース120に設けても良い。また逆に回転体80に軸部を設け、第1ケース10および/又は第2ケース120に軸支孔を設けてこれを回動自在に軸支しても良い。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、回転体80に取り付けられる摺動子100が、回転体80内に設置される基部101と、回転体80の外周側面から半径方向外方に向かって突出する摺動冊子103とを有して構成されている。これによって摺動子100を回転体80の厚みの中に包含でき、その分この回転体80を装着する回転式電子部品1−1,1−2の厚みの薄型化が図れる。また回転体80の外周側面から突出した摺動冊子103は、回転体80の回転方向に沿うように湾曲している。これによって外周側面から摺動冊子103を突出する構造の回転体80であっても、その外形を小型化できる。また摺動子100の基部101は、回転体80の内部にインサート成形されている。これによって摺動子100が確実に回転体80に固定できる。
【0040】
また本発明は、第1,第2ケース10,120と、第1ケース10に設けた収納部11内に回動自在に収納される回転体80と、回転体80と第1ケース10の間に設置され回転体80の回転によってその電気的出力を変化する電気的機能部とを具備する回転式電子部品1−1,1−2であって、回転体80として前記本願発明に係る回転体80を用い、また前記電気的機能部は回転体80側に設置される摺動子100と、第1ケース10側に設置される摺接パターン41,43とを具備して構成され、一方回転体80は、第1ケース10に設けた軸部15を回転体80に設けた軸支孔85に回動自在に挿入することで回動自在に軸支されて構成されている。このように本発明に係る回転体80を用いることで、回転式電子部品1−1,1−2の厚みの薄型化が図れる。
【0041】
また上記回転式電子部品1−1,1−2は、線材をコイル状に巻き回してなるコイル部71及びコイル部71の両側から引き出されるコイル引出部73とを有するコイルスプリング70を具備し、第1ケース10に設けた軸部15にコイルスプリング70のコイル部71を挿入し、コイル部71両側のコイル引出部73を回転体80に設けた一対の係止部87に係止すると共に第1ケース10に設けた一対の当接部14に係止し、これによって回転体80の自動復帰機構を構成し、さらに第1ケース10底面の係止部87に対向する部分に係止部87の移動範囲にわたる係止部挿入部21を設けた構成となっている。即ち第1ケース10底面に設けた係止部挿入部21に、回転体80に設けた係止部87を挿入するので、コイルスプリング70のコイル引出部73が係止部87から外れる恐れを確実に防止できると同時に、回転体80を第1ケース10底面に接近して設置でき、回転式電子部品1−1,1−2の薄型化が図れる。
【0042】
また上記回転式電子部品1−1,1−2では、摺接パターン41,43は回路基板40上に形成され、且つこの回路基板40には摺接パターン41,43に接続される端子板当接部45,47,49が形成され、回路基板40は第1ケース10内にその摺接パターン41,43の部分が収納部11の底面に露出するとともに、端子板当接部45,47,49に端子板50,55,60を当接した状態で第1ケース10内にインサート成形され、各端子板50,55,60から第1ケース10の外部に突出する端子51,57,61の先端部分を同一面としてこの面を実装面53,59,63とした。これによって回転式電子部品1−1,1−2を容易に面実装構造にすることができる。
【0043】
また本発明における回転体80の製造方法は、基部101と基部101の外周から外方に向かって突出する摺動冊子103とを具備する摺動子100を用意し、金型500,510に設けた回転体成型用のキャビティーC1内に摺動子100の基部101を設置し、その際金型510からキャビティーC1内に突出するピン513を摺動子100の基部101に当接して支持し、基部101のピン513が当接した反対面側から溶融成形樹脂を圧入してキャビティーC1内を満たし、溶融成形樹脂硬化後にキャビティーC1を取り外すことによって行った。これによって例え摺動子100が薄くて溶融成形樹脂の注入圧力によって変形する恐れがある場合でも、ピン513が摺動子100の基部101を支えることで、前記変形を確実に防止できる。また本発明では、キャビティーC1内に溶融成形樹脂を圧入する際、基部101に設けられている樹脂貫通穴109に溶融成形樹脂を注入するので、回転体80に対する摺動子100の固定がより確実になる。
【0044】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では第1ケース10と第2ケース120とによってケースを構成したが、何れか一方のみでケースを構成しても良い。また上記実施形態の回転式電子部品1−1,1−2は回転体80の回転によって抵抗値が変化する回転式可変抵抗器であるが、回転体80の回転によってスイッチのオンオフが変化する回転式スイッチで構成しても良い。要は回転体とケースの間に設置され回転体の回転によってその電気的出力を変化する電気的機能部を具備する回転式電子部品であれば良い。なお場合によっては摺動子100の基部101を回転体80の内部にインサート成形以外の方法によって取り付けても良い。また上記実施形態では摺接パターン41,43を回路基板40上に形成したが、摺接パターン41,43は金属板等、他の各種構造で構成しても良い。また回路基板40は第1ケース10にインサート成形以外の方法によって取り付けても良い。また上記実施形態では回転式電子部品1−1,1−2を面実装構造とするため、各端子51,57,61の実装面53,59,63の下面を第1ケース10の下面と同一面に位置させたが、必ずしも実装面53,59,63の下面を第1ケース10の下面と同一面に位置させる必要はなく、要は実装面53,59,63の下面を同一面に位置させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】回転式電子部品1−1を上側から見た斜視図である。
【図2】回転式電子部品1−1を下側から見た斜視図である。
【図3】図1のA−A断面斜視図である。
【図4】回転式電子部品1−1を上側から見た分解斜視図である。
【図5】回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図である。
【図6】第1ケース10と回路基板40と端子板50,55,60とを分離してそれぞれを別々に示す分解斜視図である。
【図7】回転体80と摺動子100とを分離してそれぞれを別々に示す分解斜視図である。
【図8】図8(a)は摺動子100をインサート成形した回転体80の平面図、図8(b)は摺動子100単体の平面図、図8(c)は回転体80単体の平面図である。
【図9】回路基板200に回転式電子部品1−1を取り付ける状態を示す斜視図である。
【図10】回転式電子部品1−2を上側から見た斜視図である。
【図11】回転式電子部品1−2を上側から見た分解斜視図である。
【図12】回転体80への摺動子100のインサート成形方法を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1−1 回転式電子部品
10 第1ケース(ケース)
11 収納部
14 当接部(自動復帰機構)
15 軸部
21 係止部挿入部
40 回路基板
41,43 摺接パターン(電気的機能部)
45,47,49 端子板当接部
50,55,60 端子板
51,57,61 端子
53,59,63 実装面
70 コイルスプリング(弾発手段、自動復帰機構)
71 コイル部
73 コイル引出部
80 回転体
85 軸支孔
87 係止部(自動復帰機構)
100 摺動子(電気的機能部)
101 基部
103 摺動冊子
120 第2ケース(ケース)
1−2 回転式電子部品
83B 操作つまみ
【出願人】 【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
【出願日】 平成18年7月21日(2006.7.21)
【代理人】 【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕

【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆

【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平


【公開番号】 特開2008−28205(P2008−28205A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−200085(P2006−200085)