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【発明の名称】 ピアノのハンマーシャンクおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】釘本 英範

【要約】 【課題】乾湿の影響による2つの腕部間の寸法の変化を抑制でき、それにより、ハンマーの円滑で安定した動作を確保することができるピアノのハンマーシャンクおよびその製造方法を提供する。

【解決手段】フレンジ23に支持され、押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンク24であって、木材から成るシャンク本体24aと、このシャンク本体24aの一端部に形成され、互いに対向するとともにフレンジ23の両側に平行に延び、フレンジ23に回動自在に支持された二股状の2つの腕部24b、24bと、2つの腕部24b、24bの互いに対向する方向の変位を抑制するために、2つの腕部24b、24bの根元間に充填・固定された充填材28と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレンジに支持され、押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンクであって、
木材から成るシャンク本体と、
このシャンク本体の一端部に形成され、互いに対向するとともに前記フレンジの両側に平行に延び、当該フレンジに回動自在に支持された二股状の2つの腕部と、
当該2つの腕部の互いに対向する方向の変位を抑制するために、当該2つの腕部の根元間に充填・固定された充填材と、
を備えていることを特徴とするピアノのハンマーシャンク。
【請求項2】
前記充填材は、
合成樹脂の成形品で構成され、前記2つの腕部の間に嵌め込まれており、
前記2つの腕部の内側面に接する左右の側面と、当該左右の側面の上下の端部から外側方に突出し、前記2つの腕部の上面および下面に係止される上下の突出部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のピアノのハンマーシャンク。
【請求項3】
前記充填材は、前記2つの腕部にスナップ嵌めされていることを特徴とする請求項2に記載のピアノのハンマーシャンク。
【請求項4】
互いに対向する平行な二股状の2つの腕部を一端部に連続して延びるように形成した木製のハンマーシャンク材を準備する準備工程と、
前記ハンマーシャンク材の前記2つの腕部の根元間に、前記腕部の延び方向に沿って連続するように、前記2つの腕部の互いに対向する方向の変位を抑制するための充填材を充填する充填工程と、
前記充填材を充填した前記ハンマーシャンク材を、前記腕部の延び方向の所定間隔ごとに、当該延び方向と直交する方向に沿って切断することにより、複数のハンマーシャンクを切り出す切断工程と、
を備えていることを特徴とするピアノのハンマーシャンクの製造方法。
【請求項5】
前記充填工程は、前記充填材として、連続して延びる所定の材質の固定部材を、前記2つの腕部の根元間に挿入し、接着する接着工程であることを特徴とする請求項4に記載のピアノのハンマーシャンクの製造方法。
【請求項6】
前記充填工程は、前記充填材として、液状の所定の種類の合成樹脂を、前記2つの腕部の根元間に充填し、硬化させる樹脂充填工程であることを特徴とする請求項4に記載のピアノのハンマーシャンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンマーシャンクを有するピアノのハンマーとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このハンマーは、各鍵に対応するように設けられており、ハンマーシャンクフレンジ(以下、単に「シャンクフレンジ」という)に回動自在に支持されている。各ハンマーは、細長い棒状の木製のハンマーシャンクと、このハンマーシャンクの後端部に固定されたハンマーヘッドなどで構成されている。ハンマーシャンクの前端部には、互いに対向し前方に平行に延びる二股状の左右2つの腕部が形成されている。また、シャンクフレンジは、合成樹脂の成形品で構成されており、ハンマーシャンクレールにねじ止めされている。シャンクフレンジの後端部には、後方に突出する係合部が設けられており、この係合部の両側に、ハンマーシャンクの2つの腕部が係合している。また、両腕部および係合部には、ピンが水平に通されており、このピンは、係合部に固定される一方、両腕部に対して回動自在になっている。これにより、ハンマーは、シャンクフレンジと一体のピンを介して、シャンクフレンジに回動自在に支持されている。また、シャンクフレンジの係合部の両側面は、互いに平行に形成されており、ハンマーシャンクの両腕部の内側面に、若干の隙間をもって対向している。
【0003】
以上の構成により、鍵が押鍵されると、アクションが作動することによって、ハンマーシャンクが突き上げられることにより、ハンマーが上方に回動し、ハンマーヘッドが弦を打弦することによって、ピアノ音が発生する。また、このハンマーの回動時には、ハンマーシャンクが、その両腕部およびシャンクフレンジの係合部で案内されることにより、ハンマーは、左右にぶれることなく回動する。
【0004】
しかし、ハンマーシャンクは木製であるため、ピアノの使用環境、特に乾湿の影響を受けやすく、両腕部間の寸法の変化により、ハンマーの円滑で安定した回動動作を得られなくなるおそれがある。具体的には、乾燥による収縮によって、ハンマーシャンクの両腕部間の寸法が小さくなると、両腕部と係合部の間の隙間がなくなり、ハンマーが円滑に回動しないような動作不良(以下「スティック」という)を生じることがある。逆に、湿潤による膨張によって、両腕部間の寸法が大きくなると、両腕部と係合部の間の隙間が広がり、その結果、ハンマーが回動する際に、左右にぶれたり、がたつきが生じたりすることにより、打弦を適切に行えないおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、乾湿の影響による2つの腕部間の寸法の変化を抑制でき、それにより、ハンマーの円滑で安定した動作を確保することができるピアノのハンマーシャンクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【特許文献1】特開2005−77455号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、フレンジに支持され、押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンクであって、木材から成るシャンク本体と、このシャンク本体の一端部に形成され、互いに対向するとともにフレンジの両側に平行に延び、フレンジに回動自在に支持された二股状の2つの腕部と、2つの腕部の互いに対向する方向の変位を抑制するために、2つの腕部の根元間に充填・固定された充填材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、木材から成るハンマーシャンク本体の一端部に、互いに対向するとともにフレンジの両側に平行に延びる二股状の2つの腕部が形成され、両腕部がフレンジに回動自在に支持されている。これにより、ハンマーシャンクは、押鍵に伴い、2つの腕部およびフレンジで案内されながら回動する。また、2つの腕部の互いに対向する方向の変位を抑制するために、2つの腕部の根元間に充填材が充填・固定されている。つまり、充填材によって、2つの腕部が拘束される。これにより、両腕部間の寸法を安定して維持できることによって、両腕部の内側面とフレンジの間の隙間の大きさも維持でき、その結果、乾湿によるスティックの発生およびハンマーシャンクが回動する際のぶれやがたつきを防止することができる。したがって、乾湿にかかわらず、ハンマーシャンクの円滑で安定した動作を確保することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノのハンマーシャンクにおいて、充填材は、合成樹脂の成形品で構成され、2つの腕部の間に嵌め込まれており、2つの腕部の内側面に接する左右の側面と、左右の側面の上下の端部から外側方に突出し、2つの腕部の上面および下面に係止される上下の突出部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、合成樹脂の成形品で構成された充填材が、2つの腕部の間に嵌め込まれている。この状態において、2つの腕部は、それらの内側面が充填材の左右の側面にそれぞれ接するので、乾燥による収縮によって、両腕部が狭まるように変位しようとしても、充填材自体の剛性や硬さにより、その変位を抑制することができる。その結果、スティックの発生を確実に防止することができる。また、充填材の左右の側面には、上下の端部から外側方に突出する突出部が設けられており、これらの突出部が両腕部の上面および下面にそれぞれ係止される。これにより、充填材は、2つの腕部間に、上下方向に抜け止め状態でしっかりと固定される。したがって、充填材を両腕部間に取り付ける際に、接着などによる固着処理を省略することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のピアノのハンマーシャンクにおいて、充填材は、2つの腕部にスナップ嵌めされていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、充填材が、2つの腕部にスナップ嵌めによって取り付けられるので、充填材を両腕部の間に押し入れるという簡単な作業で、充填材を両腕部に容易に取り付けることができる。また、充填材を既存のピアノのハンマーシャンクに後付けすることが可能であり、それにより、既存のピアノにおいても、スティックの発生を確実に防止することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、互いに対向する平行な二股状の2つの腕部を一端部に連続して延びるように形成した木製のハンマーシャンク材を準備する準備工程と、ハンマーシャンク材の2つの腕部の根元間に、腕部の延び方向に沿って連続するように、2つの腕部の互いに対向する方向の変位を抑制するための充填材を充填する充填工程と、充填材を充填したハンマーシャンク材を、腕部の延び方向の所定間隔ごとに、延び方向と直交する方向に沿って切断することにより、複数のハンマーシャンクを切り出す切断工程と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、まず、上記の木製ハンマーシャンク材を準備する。このハンマーシャンク材には、互いに平行な二股状の2つの腕部が、一端部に連続して延びるように形成されている。次いで、ハンマーシャンク材の2つの腕部の根元間に、両腕部の互いに対向する方向の変位を抑制するための充填材を、腕部の延び方向に沿って連続するように充填する。そして、充填材を充填したハンマーシャンク材を、腕部の延び方向の所定間隔ごとに、延び方向と直交する方向に沿って切断し、ハンマーシャンク材から複数のハンマーシャンクを切り出す。これにより、2つの腕部の根元間に充填材を充填したハンマーシャンク、すなわち前記請求項1で述べた作用、効果を有するハンマーシャンクを得ることができる。また、ハンマーシャンク材に充填材を充填してから、ハンマーシャンクを切り出すので、ハンマーシャンクごとに充填材を充填する場合に比べて、ハンマーシャンクを効率良く製造することができる。
【0015】
また、従来一般に、ハンマーシャンクの製造工程では、上記のようなハンマーシャンク材、すなわち充填材を充填していないハンマーシャンク材を、上記と同様にして切断することによって、ハンマーシャンク材からハンマーシャンクを切り出している。したがって、ハンマーシャンクを製造する際に、上記充填工程以外の工程は、従来の製造ラインをそのまま利用でき、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のピアノのハンマーシャンクの製造方法において、充填工程は、充填材として、連続して延びる所定の材質の固定部材を、2つの腕部の根元間に挿入し、接着する接着工程であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、充填材として、連続して延びる所定の材質の固定部材を、2つの腕部の根元間に挿入し、接着する接着工程を、前記充填工程として行う。このように、充填材として、上記のような固定部材を採用するので、その取り扱いを容易に行うことができ、また、その固定部材を、両腕部の根元間に挿入し、接着するだけで、ハンマーシャンク材への充填材の充填作業を容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載のピアノのハンマーシャンクの製造方法において、充填工程は、充填材として、液状の所定の種類の合成樹脂を、2つの腕部の根元間に充填し、硬化させる樹脂充填工程であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、充填材として、液状の所定の種類の合成樹脂を、2つの腕部の根元間に充填し、硬化させる樹脂充填工程を、前記充填工程として行う。このように、充填材として、上記のような合成樹脂を採用するので、ハンマーシャンク材への充填の際に、液状の合成樹脂を両腕部の根元間に流し込むことにより、両腕部の根元間の形状およびサイズに応じて、充填材を容易にかつ適切に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるピアノのハンマーシャンクを適用したグランドピアノの鍵盤1、アクション2およびハンマー3などを、離鍵状態において示している。
【0021】
鍵盤1は、グランドピアノの左右方向に並んだ多数の鍵1a(1つのみ図示)によって構成されている。各鍵1aは、前後方向(図1の左右方向)に延び、その中央において、棚板上の筬に立設されたバランスピン(いずれも図示せず)を中心として、回動自在に支持されている。
【0022】
アクション2は、鍵盤1の後部の上方に設けられており、ウィッペン11、ジャック12およびレペティションレバー13などを、鍵1aごとに備えている。ウィッペン11は、前後方向に延び、後端部において、ウィッペンフレンジ14に支持されている。このウィッペンフレンジ14は、上下方向に延びており、左右方向に間隔を隔てて配置された複数のブラケット15(図1では1つのみ図示)に渡されたウイッペンレール16にねじ止めされている。また、ウィッペンフレンジ14の上端部には、二股状の左右2つの腕部14a、14a(図1では左側のもののみ図示)が設けられている。これらの両腕部14a、14a間には、ウィッペン11の後端部が係合し、これらにセンターピン17が水平に通されている。これにより、ウイッペン11は、センターピン17を中心として、ウィッペンフレンジ14に回動自在に支持されている。また、ウィッペン11の前後方向の中央部には、下方に突出するヒール部11aが設けられている。ウィッペン11は、このヒール部11aを介して、鍵1aの後部に設けられたキャプスタンスクリュー1bに載置されている。また、ウィッペン11の前端部には、ジャック12が支持されている。
【0023】
ジャック12は、上下方向に延びるハンマー突上げ部12aと、その下端部から前方にほぼ直角に延びるレギュレーティングボタン当接部12bとにより、側面形状がL字状に形成されている。ウィッペン11の前端部には、二股状の左右2つの腕部11b、11b(図1では左側のもののみ図示)が設けられている。これらの両腕部11b、11b間には、ジャック12の角部が係合し、これらにセンターピン18が水平に通されている。これにより、ジャック12は、センターピン18を中心として、ウィッペン11の前端部に回動自在に支持されている。また、ハンマー突上げ部12aの上端部は、レペティションレバー13の後述するジャック案内孔13aに係合するとともに、レペティションレバー13に載置された後述するシャンクローラ26と若干の間隔を存して対向している。さらに、ジャック12は、後述するレペティションスプリング22によって、復帰方向(図1の反時計方向)に付勢されている。
【0024】
レペティションレバー13は、斜め前上がりに前後方向に延び、ウィッペン11の前後方向の中央部から上方に突出するレバーフレンジ部21に支持されている。このレバーフレンジ部21の上端部には、二股状の左右2つの腕部21a、21a(図1では左側のもののみ図示)が設けられている。これらの両腕部21a、21a間には、レペティションレバー13の中央部が係合し、これらにセンターピン19が水平に通されている。これにより、レペティションレバー13は、センターピン19を中心として、レバーフレンジ部21の上端部に回動自在に支持されている。また、レペティションレバー13は、レバーフレンジ部21に取り付けられたレペティションスプリング22によって、復帰方向(図1の反時計方向)に付勢されている。さらに、レペティションレバー13には、その前部に、上下方向に貫通するジャック案内孔13aが形成され、上面のジャック案内孔13a付近に当接するシャンクローラ26を介して、ハンマー3が載置されている。
【0025】
図2は、ハンマー3およびこれを支持するシャンクフレンジ23(フレンジ)を示している。ハンマー3は、前後方向に延びるハンマーシャンク24、およびその後端部に設けられたハンマーヘッド25を有しており、ハンマーヘッド25は、上方に張られた弦S(図1参照)に対向している。ハンマーシャンク24は、細長い棒状の木製のシャンク本体24aを有しており、その前端部の左右方向の幅が他の部分よりも広くなっている。
【0026】
また、シャンク本体24aの前端部には、二股状の左右2つの腕部24b、24bが形成されている。図3に示すように、両腕部24b、24bは、互いに左右方向に所定の間隔を隔てて対向し、前方に平行に延びている。各腕部24bには、左右方向に貫通したピン孔24cが形成されており、このピン孔24cに、羊毛で構成された円筒状の軸受27が取り付けられている。また、シャンク本体24aの前端部には、下面にシャンクローラ26が取り付けられ、2つの腕部24b、24bの根元間に、両腕部24b、24bの互いに対向する方向の変位を抑制するための充填材28が充填・固定されている。
【0027】
充填材28は、乾湿の変化に対して、外形寸法が不変の材料で構成されており、具体的には、木材に所定の化学処理(例えばホルマル化など)を施した改良木材や、所定の種類の合成樹脂(例えばABS樹脂など)などで構成されている。そして、この充填材28は、乾燥によって、両腕部24b、24bが互いの間隔を狭めるような変位を生じようとしても、それを抑制し得る剛性や硬さを有するとともに、湿潤によって、両腕部24b、24bが互いの間隔を広げるような変位を生じようとしても、それを抑制するように、両腕部24b、24bの根元間に接着されている。
【0028】
また、シャンクフレンジ23は、合成樹脂で構成されており、複数のブラケット15の間に渡されたハンマーシャンクレール29(図1参照)の上面にねじ止めされている。図3に示すように、シャンクフレンジ23は、前後方向に延び、断面が矩形状に形成されている。シャンクフレンジ23の後端部には、ハンマーシャンク24の両腕部24b、24b間の寸法よりも若干小さい幅を有するとともに後方に突出し、両腕部24b、24b間に係合する係合部23aが設けられている。この係合部23aには、左右方向に貫通するピン取付孔23bが形成されている。そして、係合部23aが、両腕部24b、24b間に、それらの内側面との間に若干の隙間をもって配置された状態で、センターピン20が、軸受27、27およびこれらの間のピン取付孔23bに通されている。センターピン20は、その中央部がピン取付孔23bに固定されるとともに、両端部が軸受27、27に対し回動自在になっている。これにより、ハンマー3は、シャンクフレンジ23と一体のセンターピン20を介して、シャンクフレンジ23に回動自在に支持されている。
【0029】
以上の構成によれば、図1に示す離鍵状態から鍵1aが押鍵されると、ウィッペン11が、キャプスタンスクリュー1bを介して突き上げられることにより、センターピン17を中心として上方に回動するとともに、ジャック12およびレペティションレバー13も、それぞれのセンターピン18および19を中心として回動する。そして、ハンマー3は、ジャック12によりシャンクローラ26を介して突き上げられ、ハンマーシャンク24の両腕部24b、24bおよびシャンクフレンジ23の係合部23aで案内されながら、センターピン20を中心として、図1の時計方向に回動することにより、弦Sを打弦し、それによりピアノ音が発生する。
【0030】
以上のように、本実施形態のハンマーシャンク24によれば、ハンマーシャンク24の両腕部24b、24bの根元間には、充填材28が充填・固定されているので、両腕部24b、24bは、拘束され、互いに対向する方向の変位が抑制される。これにより、両腕部24b、24b間の寸法を安定して維持できることによって、両腕部24b、24bの内側面とシャンクフレンジ23の係合部23aの間の隙間の大きさも維持することができ、その結果、乾湿によるスティックの発生およびハンマー3が回動する際の左右のぶれやがたつきを防止することができる。したがって、乾湿にかかわらず、ハンマー3の円滑で安定した動作を確保することができる。
【0031】
次に、図4および図5を参照しながら、ハンマーシャンク24の製造方法について説明する。まず、図4は、ハンマーシャンク24の第1の製造方法の工程の一部を順に示している。同図(a)に示すように、まず、木製のハンマーシャンク材31および充填用部材32(充填材、固定部材)を準備する(準備工程)。具体的には、所定の形状およびサイズの板材を切削加工することなどにより、互いに対向する平行な二股状の2つの腕部31a、31aを一端部に連続して延びるように形成したハンマーシャンク材31を準備する。また、これとともに、ハンマーシャンク材31の両腕部31a、31aの根元間と相補的な断面形状を有し、連続して延びる充填用部材32を準備する。この充填用部材32は、木材に所定の化学処理(例えばホルマル化など)を施した改良木材や、所定の種類の合成樹脂(例えばABS樹脂など)などを成形することによって作製される。
【0032】
次いで、充填用部材32をハンマーシャンク材31の両腕部31a、31aの根元間に挿入し、接着する(充填工程、接着工程)。これにより、図4(b)に示すように、充填用部材32は、ハンマーシャンク材31の両腕部31a、31aの根元間に、充填・固定される。次いで、同図(c)に示すように、充填用部材32を充填・固定したハンマーシャンク材31を、腕部31aの延び方向の所定間隔Tごとに、その延び方向と直交する方向に沿って、挽割りなどによって切断する(切断工程)。それにより、前述した充填材28を充填したハンマーシャンク24とほぼ同様の複数のハンマーシャンク(以下「半製品ハンマーシャンク」という)が、切り出される。その後、この半製品ハンマーシャンクを切削加工することなどにより、前述したハンマーシャンク24、すなわち充填材28を有するハンマーシャンク24が得られる。
【0033】
この第1の製造方法によれば、ハンマーシャンク24に充填材28を充填・固定するために、上記のような充填用部材32を採用するので、その取り扱いを容易に行うことができ、また、充填用部材32を、両腕部31a、31aの根元間に挿入し、接着するだけで、ハンマーシャンク材31への充填用部材32の充填作業を容易に行うことができる。また、前述したように、充填用部材32をハンマーシャンク材31に充填する以外の工程は、従来一般に行われるハンマーシャンクの製造工程と同じであるので、ハンマーシャンク24を製造する際に、従来の製造ラインをそのまま利用でき、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0034】
図5は、ハンマーシャンク24の第2の製造方法の工程の一部を順に示している。同図(a)に示すように、まず、上記第1の製造方法の場合と同様のハンマーシャンク材31を準備する(準備工程)。次いで、このハンマーシャンク材31の2つの腕部31a、31a間に、充填用樹脂33(充填材、合成樹脂)として、液状の合成樹脂(例えばABS樹脂など)を流し込む。この場合、後述する冷却処理によって硬化する充填用樹脂33が、前述した充填用部材32と同様の体積となるよう、所定量の充填用樹脂33を流し込む。そして、両腕部31a、31a間に流し込んだ充填用樹脂33を冷却することにより、硬化させる(充填工程、樹脂充填工程)。これにより、同図(b)に示すように、充填用樹脂33が、ハンマーシャンク材31の両腕部31a、31aの根元間に充填・固定される。その後、第1の製造方法の場合と同様に、ハンマーシャンク材31を、所定間隔Tごとに切断することにより、複数の半製品ハンマーシャンクを切り出し、各半製品ハンマーシャンクを、適宜、切削加工する。これにより、充填材28を有するハンマーシャンク24が得られる。
【0035】
この第2の製造方法によれば、上記第1の製造方法と異なり、液状の充填用樹脂33を採用するので、ハンマーシャンク材31への充填用樹脂33の充填の際に、液状の合成樹脂を両腕部31a、31a間に流し込むことにより、それらの根元間の形状およびサイズに応じて、充填用樹脂33を容易にかつ適切に充填することができる。
【0036】
図6は、前述した充填材28の変形例、およびこれが取り付けられるシャンク本体24aの2つの腕部24b、24bの周囲を示している。この充填材34は、合成樹脂(例えばABS樹脂など)の成形品で構成されており、シャンク本体24aの両腕部24b、24bの根元間にスナップ嵌めで取り付けられるものである。
【0037】
図6(a)および(c)に示すように、充填材34は、全体がほぼブロック状に形成され、上下方向の中央の左右には、外側方に開放する左右対称の凹部35、35がそれぞれ形成されている。両凹部35、35は、充填材34の左右方向の中央付近まで、比較的深く形成され、充填材34の前後の端面の間にわたって前後方向に連続するように延びている。また、充填材34の左右の側面36、36は、互いに平行で、同図(c)に示すように、両側面36、36間の寸法Wが、シャンク本体24aの2つの腕部24b、24b間の距離とほぼ同じに設定されている。さらに、充填材34の各側面36の上下端部にはそれぞれ、外側方に若干突出する上下の係止凸部36a、36b(突出部)が設けられている。これらの上下の係止凸部36a、36bの内側面間の寸法Hは、腕部24bの高さ寸法とほぼ同じに設定されている。
【0038】
このように構成された充填材34を、2つの腕部24b、24b間に取り付けた状態では、図6(b)および(c)に示すように、充填材34の左右の側面36、36が、両腕部24b、24bの内側面にそれぞれ接する。これにより、乾燥による収縮によって、両腕部24b、24bが狭まるように変位しようとしても、充填材34自体の剛性や硬さにより、その変位を抑制することができる。その結果、スティックの発生を確実に防止することができる。また、充填材34の左右端部ではいずれも、上下の係止凸部36a、36bが、腕部24bの上面および下面にそれぞれ係止される。これにより、充填材34は、2つの腕部24b、24b間に、上下方向に抜け止め状態でしっかりと固定される。したがって、充填材34を両腕部24b、24b間に取り付ける際に、接着などによる固着処理を省略することができる。
【0039】
また、充填材34をシャンク本体24aに取り付ける場合には、図6(a)に示すように、充填材34を2つの腕部24b、24b間に上方から押し込む。この場合、充填材34は、上述したように、左右の凹部35、35を有しているために、図7の白抜き矢印で示すように、上方から押圧されると、下部が左右方向に若干縮まり且つ下方に凸に若干撓み、またこれとともに、両腕部24b、24bが充填材34の下部で若干押し広げられる。そして、この充填材34を、下側の係止凸部36b、36bが両腕部24b、24b間から下方に抜け出るまで押し込み、前記図6(c)に示すように、両腕部24b、24b間に取り付ける。このように、充填材34は、シャンク本体24aに対し、スナップ嵌めによって簡単に取付け可能であり、前述したように、両腕部24b、24b間にしっかりと固定される。また、充填材34は、既存のピアノのハンマーシャンクに後付けすることも可能であり、それにより、既存のピアノにおいても、スティックの発生を確実に防止することができる。
【0040】
さらに、充填材34の左右の凹部35、35は、充填材34の取り付けの際に、その下部を撓みやすくする役割の他、腕部24bの高さの寸法公差を吸収する役割も果たす。例えば、図8に示すように、腕部24bの高さ寸法H1が、前記図6(c)に示す腕部24bの高さ寸法Hよりも若干大きい(H1>H)場合には、各凹部35が充填材34の外側方に向かって若干広がり、その分、充填材34の左右の側面36、36の上下寸法が若干伸びることによって、腕部24bに対する上下の係止凸部36a、36bによる係止が確保される。このように、腕部24bの高さ寸法が、製造誤差などによって、適正な寸法に対し若干異なっていても、充填材34を両腕部24b、24b間にしっかりと固定することができる。
【0041】
なお、実施形態では、充填材28、34を構成する材料として、ホルマル化などの化学処理を施した木材、およびABS樹脂を例示したが、本発明の充填材はそれらに限定されるものではなく、乾湿によるハンマーシャンク24の両腕部24b、24bの互いに対向する方向の変位を抑制できるものであれば、各種の材料を採用することができる。
【0042】
また、充填材34については、全体を硬質の合成樹脂で構成する他、上下の係止凸部36a、36bを軟質の合成樹脂で構成してもよい。さらに、充填材34を取り付けやすくするために、充填材34の下部を、下方に向かってテーパ状に形成してもよい。なお、充填材34の取付方法については、前述したスナップ嵌めによるものの他、シャンク本体24aとシャンクフレンジ23を連結する前であれば、2つの腕部24b、24bの開放端側から充填材34を両腕部24b、24間に挿入し、根元までスライドさせてもよい。
【0043】
さらに、実施形態で示したハンマーシャンク24や充填材28、34の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。なお、本発明と同様の目的で、アクション2における木製部品の二股状の腕部、例えば、ウィッペンフレンジ14の腕部14a、14aや、ジャック12を支持するウィッペン11の腕部11b、11b、レペティションレバー13を支持するレバーフレンジ部21の腕部21a、21aなどの根元間に、充填材28、34を充填・固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態によるハンマーシャンクを用いたグランドピアノの鍵盤、アクションおよびハンマーなどを、離鍵状態において示す側面図である。
【図2】ハンマーおよびシャンクフレンジを示す斜視図である。
【図3】図2のハンマーシャンクとシャンクフレンジの連結部分を拡大して示す分解斜視図である。
【図4】ハンマーシャンクの第1の製造方法を説明するための説明図である。
【図5】ハンマーシャンクの第2の製造方法を説明するための説明図である。
【図6】シャンク本体に取り付けられる充填材の変形例を説明するための説明図であり、(a)充填材の取付前の状態を示す斜視図、(b)充填材の取付後の状態を示す斜視図、(c)A−A線に沿う断面図である。
【図7】図6の充填材の取付けを説明するための説明図であり、取り付け途中の状態を示している。
【図8】図6の充填材を、高さ寸法が若干大きい腕部に取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 鍵盤
1a 鍵
3 ハンマー
23 シャンクフレンジ(フレンジ)
24 ハンマーシャンク
24a シャンク本体
24b 腕部
28 充填材
31 ハンマーシャンク材
31a 腕部
32 充填用部材(固定部材)
33 充填用樹脂(合成樹脂)
34 充填材
36 充填材の側面
36a 係止凸部(突出部)
36b 係止凸部(突出部)
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成19年12月27日(2007.12.27)
【代理人】 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄


【公開番号】 特開2008−242427(P2008−242427A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−335991(P2007−335991)