トップ :: H 電気 :: H01 基本的電気素子

【発明の名称】 抵抗薄膜材料、抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲット、抵抗薄膜、薄膜抵抗器およびその製造方法。
【発明者】 【氏名】小野 勝史

【氏名】鈴木 邦彦

【要約】 【課題】体積抵抗値が700μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃の範囲内であり、155℃で1000時間の高温保持における経時的抵抗変化率が0.1%以下であり、酸性人工汗液を用いた電食試験における溶解開始電圧が3V以上である薄膜抵抗器を提供する。

【構成】Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1である抵抗薄膜材料からなるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、絶縁材料基板上に抵抗薄膜を形成し、その後、得られた抵抗薄膜を大気中、200〜600℃で、1〜10時間、熱処理をすることにより、薄膜抵抗器を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1である抵抗薄膜材料。
【請求項2】
Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1である抵抗薄膜形成用のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1であり、大気中または酸素を5〜30%含む不活性ガス雰囲気中、200〜600℃で、1〜10時間、熱処理されたことを特徴とする抵抗薄膜。
【請求項4】
Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1である抵抗薄膜であって、体積抵抗値が700μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃の範囲内であり、155℃で1000時間の高温保持における経時的抵抗変化率が0.1%以下であり、かつ、JIS L0848の酸性人工汗液を用いた電食試験において溶解開始電圧が3V以上であることを特徴とする抵抗薄膜。
【請求項5】
絶縁材料基板と、該絶縁材料基板上に形成された抵抗薄膜と、該絶縁材料基板上で該抵抗薄膜の両側に形成された電極とからなり、前記抵抗薄膜は、請求項3または4に記載の抵抗薄膜であることを特徴とする薄膜抵抗器。
【請求項6】
請求項2に記載のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、絶縁材料基板上に抵抗薄膜を形成し、その後、得られた抵抗薄膜を大気中または酸素を5〜30%含む不活性ガス雰囲気中、200〜600℃で、1〜10時間、熱処理をすることを特徴とする薄膜抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の薄膜抵抗器、薄膜抵抗器に用いられる抵抗薄膜、抵抗薄膜形成用のスパッタリングターゲットおよび抵抗薄膜材料に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ抵抗器、精密抵抗器、ネットワーク抵抗器もしくは高圧抵抗器などの抵抗器、測温抵抗体もしくは感温抵抗器などの温度センサ、ハイブリットIC、または、これらの複合モジュール製品のような電子部品には、抵抗薄膜を使用した薄膜抵抗器が用いられている。
【0003】
薄膜抵抗器には、多くの場合、抵抗薄膜材料として、Ta合金、TaN化合物およびNi−Cr合金が用いられており、これらの中でもNi−Cr合金が最も一般的に用いられている。
【0004】
薄膜抵抗器には、抵抗温度係数の絶対値が0に近いという優れた抵抗温度特性、高温保持における経時的抵抗変化率が小さいという優れた高温安定性、人の汗や海水などに対する良好な耐食性(耐塩水性)、体積抵抗値が高い(高抵抗)といった特性が要求される。このため、薄膜抵抗器を構成する抵抗薄膜においては、抵抗温度特性、高温安定性、耐塩水性、および高抵抗という4つの特性を同時に満足する必要がある。
【0005】
一般に、Ni−Cr合金では、Niに対するCrの質量比Cr/Niを調整することにより、抵抗温度特性の向上、または、高温安定性の向上を図ることができるが、前述の4つの特性を同時に満足することは困難である。
【0006】
このため、特許第2542504号公報および特開平6−20803号公報に記載されているように、Ni−Cr−Al−Si合金のような4元素合金を用いることにより、前述の4つの特性を同時に改善することが検討されてきた。しかし、Ni−Cr−Al−Si合金は、耐塩水性について、Ta合金およびTaN化合物より劣るという問題がある。
【0007】
一方、従来のTa合金またはTaN化合物を用いた薄膜抵抗器は、耐塩水性が良好であるものの、ある特定の膜厚以外では抵抗温度係数が安定せず、幅広い抵抗値の薄膜抵抗器を製造することが困難である。
【0008】
さらに、薄膜抵抗器では、形成される抵抗薄膜の断面積と長さにより、抵抗値を制御するパターニングが行われる。同じ抵抗値の薄膜抵抗器では、抵抗薄膜の体積抵抗値が高いほど、パターニングに必要とする面積が小さくなり、薄膜抵抗器の小型化が可能となる。
【0009】
以上のように、従来の薄膜抵抗器においては、抵抗温度特性、高温安定性、および耐塩水性、および高抵抗という4つの特性を同時に満足していない。
【特許文献1】特許第2542504号公報
【特許文献2】特開平6−20803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、体積抵抗値が700μΩ・cm以上という高抵抗、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃の範囲内という抵抗温度特性、155℃で1000時間の高温保持における経時的抵抗変化率が0.1%以下という高温安定性、および、酸性人工汗液(JIS L0848)を用いた電食試験における溶解開始電圧が3V以上であるという耐塩水性を、同時に備える薄膜抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の抵抗薄膜材料は、Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1であることを特徴とする。
【0012】
本発明の抵抗薄膜形成用のスパッタリングターゲットは、前記抵抗薄膜材料を用いて得られ、Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1であり、前記抵抗薄膜材料と同様の組成を有する。
【0013】
本発明の抵抗薄膜は、前記スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により得られ、Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、および、Moを0.5〜15質量%含み、残部はCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1であり、前記抵抗薄膜材料およびこれを用いたスパッタリングターゲットと同様の組成を有する。
【0014】
当該抵抗薄膜は、大気中または酸素を5〜30%含む不活性ガス雰囲気中、200〜600℃で、1〜10時間、熱処理されることにより、かかる抵抗薄膜を用いた薄膜抵抗器において、優れた特性を発揮する。
【0015】
具体的には、体積抵抗値が700μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃の範囲内であり、155℃で1000時間の高温保持における経時的抵抗変化率が0.1%以下であり、かつ、酸性人工汗液(JIS L0848)を用いた電食試験において溶解開始電圧が3V以上という特性を有する。
【0016】
本発明の薄膜抵抗器は、前記抵抗薄膜を用いて得られ、絶縁材料基板と、該絶縁材料基板上に形成された抵抗薄膜と、該絶縁材料基板上で該抵抗薄膜の両側に形成された電極とからなる。
【0017】
本発明の薄膜抵抗器の製造方法は、前記スパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、絶縁材料基板上に抵抗薄膜を形成し、その後、得られた抵抗薄膜を大気中または酸素を5〜30%含む不活性ガス雰囲気中、200〜600℃で、1〜10時間、熱処理をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の抵抗薄膜材料をスパッタリングターゲットとして用いた場合、不活性ガス雰囲気中でスパッタリング法により成膜されたままの抵抗薄膜は、抵抗温度係数が負に大きく、体積抵抗値が低く、高温安定性および耐塩水性も不十分である。
【0019】
しかしながら、それぞれの組成に応じて設定される条件における大気中での熱処理をさらに施すことで、抵抗温度係数を安定的に−25〜+25ppm/℃の範囲内とすることが可能となる。また、このように大気中での熱処理を施すことによって、抵抗薄膜の表面に緻密な酸化皮膜が形成され、体積抵抗値が高くなり、高温安定性および耐塩水性も向上する。
【0020】
得られた抵抗薄膜を用いた薄膜抵抗器は、従来のNi−Cr−Al−Si系合金による抵抗薄膜を用いた薄膜抵抗器と比較して、同様の抵抗温度係数および高温安定性が得られ、かつ、体積抵抗値と耐塩水性について格段に改善がなされている。その結果、高い精度の要求される電子部品を高抵抗化することができ、さらには、高抵抗化した電子部品を、高温中や、人の汗や海水と接触する厳しい環境下で使用することを可能にするという顕著な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、従来から抵抗薄膜材料として使用されているNi−Cr合金に対して、耐食性が良好で表面酸化皮膜に濃化しやすいAl、TaおよびMoを添加した抵抗薄膜材料をスパッタリングターゲットとして用いて、絶縁材料基板上に抵抗薄膜を形成することにより得られる薄膜抵抗器は、体積抵抗値が高く、抵抗温度特性、高温安定性、および耐塩水性のいずれもが良好であるとの知見を得て、本発明を完成させた。
【0022】
本発明の抵抗薄膜材料は、Taを20〜60質量%、Alを2〜10質量%、Moを0.5〜15質量%含み、残部がCrおよびNiからなり、Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75〜1.1である組成を有する。なお、抵抗薄膜材料は、前記組成に特徴を有しているものであり、その形態には制限はない。したがって、抵抗薄膜形成の過程にある、前記組成範囲にある混合された原料、該原料を溶解して得られるインゴット、該インゴットを加工して得られるスパッタリングターゲット、ないしは、蒸着用ターゲット、さらには、これらのターゲットを用いてスパッタリング法ないしは電子ビーム法、抵抗加熱式蒸着法により得られる抵抗薄膜まで広く含む概念である。
【0023】
本発明の抵抗薄膜材料を構成する成分について、それぞれの成分に係る限定理由を、以下に説明する。
【0024】
Taは、主として、体積抵抗値の上昇および耐塩水性の改善に効果を有する。Taの含有率が20質量%未満では、添加効果が十分ではなく、60質量%を超えると、抵抗温度係数が負に大きくなり、抵抗温度係数の絶対値を0付近とするための熱処理温度が、高くなると共に、熱処理温度の温度幅も狭くなる。
【0025】
Moは、体積抵抗値の上昇に効果があると共に、熱処理温度に対する抵抗温度係数の変化を緩やかにし、抵抗温度係数を0付近とする熱処理温度の温度幅を広げる効果を有する。Moの含有率が0.5質量%未満では、添加効果が十分ではなく、15質量%を超えると、熱処理温度に対する抵抗温度係数の変化が小さく、抵抗温度係数を0付近とすることが困難になると共に、高温安定性も低下する。
【0026】
Alは、高温安定性の改善に効果を有する。Alの含有率が2質量%未満であるか、または10質量%を超えると、高温安定性の改善の効果が失われる。
【0027】
熱処理後の抵抗薄膜には、表面にCr酸化膜が形性され、このCr酸化膜と金属界面との間に、Cr、Ta、Mo、Alからなる酸化膜が形性される。後者のTa、Mo、Alを含む酸化膜の存在により、Cr酸化膜溶解後にも高い耐塩水性が確保され、また当該酸化膜が金属イオンの外方拡散の障壁として作用することにより、高温安定性が改善される。
【0028】
CrおよびNiは、主として、抵抗温度特性および高温安定性の改善に効果を有する。Niに対するCrの質量比Cr/Niが0.75未満であると、抵抗温度係数が正に大きくなり、一方、1.1を超えると、高温安定性が悪くなり、製造上の再現性が悪化する。
【0029】
本発明のスパッタリングターゲットは、前記組成を有するように配合した原料、たとえば、電気ニッケル、電解クロム、アルミニウムショット、タンタル板、粉末モリブデンを、真空溶解炉でArガス中、1500℃の条件で、溶解し、冷却することによりインゴットを作製し、得られたインゴットに対して均質化処理を施し、該インゴットを適切な形状に加工することにより得られる。また、本発明のインゴットは、脆性なCr2Ta相を含み、割れやすいことから、得られたインゴットをスタンプミルなどで粉砕し、ホットプレス法により、Arガス中、1150℃の条件で焼結することによりスパッタリングターゲットとすることも有効である。
【0030】
本発明の抵抗薄膜形成用スパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、Arガス中、300Vの条件で絶縁材料基板上に抵抗薄膜を形成する。該抵抗薄膜は、Ta−Al−Mo−Cr−Ni合金からなり、その組成はスパッタリングターゲットに用いた抵抗薄膜材料の組成と実質的に同一である。ただし、不活性雰囲気中でスパッタリング法により成膜されたままの抵抗薄膜は、抵抗温度係数が負に大きく、体積抵抗値が低く、高温安定性および耐塩水性も不十分である。
【0031】
したがって、その後、得られた抵抗薄膜に対して、組成に応じて、大気中、200℃〜600℃で、1〜10時間、熱処理を施すことにより、抵抗温度係数の安定化を図ることが必要である。
【0032】
この場合、熱処理の温度が200℃未満では、得られる薄膜抵抗器の抵抗温度係数が安定せず、一方、600℃を超えると、薄膜抵抗器の抵抗温度係数が正に大きくなってしまう。また、熱処理の時間が1時間未満では、薄膜抵抗器の抵抗温度係数が安定せず、一方、10時間を超えても、抵抗安定性に対する効果の増大は見られないので、コストアップとなる。
【0033】
これらの条件は、組成に応じて、前記範囲より適宜選択されるが、当該条件は実験的に求められる。Moの添加により、所定の組成に対する熱処理、特に温度幅を拡げることができる。たとえば、22.5%Ni−22.5%Cr−5.0%Al−50.0%Taからなる合金と、この合金に対してMoを2%または5%添加した合金とに対し、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃となる熱処理の温度幅を調べると、それぞれ、5℃、15℃、40℃となり、Mo量が増えるに従い熱処理の温度幅が拡がる。
【0034】
なお、熱処理を行う雰囲気は、大気に代えて酸素を微量(5〜30%)含んだ不活性ガス雰囲気としてもよい。また、この大気中での熱処理の前に、真空中で熱処理をして抵抗温度係数の調整を行ってもよい。
【0035】
適切な条件を選択した熱処理により、該抵抗薄膜は、体積抵抗値が700μΩ・cm以上、好ましくは、1000μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃の範囲内、好ましくは、−10〜+10ppm/℃の範囲内であり、155℃で1000時間の高温保持における経時的抵抗変化率が0.1%以下、好ましくは、0.05%以下であり、かつ、酸性人工汗液(JIS L0848)を用いた電食試験において溶解開始電圧が3V以上であり、高抵抗であるとともに、優れた抵抗温度係数、高温安定性および耐塩水性を同時に達成する。
【0036】
本発明に係る薄膜抵抗器は、図1に示すように、絶縁材料基板(1)と、該絶縁材料基板(1)上に形成された抵抗薄膜(2)と、該絶縁材料基板(1)上で該抵抗薄膜(2)の両側に形成された電極(3)とからなる。なお、絶縁材料基板(1)としては、アルミナ基板のほかに、SiO2を用いることができる。また、電極(3)としては、Au電極のほかに、Cr、Ni、Cuなどを用いることができる。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
表1に示した組成となるように配合した原料(電気ニッケル、電解クロム、アルミニウムショット、タンタル板、粉末モリブデン)を真空溶解炉で溶解し、約2kgのインゴットを作製した。得られたインゴットに均質化処理を施した後、ワイヤーカットで厚さ5mm、直径150mmの丸板を切り出し、上下面を研削してスパッタリングターゲットとした。
【0038】
成膜工程は、カソードスパッタリング法によって以下のように行った。真空室にアルミナ基板を装入し、1×10-4Paに排気した後、純度99.9995%のアルゴンガスを導入して、0.3Paの圧力に保ち、スパッタリングパワー0.3kWで、膜厚が500Åとなるように、前記アルミナ基板上に抵抗薄膜を成膜した。なお、成膜法としては、電子ビーム、抵抗加熱式蒸着法などを用いることもできる。
【0039】
得られた抵抗薄膜の両端に、膜厚が5000ÅのAu電極を、前述と同様にカソードスパッタリング法により成膜し、その後、大気中、520℃で、3時間の熱処理を行うことにより、アルミナ基板、熱処理を受けた抵抗薄膜、およびAu電極からなる薄膜抵抗器を得た。
【0040】
得られた薄膜抵抗器について、以下のように、体積抵抗値の測定と、抵抗温度特性、高温安定性、および耐塩水性の評価を行った。
【0041】
体積抵抗値は、得られた薄膜抵抗器を恒温漕に入れて測定された25℃における抵抗値と、Au電極間の抵抗薄膜の面積および膜厚とから算出した。
【0042】
抵抗温度特性については、得られた薄膜抵抗器を恒温漕に入れ、25℃と125℃における抵抗値を測定することにより、抵抗温度係数を算出した。
【0043】
高温安定性については、得られた薄膜抵抗器を155℃の恒温漕内に1000時間保持した前後で測定した抵抗値から算出した抵抗変化率(155℃、1000時間)を測定した。
【0044】
耐塩水性については、得られた薄膜抵抗器について、以下のような電食試験(ウォータードロップ試験)を行い、溶解開始電圧を測定した。
【0045】
まず、抵抗薄膜(2)の初期抵抗値をデジタルマルチメータにより四端子法により測定した。次に、図2に示すように、マイクロシリンジで、抵抗薄膜(2)の中央に酸性人工汗液(JIS L0848)を30μL滴下し、液滴(4)の直径およびAu電極(3)の間の長さから、液滴(4)の両端に負荷される電圧(Vd)が1VとなるようにAu電極(3)の間の電圧(Vp)を調整した。Au電極(3)の間の電圧(Vp)を一定として、3分間電圧を負荷した後、水洗および乾燥を行い、四端子法により抵抗値を測定し、電圧負荷前後の抵抗変化率を測定した。
【0046】
このような測定を、液滴(4)の両端に負荷される電圧(Vd)が1Vから0.2V刻みで上昇するように、Au電極(3)の間の電圧(Vp)を調整して繰り返すことにより、抵抗変化率が0.2%を超えた時の液滴(4)の両端に負荷される電圧(Vd)を得て、抵抗薄膜(2)の溶解開始電圧とした。
【0047】
したがって、得られる溶解開始電圧は、酸性人工汗液(JIS L0848)を滴下し両端のAu電極間に一定の電圧で3分間電圧を負荷し水洗および乾燥を行って測定される抵抗変化率が0.2%を超えるという条件を満足する際に測定される液滴の両端の電圧のうちの最小値である。
【0048】
体積抵抗値、抵抗温度係数、抵抗変化率(155℃、1000時間)、および溶解開始電圧の測定結果を、表1に示す。
【0049】
[実施例2〜4および比較例1〜6]
表1に示した組成となるように、構成元素および配合割合を変え、さらに、表1に示した熱処理温度とした以外は、実施例1と同様にして、それぞれの薄膜抵抗器を得た。
【0050】
得られた薄膜抵抗器について、実施例1と同様に、測定および評価を行った。体積抵抗値、抵抗温度係数、抵抗変化率(155℃、1000時間)、および溶解開始電圧の測定結果を、表1に示す。
【0051】
【表1】


【0052】
実施例1〜4は、いずれも体積抵抗値が700μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数が−25〜+25ppm/℃の範囲内であり、抵抗変化率(155℃、1000時間)が0.1%以下であり、かつ、溶解開始電圧が3V以上である。主な従来技術である比較例1〜3と比較して、きわめて高い体積抵抗値と、同様の抵抗温度係数を維持しつつ、良好な高温安定性および耐塩水性を示した。
【0053】
比較例4は、Moが0.5質量%未満であり、抵抗温度特性が不足していた。
【0054】
比較例5は、Alが10質量%を超え、Moが15質量%を超え、高温安定性が不足していた。また、Taが20質量%未満であり、耐塩水性も不足していた。
【0055】
比較例6は、Taが60質量%を超え、Moが0.5質量%未満であり、抵抗温度特性が不足していた。
【0056】
以上の結果から、本発明により、薄膜抵抗器において、抵抗温度特性、高温安定性、および耐塩水性の向上を同時に図ることができ、さらに、高抵抗を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明が適用される薄膜抵抗器の概略図である。
【図2】電食試験(ウォータードロップ試験)の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 アルミナ基板
2 抵抗薄膜
3 Au電極
4 液滴
5 定電圧電源
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100108877
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨田 哲彰


【公開番号】 特開2008−10604(P2008−10604A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178901(P2006−178901)