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【発明の名称】 鍵盤楽器の黒鍵および黒鍵カバーの製造方法
【発明者】 【氏名】加藤 晴一

【要約】 【課題】重りを内蔵する黒鍵カバーを安価に製造でき、また、重りを黒鍵カバー本体内に安定して保持した状態で、黒鍵カバーを鍵本体にしっかりと取り付けることができる鍵盤楽器の黒鍵および黒鍵カバーの製造方法を提供する。

【解決手段】前後方向に延びる揺動自在の鍵本体2と、下方に開放する中空状に形成され、鍵本体2の上面の前部にこれを覆うように取り付けられた黒鍵カバー本体11と、黒鍵カバー本体に収11容され、鍵本体2に重さを付与する重り3と、を備え、黒鍵カバー本体11は、左右の側壁11a、11aの少なくとも一方の下部から内方に突出し、重り3を下方から係止するとともに、下面が鍵本体2に接着された下壁12、12を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる揺動自在の鍵本体と、
下方に開放する中空状に形成され、前記鍵本体の上面の前部にこれを覆うように取り付けられた黒鍵カバー本体と、
この黒鍵カバー本体に収容され、前記鍵本体に重さを付与する重りと、を備え、
前記黒鍵カバー本体は、左右の側壁の少なくとも一方の下部から内方に突出し、前記重りを下方から係止するとともに、下面が前記鍵本体に接着された下壁を有していることを特徴とする鍵盤楽器の黒鍵。
【請求項2】
前記下壁は、互いに対向する左右の壁部を有しており、
当該左右の壁部の互いに対向する面が、前記重りに向かって互いに接近するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の黒鍵。
【請求項3】
所定の幅を有する棒状の重りを準備する重り準備工程と、
水平なベースと、このベース上にこれに沿って設けられ、前記重りの幅よりも小さな幅を有する台座とを一体に有する下型、および下方に開放し、成形すべき黒鍵カバーに対して相補的なキャビティを有する上型を準備する金型準備工程と、
前記重りを、前記台座の上にこれに沿ってセットする重りセット工程と、
前記台座および前記重りを前記キャビティに収容するように、前記上型を前記下型に重ね合わせるとともに、前記キャビティに供給された合成樹脂によって、黒鍵カバーを前記重りとともにインサート成形する黒鍵カバー成形工程と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法。
【請求項4】
棒状の重りを準備する重り準備工程と、
水平なベースと、このベース上に設けられ、前記ベースに沿うようにセットされたときの前記重りと前記ベースとの間にスペースを画成するための台座とを一体に有する下型、および、下方に開放し、成形すべき黒鍵カバーに対して相補的なキャビティを有する上型を準備する金型準備工程と、
前記重りを、前記ベースに沿うように、前記台座の上にセットする重りセット工程と、
前記台座および前記重りを前記キャビティに収容するように、前記上型を前記下型に重ね合わせるとともに、前記キャビティに供給された合成樹脂によって、黒鍵カバーを前記重りとともにインサート成形する黒鍵カバー成形工程と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法。
【請求項5】
前記黒鍵カバー成形工程は、
前記黒鍵カバー本体の原料としての粉状の前記合成樹脂を、前記ベース上の前記台座および当該台座にセットされた前記重りを覆うように供給する原料供給工程と、
前記台座および前記重りを前記キャビティに収容するように、前記上型を前記下型に重ね合わせ、当該キャビティ内の合成樹脂を加圧および加熱することによって、前記黒鍵カバーを成形する加圧・加熱工程と、
を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法。
【請求項6】
前記台座は、前記セットされる重りに係合し、当該重りを所定位置に位置決めする位置決め部を有することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法。
【請求項7】
前記重りの下面には、凸部および凹部の一方から成る係合部が設けられ、
前記位置決め部は、前記係合部に係合する凸部および凹部の他方で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法。
【請求項8】
前記台座は、磁石で構成され、
前記重りは、前記台座に吸着される磁性材料で構成されていることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノなどの鍵盤楽器の黒鍵に関し、特に所望のタッチ重さを得るために、重りを黒鍵カバーに内蔵する黒鍵、および黒鍵カバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の黒鍵として、特許文献1に開示されたものが知られている。この黒鍵は、断面矩形の細長い木製の鍵本体と、その上面の前部に取り付けられた黒鍵カバーを備えており、この黒鍵カバーが、黒鍵カバー本体と、その内部に収容された重りで構成されている。鍵本体は、その中央部において、バランスピンに揺動自在に支持されている。黒鍵カバー本体は、フェノールなどの合成樹脂の成形品から成り、下方に開放する中空状に形成され、断面台形の中空部を有している。また、重りは、黒鍵カバー本体の中空部と相補的な形状を有し、この中空部にはめ込まれるようになっている。
【0003】
以上のように構成された黒鍵を組み立てる場合には、まず、重りを黒鍵カバー本体の中空部にはめ込み、接着する。その後、その黒鍵カバーを、鍵本体の上面の前部に接着し、黒鍵の組み立てが完了する。この場合、鍵本体に対する黒鍵カバーの良好な接着を確保するために、重りを黒鍵カバー本体の下面から浮いた状態に取り付け、その後、黒鍵カバー本体の下面を切削し、平滑にすることが好ましい。
【0004】
この黒鍵では、黒鍵カバー本体および重りをそれぞれ別個に作製し、重りを黒鍵カバー本体の中空部にはめ込み、接着する工程が必要であるため、黒鍵カバーの製造コストが高くなってしまう。また、上述したように、重りが黒鍵カバー本体の下面から浮いた状態に取り付けられた場合には、黒鍵カバーは、黒鍵カバー本体の下面だけで鍵本体に接着されることになるため、接着面積が少なくなる。その結果、黒鍵カバーが良好に接着されていないときには、黒鍵カバーが鍵本体から外れるおそれがある。また、上記の場合、接着不良などによって、重りが黒鍵カバー本体から外れると、押鍵時に、重りが黒鍵カバー本体内でがたつき、雑音が生じてしまう。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、重りを内蔵する黒鍵カバーを安価に製造でき、また、重りを黒鍵カバー本体内に安定して保持した状態で、黒鍵カバーを鍵本体にしっかりと取り付けることができる鍵盤楽器の黒鍵および黒鍵カバーの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【特許文献1】特開2001−147686号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、前後方向に延びる揺動自在の鍵本体と、下方に開放する中空状に形成され、鍵本体の上面の前部にこれを覆うように取り付けられた黒鍵カバー本体と、この黒鍵カバー本体に収容され、鍵本体に重さを付与する重りと、を備え、黒鍵カバー本体は、左右の側壁の少なくとも一方の下部から内方に突出し、重りを下方から係止するとともに、下面が鍵本体に接着された下壁を有していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、下方に開放する中空状の黒鍵カバー本体が、鍵本体に重さを付与する重りを収容しており、鍵本体の上面の前部にこれを覆うように取り付けられている。また、黒鍵カバー本体は、左右の側壁の少なくとも一方の下部から内方に突出する下壁を有しており、この下壁により、重りが下方から係止されている。これにより、黒鍵カバー本体内の重りは、安定して保持され、押鍵時に、黒鍵カバー本体内でがたつくことがない。また、黒鍵カバー本体の下壁は、内方に突出することで、その下面の面積が比較的大きく、鍵本体との接着面積が大きくなる。加えて、黒鍵カバー本体内の重りが、下壁よりも上側に位置するので、下壁の下面を平滑にするための切削を確保することができる。以上により、黒鍵カバー本体を鍵本体に良好に接着でき、しっかりと取り付けることができる。さらに、黒鍵カバー本体内に重りを収容する黒鍵カバーは、後述するインサート成形によって、黒鍵カバー本体と重りを一体に成形することが可能であり、それにより、黒鍵カバー本体と重りを別個に作製し、重りを黒鍵カバー本体内にはめ込み、接着する工程が必要な従来に比べて、安価に製造することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の黒鍵において、下壁は、互いに対向する左右の壁部を有しており、左右の壁部の互いに対向する面が、重りに向かって互いに接近するテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、下壁の左右の壁部の互いに対向する面が、重りに向かって互いに接近するテーパ状に形成されている。換言すると、上記の互いに対向する面が、外方に向かって互いに広がるテーパ状に形成されている。このため、黒鍵カバーを、後述するインサート成形により、金型を用いて成形する場合、その黒鍵カバーを金型から容易に取り外すことができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、所定の幅を有する棒状の重りを準備する重り準備工程と、水平なベースと、このベース上にこれに沿って設けられ、重りの幅よりも小さな幅を有する台座とを一体に有する下型、および下方に開放し、成形すべき黒鍵カバーに対して相補的なキャビティを有する上型を準備する金型準備工程と、重りを、台座の上にこれに沿ってセットする重りセット工程と、台座および重りをキャビティに収容するように、上型を下型に重ね合わせるとともに、キャビティに供給された合成樹脂によって、黒鍵カバーを重りとともにインサート成形する黒鍵カバー成形工程と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、まず、重りを準備する(重り準備工程)とともに、下型および上型を準備する(金型準備工程)。重りとして、所定の幅を有する棒状のものを準備する。また、下型として、水平なベース上に、重りの幅よりも小さな幅を有する台座を一体に設けたものを準備する。一方、上型として、下方に開放し、成形すべき黒鍵カバーに対して相補的なキャビティを有するものを準備する。次いで、重りを台座の上にこれに沿ってセットする(重りセット工程)。そして、台座および重りをキャビティに収容するように、上型と下型を重ね合わせるとともに、キャビティに供給された合成樹脂によって、黒鍵カバーを重りとともにインサート成形する(黒鍵カバー成形工程)。このようなインサート成形により、キャビティ内の合成樹脂が、下型の台座および重りの周囲に充填され、凝固する。
【0013】
上記のように、下型の台座の幅は、重りのそれよりも小さいため、キャビティ内の溶融した合成樹脂は、重りの下方に回り込み、その回り込んだ合成樹脂によって、重りを下方から係止する下壁が形成される。これにより、前述した請求項1と同様の黒鍵カバー本体および重りを有する黒鍵カバー、すなわち黒鍵カバー本体が重りを収容し、それを下壁で下方から係止する黒鍵カバーが成形される。また、上記のインサート成形により、黒鍵カバー本体が重りに融着し、それにより、両者が一体でかつ重りを内部に安定して保持する黒鍵カバーを容易に製造することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、棒状の重りを準備する重り準備工程と、水平なベースと、このベース上に設けられ、ベースに沿うようにセットされたときの重りとベースとの間にスペースを画成するための台座とを一体に有する下型、および、下方に開放し、成形すべき黒鍵カバーに対して相補的なキャビティを有する上型を準備する金型準備工程と、重りを、ベースに沿うように、台座の上にセットする重りセット工程と、台座および重りをキャビティに収容するように、上型を下型に重ね合わせるとともに、キャビティに供給された合成樹脂によって、黒鍵カバーを前記重りとともにインサート成形する黒鍵カバー成形工程と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、前述した請求項3と同様に、まず、棒状の重りを準備する(重り準備工程)とともに、下型および上型を準備する(金型準備工程)。下型として、水平なベース上に、ベースに沿うようにセットされたときの重りとベースとの間にスペースを画成するための台座を一体に設けたものを準備する。次いで、重りを、ベースに沿うように、台座の上にセットする(重りセット工程)。その後、請求項3と同様の黒鍵カバー成形工程により、黒鍵カバーを重りとともにインサート成形し、それにより、キャビティ内の合成樹脂が、下型の台座および重りの周囲に充填され、凝固する。
【0016】
上記のように、台座にセットされた重りとベースの間には、スペースが画成されるため、キャビティ内の溶融した合成樹脂は、重りの下方に回り込み、上記スペースに充填される。そして、その充填された合成樹脂によって、重りを下方から係止する下壁が形成される。また、重りがセットされる台座のサイズをできる限り小さくすることにより、スペースが増大し、それに伴い、黒鍵カバーの下壁のサイズも大きくなる。そのため、黒鍵カバーを、その下壁を接着させることで鍵本体に取り付けた場合には、鍵本体との接着面積が大きいことによって、接着強度が高まり、黒鍵カバーを鍵本体にしっかりと取り付けることができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項3または4に記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法において、黒鍵カバー成形工程は、黒鍵カバー本体の原料としての粉状の合成樹脂を、ベース上の台座および台座にセットされた重りを覆うように供給する原料供給工程と、台座および重りをキャビティに収容するように、上型を下型に重ね合わせ、キャビティ内の合成樹脂を加圧および加熱することによって、黒鍵カバーを成形する加圧・加熱工程と、を有していることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、黒鍵カバー成形工程において、黒鍵カバー本体の原料としての粉状の合成樹脂を、ベース上の台座および重りを覆うように供給する(原料供給工程)。そして、台座および重りをキャビティに収容するように、上型を下型に重ね合わせ、キャビティ内の合成樹脂を加圧および加熱する(加圧・加熱工程)。この加圧・加熱工程により、キャビティ内の合成樹脂は、溶融するとともに比較的高い圧力を有する状態で、下型の台座および重りの周囲に充填され、凝固し、それにより、重りを内蔵する黒鍵カバーが成形される。以上のように、合成樹脂を供給してから、上型を下型に重ね合わせることによって、黒鍵カバーを成形するので、あらかじめ上型と下型を重ね合わせ、密閉されたキャビティ内に合成樹脂を供給する成形方法、例えば射出成形などに比べて、黒鍵カバーを容易に成形することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項3ないし5のいずれかに記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法において、台座は、セットされる重りに係合し、重りを所定位置に位置決めする位置決め部を有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、重りが台座にセットされる際に、その重りが位置決め部に係合することによって、所定位置に位置決めされるので、内部の適正な位置に重りを保持する黒鍵カバーを容易に得ることができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法において、重りの下面には、凸部および凹部の一方から成る係合部が設けられ、位置決め部は、係合部に係合する凸部および凹部の他方で構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、重りを台座にセットする重りセット工程において、凸部および凹部の一方から成る重りの係合部を、凸部および凹部の他方で構成された台座の位置決め部に係合させるだけで、重りを台座上に容易にセットすることができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項3ないし7のいずれかに記載の鍵盤楽器の黒鍵カバーの製造方法において、台座は、磁石で構成され、重りは、台座に吸着される磁性材料で構成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、台座が磁石で構成されるとともに、重りが台座に吸着される磁性材料で構成されているので、台座にセットされた重りは、台座に吸着する。それにより、黒鍵カバーの成形時に、重りの下方に回り込んだ合成樹脂の圧力で重りが浮き上がるのを防止することができる。これにより、台座の幅や台座自体をより小さくすることが可能となり、それにより、重りの下方に回り込んだ合成樹脂によって形成される、黒鍵カバー本体の下壁がより大きくなる。その結果、その下壁の下面の面積がより大きくなることで、鍵本体との接着面積を増大でき、黒鍵カバーを鍵本体によりしっかりと取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用したグランドピアノの黒鍵を示している。同図に示すように、この黒鍵1は、鍵本体2と、これに重さを付与する重り3(図2参照)を内蔵する黒鍵カバー4などを備えている。
【0026】
鍵本体2は、スプルスなどの比較的軽量で、粘り強く、弾力性に富む木質材から成り、矩形の断面を有し、前後方向に延びている。鍵本体2の上面中央部には、中座板5が接着され、これらを上下方向に貫通するようにバランスピン孔6が形成されている。そして、このバランスピン孔6が、立設するバランスピン(図示せず)に係合することによって、黒鍵1が揺動自在に支持されている。また、鍵本体2の上面のバランスピン孔6よりも後ろ側の位置には、キャプスタン座板7を介して、キャプスタンスクリュー8が取り付けられており、このキャプスタンスクリュー8上にアクション(図示せず)が載置される。以上の構成により、黒鍵1の前部を押鍵したときに、黒鍵1がバランスピンを中心として揺動し、これに伴い、アクションはキャプスタンスクリュー8で突き上げられることにより作動する。
【0027】
図2に示すように、黒鍵カバー4は、黒鍵カバー本体11と、その内部に収容された前記重り3とで構成されている。黒鍵カバー本体11は、フェノール樹脂などの合成樹脂で構成され、前後方向に延びるとともに下方に開放する中空状に形成されている。また、黒鍵カバー本体11は、左右の側壁11a、11aの下部から内方に突出し、互いに対向する左右一対の下壁12、12(壁部)を有している。図2(d)に示すように、両下壁12、12の互いに対向する対向面12a、12aは、上方の重り3に向かって互いに接近するテーパ状に形成されている。
【0028】
一方、重り3は、比較的比重の大きい金属(例えば鉄、タングステン、ステンレス)などで構成され、断面矩形の棒状に形成されている。より具体的には、重り3は、黒鍵カバー本体11の長さ方向の寸法よりも短い長さを有するとともに、黒鍵カバー本体11の左右の下壁12、12間の寸法よりも長い幅を有している。したがって、図2(b)および(d)に示すように、重り3は、左右の下壁12、12によって、下方から係止されている。
【0029】
以上のように構成された黒鍵カバー4は、後述するインサート成形により、黒鍵カバー本体11と重り3が一体に成形されている。そして、この黒鍵カバー4は、その下面が、鍵本体2の上面の前部にこれを覆うように接着されている。
【0030】
以上のように、この黒鍵1によれば、黒鍵カバー本体11が、左右の側壁11a、11aの下部から内方に突出する下壁12、12を有しており、これらの下壁12、12によって、重り3が下方から係止されている。これにより、重り3は、安定して保持され、押鍵時に、黒鍵カバー本体11内でがたつくことがない。また、黒鍵カバー本体11の両下壁12、12は、内方に突出することで、その下面の面積が比較的大きく、鍵本体2との接着面積が大きくなる。加えて、黒鍵カバー本体11内の重り3が、下壁12、12よりも上側に位置するので、下壁12、12の下面を平滑にするための切削を確保することができる。以上により、黒鍵カバー本体11を鍵本体2に良好に接着でき、しっかりと取り付けることができる。さらに、黒鍵カバー本体11内に重り3を収容する黒鍵カバー4は、後述するインサート成形によって、黒鍵カバー本体11と重り3を一体に成形することが可能であり、それにより、黒鍵カバー本体11と重り3を別個に作製し、重りを黒鍵カバー本体内にはめ込み、接着する工程が必要な従来に比べて、安価に製造することができる。
【0031】
次に、黒鍵カバー4の製造方法について説明する。この黒鍵カバー4は、インサート成形により、重り3を内蔵するように成形される。なお、以下の説明ではまず、インサート成形に使用する金型について説明し、その後で、黒鍵カバー4の成形工程について説明するものとする。
【0032】
図3は、このインサート成形に用いられる金型の下型21の一部を示しており、図4(a)は、下型21の台座23の周囲を平面的に示している。両図に示すように、下型21は、水平なベース22と、このベース22上に互いに間隔を隔てて配置され、ベース22と一体の複数(例えば8つ、図3では2つのみ図示)の台座23を備えている。
【0033】
各台座23は、黒鍵カバー4の成形時に、重り3を載置した状態にセットするためのものである。台座23は、所定の高さ寸法を有するとともに、ベース22上にこれに沿って延びており、前記重り3よりも長くかつ黒鍵カバー本体11よりも短くなっている。また、台座23の両端部24、24は、その幅が、両端部24、24の間の中間部25のそれよりも大きくなっている。各端部24には、セットされる重り3に係合し、これを位置決めするための係合凹部24a(位置決め部)が設けられている。この係合凹部24aは、上方に突出するとともに、平面形状が内方に開放するコ字状に形成されている。また、台座23の中間部25は、幅が重り3のそれよりも小さく、両側面が上方に向かって互いに接近するテーパ状に形成されている。これにより、黒鍵カバー4の成形時に、黒鍵カバー4を下型21から取り外す際に、黒鍵カバー4を容易に取り外すことができる。
【0034】
図5は、黒鍵カバー4を成形する際に、重り3を台座23にセットした状態を示している。同図に示すように、重り3は、台座23に沿って載置され、両端部が台座23の係合凹部24a、24aにぴったりとはまるように係合する。これにより、重り23は、成形される黒鍵カバー4内の所定位置に位置決めされる。また、上記下型21と重ね合わされる上型26(図6(d)参照)は、下型21の複数の台座23に対応する複数のキャビティ27(図6(d)では1つのみ図示)を有している。各キャビティ27は、下方に開放し、成形すべき黒鍵カバー4に対して相補的な形状を有しており、具体的には、断面台形に形成されている。この上型26を下型に重ね合わせたときには、図5に二点鎖線で示すように、台座23およびそれにセットされた重り3が、キャビティ27内に収容される。
【0035】
次に、図6を参照しながら、黒鍵カバー4の成形工程を順に説明する。まず、上述した重り3と下型21および上型26の金型とを準備する(重り準備工程および金型準備工程、同図(a)では下型21のみ図示)。次いで、同図(b)に示すように、下型21の各台座23に重り3をセットする(重りセット工程)。次いで、同図(c)に示すように、所定の粉状の原料Gを、台座23および重り3を覆うように、ベース22上に供給する(原料供給工程)。この原料Gは、黒鍵カバー本体11の構成材料であり、例えばフェノール樹脂などの合成樹脂である。そして、上型26を下型21に重ね合わせることにより、同図(d)に示すように、台座23、重り3およびそれらの周囲の原料Gをキャビティ27内に収容し、それに前後して、上型26および下型21を、所定時間(例えば3分)および所定温度(例えば150℃)で加熱する(加圧・加熱工程)。
【0036】
以上により、上型26および下型21で密閉されたキャビティ27内の原料Gは、溶融するとともに比較的高い圧力を有する状態で、下型21の台座23および重り3の周囲に充填される。その後、キャビティ27内の原料Gが、凝固した後、上型26と下型21を分離し、成形された黒鍵カバー4を下型21から取り外す(同図(e)参照)。
【0037】
以上のように、この黒鍵カバー4の製造方法によれば、台座23の中間部25の幅が、重り3のそれよりも小さいため、キャビティ27内の溶融した原料Gが重り3の下方に回り込み、それによって、重り3を下方から係止する下壁12、12が形成される。これにより、前記図2に示す黒鍵カバー4と同様のもの、すなわち黒鍵カバー本体11が重り3を収容し、それを下壁12、12で下方から係止する黒鍵カバー4が成形される。また、この成形時に、台座23にセットされる重り3は、係合凹部24a、24aに係合することで位置決めされるので、その重り3を内部の適正な位置に保持する黒鍵カバー4を得ることができる。さらに、上記のインサート成形により、黒鍵カバー本体11が重り3に融着し、それにより、黒鍵カバー本体11と重り3が一体でかつ重り3を内部に安定して保持する黒鍵カバー4を容易に製造することができる。
【0038】
また、原料Gを下型21に供給してから、上型26を下型21に重ね合わせることによって、黒鍵カバー4を成形するので、あらかじめ上型と下型を重ね合わせ、密閉されたキャビティ内に原料を供給する成形方法、例えば射出成形などに比べて、黒鍵カバー4を容易に成形することができる。
【0039】
図7は、下型21の台座23の変形例を示している。同図(a)では、台座23の各端部24上に、前述した係合凹部24aに代えて、3つの係合ピン24b(位置決め部)がそれぞれ所定位置に立設されている。そして、黒鍵カバー4の成形時に、重り3が、これらの係合ピン24bの内側に係合するように、台座23にセットされることにより、係合凹部24aを有する台座23を用いた場合と同様、重り3を内部の適正な位置に保持する黒鍵カバー4を得ることができる。
【0040】
一方、図7(b)では、台座23の両端部24、24において、中間部25寄りの位置にそれぞれ、係合ピン24c、24c(位置決め部、凸部)が立設されている。また、重り3には、それらの係合ピン24c、24cに対応する2つの係合穴3a、3a(係合部、凹部)が、下面の所定位置に開口するように形成されている。そして、黒鍵カバー4の成形時に、両係合ピン24c、24cが重り3の係合穴3a、3aに挿入するように、重り3が台座23にセットされることにより、上記と同様、重り3を内部の適正な位置に保持する黒鍵カバー4を得ることができる。
【0041】
また、台座23を磁石で構成するとともに、重り3を台座23に吸着される磁性材料(例えば鉄など)で構成することが好ましい。この場合、黒鍵カバー4の成形時に、重り3の下方に回り込んだ原料Gの圧力で重り3が浮き上がるのを防止することができる。これにより、台座23の中間部25の幅をより小さくすることが可能となり、それにより、重り3の下方に回り込んだ原料Gによって形成される、黒鍵カバー本体11の下壁12、12が、より大きくなる。その結果、下壁12、12の下面の面積がより大きくなることで、鍵本体2との接着面積を増大でき、黒鍵カバー4を鍵本体2によりしっかりと取り付けることができる。
【0042】
図8は、下型21の台座の他の変形例を示している。同図に示すように、この台座28は、上述した台座23と異なり、互いに所定間隔を隔てて配置された2つの台座部29、29を一組として構成されている。各台座部29は、前記台座23と同じ高さ寸法を有するとともに、平面形状が所定の径を有する円形に形成され、上面の中心部に係合ピン29a(位置決め部、凸部)が立設されている。また、重り3の下面には、前述した図7(b)と同様に、両台座部29、29の係合ピン29a、29aに対応する2つの係合穴3a、3a(係合部、凹部)が形成されている。そして、黒鍵カバー4の成形時に、両係合ピン29a、29aが重り3の係合穴3a、3aに挿入するように、重り3が台座28にセットされる。
【0043】
図9(a)および(b)は、上記台座28を有する下型21を用いて黒鍵カバー4を成形する場合において、前述した黒鍵カバー4の成形工程を示す図6の(d)および(e)にそれぞれ対応するものである。図9(a)に示すように、重り3が台座28にセットされたときには、重り3の下面とベース22の上面との間に、比較的大きなスペースSが画成される。そして、黒鍵カバー4の成形時における加圧・加熱工程により、キャビティ27内で溶融した原料Gは、重り3の下方に回り込み、スペースSに充填される。これにより、図9(b)に示すように、成形された黒鍵カバー4では、両台座部29、29が有った部分を除く下面全体に、下壁12が形成される。
【0044】
以上のように、台座28を有する下型21を用いて黒鍵カバー4を成形することにより、前述した台座23を用いた場合に比べて(図2(b)参照)、下面の面積が非常に大きい黒鍵カバー4を得ることができる。それにより、鍵本体2との接着面積が大きくなるので、接着強度が高まり、黒鍵カバー4を鍵本体2により一層しっかりと取り付けることができる。
【0045】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、左右一対の下壁12、12を有する黒鍵カバー4では、両下壁12、12が、左右の側壁11a、11aからそれぞれ内方に突出するように形成したが、重り3を係止可能であれば、左右の側壁11a、11aの一方のみから突出するように形成してもよい。
【0046】
また、黒鍵カバー4の上述したインサート成形では、原料Gを下型21に供給した後、上型26を下型21に重ね合わせたが、重り3を内蔵する黒鍵カバー4が得られるのであれば、その他の成形方法を採用してもよい。例えば、下型21および上型26の一方に、溶融した原料Gをキャビティ27内に流入させるためのゲートを設け、射出成形などによって、黒鍵カバー4を成形することも可能である。また、図7(b)および図8では、重り3に係合穴3a、3aを設ける一方、台座23、28に係合ピン24c、29aを設けたが、これらの凹凸関係を逆にすることも可能である。さらに、図8の台座28では、2つの台座部29、29を有するものを用いたが、これらの台座部29の数は限定されるものではなく、1個または3個以上であってもよい。ただし、台座部29を1個にする場合には、それにセットされた重り3が係合ピン29aを中心に回らないようにするために、重り3の係合穴3aおよび台座部29の係合ピン29aの断面形状を、円形以外の形状にすることが好ましい。
【0047】
また、実施形態で示した黒鍵1、黒鍵カバー4、黒鍵カバー本体11および重り3の細部の構成や、黒鍵カバー成形時の各工程などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態によるグランドピアノの黒鍵を示す斜視図である。
【図2】重りを内蔵する黒鍵カバーを示す図であり、(a)側面図、(b)底面図、(c)c−c線に沿う断面図、(d)d−d線に沿う断面図である。
【図3】下型の一部を示す斜視図である。
【図4】下型の台座の周囲を示す図であり、(a)平面図、(b)b−b線に沿う断面図である。
【図5】重りがセットされた下型の台座の周囲を示す図であり、(a)平面図、(b)b−b線に沿う断面図である。
【図6】黒鍵カバーの成形工程を順に説明するための説明図である。
【図7】下型の台座の変形例を示す斜視図である。
【図8】下型の台座の他の変形例を示す斜視図である。
【図9】図8の台座を用いたときの黒鍵カバーの成形工程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 黒鍵
2 鍵本体
3 重り
3a 係合穴(係合部、凹部)
4 黒鍵カバー
11 黒鍵カバー本体
11a 側壁
12 下壁(壁部)
12a 対向面
21 下型
22 ベース
23 台座
24a 係合凹部(位置決め部)
24b 係合ピン(位置決め部)
24c 係合ピン(位置決め部、凸部)
25 台座の中間部
26 上型
27 キャビティ
28 台座
29 台座部
29a 係合ピン(位置決め部、凸部)
G 原料
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成19年4月23日(2007.4.23)
【代理人】 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄


【公開番号】 特開2008−268654(P2008−268654A)
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願番号】 特願2007−113067(P2007−113067)