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【発明の名称】 極細同軸ケーブル
【発明者】 【氏名】近藤 智紀
【課題】本発明は、ハロゲン元素を含まず、耐熱性などの優れた特性を有すると共に、難燃性についても優れた特性を有するエポキシ樹脂系ワニスを絶縁体として用いた極細同軸ケーブルを提供するものである。

【解決手段】かゝる本発明は、AWG40 以降の線を単独又は寄り合わせて中心導体1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AWG40 以降の線を単独又は寄り合わせて中心導体とした極細同軸ケーブルにおいて、前記中心導体にエポキシ樹脂系ワニス100質量部とリン含有のエポキシ樹脂系ワニス8〜14質量部からなるワニスを絶縁体として被覆したことを特徴とする極細同軸ケーブル。
【請求項2】
前記両エポキシ樹脂系ワニスがノンハロゲンの樹脂であることを特徴とする請求項1記載の極細同軸ケーブル。
【請求項3】
前記リン含有のエポキシ樹脂系ワニスにおけるリン化合物が下記の化合物(1)であることを特徴とする請求項1又は2記載の極細同軸ケーブル。
【化1】


【請求項4】
前記リン含有のエポキシ樹脂系ワニスにおけるリン化合物が下記の化合物(2)であることを特徴とする請求項1又は2記載の極細同軸ケーブル。
【化2】


【請求項5】
AWG40 以降の線を単独又は寄り合わせて中心導体とした極細同軸ケーブルにおいて、前記中心導体にエポキシ樹脂系ワニス100質量部と窒素含有のエポキシ樹脂系ワニス8〜14質量部からなるワニスを絶縁体として被覆したことを特徴とする極細同軸ケーブル。
【請求項6】
前記両エポキシ樹脂系ワニスがノンハロゲンの樹脂であることを特徴とする請求項5記載の極細同軸ケーブル。
【請求項7】
前記窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスにおける窒素化合物が下記の化合物(4)であることを特徴とする請求項5又は6記載の極細同軸ケーブル。
【化4】



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン元素を含まず、耐熱性などの特性、特に難燃性に優れたエポキシ樹脂系ワニスを絶縁体として用いた極細同軸ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、細線の絶縁体としては、例えば巻線ではエナメル材料が使用され、通信電線ではフッ素系樹脂(PFA、FEP)や架橋ポリエチレン(PE)などが使用されている。
一方、近年通信分野では、細線のサイズがより一層細線化し、AWG40〜52:アメリカン・ワイヤ・ゲージ、線径=直径:0.079〜0.017mm)程度まで細くなってきている。
【0003】
細線化された絶縁体にあっても、用途によっては、機械的特性や電気特性は勿論のこと、優れた耐熱性や難燃性などが必要とされる。また、電線は布設時の火災や廃棄時の燃焼処理時において、ハロゲンガスやダイオキシンなどの有害ガスが発生しないことも要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下で、AWG40〜52のサイズとなる通信用の極細同軸ケーブルでも、上記のように優れた耐熱性や難燃性が求められるが、架橋ポリエチレンでは、これらの要求に対応することは困難であった。フッ素系樹脂では求める耐熱性や難燃性に対応できるものの、ハロゲン元素であるフッ素を含有するという問題があった。
【0005】
特に難燃性の点において、中心導体が極細化することで、極めて薄い層として塗布される、絶縁体の樹脂材料に通常の難燃剤(例えばノンハロゲンの金属水酸化物、タルク、クレーなど)を添加する場合(添加型)、その難燃剤の添加量が多くなると、樹脂本来の特性、即ち耐蝕性などが失われるという問題があった。
【0006】
かといって、従来の同軸ケーブルのように、絶縁体の外周に難燃テープを施したり、絶縁体として難燃性の塩化ビニリデン樹脂を用いることも考えられるが(特許文献1〜2)、難燃テープを用いる場合にはケーブルの極細化が困難となる。また、塩化ビニリデン樹脂の場合には、やはりハロゲン元素含有による有毒ガスの発生が問題となる。
【特許文献1】特開平08−055524号公報
【特許文献2】特開平07−312123号公報
【0007】
そこで、本発明者は、従来のエナメル材料用のワニスによりも低コストである、エポキシ樹脂系に着目し、これをワニスとして極細同軸ケーブルの絶縁体として用いたところ、後述するように、良好な結果が得られた。特に難燃化にあたって、エポキシ樹脂系ワニス自体に難燃剤を添加するのではなく、リンや窒素の含有するエポキシ樹脂系ワニス(樹脂の分子鎖にリンや窒素或いはリンや窒素の化合物を組み込んだもの、反応型)を用いると樹脂本来の特性を損なうことなく、優れた難燃性の極細同軸ケーブルが得ることを見い出した。
【0008】
本発明は、この観点に立ってなされたものであり、エポキシ樹脂系ワニスを絶縁体として被覆することにより、ハロゲン元素を含まず、エポキシ樹脂による優れた耐熱性や機械的特性、電気特性、耐食性、耐湿性などの特性は勿論のこと、特に難燃性において優れた極細同軸ケーブルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、AWG40 以降の線を単独又は寄り合わせて中心導体とした極細同軸ケーブルにおいて、前記中心導体にエポキシ樹脂系ワニス100質量部とリン含有のエポキシ樹脂系ワニス8〜14質量部からなるワニスを絶縁体として被覆したことを特徴とする極細同軸ケーブルにある。

【0010】
請求項2記載の本発明は、前記両エポキシ樹脂系ワニスがノンハロゲンの樹脂であることを特徴とする請求項1記載の極細同軸ケーブルにある。

【0011】
請求項3記載の本発明は、前記リン含有のエポキシ樹脂系ワニスにおけるリン化合物が下記の化合物(1)であることを特徴とする請求項1又は2記載の極細同軸ケーブルにある。
【化1】



【0012】
請求項4記載の本発明は、前記リン含有のエポキシ樹脂系ワニスにおけるリン化合物が下記の化合物(2)であることを特徴とする請求項1又は2記載の極細同軸ケーブルにある。
【化2】



【0013】
請求項5記載の本発明は、AWG40 以降の線を単独又は寄り合わせて中心導体とした極細同軸ケーブルにおいて、前記中心導体にエポキシ樹脂系ワニス100質量部と窒素含有のエポキシ樹脂系ワニス8〜14質量部からなるワニスを絶縁体として被覆したことを特徴とする極細同軸ケーブルにある。

【0014】
請求項6記載の本発明は、前記両エポキシ樹脂系ワニスがノンハロゲンの樹脂であることを特徴とする請求項5記載の極細同軸ケーブルにある。

【0015】
請求項7記載の本発明は、前記窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスにおける窒素化合物が下記の化合物(4)であることを特徴とする請求項5又は6記載の極細同軸ケーブルにある。
【化4】


【発明の効果】
【0016】
本発明の極細同軸ケーブルによると、AWG40以降の極細線の中心導体にエポキシ樹脂系ワニスを絶縁体として被覆してあるため、エポキシ樹脂の優れた特性、即ち、耐熱性や機械的特性、電気特性、耐食性、耐湿性などの特性は勿論のこと、リンや窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスにより、難燃性においても、優れた特性の極細同軸ケーブルを得ることができる。

【0017】
また、エポキシ樹脂系ワニスをノンハロゲンの樹脂とすることにより、火災や燃焼処理時、有毒ガスの発生を防ぐことができる。さらに、難燃化にあたって、難燃剤を添加することなく、例えばベースのエポキシ樹脂系ワニスに対して、リン含有や窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスを、特定の範囲で添加して用いるものであるため、エポキシ樹脂本来の特性を損なうことなく、優れた難燃性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の極細同軸ケーブルの一例を示したものである。図中、10は極細同軸ケーブル、11は中心導体、12は絶縁体、13は外部導体、14はシースである。

【0019】
この極細同軸ケーブル10における、中心導体11のサイズは、AWG40以降、即ちAWG40〜52(線径=直径:0.079〜0.017mm)の極細サイズものである。線種も特に問わないが、銅線や錫めっき銅線、ニッケルめっき銅線などの単独、又は複数の線を寄り合わせた撚線などが用いられる。

【0020】
絶縁体12は、エポキシ樹脂系ワニスからなり、通常中心導体11の外周に塗布などにより施した後、使用する硬化剤の種類により異なるが、例えは加熱(焼成=アニール)して硬化させる。この後、中心導体11と同一又は異なる線の巻線や編組などの外部導体13を施し、絶縁体と同じエポキシ樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン、スチレン−ブタジェンやエチレン−プロピレンなどのエラストマーとオレフィンとのポリマーアロイなどのシース14を被覆させる。これにより、所望の極細同軸ケーブル10が得られる。

【0021】
上記絶縁体をなすワニスのエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、有毒ガスなどの発生がないノンハロゲンのものとする。エポキシ樹脂は2以上のエポキシ基を有する樹脂の総称であり、多数の種類があるが、ケーブルの用途や性能によって適宜使い分けることができる。

【0022】
大別すると、グリシジル基に結合する官能基の相違によるりグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型の他、脂環型があり、グリシジルエーテル型のフェノール系やアルコール系のものの使用が望ましい。
具体的なものとして、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビメチルビスフェノールCジグリシジルエーテルなどの2官能型エポキシ樹脂、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシ樹脂などの縮合官骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は併用することもでき、さらに、各種の変性を施したものも使用可能である。

【0023】
このエポキシ樹脂を硬化させるために添加する硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアルキレンポリアミド、ポリアミドポリアミン、マンニッヒ生成物、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などを挙げることができる。そして、その添加量は、種類によって異なるが、化学量論的に化学等量となるように反応する官能基数を考慮して、エポキシ樹脂100質量部に対して、20〜100質量部程度が好ましい。

【0024】
次に、難燃性の付与にあたっては、リンや窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスを用いるものとする。これは、樹脂の分子鎖にリンや窒素或いはリンや窒素の化合物を反応させて組み込んだものであり、高い難燃性が得られることが知られている。
この反応させるリン化合物としては、例えばリン含有フェノール化合物が挙げられる。このようなものとしては、例えば以下の化合物(1)〜(2)を挙げることができる。この化合物(1)〜(2)において、R1〜6は水素原子、アルキル基、芳香族基を表す。化合物(1)の具体的なものの一例として、化合物(3)を挙げることができる。

【0025】
【化1】



【0026】
【化2】



【0027】
【化3】



【0028】
これらの化合物(1)〜(2)は、反応時エポキシ樹脂の主骨格(主鎖)に対して、側鎖として結合されるため、エポキシ樹脂の主骨格はそのまま維持される。このため、エポキシ樹脂の優れた特性はそのまま保持される一方、所望の難燃化が付与される。
樹脂本来の特性(優れた耐熱性や機械的特性、電気特性、耐食性、耐湿性など)が保持されることで、極細同軸ケーブルにおいて中心導体の外周に極めて薄く塗布することが可能となる。従来の難燃化のように、樹脂中に難燃剤を添加する場合には、その添加量やその粒径の大きさなどにより、薄膜化には限界があったが、本発明では、このような制約がなく、所望の薄膜化が可能となる。勿論、難燃剤添加がないため、上記したように、樹脂本来の特性が失われることもない。

【0029】
この難燃化において、窒素原子を含有する窒素含有化合物としては、例えば、以下のトリアジン骨格を有する化合物(4)を挙げることができる。この化合物(4)において、R7は水素原子、アルキル基、芳香族基を表す。

【0030】
【化4】



【0031】
この化合物(4)は、反応時エポキシ樹脂の主骨格(主鎖)中に結合されるため、エポキシ樹脂の主骨格が変わり、特性の変更があるが、難燃剤添加型ほどではない。

【0032】
この難燃化の場合、上記したエポキシ樹脂のうち、難燃化の改善効果が大きい、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテルなどの縮合官骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂の使用が望ましい。なお、難燃化にあっては、エポキシ樹脂中に多数の芳香環を導入することによって、難燃性を向上させてもよい。また、これを上記リンや窒素を含有する物質と併用することもできる。

【0033】
実際のエポキシ樹脂系ワニスの中心導体への被覆にあたっては、上記したノンハロゲン型で、かつ難燃型のリンや窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスを単独で用いたり、或いは、通常のノンハロゲン型のエポキシ樹脂系ワニスに対して、この難燃型であるリンや窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスを、特定量添加して用いるとよい。その添加としては、通常のエポキシ樹脂系ワニス100質量部に対してリンや窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスを8〜14質量部とすることが望ましい。その理由は、8質量部未満では所望の難燃性が得ら
れず、また、14質量部を超えるようになると、所望の難燃性は得られるが、エポキシ樹脂の硬化に関係する官能基が難燃性を発現するリンや窒素含有の化合物に置換されるため、十分な硬化が得られず、変形やはがれなどが発生するようになるからである。

【0034】
このようなエポキシ樹脂系ワニスには、必要により樹脂特性の失われない範囲で、他の添加剤を添加することができる。例えば着色剤、可塑剤、増粘剤、離形剤、滑剤などである。

【0035】
〈実施例・比較例〉
表1〜表2に示す樹脂材料の絶縁体を被覆させて、上記図1と同構造のサンプルの極細同軸ケーブル(実施例1〜8、比較例1〜9)を製造した。ここで、中心導体は錫めっき撚線(7/0.075)、外部導体は中心導体と同様の錫めっき撚線(43/0.025)の横巻線、シースはエポキシ樹脂である。絶縁体のベース樹脂としては、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂系ワニスを用い、これに難燃型であるリンや窒素含有のエポキシ樹脂系ワニスを添加した。ここでリン含有のものはフェノール型であり、また、窒素含有のものはトリアジン型である。硬化剤はいずれもジシアンジアミドである。比較例8のベース樹脂はフッ素系樹脂(PFA)であり、比較例8のベース樹脂は架橋ポリエチレン(PE)である。なお、樹脂材料の表中の数値は質量部を示す。

【0036】
これらのサンプルの極細同軸ケーブルに対して、耐蝕性と難燃性の試験を行った。
耐蝕性については、ケーブルの絶縁体部分を露出させて、ハンダ槽(320℃×5sec)に浸漬させ、その収縮率(%)と変形やはがれの有無を調べた。
難燃性については、UL規格のVW−1に準拠して行った。燃焼時間(sec)、燃焼距離(mm)、旗の損傷(サンプルケーブルの上方に取り付けたクラフト紙の旗の焦げ状況(何%か))と、綿への飛び火(試験装置の下(底面)に敷いた綿への引火)の有無を調べた。

【0037】

【表1】



【0038】

【表2】



【0039】
上記の表1〜表2から明らかなように、本発明の極細同軸ケーブル(実施例1〜8)に
よると、エポキシ樹脂本来の優れた耐熱性があり、また、優れた難燃性を有することが分かる。なお、他の特性、例えば機械的特性、電気特性、耐食性、耐湿性などについても良好であった。

【0040】
これに対して、難燃型のエポキシ樹脂系ワニスの添加量が少ない、比較例1〜2、比較例4〜5の極細同軸ケーブルでは難燃性が不十分であることが分かる。逆に、難燃型のエポキシ樹脂系ワニスの添加量が多い、比較例3、6の極細同軸ケーブルでは変形(収縮率)が大きく、また、被覆のはがれが生じることが分かる。難燃型のエポキシ樹脂系ワニスが無添加である、比較例7では難燃性が不十分であることが分かる。架橋ポリエチレン(PE)の被覆である比較例9では難燃性が不十分であることが分かる。
なお、フッ素系樹脂(PFA)の被覆である、比較例8では耐熱性も難燃性も良好であるが、フッ素原子がハロゲン元素として問題があることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る極細同軸ケーブルの一例を示した縦断端面図である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・極細同軸ケーブル、11・・・中心導体、12・・・絶縁体、13・・・外部導体、14・・・シース


特許の図
【出願人】 【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【出願日】 平成18年11月20日(2006.11.20)
【代理人】 【識別番号】100080366
【弁理士】
【氏名又は名称】石戸谷 重徳
【公開番号】 特開2008−130338(P2008−130338A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−313407(P2006−313407)