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【発明の名称】 アップライトピアノのケース,および,アップライトピアノ
【発明者】 【氏名】釘本 英範

【要約】 【課題】アップライトピアノのケースにおいて、外部への音の伝搬を良好ならしめるにあたり、アップライトピアノとしての美観を損ないにくくする。

【解決手段】ケース50の上前板55,下前板57に形成された貫通孔65,67それぞれを塞ぐように伝搬部75,77が配置されており、これによりアップライトピアノ1の内部構造が見えてしまうことを防止できるため、アップライトピアノとしての美観が損なわれにくい。そして、貫通孔65,67を塞ぐ伝搬部75,77は、響板40より発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなるため、単に貫通孔65,67を隠すためだけのネットを積層する場合と比べて、外部への音の伝搬が妨げられにくい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップライトピアノの響板を取り囲むように配置される外装部品と、
該外装部品の少なくとも一部分を貫通するように形成された貫通孔と、
該貫通孔を塞ぐように配置されており、前記響板より発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなる伝搬部と、を備えている
ことを特徴とするアップライトピアノのケース。
【請求項2】
前記貫通孔は、アップライトピアノの演奏者側となる領域の少なくとも一部分を貫通するように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアップライトピアノのケース。
【請求項3】
前記伝搬部は、動物の皮,樹脂材料からなる振動膜,スピーカ用の振動部材および竹材のうち、いずれかの部材または複数の部材により形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアップライトピアノのケース。
【請求項4】
前記伝搬部は、一定方向に延びる板状の部材を格子状に組み合わせることにより形成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアップライトピアノのケース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のアップライトピアノのケースが響板を取り囲むように配置されている
ことを特徴とするアップライトピアノ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アップライトピアノのケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アップライトピアノは、響板を外装部品で取り囲む構成となっているため、この響板により発せられた音がその内部空間にこもりがちになり、こまかいニュアンスや音色の変化などを耳で確かめながら演奏するのに向いていないという問題があった。
【0003】
このような課題を解決するために、本願出願人は、上前板,下前板,屋根など外装部品の前面に複数の貫通孔を分布させ、これら貫通孔から外部に音を伝搬させるように構成したアップライトピアノのケースを提案している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−146532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したアップライトピアノのケースにおいては、単に外装部品に貫通孔を形成しただけの構成であることから、次のような課題を有するものとなっていた。
それは、外部への音の伝搬を良好ならしめるべく、貫通孔の数を増やしたり、その面積を大きくすると、内部構造が見えるようになってしまい、アップライトピアノ全体としての美観を損ないやすいという課題である。そして、特許文献1には、それを補うために貫通孔を隠すネットを積層することが提案されているが、そのようなネットの積層により貫通孔が塞がれるため、外部への音の伝搬が妨げられてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アップライトピアノのケースにおいて、外部への音の伝搬を良好ならしめるにあたり、アップライトピアノとしての美観を損ないにくくするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1に記載のアップライトピアノのケースは、アップライトピアノの響板を取り囲むように配置される外装部品と、該外装部品の少なくとも一部分を貫通するように形成された貫通孔と、該貫通孔を塞ぐように配置されており、前記響板より発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなる伝搬部と、を備えている。
【0007】
このように構成されたアップライトピアノのケースによれば、外装部品に形成された貫通孔を塞ぐように伝搬部が配置されており、これにより内部構造が見えてしまうことを防止できるため、アップライトピアノとしての美観が損なわれにくい。
【0008】
そして、貫通孔を塞ぐ伝搬部は、響板より発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなるため、単に貫通孔を隠すためだけのネットを積層する場合と比べて、外部への音の伝搬が妨げられにくい。
【0009】
なお、この構成における貫通孔は、少なくとも外装部品の一部分を貫通するように形成すればよく、その数,大きさ,形状等については特に限定されない。
また、この貫通孔は、外装部品の一部分に形成されていれば、その具体的な位置は特に限定されないが、こまかいニュアンスや音色の変化などを耳で確かめながら演奏するためには、演奏者側に形成されていることが望ましい。
【0010】
このためには、例えば、請求項2に記載のアップライトピアノのケースのように構成すればよい。このアップライトピアノのケースにおいて、前記貫通孔は、アップライトピアノの演奏者側となる領域の少なくとも一部分を貫通するように形成されている。
【0011】
このように構成すれば、響板から発せられた音が、伝搬部を介して演奏者側に伝搬されやすくなるため、こまかいニュアンスや音色の変化などを耳で確かめながら演奏するのに適したものとなる。
【0012】
なお、この構成における「演奏者側となる領域」とは、例えば、外装部品における上前板や下前板における一部分のことである。
また、上述した伝搬部は、響板より発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなるものであればよく、その具体的な部材については特に限定されない。
【0013】
例えば、請求項3に記載のように、前記伝搬部は、動物の皮,樹脂材料からなる振動膜,スピーカ用の振動部材および竹材のうち、いずれかの部材または複数の部材により形成されているとよい。
【0014】
これら部材は、ピアノ以外の楽器や音響機器において音を伝搬,放射するためにも使用される部材であるため、このような部材により伝搬部を形成することにより、響板から発せられる音を適切に外部へ伝搬するようなケースとすることができる。
【0015】
また、これら部材により形成された伝搬部であれば、部材の形状,大きさ,厚さ,張り具合などを調整することで、外部へ伝搬されやすい周波数の音や伝搬されにくい周波数の音を微調整することができるようになる。
【0016】
また、上述した伝搬部としては、例えば、請求項4に記載のように、一定方向に延びる板状の部材を格子状に組み合わせることにより形成されていてもよい。
このように構成すれば、伝搬部を構成する部材自体による音の伝搬だけでなく、この部材を組み合わせた際の隙間から音を流通させることができるため、より音の伝搬を良好なものとすることができる。
【0017】
また、この構成における板状の部材として、例えば、樹脂材料や竹材のようにある程度の剛性を有する部材を用いれば、こうして形成された伝搬部が外装部品における貫通孔の形状を維持するように作用する結果、貫通孔にネットを積層する場合と比べて、外装部品としての強度を維持しやすくなる。
【0018】
さらに、このように外装部品としての強度を維持しやすくなれば、貫通孔として大きなものを形成することができるようになり、このような大きな貫通孔によって、伝搬部を介した外部への音の伝搬をより良好なものとすることができる。
【0019】
また、請求項5に記載のアップライトピアノは、請求項1から4のいずれかに記載のアップライトピアノのケースが響板を取り囲むように配置されていることを特徴とする。
このように構成されたアップライトピアノによれば、請求項1から4のいずれかに記載のアップライトピアノのケースにより得られるのと同様の作用,効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
アップライトピアノ1は、図1,図2に示すように、複数の鍵からなる鍵盤10,鍵盤10の操作を受けて動作するアクション機構20,アクション機構20により打鍵される弦30,弦30が張られた響板40,アップライトピアノ1としての外装を形成するケース50などで構成されている。
【0021】
ケース50は、ケース50における側面を形成する一組の親板51,前面(演奏者側の面)を形成する上前板55および下前板57,天井面を形成する屋根板59などからなり、これらが、響板40を取り囲む外装部品を構成している。
【0022】
これらのうち、上前板55,下前板57は、それぞれケース50の外側から内側へと貫通するように形成された複数の貫通孔65,67と、この貫通孔65,67を塞ぐように配置された伝搬部75,77と、を備えている。なお、本実施形態において、上前板55には、四角形の貫通孔65が、上前板55の長手方向(図1,図3における左右方向)に沿って3つ形成されており、下前板57には、四角形の貫通孔67が、下前板57の長手方向(同上)に沿って2つ形成されている。
【0023】
この伝搬部75,77は、響板40から発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなるシート状の部材であり、これが、上前板55,下前板57の貫通孔65,67周辺においては、これら貫通孔65,67を塞ぐように取り付けられている。また、本実施形態において、この伝搬部75,77は、動物の皮,樹脂材料からなる振動膜,スピーカ用の振動部材および竹材のうち、いずれかの部材により形成されている。
【0024】
なお、この伝搬部75,77については、図3に示すように、一定方向に延びる板状の部材(例えば、竹材,樹脂材料)を格子状に組み合わせることにより形成してもよい。
このように構成されたアップライトピアノ1では、ケース50の上前板55,下前板57に形成された貫通孔65,67それぞれを塞ぐように伝搬部75,77が配置されており、これによりアップライトピアノ1の内部構造が見えてしまうことを防止できるため、アップライトピアノとしての美観が損なわれにくい。
【0025】
そして、貫通孔65,67を塞ぐ伝搬部75,77は、響板40より発せられる音の振動を伝搬するのに適した部材からなるため、単に貫通孔65,67を隠すためだけのネットを積層する場合と比べて、外部への音の伝搬が妨げられにくい。
【0026】
また、上記実施形態においては、貫通孔65,67が、アップライトピアノ1における演奏者側に配置された上前板55,下前板57に形成されているため、響板40から発せられた音が、伝搬部75,77を介して演奏者側に伝搬されやすくなるため、こまかいニュアンスや音色の変化などを耳で確かめながら演奏するのに適したものとなる。
【0027】
また、上記実施形態では、伝搬部75,77を形成する部材として、動物の皮,樹脂材料からなる振動膜,スピーカ用の振動部材および竹材のうち、いずれかの部材が用いられている。
【0028】
これら部材は、ピアノ以外の楽器や音響機器において音を伝搬,放射するためにも使用される部材であるため、このような部材により伝搬部75,77を形成することにより、響板40から発せられる音を適切に外部へ伝搬するようなケースとすることができる。
【0029】
また、これら部材により形成された伝搬部75,77であれば、部材の形状,大きさ,厚さ,張り具合などを調整することで、外部へ伝搬されやすい周波数の音や伝搬されにくい周波数の音を微調整することができるようになる。
【0030】
また、伝搬部75,77として、図3のように、一定方向に延びる板状の部材を格子状に組み合わせることにより形成されたものを採用した場合であれば、伝搬部75,77を構成する部材自体による音の伝搬だけでなく、この部材を組み合わせた際の隙間から音を流通させることができるため、より音の伝搬を良好なものとすることができる。
【0031】
また、この構成における板状の部材として、樹脂材料や竹材のようにある程度の剛性を有する部材を用いれば、こうして形成された伝搬部75,77が上前板55,下前板57における貫通孔65,67の形状を維持するように作用する結果、貫通孔65,67にネットを積層する場合と比べて、外装部品としての強度を維持しやすくなる。
【0032】
さらに、このように外装部品としての強度を維持しやすくなれば、貫通孔65,67として大きなものを形成することができるようになり、このような大きな貫通孔65,67によって、伝搬部75,77を介した外部への音の伝搬をより良好なものとすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、四角形の貫通孔65,67が、上前板55の長手方向に沿って3つ、下前板57の長手方向に沿って2つ形成された構成となっているものを例示した。しかし、この貫通孔65,67の数,大きさ,形状については、本実施形態に限られない。
【0035】
また、上記実施形態においては、貫通孔65,67が、アップライトピアノ1における演奏者側に配置された上前板55,下前板57に形成されているものを例示した。しかし、これら貫通孔は、上前板55,下前板57以外でケース50を構成する他の部材に形成してもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、伝搬部75,77が、動物の皮,樹脂材料からなる振動膜,スピーカ用の振動部材および竹材のうち、いずれかの部材により形成されているものを例示した。しかし、この伝搬部75,77は、これら部材のうち2以上を組み合わせることにより形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】アップライトピアノの斜視図
【図2】アップライトピアノの縦断面図
【図3】別の実施形態におけるアップライトピアノの斜視図
【符号の説明】
【0038】
1…アップライトピアノ、10…鍵盤、20…アクション機構、30…弦、40…響板、50…ケース、51…親板、55…上前板、57…下前板、59…屋根板、65…貫通孔、67…貫通孔、75…伝搬部、77…伝搬部。
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成19年2月28日(2007.2.28)
【代理人】 【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人


【公開番号】 特開2008−216302(P2008−216302A)
【公開日】 平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願番号】 特願2007−49604(P2007−49604)